(刑務官)…主任!
(斉藤主任)ん?どうした?1区の206号か!…行くぞ!
(亀山薫)ああっ!!
(奥寺美和子)…どうしたの!?浅倉!どうしたっ!?医務官を呼べっ!大丈夫か!?しっかりしろ!なんか嫌な夢でも見たの?うん…。
どんな?薫ちゃん…。
だから…嫌な夢だよ。
だからどんなよ?頭押さえてて。
舌は噛んでいません。
私の手には負えませんから誰か救急車を。
(医師)見てのとおり釘ですね。
釘…!?ご覧のとおりですよ。
(医師)これだけ大量の釘です。
誤飲とは考えづらい。
自覚的に飲み込んだんでしょうね。
(斉藤)自殺を図ったのか…?
(刑務官)助かりますか?
(医師)まあ大丈夫だと思いますよ。
浅倉が…。
…えっ?処刑された。
夢の中でだ。
嫌な夢だった…。
そう…。
まだ1週間しか経ってないのになんだか遠い昔の出来事のような気がする…。
(裁判官)被告人の犯行はまれにみる凶悪なものでありその手口も極めて残虐非道であると言わなければならない。
また犯行当時の被告人の社会的地位をかんがみるにその社会全般に与えた影響は甚大かつ深刻なものであり司法当局への信頼をも失墜させかねない重大なものであった。
しかるにそれほどの重大事犯を引き起こしながらも被告人に悔悛の情は認められずよって情状を酌量する余地はないものと判断する。
それでは判決を申し渡します。
主文…。
被告人を死刑に処する。
まだ起きてる?うん…。
(心電図の音)
(心電図の警告音)
(携帯電話)もしもし?本当に…お前なのか…?
(浅倉禄郎)ああ俺だ。
杉下右京に会いたい。
斉藤さん?主任?すみませんご協力ください。
恐れ入りますがトランクの中拝見できますか?…なんかあったの?ええちょっと…。
(刑務官の声)立ちなさい。
どうだ?侵入した形跡はないです。
ここお願いします!おいそっちだ!そっちはどうだ?見つかりません!南側を捜します!おいおいちょっと待て!何やってんのこんな所でこんな夜中に?どうした?…ご苦労さま。
まだ見つかんないの?はい。
じゃここいいから上行って。
はい!急ごう。
どこ?ボイラー室の奥だって言ってた。
・
(浅倉)待ちくたびれたぞー。
やあ。
…バカ野郎っ!!
(美和子)薫ちゃんっ!お前一体何考えてんだっ!?どういうつもりだっ!?騒ぐな!やっとこうしてひととき自由になれたんだ。
貴様…!それと!たった今腹を切られたばかりだ。
この態勢は正直しんどい。
座っていいか?ウウッ…!ど…どうしたの!?何があったの…!?こうでもしないと外部と接触できないんだ。
苦肉の策だよ。
で杉下右京はいつ来るんだ?右京さんは…来られない。
どうしてだ?今日本にいないの。
なんで右京さんに会いたいんだ?話したいことがある。
ならば俺が聞く。
右京さんには俺からきちんと伝える。
だから話して…早く戻れ!浅倉…!ここから…俺をうまく連れ出して逃がしてくれないか?冗談だよ。
そうか杉下右京は不在か。
…書くものあるか?え…うん…。
(浅倉)貸してくれ。
小暮ひとみ…?その女を捕まえてほしい。
え…?罪状は…殺人だ。
杉下右京ならば…捕まえられる必ず。
この女が…人を殺したっていうのか?…お宮入りした事件だ。
えっ?平成10年東亜薬科大学で起きた殺人事件…。
たしか教授が殺された…?
(浅倉)毒殺された事件だ。
その犯人がこいつだって言うのか?そうだ。
だけど…お宮入りした事件だろ?だから証拠が何もない。
だったら何で犯人だってわかる?わかるさ。
だから…!どうしてわかる?…同じ匂いがした。
匂い?人殺しの匂いだよ。
殺人鬼の香り…染み込んで消えない汚れた匂いだ。
君…ちょっと席を外してくれ。
はい。
ご足労いただいて申し訳ない。
(小暮ひとみ)なぜ私がこんな所に呼び出されるんですか?個人的に話したいことがある。
…何でしょう?言うまでもなく事件のことだよ。
先生が殺された事件についてなら私はもう十分お話したと思いますけど。
嘘だ。
…は?君は隠してる…重要な一点を。
何をですか?教授に毒を盛ったことだよ。
…検事さんどうかしてる。
(浅倉)そうかな?私が人殺しだなんて。
…君は人殺しだよ。
僕にはわかる。
勘違いってことはないの…?
(浅倉)勘違い?だってその人が犯人だっていうのは浅倉さんの心証に過ぎないわけでしょう?あの女が殺ったんだ…間違いない。
だから杉下右京に…。
・
(扉の開く音)おい浅倉っ!…なんだお前ら!?どうもお揃いで。
(斉藤)ふざけるなっ!逃げられるとでも思ったのか!?
(浅倉)逃げる?冗談でしょ。
逃げるつもりだったらこんな所で油なんか売ってないよ。
それとコレどうもありがと。
助かった〜。
立てっ!!立つんだっ!!亀山…頼んだぞ…!小暮ひとみだ…!杉下右京にしっかり伝えろ!
(電話)
(呼び出し音)
(係長)亀山君さっきっからどこに電話してるの?あっいえいえ…。
そろそろ時間だよ。
おっ…ハイ。
はい用紙のほう受け取りましたね〜?終了時間11時10分になってます。
いいですかー?…はいどうぞ始めてくださーい。
カンニングダメよー。
(呼び出し音)留守電ぐらいつけとけよなもう…!
(杉下右京)チェックメイト。
・
(扉をたたく音)英語でまくしたてる老婆ただいま。
うい。
ダメ?ダメ。
全然応答なし。
もう100回かけた。
ウソこけ。
ま100回は大ゲサだけどさたくさんかけたよ。
はい。
何やってんだろうね右京さん。
知るかよ…。
(電話)もしもーし?「亀山君ですか?」あ…右京さん!?久しぶりですね。
は…お久しぶりです!実は僕の借りてる部屋の向かいにひどく気難しい老婆がいましてね。
…は?今しがた部屋に戻ってくるとその老婆が怒鳴り込んできました。
怒鳴り込んで…?ここ数日来深夜だろうが早朝だろうがおかまいなくのべつまくなしに電話を鳴らしたバカ者がいる…。
「非常識にも程がある」おかげで気が狂いそうになった。
一体どうしてくれるんだ。
…とすごい剣幕でまくしたてて帰ったのですがひょっとしてその非常識なバカ者は君ではないかと思って電話をしました。
…右京さん。
ホント!?「もしもし?」聞こえてますか?「あ…はい…はい聞こえてますよ」もしも誤解だったならば謝ります。
しかし時差への配慮もなくしつこく電話を寄こす知人は君しか思い浮かばなかったものですからね。
…君ですか?ハハ…はいそのバカ僕です。
すみませんでした!やはり君でしたか。
で何でしょう?何が!?何か僕に用事なのでは?ああ…そうだ。
実はですね…。
…いえ別に大した用事じゃありませんよ。
「そうですか」しかし大した用事でもないのに電話のベルを637回も鳴らしますか?600…!?鳴ったそうです。
老婆が数えていたそうです。
…そのお婆さんによろしくお伝えください。
ホント大した事じゃないんで帰国されたらお話しますから。
ちょ…?ちなみにいつごろお戻りの予定ですか?気が向いたら帰ろうと思ってます。
そうですか…。
じゃ気が向いて帰国したらご連絡ください。
お元気で。
さようなら。
ごめんください。
あ…!
