僕たちが通うアメリカマサチューセッツ工科大学。
通称MIT。
世界最高峰の理系の大学として知られこれまでデジタル暗号や遺伝子工学など新しいテクノロジーを次々に世に送り出してきました。
科学を学ぶ最先端の環境に身を置き僕たちは日夜世界を変えるイノベーションに挑んでいます。
このMITで46年にわたって物理学の基礎を教えるのが…この講義を受け世界の見方が変わったと学生たちは言います。
この世界を支配する物理の美しさを知るのです。
難しい法則や公式もルーウィン教授の手にかかれば奇想天外抱腹絶倒のエンターテインメントに生まれ変わります。
ルーウィン教授は今回番組のために全8回の特別講義を新たに用意しました。
MITの学生だけでなく地元の市民にも開放し初心者にも分かりやすく物理学の魅力を伝えます。
この講義で物理を学べば世界がこれまでと全く違って見えてくるはずだ。
それは人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
これまでは疑問にも思わなかった事を君たちは物理学の問題として考えるようになる。
前回に続き重力と落下運動をテーマに誰しも子供のころ抱いた疑問にあっと驚く実験でこたえます。
(拍手)前回の授業では地球での重力加速度について学んだ。
覚えているだろうか?重力によって生じる加速度を物理学では「g」と呼びおよそ9.8メートル毎秒毎秒である事を説明した。
物体を静かに離して初速度ゼロで自由落下させた時それはどんどん速さを増しながら落ちる。
その落下の速さはこの公式で求める事ができた。
速さ「ν」はメートル毎秒。
時間「t」は秒。
そして重力加速度gは9.8メートル毎秒毎秒だ。
今日は1秒間にどのぐらい落下するのか。
物体が地面に衝突する時どれくらいの速さになっているのかという事を解き明かしていこう。
まずは1秒間で落下する距離について考えよう。
君たちが想像しやすいようにまずは君らが大好きな「車」を例に話をしよう。
ここでも「t」は「秒」で表し車の速さ「ν」は「メートル毎秒」だ。
最初は君は車を一定の速さで走らせているとしよう。
その場合この線は水平だ。
しかしある地点で君はアクセルを踏んで車のスピードを上げた。
そして速さを保ったまま走らせ続けた。
この時最初の速さを「ν」とする。
加速したあとの速さは「ν」だ。
いずれも「メートル毎秒」で表わす。
νというのはそれなりの速さだとしよう。
仮に時速60kmだとしよう。
ただしこれはメートル毎秒に換算しなくてはならない。
すると16.7メートル毎秒になる。
この場合車は1秒でどれだけ移動するだろうか?バカにするなだって?そう16.7メートル毎秒だから1秒間では当然16.7m移動する。
1秒で16.7m進む速さだ。
ではこのグラフに戻ろう。
ここで物理学者ならこう考える。
物理学を知っている者はここに線を引きここに線を引く。
まあこんなに上手に点線をかけるのは私ぐらいだが。
(笑い)こうやって1秒間を切り取りここにできる長方形の面積は1×νだと考える。
この長方形の面積が1秒間で移動した距離なのだ。
これがνだ。
こちらでも同じ事が言える。
この間が1秒。
この中の面積を考えるとこれがνだ。
こちらが1。
すると1秒後速さはνメートル毎秒になる。
1秒で移動する距離はνmだ。
このように物理ではこの部分の面積を計算する事で移動した距離を簡単に求める事ができるのだ。
では落下運動のグラフに移ろう。
物体が速さνのままg×tの一定の値で落ち続けているとしよう。
その場合はこの長方形の面積を計算すればよい。
これは「gt×t」だからg×tの2乗になる。
しかしだ。
落下運動の場合は速さは一定ではなくどんどん加速している。
速さを表すこの線で区切られてできるのは直角三角形で面積は長方形の半分だ。
だから落下距離は1/2gtとなる。
さあこれで新しい公式ができた。
この物体が移動する距離だ。
