日本の話芸 落語「弥次郎」 2014.02.10

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(三笑亭夢之助)どうも。
(拍手)大変にお遊びの多い中本日は「東京落語会」をお選び頂きましてね本当にありがとうございます。
落語家も健康のために外で体を鍛えましょうというんで野球チームを持っておりましてね。
私が所属しております落語芸術協会はチーム名が「レッドディアー」というね全部横文字でございますが何の事はございません。
ディアーというのはこれは動物の鹿でございますから我々噺家と鹿を合わせたと…。
(笑い)いうだけの事でございますね。
こうやって野球を楽しんでおります。
そこで今年の夏はですね念願だったアメリカのメジャーリーグを見に行ってきました。
野球が好きだという落語家が私を含めて4人で東海岸のほうへ行ったんでございますが球場へ入る時には日本人として失礼がないようにと4人全員が日本から持って参りました紋付き袴に着替えましてね…。
(笑い)で内野の席に座りましたら周りアメリカの地元の方がびっくりしておりましたね。
この時代に紋付き袴ですから。
それも1人じゃなく4人ですからねまぁ異様に感じたんでしょう。
ところが向こうの方はおおらかですから分からない事があるとすぐ声をかけてきます。
我々の格好を見て…。
「エクスキューズミーそれは何ですか?」。
「これは紋付き袴といって日本の正式な衣装です」。
「ジャパニーズ。
あなたは何者ですか?」。
「私たちは落語家です」。
「ラクゴカ?ラクゴカ?オ〜ッ人生に負けた人」。
(笑い)「いえ。
それ落後者ですよ。
落語ええ噺家です」。
「アイムソーリー」なんてそんなようなやり取りをして話しかけてくれた方にですね日本の絵葉書を渡しましたら喜んでくれました。
有名なお寺さんですとか五重の塔富士山舞妓さんまぁいろいろあったんでございますがその中で一番人気は鶴の絵葉書でございましたね。
それも頭の先の赤いタンチョウですね。
あれは飛んでる姿といい立ち姿といい本当に美しい鳥ですから差し上げた方皆さん喜んでくれましたがこのタンチョウで有名な場所といいますとこれは何と言っても釧路でございますね。
北海道の東にあたります港町釧路平原が広がっておりますがそこへ毎年冬になりますとシベリア中国からたくさんのタンチョウが飛んできます。
それを見ようとまた大勢の人が釧路へやって来ますが観光のお客様に交じって専門の人いわゆるプロもやって来ますね。
長年このタンチョウの生態を研究している学者さんですとかプロのカメラマンですとかいろんな職業の方がやって来ますが地元釧路に住んでいる方に聞きますと「政治家の先生はあまり釧路にはお見えになりません」と言うんですね。
「どうしてですか?」って聞きましたら「政治家の先生はそれは鶴は見たいんですけどどうもその鶴のいる湿原
(失言)が命取りになるから嫌だ」と言ったというんですがね。
(笑い)お洒落な言い方があるもんでございますが。
でこのタンチョウは私たち結婚式にね刺繍ですとか絵ですとかよく使われております。
あれは分かるような気が致しますね。
と申しますのも動物の世界では一夫多妻というのは当たり前。
ゴリラライオンオットセイ昆虫に至るまで一夫多妻です。
ところがこのタンチョウヅルは完全に一夫一婦制なんですね。
雄と雌が縁あって夫婦になりましたら常に一緒にいるというこの絆が大変に深い動物ですので私たちの結婚式に使われております。
そのいい例が鶴が餌を求めて飛び立ちますね。
高圧線という電線が通っております。
これにたまたま雌が触れて感電死する事あるんですね。
「帰りが遅い」雄が居たたまれない。
バア〜ッ捜しに飛び出す。
上から見ると雌がいる。
降りてって近づいてって雌が死んでる。
「自分の女房が死んでる」と思ったらこの雄はず〜っと何日も何日も餌を食べないでそこにいるんですね。
ですからふだん餌やってるおじさんが見つけて無理やり引っ張ってこないと2つとも駄目になってしまう。
何ともこの雄のけなげといいますかね愛の深さというのを感じます。
でこれが逆ですと雄の悲劇という事になりましてね。
