人は母の愛に包まれて生まれそして愛されながら成長します。
成長すると人を愛するようになり家族をつくり子供を育てます。
人の営みは「愛」によって成り立っているのです。
しかし今「愛」をめぐって多くの問題が起きています。
およそ50年前そんな現代社会の病巣に警鐘を鳴らした人がいます。
その著書「愛するということ」でコミュニケーションの力が失われていると説いたフロム。
今回はそのメッセージを読み解きます。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さあ今回ご紹介する名著はなんとこちらでございます。
「愛するということ」。
誰しもね愛についていろいろと迷った事考えた事悩んだ事あると思いますがなかなかいいタイトルですよね「愛するということ」。
良すぎて僕なんかはもうてれくさくてちょっと縁遠いですからもう既にてれてますけどね。
なるほど。
ちょっと直接すぎて。
はい。
でも今月はバレンタインもありますし4週にわたりまして2月は「愛するということ」に迫ってまいりたいと思います。
では今回の指南役の先生をご紹介いたしましょう。
法政大学国際文化学部教授の鈴木晶さんです。
先生どうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いいたします。
なかなか今の雑誌のタイトルにもありそうな感じの本ですね。
そうですね。
これ大変なロングセラーでちょっと意表をつく内容で「愛とは技術である」そういう内容の本です。
ただし女にモテる方法男に好かれるテクニックといった類いの事は一切書いてありません。
ないんですか?既に第一先入観がないんだという。
もう一つは「愛される事」よりも「愛する事」が重要なんだよというのが最大の主張ですね。
精神分析学を専門とする鈴木晶さん。
23年前に「愛するということ」を翻訳。
その中でフロムが提示する「愛」の分析は現代社会の問題点を鋭く指摘しているといいます。
ではまず「愛するということ」の基本情報を見てみたいと思います。
1980年まで生きていらした長生きの方ですね。
それからベストセラーという事なんですね。
これ鈴木先生日本語のタイトルは「愛するということ」だけど「TheArtofLoving」というのが原題なんですね。
直訳すると「愛の技術」という事ですね。
「芸術」というのではないんですね。
「アート」というのはもともと「技術」と「芸術」と両方の意味が一つの言葉に込められていて現代はどちらかというとアートというと美術とか芸術という意味が強いですけどもここでは技術という意味で使っています。
愛に技術ってあるのかしら。
テクニックみたいな事なんですか?実は心の技術という事ですね。
愛する事は練習を要する事ですか。
そうなんです。
何かもう既に意表をつかれてるのは愛する事自体なんて湧き上がってくるものであってそれ自体は誰でもできるというか自然なものだというイメージですけどそれではないと。
それは誤解だよという。
むしろ誤解だよと。
そのフロムさんは冒頭でこのように書いているんだそうです。
誰でもができるものではない。
成熟の度合いに関わりなくできるそういう感情ではない。
という事は…人格全体を発達させないと愛する事はできない。
いや好きになっちゃったんだからしょうがないみたいなものを愛とする場合もあるじゃないですか。
こればっかりは本能的に愛だとかちょっと混乱するんですよね。
自分たちの愛が揺らいできた感じ。
今まで自分たちが愛してきた事とかがもしかしたら覆る可能性もあるね。
さあ人はどのように愛を知るのかちょっとフロムの考えをご覧頂きましょう。
人が生まれ初めて出会う「愛」。
それは母の愛です。
しかし赤ちゃんが母親に対して感じているのはぬくもりであり食べ物であり満足と安全の快い状態という事だけです。
赤ちゃんは母親に無条件の愛を与えられます。
母親に愛されるために努力は必要ありません。
ただ生きていればそれだけでいいのです。