自由落下する物体の場合落下距離は1/2gtになる。
一つ例題を出そう。
物を1秒間落とした時の落下距離を求めてみよう。
1秒ではtの2乗は1。
gは9.8。
だから1秒では4.9m落下する事になる。
4.9m落ちるというわけだ。
では2秒間落下させたらどうだろうか。
tの2乗は4だ。
だから距離は4倍になる。
tの2乗だからだ。
つまり落下時間さえ分かれば落下距離は計算で即座に答える事ができるという事が分かったと思う。
落下運動の速さを求める公式を利用して落下距離を求める事ができました。
では次はある高さから物を落とした時地面にどれくらいの速さで衝突するのかを求めます。
では次の問題に進もう。
ここは地面だ。
この地点をBと呼ぶ。
AとBの高低差はhメートルだ。
ではAからBまで落下するのにどれくらいの時間がかかるだろうか?これは簡単だ。
なぜなら移動距離dはhと等しいからだ。
hは1/2gtだ。
だからhが分かればtも分かる。
あるいはtが分かればhが分かるという事になる。
hからtを求める方法はこうだ。
ややこしい計算になってしまうがこの時tは2hをgで割ったルートになる。
もし計算が分からなくても受け入れてくれ。
とにかくこのような結果になる。
ここで簡単な例を考えてみよう。
hを100mとしよう。
高さ100mだ。
公式を使ってそこからtを求めてみよう。
200を9.8で割りルートを外すとtは4.518秒だ。
計算するのに電卓を使ってもかまわない。
私も使った。
これで物が地面に衝突するまでにかかる時間が分かった。
そしてこの公式を使えば衝突する速さも求める事ができる。
地面に達する時の速さはこの公式を利用すればおよそ44.27メートル毎秒である事が分かる。
これで地面に達するまでの時間とその時の速さが分かった。
つまり高い塔の上から飛び降りた場合空気抵抗の影響を無視すれば君は地面に時速160kmで突っ込む計算になる。
地上100mの高さであればその速さになる。
ここで私が落とす物体の質量Mを1kgとしよう。
すると前回やったようにA地点とB地点の間の位置エネルギーの差を計算する事ができる。
これが地面だ。
ここでの位置エネルギーをゼロとする。
するとAの位置エネルギーは「Mgh」になると説明した。
Aの位置エネルギーからBの位置エネルギーを引くと「M×g×h」になる。
だからMが1kgでgが9.8でhが100mである時位置エネルギーは「980J」だ。
これがA地点での位置エネルギーだ。
これまで繰り返し登場してきた重力加速度g。
これは本当に9.8メートル毎秒毎秒なのか。
ルーウィン教授が実験で確かめます。
これからちょっと手の込んだ実験をお見せしたい。
地球での重力加速度をこの場で測定してみようじゃないか。
知ってのとおり世界の中心はここMITだ。
(笑い)だからここで地球での重力加速度を測るのは至極まっとうな事だと言えよう。
(笑い)ではどうするか。
この公式を使って実験を行えばよい。
これを重力加速度gを解とする式に書き換えると…という事は落下の高低差が分かればよい。
実験に使うスタンドを測定した結果…誤差について私たちは2mmほど考えればいいだろう。
だからhはこの値になる。
あとは物体が落下するのにかかる時間さえ測定できればgは公式から求める事ができる。
助手のビルにこれからそこの一番上にボールを取り付けてもらう。
そこからボールを落とすわけだ。
落下の先床にはストップウオッチのスイッチが置いてある。
ボールを離した瞬間測定が自動的にスタートする。
見やすくするために教室をちょっと暗くしよう。
こうして落下にかかる時間を計る事ができる。
ボールが床のスイッチに達した瞬間にストップウオッチが止まるからだ。
そうすればあとはこの公式がgを導き出してくれるというわけだ。
どうだ。
この歴史的な瞬間に皆が注目しているぞ。
大丈夫か?ビル。
手が震えてないか?誤差が出やすい実験だから慎重に。
