(実況)羽生結弦初めてのオリンピック。
ソチのリンクに舞った19歳。
(実況)降りた!
(解説)完璧ですね。
誰よりも美しいジャンプで世界を魅了した。
(拍手と歓声)
(実況)強い!強さを見せつけました。
(場内アナウンス)「オリンピックチャンピオンユヅル・ハニュウ」!羽生結弦。
フィギュアスケート男子で日本初の金メダルをもたらした。
(アナウンサー)自らの夢そして日本男子フィギュアの夢をかなえる金メダルです。
戦いを終えてインタビューに応じた羽生。
語ったのはし烈なメダル争いの中で感じ続けていた重圧だった。
(羽生)とても緊張してましたしもうどの試合とも比べ物になんないぐらい初めての試合じゃないかっていうぐらい緊張して。
多分これやったら勝てないとかこうなったら駄目だとかって。
結局マイナスの思考にちょっとずつ考えていたんだと思います。
(解説)4回転のトーループ。
4回転のトーループ。
かつてないハイレベルな戦いとなったフィギュア男子。
トップ選手のほとんどが大技4回転ジャンプに挑んできた。
しかし羽生はフリー最初の4回転で転倒。
(解説)4回転サルコー。
転倒ですね。
誰もが金メダルの夢はついえたかと思った。
しかしコーチのオーサーはその失敗をも想定し金メダルへのシナリオを作っていた。
最初のジャンプでミスをする事はよくあります。
それでも後半挽回できると信じていました。
失敗を乗り越えつかんだ金メダル。
羽生結弦の知られざる戦いに密着した。
(歓声)7日に開幕したソチオリンピック。
(花火の音と歓声)羽生の戦いはその前日から始まっていた。
臨んだのは今大会からの新種目フィギュアスケートの団体戦。
10か国が出場。
男子シングルの有力選手が顔をそろえ個人戦のメダルを占う前哨戦となった。
(解説)4回転のトーループ。
4回転ジャンプを跳んだのは10人のうち7人。
(拍手と歓声)最も会場を沸かせたのが地元ロシアの皇帝…
(解説)4回転のトーループトリプルトーループ。
(実況)完璧に決めました。
4回転を武器にこれまでオリンピックで金メダルを含む3つのメダルを取っている。
(拍手と歓声)それを上回ったのがずっとプルシェンコに憧れてきた羽生だった。
(拍手と歓声)4回転を完璧に成功。
3回転のコンビネーションなどほかのジャンプも全て決めてみせた。
(拍手と歓声)
(実況)出ました97.98!うなずきました。
プルシェンコを6点以上も上回る最高得点97.98をたたき出した。
(実況)日本がトップに立ちました。
非常に高い評価を得た事になります。
どのスケーターもすばらしい演技をしていてすばらしい得点を出していたのでこのプレッシャーの中で頑張って点数を出さなきゃっていう思いもありました。
シングルの方が多分緊張すると思うんですけれどもでもその中でもやりきれるんじゃないかなという思いも出てきました。
地元ロシアの新聞。
プルシェンコと並んで羽生を大きく取り上げた。
(拍手と歓声)オリンピックで得た歓声。
それは羽生が小さい頃から目指してきたものだった。
10歳の羽生。
このころプルシェンコの髪形をまねていた。
この時既に2回転半のダブルアクセルをマスターし将来を期待される存在だった。
4回転ジャンプに取り組み始めたのは高校1年の時。
既に4年後のソチオリンピックを見据えていた。
あ〜もう!一日60本。
足への負担が大きい4回転としては驚異的な練習量だ。
4回転にこだわったのはこの年行われたバンクーバーオリンピックでのある光景が目に焼き付いていたからだ。
前回のバンクーバー大会。
この大舞台でフィギュア男子が4回転時代に入るきっかけとなる出来事が起きた。
ロシアのプルシェンコ。
この大会にオリンピック2連覇を懸けていた。
(解説)4回転トーループトリプルトーループ。
(実況)決めた!2回の4回転ジャンプを完璧に成功させる。
しかし金メダルを取ったのは…4回転を一回も跳ばなかった。
(拍手と歓声)銀メダルに終わったプルシェンコ。
表彰台に上る時ある行動に出た。
(拍手と笑い)4回転を跳ばない相手に負けた事に納得がいかなかった。
この直後ルール改正が行われた。
ジャンプの得点が大きく見直されたのだ。
4回転と3回転の主なジャンプを比較してみる。
4回転は軒並み基礎点が上がったのに対し3回転は逆に下がっているものもある。
4回転は一回のジャンプで10点を超え大きく差をつけられるため跳ぶ価値が更に増した。
世界のトップ選手はこぞって4回転を跳び始める。
(実況)4回転。
4回転のトーループ決まりました。
回転不足の時の減点も大幅に緩和。
4回転時代を大きく後押しした。
ルール改正をきっかけに一躍世界のトップに躍り出た選手がいる。
