(牟田明子)ちょっと早いけど一足先に出ますね。
何しろ初めてだから…。
ちゃんと戸締まりお願いしますね。
あなた聞こえてるんですか?あなた?
(牟田一郎)俺はまだ耳は遠くないよ。
返事ぐらいしてくださいよ。
はいはい。
じゃあいってきます。
あっ今夜の約束覚えてますね?さっき約束したこと忘れるわけないだろ。
じゃあね。
ボランティアボランティア!・
(笛の音)・
(笛の音)すいません。
登校の時間はここ通行止なんです。
(鈴木円)ごめんなさい。
ちょっと遅れちゃって…。
この子幼稚園に送るところなのよ。
じゃあ車を降りるしかないのね。
美紀降りるわよ。
はい。
よしさあ行きましょう。
あのここ駐停車禁止なんですよ。
じゃあ私どうすればいいんですか!?そうですね…。
(鈴木美紀)せんせーい!
(木村みどり)おはようございます。
(円・美紀)おはようございます。
おはよう。
遅かったんでちょっと様子見に来ました。
すいません。
よろしくお願いします。
じゃあ行こうか。
いってらっしゃい美紀。
バイバーイ!はーい。
あっどうも。
ご苦労さまでした。
(パトカーのサイレン)
(中山)検挙しました。
(梶原)ああご苦労さん。
何だか嫌になりましたよ。
強盗だっていうから勢い込んで行ったんですけど空き巣でした。
冷蔵庫からソーセージ1本とって食べてるところへこの家のご主人が戻って来ちゃったんです。
被害はソーセージ1本?そうなんです。
今佐野さんと桜井さんが取り調べしてますけどあれはどうも初犯ですね。
手錠かけるのが気の毒みたいでした。
それで味をしめてまた次をやるってことだってあるんだから空き巣は空き巣だ。
はい。
(村松)私淹れます。
ああありがとう。
・
(梶原)村松君!女性だからという理由でそういうことをするのはやめにしようとうちの課では申し合わせしただろ。
「淹れろ」と言われたら断ります。
でも自分の意思ですから…いいですよね?意思だそうです。
そりゃあまあね。
今日は暇だしこれくらいのことしませんとね。
毎日君がお茶を淹れたくなるくらい暇でありたいねぇ。
私の能力はそれぐらいってことですか!?
(一同)いやいやそうじゃなくて…。
ハッハッハ…。
刑事課が暇だってことは凶悪事件が起こらないってことじゃないか。
そうですよね。
いいことなんですよね!まったく何してんだ…。
(携帯電話)はい。
明子何してるんだ?約束忘れるなって言ったのお前のほうだろ。
一体どこにいるんだ!?家を出るわけにいかなくなっちゃったの。
あのねお子さんを預かってるのよ。
お帰りになったら電話をくださいって留守電を入れちゃったものだから家を出るわけにいかないのよ。
あのねどういうわけかっていうと…。
それはあとでいいよ。
とにかく帰る。
ああ?ハハ…怒っちゃいないよ。
・
(扉の開く音)ただいま。
シーッ!帰ったよ…。
寝ちゃったのよ。
えっ?寝ちゃったの。
お母さんが夜のお勤めなんですって。
それで幼稚園の若い先生が面倒をみてくれていたんだけどもどういうわけかその先生がいなかったんですって。
うん…。
それが奇妙な縁なの…。
私今朝ボランティアで交通整理に行ってたでしょ。
そのときあの子の母親とも幼稚園の先生とも会ってるのよ。
ちょっとしたもめごとがあってね。
ああ車止めてどうとかっていうあれか?どうして知ってるの!?地獄耳だ。
見てたんだ!?バレたか…。
ハハハ…。
ハハハ…まあそれはどうでもいいけども…。
(電話)きたきた。
もしもし牟田でございます。
ああ鈴木美紀ちゃんのお母様でいらっしゃいますか?はっ?ああ幼稚園の先生…。
はい木村みどりです。
あのそちらで鈴木美紀ちゃんを預かっていただいているそうで…。
留守番電話今聞いたものですから。
私ちょっと用事がありましてそれが長引いてしまいまして…。
すぐ迎えに行きます。
どうやって行ったらいいんでしょうか?本当にありがとうございました。
いいえ。
美紀ちゃんせっかくよく寝んねしてたのに起こしちゃってごめんね。
そんな…。
ご迷惑をおかけしました。
じゃあ美紀ちゃんご挨拶して。
さようなら!ありがとうございました。
ありがとうございました。
どういたしまして。
また遊びにいらっしゃいね。
気をつけて。
それでは失礼します。
バイバーイ!気をつけてね。
バイバーイ!何時?もう9時半。
でもお迎えが来てよかった。
君恵にもあんな無邪気なころがあったのかね?フフ…決まってるでしょ!どうもよく思い出せないな。
自分の娘でしょ!
(電話)ああもしもし?工藤君か。
えっ…?変死体!?場所は?
(パトカーのサイレン)ご苦労さまです。
じゃあ私どうすればいいんですか!?
