クローズアップ現代「“仮の住まい”のはずなのに…〜被災地 4年目の課題〜」 2014.03.12

宮城県石巻市の牡鹿半島に来ています。
入り組んだ入り江がとても美しいこの半島ではカキやワカメの養殖があちらこちらで再開されていますが港周辺にはさら地が目立っています。
向こうに見える集落ではかつて83世帯が暮らしていましたが高さ7メートルの大津波に襲われほとんどの住民の方々の土地そして住まいが根こそぎ奪われました。
住まいの再建を加速させていくことができるかどうかが東日本大震災から4年目に入った被災地の喫緊の課題となっています。
私が立っていますこの高台では集団移転を希望する方々に向けた土地の造成が進められています。
石巻市内にはこうした高台移転の計画が51か所あるんですけれどもこのように実際に工事が始まっている場所は3分の1程度にとどまっています。
時間がたてばたつほどかつて自分が住んでいた地域で自力で自宅を再建することを諦める人々が増えている被災地。
この高台でも当初42世帯が移転を希望していましたけれども現在では25世帯に減っています。
地域住民の流出そして地域コミュニティーの衰退が懸念されている中で住まいの再建をどう進めていけばいいのか考えていきます。
狭い仮設住宅でストレスをためる子どもたち。
震災から4年目。
今もおよそ10万人がプレハブでの仮住まいを強いられています。
NHKでは継続して被災地最大の仮設住宅で聞き取り調査を行ってきました。
今回、多くの住民が訴えたのは避難生活から抜け出せない不安でした。
「仮設住宅に少なくともあと1、2年いなければならない」。
「出られるのは3、4年後になってしまう」。
貯金が10万円以下の人が震災1年に比べ13ポイント増えているなど暮らしが厳しくなってきていることも分かりました。
住まいの復興はなぜ進まないのか。
震災4年目の課題を検証します。
高台から浜に下りてきました。
かつて海の近くにも家が立ち並んでいましたけれどもご覧のように今では僅かに土台が残るだけになっています。
大震災、そして大津波に襲われるまでこの地域には持ち家で2世代、3世代が共に暮らす家庭が数多くありました。
家を再建してもう一度家族と共に暮らしたい。
多くの被災者の方々が震災直後このように望んでいたわけですけれどもこの3年の間に若い世代は仕事を求めてほかの地域に移り住んだりまた収入が減った被災者の多くが自力での家の再建を諦めざるをえなくなっています。
こうした中で自治体の当初の予想に反して災害公営住宅への入居を希望する人々が大幅に増えているんですけれどもこの災害公営住宅の建設も進んでいません。
仮設住宅での不自由な生活を続けてらっしゃる方々は今も被災地で10万人に上っています。
このままではさらに仮設住宅での仮の生活が2年、3年と続き長期化が予想されています。
避難生活が長引く中で変化をしている被災者を取り巻く状況。
これまでの自治体の住宅再建計画とのずれが表面化しています。
その実態を取材しました。
NHKが3年にわたり石巻市の仮設開成団地の住民に行ってきた聞き取り調査。
ことし、371世帯に話を聞くことができました。
仮設住宅の暮らしがさらに3年以上続く不安を訴えた男性がいました。
自分は高台移転で戻りますが3、4年後の見通しでそのときどうなっているか全然検討つきません。
家族4人で暮らす阿部裕一さん一家です。
6畳と4畳半2間の仮設住宅。
子どもたちの成長につれて手狭になっています。
この時期、天井の結露など湿気に悩まされています。
拭いても拭いてもカビが生えてきます。
子どもたちの体にも影響が出ているといいます。
震災前、海の近くで2階建ての一軒家に住んでいた阿部さん。
津波で流されたため近くの高台に移転することを決めました。
しかし、ことし1月具体的なスケジュールを知り途方に暮れました。
宅地が出来上がるのは早くて平成27年度。
山の斜面を削り宅地として整備するには時間がかかります。
家の建設は、そのあとになるためあと3、4年は待たされるというのです。
石巻市では震災でおよそ2万棟の住宅が全壊しました。
阿部さんは震災1年のときから住まいの再建を強く望んでいました。
その理由はこの高台の下で営む仕事と大きく関係があります。
阿部さんは震災から1年後カキ養殖を再開しました。
漁師を続けていくためにいつも海の様子が分かる場所に住みたいとこの近くでの再建を望んでいるのです。
最新の調査では1年前とほとんど同じ8割の人が復興は遅れていると感じています。
その理由として住まいの見通しが立たないことを挙げる人がこの1年で15ポイント増加しています。
被災地では今も高台への移転先など自治体が造成する宅地はほとんど出来上がっていません。
2万2000戸余りのうち今年度中に工事が終わるのは6%にとどまっています。
震災1年に「いつになったら復興するのか仮設を出るのを心待ちにしている」と答えた現在57歳の女性。
3年たってもまだここにいるのかと思うと無気力になる。
早くここは出たい。
でも土地もなかなか近場では見つからない。
「何よりも落ち着く住まいが欲しい」と訴えていた現在46歳の女性。
ストレスがかなり大きくなってきている。
子どもが突然、なぜここにいなきゃならないのと叫ぶ。
