ご機嫌いかがでしょう?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者斉藤斎藤さんです。
今日もどうぞよろしくお願い致します。
今日の冒頭の選者の一首は?昼下がりにツラツラ考え事をしていたという歌なんですけどこの歌の仕組みについては後ほど講座でご説明しますので。
はい楽しみにしております。
早速今日のゲストをご紹介致します。
漫画家のカラスヤサトシさんをお迎え致しました。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願いします。
カラスヤサトシさんは1995年に第6回コミックアレ!漫画賞を受賞。
2002年に短編「HOME」でちばてつや漫画賞大賞を受賞されていますが実はご自身の体験を題材にした4コマギャグ漫画で人気を集めていらっしゃいます。
こちら「カラスヤサトシ」と題されたシリーズが今刊行中なんですが7冊目にもなるんですね。
これはどういった経緯で生まれているんですか?漫画雑誌の読者コーナーといいますか読者にお題を募集してそれに読者が答えるっていうのが漫画の隅っこに載ってるコーナーがあるんですけど短歌でお題に答えるような感じで。
お題が出されて4コマ漫画で答える。
読者は文章なんですけども4コマ漫画家もそれに答えるという企画で最初は始まって300本近くたまってしまったので本来単行本になるようなコーナーではないんですけどもせっかくたまったんで出させてくれないかという嘆願活動みたいな事を紙面でやりましたら賛同を得られまして1巻が刊行されたのが7年前で今に至っております。
7冊目という事で人気ですよね。
短歌ですけれどもこの番組出て頂いたわけですが斉藤さんは実はファンでいらっしゃるんだそうですね。
最初に読ませて頂いたのが「おのぼり物語」という漫画を描いている青年が上京する物語。
4コマでありながらストーリーもあって映画にもなった感動するお話なんですけれどもそれを読んで以来大ファンなんですよね。
カラスヤさん短歌とのご縁があるんですか?小学校の頃に授業で習って作らされるという授業があったぐらいですね。
適当な短歌をみんな作ってて。
課題としてやらされたという事ですよね。
ご出演にあたって短歌にどんなイメージを持っていらっしゃるのかキーワードを考えて頂いたんですがどんな言葉になりましたでしょう。
漫画できましたが2コマ3コマときましたね。
その意味合いは後ほど詳しく聞かせて下さい。
どうぞよろしくお願い致します。
入選歌のご紹介です。
題が「空」または自由でした。
斉藤斎藤選入選九首です。
一首目。
恐らく子供の頃の思い出を歌われていて明日までにお金を学校に持って行かなきゃいけない。
入れといてって置いておいた袋にお金が入っていなかったという。
恐らく貧乏だったと思うんですよね。
切ない思い出なんですけど「泰然と」とちょっと突き放したユーモラスな感じで歌われていて「泰然と」がとてもうまいと思いましたね。
では次二首目です。
カラスヤさんいかがですか?一読して何の練習をしてるのかなと思ったんですけどよくよく読むと「空気の抜けた自転車」というのと「電柱が待つ」という表現で普通ならすっと通りすぎてしまう電柱が自転車がボロボロなためになかなかやって来ないというのが分かって。
最初に謎を投げかけられた気がしたけど答えは自転車で出てるというのが面白かったと思いました。
これも恐らく子供の頃の思い出を歌われていて「電柱が待つ」というのが自転車を一生懸命乗りこなそうとしている子供の視点がよく描けているなと思いました。
何とかあの電柱までっていう目標がね。
では次三首目です。
これもカラスヤさんいかがですか?出だしから陰鬱というか暗い感じがして「あじフライ定食を食べ夕空見やる」まで読んでも結局もう何も驚くような事はなかったんだろうなというのがじわっと伝わってきまして徹頭徹尾やるせない空気がいいなと思ったという。
「ひと日何も驚かざりき」という入り方もいいと思いますしやるせない空気とあじフライがなぜかよく合ってるんですよね。
トンカツでもないと思いますし刺身でも焼き魚でも駄目でやはりあじフライ。
エビフライも駄目?エビフライもカキフライも駄目ですね。
ここはあじフライでなきゃ駄目。
これ絶妙だと思います。
はいでは次四首目です。