(美和子)なんで切っちゃうワケ?せっかくかかってきたのに!相変わらずだよ。
えっ?慇懃無礼!失礼千万!だけどいつ帰ってくるかわかんないんでしょ?それじゃ困るでしょ?右京さんにきちんと伝えるって浅倉さんと約束したでしょ?そもそもさ…なんで浅倉は右京さんを頼るワケ?この俺を差し置いて!…そのワケ知りたい?あ?知りたいんだったら教えてあげるよ?簡単だよ〜。
いや…いいいい!…わかってるよそんなことは!誰だって右京さんを頼るさ。
…だったらホラ!かけなさいよ。
またどっか行っちゃうよ。
かけろ!バカほら!・
(電話)
(電話)・
(電話)英語でまくしたてる老婆おっかしいなあ…?だから言わんこっちゃない!「短気は損気」っていつも言ってるでしょ?もっと事件の情報が欲しいよな。
なあ?当時の捜査資料とかないの?ムリだよ二係が管理してっから。
一応継続捜査になってる事件だからな。
ま捜査なんかしちゃいねえだろうけど。
あでも…これは手に入れたぞ。
…あ。
免許証のデータ。
こっそり引っぱり出した。
職権乱用だあ。
まだ大学にいるらしいぞ。
えそうなの?大学院に通ってるらしい。
ああ大学院ね。
まわかったのはこれだけ。
もっと詳しい話を浅倉さんから聞けるといいんだけどねえ…。
なにしろ面会できねえからな。
(武藤かおり)どうぞ。
昔はねそんなことなかったらしいわ。
むしろ死刑確定囚のほうが未決拘禁者よりも外部交通権が手厚く保護されていたの。
親族はもちろん友人や支援者たちとも面会できたし手紙のやりとりも自由だったっていうわ。
でも今は面会が許されるのは親族のみでしょ。
俺も浅倉の死刑が確定した途端面会できなくなりましたから。
親族以外は担当弁護士が会えるだけね。
その人に頼むのが筋じゃない?ところがいないんですよ。
その担当弁護士が。
え?浅倉のヤツ何が気に入らねえのか次々に弁護士を解任しまくってましたから。
公判中は一応国選弁護人がつくにはついてましたけどそんな状態ですからとても頼めない。
だから先生にねこうしてご相談を。
なんかいい方法ありませんかね?ありませんよね…。
告発しちゃう?告発?刑務官に暴行を働いて携帯電話を奪ったんでしょ?それって強盗だわ。
もう事件化されてる?いや…わざわざしないんじゃないですか。
なにしろ相手は死刑囚だしそんなの時間の…。
ムダ?ええ。
死刑囚だろうと何だろうと新たに罪を犯した以上きちんと裁いて刑を確定しなきゃダメよ。
それが法治国家の原則だわ。
つまりそれって…この俺が浅倉を告発するわけですか?そう。
それで私が浅倉さんの担当弁護士になる。
そうすれば一応連絡ルートは確保できるわ。
どうする?やってみる?…はいっ!出てってもらえる?武藤です。
よろしく。
君の入れ知恵か?はい?亀山がこんな粋なこと思いつかないだろう。
犯行についてはすべて否認して。
そうすれば裁判が長引くから。
わかりきったことを言うな。
それじゃ本題。
平成10年の大学教授毒殺事件について詳しく話してもらえない?
(浅倉)殺されたのは生薬科学教室の教授丸山卓司。
第一発見者は丸山教室の助手だった。
室内に不審な点はなかったそうだ。
遺体にも損傷はなかった。
解剖結果も特別不審な点はなかったそうだが場所が場所だけに念のため薬物検査を行った。
そしたら出たのね?毒物が。
アトロピンだった。
主にナス科の植物が持つ毒成分。
大学関係者ならば簡単に手に入れられる毒物ね。
ああ。
自殺の可能性はなかったの?むろんそれも検討されたが特に自殺を図る理由は見当たらなかった。
遺書も発見されなかった。
犯行の手口は?犯人はどうやって教授を毒殺したの?教授は栄養剤を常用してた。
おそらくそれに毒入りのカプセルを紛れ込ませたんだろう。
遺体に注射痕はなかった。
睡眠薬も検出されなかった。
となれば致死量の毒物を教授の体内に入れるにはそれしかない。
なるほど…そういうことで毒殺事件として捜査を進めたけど結局被疑者らしい被疑者は挙がらなかったわけね。
教授と接点のある人間は片っぱしから調べたが決定的なものは何も見つからなかった。
疑おうと思えば誰でも疑える。
毒入りカプセルを作ることなど造作ないしそれを教授のピルケースにしのばせることは難しいことじゃない。
怨恨その他個人的な人間関係も洗ったが決定打は出なかった。
だからお宮入りさ。
なのにどうして…。
ん?小暮ひとみなの?だから言ったろう?…匂いさ。
(伊丹刑事)いつ見ても嫌なもんだな。
(三浦刑事)因果な商売だぜ。
たぶんこれが遺体の身元じゃないかと…。
「日本アーバン建設常務佐川昭彦」…。
こいつか…!ん?捜索願が出ていたゼネコン幹部だよ。
ゼネ…ああ。
やっぱり死んでたのか。
病死か事故死か…殺しか?さあな。
これじゃ見当つかねえ。
解剖の結果次第だ。
(ニュース)「3か月ほど経ったと見られる死体の身元は平成15年6月6日から行方がわからなくなっていた日本アーバン建設の常務取締役佐川昭彦さん52歳であることが判明しました」「佐川さんは6月6日の午後7時ごろ会社を出てから行方がわからなくなっており家族から捜索願が出されていました」休暇?とりあえず1週間ほど…。
本当に申し訳ございません…!いいよ。
もっとずーっと取っていいよ。
いやいや…申し訳ございません。
ところでさあの人友達?は?さっきっからずーっと君のこと見てるよ。
(角田課長)久しぶりだな!ああどうも…お久しぶりです。
元気か?まあ〜見てのとおりですよ。
元気そうじゃないの〜。
ハハハおかげさまで…。
で何すか?う…うん…。
お前が特命係にいたころ俺は結構お前の力になってやってたような気がする。
は?少なくとも話し相手にはなってやってたろ?いや〜…。
それがどれだけお前の心を和ませたかわからない。
あのねえ昔の話はいいですから早く用件を言っていただけます?こう見えてもいろいろ忙しいもんで。
運転免許試験場に来たんだから用件は運転免許のことに決まってるだろ!ハァそりゃまあね。
お前と昔を懐かしむためにわざわざここに来ると思うか?いやですからね…。
あ!…違反した?違反したな!スピード?駐禁?…シートベルト。
ダセッ!講習受けてください。
ちょっ…!そこを何とかしてもらいたくてわざわざ来たんじゃないか!ズルはダメですよ。
ちゃんと受けてください!つれないこと言うなよ!俺とお前の仲だろ?どんな仲ですか?頼むよ〜!ダメッ!じゃ失敬。
先を急ぎますんで。
特命係にいたころのお前はもっと人情味に溢れてたのになあ!あいにく今は運転免許試験場ですから。
お似合いだよっ!立ちなさい。
お前の腹ん中から出てきた釘だ…。
こっちはうちの請願作業で使っている釘。
同じ釘だよ…!だから?お前は請願作業をしていない。
誰だァ!?腹ん中に飲み込んだ釘!言えっ!誰に釘をくすねさせたァ!?知りたいか?何ィ?なら教えてやろう。
その代わりにお前のケツ貸せ。
長らくご無沙汰だ。
お前で我慢してやる。
早く脱げっ!!主任主任!やめてください主任!この死刑囚がっ…!!俺をナメるなよっ!!
