福家警部補の挨拶 #07 2014.02.25

(福家)
2012年イギリス中部旧修道院跡から15世紀のイングランド王リチャード3世の白骨遺体が発見された
リチャード3世は王位に就くため他の候補者たちを暗殺した残虐な暴君でありその容姿は醜悪であると伝えられている
しかし白骨から復顔されたその顔立ちは思いやりと気品に満ちたものであった
彼は本当に悪人だったのか

(女性)あっごめんごめん。
今バイトだったんだよね。
うん。
あした?うん。
うっ…。
(女性のうめき声)
(柳田)ある事柄を説明するためには必要以上に多くを仮定するべきではない。
これは「オッカムの剃刀」と呼ばれイギリスの神学者ウィリアム・オブ・オッカムが提唱したものだ。
簡単に言えば物事はシンプルに捉えなさいということ。
余計な推論はそぎ落として構わないということだ。
例えば君たちが何かの捜し物をするときそれがどこに行ったのか様々な推論を立てて捜すことだろう。
しかしその多くは見当外れであり結果遠回りをすることになる。
大事なのは事実や物証を一つ一つ見極めていくこと。
そうすれば真実はよりシンプルなものとなりその捜し物はきっと見つかる。
(柳田)分からないってことは恥ずかしいことじゃない。
いつでも気軽に聞きに来なさい。
(学生たち)はいありがとうございます。
失礼します。
(柳田)お疲れ。
(洋子)よし。
これで少しは懲りるでしょ。
(学生)けどバレたらまずくないですか?
(洋子)えっ大丈夫だよ。
証拠は何も残してない。
目撃者だっていないし。
ねっ。
(洋子)柳田教授…。
(柳田)いたずらもほどほどにな。
まあ私の講義を真面目に受けるというのなら何も見なかったことにしてもいいが。
(洋子)ハァ〜。
(学生)ありがとうございます。
よし。
これで完全犯罪成立だな。
(洋子)教授大好き!やっぱ池内と違うね。
(3人)うん。
(池内の舌打ち)
(ノック)
(池内)どうぞ。
(池内の舌打ち)
(柳田)捜し物かね?
(池内)買い置きしてたたばこがどこにもないんですよ。
マッチもだよ。
まったくまたあいつらの仕業だ。
(柳田)あいつらとは?
(池内)決まってるでしょ。
僕に単位落とされた学生たちですよ。
腹いせにやったに違いないんだ。
推論で決め付けてはいけないね。
証拠がないだろう。
(池内)フッ。
それより教授あなたはそんなありがたい講義をしにわざわざここに来られたんですか?
(池内)約束は守ってくれたんでしょうね?君のことを警察庁に推薦しておいた。
(池内)さすが神様だ。
これで僕もしがない講師の身分から抜け出せる…。
君の方も約束は守ってほしいもんだな。
(池内)もちろん。
これですよね。
(柳田)どういうことだね?
(池内の舌打ち)
(池内)考えたんですけどね僕への仕事のあっせんとこのディスクの中身まだ釣り合わないんじゃないかなって。
あなたにはまだまだ僕の面倒を見ていただかないと。
約束が違うようだが。
約束したのはこれを誰にも見せないということです。
こいつは僕の保険ですよ。
「科警研の神様」といわれたあなたの後ろ盾はこれから先も必要なんです。
お互いうまくやっていきましょうよ。
教授。
ねっ。
(池内)それじゃあ後ほど勉強会で会いましょう。
(池内)ところでどうして僕があなたの秘密を突き止められたのか教えて差し上げましょうか?
(柳田)結構。
君に教わることなどない。
オッカムの剃刀。
教授お得意の理論に当てはめて考えたんです。
すると思わぬ真実が見えた。
ご安心を。
約束は守ります。
神様の言うとおりに。
(菅村)あっ柳田教授お疲れさまです。
(柳田)ああ。
おっまた起きたのか通り魔事件。
これで4件目か。
(菅村)しかも今度は隣町の学生さんですよ。
警察は何やってんですかねえ。
(柳田)フフ。
そうだな。
(菅村)あっいやあの…。
私は別に教授のことを悪く言ってるわけでは…。
いやいや。
私も警察のOBとして見過ごせない問題だ。
パトロールを強化するよう伝えておく。
私も厳重に見回りをします。
教授もどうかお気を付けて。
(柳田)ああ。