8歳半から10歳くらいまで子供にとって問題なのは愛される事だけです。
愛される事には反応しますがまだ自分からは愛する事ができません。
この時期を過ぎると子供は母親に何かを贈る事を思いつきます。
愛される事から愛するという感情が生まれてくるのです。
やがて思春期になると多くの人と関わる事で自己中心的な考えを克服します。
自分の欲求よりも他人が大事になり愛されるよりも愛する方が喜ばしくなるのです。
その後長い年月をかけて愛が成熟します。
これがフロムの考える理想的なステップです。
出発点はやっぱり母親から愛されているその状態。
自分が愛されてるんだって事最初気がつかないわけですけどだんだんそれが愛なんだという事が分かってくると今度は自分が愛するという事に目覚めていく。
目覚めていくんだけれどもいきなり愛する事ができるわけではなくて…そういう考え方ですね。
子供がさあじゃあ愛そうとする瞬間何かお母さんにしてあげた方がいいんじゃないかって思う瞬間とかって確かにあったような気がする。
何かそれほんとに石ころかもしれないし何か分かんないけど大切なものをあげたい大事な人にあげたいと思ってくる瞬間ってあるんですよね。
母はほんとに胸を打たれるというかこれは宝物ってやっぱり思うんですよね。
赤ん坊というのはとにかく自分が中心で全て世界の中心は自分なわけですけどそのままでいると人を愛する事はできない。
そこから一歩出なくちゃいけないわけですね。
それが初めて人を愛するという瞬間なんでしょうね。
さてなぜフロムが愛について書こうと思ったのか。
そこにはフロム自身の個人的な体験がありました。
どうぞ。
エーリッヒ・フロムは1900年にドイツで生まれました。
両親は厳格なユダヤ教徒。
幼い頃はユダヤ教の研究者になるため勉強に励んでいました。
12歳の時にある事件が起こります。
ひそかに好意を抱いていた女性画家が彼女の父親が病死するとその後を追って自殺してしまったのです。
「どうしてあの美しい女性が自分には貧相にしか見えない父親をそれほどまでに愛し死を選んだのだろうか」。
死に至る事もある愛に大きなショックを受けたフロム。
この事をきっかけに心の問題に向き合い精神分析家になります。
その後ナチスから逃れるためアメリカに渡ったフロムは1956年「愛するということ」を発表しました。
フロムは人間は「本当の愛」を見失っていると指摘します。
それは現代社会のさまざまな問題にも一石を投じています。
この本をフロムが書いたのはかなり年がいってからしかもアメリカに移住してからなんですけれどもずっと彼の生涯をたどって遡っていくとこの事はきっと忘れられないショックな出来事として彼の心の中に残ってたと思うんですね。
その時に決定的なそういう刻印を受けたんじゃないかと思います。
大ショックは受けるでしょうね。
少なくともその彼女の事を自分が好きで彼女もお父さんの事が好きでって。
この「好き」という言葉は一緒愛であるにもかかわらず彼女は僕にとって大事なあの彼女はその好きがゆえに死んでしまう。
「えっ?好きって何よ?俺だって人の事好きだぜ。
なのにこんな事起こるの?」という。
「好きを愛するをこじらせると死に至るの?」という事はまあ大きなショックだったでしょうね。
今もそういう狂わせるみたいな事はやっぱりある…分からない部分というのは結構あるんですよね。
いつの時代にでもあるんじゃないですかね。
昔もいろいろあったと思うんですけれども今の日本の恋愛事情というのもちょっとおかしくなってますよね。
私もそれを心配しているんですよ。
こんにちはエーリッヒ・フロムです。
どちらから?東京から。
フロムトーキョー。
まあいいじゃないですか。
私のところに来る若者も結構危ういんですよ。
ここはフロム先生の恋愛研究所。
今も昔も若者たちは愛について悩んでいるようです。
全く今の時代は「恋愛できない」と言う若者が多すぎて駄目だ!先生ぶつぶつ言ってる場合じゃないですよ。
次の方どうぞ。
こんにちは〜。
