日本の話芸 落語「竹の水仙」 2014.03.10

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(三遊亭歌之介)大勢さまで本当にありがとうございます。
歌之介と申しまして。
名前言う事ないんですけども言っとかないと少年隊の克っちゃんと間違えられる時があります。
(笑い)私は今からね12年前42歳の時に家族の前で宣言したんです。
「お父さんはな8月の4日屋久島一周を走ってくるよ」。
「何なの?急にその屋久島って」。
「厄年だから」。
(笑い)「厄は屋久で落とす」。
「何でそんな暑い8月に走るの?」。
「8月の4日は
(8)し
(4)る」。
(笑い)「屋久島って何キロ?」。
「島一周ちょうど100キロ」。
「ヘエ〜ッ!8月に100キロ走るの?死ぬよ〜?行ってきなさい」。
(笑い)うれしかったのは家族がみんな屋久島まで来てくれた。
「お父さんの最期を見てみたい」っちゅうんで。
(笑い)昼間は36度を超えましたからね急遽スタートは夜中の12時に変えたんですよ。
島の方々が…。
「夜中の12時スタート?気を付けなさい。
一番マムシの出る時間帯じゃ」。
(笑い)「おい。
車のライトを灯してついてこい。
マムシが多いらしい。
時速7キロで走る時速7キロ。
それ以上は出すな。
俺をはねるから」。
(笑い)スタートして11時間45分60キロ辺りでこの左膝が言う事を聞かなくなってすっ倒れたんです。
かみさんが「氷で冷やそう」。
一生懸命氷をあてがってくれた。
私はもうね大体分かっとったんです。
「この膝で残りの40キロは走れない」と。
かみさんをジッと見て「お父さん。
無理しちゃ駄目。
残りの40キロは私が代わりに走るから」と言うてくれんかな〜と思って…。
(笑い)訴えるような顔で見続けた。
そういう事言わない女。
氷が全部溶け終わったら膝をポンと叩いて「ゴー」。
(笑い)「何がゴーだ」と。
「俺はひろみじゃねえばかたれが」。
(笑い)結局無念のリタイア。
その夜島の方が残念会やって下さった。
「歌さんの体重は何キロじゃ?」。
「痩せました。
58キロ」。
「58キロしかないあんたが60キロまで走ったじゃない。
体重以上に走れたって事はすごい事」。
訳の分からん慰め受けながら…。
(笑い)ビールで「かんぱ〜い」。
一口も飲み終わらないうちに後ろから「リベンジはいつやるの?」。
(笑い)見てみたらかみさんでした。
(笑い)島の方に聞かれたんです。
「フルマラソンは何回ぐらい走ったの?」。
「一回も走ってません」。
「あんたばかか?42キロを経験してなくて何でいきなり100キロも走れるの?最低2度ぐらいは指宿の菜の花マラソン走ってリベンジに帰ってこい」。
それから3回フルマラソンにチャレンジしたんですよ。
1回目の初マラソンの時はスタート地点が分からないの。
1万5,000人集まってた。
「どこに並ぶんですか?」。
「自己申告制」。
一番真ん前に出ていきましたら怒られたんです。
「こら。
ここは2時間台でゴールできる方々じゃ。
あんたはどう見ても8時間はかかる。
一番後ろに下がっとれ」。
朝の9時にピストルがド〜ンと鳴って13分間動きもしない。
(笑い)「俺たちまだか?おい。
動かねえなこの8時間台は」。
8時間台で参加する方々は冗談まじりのランナーが多いんです。
隣見たらこんな太った若い女の子が2人看護婦さんの白衣を着て点滴ぶら下げながら走っとるんです。
(笑い)「なめてるな〜フルマラソンを」。
その前の7人組はかわいいんですよ。
背中に1文字ずつ書いてある「おさきにどうぞ」つって。
(笑い)「先行くぞ〜」。
順調に20キロ辺りまで走っとったんです。
昼間だというのに花火が揚がった。
ヒュ〜ッポ〜ン。
「エッエッエッエッエッエッエッエッあの花火は何ですか?」。
「トップが入った」。
「ホエ〜ッ」。
(笑い)「もう?俺たち半分も来てねえじゃねえか」。