雄が感電死する事あります。
「帰りが遅い」雌が居たたまれない。
バア〜ッ捜しに飛び上がる。
上から見ると雄がいる。
降りてって近づいてって雄が死んでる。
「自分の旦那が死んでる」と思ったらこの雌はファ〜ンてすぐ塒へ帰ってきます。
もうすぐですね。
(笑い)で後家さんになりました独り者になりました鶴がですよもう次の日から行動が派手目になるんでございますね。
鶴の世界には四十九日法要なんてございませんからもう次の日から派手になりましてね頭にはお洒落にマリモを2つ3つくっつけましてね「せっかく独りになったんだから今度は思い切って年下でも見つけてみようかしら」ってんでこの雌は鶴のくせにつばめを探しに行ったという話もあるんですけどね。
(笑い)でまぁタンチョウをはじめ北海道自然がいっぱいでございますからね熊鹿キタキツネ鷹鷲ありとあらゆる動物が生息をしているのかなと思っておりましたらなんとなんと猿だけはいないんでございますね。
大分県の高崎山の猿が有名でございますが日本には大体4万頭の猿がいるそうです。
このニホンザルの北限が青森県は下北半島までという事でございますんで北海道には一匹もいないんですね。
ところがあの有名になりました旭山動物園をはじめいろんな動物園のおかげで北海道の人たちもニホンザルを見る事ができるようになりましたが猿の群れを見ていると面白い事が分かりますね。
子供を産んだ母親の猿は赤ちゃんのお猿さんを抱く時には必ず左手で抱きますね。
どの猿もそうなんですがこの左手で抱くという事はお母さんの心臓の音が常に赤ちゃんに伝わっていて何とも言えない安心感が生まれているそうです。
でおっぱいをあげるんですがこのおっぱいは哺乳類全てそうなんですが冬は濃いおっぱいが出て夏は薄いおっぱいが出てるんですね。
夏は暑いですからどうしても喉が渇く。
その喉が渇くところへもってきて冬用の濃いおっぱいが出ますと赤ちゃんはますます喉が渇きますから夏は自然と薄いおっぱいが出ているという。
これは哺乳類全てそうですから人間ももちろん同じです。
ところが今の若いママさんは「赤ちゃんにおっぱいを吸われるとね形が崩れるとか乳首が大きくなるから嫌だ」と人工のミルクへ切り替えますが夏も冬も判で押したように同じ量のミルクをあげますと夏は暑いですから喉が渇いて赤ちゃんは泣きます。
泣いてるからミルクをあげる。
これが濃いですから更に泣く。
泣いてるからミルクをあげる。
また泣くなんというようにしてね終いには若いママさんのほうがパニックになって泣いてしまうなんという事が時々あるようでございますが。
この間ラジオを聞いておりましたら婦人科の先生が出ておりましてその先生の話を聞いておりますと直接お母さんから出る母乳というのはこれは栄養はもちろんでございますが赤ちゃんがこの世に生まれ出てこれから病気にかかるであろう雑菌ですとかかびの菌を殺す免疫というのをおっぱいを通して少しずつ与えているというね。
これいっぺんに与えますと肝心の赤ちゃんがやられてしまいますんで時間をかけて少しずつ少しずつ分け与えているという。
改めて母乳のすばらしさというのを実感いたしましたが。
で若いママさんが心配をしておりますおっぱいを吸われれば吸われるほど先っちょが大きくなる。
これ間違いだそうですね。
それは多少は大きくなりますけども大きさには限度というのがあるんですね。
1人目の赤ちゃんが生まれておっぱいあげたらプッと大きくなって2人目生まれておっぱいあげたらまたプッと大きくなってね3人目生まれておっぱいあげたらもっと大きくなったってこれどんどんどんどん大きくなるんでしたらね10人目の赤ちゃんはおっぱい吸う度に顎外してなきゃなりません。
(笑い)そんな事は聞いた事ありませんので間違いですね。
で猿の子供の教育はどうしているのかというと親は一切教えない。
子供が常に親を見て親と同じ事をしているだけなんですね。
ですから親が駄目ですと子供も自然と駄目な子になってしまうんですね。
猿真似とはうまい事を言ったもんです。
そこでこんな有名な小咄がございますね。
動物園で猿の世話をしている飼育係のおじさんが朝起きて新聞を見るとその猿もおじさんの横でこう新聞見るんですね。