学校でも集中力が途切れ自分も体調が悪くなっている。
自力では家を再建できず市が用意する住宅への入居を待ち続けている人もいます。
飯盛かずこさんです。
夫が震災後石巻を離れて働きに出たため1人で3人の子育てに追われています。
震災前、戸建ての一軒家を借りていた飯盛さん。
近くのこの空き地に建設される予定の災害公営住宅に申し込んでいます。
災害公営住宅は自力で再建できない被災者のために県や市町村が整備する賃貸住宅です。
所得に応じて、比較的安い家賃で入居することができます。
飯盛さんは小学校の臨時職員をしていますが生活は苦しく貯蓄は10万円以下です。
飯盛さんのように貯蓄が10万円以下と答えた人は35%。
震災1年に比べて13ポイント増えています。
公営住宅が頼りの飯盛さん。
ことし1月市から届いた知らせを見て不安を募らせました。
自力での再建を諦める人も増えていて建設予定の7戸に38世帯が申し込んでいたのです。
仮に当せんした場合でも入居できるのは1年半後になります。
遊び場がなく窮屈な避難生活が続く中子どもたちはストレスをためているといいます。
子どもたちと早く生活面で安定したいと思います。
以前のように、元気でみんなで明るく生活できればと思います。
被災地全体でも公営住宅の整備には時間がかかっています。
2万5000戸余りのうち今年度中に完成するのは9%にとどまっています。
長期化する仮設住宅の暮らし。
3年継続して調査する中で心身への影響が深刻になってきていることが分かりました。
7年前に夫を亡くし1人で暮らしている小山惠美子さんです。
震災前は週に1回以上外出していたという小山さん。
今は、ほとんど外出しないといいます。
仲よくしていた近所の友達と離れ離れになり家を行き来する機会がなくなりました。
この1年「よく眠れない」「気分が沈みがち」「歩くことが困難」と訴える人が増えています。
震災後、前向きに力を出し頑張ってきましたが3年目になった私は無気力、悲観的になり毎日が悲しい思いでおります。
1人でいて忘れられるのではと思う。
国に、高齢者は早く死ねと言われているように思う。
おはようございます。
震災から時間がたつ中住民を見守る体制は縮小しています。
健康状態を確認したり相談に乗ったりする訪問支援員。
市民から募集し石巻全体で170人近くいましたがほかの仕事に就くなどして半分近く減りました。
買い物や通院に不便を感じている高齢者もいます。
仮設住宅と市街地を結ぶ循環バスは1日に行きと帰りで3便ずつしかありません。
今、小山さんたち高齢者の移動を支えているのは自身も仮設住宅に暮らす人です。
自治会長を務める遠藤裕昭さんです。
企業から被災地支援で貸し出された車をみずから運転し病院やスーパーへの送り迎えを行っています。
遠藤さん自身も1人暮らし。
月8万円の年金を頼りに暮らしています。
遠藤さんが送り迎えしている住民は、30人に増えています。
1人暮らしの住民が1人暮らしの高齢者を支える現実。
震災から4年目。
住まいの再建の遅れが住民一人一人の暮らしを脅かしています。
被災地にあります最も大きな仮設団地、開成団地の集会所にお邪魔しています。
ここには1000世帯2500人の方々が、今も避難生活を続けていらっしゃいます。
きょうは住宅政策がご専門でいらっしゃいます、神戸大学大学院教授、平山洋介さんをお迎えしています。
狭かったり、そして隣の音が聞こえて気になる、交通の便が悪いなど、仮設住宅で暮らしていらっしゃる方々には、本当に多くの悩みがあるわけですけれども、さらにこれから2年、3年とその生活が続くかもしれないとなりますと、生活改善が本当に大きな問題になってきますね。
ーそうですね。
仮設住宅は、もともとは2年を期限にした住宅なんですね。
それを更新して3年、また4年目に入っていくということですので、もともと2年間我慢してくださいというような環境しか作ってないわけなんですね。
しかしながら、それが3年、4年となってきますと、だんだんつらくなってきますし、また3年、4年となりますと、2年、3年、4年となりますと、仮住まいなんですけども、仮住まいというよりは、やはり毎日を少しでも穏やかに暮らせるような環境に改善していかないといけないというふうに思います。
もちろん具体的にどうするかにつきましては、住民の皆さんと自治体の方々が相談しながら、いろんなアイデアがあるかと思うんですけれども、例えば、子どもの遊び場をきちっと整備するですとか、交通をきちっと整備するですとか、あるいは、見守りの態勢をもういっぺん強化するですとかいうことが考えられますし、また、空き家がだんだん出てきてますので、大きな家族の方に2軒使っていただくとか、あと、例えば友達とか親戚が来たときに、泊まっていただく部屋にしていただくとか、具体的なアイデアをいろいろ出して、少しでも住みやすい環境にしていく必要があると思います。
平山さんは、阪神・淡路大震災で被災された方々が暮らす仮設住宅の実態調査を続け、そして今回は東日本大震災で仮設住宅で暮らす方々の調査も続けていらっしゃいますけれども、その住宅再建に向けて、今回のこの東日本大震災における難しさっていうのを、どのように感じていらっしゃいますか?