あれでやる気がなくなった。
もう一回気持ちが離れたら走れないんです。
「歩くぞ〜」。
歩きに変えた途端ですよ1月の冷たい雨がザア〜ッ。
「俺の人生そのものだ」と思って指宿の市内に入っていったらボランティアのおばちゃんが「あっ歌之介だ。
サイン」。
「何がサインだ」と。
(笑い)「そんな力が残ってるか今の俺に。
もう死ぬ寸前じゃ俺ぁ。
あとゴールまで何キロ?」。
「2.5キロ。
気張りやんせ〜」。
「ありがとう」。
また500mぐらい歩いて「あとゴールまで何キロ?」。
「3.5キロ」。
「何で増えるの〜」。
(笑い)「さっき2.5だったのに。
あと何キロ?」。
「3キロぐらいじゃ。
頑張れ〜」。
最後の陸上競技場が見えてきた時には涙が出てきて。
その時でした太った看護婦2人が私を抜いていったんです。
(笑い)「鍛えてやがったな。
点滴は体にいいんだな」と思って。
ゴール寸前では「おさきにどうぞ」の7人組にも抜かされましたよ。
「嘘つきじゃお前たちは。
何が『おさきにどうぞ』か。
『お先に失礼』に変えなさい」。
雨に打たれて涙涙の6時間8分でゴールでした。
翌年はね練習をちゃんと積んで参加したから最初から最後まで走り切ったんですよ。
4時間35分。
(拍手)そんな拍手をもらうほどのタイムじゃない。
(笑い)高橋尚子だったら2往復してますよ。
(笑い)5キロ地点です。
どう見てみたって70台後半小っちゃなおじいちゃんが短パンとランニング姿でサッサッサッササッサッサッササッサッサッサ。
追い上げてこられたんです。
「この爺様には絶対負けねえ」と思って並んで走ったんですが300mついていけなかった。
「鍛えていらっしゃるな」と思って背中見たら招待選手って書いてある。
(笑い)「何なの?あのおじいちゃんは」。
山田敬蔵さんでした。
(笑い)昔のオリンピックランナー。
ボストンマラソン優勝された有名な方。
当時76歳です。
今は87歳になられてふるさとの秋田県の田沢湖のフルマラソンを走ってらっしゃる。
4時間10分だそうです。
76歳の時はね3時間52分でした。
こっちは4時間35分かかった。
一番辛かったのは28キロ。
あの長い長い坂道を登り終わって息が一番上がっとる所に養豚場があった。
(笑い)「こんな息苦しい所に…」。
(笑い)「この臭いにおいはなんとかならねえか。
養豚場を造りやがって」。
みんなが28キロ地点でいなくなってしまう。
とん
(豚)ずらってぇましてね。
(笑い)でもいまだにねあの2回目のフルマラソンの5キロ地点は覚えてます。
私の人生の中で山田敬蔵さんだけでしたね背中だけで何も言わせなかった男は。
もう後ろ姿に人生が全部出てるんです。
ああいうところまでいきたいなと思いましたけども足元にも及ばない。
ええ。
ある意味で言ったら達人の世界に入ってるような方でしたね。
背中は物語りますよ皆さん。
噺のほうでね出て参ります名人といいますとご存じの飛騨高山の甚五郎利勝です。
この方は腕のほうも確かに良かったんですが頭も抜群に良かった。
ある大名が左甚五郎ともう一方甚五郎と同じぐらいの技を持ちます大工さんに鼠を彫らせます。
出来上がった鼠を見て大名がうなった。
「ウ〜ン甲乙つけがたい。
どうしよう。
鼠の事であれば猫に判断をしてもらおう」。
飼っていた猫を放ちますとこの猫が迷う事なく甚五郎の鼠を咥えてスッといなくなる。
「なるほど甚五郎は名人である」。
この噂がたちまち広がりまして左甚五郎の名声がより一層高まったと言われております。
あとで聞いてみましたら甚五郎の作った鼠は枕崎のカツオ節で出来ていたんだそうです。
(笑い)それぐらいに名人は頭も良かった。
(笑い)東海道は小田原にございます近江屋左兵衛さんのやっている古びた小さな木賃宿。
ここに左甚五郎が泊まっております。
まぁ名人甚五郎の事ですからもうちょっといい宿に泊まってもよさそうなもんですがこの方は至って偏屈者。
