「schola坂本龍一音楽の学校」。
今回からは日本の伝統音楽です。
「schola坂本龍一音楽の学校」。
今回取り上げるのは日本の伝統音楽です。
この列島に息づく多種多様な音楽に触れそこに通底する響きを探ります。
「schola音楽の学校」今回はですね日本の伝統音楽という事なんですけどもほかの世界のいろんな国に比べれば日本っていうのは国土は小さい国かもしれませんけどもでもその割には非常に多様な人々そして多様な音楽がしかも長い歴史的な時間の中で育ってきたんじゃないかなと思っているんですよね。
だからホントにどこまで遡れるのか分からない古代から現在までどのような音楽が奏でられてきたのか。
…で今もいるのか。
そんな事を知りたいなと常々思ってはいるんですが。
(小沼)なかなか難しくてね。
ちょっとあまりにも深い問題で。
そもそも北から南までとても長いっていうのが特徴ですよね。
それがゆえに風土的にも多様だっていうのはあるし。
網野善彦さんがね日本地図って大体こうなってるけどそれを逆側にするとちょうど日本海が…。
大陸から見るとね。
湖のように見える。
それがつながっていたっていうような事をおっしゃっていて。
よく日本人っていうのはアジアの端っこでこれ以上行くともう太平洋で行くとこがなくてあちこちから北から南から西からたくさんいろいろな人たちがここに来たんじゃないかと。
ですからきっと言葉も多様な言葉がしゃべられていただろうしそれにつれて音楽もねいろいろな民族の音楽が運ばれてきてそれでそれが融合してきたんじゃないかと思うんですけども。
そんな事を専門家の先生を交えて是非追究してみたいんですけども。
お一人小島美子先生。
よろしくお願いします。
もう一人ずっと昔から僕も知人なんですけども星川京児さん。
よろしくお願いします。
ちょっと音を聴いてみましょうか。
まず…はい。
「schola」日本の伝統音楽編。
まずは現在も歌い継がれる音楽から2曲聴いてみましょう。
こういうものを聴くと一般の方が普通に想像するいわゆる日本の伝統音楽とはまたちょっと感じが違ったものだとは思いますけども。
ただこれが原点だみたいに思われると困りますけどね。
日本列島の広がりの中でこういうものもあるしこういうものも現在あるよっていう事として理解して頂ければと思います。
その多様って事も小島先生にも教えて頂きたいんですけどもね。
列島のそれぞれの地域にはそこに暮らす人々が長い年月をかけて育んできた音楽が今も残っています。
研究家たちはそうした音楽から太古の音楽がどのようなものだったかを探ろうとしています。
小泉文夫さんなんかも日本周辺のアジアの諸国に日本の音楽と関係があるんではないかというような音楽を随分調べていましたよね。
例えば北の方だとモンゴルとか何かその方と非常に似てるものがある。
音階も非常に似てますし。
それからメロディーとしてもモンゴルの場合ですとオルティンドーっていう長い歌っていう意味のものが非常に「追分」に近い。
完全に同じじゃないですけども近い。
それからずっと南の方に行きますと照葉樹林帯の音楽っていうのがやっぱり非常に近い。
特に掛け合いで歌うような歌が非常に多くて。
歌垣。
雲南辺りですか?それよりまたもっと南の方でも。
少数民族の世界は歌を掛け合って結婚の相手を選ぶというその歌垣がものすごく盛んだったりします。
歌垣はね日本列島でも平安時代まではやっていましたし。
「万葉集」なんかは…。
「万葉集」もそうですよね。
東アジアの亜熱帯から温帯にかけて大陸から日本列島にまたがる照葉樹林帯が広がっています。
その一帯には多くの文化的共通性があります。
例えば「古事記」「日本書紀」「万葉集」などにも記述がある歌垣。
男女が求愛の歌を掛け合うこの風習を今も受け継いでいる地域があります。
…という訳でですねいろんな時代の移り変わりそれから空間的な広がりの中で多様な音楽があるんですけど。
今回は国家成立以前の音楽っていうのはあまり証拠がないのでどんな音が響いてたかっていうのは想像でしかないのかもしれません。
そういうものを少し取り上げる。
それから一応日本国が出来た頃の声明とか雅楽とかそういうものもいまだに残っていますから。
これはハッキリ聴ける訳ですから聴きたい。
そして中世になって今度は能狂言というこれもまた現在まで受け継がれている非常に歴史の長い芸能音楽があると。
また近世になると今度は文楽とか歌舞伎というものがこれもまた現在でもみんなたくさんの人が楽しんでるというねとても重層的な音楽文化が日本にはあるなと思うんですけど。
今分けた中からこぼれちゃうのもいっぱいあるんだけどとりあえずこうやって見ていこうかなっていうところでね。