でおじさんが歯磨くとその猿もおじさんの横でこう歯磨くんですね。
でおじさんが頭かくとその猿も頭かく。
で終いにはこの飼育係のおじさんが考えちゃった。
「こいつは何でも俺の真似をする。
じゃあ俺がいない時にはこいつは何をしているんだろう?」てんでこういう事を考えましてある時この猿を捕まえて部屋へ閉じ込めましてねおじさんが「あの野郎一人で今頃ね何をしてんのかな?」ってんでそ〜っと鍵穴から覗いたら向こうでも覗いてたって咄がございますけどね。
(笑い)うまい小咄があったもんでございますが。
うまいといいますとね我々寄席の楽屋では各師匠方が高座出番の前にいろんな話をしておりますがまぁどの話もうまいなんてもんじゃないんですね。
「そんなばかな。
嘘でしょそれ。
今作ったんじゃないんですか?嘘ですよ」なんというような話を平気でやっておりますね。
2〜3ご紹介致しますが五代目柳亭痴楽さんある地方の落語会で駅に降りましたら売店に懐かしい瓶に入った牛乳が売ってございました。
子供の頃を思い出したんでしょう思わず買って飲んだらこれが薄い牛乳でね売店のおばさんに「おばちゃん。
この瓶に入ってるこれさぁこれ何の乳?これ」ってったらムッとしたおばさんが「お客さん。
瓶に牛乳って書いてあるだべ?牛乳って書いてあるんだからそれは馬の乳でも山羊の乳でもねえな〜昔から牛の乳だべな〜」。
「それは牛の乳は分かってるんだけどさぁばかに薄くてねおまけにこれ水っぽいんだよ」つったらびっくりしたおばさんが…。
「水っぽい?あ〜そらぁじゃあ同じ牛でも水牛のほうの乳だべ」と言ったというんですがね。
(笑い)これ楽屋で何べん聞かされても嘘だと思いますこの話はね。
出来すぎておりますこれはね。
二代目三遊亭笑遊さんもう車が大好きですからね東京の自宅から名古屋ぐらいまでは自分で運転して楽屋入りを致しますね。
ある時仕事に出ようと自宅から高速に上ったところから大渋滞。
車が止まったまんま動かない。
止まってはノロノロ止まってはノロノロ。
やっと料金所へ。
お金をもらおうと手を出した料金所のおじさんにいらいらしてたんでしょう笑遊さんがかみつきました…。
「おじさん。
高速道路高速道路ってどこが高速なんだよ。
全然動かないで。
何でこんなに金ばかり高いんだよ」と言ったら集金のおじさんが…。
「すみませんね高速料金の他に駐車料金も入ってますから」と言ったというんですがね。
(笑い)これも私は嘘だと思いますよ。
(笑い)こうやって楽屋はもう嘘が乱れ飛んでおりますけどもね。
「そろそろあれが来る頃…。
ほ〜ら来た来た来た。
はいはい。
おりますよ。
ええどうぞ上がっとくれ」。
「どうもどうも。
どうも旦那ご無沙汰しておりまして」。
「いやご無沙汰はいいがねお前さんが来ないとさみしくていけませんよ。
どうしたい?また何か新しい嘘でも仕入れてきたのかい?今日は一体どういう嘘をつくんだよ?早く嘘をつきなさいこの嘘つき」。
「恐れ入りました。
旦那のようにね正面から嘘をつけ嘘をつけと言われた日にはねとても嘘はつけません」。
「それが嘘だってんだ」。
(笑い)世間には千三という言葉があります。
千言うところを三つしか真が無いという。
お前さんもその口だがねたまには本当の事を言いなよ。
人間嘘ばかりついてますと信用というのがなくなります」。
「ええ。
分かっております。
今日は嘘はよします」。
「よしたほうがいい。
うん。
しばらく顔を見せなかったね。
どこか行ってたのか?」。
「チョイトアメリカへ行っておりました」。
「アメリカ?ほうそれは豪勢な」。
「いえ向こうに叔父が住んでましてねこの叔父が州立の大きな病院の理事長をやっておりまして」。
「あ〜そうだってね。
お前さんの叔父さんはお医者様だってね」。
「歯医者なんですがねその叔父が旅費は全部出すからたまには遊びに来ないかってぇからじゃあ行きましょうってんで成田から飛行機に乗りまして乗ったはいいが飛行機の中って退屈ですからついウトウトっとしてそのうちグッスリ寝ちゃったんですね。
どのぐらい寝ましたかねフッと目を覚ますと乗っているお客様が窓の外を見てワ〜ワ〜ワ〜ワ〜騒いでる。