(池内の舌打ち)
(池内の舌打ち)教授!
(池内のうめき声)
(池内)うっ…。
待って!ひっ秘密は守りますから!私はね人間というものを信用しないんだ。

(男性)お疲れさまです。
(柳田)あっどうも。
(柳田)皆さんお揃いかな?
(洋子)はい。
あっ池内先生はまだですけど。
珍しいな。
時間にだけ厳しいあの男が。
(洋子)いや来なくていいですよあの人。
(柳田)えっ?
(洋子)フフ。
あっどうぞ。
もう勉強会始めちゃいましょうよ。
はいはい。
(田所)前と同じ手口の通り魔事件です。
これで5件目です!
(石松)ついに死亡者を出してしまった。
(田所)マスコミの非難も相当なものになるかと。
(石松)現場を徹底的に調べてください。
見落としのないように。
(田所)はい。
よし。
(警察官)はい。
(警察官)おっす。
(二岡)怖〜。
(二岡)福家さん!?
(福家)ずいぶんさみしい通りね。
はい。
夜になるとほとんど人が通らないそうです。
(福家)なのに犯人はずっと待ってたの?ここに人が通るの。

(石松)だからこそでしょう。
今のところ目撃者は一人もいません。
今回だけではなくて全ての現場において犯人は痕跡を残さず素早く犯行を繰り返している。
そしてついに人を殺した。
これ以上犯行を許すわけにはいきません。
絶対に。
(田所)そのとおりです!この事件には警察の威信が懸かってます!連絡を密に取り足並みを揃え…。
足並みを…。
おい!福家!聞いてんのかお前!お前に言ってんだお前に!
(石松)すぐに周辺の聞き込みを。
分かりました。
ガイ者は?
(二岡)池内国雄42歳。
城北大の講師です。
最新の復顔術の研究をされていたようです。
城北大で復顔術…。
額に殴られた傷があり後頭部と頭頂部にも傷が。
計3発ですよ。
ひっどいことするよなあ。
ポケットの中にはたばこと紙マッチ。
それとキーリングが入ってました。
「ボヘーム」珍しいたばこね。
(二岡)僕も初めて見ました。
海外のものですかね。
金目のものは抜き取られていて他の4件同様物取りの犯行で間違いないかと。
鍵はこれだけなの?
(二岡)あとかばんの中に車の鍵が。
車の鍵?
(二岡)はい。
これです。
車はどこにあるの?
(二岡)えっ?ああ。
どこですかね。