ここからは先史時代の音楽を学びましょう。
ここでは旧石器時代から縄文弥生時代について取り上げます。
何となく素人ながらに日本と言っても多様性に満ちた人間と音楽が古代からあったんじゃないかというふうに漠然と思っているんですけどいかがでしょうかね?古代そのものではちょっとまだそこまで…。
古代と言っても歴史年代に入ってからは非常にそれはハッキリ分かりますけれど。
ハッキリって言っても音自体はあまりよく分からない。
とりあえず考古学的に発掘されたものの楽器らしきもの。
そういうものはいくつかあるのでそれから探っていくっていうのが一つの方法ですね。
少しだけど先史時代に残っているその楽器というのはどういうものがあるんですか?初めに取り上げるのは穴の開いた石です。
このような石は各地の遺跡から出土しており笛として利用されたと考える説もあります。
これは多分自然に例えば何かで穴が開いてしまった石とか浜辺で拾った石とかそういうものが本当だったんじゃないかと思うんですけどそのうち音がよく鳴るように人間の手で例えば出口のところを少し斜めにして少し細くするとかすると音がもっとよく響くとか。
そういう手を加えたものもあると思います。
今でも使ってる所がありますので。
神降ろしなどに使ってますのでそういう方に伺うと「海岸で拾ってきたものの方が本当はいいんだけどちょっと鳴りにくいので今日は模造品使いました」とか。
そういうふうな事をおっしゃいますからね。
やっぱり自然のものにはとても魂というか何かそういうものがあるという…。
人間が手を加えたものではなくて自然が自然に開けた穴の転がってるものをポンと取って吹くと。
フ〜ッとかって…。
そういう方がやはり神に近いというか。
そんな感じ。
そういう感性が日本人にはあったんですね。
それはいまだにあると思いますね。
石笛の音を聴いてみましょう。
(石笛の音)
(石笛の音)それから土笛がありますけど土笛になると一応音程を表す穴があるんですけどちょっと押さえにくい位置にあったりしまして本当にこれでメロディーがちゃんと吹けたのかなと思うようなものもあります。
土笛は縄文時代弥生時代の遺跡から出土しています。
音を聴いてみましょう。
(土笛の音)もう一つ楽器っていうのは鉄や石で出来ていればともかくとして木や皮を使ったものって残りませんからあったなかったっていう話が非常に微妙になってくる訳ですよね。
それと困るのは竹がすぐ腐っちゃう。
竹はたくさん使ってたでしょうねきっと。
だから私は縦笛があったんじゃないかと思ってるんです。
日本では縦笛はまだ発見されてないんですけれど私は考古学者に「火吹き竹と間違えて捨てないでよ」って言ってあるんです。
そっちの使い方があるもんですから困っちゃうんですね。
これなんですけどこれが一番面白そうにご覧になると思うんですけど。
コトじゃないかというのが私の説なんですけど。
小島さんが手に持っているものは縄文時代の出土品を基に復元したものです。
縄文時代の遺跡青森是川中居遺跡で出土したこのヘラ状木製品が基になっています。
小島さんはこの木製品の先端の2本の突起に注目し弦楽器として復元したのです。
糸のつけ方もよく分からないし最初は2弦じゃないかっていう説もあった。
でもこういうふうにやって4弦になりますものね。
こっちの留め方がいろいろ問題があってちょっと分からないので今とりあえず…。
これは雅楽の弦楽器の糸を扱ってらっしゃる方にちょっと試しにつけて頂いた。
初めからお琴だから前に置いたろうとか膝の上に置いたろうっていうふうに考えると解けなくなっちゃうの。
恐らくこうやって弾いて神がかりしていくっていう。
こうやって耳元で弾くようにしないと音が小さいですから。
共鳴胴がないですから。
このように他者に聴かせるためではなく自身が聴くために作られたと考えられる例はほかにもあります。
例えばこれは縄文時代の遺跡から発掘された土鈴です。
中には石が入っていますが穴がなく密閉されているためかすかな音しか発しません。
(土鈴の音)指をボンボンッてやって口琴になったりしますけどあれもあんまり大きな音はしないので自分のためですよね。
自分のためですね。
そういうものが多いですよね。
(2人)多いですね。
特に神がかりするようなものとかひそかに愛を伝えるとかそういう時は。
自分と天の関係のような事を音楽で…。
そういう事で楽器が始まってるかもしれないと私は思ってます。
音楽を体験しながら学ぶ「scholaワークショップ」。
今回は先史時代の楽器と触れ合います。
参加するのは小学校5〜6年生の皆さんです。
ワークショップのゲスト講師は古代文化史を研究する…ここにこういうものがあるんですけどもこれは何でしょう?