阪神・淡路のときは、もちろん住宅再建、本当に大変だったんですけれども、本当に大変でした。
でも、がれきを片づければ地面は残ってたわけですよね。
ですから地面がありますので、そこに家を建てるんだというようなことで、みんな走れた面がありました。
ところが、東北の皆さんは津波にやられて、浸水して、家が流されて、地面自体が大きな被害を受けて、そこに戻れないという方が、非常に多いわけですよね。
ですので、やはり土地から造り直すっていうのは、非常に大変なことですし、また、戻れないということで先行きが本当、不透明な方が、本当、多いですよね。
ですから先行きの不透明さ、戻る土地がどこか分からない。
そのへんが一番大変な条件になってるんだというふうに思います。
そして今のVTRにありましたように、皆さん、最初は元住んでいた地域に自力で家を再建したいと思っていた方々が、3年たっていく中で、もう災害公営住宅に入りたいという要望のほうが急増していると、こうした意向の変化が起きる背景というのは、どう見ていらっしゃいますか?
いろいろあるかと思うんですが、一番大きいのは、被災された世帯が、いろいろ変化してきているということがあると思います。
東北の場合は、神戸や阪神の場合に比べまして、震災前は人数の多い世帯が多かったんですね。
ところが、被災されて世帯が小さくなって、仮設に入ったあと、またどんどんどんどん世帯が小さくなっている。
若い人は子育てや仕事の都合でどんどん出ていかれるというような世帯の変化というのがあって、持ち家を諦めて公営住宅に入ろうかなという人が増えているのではないかなと思いますし、また、自治体の側がいろんな政策を出してきますので、自分たちの変化と政策が出てくる、その兼ね合いで皆さんの意向がどんどん変わっていくんだと思います。
きょうも高台移転を目指す人々のための土地造成が行われている現場を見てきたんですけれども、当初、入りたいとおっしゃってた世帯数が今、かなり減っている。
そして一方で、災害公営住宅に入りたいっていう希望者が急増している。
こうした意向に、変化に合わせながら、自治体が住宅再建政策を、せっかく立てた政策がずれが生まれてきているということは、自治体にとって大変難しい問題だと思うんですけれども、どうやって調整していくのか、そのプロセスって、どうあるべきだと思われますか?
基本的に一番大事なのは、やはり被災された世帯、被災された方々一人一人が、一世帯一世帯がどういう状態で、どういうふうにしたいと思っておられるのかということをきちっと聞いて、丁寧に把握して、それに合わせて、その積み重ねとして、政策や計画を作っていくということが大事だと思うんですね。
もちろん、おっしゃったように、意向がどんどん変化していく。
変化に合わせて計画を変えていくというのは、それは大変な作業です。
大変なんですけれども、結局は被災者に、人に着目して政策をやっていったほうが、被災された方々にとっていいですし、それに加えまして、計画にとっても合理的だと思うんですね。
と言いますのは、やはり被災された方の意向から離れたところで、いろんなことをやっても、例えば空き地が増えてしまうとか、せっかく作っても空き家になってしまうとか、そういうことがありますので、やはり被災された方々の意向というのをベースにする、それが被災者にとっても、計画の合理性にとってもいいんだというふうに思っています。
選択しやすい、そうした選択肢を本当に具体的に提示していくことが大事ではありませんか?
そうです。
被災された方々に意向を聞く、そのときにやはり、こういう選択肢がありますということをきちっとやらないといけませんし、その選択肢をどんどん増やしていくということが大事だと思います。
例えば持ち家の再建に自治体がいろんな補助を出し始めてますけども、それを国レベルでもっとしっかりやるとか、あるいは、民間の賃貸住宅に入る人に、家賃の補助をしていくとか、いろんなことが考えられるというふうに思います。
2014/03/12(水) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「“仮の住まい”のはずなのに…〜被災地 4年目の課題〜」[字]

被災地最大の仮設住宅石巻市の開成団地。NHKが3年続けて行ったアンケートで、仮設を出る目処が立たない悩みを持つ住民が増えていることがわかった。その実態を伝える。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】神戸大学大学院教授…平山洋介,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】神戸大学大学院教授…平山洋介,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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