(ノック)
(柳田)はい。
(菅村)あっ夜分遅くにすいません。
(柳田)何だね?
(菅村)あの池内先生の研究室って何かあったんですかね?池内君の?
(菅村)はい。
今何かあの警察の方がいらしてて。
警察?
(菅村)はい。
君何をしてるんだ?あっ。
これは柳田教授お久しぶりです。
(柳田)フッ。
前に会ったかな?福家と申します。
5年前に一度教授の講演会でお会いしました。
ああそうだったか。
科警研を引退されてからはこちらの特任教授に就任されたと。
ああ。
今も捜査の依頼はひっきりなしでね。
現役のときより忙しいくらいだ。
教授の手掛けられる復顔術は未解決事件を解明する最後のとりでですから。
フフ。
そうだな。
ところで一課の君がこんな所で何を?あっ…はい。
実は先ほどこちらの講師である池内国雄さんが亡くなられました。
亡くなった?強盗に襲われたものと思われます。
頭部を殴られて。
そんな…。
ひょっとして例の通り魔犯の仕業かね?現在捜査中です。
池内さんは教授と同じ復顔術を研究されていたようですね。
ああ私の教え子だった。
彼とは今夜も勉強会で会う予定だったんだ。
顔見せないんでどうしたのかとは思ってた。
ということは池内さんはその勉強会に向かう途中で襲われたと。
だろうね。
で犯人は?はい。
今のところ手掛かりはなく目撃者もいません。
なら現場の捜査があるだろう。
君何でこんなとこに?あっ実は…あっ。
気になることがありまして。
んっ?こちらです。
池内さんの所持品の中にこのようなキーリングがありました。
丁寧に「自宅」と書かれたシールが貼られています。
うん。
それが何か?鍵は1つだけなのですがどうしてこのようなシールを貼る必要があったのだろうかと不思議に思いまして。
もしかしたら他にも似たような鍵がここに付いていたのかもしれません。
例えば職場の鍵とか。
先ほど警備員の方に聞いたのですが池内さんはこの研究室の鍵をご自分でお持ちになっていたようなんです。
ところがその鍵はどこにも見当たりません。
あっどっかでなくしたのかもな。
あるいは池内さんを襲った犯人が取ったのではないかと。
鍵を取った?はい。
可能性の一つとしてです。
まさか犯人がこんな所に来たっていうのかね?ですので念のためにこちらに見回りに来ました。
なるほど。
しかし物を取られたような形跡はないようだし杞憂だったな。
ですが少なくともつい先ほどまで誰かがこの部屋にいたのではないかと思われます。
何?このパソコン触ってみるとかすかに温かかったのです。
少し前まで電源が入っていたものと思われます。
んっ?いやこのパソコンも古くなってる。
たまに熱を帯びることもあるだろう。
あっこの研究室の鍵単なる学生たちのいたずらかもしれんよ。
いたずら?ああ。
いや現役の刑事に偉そうなことは言えないが私からアドバイスを一言。
物事は常にシンプルに捉えること。
オッカムの剃刀ですね。
どうやら君は優秀な刑事のようだな。
とんでもないです。
まあとにかく私に役に立つことがあるなら何でも協力する。
教え子が殺されたんだ。
絶対に犯人は捕まえたい。
ありがとうございます。
頼んだよ福家君。
はい!ところで教授。
どうして私が一課の人間だと思われたのです?「どうして」って?池内さんが殺害されたことを話す前に教授はおっしゃいました。
ああ。
5年前の君のことを思い出したんだ。
当時私がいたのは公安部です。
捜査一課に配属されたのは2年前からです。
あっ…他の誰かと勘違いしたのかな。
いやしかしね君が一課の人間だってことはぴんときた。
顔を見て。
顔ですか。
顔は全てを物語る。
骨もまたしかりだよ。
そういうことが直感で分かんだ私は。
あ〜さすがです。
(菅村)あったあった。
ありましたよ刑事さん。
ほらここに。
池内先生の研究室の鍵。
よくここだと分かりましたね。
いや学生さんたちこの辺りよく先生の物隠したりしてるんですよ。
ほらここにも。