(佐野)携行していた運転免許証によりますと鈴木円。
これは「まどか」と読むんでしょうか?年齢は29歳です。
ここに頭を強打した。
検視官によりますとこれが致命傷のようです。
死亡推定時刻は昨夜の9時から12時の間。
殴られたとかそういうことはないか?その形跡はありません。
今のところ事故の可能性が大きいという印象ですね。
夜9時から12時の間どうしてこんな場所に来たんだろうな?さあしかし刑事官彼女のバッグの中は化粧道具ハンカチ他女性の普通の持ち物ですが現金8万円と小銭クレジットカード2枚。
まず物取りとは思えませんね。
彼女はね夜の仕事をしてたんだよ。
子供を知り合いに預けてね…。
(工藤)えっ!?どこでわかるんですか?あの人を見かけたんだよ。
知ってるんですか?だから見かけただけなんだよ。
俺の知ってるのはそれだけだ。
事故と決めつけずに事件をいうことも考えよう。
ただつまづいて転んだというにしてはちょっとおかしい。
例えば誰かに突き飛ばされた拍子に強打した。
はい。
それにしても…。
このことを子供に伝えなきゃならん。
大仕事だ…。
・
(中山)刑事官!ホトケさんはたしかに両方の耳にイヤリングはしっかり付いてました。
これは間違いありません。
鑑識さん!昨日はありがとうございました。
あっいや…。
昨夜美紀ちゃんのお母さんはとうとう迎えに来なかった。
はい。
どうしてそのことを?じつは美紀ちゃんのお母さん亡くなりました。
えっ!?今朝水門跡の波止場でジョギングの人が死体を発見したんです。
美紀ちゃん他に身寄りは?親ひとり子ひとり…。
どうします?私美紀ちゃんに言いましょうか?あとで…あとで様子をみて私が自分で言います。
鈴木円さん…。
何かもめごとがあったとかいうようなことはありませんか?今にしてみると何か気になるというようなことは?あなたに子供さんを預けるくらいだから親しかったんでしょ?郷里の町で家が近所だったんです。
ああ幼なじみ?円さんが5つ年上でしたけど郷里の町を出たのは私のほうが先でした。
私横浜の短大に通ってたんで。
あなたと円さんの郷里は?那智勝浦です。
南紀の。
ああ紀伊半島の南の…。
海岸です。
うん…。
いや私は行ったことないけど何となく…昔ほら熊野詣でとかそのへんでしょ?そうです。
暮らすにはいいところだと思うけど円さんなぜ小さい子供を連れて横浜へ出てきたんです?ご主人が亡くなったからです。
美紀ちゃんのことですがね身寄りがないとなると児童相談センターとか…。
美紀ちゃんは私が育てます!しかし…。
(携帯電話)あっ失礼。
牟田だ。
おう工藤君。
うん?昨夜女が2人言い争ってるのを見たっていうんです。
ええ。
この時間にもう酒を飲んでて信用していいものかどうかわかりかねるんですが…。
おう酒か…フフッ…。
お水です!うっ…!酒のほうがいいんだよ!おいいい加減にしろよ!さっきの返せほら。
刑事官!昨夜のことを話してくれませんか?ああ?言い争ってた2人の女性の片方はこの人と違いますか?う〜ん。
わかんねえな。
でもね体つきがよく似てるんだよね。
でもほらあんまり近くで見たわけじゃねえから。
あの剣幕じゃ近寄れなかったもんね…。
何を言い合ってたか聞こえなかったんですか?あっ…あんた私に敬語を使ってくれましたね。
ありがとう。
いやねこの若い2人が犯人扱いして本当にぞんざいなんだからもう…。
いやそんなことないですよ。
犯人だなんてそんな…。
あの…言葉聞こえなかったかとか?ああ…。
そういえばね「うちの主人」とか「誘惑した」とかって…。
そうだきっと旦那が浮気がバレたんじゃねえか?私はそう思うな。
その1人の女が逃げたあとを追っかけていくんだよ。
まあ俺は追っかけなかったけどあんまり興味なかったからね。
だからあとのことは知らない。
他に何か思い出すことないか?もうほら…その言い方だ。
ないでしょうか?ない!それは昨夜何時ごろでしょう?うん…8時…。
8時?9時かな…。
ああ10時かな?わかんねえ…。
どうもご苦労さまでした。
もう一度考えて何か思い出したら知らせてください。
ああどうも…。
どっこいしょっと…。
ああ思い出した!えっ?あのな「うちの主人」って言った女はなあれもう1人の女より年上だった。
ああっ!さっきの酒返して。
ああまあいいからいいから。
ご苦労さんでした。
ご苦労さまでした。
(中山)大丈夫?大丈夫?
(工藤)恐れ入ります。
こちらの方ですね?
(高梨淳)はい。
鈴木円さんこちらで働いてたんですね?亡くなったことご存知ですか?はい。
さっきニュースで見てびっくりして電話を。
電話?どこへ?はっ?ああいえ…。
円さんには小さな子供がいたと思い出しまして…。
どこへ?電話…。
円さんの知り合いです。
子供を預けたりなんかしてましたから。
木村みどりさん?ええ。
円さんのこと警察の人から知らされたって言ってました。
あなたと木村みどりさんとは?田舎が同じでして。
那智勝浦。
何でも知ってるんですね。
円さんも同じ。
はい。
あなたと2人この店で働いてるのは偶然じゃないですね。
はい。
会社が倒産して困ってたら円さんがここへ口をきいてくれたんです。
そう…。
じゃあ円さんには恩があるということになりますね?はい。
ひとつ協力してください。
円さん目当ての客というのはいませんでしたか?えっ?円さんに特別ご執心の客といいますかつまり円さんに熱くなっていた客ですね。
そういう人いませんでしたか?・
(藤本強)どなた?
(高梨)マネージャー。
亡くなった鈴木円さんについて伺っていたところです。
ああ…。
ニュースを見て驚いたんですがね…。
しかしあれは事故なんでしょ?