みんなが「山に行く」ったら川に行っちゃう。
みんなが「川に行く」ったら山に行っちゃう。
そういう性格ですからこの古びた小さな宿が気に入ったんでしょう。
あっという間に10日の歳月が流れていきます。
10日目の朝方宿屋の夫婦の喧嘩が始まりまして。
「チョイト〜ッもうチョイトチョイトチョイトチョイト〜ッ」。
「うるせえな朝からチョイトチョイトって。
チョイトを売って歩いてんのかよ。
何だよ?」。
「何だよじゃないよ。
2階のお客さんおかしいと思わないかい?」。
「お前の顔のほうがよっぽどおかしい」。
「何を言ってんだろうね。
やって来たその日の朝から朝に1升昼に1升晩に1升毎日3升3升3升どう考えたっておかしいだろう?」。
「何がおかしいんだよ?宿屋の2階でお客さん酒飲んでておかしいかい?これ宿屋の縁の下でもって酒飲んでりゃチョイトおかしいよ。
当たり前じゃねえか」。
「気が付かないのかね〜?食べる物だってそうだよ?鯛の刺身鯛が済んだら『平目』平目が済んだら『鯛』。
『平目』『鯛』『平目』。
家は竜宮城じゃないんだから」。
(笑い)「贅沢三昧しやがってさぁ第一贅沢できる身装じゃないよあの格好は。
襟の所を見たかい?垢でもってテカテカテカテカ光ってるの。
着ている着物は東海道」。
「何だい?その東海道ってなぁ」。
「五十三次継ぎはぎだらけ」。
(笑い)「ヒョロピリの着物」。
「何だい?またそのヒョロピリってなぁ」。
「ヒョロッと避けたらピリッと裂けちゃうからヒョロピリ。
宿帳が気に食わないよ。
名前が石川五右衛門って書いてあるんだよ?」。
(笑い)「商売は釜焚きって。
ばかにしてんじゃないかい?10日も経つってぇのに一銭も入れてくれないもんだから台所にある物がみんな切れてきちゃった。
米が切れて味噌が切れて醤油が切れて砂糖が切れて。
切れないのは台所の包丁とあんたと私の腐れ縁」。
(笑い)「早く2階へ行ってもらってきな」。
「うるせぇな。
帳面と算盤寄こせ。
もらってくりゃいいんだろ?おはようございます。
当宿の主でございますが」。
「おおっこれはこれはご亭主もうちょっと中へ。
汚い所ではありますがな」。
(笑い)「恐れ入ります。
手前どもの宿でございまして。
あの〜これ私が言うんじゃございませんで嬶の野郎が言うんですけれども今日でちょうど10日経ちますんでもしよろしければここいらで一度お勘定のほうをして頂ければ大変にありがたいんでございますが如何なもんでございましょうか?」。
「何?もう10日も経ったのか。
いや〜そらぁ気が付かなんだ。
悪かった悪かった。
いくらになるのかな?」。
「あっよろしいんでございますか?ありがとうございます。
じゃあちょっと算盤のほう入れさせてもらいますんで」。
(算盤の音のまね)「ちょうど11両2分となっております」。
「何?あれほどの贅沢三昧をさせてもらって10日も世話になって11両2分とな?安い」。
「ありがとうございます。
手前どもはその安いのだけが売り物でございまして」。
「安すぎる。
が金は無い」。
(笑い)「ハア〜ッそう来るんじゃないかと思っておりました昔から『安い安い』と言ったお客さまに限りまして金を払った例はございませんので。
一文も無いんですか?空っけつですか?どうするんですか?」。
「いいやそんな大きな声を出さんでもよい。
金は無いがな別に払わないと言ってる訳ではないぞ。
ときにご亭主この近くに竹藪は無いのかな?」。
「竹藪ですか?宿の裏山は竹藪になっておりますが」。
「おお〜そうか。
ではお願いがある。
よく切れる鋸を1丁貸してもらいたい。
でご亭主ご足労ではあるがな一緒に竹藪まで来てもらおう。
来てくれたらその竹藪でもって宿代を払おう」。
(笑い)「何をしようってんですか?その竹藪でもって何をしようってんですか?」。
「フフフフフワン」。
(笑い)「変な事はしないから安心してついてきなさい」。