まったくたちの悪いいたずらですよ。
すいません!ちょっと靴見せてもらえます?
(菅村)靴?あなたの靴です!
(田所)今井圭三48歳。
類似する手口の犯行を基に前科者リストから洗いだしたところこの今井の消息だけがつかめていません。
現場に残っていた髪の毛については?
(田所)科捜研の報告はまだです。
凶器の特定にもまだ時間がかかるそうです。
それであのできれば…。
(石松)捜査員を増員するように要請しています。
捜査の半径も広げてください。
パトロールも強化するように通達を。
はい。
(石松)福家君は?
(田所)あっいや…。
昨日から何の報告もない。
こんなときに何をしてるんです?彼女は。
(柳田)こんな所でサボってると誰に何を言われるか分からんよ。
強盗犯もいまだに捕まっておらず警察への批判も日に日に強くなってる。
柳田教授少し気になることがありまして。
(柳田)フフ。
またそれかね。
こちらの車池内さんのものなんです。
所持品の中にもこの車のキーがありました。
ああ。
どうして昨夜池内さんはこの車を使わなかったのでしょうか?彼の足取りは?はい。
昨夜池内さんは大学からタクシーに乗って勉強会のある家まで向かっています。
ほう。
タクシーか。
さらに不思議なことに池内さんはその家からあと数百メートルというところでタクシーを降りられたようなんです。
なるほど。
(柳田)そもそも大事なのは池内君ではなく犯人の足取りを追うことだろう。
そんな余計なことまで気にしてたら切りがない。
余計なことでしょうか?
(柳田)そうだ。
私はそんなことより彼が何者なのかが気になる。
はっ?
(柳田)さっきからずっとついてきてるようだが。
すいません。
鑑識の者です。
があれこそ気にしなくて構いません。
(柳田)気になるんだよ。
君入ってきなさい。
はい!失礼します。
二岡友成と申します。
伝説の科警研の神様にお会いできて光栄であります!
(柳田)おい。
その呼び方やめてくれ。
(二岡)いえ。
柳田教授はこれまで多くの復顔を手掛けておりそのほとんどの事件を解明に導いておられます。
未解決に終わった事件はわずか数件。
まさに神様のなせる業であります!
(柳田)別に神様でも何でもない。
そうやって次々に君たちが頼ってくるからいつまでたっても私はゆっくりできんのだ。
教授ほどの技術を持った後継者がなかなかいない状況でして。
そもそも私がなぜ本格的に復顔術を学ぼうと思ったのかその訳知ってるかな?はい。
奥さまのためにと。
(柳田)ああ。
私の妻はね23年前に行方不明になった。
それ以後身元不明の遺体が出るたびに確認に行った。
つらい日々だったよ。
復顔術をより専門的に研究したのもそのためだ。
以来私は何千もの事件を研究し何万人もの顔を見てきた。
まっそんな経験を経て他にも分かったことがある。
事件における不可解なことというのはそのほとんどが単なる偶然の結果にすぎなかったということだ。
偶然の結果ですか。
ああ。
おそらく君が引っ掛かってることもね。
では池内さんが車を使わなかったということは?仮説その1彼は酒でも飲んでいたのかもしれない。
池内さんは普段あまりお酒を飲まれないそうです。
(柳田)仮説その2勉強会で飲むつもりだったのかもしれない。
だから行きもタクシーにしておいた。
(二岡)なるほど。
特に昨日は池内君学生にいたずらをされてむしゃくしゃしていたようだしね。
いたずら?
(柳田)あっ。
君が気にしていた研究室の鍵あれも中庭に捨てられてたんだろ?はい。
ですが…。
(柳田)研究員の川本君もそんないたずらにたまに参加してた。
昨日もだ。
しかし勉強会に出れば彼女と顔を合わせることになる。
他の教授もいる手前怒鳴るわけにはいかない。
そこで池内君は心を落ち着かせるためにタクシーから降り少しの間散歩しようかと思った。
だからあの道を通った。
なるほど!このように説明はいくらでもできる。
人の行動っていうのは偶然に左右されるもんだ。
