僕たちが通うアメリカマサチューセッツ工科大学。
通称MIT。
世界最高峰の理系の大学として知られこれまでデジタル暗号や遺伝子工学など新しいテクノロジーを次々に世に送り出してきました。
科学を学ぶ最先端の環境に身を置き僕たちは日夜世界を変えるイノベーションに挑んでいます。
このMITで46年にわたって物理学の基礎を教えるのが…この講義を受け世界の見方が変わったと学生たちは言います。
この世界を支配する物理の美しさを知るのです。
難しい法則や公式もルーウィン教授の手にかかれば奇想天外抱腹絶倒のエンターテインメントに生まれ変わります。
ルーウィン教授は今回番組のために全8回の特別講義を新たに用意しました。
MITの学生だけでなく地元の市民にも開放し初心者にも分かりやすく物理学の魅力を伝えます。
この講義で物理を学べば世界がこれまでと全く違って見えてくるはずだ。
それは人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
これまでは疑問にも思わなかった事を君たちは物理学の問題として考えるようになる。
今回のテーマは2つです。
まずは前回に引き続き電気の性質をいくつもの不思議な実験で探ります。
そして後半は空の色の秘密です。
教室に人工の青空や白い雲更には夕日を作り出しなぜ空の色が変わるのかを物理学で解き明かします。
(拍手)全ての電化製品では動かすために必要な電圧と電流が決められている。
例えば君のラジオが9Vの電池に対応したものなら1.5Vの電池では動かない。
更にもしそのラジオを110Vのコンセントにつなげたらラジオは粉々に吹っ飛んでしまうだろう。
それぞれの電化製品には適切な電圧と電流を用いる必要がある。
電圧を倍にすると通常は電流も倍になる。
もし電圧を半分に下げれば大抵の場合電流も半分になってしまう。
これが電力について知っておくべき非常に重要な考え方だ。
電力の単位はジュール毎秒あるいはワットだ。
そして電力Pは電圧Vと電流Iを掛けたものだ。
電流はIと書く。
では24Wの電球があるとしよう。
実際にここに用意した。
この電球を12Vの自動車のバッテリーにつなげる。
電圧は12Vだ。
電圧はVで表す。
すると電球に必要な電流を計算で求める事ができる。
24を12で割ったものだ。
だから2Aだ。
電流はAで表す。
この電球に12Vのバッテリーをつないで適切な電圧を与えれば適切な電流が流れる。
ほら気持ちよく光る。
しかし私が電圧を下げれば電圧と一緒に電流も減る。
つまり電力が少なくなる。
だから電球はどんどん暗くなる。
本来必要なだけの電力を得られなくなるからだ。
もし私が恐ろしくまぬけでこの電球を110Vの電源につないでしまったら例えばコンセントから直接電気をとってしまったら電圧は12Vから110Vに一気に上がる事になる。
電圧を10倍近くまではね上げてしまう。
電圧が10倍高くなれば電流も10倍になる。
すると電力は100倍ほどにもなってしまう。
もし私がそんな愚かな事をすれば電球は吹っ飛んでしまうだろう。
さて毎度おなじみの質問だ。
見てみたいか?そうだろうと思ったよ。
いいだろう。
準備はいいかな?110Vだ。
ほら予測どおりの結果だ。
(笑い)では質問だ。
高い電圧は危険なのだろうか。
多くの人がそうだと思っている。
でも必ずしもそうではない。
問題は電圧の大きさではなく電流の大きさだ。
電流が大きく流れる時間が長いほど致命的になる。
例えばくしで髪をとかす場合を考えてみよう。
静電気で髪はあっという間に3万Vの電圧に達するが問題はない。
バチッという音が聞こえるが危なくはない。
明かりを消して暗くすれば火花だって見えるかもしれない。