(薫)ハァ〜…でっけえ家!あっ!失礼。
薬用植物園はどの辺りでしょうか?植物園ならそこを真っ直ぐ行って…。
お差し支えなければ近くまで案内していただけませんか?実は私極度の方向音痴なもので無事にたどり着ける自信がありません。
失礼ですが何年生ですか?大学院です。
今後期。
博士課程ですか。
それはお見それしました。
ならば平成10年の事件のこともご存じでいらっしゃる?…え?教授が殺された事件です。
…ええもちろん知ってますよ。
結局犯人はまだ捕まっていないようですねえ。
…あの建物の向こうです植物園。
ああなるほど。
(ひとみ)ごゆっくりどうぞ。
あっ!…ご無理ついでにもう1つ。
教授の命を奪ったのはアトロピンという毒物だそうですねえ。
(ひとみ)みたいですね。
植物から採れる毒だそうです。
その植物のところへ案内していただけませんか?…何かお調べになってるんですか?実は私…。
…マニアなんですよ。
マニア?ミステリーマニア。
いい歳をして偉そうに言える趣味じゃありませんがミステリーには目がなくて。
だからといって小説のたぐいはいけません。
あれは所詮作りものですから。
実際の事件これに勝るものはない。
迷宮入りになった事件を検証してあれこれ推理するのが大好きなんですよ。
なるほど…ベラドンナですか。
ベラドンナ…「美しい淑女」。
ええ。
しかし要注意。
美しい花には毒がある。
ベラドンナの毒成分アトロピンは鎮痛剤催眠剤瞳孔散大剤などに使われるんです。
それと…鼻炎薬にも。
使い方次第ということですね。
ええ毒にも薬にもなる。
毒殺というのはまことに厄介です。
えっ?犯人の特定がなかなか難しい。
なぜならばその瞬間犯人が被害者と対峙しなくても殺害が可能だからです。
犯行時刻に犯行現場にいなくて済むというのは犯人にとって非常に有利ですよ。
(ひとみ)そろそろいいですか?お時間をとらせて申し訳ありません。
いいえ。
じっくり推理楽しんでください。
あ…!もう1つだけ。
…何でしょう?僕の推理を聞いていただけますか?え?ズバリ教授殺しの犯人は女と見ました。
女?なぜですか?理由は毒薬にこのベラドンナを選んだことにあります。
ベラドンナの属名「アトロパ」はゼウスの3人娘の一人「アトロポス」にちなんでいるそうです。
アトロポスは命の糸を断ち切る運命の女神…つまり女。
なるほど…。
いかがですか?小説のたぐいにありそうな推理ですねえ。
あ〜おっしゃるとおり。
それじゃ。
お引き止めしてすみません。
右京さんっ!やあ…君ですか。
何やってんすかこんな所で?こんな所で君に会うとは驚きました。
驚いたのはこっちです!えっ美和子からですか?ええ…。
これがそのメール。
おおよそのいきさつはわかりました。
チッこんなものアイツ…。
帰って来たなら来たで連絡ぐらいくれたっていいじゃないですか。
連絡しようと思ってたところへ君がひょっこり現れたのでね。
どっちがひょっこりですか。
(宮部たまき)さあどうぞ。
本当に亀山さん久しぶりですね。
いや〜こちらこそすっかりご無沙汰しちゃって。
イギリスで何やってたんですか?風の向くまま気の向くままです。
あちこち見て歩いてました。
それは結構なご身分で。
でこれ読んですっ飛んで帰ってきてその足で小暮ひとみに?一刻も早く本人に会ってみたくなったものですからねえ。
もう〜彼女の家すごいんすよ!あれ相当な資産家ですねえ。
そうですか。
半端じゃないんですよ。
…お姫様。
あ…でどうでした?はい?会ってみて彼女の印象。
花だけでなく美しい女性にも毒があるのでしょうかねえ…。
…は?どうコレ?
(真鍋純一郎)ハデじゃないか?ううん可愛い。
(シャッターを切る音)
(シャッターを切る音)
(美和子)ね?ただならぬ関係って感じでしょ?これねスバリ不倫と見たね。
…そうかなぁ?父親かもしれない。
こういう風に仲のいい親子いるだろう?それとも不倫の関係って証拠何かあんのかよ?父親か恋人かなんて見たらわかるわよ。
そうかねぇ〜?あ…!ねえちょっと…!謝ってるでしょ?勝手にメール出して悪かったわよ。
だけど右京さんのことだからパソコンぐらい持ってってるかなと思って試しに…。
メールはかまいませんよ。
は?メールはかまいませんよ。
中身だよ文面!「PSうちの亀山くんがひとりでも真相を暴いてみせると息巻いておりますがそれはどだい無理な話です」「取り返しのつかないヘマをしでかす前にどうか帰国なさってください。
お待ちしておりますかしこ」。
何だコレ?書くか?こういうこと。
だって…。
状況だけ説明すりゃ済むこったろ。
わざわざこんな追伸書くな!少しは危機感をあおったほうがいいかなと思ったのよ。
なにっ?おかげで右京さん帰ってきたでしょ!何よぉ…ちっとは怒るより感謝しなさいよもうっ!痛ってぇなお前…!待ておい!今日は許さんぞ。
さあどうぞ。
あなた今警察学校の先生なんでしょ?ええ。
事件の捜査してる時間なんてないんじゃないですか?ありませんねえ…しかし今は自由の身です。
え?休職中ですから。
復職はしないの?復職すると警察学校の先生になってしまいます。
そうすると事件を調べられない。
休職したまま調べるつもり?ええ。
そんなことしたら叱られますよ?叱られるのは慣れてます。
呆れた…。
(米沢鑑識官)すいませんお待たせしました。
ああどうも。
お久しぶりです。
いえいえお久しぶりです。
お呼びだてしてすみません。
元気でした?おかげさまで。
まあどうぞ座ってください。
じゃ失礼して…。
早速ですが…これなんです。
これが…何か?そこに写ってる男性の身元を知りたいんですよ。
なるほど…。
しかし私は存じ上げてませんが。
そりゃそうでしょうけどね。
つまり調べてほしいんですよ。
調べる?ほら…ここ。
どこどこ?これは社章ではありませんかね?ああ確かに。
これを私に調べろということですね?
(米沢)トラストインターナショナルトレーディング…。
なんか…浮気調査してるみたいですね俺ら。
何者か知りたいじゃありませんか。
そりゃ知りたいですけどね…。
あ…すいません!この人に見覚えありません?この会社の人なんですけども…。
え?専務…だよね?専務専務か…重役ですよ。
少なくとも彼女の父親でないことは判明しましたね。
やっぱ不倫ですかね?さあどうでしょう?独身の場合もある。
あなるほど。
バツイチのヤモメ暮らしか…右京さんみたいに。
だけどいきなり会ってくれますかね?相手は重役ですよ。
それとも警察って名乗ります?それはよしましょう。
だったらどうします?大丈夫です。
会ってくれますよ。
どっから出てくるのかなそういう自信…。
恐れ入ります。
真鍋専務にお目にかかりたいんですが。
真鍋でございますか?失礼ですが。
小暮と申します。
お約束でございますか?いえ…しかしお時間があればぜひお目にかかりたい。
大事なお話です。
くどいようですが小暮と申します。
不愉快ですねまったく。
偽名を使うなんてまるで騙し討ちじゃないですか。
申し訳ありません。
警察関係者であることを名乗るのは憚られたものですから。
すいませんね。
で…警察の方々が僕に一体何の用事だろう?できれば手短に願いたい。
小暮ひとみのことですか?…ええ。
彼女がどうかしたんですか?彼女とはどういうご関係ですか?友人ですよ。
友人?若い友達です。
いけませんか?いえ全然。
若い友達ね…。
どちらでお知り合いになったんですか?ん?あなたはこのとおり大企業の重役かたや彼女は学生です。
どこでどういうふうにお知り合いになったのかちょっと気になります。
パーティーで知り合ったんですよ。
パーティー?ええ。
別にいかがわしいパーティーじゃありませんよ。
(携帯電話)ちょっとすいません。
(携帯電話)はい真鍋ですが。
…わかったすぐ戻る。
あ…!あーっ!何か事件ですか?捜査中ですか?ああまあ…ちょっとね。
右京さん…!毒物中毒の可能性があります。
毒物ある種の毒物中毒では瞳孔散大症状が出ます。
ニコチンアトロピンほかにも植物アルカロイドの一種ですが出るとしたらアトロピンでしょう。
いずれにしてもその旨病院に連絡して準備をしておくように言ってください。
わかりました。
くそっ止まりやがった!えっ心臓マッサージ!ちょちょっと…!12345!なんとか助けてくださいよ!重要な証人になるかもしれないんです!早く!早く!
(医師)容体は?
(救急隊員)心停止してます!自発呼吸ありません!心臓止まってる!心臓止まってる!何とかして…何とかしてくださいよ!お願いしますよ!
(教授)死因と結びつくような外傷ならびに内因性要因は見られません。
したがって可能性としては不整脈に基づく心臓性突然死もしくは薬物による死亡が考えられます。
(伊丹警部)運転免許試験場の亀山!お前まだ生きてたのか?そりゃこっちのセリフだよ!
(三浦警部)お久しぶりですね。
お久ぶりですね。
何しに来たんだよ!「殺し」の疑いで解剖が依頼されたとあっちゃ来ねぇわけにはいかねぇだろ。
ましてやその依頼主がお前らとあっちゃな。
そうかよそりゃご苦労。
なんだこのやろう!なんだよ?2人でツルんで何やってんだよ?運転免許試験場の亀山くんよ。
いちいち肩書きつけんじゃねぇよ!