(二岡)池内さんがあの道を通ったのもそういった偶然の結果ってことですね。
(柳田)ああ。
そして運悪く通り魔に襲われた。
そうとしか言えない。
私は過去にそういった不運が重なって起きた案件を何千と見てきた。
これも同じだ。
福家君。
はい。
君がこうして寄り道をしてる間にも強盗犯は次なるターゲットを狙ってるはずだ。
そんな悲劇を未然に防ぐのも警察の目下の役割ではないかな?
(二岡)はい!そのとおりであります!講義は以上だ。
頑張ってくれたまえ。
(二岡)ありがとうございました!
(洋子)えっ私じゃないですよ。
まだ何も言ってません。
ちなみにこの近くにこういったものも。
げっ。
学生の方たちは池内さんにたびたびいたずらをしていたそうですね。
いやだって池内先生真面目に講義もしないくせに学生には厳しいし陰険だし。
その仕返しです。
なるほど。
ところでこちらのたばこやマッチには色々とメモがされていますが。
メモ魔なんですよ。
予定とか何でもいろんなとこにメモするんです。
それでメモしやすいマッチ派なんですね。
あのまだ捕まらないんですか?連続強盗犯。
現在捜査中です。
不安だとは思いますが。
ていうか襲われたのが私じゃなくてよかったっていうか。
えっ?教授。
(柳田)おや。
まだ何か用かね?1つ偶然では説明のつかないことがありまして。
いいかね?福家君…。
実はあの夜川本さんもあの道を通っていたんです。
川本君が?はい。
時間帯から考えても池内さんが襲われたほんの少し前にです。
犯人は物陰で人が通るのをずっと待っていました。
そこにようやくターゲットが現れます。
なのになぜ川本さんは襲われずに済み次に来た池内さんが襲われたのだろうかと。
うん…。
金のない学生を襲っても仕方ないと思ったんだろう。
川本さんはあの夜高価なブランドバッグを手に勉強会に向かわれています。
先日襲われた女子大生も似たような服装や所持品でした。
一連の犯人なら間違いなく川本さんに狙いを付けたはずなんです。
もしかしたら犯人はあえて池内さんを狙ったのではないでしょうか?フッ。
どういうことかな?そもそもなのですが今回の事件というのは本当に一連の強盗犯による犯行なのでしょうか?何?この前に起きた4件の連続強盗事件。
不謹慎な言い方ですが犯人は実に手際よく犯行を行っています。
気配を消して近づき背後から一撃。
そして金品を奪い素早く去っていく。
これはプロの犯行です。
ですが今回の犯人はまず池内さんを正面から殴りつけています。
気配を悟られたんです。
そしてさらに2発3発と殴打。
手際から言うと実にお粗末なものではっきり言って素人です。
ほう。
さらに犯人は池内さんを殺害しています。
これまで一度も人を殺すことなどなかったのに。
顔を見られてしまったんだろう。
だから殺さざるを得なかった。
あるいはもともと殺すつもりだったのかもしれません。
というと?今回の犯人は一連の強盗事件を模倣してこの事件を計画した。
そんな可能性はないでしょうか?なるほど。
しかしその仮説には1つ大きな欠点がある。
仮にその模倣犯が最初から池内君を殺害するつもりだったとしてそもそもなぜ犯人は池内君があの道を通ることを知っていたのかな?説明なんてできない。
全ては偶然の結果なんだよ。
あの夜あの場所であんなことが起こるなんてそれこそ神様にしか分からなかったことだ。
(学生)店長がさ昨日すっごい怒っててさ…。
(柳田)それじゃ。
(男性)ひとつき前ぐらいまではここにいたんだが最近はとんと見ねえなあ。
やはり今井は姿を消したようです。
もっと人数が必要ですね。
いやいやこれ以上は…。
警部が犯人逮捕に尽力されてることは皆重々分かってます。
上からの圧力も相当なもの…。
(石松)われわれの任務は次の犠牲者を出さないために何としても犯人を捕まえることです。
何としても。
私の心配など必要ありません。
(田所)失礼しました。
では引き続き。