しかし電圧が3万Vでも電流はとても小さいから体に危害を与えない。
一つ面白い実験を教えよう。
ナイロン製の下着を身につけてそれから鏡の前に立ってほしい。
部屋を完全に暗くしてからその下着を勢いよく脱ぐんだ。
すると発生した静電気のせいで火花が飛ぶのが見えるはずだ。
静電気は3万V以上に達する。
バチッと音がして光るだろう。
でも真っ暗にして鏡の前でやらないと光は見えない。
そしてもっと楽しみたい人は友達も呼んで一緒にやるべきだ。
(笑い)足を地面にこすって歩いた場合も同じだ。
特に冬がいい。
じゅうたんに足をこすって歩いて金属のドアノブをつかむとどうなるか。
君はかなりの電気ショックを受けるはずだ。
5万V〜6万Vに達している可能性もある。
しかしやはり電流は小さいので危険ではない。
ではみんなに面白い実験装置を紹介しよう。
あそこにある。
かの有名な物理学者ケルビンが発明したケルビン発電機だ。
19世紀の発明品だ。
上のタンクには水が入れてある。
ごく普通の水だ。
水はここから流れて反対側からも流れる。
赤く描かれている部分は全て金属製だ。
これが重要だ。
これは金属の筒で水が中を通る事ができる。
水はこの筒を通って下にある金属のバケツにたまる。
この筒はこのバケツと導線でつながれている。
そしてこちらの筒は導線でこちらのバケツとつながっている。
この2つの線は接触してはいけない。
たとえ絶縁してあっても近くには置かない方がいい。
これからこの装置と水だけを使って3万V〜6万Vの電圧を作ってみせよう。
もし導線同士が近すぎるとその間を火花が飛ぶ事になりそれでは困る。
実験の目的はこの鉄球から火花を飛ばす事だ。
さあ試してみよう。
あそこに水を用意してある。
金属製の筒も2つある。
バケツも2つ準備した。
先ほど説明したとおりに導線がつながれている。
そしてここに2本の金属の棒があり先端にはそれぞれ鉄球がついている。
それでは水を流して実験を始めるとしよう。
火花が飛び始めたら教室を暗くする。
2万3万4万Vと上がっていくまでには少し時間がかかる。
空気中の湿気が邪魔をするからだ。
だから湿度をなるべく低く抑えるためこの教室のエアコンは今朝6時からつけたままにした。
火花が1cm飛べばざっと3万Vだと思っていい。
2cmではおよそ6万V。
今日は1cmくらい飛ばせると思うが5〜6mmなら確実だ。
それでもざっと2万Vだ。
では水を流し実験を始めよう。
さああとは少し待とう。
ケルビン発電機は水滴が落下していく度にプラスマイナスの電荷が蓄えられていく不思議な装置です。
その原理はこうです。
プラスマイナスどちらかにあらかじめ帯電させた金属の筒を通る事で水滴は筒とは逆の電荷を帯びます。
例えば筒Aがマイナスなら水滴はプラスの電荷を帯びて落ちます。
この水滴が落ちる度にバケツAはどんどんプラスに帯電します。
するとバケツAと導線でつながった筒Bもプラスに帯電します。
筒Bを通った水滴はAとは逆にマイナスに帯電しバケツBにたまっていきます。
こうしてバケツAとBに蓄えられる電気は加速度的にどんどん増えていくという仕組みです。
2つの鉄球の距離は今およそ6mmだ。
もうしばらくの辛抱だ。
よ〜しうまくいってるぞ。
そうだいいぞ。
今火花が見えたぞ。
見えただろう?さあもっと見えるぞ。
火花だ。
まだまだ出るぞ。
ほら。
一つ面白い事を教えよう。
前回アルミのクリスマス飾りを帯電させた時どんどん広がったのを覚えているだろうか。
実はこの水も同じだ。
水がこの筒を通って帯電すると水滴が広がっていくんだ。
アルミの飾りと同じ現象が見られる。
水の流れがどんどん広がっていく。
そしてある程度広がった時火花が発生する。