ではこれで準備完了だ。
あとはひもを引けばボールが落ちてくる。
じゃあやってみよう。
7795。
0.7795だな。
本当か?もう一回見せてくれ。
(笑い)うんむしろよくなった。
(笑い)7799だな。
では計算してみよう。
緊張する瞬間だ。
2hが6tは0.7799。
計算の結果gは9.86だ。
誤差はプラスマイナス0.05メートル毎秒毎秒だ。
これらの結果何が言えるか。
地球での重力加速度gは9.80に近い値であるとしてきたが今回の測定結果でおおむねそれが確認できたと言っていいだろう。
さて月で羽根とハンマーを同時に落とす実験を前回見たのを覚えているだろうか?「ここで今から皆さんのために実験してみます。
これはハヤブサの羽根です。
これをハンマーと同時に落とします。
ガリレオが正しければ2つは同時に地面につくはずです」。
「ほらすごいでしょう」。
同じ高さから物を落とせば質量にかかわらず同時に地面につくというガリレオの説を証明したわけだ。
空気抵抗のない場所でないと難しいので月で試みたわけだ。
月での重力加速度は地球での重力加速度のだ。
ではこの質問に答えられるだろうか。
もし同じ高さから物を落としたら地球上と比べて…答えを求めるにはこの式を使う。
月での重力加速度gは地球のなのだから…。
「そうか分かった。
落下時間は地球の6倍かかる」。
そう思った君は残念ながら数学が苦手なようだ。
それではこのルートを見落としている事になる。
正解は6倍ではなく「ルート6倍」だ。
つまりおよそ2.5倍になるという計算だ。
月面での映像も注意深く見ると大体それくらいの速さでゆっくり落ちているように見えるだろう。
地球上よりもおよそ2.5倍の時間をかけて落下する事がこれで計算できた。
というわけでこの公式が地球だろうが月だろうが当てはまる事が分かったと思う。
続いては物理学で最も重要な法則「エネルギー保存の法則」です。
落下する物体を例にこの法則の驚くべき本質を明らかにします。
ある物体が100m落下する。
その時のAとBの位置エネルギーの差は980Jだ。
落下につれて物体は加速しどんどんどんどん速くなる。
さあどんどん速くなるのが分かるね。
そしてB地点に衝突する。
この時には随分速くなっている。
物理学では速さはエネルギーに関係がある。
これは動きのエネルギーだが物理ではこれに名前を付けた。
そしてこの運動エネルギーは…ある速さで移動する物体は運動エネルギーを持っている。
速さがゼロなら運動エネルギーもゼロだ。
1kgの物体があったとする。
1/2に「質量M」の1を掛ける。
さっき計算したとおりB地点に到達した時の速さはこれだが運動エネルギーを計算する時には速さは2乗しなくてはいけない。
そうしてこの式で物体がB地点に達した時の運動エネルギーを求める事ができる。
さあ答えは何になると思う?計算機があればすぐ分かるが答えは979.9Jだ。
なんたる偶然!これは衝撃だ!A地点で位置エネルギーとして存在していたエネルギー量がB地点では運動エネルギーに転換されている。
そしてこれこそが物理学で最も神聖なる掟…A地点での位置エネルギーはB地点での運動エネルギーと等しくなる。
もっときちんとした形で書くと…物体がAにある時には運動エネルギーはゼロだ。
最初は速さがゼロだからだ。
これはゼロだ。
また物体がBにある時位置エネルギーはゼロだ。
位置エネルギーはAにあった時が最大だ。
だからこれはゼロだ。
エネルギー保存の法則は実に一貫している。
例えば落下する途中の点「P」をランダムに決めたとしても同じ事だ。
Pでの位置エネルギーと運動エネルギーの合計はA地点の値ともB地点の値とも等しい。
これがエネルギー保存の法則の最も基本的な考え方だ。
先ほどの奇跡の一致に戻ろう。
位置エネルギー「Mgh」が運動エネルギー「1/2Mν・」に等しくなるという驚くべき一致だ。
高低差「h」が100m。
質量は1kg。