(車のドアの開閉音)あの夜池内さんはここでわざわざタクシーを降りてこの先にある勉強会のある家に向かった。
(二岡)余計なこと掘り下げても無駄だって言ってましたよ。
考え方が教授と真逆なんだよな。
タクシーは禁煙車だった。
たばこは吸えなかった。
(二岡)ええ。
所持品には未開封のたばこが2箱と1本だけないたばこが1箱。
つまりタクシーを出てすぐ一服したってことです。
たばこの箱は奇麗だった。
(二岡)えっ?メモ書きも何もされていなかった。
たばこを買って間もなかったのかもしれない。
吸い殻はどこにもなかった。
池内さんはこのたばこをどこで吸ったの?
(二岡)さあ。
あの僕本部に呼ばれてるんでそろそろ戻りますよ?
(白石)ああこの人ね。
ああたまに買いに来ますよ。
これ珍しいたばこでしょ?この辺りじゃここしか扱ってないっすからね。
うん。
その夜もここに?
(白石)うん。
たばこ3箱買って。
よっぽど吸いたかったんでしょうね。
これマッチいいでしょ?「このマッチくれ」って。
それでここで一服してましたけど。
あの刑事さん。
はい。
(白石)俺バンドやってんすよ。
どうすか?3,150円。
1枚。
あっ…それより1つ聞きたいんですけど。
それより?池内さんはそのとき眼鏡を掛けていましたか?今日は何かね?実は鑑識を呼びまして池内さんの研究室を詳しく調べようと思ってるんです。
おう。
しばらくの間こちらの研究室は立ち入り禁止となりますのでご理解いただければと。
(柳田)どういうことかね?そもそも最初から引っ掛かっていたのは池内さんの研究室の鍵なんです。
(柳田)学生のいたずらだったんだろう?いえ。
いたずらに見せ掛けたのではないかと。
(柳田)何?こちら鍵を見つけたときの写真です。
(柳田)これが何だね?鍵は足跡の上に落ちています。
足跡?この足跡警備員さんのものなんです。
事件のあった夜警備員さんは不審者はいないかいつも以上に厳重に見回りをされたそうです。
その際にこの足跡が付きました。
ほう。
つまり研究室の鍵が捨てられたのは事件の夜警備員さんが見回りをした後。
時間帯から考えても池内さんが亡くなった後なんです。
やはりあの夜池内さんを殺した犯人がキーリングから鍵を盗み取り研究室に忍び込んだのではないかと。
いったい何のために?おそらく池内さんのパソコンの中身を調べるためにです。
フフ。
強盗犯がパソコンの中身を?はい。
犯人は最初から池内さんを襲うつもりだったんです。
あの夜池内さんがあの道を通ったのも偶然ではなくそう行動するようにしむけられたのではないかと。
しむけられた?その1つがたばこです。
あの夜池内さんはたばこを切らしていました。
それでタクシーを降りて近くのバーに立ち寄りました。
ボヘームという珍しいたばこであの近辺ではここでしか売っていません。
ほう。
彼はたばこを買うためにタクシーを降りたというわけか。
はい。
そして勉強会に向かうためにあの道を通ったんです。
いやしかしそれだって偶然だろ。
たまたま彼はたばこを切らしたってことだ。
その日の昼間池内さんは買い置きしていたたばこを学生のいたずらによって隠されていました。
例えば犯人がそのことを知っていたとしたら。
さらに池内さんの吸いかけのたばこの箱も犯人が隠し取っていたとしたら。
だとすれば池内さんがたばこを買いにバーに立ち寄ることは予測できるのです。
そもそも彼が自分の車を使わなかったことはどう説明する?同じように誰かが池内さんの眼鏡を隠し取っていたんです。
眼鏡?はい。
バーの店員に聞いたところ池内さんはあの夜眼鏡を掛けていなかったそうです。
視力のあまり良くない池内さんは眼鏡なしでは夜の車の運転はできなかったのです。
しかし現場には眼鏡があったと聞いてるよ。
はい。
問題はその眼鏡です。
池内さんは正面から殴られました。
なのに眼鏡にはそんな傷など一つもありませんでした。
振り向いたときに外れたのかもしれない。
そんな偶然いくらだってある。
あるいは犯人がこの眼鏡を殺害した後で置いたのかもしれません。
もし犯人が池内さんの研究室からあらかじめたばこや眼鏡を隠し取っていたとしたら。
池内さんは偶然ではなく必然的にあの道を通ることになるのです。
単なるいたずらでは済まされんな。
はい。
やはりこれは最初から池内さんを狙った計画的な殺人だったのではないかと。
だとすれば犯人は非常に限られてきます。
まず池内さんがヘビースモーカーであることを知っておりあのバーでたばこを買うことも知っている。
あの夜勉強会が行われることも知っておりたばこや眼鏡を隠すなどの細工もできる人物。
そしてその人は普段から池内さんが学生たちからいたずらされていることも知っている。
さらにあの夜あの殺人現場が警察のパトロールの範囲外だと知っていた。
つまり警察内部の情報を詳しく知り得る人物ではないかと。
いかがでしょう?まるで私が犯人だと言いたげだね。
警察庁の者に聞いたのですが来期から科警研で扱う仕事の幾つかを池内さんに委託をするという話があったそうですね。
ああ。
知ってるよ。
推薦されたのは柳田教授だとか。
彼が適任だと私は思ったんだ。
こう言っては何ですが池内さんには秀でた研究実績はありませんでした。
それでも警察庁が池内さんに決めたのはひとえに柳田教授の強い推薦があったからなんです。
教授は池内さんに何か弱みを握られていたのではないですか?彼が私の何を知ったっていうんだね。
それを調べるために池内さんの研究室を調べさせてもらっているんです。
よろしいですね?まっ好きにしたまえ。
私から見れば全て見当外れなことだ。
オッカムの剃刀だよ。
事実は常にシンプル。
君の言ってることは単なる推論だ。
何の証拠もない。
全ては偶然の結果なんだ。
私は偶然に見せ掛けた必然だと思っています。
あとはなぜ池内さんは殺されたのか。
その動機を調べていけば犯人は確定できるはずです。
君にはこれ以上何を言っても無駄なようだな。
このままでは君は大きな失敗を犯すことになるだろう。
福家君その情熱だけは大いに評価する。
誰にも譲れないほどの強い信念のようなものが君にはあるのかもしれない。
しかしそれは時に反発を生む。
君がやってる捜査君の上司は認めてるのか?情熱は時に過ちを犯す。
間違った結果をもたらすことになる。
忠告はしたよ福家君。

