プロフェッショナル 仕事の流儀▽歩み続けるかぎり倒れない 経営者・大山健太郎 2014.02.24

活躍を誓っている選手も多いというふうに聞きました。
さあ、一方で春はなかなか来ません。
雪どけは進んでいますが、その分、雪崩、あるいは落雪の危険に十分注意をしてください。
ニュースウオッチ9は、きょうはこのへんで失礼いたします。
男が社長になったのは19歳の時。
がんで急死した父に代わりたった5人の町工場を託された。
それから半世紀。
男は世界的電機メーカーから業務提携を求められるまでになった。
生活用品を扱うメーカーとして…巨大グループ企業に育て上げた。
隠れたニーズを掘り起こすヒットメーカー。
中身が見える収納ケースを世界で初めて開発し…低価格を実現したLED照明は節電需要で…ビジネスの最前線に今日も立つ。

(主題歌)東北・宮城に拠点を構える大山の会社。
震災復興のフロントランナーとしても期待を背負う。
30代社員の半数を解雇する決断に迫られた。
去年乗り出した未知の分野コメビジネス。
特別な思いがあった。
しかし意気込みとは裏腹に売れ行きは伸び悩んだ。
社員たちとの真剣勝負。
打開の一手はどこにある?戦うリーダーその舞台裏に密着。
平日の午後4時。
社員用のプールに大山の姿があった。
68歳の大山。
水泳やジョギングを数十年続けている。
どんなに忙しくても体を動かす習慣は崩さない。
仙台から車でおよそ1時間。
山の中腹に大山の会社の拠点がある。
(女性社員)よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
朝社員が一堂に会し朝礼を行うのが日課だ。
(一同)一会社の目的は永遠に存続すること。
ちょっと古風なこの会社。
だが苦戦を続ける日本の製造業の中で30年間黒字経営。
その手腕が今注目を浴びている。
会社を支えるのはプラスチックを加工する技術だ。
大山はそこから消費者のニーズを先取りした商品を世に出してきた。
例えばプランターなどの園芸用品。
ガーデニングブームの先駆けとなり会社躍進のきっかけになった。
その後もペット用品や収納用品など需要を次々と掘り起こした。
ここ数年は低価格で手軽に買える家電製品や照明器具でヒットを連発している。
ユニークな商品開発力を支える秘密がある。
毎週月曜日大山は必ずある会議に出席する。
一日がかりで行うプレゼン会議。
新商品の提案は全てこの週1回のプレゼン会議で行われる。
検討される提案は一日70件以上。
社長である大山は最前列に陣取りそれを即断即決でさばいていくのだ。
この日新たな提案商品が持ち込まれた。
卓上型のIHコンロ。
そのニューモデルだ。
大阪生まれの大山。
手加減なく疑問をぶつけていく。
旧モデルで約7,000円だった値段を高くしたいという提案にこう答えた。
大山はカラー展開するなど更に工夫をするという条件でゴーサインを出した。
通常多くの会社では企画を通そうとすればさまざまな役職の承認が必要となる。
途中で異論が出ればそこでストップする事もある。
だが大山の会社の場合企画の是非を決めるのはプレゼン会議の場だけだ。
事前の交渉は一切受け付けない。
あえて社員も見つめるオープンな場で判断を下す。
基準はただ一つ。
「客として欲しいと思うか否か」だ。
一方大山が納得すればその場でゴーサインが出る。
性能や品質に加え原価計算などが認められればあとは担当者に一任する。
企画からおよそ3か月で販売に至る商品もある。
ここに経営者大山が信じる大事な流儀がある。
この試みの結果大山の会社は珍しい特徴を持つ事になった。
売り上げに対し販売して3年以内の新商品が実に5割以上を占める。
定番の商品にこだわるより時代の変化に対応する方がリスクは少ない。
それが大山の信念だ。
猛烈な勢いで新開発を続ける大山。
だがそれだけでヒットが生まれるわけではない。
去年12月大山は中国・大連にいた。
この工場では会社の売り上げの2割を占めるヒット商品LED照明を生産している。
5年前一人の社員が省エネ効果が高いと提案し大山が商品化を決めたものだ。
当初は売り上げは伸び悩んだ。
しかしあの大震災から2週間後大山は増産を指示した。
他のメーカーに先駆けた動きで一躍市場を席巻した。
(大山)乾杯!
(一同)乾杯!素早い判断でヒットにつなげる一方で鳴かず飛ばずで消える商品も少なくない。
だがそれでも大山は毎年1,000以上もの開発に今も挑み続ける。
バッターボックスでね「空振ったらどうしよう」なんてな事を思ってたんではヒットは打てないと思うね。
長年商品開発を手がけてきた大山さん。
