(龍太郎)先生。
大丈夫ですか?
(荒瀬)すぐに精密検査受けた方がいいな。
L&Pに運べ。
俺L&Pの院長になるわ。
(龍太郎)お前ならできる。
(岡村)野口先生は初めてでしたね。
(岡村)検査が終わったらご紹介しますよ。
(野口)桜井修三?
(野口)彼はどこが悪いの?
(岡村)検査結果を見てみなければ分からないですがおそらく長年の献身的な医療で無理をされたんでしょう。
(野口)長年の献身的な医療。
(岡村)チームドラゴンは皆桜井先生を慕っています。
特に朝田先生にとっては言うならばヒーローのような存在です。
(野口)ヒーロー。
(桜井)通院している横山さんだがな冬場は血圧が上がるから利尿剤の量を増やしといてくれ。
(桜井)あっ。
それと自宅療養の河原さん。
(桜井)在宅酸素を導入したばかりだから夜にでも…。
(龍太郎)分かってます。
先生。
今は自分の体のことを考えてください。
(桜井)ああ。
しっかり休め。
荒瀬院長からもそう念を押されたよ。
荒瀬。
この病院を変えていきますよ。
(荒瀬)あしたのARのオペは青木に切らせろ。
(木原)いや。
いや。
あのう。
彼女は助手で執刀医は柏田先生の予定ですが。
(荒瀬)柏田の手袋のサイズは8。
(荒瀬)青木は6。
この患者の傷は7cmで収めなければいけない。
(荒瀬)狭い術野でのオペだ。
青木が執刀する方がいい。
(木原)外科医一人一人の手袋のサイズを。
頭に入れて当然だ。
(荒瀬)それとあさってのASDのオペの執刀医は佐伯だ。
(木原)いや。
あいつはまだ3年目で経験が…。
(荒瀬)若い外科医は経験を積まないと成長なんてしない。
(野口)新院長。
ずいぶんと張り切っているみたいだね。
(岡村)麻酔科医は様々なオペに立ち会い豊富なデータベースを兼ね備えています。
荒瀬院長は合理的にオペのローテーションを決めてくれていますよ。
(野口)ずいぶんと現場は混乱しているだろう。
(岡村)いえ。
荒瀬院長が決めるようになってから大幅にオペ時間が短縮され患者も術後の回復が早くなっています。
(野口)本丸は朝田だからね。
(岡村)私は朝田先生を説得する自信がありますよ。
彼は君が考えるほど簡単な男じゃないよ!
(岡村)結果を見ていただければ満足していただけると思います。
(岡村)ああ。
そう。
そういえば先ほど気にされていた桜井先生。
(岡村)これが本日の検査予定表です。
(野口)こんなところにいたとはねぇ。
(検査技師)それでは造影剤が入ります。
(桜井)うっ。
(検査技師)大丈夫ですか?中断しましょうか?いや。
大丈夫だ。
続けてくれ。
(千尋)桜井院長を今すぐ出してください。
桜井院長の誤診のせいで私の人生がめちゃくちゃにされたんです。
(看護師たち)誤診?
(早川)誤診?
(猪原)平山さん。
落ち着いてください。
(千尋)どうしてただの気管支ぜんそくが心臓病になるんですか?
(猪原)とにかくカルテを確認して…。
(千尋)必要ありません。
L&Pで再検査したらやっぱりただの気管支ぜんそくと言われましたから。
(岡村)桜井先生が誤診?
(早川)ええ。
(岡村)うん。
確かに気管支ぜんそくですね。
(早川)L&Pの正確な診断とは違って桜井先生は問診と聴診器だけの簡単な診察だったそうです。
平山さん。
心臓病だと診断され同僚に相談した。
それを偶然上司に聞かれてしまい彼女が企画したプロジェクトから外されたらしいです。
心臓病を抱えていては無理だと。
ところが実際は気管支ぜんそくだった。
それで抗議に来たんです。
(岡村)うん。
桜井先生が誤診。
信じ難いことですが。
・
(野口)当然のことかもしれないよ?彼が誤診するのは。
(岡村)野口先生。
それでどうなったの?えっ?あっ。
明日の10時院長代理として朝田先生が対応することになりました。
あしたの10時。
(野口)桜井修三。
(野口)彼は君の恩師だそうじゃないの。
長年の献身的な医療で無理がたたったのかな?気の毒だね。
もしそれが本当だとしたら。
どういう意味だ?彼は君のヒーローなんだってね。
何が言いたい?とかくヒーローとは秘密を抱えているものだからね。
ハァ。
平山さん。
もう一度診断をさせてください。
必要ありません。
L&Pで調べてただの気管支ぜんそくだったんです。
機械がはじき出す結果だけじゃ分からないこともあります。
誤診はL&Pの方だっていうんですか!