すると水の流れは元に戻る。
その違いを音で聞く事もできる。
音の変化が聞こえるかやってみよう。
(水が流れる音)さあ水の流れは見えるね。
そして水がどんどん広がっていく。
そして火花だ。
火花のあと音が変わったのが分かっただろうか。
(水が流れる音)ほら。
最初は水が普通に落ちる音が聞こえるが水が広がるにつれ音がやわらかくなる。
そして火花が出る。
では火花に話を戻そう。
鉄球の間隔をもう少し空けてみよう。
もう3万Vにかなり近いはずだ。
およそ1cm離した。
分かっただろうか。
これは本当に不思議な装置だと思わないか?この私の講義をインターネットで見た子供たちがたくさんのメールを送ってくれる。
子供たちは「これで世界のエネルギー問題も解決ですね」と言ってくれるんだ。
この装置の発電量は全く取るに足りないものだ。
巨大な滝を利用して発電すればこの1万倍くらいの発電もできるが残念ながらこの装置で世界のエネルギー問題を解決する事はできない。
とは言えとてもすばらしい実験装置だ。
MITでは実際に自分で組み立ててみる学生もいる。
是非おすすめしたい。
これまで電圧と電流電気の正体についていろいろと探ってきましたが仕上げにルーウィン教授が取って置きの装置を使った実験を披露します。
この世で最もすばらしい起電機を発明したのはロバート・ヴァン・デ・グラフ教授だ。
彼はプリンストン大学の教授だった1929年にこの装置を発明した。
最初は50万Vのものを作った。
それから1931年にMITに移りここで150万Vまで発生できるものを作った。
MITにはいくつかの起電機がある。
ここにあるのは10万V以上まで出せるものだ。
まず見てもらいたいのはこの装置を使えばさっきの3万Vのケルビン発電機よりも火花を長い距離飛ばす事ができる事だ。
覚えているだろうか。
大体1cmで3万Vだ。
では始めよう。
火花が先ほどよりも遠くまで飛んでいるのが分かるだろうか。
大体12万Vだ。
火花が見えるように教室を暗くできるかな。
優に12万Vだ。
バンデグラフ起電機は内部で摩擦によって電気を発生させプラスマイナスの電荷をためていく装置です。
起電機の中にはローラーとベルトがあります。
この2つがこすり合わさって摩擦で静電気が発生します。
すると発生したプラスとマイナスの電荷が大きな金属球と小さな金属球にそれぞれ蓄えられる仕組みになっています。
一定の量を超える電荷がたまると空中放電を起こして火花が飛ぶのです。
ではこのバンデグラフ起電機のてっぺんに紙吹雪を載せてみよう。
ちなみにこの球体はプラスに帯電しているがそれはあまり重要ではない。
では紙吹雪を載せてみよう。
機械のスイッチを入れたらどうなるだろうか。
誰か予測できる人は?どうした?恥ずかしがらないで。
前回くしを使って説明したのを覚えているだろう?くしは12万Vではなかったが原理は同じだ。
さあ分かった人は答えてくれ。
こんなふうになるって?この金属球はプラスに帯電している。
紙吹雪はそれに触れているからすぐにプラスに帯電する。
プラスに帯電しているもの同士は反発し合う。
だから吹き飛ぶはずだ。
でもいくつかの紙はくっついたままかもしれない。
それも前回の実験と同じだ。
紙吹雪のほとんどはくしに触れた途端にすぐに反発したが中にはくっついたままのものもあった。
しかし今日は全部吹き飛んでしまう可能性が高い。
あまり感動的ではなくてすまない。
一瞬でなくなってしまった。
それならば極めて危険だが別のやり方に挑戦しよう。
その前にまず今の紙吹雪を片づけよう。
これから12万Vの電圧を私の体にかけてみよう。
それほどの高電圧をかけるとどうなるか例のアルミの飾りを手に持つとしよう。
きっと驚くほど広がるのが見えるはずだ。