(検査技師)出ましたよ。
あなたのご指摘のとおりアトロピンです。
間違いありません。
やはりそうですか。
おいそのアトロピンてのは?植物毒ですよ。
つまり毒物中毒死ってこと?ええ。
それからこれ…中身はすべて栄養剤でした。
一粒残らず?ビタミンCとBとE。
なるほど…。
小暮ひとみはまず間違いなく真鍋専務と不倫関係にあった。
ええ。
ひょっとして丸山教授ともそういう関係にあったんじゃないですかね?なぜですか?だって2人ともナイスミドルでしょ。
つまり小暮ひとみはオヤジキラーなんですよ。
いや文字どおりのオヤジキラー。
なにしろ2人とも殺されちゃったもん。
なるほど。
君らしい斬新な推理ですね。
しかも両者に共通するアトロピンによる中毒死というのは非常に珍しい。
でしょ?そして2人とも小暮ひとみと接点があった。
単なる偶然とは考えられませんね。
考えられませんよ。
(車のドアを閉める音)先日はどうも。
あなた…。
我々決して怪しいもんではないので。
申し訳ない。
先日はちょっと嘘をつきました。
おかしいと思った。
極度の方向音痴なんてあり得ない。
ぜひあなたとお喋りしてみたかったものですからね。
すみません。
であたしに何か?真鍋純一郎さんが亡くなりました。
…あれ?驚きませんね。
誰ですかその方?ご存知ありませんか?ええ。
トラスト国際交易の真鍋純一郎さん。
ご存知のはずですけど。
こちらが真鍋純一郎さん。
そしてこれ間違いなくあなたですよね?フッ…参ったな〜。
こんな写真撮られてたなんて。
ご存知でしょ?真鍋純一郎さん。
ええ。
この期に及んで隠さなくてもいいのに。
うかつに知ってるなんて言って彼に迷惑かけるといけませんから。
つまり他人には知られたくない関係ですか?ノーコメント。
よかったらあがってきません?え…?よろしいんですか?こんなとこで彼との関係根掘り葉掘り聞かれるの嫌ですから。
ごもっとも。
お付き合いは半年ぐらいです。
俗に言う…不倫の関係ですよね?ええそうです。
パーティーでお知り合いになったとか…どういうパーティーですか?彼が会員になっている親睦団体のパーティーです。
私はその接待係として呼ばれて…バイトです。
いわゆるコンパニオン。
何ていう親睦団体?あ…どうぞ。
「七日会」…だったかな。
七日会?ここに写ってる男性はお父様ですか?ええ。
世界各国を飛び回ってらっしゃるようですね。
父は植物学者なんです。
そうですか。
仕事でいつも海外へ。
昨日からまた出掛けちゃいました。
出ると平気で三月や半年帰って来ない。
かわいい娘を1人きりにしてとんでもない父親です。
つまりこの家にはお父様と2人で暮らしてらっしゃるということですか?母は亡くなりましたから。
…なるほど。
不倫なんかしてたらお父さん泣きますよ。
言いつけないでくださいね。
そういうことじゃないでしょ。
でいつ亡くなったんですか?はい?真鍋さん。
ああ…昼過ぎに。
会社で。
そうですか…。
あごめんなさい。
お茶もお出ししないで。
どうぞお構いなく。
すぐいれますから。
きれいなお庭ですね。
…え?拝見してもよろしいですか?…ええ構いませんよ。
は〜知らない花ばっかし。
これは…ベラドンナですね?ええ。
ところであなた死因は気にならないんですか?え?真鍋さんの死因です。
あなたは先ほど真鍋さんがいつ亡くなったかお聞きになった。
いつ亡くなったんですか?その質問に亀山くんが答えました。
昼過ぎに。
会社で。
いつどこで亡くなったかをあなたは知った。
普通そのあとはどうして亡くなったか聞きませんか?つまり死因です。
とても気になると思うんですけどねぇ。
ところがあなたはいつどこで亡くなったかがわかるとそれで納得したようにお茶をいれに立った。
なぜあなたは死因をお聞きにならなかったのでしょう?聞きませんでした?ええ。
聞きませんでしたっけ?聞きませんでした。
それじゃ聞こうっと。
死因は何だったんですか?毒物中毒死です。
アトロピンによる中毒死でした。
一般人が入手できるような毒物じゃありませんよね。
だから自殺とは考えづらいんですよね。
しかも丸山教授のケースと非常によく似てるんですよ。
真鍋さんはこれをお持ちでした。
調べてみたところ中身はすべて栄養剤でした。
ちなみにビタミンCとBとE。
この中に一粒だけ毒入りカプセルが混じっていたのではないでしょうか。
つまり息を潜めていた運命の女神アトロポスがついに今日真鍋さんに微笑んだというわけですよ。
だから?あの女何考えてんだ!そう思いません?何ですかあの落ち着き払った態度は。
そりゃねこっちも追い詰めるだけの確たる証拠があるわけじゃないですからね。
言い返しようもありませんでしたけど…。
右京さん?母親の写真が1枚もありませんでしたね。
棚に飾ってあった写真です。
亡くなった母親の写真が1枚もありませんでした。
そうでした?ええ。
だから?1枚ぐらい飾ってあってもいいと思うんですけどねぇ。
まあね。
どうしてないんでしょう?さあ…どうしてでしょう?
(内村警視長)毒物を言い当てた?はい。
杉下右京がはっきりとアトロピンによる中毒だと言ったそうです。
(中園警視正)どういうことだ?さあそれは…。
しかし検査結果の出る前に毒物を特定するなんて真似は普通できません。
実はちょっとこれが気になります。
お宮入りしたヤマです。
平成10年に東亜薬科大学で起きた毒殺事件。
使用された毒物は今回同様アトロピンでした。
ほかに同じようなケースは見当たりません。
じゃあ今回の一件と関連があるというのか?はい。
なにしろアトロピンによる「殺し」なんてめったにありませんから。
奴らはこれを嗅ぎ回ってるのか?
(伊丹)その可能性はあります。
(秘書)多分あったと思うんですが。
…ありました。
これです。
拝見します。
これはそうそうたる顔ぶれですねぇ。
各界でエグゼクティブの親睦会ですから。
パーティーは頻繁に行われてたんですか?定例のパーティーは隔月ごとにあったようですけど専務は参加されたりされなかったりです。
お忙しい方ですから。
そうですか。
本当に殺人事件なんですか?その線が濃厚ですね。
誰が専務を…。
亀山くん。
おもしろい名前がありますよ。
おもしろい名前…?あ…!さあ知らないな。
そうですか。
真鍋純一郎トラスト国際交易の専務です。
「七日会」の会員ですよねぇ?そんなこと言ったって会員は500人以上いますからね。
全員が顔見知りってわけじゃない。
むしろ知らないメンバーのほうが多いですよ。
名刺交換ぐらいしてるかな?よかったらこれ調べてみて。
え…あいや結構です。
ご存知なければそれで構いません。
あ…だったらこの女性はご存知ないですか?どうですか?浮気調査でも始めたの?はい?これは典型的な盗み撮り。
見たところ2人は怪しい関係だ。
違う?これが真鍋純一郎?あ…ええ。
女性のほうに見覚えはありませんか?パーティーにコンパニオンとして参加してたようなんですけどね。
彼女が犯人ってこと?真鍋純一郎殺しの。
だってお前たち浮気調査なんてしないだろ?ご存知ないですか?女の子もたくさん来るからね。
それに毎回同じメンバーってわけじゃないし。
ああ…。
どちらかでご不幸でも?ん?…ああ今日ねお通夜なの。
やっと遺骨が戻されたもんで。
遺骨が戻された?変死体で発見されてね。
解剖その他の手続きで時間かかっちゃって。
あ…彼も「七日会」の会員だったな。
え?知らないかな?行方不明になってた日本アーバン建設の常務。
佐川昭彦。
佐川…ああ神崎町のマンションで発見されたって人ですか?結局病死だったみたいだけどね。
行方不明になって家族から捜索願いが出されてたんですよ。
それが神崎町のマンションの部屋で発見された。
右京さんの帰国する少し前だったかな?遺体は死後約3か月ほど経過してたそうです。
海の底や森の奥というのならまだしもマンションの部屋で発見されるのになぜそんなに時間がかかったんですか?それがね内緒で借りてた部屋だったらしいです。
家族はその部屋の存在はまったく知らなかった。
なるほど。
なぜ内緒で借りたんですか?さあなぜでしょうね?まあ一般的には隠れ家ってことでしょうけどね。