3年前の世界選手権。
前半のショートプログラムで1回。
後半のフリーでは2回。
合わせて3つの4回転ジャンプを成功させる。
合計の得点は280.98。
当時の世界最高を大幅に更新した。
この時のチャンの得点はショート93点フリー187点。
合計で280点を超えた。
フィギュアスケートの得点はジャンプなどの技術点と主に表現力を評価する演技構成点で決まる。
280点のうち演技構成点が133。
技術点はそれより多い147。
そのうち100点以上をジャンプであげた。
ルール改正が得点にどれだけ影響したのか。
バンクーバーで4回転を跳ばなかったライサチェックと比較してみる。
表現力スピンステップがきっ抗する中で最も差が出たのがジャンプ。
合計点の差23点のうち17点余りをジャンプが占める。
そのほとんどが4回転によるものだった。
私にとって4回転は跳べて当たり前のジャンプです。
ライバルは気になりません。
自分との戦いに勝てればソチで金メダルは必ず取れます。
ソチオリンピックに向け羽生は2年前カナダのトロントに拠点を移した。
4回転ジャンプに磨きをかけるためだった。
コーチはジャンプの指導に定評がある…あのキム・ヨナを育てた名コーチだ。
結弦は常に自分自身を厳しく客観的に見ています。
スケート選手としてとてもよい事です。
何よりスケートが好きで情熱を持っているのでハードな練習も楽しむ事ができるんです。
ソチで金メダルを取るために。
羽生は更に高度な4回転ジャンプに挑んでいた。
世界王者のチャンも跳んでいない難しいジャンプ。
一般的な4回転トーループは左足の爪先トーで氷を蹴りその反発力で跳び上がる。
一方サルコーは右足を振り上げた勢いを利用して跳ぶ。
氷を蹴り上げる力を使えない上タイミングがつかみにくくトーループほど高く跳ぶのは難しい。
このため4回回りきらないうちに着氷してしまい転倒しやすい。
昨シーズンの試合での成功率は14%。
確率を上げようと必死だった。
自分にとって4回転サルコーというものは本当に挑戦であってトーループから比べてみたら本当に比べ物にならないぐらい確率が低いものだと思っているんですけれどもそれでも自分にとってそれが自分の今のやれる最大の武器というか本当に武器になっているものだと思うのでそこは絶対外したくないなって思ってます。
確率の低い難しいジャンプにあえて挑戦したのはある秘策があったからだ。
今シーズンが始まった時の2人の自己ベストだ。
技術表現力ともにチャンが上回り合計で15点以上水をあけられていた。
しかしサルコーを入れれば技術点の上積みだけで逆転できると考えていた。
今シーズンのチャンのフリーのジャンプ構成。
まず最初に体力を使う4回転を続けて跳ぶ。
チャンが跳ぶのはいずれもトーループ。
ルール上同じ4回転を単独で繰り返す事はできないためこのうち1つを3回転との連続ジャンプにしている。
一方羽生も冒頭に4回転を2つ跳ぶのは同じだがその種類が異なるためそれぞれ単独で跳ぶ事ができる。
フリーの演技で跳ぶ事ができるジャンプは8回。
そのうち得点の高い連続ジャンプは3回までと決まっている。
羽生は4回転を2回跳んだ上に3回の連続ジャンプを跳ぶ事ができる。
更にその全てをスタミナが切れる演技後半に組み込んだ。
ここで成功すれば得点は1.1倍になるからだ。
8回のジャンプの得点を合わせると基礎点だけでも6点以上羽生が上回る。
これにジャンプの出来栄えによって更に点数が加算される。
羽生が全てのジャンプを完璧に決めれば技術点の合計は95点を超える。
4回転サルコーを跳ぶからこそ実現した高得点プログラムだ。
結弦のために最高のシナリオを書きました。
結弦ならジャッジが出来栄え点を最大限つけたくなるようなジャンプを跳び技術点を大幅に上積みできるはずです。
その戦略を試す機会が訪れた。
グランプリファイナルで羽生はチャンと直接対決する事になった。
こんばんは。
よろしくお願いします。
チャンはいくつかのミスはあったものの4回転は全て成功させ280.08の高得点を出した。
羽生のフリー。
チャンを上回るには180点を超す高得点が必要だった。
冒頭の4回転サルコー。
(実況)今シーズンはまだ決めていません。
転倒。
しかし4回回りきったと認められ7.5点を獲得する。
続く4回転トーループ。
(実況)決めました!得点の高くなる後半の連続ジャンプ。
(解説)トリプルアクセルトリプルトーループ。
(実況)大事な得点源見事に決めていきました。
全て完璧に決めた。
(解説)トリプルサルコー。
(実況)予定どおりのジャンプです。
(実況)出し尽くしました!やりきりました!