『何でみんな騒いでるんだろう?』ってんで飛行機の窓からこう下を見て驚きましたね」。
「どうしたい?」。
「海の色が赤いんですよ」。
「おお〜」。
「それからスチュワーデスさんにね『あれは何だ?』と聞いたら『ただいま飛行機が赤道の上を通っておりますから』ってんですがね」。
(笑い)「その鮮やかな色といったら旦那に見せたかったですな」。
「ほら始まったよ。
ね〜」。
(笑い)「お前さんさっき何つったの?『今日は嘘はよします』」。
「真っ赤だったの」。
「そんな事はありません。
ね〜赤道というのはね地球の緯度を南北に計る人間が想像した線です。
赤く見える訳がない」。
「あっじゃあ夕焼けの空がこう海へ映ってたんでしょうかね?」。
「あ〜なるほどねええそれなら分かります」。
「ええ。
そうしたらねさっきのスチュワーデスさんが『よく寝ておりましたから起こしませんでしたがいかがでしょうかお食事にしますか?それともお風呂にしますか?』ってぇからね…」。
(笑い)「一っ風呂浴びてねそれから一杯…」。
「これこれこれこれ知らないと思って。
ええ?食事はいいとして飛行機にお風呂なんかついてるのかい?」。
「あれ?旦那知らなかったんですか?アラアラアラッ日本でも昔の軍隊の飛行機はみんな風呂ついてましたよ」。
「あっそうかい?」。
「確か銭湯機
(戦闘機)と言ってましたな」。
(笑い)「銭湯機?」。
「銭湯機に乗ってるパイロットが喜んだそうですよ。
ええ。
『毎日ただで風呂に入れる。
一銭もかからない』。
ええ。
『ゼロ銭
(零戦)だ』って言ってました」。
(笑い)「くだらない…。
アメリカのどこ行ってたんだ?」。
「ええ。
「ハワイ州という所」。
「ハワイ?あ〜いい所だ」。
「いえいえ。
あの観光地のオアフ島ならいいんですけどねそこからずっとず〜っと離れた島でしてそれでも人口は100万人はいるだろうという」。
「ほうじゃあ結構大きい島?」。
「大きい島ですよ。
飛行場も立派でしてねその空港に叔父が出迎えてくれましてその叔父が運転する車に乗ったんですがさすがアメリカ道が広いなんてもんじゃない。
ええ片側だけで5車線だ。
両方で10車線。
その広い道を叔父が運転しながら『ここは実にいい所だからお前もこっちに住んでみないか』と言うんですよ」。
「アラアラッ着いたばかりいきなりですか?」。
「ええ。
そうなんですよ。
何でもね『日本にお前一人置いとくと心配だからうんこの町で私が医者として成功してる今ならいい嫁さんも世話できるしちゃんとした住まいも見つけてやるから是非こっちに住みなさい』と言う」。
「ハア〜ッ残念ですな」。
「残念?アレッ?どう残念?」。
「どう残念って向こうに住んだらお前さんの嘘が聞けなくなるのが残念だよ」。
「アレッ?お言葉ですが私旦那の前では嘘はつかないんです」。
「だからそれが嘘だってんですよ」。
「でね『こっちへ住もうか住んでみようか』そんな話をしているうちに車が大きなホテルへ着きまして『アレッ?叔父の家へ行くんじゃないか?』と聞いたら『実はお前のためにちょっとした歓迎のウェルカム・パーティーを用意してあるから』と言ってそのホテルの宴会場へ入っていきましたらまあ〜男女合わせて300人ぐらいの人たちが私の到着を待っててくれましてね」。
「ほうほう皆さんお知り合いですか?」。
「えっ?いえとんでもない。
みんな私の知らない人なんですがね叔父が町の医師会の会長もやっておりますからその顔で集まってくれたんでしょう。
すごいのは集まったこの300人の人たち全員がお医者様ですよ」。
「ほうそりゃすごいね」。
「ええ〜。
すごい。
もう外科の先生がいらっしゃって内科の先生ね婦人科の先生目の先生耳の先生犬や猫の先生いろいろ紹介されたが切りがない。
そこで私が余興でね『こちらにいろんなお医者様がいらっしゃいますからここでお医者様ベストテンを発表致します』と。
『お医者様ベストテンまずは10位
(獣医)から』とやったんです」。
(笑い)「何だい?そりゃ」。
「いえ。
何だいってだから8910のあの10位とですよ犬や猫の獣医を掛けたんです。
ええ。
『まずは10位
(獣医)から』という」。