「児は夫に」という入り方も面白いですし「掘出し物」という言い方が何だか分からないけれども大きさと重さだけが伝わってくる。
それをベビーカーに載せてツラツラ押しているという何ていうんですかねダラダラしたような「ベビーカーには掘出し物か載せてママ行く」というこのリズムがベビーカーをズルズルと押していってる感じがリズムにも出ていて面白いなと思いました。
五首目です。
問いも答えもなくなぜかみんな空を見てしかも悲しくなって泣いてしまうというその気分だけが捉えられているんだけれども気分だけ理由もなく泣くという事を「答えのように泣いたりもする」という言い方で収めているところが非常に巧みだなと思いました。
非常にみずみずしい青春のような気分を感じる歌でしたね。
六首目です。
過去に入院した時に退院日が近づいてくる気分っていうのをとてもよく思い出してしまいましたね。
外の世界窓の向こうと退院が近くなるとつながりを取り戻すので空が広くなるんですけれどもその朝焼けが霜降り肉のように見えたと。
まるっきりの希望でもまるっきりの不安でもない。
いろいろな感情が入り交じってそれがちょっとよみがえってきているようなもう一度外で生きていくっていう時に肉が何かぴったりなんですよね。
霜降りの肉であると。
これ巧みな比喩だと思います。
では次が7首目です。
普通死のイメージというのは骨ですとかあるいはお墓というのが地上に残って魂が空に上っていくというのが普通のイメージだと思うんですけどこれは空の個室が空に上っていくっていうんですね。
孤独死というと強い言い方になってしまいますけれども自分が死んだあとに空の部屋だけが残されて観覧車ですからいずれそこに誰かがまた乗り込んで個室ではなくなって空ではなくなっていくというそういう一時的に個室が空に上っていくというイメージが非常に捉えていると思いましたね。
では次八首目です。
これはカラスヤさんどう読みました?出だしの3行元日からものすごい事が起こってるなという感じを受けまして最後まで読むと「サイドミラーをやられし車」であっなるほど散らばったサイドミラーに空がいっぱい映ってるんだなとまで思ったんですけれども車が出てるという事は車とサイドミラーは同時に散らばってるサイドミラーと車があるって事はまさにやられた瞬間の事を歌ってるのかなと思いまして短歌のイメージを覆す躍動感にあふれた感じがしてすごい印象に残りました。
たった今サイドミラーが粉々に砕かれたような躍動感ですかね。
そこを短歌にできるのかというのがすごいと思いました。
躍動感って今おっしゃったまさにそんな感じで事故の瞬間と「やられし車」という歌い納め方からすると事故の瞬間と残像が同時に意思にあるような不思議な流れなんですよね。
全体的なリズムも「まき散らすサイドミラーをやられし車」というこのリズムちょっとロックンロールの歌詞みたいでこのリズムもかっこよかったですね。
では次おしまい九首目です。
空がすごすぎて遅刻するっていうのだったらよくあると思うんですけど面白いのはこの作者は結局遅刻しないで学校か会社に間に合っているところですね。
すごい空だなと思いながらきちんと会社に行ってるところその一瞬だけが心に残っているという感じがとてもすてきだなと思いましたね。
以上入選九首でした。
ではこの中から斉藤斎藤さんが選んだ特選三首です。
まず三席からです。
松本愛美さんの歌です。
続いて二席です。
南本禎亮さんの歌です。
さあいよいよ一席の発表です。
齋藤恭司さんの歌です。
「夕空見やる」というひょっとするとものすごい夕焼けなのかもしれないけれどもちらっと見やるだけというこの収め方といい全体的にハードボイルドな感じもしていい歌だなと思いました。
以上今週の特選でした。
是非ご覧下さい。
それでは「うた人のことば」のコーナーです。
前川佐美雄28歳の頃の一首です。
短歌の革新のために東京での生活を選んだ佐美雄でしたが心の中では野に帰る事を願っていました。
昭和7年父が亡くなり佐美雄は奈良で家業を継ぐ事になりました。
30歳の事です。
それでも歌への情熱を持ち続け大阪を拠点とした雑誌「日本歌人」を創刊しました。
昭和12年「日本歌人」の同人であった緑と結婚。
そのころ時代は戦争の色をますます濃くしていきました。
夕日に照らしだされたガラス戸に時代への危機感を詠んだ一首。
続いて「入選への道」のコーナーです。