これがAでの位置エネルギーだ。
これはBでの運動エネルギーだ。
だからこれはイコールで結ばれる。
すると更に奇跡が起こる。
なんとこのMとこのMが相殺できるのだ。
…となるとこれは地球を揺るがすような大事件だ。
速さ「ν」を計算で求めると「ルート2gh」に等しくなる。
方程式の中の2を左側に持ってきて計算する事でνは「ルート2gh」になる。
これが新たな公式だ。
これで落下する高さが分かれば速さが即座に求められるというわけだ。
すごい事だと思わないか?では高低差「h」に100mを入れて計算すると速さ「ν」はいくつになるだろうか?どうした?MITの学生なんだろ?そのとおり!44.27メートル毎秒だ。
これはさっき別の求め方で出した数字だ。
家に帰ったらもう一度計算して44.27になる事を確認してほしい。
この公式は実に美しい。
ガリレオを思い出させる。
彼は「物体の質量は関係ない」と言った。
そしてこの公式も「そのとおり関係ない」と証明してくれている。
この式には質量「M」は含まれていない。
落下の高低差「h」を知るだけで速さ「ν」が分かる。
どんな物体でも同じだ。
この公式は全ての本質を見抜いている。
これまでの話をまとめよう。
これで自由落下運動について君たちはほとんどの事を理解したはずだ。
まず物体は質量に関係なく同じように落下する事が分かった。
そしてどの時点の速さも計算で求める事ができる。
物体の落下距離も計算で求める事ができる。
どの地点での位置エネルギーも計算できる。
同じようにどの時点での運動エネルギーも計算する事ができる。
こうして毎日24時間私たちはエネルギー保存の法則に支配されている事が理解できたはずだ。
これで自由落下運動についてほとんどの法則を私たちは知る事ができました。
では実際に落下するボールを詳しく観察するとどのように見えるのか実験します。
さてこれは何だと思う?これは白いボールだ。
このボールをあの実験スタンドに取り付ける。
床から3.2mの高さの所だ。
そして実験スタンドの上からボールを離して自由落下させる。
落下の際には教室を完全に暗くする。
そしてストロボが光った時だけ見えるようにする。
ストロボが点滅する時間の間隔つまり光が点滅する速さは一定に保ってある。
だから最初に光った時ボールがほんの少し落下したのが見えるはずだ。
2回目に光った時はもう少し落ちている。
3回目は更にもっと落下している。
これからそのような実験を見てもらうがストロボが点滅する間に何回ボールが照らし出され見る事ができたか数えてもらいたい。
あらかじめ断っておくがこの実験にはおよそ0.8秒しかかからない。
なぜならスタンドの高さがおよそ3mなので公式に当てはめればtはほんの0.8秒である事が分かるはずだ。
だから実験は一瞬にして終わってしまう。
その短い間にストロボで照らされたボールを何度見る事ができるか数えてほしい。
というわけで私とビルは実験の準備に取りかかろう。
まずビルにきれいな黒い布をつるしてもらう。
その調子だ。
あとちょっと…。
完璧だ。
ではビルにはカメラの準備をお願いしよう。
ストロボのスイッチも入れてもらう。
そして私はスタンドの上にボールを取り付ける重大任務に取りかかろう。
ビルカメラの準備をしてくれ。
これでよしっと。
実はビルと私はタイミングを合わせるための非常に高度なやり方を特訓してきた。
とてもハイテクな方法だ。
ボールが落下する0.8秒の間カメラのシャッターを開いたままにする必要があるからだ。
もしシャッターを開くタイミングを間違えばボールは写真に写らない。
そこで私たちはすばらしい技術を開発した。
まず私が4秒間を数える。
1234。
この「3」で私はボールを落とし「2」と「3」の間でビルはカメラのシャッターを開く。
そして「4」でビルはすかさずシャッターを閉じる。
どうだ?これ以上のハイテクは無いだろう?1234。
1234。
ビル準備はいいか?