それを生み出す社内環境にも人一倍こだわっている。
例えばあのプレゼン会議の部屋には大きな鏡が取り付けられている。
後ろに座る人とも目線が合う。
それがいい緊張感を生むのだという。
社員が働くフロアにはこんな工夫が。
使用時間は1回45分まで。
「パソコンからアイデアは生まれない」。
それが大山さんの考えだ。
更にこちらの円いテーブル。
社員たちのミーティング用だ。
ここ?ここ?ここ?また大山さんがいつも口を酸っぱくして言うのが整理整頓だ。
整理整頓はもはや社風として受け継がれている。
昔総務部長とかで恐い厳しい人とかは机の上を棒で全部落とされるんですよ。
身の回りが整理整頓できてない人は頭の中が整理整頓できてないという考え方なんですよ。
はた目には社員にとってかなり厳しい存在のように見える大山さん。
だが社内の雰囲気は至って明るい。
何だこのいす。
(笑い声)
(大山)はいおはよう。
(一同)おはようございます。
「即断即決」をモットーとする大山。
だがこの日ある家電商品の提案に珍しく迷っていた。
センサーで人を検知し首を振るという新しい扇風機。
アイデアは悪くないがセンサーの形などまだ未知数の部分が多い。
人の体の…。
だが業界初の商品。
開発チームのメンバーは何とか商品化したいと大山を説得する。
ところがある課題が残っていた。
実は肝心のセンサーの動作確認がまだ完全ではない。
いつもならゴーサインは出さず却下してもおかしくない案件だ。
提案に耳を傾ける大山。
意外な答えを出した。
次のプレゼン会議でセンサーの課題をクリアーする。
それが条件だった。
判断に迷った時大山がよりどころにする基準がある。
翌日開発チームは早速ミーティングを行っていた。
センサーの課題は設計担当の小野に任された。
小野は性能の確認と並行して更なるセンサーの改良に取り組み始めた。
10年前まで大手産業機器メーカーで働いていた小野。
しかしやりがいを持てずこの会社にやって来た。
大山に「いい商品だ」と言わせるレベルまで改良したい。
プレゼン会議の日がやって来た。
小野たちはセンサーの課題を克服。
更に性能もアップさせていた。
(小野)真ん前で1メートルくらいで横になった人ぐらいから…。
小野は全ての質問に自信を持って答えた。
商品化が決定した。
ケツ甘いけど賢いねん。
ありがとうございます。
おはようございます!
(一同)おはようございます!いらっしゃいませ!
(一同)いらっしゃいませ!大山さんの会社では社員全員が声に出して企業理念を読み上げる。
その第一条はこれ。
「永遠に存続すること」。
実はこの言葉は大山さんのある痛恨の体験から生まれたものだ。
昭和20年大山さんは大阪でプラスチック部品を作る町工場の長男として生まれた。
高校3年の夏の事だった。
父親の余命がいくばくもないと知らされた。
大山さんは社員5人の小さな工場を継ぐ事になった。
まだ19歳の若さだった。
「何でもやりますから仕事を下さい」。
頭を下げて下請け仕事をもらい寝る間を惜しんでこなした。
当時の大山さんの姿が目に焼き付いて離れない。
何とか自社製品を作って今の状態から抜け出したい。
目を付けたものがあった。
真珠の養殖用ブイ。
これまでガラス製だったものをプラスチックで作ったところ飛ぶように売れた。
その後農業用の育苗箱も手がけ会社の規模は一気に拡大。
需要が多い東北・宮城に土地を見つけ工場を建てた。
家業を継いで約10年で年商10億社員は150人になった。
そんな時オイルショックが起きた。
経済が混乱する中大山さんの会社もそのあおりをまともに受けた。
金策に駆けずり回るが間に合わない。
明日にも会社は倒産する。
社員の半数を解雇するしかそれを防ぐ手はないと大山さんは思った。
当時大山さんは32歳。
社長を辞めてサラリーマンになろうと本気で思った。
だが残った社員がいる以上そんな道は選べない。
生まれ育った大阪から宮城の工場に拠点を移し心機一転を図った。
「二度と社員を切らなくて済む方法はないか?」。
一つ思う事があった。
今まで手がけてきた産業用の製品は市場の浮き沈みの影響をまともに受ける。
生活に必要なものを作り直接消費者に届けるのはどうか。
狙いを絞ったのは家庭で使うガーデニング用品。
1年をかけプラスチック製の植物プランターを開発した。
競合他社が少ない中ガーデニングブームの先駆けとなり大ヒット。
会社は一気に息を吹き返した。
だが大山さんはこれでよしとはしなかった。
社員からもアイデアを引き出そうとプレゼン会議を活性化。
次々とヒットを生み出した。
気付けば会社の売り上げの半分以上を新商品が占めるまでになった。