(猪原)平山さん。
落ち着いてください。
平山さん。
桜井先生は誤診をするような医者ではない。
そう信じてます。
あくまで非を認めないということですか?
(加藤)違います。
(加藤)桜井先生に代わってもう一度診断した上で…。
会社に入って初めて通った企画だったんです。
なのに誤診のせいで外されてしまった。
どんなに悔しいことか分かりますか?とにかく院長から正式な謝罪がなければ訴えます。
(野口)お気の毒ですね。
誤診とは。
私こういう者です。
どうぞ。
(荒瀬)お前のお師匠さんの容体思った以上によくない。
そうか。
(荒瀬)それにしても誤診ってホントなのか?桜井先生に限ってそんなことはない。
(荒瀬)今は話さない方がいいな。
もう一度その患者に会って自ら診るって言いだしかねないぞ。
(岡村)あっ。
先ほど桜井先生の検査結果が出ました。
(荒瀬)弓部大動脈瘤。
やっぱり最悪の心臓大動脈瘤か。
(荒瀬)だが俺たちなら助けることができる。
ああ。
(岡村)桜井先生の病気心臓だけじゃありません。
脳動脈瘤。
脳にも動脈瘤が。
しかも最もオペが難しい脳底動脈先端部に。
どちらもいつ破裂してもおかしくないサイズです。
(伊集院)心臓と脳に最悪の動脈瘤!?朝田は心疾患の可能性は覚悟していたそうよ。
でも予想外に脳にも動脈瘤を抱えてた。
(早川)だから誤診してしまった。
だって弓部大動脈瘤なら胸痛や嚥下時の違和感があるはずです。
脳動脈瘤もあるとすると頭痛けいれん四肢のしびれやまひ。
視野障害だって抱えていた可能性があります。
診療に支障が出てもおかしくない。
(荒瀬)《脳にも動脈瘤が》
(岡村)《どちらもいつ破裂してもおかしくないサイズです》
(野口)《とかくヒーローとは秘密を抱えているものだからね》
(鬼頭)桜井修三。
(野口)はい。
ではあしたよろしくお願いします。
平山さんに会ってくる。
このまま放ってはおけない。
(加藤)今日はずっとこっちにいるから。
(伊集院)大丈夫ですか?人工心臓の開発は。
こんなときに協力しないでいつするのよ。
加藤。
助かる。
・
(駆ける足音)
(早川)おはようございます。
(伊集院)どうしたんですか?
(桂)大変です。
監査です。
厚生労働省の医療監査です。
(伊集院)厚労省?
(早川)医療監査?
(嶋田)医療法に基づきこれより桜井総合病院の医療監査を行います。
(伊集院)厚労省が何でうちに。
(猪原)しかも抜き打ちで。
(嶋田)この病院の現状を緊急に把握する必要があると判断しました。
(猪原)どうして?・
(野口)当然じゃないかな?
(伊集院)何で野口先生が?桜井院長が誤診をしたそうじゃない。
現に誤診をされた患者さんも来ていらっしゃる。
平山さん。
(野口)正しい判断をしたL&Pの顧問として患者さんに対する責任があるからね。
監査に立ち合わせてもらうよ。
(嶋田)では医師免許患者カルテ等の関係書類の提出をお願いします。
(監査員)資料を拝見させてください。
(伊集院)こちらへ。
(嶋田)医療関係の資料の提出をお願いします。
(朋子)こちらです。
監査で見つかると思うよ。
ヒーローの秘密。
(監査員)医療機器操作マニュアルの不備が確認できました。
(監査員)医療安全管理委員会の実施が確認できました。
(伊集院)野口先生は誤診追及のためにわざわざ厚労省を動かしたんでしょうか?
(嶋田)桜井院長の医師免許も見せてもらえますか?
(猪原)あっはい。
今持ってきます。
(嶋田)誤診のことも含めこの病院での診療形態についてあなたたちからも聞き取り調査をさせてもらいます。
こちらが桜井院長が診断したカルテですね?
(嶋田)心臓病だと診断したのは問診と聴診所見からだけですか?その2つで心臓病のほとんどが推測できる。
(嶋田)詳しい検査もせずに心臓オペの必要性があると伝えていた。
問題だと思いませんか?