隠れ家ですか…。
誰にも邪魔されずに自分だけの時間を持ちたい…わかるなぁその気持ち。
あとは女との密会場所とかね。
つまり不倫ですか?なにしろ日本アーバン建設の常務ですからねぇ。
女の1人や2人いてもおかしくないでしょう。
ちょっと調べてみましょう。
同じ会のメンバーが変死体で発見されたんです。
気になるじゃありませんか。
なにしろ遺体の傷みが激しかったですからねぇ。
病死と判断されたようですね。
急性心不全だろうと。
毒物の検査はしましたか?毒物…?一応睡眠薬その他一般的な薬物検査はしましたよ。
自殺の可能性もありますから。
一般的な薬物検査というとアトロピンの検出は行われてませんね?アトロピン?ご存知なければ結構。
どうぞ。
どうぞ。
拝見します。
何か不審な点でもあるんですか?いえちょっとした確認です。
亀山くん。
はい。
…あ!このピルケースの中身は調べましたか?ええもちろん。
3種類の薬が入ってましたからそれぞれ1つずつ抜き取って調べましたよ。
結果は?栄養剤でした。
ビタミンCとBとE。
…なるほど。
(小野田)お久しぶり。
あ…どうも。
駅まででしょ?乗りませんか?送りますよ。
親しかったんですか?え?亡くなった佐川くんとは。
それほどは…。
しかし葬式にもいらっしゃるぐらいだから。
何度かお食事ご一緒したことがあるんです。
僕の誘いは断ったくせに…彼とはデートしてたんだ?ところでトラスト国際交易の真鍋専務も亡くなったそうですね。
みたいですね。
今度ゆっくり食事でもいかが?ここらへんでいいです。
どこか止めやすいところで。
止めて。
どうですか?…え?ですから食事。
考えときます。
そう。
前にもそう言われたな。
ありがとうございました。
助かりました。
葬儀に?なかなかいい情報でしょ?ええとても。
だけど官房長も人が悪いっすよ。
しらばっくれちゃって。
うかつに知ってるなんて言うと君たちに何疑われるかわからないからね。
いずれにしても小暮ひとみは佐川昭彦とも繋がったわけですね。
佐川くんとは何度か食事をしただけだって言ってたけどひょっとしたらもっと深い仲だったかもしれないな。
十分考えられますね。
死因も病死なんかじゃないかもしれませんよね。
ええ。
毒殺?…人を殺すようには見えないけどなぁ。
行きますか。
あ…はい。
杉下。
彼女は手強いぞ。
なかなか落ちない。
言われなくてもわかっています。
ですから…皿は戻さないように。
言われなくてもわかってますよ。
どこがですか?行きましょうか。
あなたは日本アーバン建設の佐川常務ともお付き合いなさってたんじゃありませんか?だとしたら何ですか?…どうぞ。
すみません。
トラスト国際交易の真鍋専務ともお付き合いなさってた。
そして2人とも亡くなった。
実はさかのぼって丸山教授とも親しい関係にあったのではないかと邪推しています。
大丈夫ですよ。
毒なんて入ってませんから。
何か?いいえ。
だけど…佐川さんは病死じゃないんですか?明らかな事件性が認められずかつまたは死因がはっきりしない場合だいたい急性心不全で処理されますからね。
少なくともあなたに近しい関係の3人が亡くなりしかも…うち2人はアトロピンによる毒殺であることが判明している。
単なる偶然とは思えませんよ。
十分怪しいでしょ?疑われてもしかたない。
疑うのは勝手ですけど何か証拠でもあるんですか?あたしが殺したという証拠。
証拠は…。
証拠ですか。
証拠もないのに疑われても困りますよ。
しかしあなたはこの僕にご自分の犯行を白状なさってるんですよ。
え?最初にお目にかかったときです。
薬用植物園へ案内していただいたとき…。
あなたは僕をベラドンナのところへ連れて行った。
そうでしたね?ええ。
確かにベラドンナの毒成分はアトロピンです。
しかし他にもアトロピンを持つ植物はある。
たとえば朝鮮朝顔。
これも同じアトロピンを持つナス科の植物です。
もちろんあの植物園でも栽培されていました。
いいですか。
しっかり思い出してください。
教授の命を奪ったのはアトロピンという毒物だそうですね?みたいですね。
植物から採れる毒だそうです。
その植物のところへ案内していただけませんか?僕は「教授の命を奪った植物のところへ案内してください」とお願いしたんですよ。
するとあなたは迷わずベラドンナへ案内してくれた。
なぜあなたはベラドンナから採取したアトロピンが教授の命を奪ったことをご存知っだったのでしょう?朝鮮朝顔ではなくベラドンナから採取した毒だということを。
今のところその答えは2つあります。
1つは…あなたが犯人だから。
そしてもう1つはあなたが犯人からそれを聞いて知っていたから。
しかし状況的にみて2つ目の可能性は極めて低いと言わざるを得ませんね。
僕はあなたに初めてお目にかかったときあなたが犯人だと確信しました。
いかがですか?小暮さん!降参…しちゃおっかな。
あたしがやりました。
あたしがみんな殺しました。
着替えてきていいですか?え?警察に行くのにこの格好じゃちょっと…。
あたしも女の子なんで。
案外あっけなかったですね。
ええ。
なるべく速やかにお願いしますよ。
…小暮さん?小暮さん。
僕としたことが…!小暮さん!小暮さん!亀山くん大至急救急車を。
はい!
(医師)とりあえず胃洗浄を行いました。
今のところ容体は安定しています。
命には別状ありません。
助かりますよ。
は〜そうですか。
どんな薬物を飲んだかわかりますか?詳しくは検査待ちですが意識混濁そのほかの症状から見て神経系の薬物ではないかと。
神経系ですか。
どうも。
自殺図ったって…?犯行を認めてそのあと…。
認めたんだ?ああだけどまさか自殺なんて…。
助かるの?大丈夫だ。
(浅倉)自殺?
(かおり)未遂だったみたいだけど。
バカな…あの女がそんな真似をするわけがない。
でも実際にしたのよ。
追い詰められて毒を飲んだの。
(伊丹)お目覚めですか?残念ながらあの世じゃありませんよ。
警視庁捜査一課の伊丹です。
こちらは三浦。
ご気分は?いいわけありませんよ。
(中園警視正)どんな権利があって捜査活動を行ってるんだ!いや権利って…。
「殺し」は我々の管轄だ。
しかもお前たちは今捜査権限のない部署にいる。
そんなお前たちが…。
それとも何か?被疑者を挙げればどんな勝手な行動でも許されると思ってるのか?いえ…。
そもそもお前たちの行動は本来ならば懲戒ものだ。
今回は被疑者検挙の功績に免じて黙っておいてやる。
とっとと帰れ。
ああ杉下。
はい?被疑者に自殺を図られるとはお粗末だな。
油断していたことは事実です。
お前らしくないな。
はい。
失礼しました!これで終わりですか?そうは思えませんねぇ。
先生の許可が出ましたんで2〜3伺いますよ。
どうぞ。
早速ですけどね小暮ひとみさん。
東亜薬科大学教授・丸山卓司トラスト国際交易専務・真鍋純一郎日本アーバン建設常務・佐川昭彦殺害について白状なさったそうですが…。
は?は?って…。
一体何のことですか?あんた3件の殺しを認めたんだろ?あたしがですか?あの刑事さんたちそんなこと言ってるんですか?毒物はコニインでした。
コニイン?俗に言う毒ニンジンです。
なるほど。
ソクラテスが自殺に用いたと言われる毒ですね?そうなんですか?ええ。
プラトンがソクラテスの最期の場面を書き残していますがそれを読むと毒の効き目はかなりゆっくりだった記憶があります。
コニインは中枢神経及び運動神経を麻痺させる毒ですが死に至るには早くても30分長ければ1時間かかると言われてますね。
彼女死ぬ気はなかったあの場面で我々が30分以上も放置しておくとは思っていないでしょう。
いやしかし…。
彼女は薬物の専門家です。
本当に死ぬつもりだったならばもっと即効性の毒を選びませんか?言い換えるならば致命的な毒。
致命的な…。
何しろ扉を1枚隔てて我々がいたんですよ。
異変に気づけばすぐに処置が行われてしまう。
効き目がじわじわ表れる神経毒ではあの状況で死ねる確率は低かったと思いませんか?つまり助かることを見越して毒を飲んだ?ええ。
何でそんなこと…。
でたらめ?