(一同)石?そうですね。
石に見えますよね。
これは何をするものでしょうね?…だと思いますか?飾り物?音が鳴りそう。
関根先生に。
(関根)これは…。
(石笛の音)すごい。
すげえ。
響く。
石笛や土笛などは身近な自然を利用する事で生まれたものです。
一方で列島には多様な植物が自生しておりそうしたものを利用した楽器もあったのではないかと考えられています。
ここからは竹などの節を持つ筒状の植物を利用した楽器作りに挑戦します。
これイタドリっていう草なんですがイタドリの茎は夏場の軟らかいうちは石器で簡単に削れるんです。
ですから石器で削れるんだったら昔の人もできたはずだと…。
随分前から作ってたんじゃないかと…。
あるいはこういう竹なんかをね。
日本にも昔から篠竹っていうのがありましたのでこれを節を下にして長く切れば低音。
短く切っていけばだんだん高音が出ます。
例えばこれ…。
(笛の音)あっ高い…。
(一同)へえ〜!
(関根)これを今作ります。
竹を切るんですが…。
長さを決めて。
長さを決めて節のところの下で…。
(関根)ナイフを使った事ある人?ナイフ!?吹きやすくするにはここを少しこんなふうにここを削ってやると…。
(笛の音)これをやってみましょう。
それぞれが好きな材料を選び笛を作り始めます。
あっ硬い…。
結構力がいる。
あっ出来た。
結構難しい。
(スタッフ)何でああいう人たちは楽器を作ろうと思ったんだろう?
(笛の音)だいぶ慣れたね。
音が出るようになったかな?ちょっと合奏してみますか?
(関根)はい。
じゃあこれで。
(笛の音)みんなも一緒に吹いてみよう。
好きに吹いていいよ。
(笛の音)じゃあね一個だけやってみていい?みんなでバラバラでやるのも面白いんだけどビートに合わせてやってみようか。
1212で。
1を吹いて下さい。
2を吹いて下さい。
いくよ。
せ〜の!
(笛)いいいい。
楽しい楽しい。
できた。
どうもありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
講義の前半では先史時代の遺跡から出土したものから縄文弥生時代に響いていた音について考察しました。
ここからは太古から現代まで列島に通底する音の響きについて考えます。
武満徹さんじゃないけども1音でビ〜ンといわせて幽玄のというか1音の中に非常に深い世界を聴くというような感覚っていうのは随分昔から現代まであるんでしょうかね。
石笛のようなあのヒヒッっていうような音とかそういうものは能管能で使う笛。
ひしぎの音に通じると思うんですね。
能管とは中世に盛んになった芸能能の伴奏楽器として生まれた笛の事です。
ひしぎと呼ばれる非常に高く鋭い音を出す事ができます。
石笛の音と比較してみましょう。
(石笛の音)能でひしぎが鳴るとここは現実界ではなくて霊界だよっていうような異世界だよという…。
お能でもやっぱりね怨霊の人とかねそういうものが出てくるところにあの音がふさわしいと思いますね。
やはりいわゆる日常の音ではなくて非日常に変換転換するねそういう印なのかもしれないです。
能管には喉と呼ばれる機構が備えられています。
喉とは歌口と指孔の間に挿入されている一回り小さな筒の事です。
これにより音程は楽器の個体ごとに微妙にずれ音色も鋭く硬いものになります。
不思議なのはあれだけ高度な楽器を作りながらわざわざ不自由にするでしょう。
そうですね。
あれはほかの国ではないんですよね。
逆ですよね。
もともとないものに入れて音程を不確かにするってね。
ノイズ成分を…。
一種の何て言うのかな日本的な洗練という事で音程を崩したりですねわざわざノイズ成分を入れたり。
サワリもそうですけどもそういう事をしますよね。
ヨーロッパだと音楽を作るのも例えば建築を造るように単位となるブロックを同じ形のものをたくさん作ってそれをいかに幾何学的に数学的に合理的に積み上げていくかというような思考が音楽にも働いているところが大きく異なりますよね。
ホントに先史時代の事はなかなか物的証拠も少なくて難しい訳なんですけどもどうもこの日本列島昔から現在まで続いているとてもユニークな感覚というのがあるんじゃないかという事が少し出てきましたけども。
是非また教えて下さい。
よろしくお願いします。
2014/02/13(木) 00:35〜01:05
NHKEテレ1大阪
スコラ 坂本龍一 音楽の学校 シーズン4「“日本の伝統音楽”編」(1)[字][再]
今回から日本の伝統音楽編がスタート。雅楽、能・狂言、浄瑠璃など日本に息づく音楽を紹介。1回目は、日本に古来から伝わる多様な音楽とそこに共通する響きを学ぶ。
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