(実況)出ました!自己最高を大幅に更新する293.25で優勝。
(拍手と歓声)
(実況)羽生結弦!王者チャンを破ってつかんだ優勝はソチへの大きな自信となった。
頑張りました。
とりあえずホントに頑張りました。
一生懸命スケート楽しみました。
それだけでもう十分です僕は。
ありがとうございます。
(取材者)次に向けて…。
次に向けてはホントに強くなるしかないなっていうふうに思ってます。
まだサルコーは降りてないですしまだまだ弱い部分がいっぱいあるんでしっかり強くなります。
ジャンプの精度をもっと高めて金メダルを取りたい。
羽生はそのヒントを求めて書きためてきた練習ノートを見返していた。
まあパンクっていうやつですけど。
ああこんな事言われたなあんな事言われたなって書いていくうちにいろいろ覚えていくんですよね。
なかなか成功率が上がらない4回転サルコー。
オーサーコーチが指摘したのは回転する時の体の軸の問題だった。
羽生が見直したのは腕の使い方。
右足を振り上げると同時に右腕を締め素早く回転する。
感覚を身につけるため練習を繰り返した。
練習の合間にいつも見ていたものがある。
どうしても海外に来るとつらくなる事もたくさんあるし練習したくないなって思う事も結構あるんですけどちゃんと思い出させるきっかけみたいなものとして今こうやってますね。
羽生にとって初めてのオリンピック。
金メダルを懸けた戦いが始まった。
男子シングルは波乱の幕開けとなった。
前半のショートプログラムを前に地元ロシアのプルシェンコをアクシデントが襲ったのだ。
(歓声)
(声援)
(解説)ちょっと先ほどトリプルアクセルを跳んだ時にですね腰を押さえてから一度も動いてないんですよね。
前の日にジャンプの練習で痛めた腰の状態が悪化。
演技スタート直前に棄権した。
(拍手)地元の英雄の思わぬ欠場。
会場は重苦しい空気に包まれた。
(歓声)そして日本の羽生が登場。
7日前に行われた団体戦で高得点を出し自信を持ってリンクに立った。
冒頭の4回転ジャンプ。
(実況)降りた!
(解説)完璧ですね。
9人のジャッジのうち7人が最高の評価をつけた。
続くジャンプも次々に決めていく。
(解説)トリプルアクセル。
(実況)高い!
(歓声)
(実況)3つのジャンプ完璧です。
勢いに乗った羽生。
(実況)コンビネーションスピン。
最後までほとんどミスのない演技を見せた。
(実況)強い!強さを見せつけました羽生結弦。
(拍手)注目の得点。
(実況)101.45!史上初めて100点を超えました!ショートプログラムの世界最高得点を更新。
この時点でトップに立った。
続いて登場したチャン。
絶対王者の意地を見せる。
冒頭4回転の連続ジャンプ。
(解説)4回転のトーループトリプルトーループ。
(実況)きれいです。
見事に決めて高得点をたたき出す。
続く3回転半のトリプルアクセル。
(解説)トリプルアクセル。
着氷は乱れたがなんとかこらえた。
世界一といわれる滑らかなスケーティング。
高い表現力をアピールした。
(拍手と歓声)
(実況)さすがはカナダパトリック・チャン。
(実況)97.52。
ショートを終え羽生に次ぐ2位につけた。
羽生とチャンのショートの得点だ。
全てのジャンプを決めた羽生が技術点ではリードしたが主に表現力を表す演技構成点ではチャンが上回った。
合計の得点差は3.93だった。
世界最高得点を出し高まる金メダルへの期待。
しかし羽生自身に余裕はなかった。
ぱっと見101点と97って言われると割と離れてるように見えて全然離れてないので僕にとってはそんなに差は感じてなかったです。
僕は金メダルを考えないようにしてた。
考えないようにしてたイコール考えてるですよね。
羽生が不安を抱いていたのがフリーの冒頭で跳ぶ4回転サルコーだった。
今シーズン5試合で試み成功は1回だけ。
チャンに勝つために取り組んできたサルコーは安定していなかった。
しかしオーサーコーチの考えは違っていた。
4回転サルコーを成功させる事よりもプログラムに入れる事に意味があると考えていたのだ。
トーループとサルコーという2種類の4回転を跳ぶ事で得点が1.1倍になる後半に難度の高い連続ジャンプを3つ跳ぶジャンプ構成。
仮にサルコーを失敗しても後半のジャンプで十分取り返せると考えていた。
私はフィギュアスケートで起こりうるあらゆる状況を想定しています。
もちろん最初のジャンプでミスする事はあります。
しかしこのプログラムではポイントを稼げる演技要素を後半にたくさん入れているので前半の失敗を補える設計になっているのです。
決戦のフリー。
羽生の演技は21番目。