それでも大山さんは考え続ける。
「会社とはどうあるべきか?」。
だから常に我々はどんな時代が来ても利益の出せる仕組み…。
これはもうけるために仕事してるんではなく赤字を出さないために仕事をしないと。
赤字を出すと結局はリストラしないといけないし。
それだけは避けようと。
そして3年前。
その思いを更に強くする出来事があった。
東日本大震災。
宮城の工場も壁や天井が崩れるなど大きな被害を受けた。
だが会社はビニールシートやスコップなど被災地で当座必要となる製品を無償で提供した。
被災地の企業として大山さんは会社を続ける大事な責任が加わったと考えている。
大山は今大きな勝負に打って出ようとしていた。
それは米。
さまざまな工夫を施し従来の業界に風穴を開ける試みだ。
既に去年から独自の精米作業を始めていた。
米のフレッシュさを保つため低温管理や酸化を防ぐ工夫を凝らした。
更に3合に小分けする事でより気軽で簡単に米を食べられるよう目指した。
過去50年で日本人1人当たりの米の消費量は半減している。
だがそこにこそビジネスチャンスがあると大山は意気込んでいた。
しかし去年12月。
「米を取り扱ってくれるスーパーが一向に増えない」との報告が上がった。
更に日用品を扱うホームセンターで売り始めたものの認知度が低く売り上げは予想をはるかに下回った。
食文化の現状を変える。
それには強力な打開策が必要だ。
おはようございます。
今年もよろしくお願いいたします。
1月上旬大山は関係者を招いて新年の催しを開いていた。
コメビジネスへの参入は復興の歩みを加速させると地元の熱い注目を浴びていた。
(一同)お願いします。
大山は現状を打破する一つの戦略を温めていた。
託したのは米の販路開拓などが担当のメンバーたち。
リーダーの砂田敏之はこれまで高い実績を挙げてきた期待の人材だ。
広告を出すにあたってどんなメッセージを打ち出せばよいのか。
早速砂田たちは広告代理店を交え作戦会議を開いた。
だが食品に本格参入するのは全くの初めて。
明確な方針をなかなか打ち出せない。
新聞広告を担当する中嶋宏昭。
これだけの規模の事業に関わるのは初めての事だ。
鮮度をアピールすべきだとの方向性は見えたが具体的な広告作りは次回に持ち越しとなった。
大山には広告戦略を加速したい理由があった。
この日向かったのは建設中の巨大精米工場。
建設費70億円。
完成すれば数万トン規模の低温精米や保管が可能になるという。
そもそものきっかけは3年前の大震災だった。
東北の農家への支援や新たな雇用の創出にもつながる事業。
この秋からフル稼働できるのかリーダーの舵取りが試される。
10日後。
この日のプレゼン会議でコメビジネスの進捗状況が大山に報告される事になっていた。
大山はいつも以上にピリピリしていた。
メンバーからは満足できる広告案は提示されなかった。
米の認知度が上がらないため売り上げも伸び悩んだままだ。
大山はホームセンターでの試食販売を検討しろと命じていた。
だが砂田たちは販路の開拓に追われそれどころではなかった。
(砂田)やれるところはもう既にスタートしています。
(砂田)やれるところは…。
(砂田)はい。
(砂田)おっしゃるとおりです。
そうでしょ。
未知の分野への挑戦が困難なのは誰よりも分かっている。
だがいらだちは隠せない。
更にその夜。
中嶋が広告代理店から上がってきた新聞広告案を大山に見せた。
鮮度を売りにした広告案。
だが大山は意外な事を言いだした。
大山が語りだしたのは米に対する自らの変わらぬ思いだ。
新聞広告で米が高いと思っている人の先入観を変えてほしい。
はい分かりました。
大山は中嶋に大きな宿題を託した。
おはようございます。
組織の中でトップはどうあるべきか。
大山はその問いに50年間向き合ってきた。
一人一人の力をどこまで発揮させられるか。
会社が大きくなるほどその壁は高くなる。
今改めてリーダーの役割を思う。
チームは再び作戦会議を開いた。
この日最後まで議論となったのは中嶋の担当する新聞広告だ。
中嶋は自らアイデアを考えてきていた。
米を1膳当たりの額にすれば意外と手ごろ。
大山の言う「見る人の先入観を変える」アイデアだ。
代理店のメンバーが異を唱えた。
このままでは中嶋の案は通らない。
中嶋の熱意に応えるように皆がアイデアを出し始めた。
広告に消費者へ問いかけるメッセージを加える事で皆の意見が一致した。
その日の夕方。
大山の空き時間に急遽直談判する事にした。
気付きといったところでまずいきたいと思います。
もうこれで…。
はい。
中嶋の案が採用された。
大山は笑顔で励ました。