(ひとみ)でたらめです。
そんなの決まってるじゃないですか。
どうしてあの刑事さんたちそんなでたらめ言うんですか?あたしに何か恨みでもあるんですか?何で…あたしが人殺し呼ばわりされなきゃいけないんですか?だったら何で死のうとした?別件で逮捕するって言われて…。
別件?別件逮捕って聞いたことある?え?その気になればあんたをしょっ引くことなんか簡単なんだよ。
ご承知かもしれませんが取調室は密室です。
心置きなく話ができる。
そのほうがよろしければそうさせてもらいますよ。
何もかも白状してスッキリしちゃいましょうよ。
ね?やってもいないことは白状なんかできません。
ずいぶん強情な方ですねぇ。
しかし我々ににらまれたらあなたはもう逃げられませんよ。
(ひとみ)しつこくつきまとわれて怖くて…。
どうしていいかわからなくなって…。
でもこのままだと犯人にされちゃうそう思ったら耐えられなくなったんです。
それで毒を飲んだって言うのか?あたし人殺しなんかしてません!なのにどうして逮捕されなきゃいけないんですか?あの刑事さんたちは嘘つきです!嘘なんかじゃねぇよ!ちゃんと白状したんだよ!残念ながら俺は聞いてねぇからな。
彼女犯行を認めましたよね?ええ。
しかし言った言わないはしょせん水掛け論ですから。
そのとおり。
彼女どうなるんだよ?何年刑事やってんだよ。
どうもこうもねぇだろ!本人は全面的に犯行を否認してる。
おまけに証拠は何もない。
任意同行もきっぱり拒否された。
体調が戻れば晴れて退院だよ。
そんなバカな…!おいどこ行くんだよ!あの女のとこに決まってんだろ!よせバカ!騒ぎを大きくすんな!離せよこのやろう!このやろう!亀山くん伊丹刑事の言うとおりですよ。
証拠はないんです。
これ以上手出しはできません。
嘘つき呼ばわりされて黙ってるんですか!我々が嘘つきでないということは今のところ証明のしようがありませんからね。
だったら俺がもう一度吐かせてやりますよ!亀山くん!少し冷静になってください。
彼女の思うツボですよ。
…くそっ!何?
(中園)たった今伊丹から報告が…。
冗談じゃないぞ!相手は自殺未遂までしてるんだ。
今さら犯行を否認されてどうするんだ!しかし他に証拠はありません。
本人が自白を翻したとなるとこちらからは手の出しようが…。
そんなことは君に言われなくたってわかってるよ!ただ伊丹が申しますには状況的にはほぼクロに間違いないだろうと…。
クロかシロかってことはこの際関係ないんだ。
こんなことがマスコミに知れてみろ。
格好の餌食になる。
警察の横暴だ過剰捜査だの好き勝手に騒ぎ立てられるんだ。
そうなればな避難されるのは刑事部なんだ。
とばっちりを受けるのは我々なんだよ!万が一に備えて手を打っておかないとな…。
忌々しい奴らめ!は?杉下と亀山だ。
あいつらのやることはすべてが中途半端だ。
どちらへ?今回のことはあいつらに責任を取ってもらう。
我々の手には負えん。
どうも。
亀山巡査部長でいらっしゃいますか?ええ。
警視庁監察係の中野と申します。
ちょっとご同行願えますか。
えっ何すか?何?何かしたの?杉下警部ですね?そうですが。
警視庁監察係の前田と申します。
ご同行願います。
(大河内)突っ立ってないで座って。
(次長)自殺騒ぎを起こされるなんて過失以外の何ものでもないだろう!違うか?おっしゃるとおりです。
その責任は感じています。
いずれにしろ懲戒処分は免れませんよ。
懲戒ですか?お2人には処分が決まるまで謹慎していただきましょうか。
・
(ノック)
(大河内監察官室長)突っ立ってないで座って。
あ〜…頭が痛い。
(亀山薫)…はい?頭痛ですよ。
あ…。
もちろん頭痛のタネはあなた方。
さて…杉下警部。
(杉下右京)…はい。
そして…亀山巡査部長。
はい!お二人について問題になっているのは次の二点です。
一つはそれぞれ休職中休暇中にもかかわらずかつまた捜査権限のない部署に配属中にもかかわらず勝手な捜査活動を行ったこと。
もう一つはその捜査に行き過ぎがあり結果重大な過失を引き起こしたこと。
過失?
(次長)自殺騒ぎを起こされるなんて過失以外の何ものでもないだろう!違うか?おっしゃるとおり。
その責任は感じています。
3件の毒殺事件…大学教授と2人の会社役員が殺された事件の捜査は当然進めなければならない。
むろん極力早く犯人を挙げなければならない。
がしかし…これはあなた方の仕事じゃない。
いずれにしろ懲戒処分は免れませんよ。
懲戒…ですか?警察組織は規律で動いてるんだ。
無視したら罰を受けて当然だろ。
お二人には処分が決まるまで謹慎していただきましょうか。
ハァ…謹慎か…。
謹慎ですって。
一緒にいたからわかってます。
どうします?僕はねえ亀山君…。
どちらかといえば穏やかな人間です。
争い事は好みません。
しかし売られたケンカは買いますよ。
えっ?そして必ず…勝ちます!
(浅倉禄郎)謹慎か…。
(武藤かおり)ええ。
正式な懲戒処分は現在検討中らしいわ。
言ったろう。
あの女が自殺なんて殊勝なマネするわけない。
でも毒を飲んだことは事実だわ。
万が一手当てが遅れれば命を落としていた。
ところで君に一つ訊きたい。
何かしら?君はなんでこんな伝書鳩を引き受けた?あなたに興味があったからよ。
「平成の切り裂きジャック」…かつては私と同様法曹界で活躍した稀代の殺人鬼をこの目で見たかったの。
君と出会って…なんだか命が惜しくなったよ。
そう?残念ね。
あなたの命はもうあなたの自由にはならないわ。
そうだね…そのとおりだ。
さすがに…ちょっとヤバくないっすかね?なんたって俺ら謹慎中の身ですから。
そう思うのならば…花いいですか?君は帰ってもらってもかまいませんよ。
帰りませんよ!俺だってね売られたケンカは買うほうですからねこう見えても!
(小暮ひとみ)お詫びなんてもう結構ですから。
そうはいきません。
あなたに不愉快な思いをさせてしまいましたから。
お詫びと言っては何ですけど…。
わぁキレイ!どうぞ。
もちろんこんな物で許していただけるとは思ってませんが。
許してあげるからもう私につきまとわないでね。
これで最後です。
謹慎くらっちゃいました。
私こう見えて今回のことは深く反省しています。
そうかしら?はい?これマリーゴールドだわ。
キレイでしょ?お気に召しましたか?花言葉をご存じ?さあ何でしたかねえ…?「悪をくじく」。
それは存じあげませんでした。
その辺りのことにはとんと疎いもので…。
(奥寺美和子)小暮ひとみの母親ですけどね亡くなったのは平成7年。
7年ですか…彼女が高校生のときですね。
なんで亡くなったんだ?クモ膜下だって。
(宮部たまき)まあ…若いのにお気の毒ですね。
家族関係のほうはいかがでした?ご近所さんの話によると良好だったみたいですよ。
家族3人とっても仲良さそうに見えたって。
ご主人は愛妻家だったらしいですしね。
愛妻家?ええ奥さんの誕生日には必ず食事に出かけたって話です。
二人っきり夫婦水入らずで。
愛妻家である父親があんなマネするでしょうか?えっ?部屋に飾ってあった写真です。
母親の写ってる写真は1枚も飾られていない。
確かに…愛する妻の写真を飾っておいても不思議はないですよね。
いやむしろ1枚も飾ってないのが不思議だ。
とすると…?小暮ひとみが母親の写真を排除している。
しかしなぜ彼女は母親の写真を排除するんですか?表面上は仲良さそうに見えて実は彼女と母親の間には何か確執があったとか。
嫉妬してたんじゃないかしらね?…はい?そのお嬢さん。
母親にですか?