まずはそれからだ。
いいだろうか。
こうした実験はどれも危険だ。
ちゃんと分かってる人以外は決してまねしないように。
OK。
まずは放電だ。
いいだろう。
離して。
今私の手は装置の上だ。
スイッチを入れてくれ。
これで私は今およそ12万Vだ。
放電してくれ。
では先ほど見せた実験を私の手を使ってやってみよう。
紙吹雪を手に載せるとどうなると思う?答えは分かるね。
私は12万Vを帯びている。
この装置と同じだ。
という事は紙吹雪は…。
では手に載せてくれ。
しまった右手の方がよかったな。
そこにもう紙吹雪は残っていないね。
では放電だ。
よしそうだ。
さあ始めて。
1つだけ残ったかな。
(笑い)では放電。
(笑い)アルミの飾りは帯電すると広がった。
それぞれが反発し合ったからだ。
水も高い電圧を帯びると広がって落ちた。
もし髪が長ければ…あいにく私では駄目だがきれいな長い髪も同じように広がる。
ではそれもお見せしよう。
このままでは駄目なんだ。
(拍手)では放電してくれ。
スイッチを入れてくれ。
(笑い)
(笑い)これが私の正体だ。
マッド・サイエンティストだ。
(拍手)では女性のお手伝いを募集したい。
条件としてはまず第一にこれぐらいの髪の長さがある事。
第二に今朝ちゃんと髪を洗ってきた事。
第三に整髪料は一切つけていない事。
自然のままの髪だ。
この条件を満たす人はいないかな?是非前に出てきてほしい。
自前の髪の毛でやってくれる人。
どうした?いつもはすぐに誰かがボランティアになってくれる。
誰もいないのか?さては全員頭を洗ってないんだな。
ああよかった。
君は勇気がある。
(拍手)すばらしい。
名前は?カルメンです。
では私の手をしっかり握って。
で一緒に来て。
これからは私の指示に忠実に従ってもらう。
もし指示どおりやらなかったらどうなっても私は知らない。
(笑い)では椅子の上に立って。
靴はどうしますか?靴は大丈夫だ。
そのまま立って。
分かりました。
うまくバランスをとって。
はい。
これで君は完璧に絶縁されている。
分厚いプラスチックが床との間にある。
電気を逃がしたくないからね。
ではこの上に手をのせてくれないか。
指輪は?大丈夫。
指輪は問題ない。
でも結婚生活が終わっても私に責任はないからね。
では手を装置にのせて。
まだ電気は帯びていない。
ではスイッチを入れる。
はい。
頭を少し振って。
ほらいいぞ。
もうちょっと振って。
おお…もうちょっと。
本当に美しくなった。
(拍手)本当にきれいだ。
じゃあ手を離して。
Takemyhand.君はまだ帯電したままだった。
だから今電気ショックが起きた。
科学のためには必要な事だ。
どうぞ降りて。
あるいは恋の火花だったのだろうか。
どうもありがとう。
(拍手)ではこれから非常に危険な実験をする。
さっきは10万Vの電圧まで帯電したが体を電流が流れないようにするぐらいの分別はあった。
でも覚悟を決めようと思う。
私はこれで実験をしてみせよう。
私の手と蛍光管は絶縁されている。
これが絶縁体だからだ。
ここを持てば電流が私の体を通って流れる事はない。
だから私がこれを起電機に近づけても何も怖くはない。
しかし私がここに触れた瞬間電流の回路が成立する。
蛍光管から私の体を通って地面にだ。
もちろんここに触った時にだけ電流が流れる。
いつ電気が流れたかは見てればすぐに分かる。
その時には光と同時に君たちには何かが聞こえるはずだ。
ではスイッチは自分で入れられるな。
よし。
そして教室は暗くしなければならない。
(ルーウィン教授の叫び声)
(ルーウィン教授の叫び声)あと1回だけだぞ。
OK。
どうもありがとう。
(拍手)ここからは新しいテーマです。