(主題歌)よかったよね。
(一同)ありがとうございました。
月曜のプレゼン会議。
今日も激論が交わされる。
秋の新米シーズンに向けメンバーの挑戦はこれからが正念場。
50年目のリーダーは今日も「熱」を伝える。
知ってる事とできる事は違う。
いくら知っていてもできなければ何の意味もない。
最後まで諦めずにやりきる事が私はプロフェッショナルの条件だと思います。
2014/02/24(月) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
プロフェッショナル 仕事の流儀▽歩み続けるかぎり倒れない 経営者・大山健太郎[解][字]

年間千以上の新商品を生む、いま注目の経営者・大山健太郎。抜群の開発力の背景には、リストラをした若き日の痛恨の体験が!震災後の東北企業として新事業に挑む姿に密着。

詳細情報
番組内容
「ものづくり復活」が叫ばれる日本。収納ケースや照明など、年間1000以上の新商品で注目される経営者・大山健太郎。抜群の商品開発力の源は、月曜恒例のプレゼン会議だ。新商品の開発提案に対し、大山が疑問を投げかけ、可否を即断即決。大山は、リストラを行った痛恨の体験から、いかに雇用を守り、会社を永続できるかを考えてきた。いま震災後の東北の企業として、コメの販売に着手。新分野に社員とともに挑む姿に密着する。
出演者
【出演】大山健太郎,【語り】橋本さとし,貫地谷しほり

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

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