(たまき)彼女お父さんのことが大好きだったんじゃないかしら?お父さんがお母さんと仲良くしてるからヤキモチ妬いてたんじゃないかしら?要するに…ファザコンだね。
ファザコンだな。
彼女がつき合ってた男たちを見ればその線は間違いない。
みんな父親と同じぐらいの歳だ。
なるほど…。
(小野田官房室長)さあいただきましょうか。
一つ訊いてもいいですか?何でもどうぞ。
官房室長というのはすごく偉いんですよね?かなり偉いですよ。
僕と食事をするのが目的じゃないでしょ?何かな?僕がお役に立てることかな?警視庁にとてつもなく無礼な刑事が約1名いるんですよ。
そう。
名前は…。
杉下右京かな。
…ご存じですか?彼はなかなか有名人です。
ああいう人野放しにしておくのはどうかと思うんです。
僕も同感です。
…本当ですか?ええ。
だったら…懲らしめちゃってください。
近いうちに“島流し”にしましょう。
できます?できますよ。
じゃあ…約束。
「嘘つきは泥棒の始まり」ですよ。
はい?「これが最後」って言ってたくせに…。
もう私につきまとわないでね。
これで最後です。
謹慎くらっちゃいました。
そのつもりだったのですが妙な花を差しあげてしまったことが気になりまして。
知らぬこととはいえ大変失礼しました。
大そうお気を悪くされてるのではないかと思いそのお詫びに。
…またお詫び?花はやめました。
ややこしいから。
ケーキですお詫びのしるし。
どうぞ。
ハァ〜…上がります?適当にどうぞ。
私はちょっと着替えてきますから。
き…着替え?大丈夫ですよ。
死んだりしませんから。
何なら私が着替えてるとこ見てます?いやいや…!亀山君座りましょう。
それじゃ。
食えねえ女。
あらためて見るとどことなく真鍋専務に似てません?日焼けしてスポーツマンタイプ。
精悍な感じですよね。
確かにそうですねえ。
極度のファザコンですよ絶対。
父親を追い求めて不倫してる。
ありえますね。
しかしこういう男がタイプだと官房室長はハナっから無理ですね。
ええ。
プププ…!お待たせしました。
紅茶飲みます?いえ結構。
それよりお訊きしたいことが。
そうですよね。
何でしょう?お墓参りはなさらないんですか?…は?お母さまのお墓ですよ。
実はさっきね…。
行ったんですか?ええ。
…信じらんない!娘さんにご迷惑をかけたのでそのお詫びに。
お詫び…?ハッ!お墓にはお母様がお一人で眠ってらっしゃるようですね。
…え?ずっと手入れがされてないようですね。
先祖代々のお墓ではない…そうですね?…そうですよ。
ずいぶん荒れてましたよ。
長らくお墓参りしてないでしょ?そういえばそうですね。
いろいろ忙しくて…。
いくら忙しいからって…たまには行ってあげないとお母さん寂しがりますよ?余計なお世話です。
こりゃ失敬。
先祖代々のお墓でないのならば当然お父様の建てられたものですよね?そうですよ。
お父様は愛妻家だったとお聞きしました。
そんなこと誰から聞くんですか?風の便りに聞きました。
ムカツク…!愛妻家だったんでしょ?だったら何ですか?なぜ棚にお母様の写真が1枚もないのでしょうか?は?愛する妻の写真を1枚も飾っていないのがどうも気になってしまって。
細かいことが気になるんですよ。
…僕の悪い癖。
ひょっとしてあなたがお母さんの写真をしまいこんじゃってるんじゃないですか?どんな写真を飾ろうと勝手じゃないですか。
ええもちろん。
家庭の事情まで立ち入る権利あなた方にあるんですか?ああやっぱり事情があるワケだ…お母さんの写真を飾らない。
揚げ足取らないでください。
お母さんとうまくいってました?いってましたよ。
ホントにィ〜?ホントです!母と私はうまくやってました!それが何なんですか!?・
(玄関のチャイム)…誰でしょう?お母さんの話題になったらちょっと動揺してましたね。
ええ。
やっぱりうまくいってなかったんじゃないですかねお母さんと。
(伊丹刑事)運転免許試験場の亀山ァ!つくづくバカだなてめぇは!何だとぉ!?ムリヤリ入ってきて居座って帰ろうとしないんです。
なんとかしてください。
おいおい…何言ってんの?
(三浦刑事)場合によっては住居侵入。
立派な犯罪ですよ。
ムリヤリ上がり込んだつもりはないんですがねえ。
押し入るように入ってきたじゃないですか!押し入るようにって…嘘言うな!君が「上がりませんか」って誘ったんだろう?誘ったりしませんよ。
嘘つき!う…!?
(内村警視長)いい加減にしろよ貴様らっ!
(中園警視正)謹慎を命じられていたんではないのか!いいか!お前たちの行動は立派な捜査妨害だ!捜査妨害?小暮ひとみに勝手に近づくんじゃねえよ!あの女をマークしてんのか?
(伊丹)当たりめえだろっ!あの女の言い分を鵜呑みにするほどオボコくねえや!状況的には相当クロっぽい。
だから勝手に動かれたら困るんだよっ!
(伊丹)警戒して挙がるもんも挙がらなくなっちまう!この件はきっちり監察係に報告しておくからな!謹慎中の捜査妨害行為…どういう懲戒処分が下るか楽しみに待ってろ!おいっ!首ゴシゴシ洗っとけ!じゃあな。
さすがに…ちょっとヤバイっすかね?覚悟はしておいたほうがいいかもしれませんね。
えっ?しかし…もう後戻りはできません。
この際懲戒免職処分が妥当じゃありませんか?クビですか…。
フン!クビになって当然ですよ。
(角田課長)…ムリだね。
頼みますよ。
ダメだね。
このとおり!拝みますから!…やだね。
俺と課長の仲じゃないっすか。
あなたねえ…ちょっと虫が良過ぎやしませんかね?この間の君の冷たい仕打ち…僕は一生忘れませんよ。
この間はすみませんでした!おかげで泣く泣く講習受けさせてもらいました。
次回は必ず便宜を図りますから。
お前なあ…たびたびシートベルト忘れてたまるかよ!課長ぉ〜。
「情けは人のためならず」…ねえ?この含蓄ある言葉の意味をしっかりと噛みしめなさい。
どうかお願いしますっ!亀山薫を助けると思ってどうか…!ちょっちょ…!やめてお前!そういう芝居がかったマネ!ね?調べてお願い!それは本当ですか?ええ。
そうですか…どうも。
(扉の開く音)こんばんは。
いらっしゃい。
わかりましたか?それがちょっと変なんですよね。
変?ええ。
小暮慶介の渡航履歴は平成10年で途絶えてます。
平成10年9月5日の入国が最後ですか…。
ええブラジルから帰国してます。
以後一切海外渡航の記録はない。
これって変でしょ?彼女はこの間父親は海外へ出かけたって言いましたよね?あ…そっちはどうでした?こちらもちょっと変ですよ。
小暮慶介氏はとっくの昔に大学を退職しています。
退職?正確には退職扱いになっています。
え…どういうことですか?平成10年に休暇を取ってブラジルへ行ったっきり戻ってこなかったそうですよ。
いや戻ってきてますよ。
ほらちゃんと入国してる。
記録によれば間違いなく帰国してるはずですねえ。
しかし小暮ひとみは「父親は帰国していない」「連絡もない」と大学側に言ったそうです。
そんなバカな…それって行方不明ってことですか?ええ。
小暮慶介氏が二度と大学に現れることはなかった…。
大学側が捜索願を出したりしなかったんですかね?彼女が固辞したそうです。
「プライベートな旅行中のことなので迷惑はかけられない。
自分で手配する」と言って。
うん…あ!平成10年といえば丸山教授の事件があった年!ええ…最初の毒殺事件のあった年ですよ。
臭うな臭うな…。
彼女は父親が帰国してるにもかかわらず消息不明だと言った。
一体父親はどこにいるんでしょうねえ…?おかえりなさい!