子供の頃「空はなぜ青いのか」と一度は不思議に思った事はありませんか?ルーウィン教授がその疑問に答え空の色の秘密を解き明かします。
空はなぜ青いのか雲はなぜ白いのかそして夕焼けはなぜ赤いのか。
太陽の光はいくつもの色で構成されている。
例えば虹というのはその光がさまざまな色に分解されて見えるものだ。
太陽の光が通る大気には極めて小さな0.1ミクロンよりも微細な粒子が漂っている。
1ミクロンは1mの100万分の1だ。
0.1ミクロンはその10倍小さい。
しかし大気中の粒子は更に小さいという事だ。
太陽の光はこうした小さな粒子に当たって飛び散り散乱する。
太陽光の中でも青い光は赤い光の5倍も散乱しやすい。
この現象をレイリー散乱と呼ぶ。
大気中にある極めて小さな粒子に光がぶつかって起こる現象だ。
これから図を描いて説明しよう。
君がここに立っているとする。
ここは大気だ。
そして太陽はそこだ。
太陽はとても遠くにあるので光はこのようにやって来る。
君は空を見ている。
すると何が見えるだろうか。
散乱された光だ。
それは何色の光だろうか?青だ。
なぜなら青は他のどの色よりも散乱されるからだ。
だからこの方角を見れば青だ。
ここを見ても青が支配的だ。
こっちを見ても青が支配的だ。
ここを見ても青だ。
太陽をまっすぐ見ないかぎりほとんどどこでも空は青く見える。
すると次の疑問だ。
じゃあ雲はなぜ白いのか。
その答えはこうだ。
雲は小さな水滴の粒子で出来ている。
水滴は5ミクロンかそれ以上だ。
3/3ミクロンより小さな水滴の粒子はない。
そして粒子がそれくらい大きいとレイリー散乱は起こらないのだ。
青い光だけが散乱される事はなく太陽光に含まれる全ての色の光が同じように散乱される。
太陽光の全ての色が混ざった時人間の目には白く見える。
それが色の原理だ。
だから雲は白く見えるのだ。
これが雲で太陽光が当たる。
小さな水滴が全ての色の光を散乱させ白く見せる。
天気が悪い時に空を見上げると雲が白ではなくて黒っぽく見える事があるだろう。
そういう暗い空を見た事があると思う。
暗く見える理由は雲が厚くなりすぎたからだ。
雲は光を吸収する。
だから雲が厚くなり過ぎると太陽光が吸収され雲の下の方が黒っぽく見える。
しかし地上からは黒く見える雲も飛行機で雲の上から眺めれば白く見える。
このように大きな粒子によって色の違いに関係なく光が散乱する場合はミー散乱と呼ぶ。
ではこれを実験で見せよう。
使うのはたばこの煙だ。
ここにある照明装置はまっすぐ上に光を照らす。
今スイッチを入れた。
これから教室を暗くする。
上に向かうあの光だけをつけておく。
しかし君たちにはその光は見えない。
なぜなら光は向きをこちらからこちらへと変えた時にしか見えないからだ。
そうしないかぎり目が光を捉える事はできない。
では私が光の向きを変えよう。
ここにたばこの煙を入れるんだ。
たばこの煙の中には0.1ミクロンよりも小さな粒子がたくさんある。
だから君たちの目にはレイリー散乱によって青い光が届くはずだ。
ところが0.1ミクロンより大きな粒子も含まれているため残念だが白い光も同時に見えてしまう。
しかし全体としての印象はたばこの煙で散乱した光は君たちの目には青っぽく見えるはずだ。
それを今から試してみよう。
ではたばこを用意しよう。
しかしこの実験は本当に嫌いだ。
我ながらひどい実験だ。
(笑い)まあいつも言うように科学のための犠牲は必要だ。
我慢しよう。
よ〜し暗くしてくれ。
さあみんな優しい気持ちで見てほしい。
青っぽく見えるように努力してくれ。
でも正直に答えてくれてかまわない。
どうだ?「青く見える」と賛成してくれる人はどれぐらいいるかな?