(工藤)あなたが決めることじゃないんです。
円さんには特別なお客さんなんかいませんよ。
大人っぽい色気があったからファンは少なくなかったけど子持ちだってわかるとお客さんも腰を引くんです。
余計なことを言うんじゃないよ。
お客様に迷惑のかかることなんだから。
もうひとつだけ教えてください。
昨夜円さんは出勤したんですか?来ましたよ。
8時ごろちょっと出てくるって私に断ってそれっきり。
まあどうしたんだろうとは思ってましたけどね。
思っただけ?だってこっちはこっちで仕事があるでしょう。
それっきりで何の連絡もなくてあなたそれでどうしてマネージャーとして仕事が…。
・
(ドアベル)
(ホステス)おはようございます。
(藤本)おはよう。
あっ恵美ちゃん昨日あれからお客さんとどこに行ったの?知らない知らない。
ダメだよ真面目に生きなきゃ。
マネージャーって男の目の届かないところで店の女の子たち一人一人事情聴取だな。
はい。
これお客の名刺なんですが…。
あなたの名前聞いてませんでしたね?高梨です。
高梨淳。
山下署の牟田です。
何か気がついたことがあったら協力してください。
昨夜の円さんのことなんですが女性の声で電話があって私が取り次ぎました。
名前は?いえ…。
訊いたんですが言ってくれませんでした。
どんな声?例えば険悪な調子だったとかキンキンしてたとか。
いえ落ち着いた声でしたよ。
今思えばそう若くはない声だったと思います。
円さんの応対の様子は?ちょっと苛立ってました。
何なのよこんな時間に。
私仕事中なの。
うるさいわね…!わかったわかった。
そっちに行く。
で円さん出て行ったんだね?はい。
8時ごろ?あっ私は時計を見ていませんから…。
マネージャーが言うんだからそうなんでしょう。
じゃあ私は店へ戻ります。
ありがとう。
(工藤)永井隆弘…。
(永井隆弘)永井です。
鈴木円さんが亡くなったことご承知ですね?鈴木円が亡くなったって…。
今そう言いましたか!?一昨日ですよ。
ワイドショーでもやってるし知らないわけないでしょ?私は今朝出張から戻ったばかりなんです。
円がそんな…。
出張はいつから?どちらへ!?出張中の領収書です。
これから精算しようと思ってたんです。
どうぞ調べてください。
拝借します。
鈴木円さんのいる店へはよくいらしたようですね。
はい。
間違いありませんね?はいどうもありがとうございました。
ウラ取れた。
ああそうですか。
すいませんどうもありがとうございます。
これもウラ取れた。
はい。
捜査というのはいくつもの疑いを調べることによって疑いの晴れたものをひとつひとつ抹消していく。
となりますとあなたについても疑いはあるんです。
えっ?一般的な話としてです。
円さんと奥さんとの間で板ばさみ。
これは大変だ。
いっそ円さんを消そう…。
そんな…そんな…!アリバイは完璧です。
これお返しします。
永井さん円さんは亡くなった夜女性と大声でもめていたという証言があります。
心当たりありませんか?いえ…。
円さんの遺体の近くに落ちていた物です。
誰の物か見覚えがあるんですか?まさか…。
奥さんの物…?妻とは別居してます。
原因はお察しのとおり鈴木円です。
私は円との結婚まで考えていました。
でも妻が離婚に応じないんです。
2か月ほど前から実家に帰っています。
私としては時間を置いて妻が冷静になるのを待つつもりでした。
でずっと会っていないんです。
まさかとは思いますがもしそういうことになったとしたら…私の罪ですよね。
おい!はい。
どっちだ?ええと…こっちですね。
ごめんください。
・
(永井ユキ子)はーい。
永井ユキ子さんですか?永井隆弘さんの奥さんですね?はい。
警察の方が何のご用でしょうか?鈴木円さんご存知ですね?はい。
亡くなったことは?ああ…。
鈴木円さんの亡くなった日の夜円さんに会いましたね?いいえ。
奥さんの物ですね?いえ似たような物は持っていますが…。
それを見せていただけませんか?でも…。
片方落としたんじゃありませんか?残りの1個しかないんでしょう?それを見せてください。
あの…どこで落としてしまったのか…。
奥さん鈴木円さんともみ合いになったときに落ちてしまったんじゃないでしょうか?もみ合ってなんかいません!ただ言い合いにはなりましたけど。
鈴木円さんと会った…。
そのことは認めましたね?私は推測でものを考えたくないのであえて尋ねますが…。
あなたは何のために鈴木円さんと会ったのですか?主人と別れてくれるように言うためです。
ご主人はあなたに離婚したいと言ってたようですね。
はい。
元は私が火をつけたことになるのかもしれません。
主人の様子がおかしいと感じて調査会社に調べてもらいました。
鈴木円という女のことを主人に突きつけたんです。
私は謝ってくれるだろうと思っていたんですが…。
(隆弘)別れよう。
俺は子供が欲しい。
少し歳をとったせいかな。
このごろしきりにそう思うようになったんだ。
お前と結婚してもうかれこれ15年だ。
お前ももう40が近い。
今さら子供でもないだろう。
鈴木円には子供がいる。
これがかわいい子でね。
人懐っこいんだ。
かわいそうに父親を亡くした。
俺を父親のように思うらしいんだよ。
で俺は父親になってやろうと思う。
ふざけたこと言わないでよ!子供がそんなに欲しければ私たちが養子を考えればいいことでしょ?あなたはこの鈴木円っていう女に迷ってるだけなのよ!迷ってるわけじゃないよ。
大真面目だよ俺は。
別れてくれ。
いや…。
私鈴木円がどういう女かまた調べてもらいました。
もし主人をもてあそぶような女じゃなくて私が負けたというようないい人だったら納得して別れるということもあるかもしれない…。
そういうつもりで調べてもらったんです。
ところが鈴木円には他にも男がいたんです。
ラブホテルから男と一緒に出てくる写真を見せられました。
主人はだまされていたんです。
でご主人と別れてくれるように鈴木円さんに迫った。
迫ったというほどじゃありません。
頼んだんです。
(ユキ子)でも話が話ですからお互いだんだん言い募って…。
円さんを突き飛ばした?突き飛ばされたのは私です。
このイヤリングそのときに落としてしまったのかもしれません。
口では何とでも言えますよ。
じゃあ私が突き飛ばしたんだって証拠を見せてください!何…!?おい!その円さんがラブホテルから男と一緒にという写真ありますか?ありません。
円さんに見せたら破いてしまいました。
円さんとの決着はどうなりました?一度は追いかけました。
でも円さん逃げてしまったんです。
結局会ってただ言い合うだけで何も実りはありませんでした。
あの…言うだけのことは言いました。
隠してることは何もありません!帰していただけませんか?そうですね。
また協力していただくようなことになるかもしれませんが…。
(イスが倒れる音)あの女嘘をついてます。
鈴木円の死亡推定時刻は午後9時以降。
永井ユキ子が鈴木円と会ったのは午後8時。
アリバイはあると思ったんですが…。
永井ユキ子はイヤリングが落ちるほど鈴木円ともみ合いになって突き飛ばした。
頭を打ちつけて昏倒したがしかし即死じゃなかった。
それを放置して永井ユキ子は逃げてしまった。
鈴木円はそれから1時間以上経った午後9時から12時までの間に息を引き取った。
こういう推理だな。
はい。
あの女どうも虫が好かない。
徹底的に調べます。
捜査は虫の好き嫌いじゃない。
はいわかってます。
私はどうも永井ユキ子が嘘を言ってるとは思えないんだよ。