(伊集院)それは無理しないように彼女のことを思って。
結果誤診をしてしまった。
誤診かどうかはもう一度彼女を診断してからです。
(嶋田)カルテを精査して驚きました。
ここは高難易度オペの症例数が中小病院にしては基準値をはるかに超えている。
(伊集院)それが何か?高難易度オペは保険点数が高い。
利益のために無理してやってるんじゃないですか?そんなわけないじゃないですか。
(嶋田)それにこの病院は患者の死亡率が高い。
誤診。
高難易度オペの症例数。
患者の死亡率。
そしてもう一つ問題がある。
(嶋田)未収金の多さです。
診療報酬を着服している疑いがある。
そんなことは絶対にない。
(早川)未収金?
(伊集院)うちは中小病院にしては患者さんが多い。
でも経営状態はよくない。
(早川)つまり赤字の原因は診療費を申告せずに着服してるわけですか?桜井先生に限って着服なんて。
L&Pは何でこんな病院と協力関係を結んでんだよ。
(猪原)はい。
(監査員)院長の医師免許ありましたか?いえ。
どこにしまったのか。
何ですか?もう一度診断させてください。
監査が入って誤診を追及されるのが怖いんですよね?平山さんの体のことを心配してるんです。
もし心臓に…。
何が何でも私を心臓病にしたいんですね。
いいかげんにしてください。
・
(呼び出し音)荒瀬。
調べてもらいたいことがある。
(荒瀬)分かった。
すぐに捜してみる。
(木原)院長。
大変です。
朝田の師匠が。
(ノック)
(監査員)まだ見つからないんですか?
(猪原)ええ。
(監査員)通常監査では提出されていたんですよね?
(猪原)看護師の分は私がまとめて。
医師の分は院長に任せっきりで。
(監査員)専門医の認定証や学会の表彰なども掛けていないんですね。
(嶋田)やはりどう考えてもこの未収金の多さは不自然です。
(桂)院長。
治療費が払えない患者に払えるときになったらでいいって言ってるんです。
(朋子)私たちが止めても患者のためだって。
(嶋田)これほど経営状態が悪いのに診療費をいつでもいい?信じられませんね。
それが桜井先生という人です。
(嶋田)院長の医師免許は?
(監査員)どこにもないようです。
(猪原)どこかにしまっているんだと思うんですが。
(荒瀬)朝田の師匠の医師免許?医療監査が入ったんです。
野口先生の差し金です。
(荒瀬)あのたぬき親父。
何考えてんだ。
・
(伊集院)とにかく桜井先生にどこにしまってあるか確認してもらえますか?それができない。
(木原)先生。
Aライン入れますね。
(荒瀬)ついさっきけいれんの発作を起こした。
(伊集院)けいれんの発作?
(荒瀬)ああ。
鎮静剤を打って今は落ち着いたがまだ話せる状態じゃない。
(伊集院)そうですか。
(荒瀬)意識が戻ったら連絡を入れる。
(伊集院)分かりました。
(猪原)桜井先生が発作を?
