ハートネットTV シリーズ被災地の福祉はいま(2)「南相馬市」 2014.03.11

(拍手)先月福島県南相馬市で多くの高齢者が待ち望んでいた施設がリニューアルオープンしました。
大きな支えとなるはずだったこの施設。
原発事故の影響で働き手が見つからないのです。
長引く避難生活で体調を悪化させるお年寄りたち。
重い介護負担が家族にのしかかります。
頼れる先がなく思い切った行動に出たお年寄りもいます。
年老いた妻を在宅で介護するため津波で流された自宅の再建に乗り出しました。
震災によって瀬戸際に立たされた南相馬の介護現場。
日に日に追い詰められるお年寄りたちの記録です。
その北に位置する…原発に近い沿岸部は震災から3年たった今も甚大な被害の爪痕が残されています。
7万1,000だった人口はおよそ5万にまで落ち込んでいます。
私たちは市の北部にある仮設住宅を訪ねました。
若い世代が町を離れ高齢化が進んでいました。
仮設住宅に2人きりで暮らす大和田さん夫婦です。
頂きま〜す。
妻の圭子さん72歳。
震災後に認知症を発症した夫俊雄さんの介護を続けています。
俊雄さんはきちょうめんな性格で町役場を定年まで勤め上げました。
身の回りの事は何でも自分でこなしていました。
震災前は息子夫婦と孫の家族7人でにぎやかな生活を送っていました。
津波で流された自宅。
震災の記憶を失いつつある俊雄さんはいつも「家に帰りたい」と訴えています。
いいか?12の3!圭子さんにとって最も大きな負担が入浴の介助です。
アチッ!あ〜!ごめんなさいごめんなさい。
以前は穏やかな人柄だった夫が時折声を荒げるようになりました。
震災さえなければ平穏な暮らしが続いているはずでした。
自分一人でいつまで夫を支えていけるのか圭子さんの不安は募るばかりです。
大和田さん夫婦にとって支えとなっているのが…平日の5日間午前9時から夕方の4時まで介護施設を利用しています。
南相馬市にはおよそ30の高齢者施設があります。
原発事故後そのほとんどが深刻な人手不足に陥っています。
市の北部にある…震災と原発事故で多くの施設が一時休止する中いち早く再開しました。
58床のベッドは常にいっぱい。
介護職員の数は20人。
ギリギリの状態です。
若い世代は相次いで町を離れ新たな人手は見つかりません。
(3人)エイエイエイ。
去年1月厚寿苑は入所を待ち望む人たちの期待に応え拡張工事に踏み切りました。
58床のベッドは一気に100床に増えます。
新たに15人の介護職も募集する事になりました。
若い働き手の獲得を目指し現代的なデザインを施しました。
しかし応募者の数はゼロ。
やむにやまれず南相馬市も対策に乗り出しました。
受講料無料の介護職養成講座を開いたのです。
通常およそ15万円かかる研修費用を全額市が負担するという苦肉の策でした。
受講した51人のうち高齢者施設へ就職したのは僅か8人でした。
震災後認知症を発症し仮設住宅で暮らす…この1年で更に症状が進行していました。
一日の大半を過ごしているデイサービスセンター。
俊雄さんはほかの利用者の輪には入らず一日に何度も外へ出ようと試みます。
片ときも目が離せません。
(俊雄)よし。
これ開かねえのか?開くんですけど…。
無理に引き止めようとすると激しく抵抗するため納得するまで外を歩きます。
俊雄さんのはいかいは在宅介護を続ける妻を追い詰めていました。
(取材者)おはようございます。
おはようございます。
仮設住宅を度々抜け出し片ときも目が離せなくなりました。
(ひげそり器の音)夫の介護に追われる毎日。
気の休まる時がありません。
介護の負担を少しでも軽くしたい。
デイサービスに加えショートステイの利用も始めました。
月に1度通っているのは…おはようございます。
どうぞいらっしゃい。
長寿荘も人手不足に悩んでいました。
原発事故後介護職員の1/3にあたる12人が職場を去っていったのです。
その多くが施設の中核を担ってきたベテラン職員でした。
ベテランが抜けた穴はパートのスタッフたちがカバーしています。
俊雄さんに職員の目が行き届きにくくなる中去年12月ある出来事が起こりました。
こちらが大和田さんがその当時ご利用頂いていたお部屋になります。
どうぞ。
二重の鍵を自ら開け俊雄さんは施設を抜け出しました。
その日外の気温は0度。
部屋着のまま飛び出していったのです。
職員総出で捜し回り2km先でようやく見つけました。
限界がありますよっていう事は言っていかなくちゃならないんじゃないかなって思ってます。
だからできる事とできない事防げる事と防げない事どうしてもやっぱりあるんですよね。
俊雄さんが抜け出した時圭子さんは最悪の事態も想像し体の震えが止まりませんでした。
ショートステイを利用しながらの在宅介護に限界を感じました。
今圭子さんは俊雄さんを施設に入所させる事を考え始めています。
ちょっと寒いよ一瞬ね。
先月。
大規模な拡張工事に踏み切った厚寿苑が完成しました。
介護が必要なお年寄りとその家族が大きな期待を寄せる施設です。
新しい所だよ。