永井ユキ子のことは他の捜査官たちに任せて私は別の角度がないか鈴木円のことを一から調べ直してみたいんだけどねぇ。
じゃあ那智勝浦へ?うん。
(木本)あの…牟田刑事官?新宮西署の木本警部補?はい。
遠いところご苦労さまです。
いや…と言いたいところですが飛行機に乗り電車に乗りしまいには船。
これが仕事でなきゃいい旅なんですがね。
はい。
とりあえず中へどうぞ。
新宮の本署までおいでいただくこともないと思いましてここでお待ちしたんですが…あっ行きましょう。
ここは勝浦の町を一望できますしまずどういう町かを見ていただいて。
こちらです。
刑事官が列車でお着きになった駅が紀伊勝浦。
しかし町の名前は那智勝浦。
そこへもってきて南紀勝浦温泉なんて言い方もありますからちょっとややこしいんですが…。
鈴木円はここで生まれ育っています。
23歳で結婚し明くる年には女の子が生まれています。
そこまでは特別な話題もない勝浦の町の平凡な女性です。
ご主人が亡くなったと聞いてますが?そうです。
女の子が2歳になったころです。
で今駐車場になってますが当時あのあたりで釣客相手の釣具屋をやっていたそうです。
3年前の夏客を案内して小船で釣りに出たんですが素潜りでサザエを獲るということで何度か潜ってるうちに何らかの異変で溺死してしまったんです。
若い妻と2歳の子供を残してですね?はい。
それから半年ばかり鈴木円は子供を抱えて釣具店を続けていたようなんですがご主人のときのようにはいかなかったようです。
釣具店といっても素人には無理ですからね。
じゃあ他の仕事といってもこの町では簡単に仕事が見つかるもんじゃありません。
鈴木円が都会へ出てったというのは私ら土地の者には素直にわかるような気がします。
しかし…なぜ横浜だったんでしょうね?ここで都会といえば距離や交通の便からいって大阪京都名古屋と思いつきそうですがねぇ。
それはそうですね。
私もそこまでは考えていませんでしたが…。
私どもの調べではこの程度なんですが…。
何しろさっきも言いましたように勝浦にいたころの鈴木円は特別な話題のない女性でして…。
とりあえず鈴木円のご主人が亡くなったときの事故の調書を見たいんですがね。
承知しました。
明日ホテルにお届けします。
今日はゆっくりお休みください。
あのホテルは温泉のお風呂だけでも3つありますから風呂のはしごならまず忘帰洞から始めてください。
帰るのを忘れると書いて「忘帰洞」。
(美紀)わーい!美紀ちゃん気をつけてね!はーい!どうしてるかと思って…。
美紀ちゃん預かってるって噂を聞いたもんだから。
あの子円さんのこと知ってるの?お母さん用ができて旅行に行ってるって言い聞かせてあるの。
いつまでも嘘をつき通せるわけじゃないし警察に相談して施設に…。
かわいそうじゃない!でもみどりちゃんの人生これからだよ。
結婚したい相手だって出てくるだろうし…。
私の事情を知っててそれでもいいっていう人が出てきたらね。
もしダメならずっと美紀ちゃんと暮らすわ。
みどりちゃん…。
うん?俺…。
俺にできることがあったら何でも力になるよ。
ありがと。
美紀ちゃーん!帰るわよ。
どうも。
解剖の所見によりますと亡くなった人は酒を飲んでたようですね。
酒ですか…。
ええ。
それで1分2分もの素潜りを繰り返したもので心臓麻痺を起こしたようです。
無茶やったもんですね。
女の子にいいとこ見せようとしたんじゃありませんかね。
女の子?鈴木円の夫が事故死したときその小船に乗ってた客は1人でして女性でした。
その供述調書です。
女性…。
木村みどり?女性っていうのは木村みどりですか!?刑事官ご存知ですか!?木村みどりとは奥さんの円も知り合いでなんでもみどりが夏休みで帰省したとき釣りをしたいということになっています。
私もその調書を初めて読んだんですがこの木村みどりの住所が横浜なんですね。
刑事官がおっしゃってた鈴木円はなぜ横浜へ行ったのかそのことと関係があるんでしょうか?じゃあ…。
美紀ちゃんは私が育てます!鈴木円がなぜ横浜に行ったのか私なりに調べてみたいんですがいいですか?どうぞ。
縄張りなんか気にしないでください。
すみません。
鈴木さんの家はここにありました?ええ前までありました。
じゃあどうも。
寝てるんです。
でも…元気だってことは一安心ね。
はい。
美紀ちゃんも大変だけど…。
みどりさん。
私に相談に乗れることがあるんじゃないかと思って。
ありがとうございます。
でも私は…。
ただいま。
(吉村君恵)お帰りなさい。
えっ…何だお前?お母さんに留守番頼まれたのよ。
ねえお父さん熊野のほうへ行ってきたんですって?ああ。
那智の滝見た?熊野大社は?私ね大学のころからの憧れだったのよ。
熊野古道を歩いて昔の人みたいに熊野詣でをいっぺんしてみたいと思ってたの。
熊野古道行った?バカ。
俺は観光に行ったんじゃない。
お土産は!?ああ…あるわけないね。
(電話)はい牟田でございます。
ああはい。
もしもし?ああ課長…。
お疲れさまです。
じつは今わかったんですが隣の課にですねひと月ほど前に盗難届が出てるんですよ。
それが気がかりなことにクラブ「りとるまあめいど」から出されたものなんです。
そうです。
鈴木円が勤めていた「りとるまあめいど」です。
明日からこのセンも調べることになります。
いや課長…今ならまだ店が開いてる。
今日の宿直は誰…?そう。
じゃあクラブ「りとるまあめいど」の前で落ち合うと言ってください。
はいよろしく。
出かける。
・
(工藤)刑事官!これが盗難届のコピーです。
それから永井ユキ子の供述に出てきた鈴木円の男の写真のことですが…。
ホテルから一緒に出てきた男?はい。
調査会社に写真のネガが残ってないか尋ねました。
悪用されると困るので永井ユキ子の目の前でネガを破棄したそうです。
当然の処置だな。
お疲れさまでした。
・
(ドアベル)すみません今日はもう…。
またですか…。
いや今日は別の件で。
じゃあお先に。
お疲れさま。
お疲れさまでした。
ひと月ほど前盗難届を出してますね?80万円やられたんですって?あれはもう取り下げましたよ。
誰がどうしたのか結局わからないけどまあ80万くらいのことで騒ぎ立てるのはよそうと思い直しましてね。
私は警察に調べられましたよ。
警察も私じゃないと認めてくれました。
ああそうだった…。
まあそういったことです。
鈴木円さんのことですがね…。
ほらまただ。
円さんに男の影があるという情報がありましてね。
いや永井隆弘さんとは別の男です。
いや信じられませんね…。
鈴木円さんはそんな女じゃありませんよ。
永井隆弘さんのことどうして知ってるんですか?ご存知なら言いますがね円さんは永井さんと結婚したかったのかもしれません。
他に男なんかいるはずないですよ。
すいません。
店閉めたいんで。
・
(中山)刑事官!気になる物が出てきました。
鈴木円の部屋の捜索をしたときいくらも金の入ってない預金通帳が2通ありました。
1通は鈴木円名義。
もう1通は娘の美紀になってます。
念のため銀行に行って別紙に記入してもらいました。
ええ。
機械で現金の出し入れをしますと通帳には記載されないままなんで。
ところがですね娘の口座のほうに1か月ほど前80万円の入金。
(梶原)80万…1か月前…。
「りとるまあめいど」の盗難ですね。
その10日ほど後にまた入金が43万…。
こりゃ一体何だ?まずこの80万のことだな。
クラブ「りとるまあめいど」のマネージャーがなぜ盗難届を取り下げたのか…?