(賛成の人たち)Yeah!分かった。
では賛成しない人はノーと言ってくれ。
(賛成しない人たち)No!賛成多数だな。
ではノーと答えた人たちにも納得してもらえるように次の実験を見せよう。
これからたばこの煙を肺に吸い込む。
私の肺の中には水蒸気がたくさんある。
だから煙の微細な粒子は水蒸気とくっついて水滴になる。
煙の粒子は以前は0.1ミクロンよりも小さく青い光を散乱させたがそれが0.1ミクロンを優に超える大きさになる。
私がその煙を吐き出すと煙は白く見えるはずだ。
なぜならもはや最初の微細な粒子ではなくなっているからだ。
肺の中で1分ほどためてから吐き出すと煙は白くなる。
その違いを君たちに見てもらいたい。
比較しやすいように吸い込む前の最初の状態の煙を一度見せよう。
それから煙を吸って肺にためてから吐く。
私のレパートリーの中でもこの実験が一番苦痛だ。
(拍手)色の違いが分かっただろ?納得してもらえただろうか。
確かに最初の煙は空の青さほどには青くはないがそれでもやはり青っぽいと言えるだろう。
こうしたレイリー散乱の他の例をスライドでお見せしよう。
最初はこれだ。
これは「プレアデス星団」と呼ばれるものだ。
この星たちは非常に高温だ。
太陽よりも熱い。
星自体が澄んだ白い光を放っているがとても細かいちりに囲まれている。
だから星からの光が散乱している。
散乱された光が青いのがとてもはっきりと見える。
では次の写真だ。
月面を人が歩いている。
月には大気が存在しないので月の空は青くない。
月面を歩く宇宙飛行士は背中に冷却装置を背負っている。
月の表面はとても熱くなる事があるからだ。
その装置からは細かな水滴が排出される。
月は真空なのでこの水滴は直ちに蒸発して非常に小さな粒子になる。
それは青い光を散乱させるほどの小ささだ。
だからこの宇宙飛行士が空を見上げても空は真っ黒だが冷却装置から出る水滴のおかげで彼の周りには自前の青空が作り出されている。
最初にこれを見た時には感動した。
レイリー散乱が彼だけの青空を作り出したわけだ。
それでは夕焼けはなぜ赤いのだろうか?太陽が空の高い所にある場合は太陽光のおよそ1%が散乱する。
太陽光が頭上のこの方向から来る時だ。
君はここに立っている。
だから通過する大気の量は比較的少ない。
しかし太陽が地平線近く低い角度しかない時には光はこの方向から来てもっと厚い大気の層を通らなければならなくなる。
太陽が地平線の近くにある時光はこの方向からやって来る。
するととんでもない厚みの大気を通過しなければならない。
幾何学的に考えるとそうなる。
大気の厚みがそこまで大きいと太陽光の中の青い光は人間の目に届く前に全て散乱してしまう。
他の色の光も散乱し唯一赤だけが通過する事ができるのだ。
朝焼けの時も夕焼けの時も太陽が赤く見えるのはそういう理由からだ。
もしここに雲があって太陽が地平線に近い所にあれば雲のこちら側は赤く染まって見える。
しばしば目にする光景だ。
何よりも面白いのは空が青いのも夕焼けが赤いのも同じ原理で説明できる事だ。
夕焼けの場合は赤以外の光は途中の厚い大気に阻まれ見る人まで届く事ができないのだ。
星や惑星の光も同じだ。
見た事がないかもしれないが金星が地平線から顔を出す時にはとても美しい赤色をしている。
実は大気が汚れているほど例えばちりが舞っている時ほど夕焼けは美しい。
皮肉にも大気汚染が多いほど夕焼けはより美しい赤色に染まるんだ。
ではこの写真を見てもらいたい。
これは本当にすごい物質だ。
この小さなかけら手で持っているこの固体は「エアロゲル」と呼ばれるものだ。