(ビル)はい始めて下さい。
1234。
さあどうだ。
一体何個ボールが見えただろうか。
この中で「5個以上見えた」という人はいるかな?1人だけだね。
君は何個見えた?7か8か。
では5個より少なかった人は?あなたはいくつ見えました?3?じゃあ一つも見えなくて悔しかった人は?ではもうすぐ写真が出来上がる。
そうしたら分かる。
ボールがいくつ見えたか一目瞭然だ。
さあビルが写真判定を持ってきてくれる。
最初に結果を見る事ができるのは私たちの特権だ。
お〜おおお〜!はっはっはっ!笑いが抑えきれないな。
すばらしい結果だ。
これが先ほど見えた結果だ。
ストロボの周波数は10ヘルツ。
つまり0.1秒ごとに点滅する。
ボールが3m落下するには0.8秒かかる。
という事はボールは7個見えたはずだ。
タイミングが極めて合えば8つだが恐らく7つだ。
最初のこれは数に含めないでおこう。
ボールが落下を始める前である可能性が高いからだ。
するとここから1個2個3456。
悪くない。
よく見たら最初の1個はこの後ろに隠れているようにも見える。
これを含めば7つになる。
全部見えたという人がいたね?今日はツイてるぞ。
(笑い)さてこの実験の一番の目的は君たちにここの間の距離がここよりも短く落下距離がどんどん増えている事を見せる事だ。
予測したとおりの結果が出たと思う。
落下運動の理解を深めたところで次は「移動する乗り物」での場合を考えます。
高速で移動する飛行機や電車の中でジャンプしてもなぜ元の位置にそのまま着地するのか?子供のころ抱いた疑問にルーウィン教授が実験でこたえます。
これまでは「自由落下運動」についてだけ考えてきた。
では次は応用だ。
B地点から物を上に投げる場合はどうなるか。
この時A地点まで届いて一旦止まるようにしたい。
Aで止まるにはBでどれだけの速さを与えればいいのだろうか?この問題でももちろん「エネルギー保存の法則」が重要になる。
B地点での位置エネルギーと運動エネルギーの合計はA地点での位置エネルギーと運動エネルギーの合計に等しくなる。
となると落下する物体がここに達する時の速さが分かれば同じ速さで投げ上げれば再びA地点まで達する事が理解できると思う。
これがエネルギー保存の法則の考え方だ。
これが物理学の美しさだ。
単純明快左右対称にできている。
AからBまで100m落下するのに4.5秒かかるとすればBからAに戻るのにかかる時間も4.5秒だ。
見事に一致する。
このテニスボールで実験をしよう。
このボールを1mの高さに投げて落ちてきたら取る。
上に投げて取る。
これは実に見事な実験だと思わないか?何だ退屈か?
(笑い)この面白さを是非分かってもらいたい。
頂点までおよそ0.5秒かかり落ちるのにも0.5秒。
ではもし同じ事を私が飛行機の中で実験したらどうなるだろうか。
これが私の乗っている飛行機だ。
この飛行機はこちらの方向に一定の速さで進んでいる。
ここに私がいる。
そして私がボールを真上に投げたとしよう。
私はボールを同じように受け取る事ができるだろうか?あるいはボールはこう反論するだろうか。
「悪いけど先生は今時速800kmで進んでいるからとても追いつけない。
あっちで待ってるよ」と。
そして違う場所に落ちる。
しかしこれは変だ。
飛行機に乗っている時私は自分が高速で移動しているなんて思わない。
とても快適な乗り心地で私からすれば全く動いていないように感じる。
だからボールを上に投げたら当然同じように戻ってくるはずだと思う。
大体ボールだって私がそんなすごい速さで移動している事をどうして分かるのだろうか。
ボールにだって分かるはずがない。
もし分かったとすればそれは実はアインシュタインの特殊相対性理論に違反している事にさえなる。
面白い事を教えてあげよう。
君たちは誰も気付いていないだろうが実は今ここにいる全員は超音速の飛行物体に乗って移動している。
この教室にいる全員がおよそ時速10万kmの猛スピードで移動しているんだ。
なぜならそれが地球が太陽の周りを回っている速さだからだ。