(君塚尚)そう!脱いで減るわけじゃないんだからさ!君らの若いときの思い出にさ舞台があるわけだよ。
君らがこう立ってさ…。
刑事官…。
はい!あのね…今日の講義はここまで。
また来週!さようなら。
アハハ…。
あの…私何も法に触れるようなことはやっておりませんよ。
はい。
法律は最低の道徳ですから。
『法律入門』の最初のページに書いてました。
その後のことは忘れましたけど…って聞いてないじゃないですか。
刑事官…。
クラブ「りとるまあめいど」の鈴木円さんのことを調べてるんだが知ってるね?ええまあ…よく知ってるってほどじゃないですけど立ち話ぐらいはしてましたよ。
円さんに男はいなかったのかね?いましたよ。
私ねちょっと不愉快だからもう言っちゃいますけどね「りとるまあめいど」のマネージャーですよ。
えっ?藤本強っていうんですけどね何が強ですか!クラブのマネージャーというのは植物園の園長みたいなものなんですよ。
自分のところで大切にいっぱい咲いている花を大事に見守っていくのが仕事なんです。
花は摘んじゃいけませんよ。
それがルールです。
藤本マネージャーが摘んだのか?そうですよ!許せますか?ただの噂だろ?いや私ね見たんですから。
何をするならねもっと人目のつかないところ行ってやりゃいいんですよ。
それをまあ店からそう遠くもないホテルで…!私ね2回見ましたから。
あれ?もう店終わったの?はい。
まあ若い格好してお前…見えそうだよ。
じゃあお疲れさま。
お疲れさまです。
はい?待てよ。
ちょっと話があるんだ。
中入れさせてよ。
鈴木円さんと付き合いがあったんだね?ええまあ…。
円さんの娘さん名義だが入金80万円。
あんたのとこの80万円の盗難届が出てから5日目だ。
あんたはこれを突き止めた。
それで届けを引き下げた。
ええまあ…。
しかし金はこうして鈴木円さんが持ってる。
あんたそれで彼女ともめたんじゃないの?いや…。
もめないわけないよ。
殺したんだろ?冗談じゃないですよ!そりゃねもめることはもめましたよ。
でも円は開き直ったんですよ。
いいじゃないあのくらいの金。
(藤本)おい…。
私あなたの言いなりになってあげてるんだからね。
あなただって2万や3万のお金で女自由にしようなんて思ってないでしょ?ねえそんなみみっちい男に私が惚れるわけないもんね。
そうよ〜好きでもない男の人とこんなところ来るはずないわ。
でしょ?ねえ?それで80万うやむやになっちまったのか?理屈が通らないじゃないか!そりゃまあ今になってみるとそう思いますけどねいざその場になると男はダメなんですよね…。
おい何だそれ?鈴木円さんが死んだときあんたどうしてた?アリバイですね。
こりゃもう立派なもんですよ。
店が開いてから12時ごろに閉めるまで店を一歩も出てません。
それが私の仕事ですからね。
昨日もそう一昨日もそう。
毎日同じです。
店の娘たちに訊いてもらえばわかりますよ。
木村みどりさんのところへは何のために行ったんだ?そう…あっあの娘は鈴木円の妹分だから。
妹分?私がいい加減なこと言ってもどうせ木村みどりを調べるんですよね。
円の持ち出した80万を何とかしてくれと交渉してるんです。
円が死んだ後すぐに会ってどういう方法で返済するか考えてくれって言ってありますから。
まあ…その返事を聞こうと思って。
80万のことは円さんとの間でうやむやにしたんだろ?そりゃ生きていればのことでしょ!死んじまったら私は丸損じゃありませんか。
何とか取り返したいですよ!そういう理屈でしょ。
それは屁理屈だろ!アハハハ…。
あいつ人を小バカにするようで捕まえられるもんなら捕まえてみろって言ってるみたいですよ。
虫が好かない…それだけのことで偏見持つなよ。
アリバイに自信がありすぎるんですよ。
ウラ取ります!はいどうぞ。
おはよう。
(美紀)おばちゃんおはようございます!おはよう!元気だね。
みどりさん何かあったらすぐに家にいらっしゃいね。
いってまいります。
バイバーイ!マネージャーの藤本のアリバイですがあの晩8時半ごろ店の外の自販機でたばこを買ってる藤本らしい男を見かけたという証言があります。
らしいか…。
はい。
その男はクラブ「りとるまあめいど」のほうから来て戻らずにつまり店とは反対方向へ歩いて行ったというんですが…。
でも藤本だと決めつけるのはちょっと自信がないそうです。
うん…。
「りとるまあめいど」の女の子たちの聞き込みはどうかな?それがですね私たちがあたったところではマネージャーはいつも店にいるという頭があっていたかいなかったか考えてみたこともないと。
私たちの聞き込みもおよそ同じようなことです。
うん。
聞き込みの重点を例のたばこの自販機周辺としよう。
あっすみません。
ちょっといいですか?ありがとうございました。
この男性見たことありませんか?見たことないね。
そうですか。
どうも。
どうもありがとうございました。
円さんに貸した80万円を返してほしいと…。
そういう話でした。
そのことは解決できそうです。
えっ?じつは警察で円さんの部屋を捜索したときに証拠物として貯金通帳を預かりましてね。
美紀ちゃんの口座に80万が手つかずに入金されてました。
ただ引き出すとしてはいろいろ手続きがあるでしょうが…。
その通帳にですねもうひとつ入金があったんです。
43万円。
はぁ?何の入金かわかりませんか?そんな人の預金通帳なんて…。