(小暮慶介)ただいま。
あ〜…疲れたよ。
お風呂入る?それよりビールをもらおうかな。
喉がカラカラだ。
あ…パパ。
ひとみいい子にしてたよ。
そりゃ偉かったな。
おかえりなさい!ちょっと待って。
お待たせパパ。
パパ…?パパ…。
パパーッ!お目覚めですか?よろしければここを開けてもらえませんか?お願いしまーす!何なんですか一体!?勝手に入ってきて!すみません何度もチャイムを鳴らしたのですが応答がないので。
部屋に明かりがあるからお留守ではないと思ったもんですからね。
こちらへ回って覗いてみるとお休み中のようでしたから…。
ドンドンと叩いて起こすのも気が引けたもんで…。
ここで待ってました。
寝てるのがわかったら帰ったらいいでしょっ!?大事なお話があるものですから。
話することなんてありません!ああ〜!僕はあなたにお詫びしなければなりません。
バカの一つ覚えみたいにお詫びお詫びって…!いえ今度こそ本当のお詫びです。
実は真犯人は他にいたようです。
他に?ええあなたのお父様です。
小暮慶介さんですよ。
パパが犯人…?何言ってんの?上がってもよろしいですか?このままですと表に丸聞こえですから。
いいっすか?お邪魔しまーす。
今回の3件の殺人…状況的にはあなたが非常に怪しい。
しかし証拠は何もない。
とりわけ頭を悩ませたのは…動機です。
なぜ次々に殺さなければならなかったのかその動機は一体何なのか…。
そう考えるとあなたには動機がないんですよ。
不倫とはいえ恋人を次々に殺さなければならない理由が見当たらない…。
例えば…相手に莫大な生命保険でもかけててその受取人にあなたがなってるとかいう状況でもあれば話はわかるんですけどね。
たいがい毒殺事件はそういう疑う余地のない動機から事件が解明されていくんですよ。
ですから少し視点を変えて考えてみました。
あなたの不倫相手を次々に殺す動機のある者はいないか…。
すると…いました。
…それがパパだって言うの?かわいい一人娘が自分と同じ年格好のそれも妻子持ちの餌食になってたら頭くるでしょ。
相手の男を殺したいほど憎んでもおかしくないでしょ。
場合によっては殺しても…。
パパは関係ない。
しかしお父様は…姿を消してるじゃありませんか。
え?平成10年9月5日ブラジルから帰国して以降行方をくらましている。
そしてその約4か月後の平成10年12月21日東亜薬科大学の丸山教授が殺された。
パパが殺したとでも…?あなたにはそのことがすぐにわかったんじゃありませんか?お父様の犯行だということが。
だから捜索願も何も出さなかった…そうでしょ?いまだに出してない。
捜されたら困りますもんね。
あなたはお父様の犯行だと知ってお父様を庇ってらっしゃる。
だから公には捜索願を出さずしかし我々の前では失踪中であることを悟られぬよう父親が相変わらず海外を飛び回ってるようにおっしゃったんですよ。
そんなのこじつけだわ。
そうでしょうか?僕はこの推理にかなり自信を持っているんですがねえ。
もっと優秀な刑事さんかと思ったけど。
それを言われると耳が痛い。
サルもたまには木から落ちます。
僕もあなたを犯人と決めつけるようなミスを犯す。
お恥ずかしい次第です。
帰ってください!パパが犯人だなんてバカバカしい!そんなくだらない話聞く気にもならないわ!お父様が犯人ですよ。
違う!違わないっ!!パパは人殺しなんて出来ないっ!そうですか…人殺しは出来ませんか。
…ええ。
まああなたが何とおっしゃろうと僕は必ずお父様を見つけ出してみせますよ。
いいから帰って…。
帰って…。
帰ってください。
パパなの…?あ…ああ…ああ…!ウソよ…。
・
(電話)パパーッ!パパ…ごめんね…。
なるほど…これではお父様の存在が希薄なはずですね。
「お父様には人殺しなんて出来ない」…。
確かにあなたの言うとおりだ。
僕もそう思ってました。
…あれは刑事さんの仕業か。
申し訳ない。
あなたにお父様のところへ案内していただくしかなかったものですからね。
刑事さんが空き巣みたいなマネするとは思わなかったから…。
あなたが捨て身で逃げようとなさったように僕も捨て身で追いかけようと思いました。
今度は立派な住居侵入です。
あなたが訴えれば僕はひとたまりもない。
訴える…?今さらそんなこと…。
…庭にいたのは刑事さん?すみません。
俺なんかじゃご不満でしょうけど。
参ったな…。
でも電話はどうやったの?電話?確かにパパの声だった…あれはどうやったの?我々は電話などしてませんが?ウソよ…。
(慶介の声)「ひとみか?」パパ…!「お前に会いたいんだ」パパのふりしてかけたでしょ?いや本当に電話なんか…。
…ねえ?ええ。
どうやったの?パパにそっくりだった。
そっくりも何も俺らお父さんの声聞いたことありませんからそんな細工なんかできませんよ。
夢でも見たんじゃないですか?夢…?夢だったの…?ううん…夢なんかじゃない。
確かに電話が…パパからだった。
お父様が我々に味方してくれたのでしょうかね?パパ…。
(パトカーのサイレン)ママが死んでパパと2人っきりになったときパパへの気持ちが抑えきれなくなった…。
(ひとみ)それ以来パパは私を避けるようになった…。
悲しかったわ…。
胸が張り裂けそうになるほど苦しかった。
コニインを飲ませたの。
毒ニンジンですね。
あなたがこの間お飲みになった。
そうよ…あれは苦しまないしゆっくり死ねるから。
(雷鳴)パパは私だけのもの…誰にも渡したくなかった…。
お父様を殺した動機はわかりました。
ならばおつき合いしていた男性を次々に殺したのはなぜですか?実はその動機が皆目わからない。
パパじゃないからよ。
…はい?みんなニセモノだったからよ。
私が欲しいのはパパだもの。
…なるほど。
そんなこともわからないなんて刑事さんやっぱり優秀じゃない。
ええおっしゃるとおり。
(米沢鑑識官)あの…。
定期入れに挟んでありました。
お父様がお持ちだったそうですよ。
どうしました?嘘の涙ならばいつまでも見ていられますが真実の涙はつらいですねえ。
懲戒免職もいいんですけどねえ彼らにはクビよりこたえるバツがあるんですよ。
ええそう…それはね島流し。
え?いやですからね…。
しまながし。
(笑い)いやいや…失礼しました。
そうです島流しです。
復活かあ…。
なんで復活すんだよォ!?知るか!奴ら警視庁に戻ってくるってことかよっ!?だろ。
クビじゃなかったのかーっ!!なんだよぉ…。
罠ですよきっと!罠?だってあの人の仕業でしょ?また何か俺らにさせようって魂胆ですよ!そのうち「特命係はやっぱり廃止」なんて言い出すに決まってる!まそのときはそのときです。
やはりここが一番落ち着きます。
特命係が落ち着くなんてどうかしてるんじゃないですか?ここは警視庁の“陸の孤島”ですよ?人材の墓場!ところで浅倉さんに報告は済ませましたか?今日武藤先生が行ってくれてるはずです。
(携帯電話)噂をすれば。
…もしもし?武藤です!亀山さん…浅倉さんが脱走したの!
(刑務官)斉藤主任を運んでよろしいでしょうか?はい。
脱走…?なんでですか?あいつは今さらなんでそんなことしなきゃいけないんですか?君と出会って…なんだか命が惜しくなった。
(パトカーのサイレン)お疲れさまです。
どこからですか?
(目撃者)あそこから。
(目撃者)ほーんとビックリしたわ。
「俺の命は俺のものだ。
俺の自由にする」「いざさらば」…。
「俺の命は俺のもの。
俺の自由にする。
いざさらば」…。
自分の手で幕を下ろしたんですね。
ええ確かにあの文面は遺書とも取れる。
遺書ですよ!奴は身を投げたんです。
自分で自分に決着つけたんです!しかしまだ遺体は上がってませんよ。
浮かんでくるもんか…!…はい?あいつは浮かんできませんよ!意地でも浮かんでこない!海の底にずっとへばりついてますよ!死んだんです…。
そうですね。
おそらく君の言うとおりでしょう。
小暮ひとみの逮捕がせめてもの餞になりましたよ。
ええ…。
ヒマか?…ヒマ?…ヒマですよ。
決まってるでしょ。
紅茶ある?2014/03/29(土) 12:00〜14:50
ABCテレビ1
相棒 season2 #1 #2[再][字]
#1「ロンドンからの帰還ベラドンナの赤い罠」
#2「特命係復活」
詳細情報
◇番組内容
#1「ロンドンからの帰還ベラドンナの赤い罠」
#2「特命係復活」
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、益戸育江、鈴木砂羽、岸部一徳、松下由樹、生瀬勝久、須藤理彩、清水紘治、神保悟志、片桐竜次、川原和久
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
サンプリングレート : 48kHz
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