皆さんからお寄せ頂くたくさんのご投稿歌の中から斉藤斎藤さんが選んだ歌少し手を入れまして歌が変貌していくという課程を見ていきます。
どんなふうに今日は歌が変わっていくのか斉藤さんよろしくお願いします。
それではまず今日の歌です。
「行方」がいいと思いますね。
ドライブしてると思うんですけど進行方向に完璧な虹が架かったという一瞬の驚きが鮮やかに捉えられています。
まず最小限の添削をするとどうなるかというとこちらになりますね。
語順が変わってますね。
恐らく視線の動きとしてドライブをして前を見てちょっと見上げたら虹だと思うんですね。
「国道の空の行方に」だとまず見上げてから前を見てしまっているように感じるのでそこを直しました。
この改作で更に気になるとすれば下の句ですね。
「我を迎えぬ」迎えるという表現が私の行方に虹が迎えてるという事で「行方」と「迎える」両方要らないかもしれないという気がしますね。
そこを更に改作するとこうなります。
恐らく虹を見つける時に国道に出る前右折か左折してると思うのでガソリンを入れた事にして道に出たらその先に虹が架かっていたという流れにしてみました。
今日のポイントは「空の行方」と「行方の空に」ですね視線の動きと言葉の動きをそろえるという事を意識してみて頂ければと思います。
いかがでしょうか?皆さんもどうぞ歌作りの参考になさって下さい。
それではご投稿のご案内を致しましょう。
では選者のお話です。
斉藤斎藤さんの「初心者になるための短歌入門」今日は「歩きながら考える」というテーマでお話を頂きます。
この歌の仕組みっていうのは小説で説明すると「草枕」に近いんですね。
有名な書き出しですが「山路を登りながらこう考えたと」。
Bの部分で「智に働けば角が立つ」と言ったような世の中についての考えが述べられています。
しばらくするとCの所ですねいろいろ考えてきたところで主人公は石につまづいてしまうんですね。
「立ち上がる時向こうを見るとバケツを伏せた様な峯が聳えている」。
つまりAで「山路を登りながら」と言ってますけどBでいろいろ考えてる間にだいぶ高い所まで登ってきたその景色風景がCで見えると。
そういう仕組みになっています。
私の歌なんですけれども…。
こちら斉藤斎藤さんの先ほどの歌です。
この歌の仕組みを「草枕」式に説明するとこうなります。
めくりますとABCと書きましたが…。
短歌は短いですのでAは省略されています。
Bの考えの部分が「智に働けば」といった部分が子供はほしいのかなといういろいろな考えになるんですね。
そして「草枕」ではバケツを伏せた様な峯時間経過を示す風景に当たる部分が「紅茶出過ぎた」といろいろ考えてみたらティーバッグがつかりすぎて紅茶が出過ぎてしまったという描写になっています。
短歌で考えに風景を添えるのは一番基本的な仕組みというのは風景を添える事でそこに時間経過が発生して考えが考えるという行為になる。
そこに主人公の顔が出てくるという事なんですよね。
ですので考えと風景を添えて時間経過を示すという事をちょっと心がけてみて頂ければと思います。
「歩きながら考える」でした。
ありがとうございました。
さてカラスヤサトシさんにも伺いましょう。
先ほどのキーワードをまずお見せ頂いて…「短歌とは何ですか?」「2コマ漫画か3コマ漫画のようなもの」という事ですがどういう事ですか?短歌と4コマがよく似てるという話よくは聞かないですけども印象的に短くて一つで簡潔してる世界が似てるのではないかというのがあったので短歌を4コマにできないかと思って文章を分割するだけの事をしてみたんですけど大体4コマになるのもあるんですけど多くは2コマか3コマ分のコマ割りになったんですね。
例えば先ほどのあじフライの句なんですけどもまず最後のコマをどこにするかって考えた時に「あじフライ定食を食べ夕空見やる」これは最後のコマで動かせないなと思ったんです。
あとのその前のコマはどうなるかというと「ひと日何も驚かざりき」で1コマでもいいんですけど何となくこの句の場合は「ひと日何も」で区切って「驚かざりき」で2コマ目3コマ目で「あじフライ定食を食べ夕空見やる」になるかなと。
「ひと日何も」で1コマ「驚かざりき」で1コマ「あじフライ定食を食べ夕空見やる」で1コマで3コマ。
これを4コマ漫画だったらどうなるのかなと思うとこのあとにこの句は一日何もなかった歌と感じたんですけど夕空がどうだったのかというのがオチというか4コマならなると思うんですね。