しかし私がさっきボールを上に投げた時実は時速10万kmで移動している事には誰も気付く事ができなかった。
つまりこういう事だ。
ボールを投げるだけの事でも改めて考えると退屈どころかとても驚くべき実験なのだ。
いずれにせよ自分の目で見て体験する事が重要だ。
だから違うやり方でも実験してみせよう。
君たちも物理学の虜になるはずだ。
これは車に見えるかもしれないが…違う。
飛行機だ。
(笑い)そして私はこの飛行機に乗っている。
小さなウォルター・ルーウィンがこの中にいる。
そして私は飛行機の中でボールを上に投げ何が起こるか実験しようとしている。
さあまだ飛行機は動いていない。
他の乗客がまだ搭乗中だからだ。
(笑い)でも私は既に席に座っている。
そして私はボールを上に投げる準備をしている。
投げたらどうなるかは簡単に予想できる。
この教室でやるのと同じ事だ。
飛行機はまだ動いていない。
私はこの中にいてボールはこの動きをする。
よく見ていてほしい。
前ほどは退屈には感じないはずだ。
さて間もなく飛行機は離陸する。
時速800kmで飛び続ける。
そして私は自分の席でシートベルトを締めてボールを上に投げる。
もし正確に真上にボールを投げる事ができたらボールは私の頭上にあるのが見えるはずだ。
そして私はまっすぐ落ちてくるボールを元の位置で受け取る。
移動する飛行機の中で私からはボールの動きはそのように見えるだろう。
しかし君たちは違う。
君たちはチケットを持っていないから私と一緒に飛行機に乗る事はできない。
だから君たちは全く違う光景を目撃する事になる。
君たちには飛行機自体が動くのが見える。
そして私がボールを投げて受け取るという動作は飛行機の外からだと面白い見え方をするだろう。
君たちに見せたいのはそれだ。
きっと驚いてくれるはずだ。
では始めるとしよう。
飛行機は離陸後時速800kmで飛び続ける。
そしてこの地点を過ぎたら私は飛行機の中でボールを上に投げる。
飛行機は飛び続ける。
その時君たちはそこからどう見えたかを教えてほしい。
飛行機が動いているのは当然見えるはずだ。
しかしボールの動きに注目して見ていてほしい。
この実験にはコツが要る。
いいだろう。
大丈夫なようだ。
それでは準備はいいかな?123。
乗り物内では上下にしか動いていないように見えるボールも乗り物の外から見ると放物線を描いて飛んでいました。
ボールは乗り物と一緒に水平にも移動していたのです。
電車でジャンプした時私たちもこのボールのような水平の動きをしていたんですね。
(拍手)この実験の結果一定の速度で移動している私とボールには同じように物理の法則が成り立っている事が分かったと思う。
速度がゼロの場合でもとんでもない速さたとえ時速10万kmの猛スピードでも何ら違いはない。
どうだとても好奇心を刺激すると思わないか。
いよいよ今日最後の実験です。
これまでの落下運動の知識を駆使してルーウィン教授は落ちてくる猿に見事弾を当てる事ができるのでしょうか?さて次に進もう。
一定の速さで動いているもの同士ではなく「加速する物体」の場合を考えてみたい。
これは地面これが木でこの木のてっぺんに動物がいる。
猿だ。
名前も付いていて「ロバート」という猿だ。
そしてここには冷酷なハンターが猿を撃とうと銃を構えている。
銃は猿に狙いを定め初速度νで銃弾を発射しようとしている。
ハンターが銃を撃った瞬間に猿のロバートは慌てて木から手を離した。
つまり下に落ちて逃げようとしたわけだ。
重力を無視した場合銃弾がたどる軌道はこのような直線になる。
これを「重力ゼロの軌道」と呼ぶ事にしよう。
しかし実際には重力が存在する。
だからロバートと銃弾は同じように重力の影響を受けて下に向かって加速運動を始める。
ロバートが距離Dだけ落下すると銃弾も同じ距離だけ落下する事になる。
だからロバートがここにいて落下した距離がこれだけの場合は銃弾も同じ距離だけこの線より下に落ちているはずだ。
だから銃弾はこの点線上のどこかこの線と平行の位置にあるはずだ。
銃弾がここにある場合ここの距離もDだ。