この物体の密度は空気の4倍程度しかない。
考えてみるとこれはすごい事だ。
空気の4倍の密度しか持たない固体だ。
この物質は0.1ミクロンよりもはるかに小さい二酸化ケイ素の粒子を含んでいる。
よってレイリー散乱には理想的な粒子と言える。
そして見てのとおり上から来た光が散乱されている。
だから何が見える?そう青い光だ。
光が上から来ているのが影で分かる。
しかしこの塊が分厚いので光が通過する時青色の光は全て散乱してしまう。
だから残っているのは何色だろうか?赤だ。
夕焼けが赤い原理と一緒だ。
このエアロゲルの写真で空が青い理由と夕焼けが赤い理由が同時に分かる。
とても便利な物質だ。
それでは最後にこの教室で青空と赤い夕焼けを作り出してみせよう。
この辺りに座っている君たちはラッキーだ。
とてもよく見えるだろう。
後ろの君たちは見づらいかもしれないが自分で選んだんだから諦めてくれ。
(笑い)ここにバケツがありチオ硫酸ナトリウムの溶液が入っている。
これは水のように透明だが…これは硫黄のコロイド粒子で0.1ミクロンよりも小さいものだ。
スポットライトを使って光をこの方向から照らすと硫黄の粒子で光がそちらへ散乱される。
すると青い光が見える。
目の前に青空を見る事ができるだろう。
場所によって当たり外れはあるが角度が合えばはっきり見える。
そして実験のクライマックスはそのあとだ。
あれが太陽だ。
光がこの液体を通過してあそこに太陽を映す。
私が硫酸を加えると空はまず青くなる。
しかし時間がたてばたつほどどんどん硫黄が沈殿する。
つまり光が通る粒子の層がどんどんどんどん厚くなるという事だ。
この状態は太陽がどんどん地平線に近づく時と一緒だ。
すると太陽はどうなると思う?何?赤くなる。
さすがそのとおりだ。
ではまずは硫酸を入れよう。
そしてかき混ぜる。
それから教室を暗くしよう。
あとはじっと待ってほしい。
少しかき混ぜて…暗くしよう。
さてゆっくり待とうじゃないか。
もうじき青空が見えてくるはずだ。
太陽の色も変わる。
今は太陽は昼間の状態だ。
午後3時といったところだ。
ほら空が青くなってきたぞ。
見えるだろうか?本当に青空になってきた。
これがレイリー散乱だ。
硫黄の粒子が引き起こした。
太陽を見てくれ。
これは4時だな。
さっきほど明るくない。
Dialogue2014/02/28(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
白熱教室海外版アンコール MIT白熱教室(4)空はなぜ青く夕焼けはなぜ赤い?[二][字]
空はなぜ青いのか?夕焼けはなぜ赤いのか?子供の頃、誰もが一度は不思議に思ったことがある疑問にルーウィン教授が答えます。教室で空の色が変化する様子を再現します。
詳細情報
番組内容
空はなぜ青いのか?雲はなぜ白いのか?夕焼けはなぜ赤いのか? 子供のころ、誰もが一度は不思議に思ったことがある疑問に、ルーウィン教授が答える。ルーウィン教授の吐き出すたばこの煙が青から白に変化するのはなぜか? 圧巻は、空の色の変化を教室に再現する実験。硫酸を使った実験で、教授は青空が真っ赤な夕焼けに変化する様子を、教室で幻想的に再現する。
出演者
【出演】マサチューセッツ工科大学教授…ウォルター・ルーウィン
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
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