あなたは3年前の夏那智勝浦に帰省したとき円さんのご主人の死に出会ってしまったんですよね?どうしてご存知なんですか?那智勝浦に行ってきたんですよ。
いや仕事でなきゃいいところですね。
はい。
那智勝浦へ行ったといっても那智の滝は見ず熊野三山はお参りせず熊野古道を歩くわけでもなし名物のマグロを食べてもいない。
少し未練のようなものがありますがね。
あなたは円さんのご主人の事故にかかわったことに責任を感じてるんじゃないですか?円さんのご主人と2人っきりで船に乗ったことは軽率といえば軽率でした。
でも円さんに隠れてそうしたわけじゃないし円さんだってちゃんと知っていたんです。
せっかく帰省したんだから釣りぐらい楽しんでくれば…。
円さんそう言って送り出してくれたんです。
でもあんなことになってしまって…。
酒を飲んでるのに海に潜ってそれで心臓麻痺…。
私がちゃんと止めてればあんなことには…。
円さんが横浜に出てきて美紀ちゃんが幼稚園の年齢になったときそれはごく当たり前のように私の勤めてる幼稚園に入るということになりました。
家も幼稚園の近くに引っ越しました。
円さんは仕事も替えました。
そのために円さん死んでしまったんです。
そんなふうに考えちゃいけない!円さんは不運だったんだ。
残された美紀ちゃんは不運だけでは済みません!だからといってこの先あなたが美紀ちゃんを幸せにできるという保証はないでしょ。
2人一緒に不幸になるということだってある。
あなたはあなたで幸せを探す。
美紀ちゃんは福祉の専門家の手に委ねて美紀ちゃんの幸せを探す。
薄情のようだが私はそう思ってる。
うちの家内も言ってるようだが相談があったらいつでも遠慮なくいらっしゃい。
(パトカーのサイレン)ご苦労さん。
(松村)刑事官新宮西署の木本さんからです。
もしもし。
はっ…?藤本…藤本強が!?
(木本)身元調べましたら横浜のクラブ「りとるまあめいど」のマネージャーとわかりまして…。
「りとるまあめいど」はたしか鈴木円が働いていた店と思い出したものですから。
殺人です。
殺人!?で状況は?一握りはある木の枝で少なくとも3回以上は殴られてます。
場所が場所ですからそれぐらいのものはいくらでも転がってるんです。
凶器は発見しましたが何しろ木の枝ですから指紋の採取は難しいと思います。
でこれは1つだけ被疑者を特定するときの手がかりになるだろうと思われるものがありまして…。
被害者藤本強の右手指の爪なんですがわずかですが爪に2つ血が残っていたんです。
その血液は藤本強のものとは違うと思います。
おそらく犯人に抵抗したそのときに犯人に引っかき傷を負わせた。
とまあ今の段階ではそう思ってるんですがこれから解剖ですのでなお詳細に調べまして…。
その爪に残っていた血液型は?AB…ABですね。
わかりました。
こちらも藤本強の周辺を極力捜査します。
藤本はいつ那智勝浦へ行ったんだ?いつこっちを発ったんだ!?藤本をマークしてたんじゃないのか!いや…うちの捜査員たちは藤本強のアリバイ崩しの聞き込みで一生懸命だったんだよ。
那智勝浦には私の常識では飛行機で白浜へ飛ぶそれから列車かまたは車ってことだろう。
まず飛行機の乗客名簿をあたろうか。
はい。
行くぞ。
はい。
じゃあ残りはクラブ関係の洗い直しだ。
(一同)はい。
手っ取り早く用件を言うがね。
はあ…。
藤本強さんが殺された。
えっ?那智勝浦で発見された。
勝浦…。
藤本さんどうしてそんなところへ行ったんだろう?わかりません。
勝浦は亡くなった円さんの故郷だ。
そして君も…。
それはそうですけど…。
藤本さんは横浜育ちで勝浦には縁がない。
縁があるといえば君と円さんが知り合いだということだけだ。
当然私は君にいろいろと訊ねてみたくなる。
はい…。
藤本さんから那智勝浦へ行くという話君聞かなかったか?全然。
いつ行ったんだろう?行ったとしたら一昨日の土曜か昨日の日曜でしょう。
土日は店が休みですから…。
金曜日には店に出てました。
私会いました。
閉店までいましたよ。
その後のことはわかりません。
念のために訊くが君はその土日どこでどうしてたのか?そう君のアリバイ。
これはもう誰にでも訊く決まり文句だ。
部屋でゴロゴロしてました。
証明してくれる人は?いません。
コンビニかスーパーへ買い物ぐらいは行ったんだろう?行きません。
ちょっと蕎麦を食べに行ったとか…。
家にある物で済ませました。
あの店の勤めは結構つらくて土曜日曜は思いっきりだらけて疲れをとるんです。
藤本さんは誰かと一緒に勝浦へ行ったのかもしれない。
君でないとすると…。
あとはもう1人だけ…。
木村みどりさん。
そんなこと思いつかないでください!みどりちゃんが藤本と…。
そんな組み合わせありませんよ!バカバカしい。
そんなにバカバカしいかねぇ?それ以上です!藤本さんと那智勝浦とは結びつかないんだよね。
私には見当もつきません。
もういいでしょう。
もう1つだけ念のため。
ちょっと腕まくりしてくれないかな?どうしたの?警察でもう少し話をしてみたいんだがね。
ああ刑事官。
白浜行き22日の午後便に藤本強の名がありました。
白浜着午後6時10分です。
その他の乗客についてはまだ3〜4人確認できていないんですがしかしこの藤本の次にあるアキヤママコトが電話番号が嘘で名前も偽名のようです。
これがどうも気になりまして…。
藤本強と同行して飛行機に乗ったと考えられませんか?新宮西署の木本さんに連絡してなお調べてくれ。