「あ〜そうですか」。
「『あ〜そうですか』って旦那洒落なんですからねうまいとか何とか言ってもらいね。
じゃあこれはどうですか?『果物のベストテンです』。
ええ。
『果物のベストテン。
まずは9位
(キウイ)から』ってんですが」。
「あ〜そうですか」。
「『あ〜そうですか』?あっ分かりました。
ええ。
旦那こういうのは嫌い…」。
「嫌いも好きもありませんよ。
それよりもそのパーティー」。
「ええもう何たってね一流のお医者様ばかり集まってるパーティーですから立食のバイキングだったんですが立食ったって出てる料理がすごいのなんの日本食はもちろんの事フランス料理があってイタリアがあって中華がある。
中華ったって高級食材を使った北京上海があって辛みの強い四川があって淡泊な味の広東料理がある。
全部揃ってる」。
「ほうそりゃすごい」。
「ええ。
そこへね高い帽子を被った料理長が私のためにわざわざ厨房から出てきましてね」。
「アラッ?」。
「日本人かなと思ったら中国の人でした」。
「ああ〜それで中華料理が多かった?」。
「ええ。
そうなんですよ。
50歳ぐらいの小太りの人でして名前が周さんというこの方が『私は世界の料理を作ってきた。
出来ない物はないから遠慮しないで食べたい物があったら言ってくれ』と言いますからね『じゃあひとつお願いします』と…」。
「これこれこれ何?それ頼んだのかい?これだけの料理が並んでるのに?それはね社交辞令というもんですよ。
まともに取っちゃ失礼というもんだ。
まぁ頼んだんだからしょうがないやな〜。
何を頼んだんだ?」。
「ええ半ライスつきの味噌ラーメンをお願いしますと言った」。
「何だい?そりゃ」。
(笑い)「こういう時はもっとまともな物を食べないとお里が知れますよそれ」。
「でもねふだんから食べ慣れてるほうがいいだろうと思ってね。
でお酒もまあ〜ウイスキーブランデーシャンパン初めて見るような高級なお酒が飲み放題。
ええ。
しこたま飲んでへべのれげ。
こんなのが3日4日続きますと体がなまってきますから」。
「そりゃそうだろう」。
「ええ。
それで叔父にね『今日は町を離れてあそこに山があるから登山がしたい』と言ったら叔父が『アア〜ッあの山には入っちゃいけません』と言う。
ええ。
『何でだ?』って聞いたら『あの山にはえたいの知れない男どもがいて物を盗ったり金を盗ったりというスリー・シューズがいるから駄目だ』と言う」。
「スリー・シューズ?何だい?そらぁ」。
「英語です」。
「そりゃ英語は分かってますよ。
どういう意味ですかと聞いてる」。
「スリー・シューズですからね3つの靴です。
ええ。
『山賊
(3足)が出るから駄目だ』と言う」。
(笑い)「変な英語だねお前さんのは」。
「それからね怖い物見たさ。
行っちゃいけないと言われると行きたくなる。
その山へ入っていきました」。
「あ〜やっぱり行ったか?」。
「行きましたよ。
ええ。
もう獣しか通らないという道なき道木の葉が目の高さまで覆い被さっていて昼間でも薄暗い中をこう進んでいきましたらはるか向こうにチラッと明かりが見えた。
『ありがたい』。
人家でもあるのかと思って近づいててって驚きました」。
「どうしたい?」。
「噂をしていたその山賊が一二三四五六6人で車座になって焚き火をしているその明かりだったんですよ」。
「おや?出たのか?」。
「出ました。
身装を見ると6人全員がきれいに頭を剃ってクリクリ坊主。
おまけに上半身が裸。
で腰の所に蓑を巻いて荒縄で縛ってある。
その横に牛をさばく時に使う幅の広い牛刀1本ぶち込んでいようという。
その中でもひときわ体の頑丈な目のギョロッとした男がね私の顔を見て大手両手を広げて『ワッハッハッハッマネー』とこうきたからねこっちもその野郎の顔を見て『マネー』とこう言ったんですよ」。
「うん」。
「そうしたら初め向こうが不思議そうな顔してましてねでまた『マネー』ときたからこっちも『マネー』と言ったら野郎が怒りましてね『お前のやってんのは俺の真似だ』と」。
(笑い)「『俺が言ってるのはマネーだ』と言うんですよ。
旦那。
マネーってのはお金です」。
「知ってますよそのぐらいの事は」。