58床のベッドは100床に増え設備は大幅に拡充しました。
窓は大きく日当たりも良好です。
狭かったリハビリ室も生まれ変わりました。
吸って〜吐いて〜。
しかし新たな入所者を受け入れる事はできませんでした。
必要な15人の介護職員をついに確保できなかったのです。
あ〜駄目だ。
物置になってる。
設備がどれだけ充実しても人材がいなければどうにもならない。
厳しい現実を突きつけられました。
妻を厚寿苑へ入所させたい。
待ち続けている人がいます。
同い年の妻を在宅で一人介護し続けてきました。
自宅があったのは沿岸部。
大津波は地区全体を跡形もなく押し流しました。
55人が犠牲になりました。
震災後桑折さんは自宅を失った人のために市が用意した借り上げ住宅に移り住みました。
もともと空き家となっていたこの家に妻と2人で暮らし始めたのは震災の9か月後。
去年暮れ妻はけがで入院し今は1人暮らしです。
(取材者)あごはんにかけるんですか?震災前に住んでいた沿岸部は雪も少なく過ごしやすい地域でした。
桑折さんにとって借り上げ住宅で迎える冬の寒さは一層厳しく感じられると言います。
年越しも正月も一人で迎えた桑折さん。
寂しさを紛らわすのは一本のビデオテープ。
元気だった頃の…日本舞踊の先生だったタキ子さん。
人望があり80人もの弟子を抱えていました。
自慢の妻を一人きりにしてはおけない。
入院以来桑折さんは一日も欠かさずタキ子さんのもとへ通い続けています。
朝昼晩毎日3往復食事の介助をするため病院へ向かいます。
慣れない借り上げ住宅で転倒し持病の腰痛が悪化。
夜眠っていられなくなるほど痛みが激しくなり入院せざるをえなくなりました。
(取材者)おとうさんが一日3回来てくれるのはうれしいですか?
(取材者)馨さんは優しいですか?タキ子さんを苦しめているのは腰痛だけではありません。
震災後うつ病を発症していたのです。
その原因となったのは年老いた2人が頼りにしていた息子の死。
次男の忠夫さんは両親の待つ避難場所へ向かう途中で津波にのまれました。
入院して2か月。
タキ子さんはもう一度夫婦2人で暮らしたいと願っています。
しかし今退院しても馨さん一人で支えていく事は困難です。
馨さんは厚寿苑に期待をかけていました。
一時入所させれば体力が回復し2人で暮らせるかもしれないと考えていたのです。
しかし依然入所待ちが続いています。
これ以上待っていてもしかたがない。
馨さんは一人でタキ子さんの面倒を見ていく覚悟を決めました。
在宅での介護に備え整骨院で痛んだ体を整えます。
(先生)どう?なかなか…。
家族を養うため漁業と農業で長年酷使してきた体はボロボロです。
(先生)起きる時大丈夫かな?「夫婦に残された時間は少ない」。
馨さんは思い切った決断をしました。
自宅を再建する事にしたのです。
借り上げ住宅ではタキ子さんに十分な介護ができない。
(取材者)桑折さんの所は?俺んとこはここ。
コツコツとためた農協の積立金を解約しタキ子さんのために完全バリアフリーの家を建てる計画です。
無謀な決断だとは承知の上で馨さんは新しい我が家に希望を見いだそうとしていました。
タキ子さんは馨さんとの暮らしを夢みてリハビリに励むようになっていました。
どんどんね動けるようになってきてるんでもうちょっといろいろやっていきましょう。
フフフフフ。
タキ子さんも新しい希望を見いだそうとしていました。
この日は津波で亡くなった息子忠夫さんの月命日。
タキ子さんにはリハビリに向かう元気がありません。
「前を向いて生きよう」。
馨さんが励まします。
雪が解けたら新居の建築が始まる予定です。
原発事故から3年。
瀬戸際に立たされた介護現場で2人は一日一日を必死に生きようとしています。
南相馬では今災害公営住宅の建設が急ピッチで進んでいます。
介護が必要な高齢者たち。
その暮らしを支える人材は大きく不足したままです。
2014/03/11(火) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ被災地の福祉はいま(2)「南相馬市」[解][字][再]

福島県南相馬市では、原発事故後、介護を担う人材の不足が深刻化。避難生活が長引く中、多くの高齢者たちが命の危機に直面している。深刻な現状と支援の取り組みを追う。

詳細情報
番組内容
原発事故の影響で大量の高齢者たちが命の危機に直面している。福島県南相馬市では、震災後、放射能の影響を心配し、多くの若い世代が市外へ転居。その結果、深刻な介護の人材不足が発生し、2月に大規模高齢者施設が開所するものの、新規入所者を受け入れられないまま、スタートすることになった。一方、避難生活が長引く中、要介護となる高齢者は急増中だ。シリーズ2回目は、深刻な現状と手探りで始まった支援の取り組みを追う。
出演者
【語り】河野多紀

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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