鏡の反射で浮かび上がる複雑な文様。
これは鏡の裏側にある文様です。
古代の鏡で、こうした不思議な現象が起きることが最新の技術を使った研究で初めて明らかになりました。
生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
生放送でお送りしています。
きょうのテーマはこちらです。
担当は柳沢伊佐男解説委員です。
柳沢さん、不思議な現象が起きる古代の鏡というのは、まずどういうものでしょうか。
柳沢⇒三角縁神獣鏡という鏡です。
この鏡は邪馬台国の女王・卑弥呼が中国から授かったという説もある鏡でして、3世紀を中心に作られたと見られています。
歴史の教科書にも載っていますね。
直径が20cmほどで神様や想像上の獣の文様などが描かれていることからこの名前で呼ばれています。
鏡の実物の大きさのボードを用意しました。
意外と小さいんですね。
古代の鏡といえばこうした文様が印象に残るかと思いますが実はこれは鏡の裏側なんです。
表側はこのようになっています。
顔を映すほうが表なんですがザラザラしていて見えませんね。
どうして裏側に模様が入っているんですか?技術的にまじないのような意味合いのほか、ものを映す鏡本来の使い方と関係があるかもしれないと考えられていますがご覧のように表面がさびていて当時の輝きは不明です。
貴重な歴史資料なので磨くことができないんです。
そこで最新の技術を使って、色や形、輝きまで精巧に再現した鏡を作って、当時どのように使われていたかを調べる研究が行われました。
どのように研究が行われましたか。
レーザー光線装置で実物の鏡を正確に測りました。
この装置鏡の形を精密にしかも立体的に測ることができるんです。
そのデータをもとに特殊な機械で寸分たがわぬ鏡の複製が作られました。
ほとんど同じものができたんですね。
この機械は今、注目を集めている3Dプリンターの技術を取り入れたものです。
非常に細かい金属の粉を使いまして、レーザー光線で何層にも焼き固めながら、立体的な鏡の形を作りあげたんです。
鏡は銅とすずの合金なんですが実物と同じ比率で混ぜた金属の粉を使ったので、色合いや輝きもそっくりに再現できたということなんです。
表面がピカピカですね。
この鏡に太陽の光を当てて反射した光を壁に投影しますとどうでしょうか。
映りましたね。
輝きのある、丸い像が見えますね。
現れました。
光っていますね。
鏡の裏と同じ紋様なんですね。
画像で確かめてみたいんですが左が裏側で右側が表側です。
丸の位置が同じですね。
裏側の文様が映ったと考えられます。
この現象はどうしてですか?見えない部分の映像が映し出される不思議な現象を魔鏡現象と言われています。
古代の鏡でこうした現象が起きると確認されたのは今回が初めてです。
この魔鏡現象はどうして起きるんですか?鏡の表面に微妙な凹凸があるからだと考えられています。
まず三角縁神獣鏡の表面の形状を色の変化で示しているものです。
赤い色と青い色、それぞれありますが、それぞれ色が濃くなるほど、凹凸の程度が大きくなっているんです。
表にしても凹凸が裏の文様と同じようにありますね。
かなり凹凸があるように見えますがその差は1000分の1mm程度なんです。
表面を触っても分からないぐらいごく僅かな凹凸が表にあるんですね。
この凹凸が、どのようにしてできるかというのはこの図で説明します。
三角縁神獣鏡は裏側の文様で肉厚になった部分と薄くなった部分があります。
薄い部分は1mm以下と言われています。
表面を磨こうと力をかけますと薄い部分はしなるために多く削られます。
厚い部分ほど多く削られて凹凸ができます。
鏡の表面の凹凸というのは裏側の凹凸に対応してできているということですね。
表面に太陽の光を当てて壁のように投影しますと、先ほどの映像でご覧いただいたような、反射した光にむらが出て、鏡の裏と同じ文様を映し出すというふうに考えられています。
こうした仕組みを聞いても不思議だなと思いますが当時はどのように使われたんですか?鏡ですから顔などを映すために使われたということかもしれませんが、どうやらそれだけではなさそうです。
三角縁神獣鏡など古代の鏡は権力者を葬った古墳から見つかっていますので権威を高めるための特別な道具、宝物だったと考えられています。
その鏡がどういう場で使われたかと考えてみますと、例えば鏡を使った祭りというものが行われて、鏡に太陽の光を当てて像を映し出される。
集まった人々は驚いてその持ち主をあがめたのかもしれません。
ただ、この現象は鏡を磨いているうちに偶然見つかったのか、それとも意図的に作れたのかは今のところ分かっていません。
ただこの現象はほかの鏡でも魔鏡現象が起きるかどうかについては今後調べる必要があります。
魔鏡現象が起きるのは古代の鏡だけですか?現代でもこうした現象が起きる鏡があります。
スタジオで、ライトに照らしてみたいと思います。
これは仏様ですか。
映りましたね。
この鏡、江戸時代の技法を復活させた工房が作っているものです。
その工房といいますのはこちら京都市にあります。
ご覧いただいているのは、江戸時代の鏡の複製で当時は信仰のために裏側の仏の像が浮かび上がるような鏡が盛んに作られたといいます。
きれいに見えますね。
また隠れキリシタンの人たちがひそかに使った鏡もあるんです。
キリストの像が見えますね。
この鏡、裏側にこうしたキリストの像が表現されているんですけれども、ご覧いただいた裏の表面に隠されて見えないようにされているんです。
これらの鏡は明治時代、日本にやってきた外国人の関心を集めてさまざまな研究の対象になりました。
海外で紹介された名前は、マジックミラーと言います。
そのことばを訳した魔鏡がこうした鏡の一般的な呼び名になりました。
この鏡の不思議な現象、古代だけではなく現代の技術にも取り入れられています。
これは何の機械ですか。
表面の半導体の基板シリコンウエハーの、表面の状態を検査する装置です。
ウエハーの表面は細微な回路を取り付けるために鏡のように磨かれているんですが僅かなゆがみや凹凸が生じる場合があるんです、そうした不良品を見つける方法として魔鏡現象が注目されていて、この装置が開発されました、この装置が鏡に平行な光を当てて反射した光の像が乱れた部分がないか確認するもので国内をはじめ海外でも広く使われています。
現代にも生かされているんですね。
鏡の研究は、形や裏側の文様の変化、製作地の推定などが中心で用途についてはほとんど触れられていませんでした。
今回の研究を行った京都国立博物館の村上隆さんは最新の技術を使って古代の鏡の機能に迫る成果が得られたことで鏡の研究の新しい方向性を提案できたのではないかと話しています。
最先端の技術、次はどんな古代の謎を解き明かすか楽しみにしたいと思います。
最新技術で再現された古代の鏡が少し先ですが6月28日から8月31日まで富山県高岡市の高岡市美術館で展示されます。
柳沢伊佐男解説委員でした。
担当は中村幸司解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2014/02/14(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「現代技術が解明!古代鏡の謎」[字]
NHK解説委員…柳沢伊佐男,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…柳沢伊佐男,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療
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