(笑い)「でその野郎が『金は天下の回り物つべこべ言わずに置いていけ。
マネーイズメリーゴーラウンド』と言った」。
「何だい?それは」。
(笑い)「ですから金は天下の回り物マネーイズメリーゴーラウンド」。
「さっきから変な英語だね〜」。
「でそれを聞いて私が『お前たちにやるような金はびた一文持っちゃいねえ。
盗れるもんなら盗ってみやがれ』てったらねいきなり牛刀を抜いてこっちへ向かってきましたから『多勢に無勢こんな所でけがをしてなるもんか。
逃げよう』と思ったら旦那山賊のほうがピャピャピャピャ〜ッとクモの子を散らすように皆逃げてっちゃった」。
「ええっ?向こうが逃げた?」。
「ええ。
そうなんですよ。
『何で逃げたんだろう?』と思っておりましたら私の背中後ろのほうで荒い息遣いが聞こえる。
ええ。
『何だろう?』。
振り返って見るとこれが旦那…」。
「うん。
どうしたい?」。
「体重900キロからあるだろうというまあ〜そりゃそりゃ大きなシロクマ」。
(笑い)「シロクマ?シロクマってのは北極とか寒い所にいるもんですよ。
ハワイにいる訳はない」。
「えっ?いえいえそうじゃないんです。
私が言ってるのは白いクマです。
旦那が言ってるのはシロクマでしょ?私のは白いクマですから世界中どこにでもいるんですよ」。
「白いクマ?」。
「そうですよ。
シロクマと白いクマ似てるようで全然違います。
ええ。
かぐや姫と家具屋の娘って違うでしょ?ね?」。
(笑い)「川端康成先生の『伊豆の踊り子』と船橋の踊り子って全然違いますから」。
(笑い)「そんな余計な事はいい」。
「ええ。
その白いクマがね2本足で立って両手上げておりますからまあ〜体のでかい事といったらはるか上のほうに顔がついてる。
その顔で私を睨んでいる目がピカッと光りましてねガア〜ッと開けた大きい口から牙が4本見えた時『アア〜ッ小説の上下ある本の上だけ読んであとは読めなくなるのかな〜』という…」。
(笑い)「何だい?それは」。
「『一巻の終わりかな〜』という」。
(笑い)「言う事が細かいねどうも」。
「でねその口を開けたまんまギャ〜ッってんで飛びかかってきましたから『もう駄目だ』ってんであおむけにひっくり返った。
その時手に当たる物がある。
これがなんだ山賊が逃げていく時に放り投げてった牛刀ですよ。
その牛刀を手に取ると無我夢中両手で自分の頭の上へこう立てた。
そこへ白いクマが私を噛み砕こうってんで頭をバ〜ンと振り下ろしてきたからたまらないや。
ええ?大きく開けた口の喉の奥へ牛刀がバ〜ン刺さりましてね。
急所だったんでしょう。
もんどりうってバ〜ン倒れましたよ」。
「あらっしとめた?」。
「しとめましたよ。
ええ。
やれやれってんで切り株に腰を下ろしているとその騒ぎを聞いて町の人たちが5〜6人上がってきましてね倒れている白いクマを見て『よくぞあれを退治してくれました』と『あいつは毎年畑を荒らしたり人を襲ったりと我々も困っておりましたところ。
あなたはこの町の英雄です』と言われましてねそれからもう会う人会う人に感謝されましてこの時ですよ『よ〜し自分はこの町に一生住んでもっと人の役に立つような将来この町に松杉を植えるような男になろう』と思いました」。
「あ〜それはね大きく出ましたけどいいこってすよ理想は高いほうがいい」。
「ええ。
その白いクマ退治の噂が人から人へ伝わってとうとうハワイの州知事の耳へ入りまして『あなたに感謝状を差し上げたいから私が住まいとしているホワイトハウスへお越し下さい』と言う」。
(笑い)「ホワイトハウス?ホワイトハウスってアメリカのワシントンにあるんですよ?ハワイにありませんよ?」。
「えっ?ハワイ?いえ。
ですから旦那が仰ってんのはホワイトハウスでしょ?ね?私が言ってるのはホワイトのハウスですから」。
「また始まったねこの人は」。
(笑い)「で州知事の官邸へ伺いまして感謝状を頂いたあとちょっとしたパーティーが用意されておりましてね男女会わせてまぁ100人前後でしょうかその人たちといろいろ話をしたりお酒を楽しんでおりましたらパーティー会場の端のほうにひときわきれいな別嬪さんがおりましてね。
州知事に『あの女性は誰ですか?』と聞いたら知事が『いや〜あなたはお目が高い。