(バイブレーターの音)
(石松)君はいったい何をやってるんです?何の報告もせずに。
報告は間もなく。
(石松)柳田教授の周辺を調べてるようですが何のために?今回の事件私は一連の強盗事件とは別に扱うべきだと思っています。
(石松)今回の事件でその一連の強盗事件と同じ凶器が使用されたことが判明しました。
えっ?
(石松)先ほど鑑識から上がってきたもので犯人しか知り得ない情報です。
その犯人の目星も付いている。
今井圭三前科二犯。
池内さんの殺害現場から発見された毛髪が今井のものであることも判明しました。
現在警察は全力を挙げて今井の行方を追っている。
全刑事全警官が不眠不休で。
それなのに君はいったい何をやってるというのです?石松警部。
その今井圭三と柳田教授との間に過去につながりのようなものは…。
お前は何をやってるのかと聞いてるんだ!!これまで散々好き放題やらせてきた。
そのせいで俺も散々たたかれてきた。
いつも勝手に動き指示は聞かない連絡はしない報告も遅い指揮は乱す秩序は無視する。
それでも俺が我慢してきたのは上司にお前の面倒を見ろと命令されたからだ!次の配置換えまでの辛抱だと思っていたからだ!だがお前はそれを勘違いしている!組織に所属しているという自覚をまったく持たないでいる!お前のその言動が職務を真摯に全うし指示に全力で従おうとする周囲の人間に対してどのような影響を及ぼすのか考えようともしていない!お前がやってることは捜査ではなくて単なるわがままにすぎない!お前は警察官であり私の部下であり警察という組織の一員であることを自覚しなければいけない!事件を解決しようと思ってるのは自分一人だけだと思ってるのか!?そんなことは全ての警察官が第一に自覚していることなんだ!お前の思い上がった主義主張などいらない!必要ない!これ以上勝手なまねは許さない!いいかげんにしたまえ。
福家警部補。
(バイブレーターの音)はい。
今井圭三が見つかった。
死体でね。
えっ?
(田所)お疲れさまです。
(警察官)お疲れさまです。
(田所)酔った揚げ句に石段の上から転がり落ちたようです。
所持品の中にこれが。
(石松)「IKEUCHI」先日の被害者の持ち物で間違いありません。
被疑者死亡か。
(田所)残念です。
この手で捕まえたかったのですが。
今回の件君には報告しなければならない人がいるのでは?おう。
おや福家君連続強盗事件の犯人が見つかったそうだね。
(二岡)どこでその情報を?発表はまだのはずですが。
(柳田)私は警察のOBだよ。
その手の情報は入ってくる。
(柳田)前科のある男らしいじゃないか。
かなりの余罪があると思われます。
(柳田)警察としては複雑な気分だろうな。
ようやく犯人を見つけたもののすでに死んでいたとは。
はい。
警察への批判も相当なものになると思います。
(柳田)言うべきことはそれだけかね?君は私を疑ってたんだろ?何か私に言うべきことはないのか?物証から目をそらしくだらぬ推論に振り回され揚げ句に私まで巻き込んだ。
その結果がこれだ。
私が言うように純粋に強盗犯を追っていれば逮捕することもできたかもしれない。
全ては君の身勝手な行動が生みだした結果だ。
(二岡)その福家さんは職務として…。
全て教授のおっしゃるとおりです。
ではそれに対して君はどう思っているのか。
本当に反省しているというのならそれを見せてみてはどうかね。
わびろと言ってるんだ。
誠心誠意心から。
その頭を下げたまえ。
下げろ!教授色々とご迷惑をお掛けしました。
おわびします。
(二岡)福家さん…。
大変申し訳ありませんでした。