白浜空港は東京から2便しかない。
空港の係員で藤本のことを思い出せる人がいるかもしれない。
はい。
新宮西署にすぐ連絡します。
・
(村松)刑事官。
高梨淳の血液型がわかりました。
ABです。
AB…。
はい。
藤本強の爪の中から採取された血液型と一致します。
一致とは断定できんな。
ABOの血液型は4つしかないからね。
あっ…。
君勝浦へは藤本さんと一緒に飛行機に乗ったんだろう?じゃあどういうふうにして行ったの?新幹線。
名古屋で乗り換えて紀勢本線。
藤本さんと一緒に行ったんじゃないのか?違います。
一緒に行けるわけないです。
勝浦へ行くのを知ったから追いかけたんです。
別々に行ったんじゃ向こうで藤本さんを捜し出すのも大変だ。
那智勝浦は小さな町だけど実際に歩いたら狭くはないぞ。
ホテル浦島に泊まるだろうと見当はついてました。
どうして?前にあのホテルの話したことありますから。
海を渡って船でしか行けないホテルで町からすぐそこに見えるんだけどでも町に住んでる人間はホテルに泊まるわけじゃないでしょう。
毎日見てるのに行ったことがない。
そのうちいっぺん泊まりたい。
そんな話をしたら藤本笑ってました。
藤本と君は普段からギクシャクしてるように見えたがねぇ。
同じところで働いているんですから笑いながら雑談することだってありますよ。
いつもいがみ合ってたわけじゃありません。
藤本はやっぱりホテル浦島にいました。
もしいなくても那智勝浦のホテルに片っ端から電話すればいいことじゃないですか。
それで?藤本を呼び出して勝浦は俺が案内するからとか何とか…。
とにかく連れ回して殺しました。
どうして勝浦まで追っかけて行って殺したの?藤本に見られてしまったから。
何を?俺が鈴木円さんを…。
殺してしまったことを。
どうして円さんを殺したの?殺すつもりはなかったんだけど突き飛ばした拍子に円さん頭を打って…。
どうして突き飛ばすようなことになったの?クラブ「りとるまあめいど」の盗難届の件ありましたよね。
うん。
あの80万円俺が盗もうとしたんです。
事務室の机の上にポンと置いてあったもんだからついフラッと手が出て…。
それを…。
ダメよ高梨君。
黙っててあげる。
・
(物音)私が返しとくわ。
(高梨)ところが金がないと藤本が騒ぎ出して盗難届が出たところで円が横取りしたとわかりました。
その後で届けが引き下げられたから円は金を返したと思いました。
でも結局円は80万を自分のものにしたんです。
あの晩君は女の人からの電話を円さんに取り次いでそれで円さんがクラブから出て行ったと言ったよ。
はい。
私も円を追って話をつけようと思ったんです。
円さんは君が電話を取り次いだ永井さんの奥さんとまず会ったはずだよ。
木の陰で見てました。
円が1人になったところで追いかけたんです。
どうしてそんなややこしいことをするの?円さんを問い詰めるんならもっと別の機会があったはずじゃないか!?とにかくそうなってしまったんです。
話は戻るが藤本さんはどうして何のために那智勝浦へ行ったんだろうね?わかりませんよ。
そんなこと…。
藤本に訊かなきゃわかりませんよ。
鈴木円さんについては過失致死。
藤本強さんについては殺人。
君を逮捕することになるな。
どうもねぇ何かもうひとつすっきりしないんだ。
はっ?供述にすき間のようなものがあってねそこをすき間風が抜けていくというか…。
ああ課長。
乗客名簿の偽名の人物のことですが被疑者逮捕ですからあの調べは打ち切っていいですね?ああご苦労さん。
(電話)はい。
捜査本部です。
はい少々お待ちください。
刑事官。
新宮西署の木本さんからです。
はい牟田です。
どうもお疲れさまでした。
今被疑者逮捕の知らせをいただきましたからもうどうでもいいことかもしれませんがおっしゃるとおり藤本強はホテル浦島に1泊しております。
翌日も予約。
その第2日目が犯行の日でさらにその翌日遺体発見となるのですが…。
あっ私ちょっと回りくどいですか?「いやよくわかりますよ」その犯行の日のことですが午前中ホテルのロビーで藤本が子供連れの女性と会っていたという目撃証言があります。
子供連れの女性?
(木本)「ええ。
かわいい女の子だったんでホテルの人たちも何人か覚えてました」子供はいくつぐらい?女性は!?
(木本)「女の子は就学前という感じで5歳ぐらい」「女性は24〜25歳かということです」木村みどりさんは今日はお休みなんです。
園児の鈴木美紀ちゃんは?それもお休みでして…。
理由は何か?さあそれがわかりませんで…。
木村先生は無断欠勤ということですか?いえまあそんな目くじら立てるようなことではありませんが…。
どうも。
あの…。
じつはですね私心配がありまして。
みどりさんが幼稚園のお金を紛失してしまったということがありまして…。
えっ?紛失です。
失くしたんです。
金額はいくらですか?43万円です。
43万円!?どういうお金なんです?はあ…子供たちの遊び道具の代金でしてみどりさんに預けておいたんですけど業者のほうからまだもらってないって言うもんですからあらそんなことないはずよ。
みどりさんに尋ねましたらそこで初めてお金を落としてしまったって言うんです。
自分の不注意だから何とか自分でしようと延び延びになってしまったって…。
それで私…。
(パトカーのサイレン)
(チャイム)木村さん!