もしロバートが40cm落下していれば銃弾も40cmこの線から下にあるはずだ。
距離Dは常に2つとも同じだ。
もう何度も見てきた公式…だからロバートの目からは銃弾が常に同じ方向からまっすぐに自分目がけてやって来るのが見えるはずだ。
それは銃弾の速さに関係なくそうなる。
では銃弾の軌道をグラフに描いてみよう。
これが銃弾の軌道だ。
このように放物線を描く。
ここに2本の平行な線を描く。
これに対して平行な線だ。
この線はランダムにどこにかいても同じ事だ。
さあここからが大事だ。
銃を発砲した瞬間銃弾はここにありロバートはここにいる。
ちょっと時間がたつとロバートはここ。
これだけの距離を落下している。
すると銃弾はここになければならない。
これは同じ距離だからだ。
更に少し時間がたつと猿はここにいて銃弾はここにある。
ロバートはこれだけ落下して銃弾も全く同じ距離落ちるはずだ。
すると結果は明白だ。
ロバートがここに来た時銃弾は全く同じ瞬間に到達する。
だからロバートは撃たれてしまう。
ロバートにとっては残念なお知らせだが銃弾の速さが何であろうと結局は当たってしまう。
もし銃弾の初速度が大きければロバートはこの辺りで撃たれる。
銃弾の初速度が小さければこの辺りで撃たれる事になる。
ただもし銃弾の速さが非常に遅ければロバートは命拾いするかもしれない。
銃弾がロバートに届かないかもしれないからだ。
銃弾が発射された時にロバートが手を離しさえしなければ弾がとんでもなく高速でないかぎりは撃たれずに済んだはずだ。
しかし皮肉にも発砲と同時に手を離してしまうと悲劇となるわけだ。
では以上の事を実演したいと思う。
しかしこれはとてもつらい実験だ。
実はロバートとは昔からの仲間だ。
MITにやって来た時私はロバートに防弾チョッキを買ってあげた。
他の教授たちにそんな優しさはない。
しかしやはり実験はやらねばならない。
ロバートを呼んでくる。
ちょっと待っていてくれ。
これは彼にとってとても覚悟の要る事だから敬意を持って迎えてくれ。
(笑い)皆さんロバートだ。
(笑い)
(拍手)私はハンティングの趣味はないがどうせやるなら格好から入らなくちゃな。
(笑い)ではロバート君をこの上に置こう。
スイッチの準備はいいかな?こうやってロバートにはここにぶら下がってもらう。
おっおう…。
なんだこの実験は嫌いか?
(笑い)さて気付いたかもしれないがビルがさっきから入念に銃をロバート目がけてまっすぐに狙っている。
ロバート君には本当にすまないと思っている。
でも防弾チョッキがきっと守ってくれる。
さて銃の準備をしよう。
弾丸を込めて。
321お別れだ。
(拍手)ではまた次回会おう。
(拍手)2014/02/14(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
白熱教室海外版アンコール MIT白熱教室 第2回 [二][字]
MITの名物教授・ウォルター・ルーウィン教授の物理の講義が登場!高速で移動する電車の中でジャンプしてもなぜ元の位置に着地するのか?奇想天外の実験で疑問に答える。
詳細情報
番組内容
MITの名物教授・ウォルター・ルーウィン教授の物理の講義が登場! 子どもの頃、誰もが抱いた疑問「高速で移動する乗り物の中でジャンプしても、なぜずれることなく、元の位置にそのまま着地できるのか?」。ルーウィン教授が、その疑問にあっと驚く実験で答える。さらには、木から落下する猿を銃で正確に撃つには、どこを狙えば良いのか? 重力加速度の仕組みを解き明かすため、サファリ服に身を包み、抱腹絶倒の実証をする。
出演者
【出演】マサチューセッツ工科大学教授…ウォルター・ルーウィン
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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英語
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