(男性)二岡君は?
(二岡)
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2014/02/25(火) 21:00〜21:54
関西テレビ1
福家警部補の挨拶 #07[字]

福家敗北!史上最強の敵あらわる…福家は本当に犯人を間違えたのか?石松警部、ついに福家にキレる!オッカムの剃刀とは▽檀れい・稲垣吾郎・柄本時生・古谷一行

詳細情報
番組内容
 城北大学の近辺で、黒ずくめの服装で被害者を襲う強盗事件が多発。大学でも学生や教授に事件に対する注意を喚起していた。
 そんなある日、城北法科学科特任教授の柳田嘉文(古谷一行)は、元教え子で同じ大学の講師、池内国雄(みのすけ)の研究室を訪ねる。柳田は、池内に弱みを握られ、警察庁科学警察研究所への推薦を頼まれていた。約束通り推薦したことを伝える柳田。しかし、池内は今後も柳田を利用するため、
番組内容2
柳田の弱みの証拠のディスクを返さなかった。その夜、柳田は黒ずくめの衣装で池内を待ち伏せ、殺害してしまう。
 池内の死体は、数時間後に発見され警察の捜査が始まる。陣頭指揮に立つ石松和夫警部(稲垣吾郎)たちは、これまでに発生した一連の強盗事件容疑者による犯行と目星をつけた。しかし、福家警部補(檀れい)は石松の指示に従わず、どこかへ向かってしまう。
 福家は城北大学にある池内の研究室へ。そこに、
番組内容3
柳田がやって来る。福家は池内の所持品のキーリングに「自宅」とシールが貼られた鍵が1本だけがあったことに疑問を持っていた。「自宅」と区別する以上は、同じような鍵が別にあったのではないかと、思い当たる。
 その件をはじめ、不審な点を見つけた福家は池内を教えていた柳田に直接話を聞くことにする。そして、福家は何者かが池内の研究室に寸前に入った痕跡に気づく。実は直前まで柳田が証拠を隠滅していたのだった。
出演者
福家警部補(強行犯第十三係 主任): 檀れい 
石松和夫警部(強行犯第十三係 係長): 稲垣吾郎 
二岡友成巡査(現場鑑識係): 柄本時生 
田所勉警部補(強行犯第十三係 筆頭主任): 中本賢 

柳田嘉文(城北大学法科学科特任教授): 古谷一行
スタッフ
【原作】
大倉崇裕(東京創元社/創元推理文庫) 

【脚本】
麻倉圭司 

【企画】
水野綾子 

【編成企画】
清水一幸 

【プロデュース】
貸川聡子 

【演出】
岩田和行 

【音楽】
横山克 

【制作】
フジテレビ 

【制作著作】
共同テレビ

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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