失礼します。
(フロム)はいどうしました?この間彼女に「もうつきあえない」って言われたんですよ。
それが何でだか分かんないんですよ!何で俺が振られなくちゃいけないのかありえないですよね。
毎日メールだってしてても返事もないし。
なるほど。
君は自分の事しか話してないね。
そう。
つまり人に愛してほしいと要求ばかりしているという事。
これじゃあ駄目。
私もう28歳なんですけど彼氏が全然できなくて。
ちょっといいなと思ってもこの人でいいのかなって考えちゃうんです。
どうしたら出会えるんですか?ちゃんと大学出て収入があって…愛すべき人がいないのではなく自分が愛する技術を持っていないから駄目なんです。
僕いつもすごい盛り上がってつきあうんですけど長続きしないんですよ。
マジで好きなんですよ。
でも…これどうしてですかね?君体だけじゃないよね?もちろんです。
すっごい好きなんです。
でも言葉遣いが汚かったり食べ方が汚かったり合わないなって思うとすぐさめちゃって…。
確かに運命的な出会いで盛り上がるってのはいいよね。
愛の力だと思うよね。
でもそれだけじゃ駄目。
興奮状態で血がのぼった状態が本当の愛だと思うのが間違い。
常に相手の事を考えていますか?そうじゃないと愛はすぐに終わってしまうんです!先生そんなに興奮しなくても。
いや駄目駄目!こんなふうに明らかに現代人は「愛する事」に失敗ばかり重ねておる。
何で愛を学ばないんだ!?愛についての誤解まとめてみました。
それが例えば今週号の何々のトップ記事でもおかしくないでしょ。
こんなのばっかりですよね今。
「どうすれば愛される人間になるのか大特集」って書いてある。
「愛され顔になる」とかね。
でしょ?いかに愛されるかという問題だと思ってる人は多い。
愛されるというのは赤ん坊はひたすら愛される存在ですよね。
そのまま大人になったというか欲しい欲しいそして与えるって事を知らないそういう状態ですよね。
それも「理想の彼氏を見つけるための100の方法」買うでしょ。
その号があれば売れるでしょ。
つまり自分の問題じゃなくてこれはそういう対象が見つからないそういう事が問題だからどこかにいるだろう。
でも実は自分に能力が欠けているから見つからないかもしれないというふうにはあんまり人は考えないという事ですよね。
「恋愛ができない理由何ですか?」「出会いが少ないんです」なんて普通に使われてる言葉ですけどその中には何だろう出会う能力に欠けてるというか。
その能力がないと出会っていても気がつかないしうまくいかない。
つまり自分には何の問題もなくてたまたま見つからないんだとどっかにはいるんだとそうやって日々過ごしてる人が多いのかもしれない。
これもそうだと…燃えるような燃え上がるような愛をみたいなね。
フロムが言ってる事の一つは本物の愛と本物でない愛の一つの違いは持続性。
私も学生から恋愛の話とか聞くと短い人が多いですね。
2か月ぐらいで終わっちゃうとかね。
それなりに深くつきあってるんですよね。
セックスもしている。
けれども何か長続きしないという人多いんですけどそれはやはりどこかに問題があるんじゃないか。
そういう人が多いような気がちょっと今するのですけど。
デパートみたいなものでデパートへ行くと何でも売ってますよね。
だから自分は好きなものを選べるんだとそういうふうに考えてる人がすごく多いと思うんですよ。
だけれども実はそうじゃないんだよと。
簡単にパッと買ってしまってもしばらくして飽きちゃうやっぱり別のものが欲しくなる。
そういうふうに交換が可能だと考えてる人も結構いると思うんですね。
フロムはこんなふうに書いています。
これを読んで一つ大きな疑問は愛されてるから愛するんじゃないと。
愛するから愛されるというのが原則だと。
それからあなたが必要だからあなたを愛するんじゃないと。
あなたを愛してるから必要だ。
これってでもバランスとれない…僕はずっと愛を与えていくあなたを愛していくけれども結果的に愛されないというケースはありますよね。