すごい驚くべきような夕空だったのに驚かなかったというのでもう4コマになると思いますしやっぱり最後まで何の変哲もない夕空だったというのでも4コマになると思うんですけど4コマ漫画に描くとしたら一番大事になりそうなところをあえてスバッと切って3コマ分ぐらいにしてるところが短歌のシャープさといいますか…。
なるほど。
「夕空見やる」どんな夕焼けだったのかという事が書かれていないという事ですね。
肝心なところを描いてないところがカットのしかたが大胆だなと思いますね。
こうおっしゃいますが斉藤さんいかがです?確かにそこは書かないところですね。
そこまで書いてしまうと説明しすぎですか?短歌では。
そうですねそこまで書かないですね。
夕空を見やったのはその夕空がすごいのかすごくないのか自分が見てすごいのかすごくないのかそこはどちらにもとれるように。
読者に考えてもらうと。
それでは斉藤さんにもカラスヤさんの作品を見せて頂きながらお話を頂きましょう。
まずこの作品。
これ非常に好きな作品なんですけれども子供の頃から新しいものが嫌いだったと。
悲しくなってしまうと。
小学校の時に新品のランドセルを買ってもらったんだけど悲しくてメチャクチャに踏んづけてしまったというんですね。
怒られましたね。
…で怒られると。
4コマ目で大人になってます。
大人になって考えてみると当時嬉しいと悲しいの区別が自分はついていなかった。
どうしようもなく嬉しかったのだと今なら分かるという事ですね。
これ短歌にするとしたらやっぱり先ほどおっしゃったように3コマ目ぐらいしか入らないと思うんですよね。
頑張っても。
4コマ目を大人になって振り返るというのは入らないと思います。
そうするとどうなるかというと4コマ目で今となってみるとあれは嬉しかったんだという事を確定してるんですけど短歌ではメチャクチャに踏んづけてしまったのは嬉しかったのか悲しかったのかというのは確定しない。
自分でも分からないままにするんですよね。
そこはやはりぼかしたままになるんだろうなと思いますね。
なぜそういう事をしたのかを読者に考えさせるような感じになるんでしょうか?そこは委ねる感じになりますね。
名付けようのない感情というか…。
4コマの漫画でも大変短い表現の長さだと思いますけれどもそれと短歌の三十一文字ってお互い短いところで表現しておられるわけですけどいかがでしょう?やっぱり短歌の方がシャープな感じがしますし4コマ目が読み手の中にあるようなあるいは1コマ目が中にあるのかもしれないですけどものすごい大事なところがあえて伏せる。
あえてなのか伏せた方がきれいになるような全然似てるようで違う作り方なのかなと思いました。
斉藤さんは?そこを書く書かないっていう書かないのが短歌だって思ってたんですけど入る情報量にかなり規定されてる部分があるんだなって今お話を伺って分かって面白いなと思いました。
4コマ漫画と短歌との接点違い今日は本当に興味深いお話をして頂きましたね。
どうもありがとうございました。
漫画家のカラスヤサトシさんをお迎えして今日の「NHK短歌」お送りしました。
では斉藤斎藤さん来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」時間でございます。
ではごきげんよう。
2014/02/11(火) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「空」[字]
選者は斉藤斎藤さん。ゲストは漫画家のカラスヤサトシさん。4コマ漫画で活躍するカラスヤさん。何を描くかより何を描かないかを重視する点で、短歌と漫画は似ているという
詳細情報
番組内容
選者は、斉藤斎藤さん。ゲストは、漫画家・カラスヤサトシさん。4コマ漫画で活躍するカラスヤさん。何を描くかより何を描かないかを重視する点で、短歌と漫画は似ているという。題「空」。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】カラスヤサトシ,斉藤斎藤,【司会】濱中博久
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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