(伊集院)今はもう落ち着いてるようですがまだ意識は。
(野口)ずいぶんと都合がいいときに発作が起きるもんだねぇ。
いくら捜しても無駄だよ。
医師免許は見つからない。
どういう意味だ?彼は医大に入学はしているけど卒業はしていない。
つまり医師国家試験を受けていないんだよ。
桜井修三。
彼は無免許医だ。
何言ってる?そんなことあるはずがない。
じゃあこの中に彼の医師免許を実際見たことがある者は?猪原さん?詳しく教えてあげよう。
君のヒーローの秘密をね。
(野口)この椅子座り心地悪いね。
桜井先生は長年この病院で院長を務めてきた。
医師免許がないなんて…。
懐かしいねぇ。
これこそが君のヒーローが無免許医だっていう証拠だ。
1968年。
桜井修三は帝都医大の医学部の学生だった。
当時は医大を卒業しても1年間はインターンという立場で医師免許も与えられず給料も出なかった。
そのインターン制度廃止を求めて学生たちが立ち上がった。
桜井修三はその運動のリーダーだったんだよ。
僕もその運動に参加した。
確かに46年前彼はヒーローだった。
(桜井)《学位とポストを餌に無給で医局に縛られている》
(一同)《そうだ!》
(桜井)《われわれはインターン制度廃止を要求する!》
(一同)《おおー!》
(桜井)《われわれは自らの手で未来を切り開く》
(野口)《そうだ!そうだ》
(桜井)《われわれは…》
(野口)彼は本当にカッコ良かったよ。
(桜井)《闘うものである!》
(野口)《大学が機動隊を入れる噂があるんですけど大丈夫でしょうか?》
(桜井)《ここで闘争をやめるわけにはいかない。
今諦めてしまえばこれからもずっと俺たちは大学や教授の言いなりだ》
(桜井)《生活のために医師免許もないのに当直のアルバイトをしてふらふらになりながら医局の雑用を押し付けられる》
(桜井)《俺たちは医者になって患者を診るためにここに入った》
(桜井)《権威や金もうけのためじゃない》《今俺たちが動かなければ何も変えられない》《一緒に最後まで闘おう》《はい》
(野口)桜井たちは最後まで大学に立てこもった。
(隊員)《おとなしくしろ!》
(桜井)《うわー!》
(野口)だが結局不法占拠で逮捕。
退学処分になった。
僕は機動隊が来たときその場におらず難を逃れたんだ。
ヒーローは敗れて失墜した。
退学になっても別の医大に入学すれば…。
僕たちはそれを待ったよ。
これからが本当の闘争なんだって。
でもそれっきり彼の行方はつかめなかった。
本当に逃げたんだよ。
理想ばかり語って僕たちをたきつけるだけたきつけてね。
退学になった桜井は国家試験を受けていない。
つまり医師免許を持っていないんだよ。
行き場を失った僕は仕方なく医局へ戻った。
学生運動に参加していたから上から目を付けられひどい扱いを受けた。
でもねそれでも耐え忍んでやっと医者になった。
それなのにやつはこんなところへ逃げ込んでヒーロー面をして活動を続けてる。
桜井修三は無免許医。
これが真実だ。
・
(足音)
(早川)加藤先生。
大変なことになってますよ。
桜井院長。
無免許医だったらしいです。
(加藤)えっ?
(早川)医大を退学して医師免許を取っていないままずっと診療を続けてきたんです。
・
(倒れる音)・
(看護師)大丈夫ですか?どうされました?・
(看護師)大丈夫ですか?
(看護師)大丈夫ですか?
(看護師)先生呼んできて。
(看護師)はい。
(看護師)しっかりしてください。
大丈夫ですか?
(看護師)どうされました?
(野口)監査の結果間違いなく桜井病院は閉院だ。
君も無免許医の桜井の下にいたなんて知れたら困るだろう。
その前にL&Pに来なさい。
世界の誰よりも君のことを評価しているのは僕だよ。
君をあのころの僕みたいにしたくない。
これ以上桜井にだまされるな。
俺は…。
桜井先生を信じる。
あんな偽医者何で信用するんだ!
(伊集院)朝田先生。
平山さんが。
(加藤)呼吸困難を訴えてロビーで倒れたわ。
両肺野にwheezingを聴取した。
ぜんそくの発作よ。
(朋子)血圧75の45。
心拍数112。
サチュレーション91%。
(加藤)酸素5リットルに上げて。
(桂)はい。
(加藤)朝田。
βブロッカー用意してくれ。
(紗枝)はい。
(野口)βブロッカーだって?何をバカなことを。
気管支ぜんそくならβ2刺激薬に決まってるだろ。
βブロッカーなんて打ったら呼吸が止まって最悪死を招く。
医療過誤で医師免許は剥奪になるぞ。
彼女は気管支ぜんそくじゃない。
心臓ぜんそくだ。
何を言ってる?L&Pで呼吸器内科の専門医がCTも撮った上で診断したんだ。
気管支ぜんそくに決まっている。
β2刺激薬だ。
(伊集院)L&Pの診断どおりならβ2刺激薬。
でも桜井先生の診断どおりならβブロッカー。
(桂)どっちなんだ?無免許医を信じて患者を殺す気か?
(紗枝)βブロッカー持ってきました。
(加藤)朝田。
(野口)やめろ。
打つな。
ノー!何てバカなことを。
発作が収まったわ。
(野口)どうして?平山さんは感情が高ぶったとき…。
《誤診はL&Pの方だっていうんですか!》頸静脈の怒張が見て取れた。
それに…。
(千尋)《何ですか?》下肢の浮腫もあった。
これは明らかに心臓ぜんそくの兆候だ。
さらに桜井先生のカルテによれば聴診時の収縮期雑音と