チャンはその直後に滑る。
本番直前の6分間の練習。
羽生は経験した事のない強い不安に襲われた。
体は動かなかったですしむしろ6分間をする事によって焦りと不安が出てきたっていう感じです。
不安を抱えたまま演技が始まった。
冒頭の4回転サルコー。
(解説)4回転サルコーで転倒ですね。
3点減点されたが4回回ったと認められ7.5点を獲得。
続く4回転のトーループ。
(解説)4回転のトーループ。
きれいに決めました。
(実況)決めた!しかしこのあと想定外の事態が起きる。
(解説)トリプルフリップでステップアウト。
ふだんミスする事のない3回転でバランスを崩して手を着き1.9の減点。
それでもオーサーコーチは落ち着いていた。
得点が1.1倍になる後半連続ジャンプを確実に決めれば必ず巻き返せると考えていた。
後半最初の連続ジャンプ。
(解説)トリプルアクセルトリプルトーループ。
(実況)ここは見事。
きれいに決め2.43の加点。
続く連続ジャンプも決めた。
(拍手と歓声)後半踏みとどまった羽生。
(実況)178.64。
280.09。
金メダルへの望みをつないだ。
続いてリンクに立ったチャン。
冒頭。
(解説)4回転のトーループトリプルトーループ。
(実況)4回転3回転!基礎点の高い4回転の連続ジャンプ。
全てのジャッジから最高の評価を受けた。
しかしオリンピックの魔物がチャンにも襲いかかる。
(解説)4回転のトーループ。
(解説)トリプルアクセルでステップアウト。
精彩を欠いたまま演技を終えた。
(実況)羽生かチャンか。
178.10。
パトリック・チャンはトータルで羽生を上回る事はできません。
オーマイゴッド!オーマイゴッド!結果はオーサーコーチが思い描いたとおりとなった。
2人のジャンプの得点を比較してみる。
4回転サルコーを失敗した前半羽生はチャンに8点以上の差をつけられていた。
しかし後半は2つの連続ジャンプを成功させ逆に13点以上チャンを上回り逆転。
4回転サルコーを演技に組み入れる事でたとえ失敗しても後半巻き返す戦略が勝利を引き寄せた。
やはりフリーでできなかった悔しさっていうのはすごくあります。
やっぱりこうやって思い返してみるとベストな演技じゃないかもしれないんですけども全力は尽くしたなというふうには思います。
(場内アナウンス)「ユヅル・ハニュウ!」。
重圧に打ち勝ち金メダルをつかんだ羽生。
ある人からメッセージが届いていた。
小さい頃から憧れてきたプルシェンコがツイッターでこうつぶやいていた。
「金メダルおめでとう」。
プルシェンコはソチオリンピックを最後に引退を表明。
4回転時代の先駆者プルシェンコから新たな王者羽生へフィギュアスケート男子の主役が引き継がれた。
僕がプルシェンコ選手に憧れて始めたように僕はまだなりきれてないですけれどもやっぱりプルシェンコ選手みたいなそういう強いスケーターになりたいなって僕は思ってますね。
まだ19歳っていうまだまだ未熟な…未熟な人間でホントに何か…何もできる事がないんですけれどもそれでもやっぱり今できる事っていうのはやっぱり全力でスケートに向き合っていってこうやってオリンピックチャンピオンにならせて頂いたんですけれどもそれでもどんな試合でも全力でやっぱり大好きなスケートをやらせて頂いているんでそういう気持ちを忘れずにとにかく一生懸命やっていきたいなと思ってますね。
羽生結弦19歳。
次のオリンピックで最高の演技を。
更なる進化を目指す戦いは続く。
2014/02/27(木) 00:40〜01:25
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「羽生結弦 金メダルへの道」[字][再]
フィギュアスケート男子で日本初の金メダルを獲得した羽生結弦選手。かつてないハイレベルの戦いを制する鍵となった、19歳のあくなき向上心と勝利へのシナリオに迫る。
詳細情報
番組内容
4回転ジャンプが主流となり、かつてないハイレベルの戦いとなったソチオリンピックのフィギュアスケート男子。19歳の羽生結弦選手が、日本に初めての金メダルをもたらした。羽生選手は、早くからソチを見据え、4回転に取り組んできた。最大のライバル、カナダのチャン選手を倒し、世界を制する鍵となったのは、あくなき向上心と綿密な勝利へのシナリオだった。
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
スポーツ – オリンピック・国際大会
ニュース/報道 – 報道特番
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