あの女性は特別な人ですよ』ってんでねわざわざその彼女を呼んで私に紹介してくれましたがまあ〜素性を聞いて驚きましたね」。
「よく驚く男だね〜」。
「ええ。
もうきれいな訳ですよ。
その彼女が言うにはね『私の母親はマリリン・モンローです』と言う」。
(笑い)「マリリン・モンロー?あの女優の?あのあのええ?ええ?あのマリリン・モンローかい?」。
「そうですよ」。
「そりゃきれいだろ?」。
「きれいですよ。
で名前を聞いたら『私はマリリン・モンローの娘でシチリン
(七輪)・コンローだ』と言うんですよ」。
(笑い)「シチリン・コンロー?随分温かそうだね」。
「温かいじゃない熱い人でした。
ええ。
で『こんなきれいな人をほっとくのはもったいない。
ここで会ったが百年目。
千載一遇のチャンス。
口説こう』と思いましたが大変な恥ずかしがり屋さんでしてねすぐ端のほうへ行きたがりますから『そんな遠慮しないでもっと真ん中真ん中へ来てお話をしましょう』と言ったら『私の名前はシチリン・コンローですから隅
(炭)のほうがいい』と言うんですよ」。
(笑い)「何だい?そりゃ。
じゃあうまくいかなかった?」。
「駄目でした。
ええ。
よくよく聞いたらとうに結婚してお子さんもいらっしゃるという」。
「まぁね男女の仲ってのはそうはうまくいきません。
ここはお前さんにとっては高嶺の花というこった」。
「ええ。
そうなんですよ。
でもね私には何たって叔父がついてますからもっといい人を紹介してもらおうと思っておりましたら旦那人生ってのは一寸先は闇ですね。
向こうに一生住むという事も嫁さんをもらう事も全て駄目になってこうやって恥を忍んで日本へ帰って参りました」。
「帰ってきたからそこにいるんでしょうけどね。
じゃあ何かい?向こうで何か大変な事でもあったのか?」。
「あったなんてもんじゃない。
語るも涙聞くも涙で旦那聞いて頂けますか?」。
「ええ。
聞きますよ。
こうなったら最後まで聞きますよ。
言ってごらんなさい」。
「へえ。
その州知事から頂いた感謝状を叔父と叔母に見て頂き急いで家へ帰って参りました」。
「うん」。
「と叔父が目を真っ赤にして泣いてます」。
「ほう」。
「訳を聞いたら『今日付で病院の理事長を解任されてしまった』と言うんですよ。
こっちもびっくりして『理由は何だ?』と聞いても『思い当たる節がない』と言う。
大体大きな総合病院の理事長に叔父のような歯医者さんがなるというのは大変珍しいんだそうです。
まぁそういう訳で他のお医者様からの妬みもあったんでしょう。
『明日から病院へ来なくていい』という。
さぁそれを聞いて優しい叔母が怒りました」。
「そりゃそうだろう」。
「ええ。
『冗談じゃありません。
もう仕事真面目一本槍できた家の人をこんな訳の分からない形で辞めさせるなんて私が許しません。
もう一度この歯医者の夫を理事長の椅子に座らせるんだ』と言って奥の部屋から大きな紙と筆を持ってきましたから『叔母さん。
何をするんだ?』と聞いたら『これから病院と闘うデモのためにプラカードを作ります』と言って紙に一生懸命書いてる。
何て書いてるのかなと思ってヒョッと覗いたらこれが旦那…」。
「うん。
何て書いてありました?」。
「ええ。
歯医者
(敗者)復活戦と書いてございました」。
(笑い)「弥次郎」というお噺でございます。
どうも。
(拍手)
(打ち出し太鼓)
(テーマ音楽)2014/02/10(月) 15:00〜15:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「弥次郎」[解][字][再]

落語「弥次郎」▽三笑亭夢之助▽第652回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「弥次郎」▽三笑亭夢之助▽第652回東京落語会
出演者
【出演】三笑亭夢之助

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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