(ノック)木村みどりさん!ああ木本さん。
藤本とホテルのロビーで会っていた子供連れの女性捜してください。
その女性は木村みどり。
鈴木円のご主人が海で死んだときにその釣り船に乗ってたあの女性ですよ。
連れていた子供は鈴木円の娘で美紀ちゃん。
行こうか。
(木本)刑事官!どうもご苦労さまです。
今のところまだこちらでは発見されてません。
一応横浜でも県警が手配してます。
ごめんください。
そっちはどうだ?ダメでした。
向こうへ行ってみよう。
大丈夫?あっ危ない!大丈夫?・止まりなさいみどりさん!
(工藤)やめなさい!みどりさん…!さあ…心配ないよ。
大丈夫だよ。
美紀ちゃん大丈夫だからね。
みどりさん。
袖をまくってくれませんか?頼むよ。
あなたは円さんと言い争いになったんだね?争いの原因は業者に支払うため幼稚園から預かった43万円。
私…幼稚園からお金を預かって明くる朝支払うつもりで家に持って帰ったんです。
眠ってしまったの。
(円)あらあら…美紀!ママと家に帰りましょう。
美紀!気の毒。
そうも言ってられないわ。
美紀!ほら。
ねえ目が開くまでお茶でも淹れてくるわ。
ああいいわよ。
美紀!無理しないで。
(円)さあ起っきして。
(円)みどりちゃん。
おんぶして帰るから。
あっ重い。
大変よ。
もう軽くないから。
目が覚めたら歩かせるわ。
ええっと…帽子と鞄ね。
そいじゃあねえ。
あっ美紀ちゃんの靴!ああありがとう。
はい。
それじゃあ。
気をつけて。
お金がなくなっているのに気づいたのは明くる朝のことでした。
お金を持って行ったのは円さんだと思って恐る恐るそのことを訊いてみました。
私が盗んだ?バカなこと言うんじゃないよ!あんた私にそんなこと言えた義理?私の主人見殺しにしたくせに。
私お金は自分で何とかしようと思いました。
でも43万円は私には大金です。
とてもそんなお金…。
私決心して…もう一度頼もうと思って円さんに会いにクラブに行ったんです。
クラブに行ったらちょうど円さんが出てきました。
何だか急いでて私後をついて行ったんです。
円さんは中年の奥さんらしい人と会った。
はい。
言い争いになったが円さんは振り切って去って行った。
であなたは円さんを待ち構えて話を切り出したんだね。
はい。
あんたまたバカ蒸し返すの?いい加減にして!円さん!円さんお願いだからねえ…。
しつこいわねぇ。
離してよ!キャアーッ!円さん…?そのとき人の気配がしたような気がしたので私思わず逃げてしまったんです。
まさか円さんがそれで死ぬなんて思っていませんでした。
そのときの人の気配ということだが…。
誰とはわかりませんでした。
あとでわかったらマネージャーの藤本強。
その藤本があんたを脅迫した。
私にお金がないのは知ってます。
ですから…。
でなぜ那智勝浦へ?円さんや高梨さんから那智勝浦のことを聞いていて一度は行ってみたいと思ってたってそれで私に一緒に行こうって。
であなたは藤本の意表を突いて美紀ちゃんを連れて行った。
美紀ちゃんが何かと邪魔をしてくれるはずだと…。
はい。
藤本さんは怒りました。
いつまで俺をバカにするんだ。
いきなり空港にあんな子供を連れて来て!子供をどっかに預けて来い。
それともあの子を海にぶち込んでしまおうか?ええっ!?私は美紀ちゃんを知り合いのところに預けてそれですっかり藤本さんに心を許したふりをして名所を2つ3つ案内しました。
そして…。
やめて!やめてください!イヤッ!いいから…!イヤッ!イヤーッ…!みどりさんこのことを高梨君に話したの?えっ…いえ。
高梨君の腕にも爪の傷があった。
彼は自分が殺ったと言ったんだよ。
そんなはずありません!殺したのは私です。
高梨さんは関係ありません!円さんが死んだとわかったとき君が私のところへ来てくれたらあとの事件は起こらなかったんだよね。
何度も考えました。
私がいなくなれば美紀ちゃんは独りぼっちになってしまいます。
美紀ちゃんをそんなふうにしたのは私です。
迷ってるうちに1日2日と経ってしまって…。
でもとどのつまりは美紀ちゃんと一緒に死のうと思った。
子供には子供の長い未来があると君は幼稚園の先生だからよーくわかってたはずじゃないか。
君は問題を何もかも1人で抱え込もうとしてしまった。
でもね人間は1人で生きてるわけじゃない。
罪を償った君を待ってる人たちだっているんだ。
みどりさんをかばって「私がやりました」はカッコいいけどあとは一体どうするつもりだったんだ?裁判になったら私は殺ってないって言うつもりでした。
警察に無理矢理自白させられたって…。
なるほど。
それで無罪を勝ち取れば一事不再理。
判決がでたらその事件は蒸し返せないっていうあれだな。
しかしそううまくいくかどうか…。
そのときはそのときです。
君の腕の爪の傷だけどどうしてそれを知ったんだ?藤本が死んだとき勝浦の友達に頼んで地元の新聞をファクスで送ってもらいました。
横浜と違って詳しく書いてありました。
藤本を殺したのは誰かそのことはどうしてわかったの?藤本がみどりちゃんを脅かした電話を聞いてしまったんです。
白浜行きの飛行機の切符を2枚取れと藤本は俺に言いつけました。
一緒に行くのは誰かピンときました。
(パトカーのサイレン)君那智勝浦へ行ったの?行きません。
ここでちょっと待っててくれ。
彼女を…よろしくお願いします。
それで美紀ちゃんはどうしてるんですか?児童相談センターだ。
ええっ!?かわいそう。
あの子私があの…。
育てるなんてただの思いつきで言うなよ。
まず引き取ってくれそうな親戚を捜すことになる。
行く先が決まったら明子がときどき会いに行ってやればいい。
ええ…。
はい。
苦い酒ってあるもんだな…。
あらっ!?どうしたの?バイバーイ!さあ飯にしよう。
2014/03/13(木) 13:55〜15:46
ABCテレビ1
牟田刑事官事件ファイル[再][字]
横浜〜南紀勝浦連続殺人!牟田夫婦に子供?三年前、故郷の海での事故に謎が…
詳細情報
◇出演者
小林桂樹、津島恵子、大河内奈々子、かとうれいこ ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0×0818)
EventID:55215(0xD7AF)