大損…この考え方最悪なんですけどそういうケースの事をフロムはどう考えるんですか?人間は先ほどもあったように愛される事から始まりますよね。
だけどもそのままの状態だと人間として成熟しない成長しない。
自分にとっても非常に愛するという事が大事なんだとそう言えるんじゃないですかね。
じゃあやっかみ半分に言うとず〜っと愛されるモテモテの人モテモテの人は能力ずっと高まりませんよね?だってモテちゃうんですもん愛されちゃう。
それに満足していればなかなか自分から愛する機会もなく必要もなく成長しないまま一生を送る人もいるかもしれないですね。
僕幼稚園で読み聞かせの先生じゃないけどおにいさんみたいなのやってた事あるんですよ落語家時代に。
そうすると子供の中でそれに目覚めた子が急にロブスターの殻をくれたりするのね。
だから子供にとって大事なもので「俺にとっての宝物をこの先生にあげるとより面白い話をしてくれる」みたいな関係ができる多分そういう事なんでしょうね。
目覚める自分が何かをしてあげたい。
してあげると愛すると愛される。
幼稚園の子供たちいっぱい相手にしてると自分に注目してほしくて延々と泣き続けるだけのやつもいるの。
成熟度が遅いスピードが遅いやつ。
だけどどうすると先生に気に入られるかお兄さんに気に入られるかという事で何かをしてみせてくれたりとかちょっとずつ早めに大人になる子っているじゃん。
そうするとあそこで泣きながらでんぐり返ってるやつが成熟してないやつの代表だとすると分かりやすい。
めんどくせえって思われ続ける。
気を引きたいのね。
ロブスターの殻をくれたやつに関しては分かんないけどやっぱりかわいいなって思うしこれぐらい必要とされてるなら俺ももっと面白い話をしてやろうと思う関係を考えると確かに極端にそこを若くすると分かるような気がする。
だから大人になってもそういう事をしてる人いますよね。
やっぱりここでキーワードになるのは成熟という事なんですよね。
こういう成熟した愛に達するためにはつまり年を取れば成熟するというものではないので心は。
どこが違うかというとやっぱり…それを練習しなくちゃいけないんだと彼は言ってるわけです。
その技術を習得するのは易しくはないでしょうね恐らく。
どうしよう4回終わったところで「あれ?俺が手に入れたと思ってたものは本当の愛じゃなかった」って結論になったら。
どうしよう。
だけど少なくとも50年だから半世紀以上前に出版されたものだけどもこれだけ前のめりに僕らなるむしろ出版当初より下手すりゃ前のめりになる状況であるのは愛について分かんなくなってる状況であるのは間違いないので。
皆さん一緒に本当の愛に近づいてまいりましょう。
鈴木先生今日はどうもありがとうございました。
2014/02/12(水) 05:30〜05:55
NHKEテレ1大阪
100分de名著 愛するということ[新]<全4回> 第1回「愛は技術である」[解][字]
精神分析家・エーリッヒ=フロムの作品で、愛の本質を分析した思想書「愛するということ」を読み解く。第1回では、人を愛するには、成熟した精神が必要であることを学ぶ。
詳細情報
番組内容
いい人が見つからない、すぐに相手にあきてしまうなど、愛には難しい点が多い。実はこうしたことは、現代人の悲しい性だとフロムは考えた。私たちは資本主義市場での“好都合な交換”に慣れているため、相手が条件にあうかどうかを気にしがちだ。そして“恋愛市場”のどこかに運命の人がいると思っている。フロムはこうした現代人の考えに警鐘を鳴らした。そして愛するには、技術が必要なのだと説いた。第1回ではその真意に迫る。
出演者
【ゲスト】法政大学教授…鈴木晶,【出演】斉木しげる,【司会】伊集院光,武内陶子,【語り】山崎和佳奈
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
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