これから2人が竹藪にやって参りますとこんな太い孟宗竹これぐらいの長さに5〜6本切りまして部屋に持って帰ってきますと。
「ご亭主。
私が手をポンポンと叩くまではな決して部屋には来ぬようにな」。
名人左効きの左甚五郎がコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ。
ちょうど夜中の1時ぐらいでしょうか。
(手を叩く音)「ご亭主〜」。
(手を叩く音)「これへご亭主〜」。
「ア〜ッ誰だい?こんな夜中に手なんか叩いて。
ハア〜ッ2階の空っけつだ」。
(笑い)「今行きますんで。
お呼びでございますか?」。
「寝ているところをすまなんだ。
宿代の代わりになる物が出来たのでまず見てもらおうと思ってな。
どうじゃな?」。
「何ですか?これは」。
「『何ですか?これは』?いや見て分からんのか?竹でこしらえた水仙の蕾じゃ」。
「どうしようってんですか?」。
「いやこれを売って宿代を払う」。
「頭どうかしちゃったんじゃありませんか?こんな物はどう見たって3文か5文ですよ。
家の宿代は11両2分なんですから」。
「いや。
私はその3文5文という安い物は作りはせんぞ。
ご亭主。
桶に水を張ってな竹の水仙を挿し込んでおきなさい。
売り物と書いた札をぶら下げて夜通し表に出しておいてごらん。
朝方までには必ずやいい買い手がつく。
買い手がついたら宿代を払おう」。
「ついたらですか?」。
(笑い)「たら〜?鱈なんて物は寒い北のほうでないと売ってねえんですよ。
分かりましたよ。
もうとりあえずやってみますから」。
これから店の主が桶に水を張って竹の水仙を挿し込んで売り物と書いた札をぶら下げて表に出して床についてゴロッと横になる。
ウトウトウトウトしております。
しばらくしますと東の空がじんわりと白んで参りまして。
そこへやって参りましたのが早立ちの参勤交代。
「寄れ〜控〜え〜ぃ」。
肥後熊本の城主55万5,000石細川越中守様の行列。
この行列が近江屋左兵衛の宿の前を通ろうとした時ちょうど朝日が上がって参りましてまぶしいばかりの朝のサンライズがサ〜ッと表を照らします。
(笑い)夜通し桶の水に挿し込んでありました竹の水仙がパチンという小さな音をしたかと思いますとフワッと花が開いて何とも言えないいい香りが漂って参ります。
しばらくジッと竹の水仙を見ておりました違いの分かる男細川公「駕籠を止めい」。
鶴の一声ピタッと行列が止まる。
「大槻玄蕃大槻玄蕃」。
「ハハ〜ッ。
殿。
お呼びでございますか?」。
「うん。
あれなる竹の水仙を買い求めて参れ。
余は本陣宿で待っておるぞ」。
「ハハ〜ッ。
かしこまりました」。
大槻玄蕃という男身の丈は6尺はあろうかという筋骨隆々の顔中髭だらけの武者男。
「ヘエ〜ッ家の殿様は変わってるね〜。
何でこんな竹で作った花なんか買おうってんだろう?こんなんでよかったら俺が一日に何本だって作ってやるのにな。
これ〜っ誰かおらんのか?主はおらんのか?」。
「誰だろう?こんな朝から。
はい。
今開けますんで」。
「おお武家様。
何でございましょうか?」。
私は肥後熊本の城主55万5,000石細川越中公の家来大槻玄蕃と申す者じゃ。
表に出ている竹の水仙値は如何ほどなるや?」。
「左様でございますか。
ご苦労さまでございます。
で何の御用でございましょうか?」。
(笑い)「他人の話を聞いとらんのか?」。
(笑い)「表に出ている竹の水仙値は如何ほどなるや?」。
「はぁ。
あたいでございますか?ええあたいは私です」。
「何を申しておる。
そうではない値段はいくらじゃと聞いておるのじゃ」。
「あっ値段ですか。
でしたら作った者が2階におりますんで今聞いて参ります。
少々お待ちを。
ヘエ〜ッ驚いた。
おい空っけつ。
喜べ〜竹の水仙買い手がついた」。
「うん。
そうであろう。
でどこの奴じゃ?」。
「ばか。
どこの奴?そんなのが聞こえたら大変だぞお前刀でもってス〜ッと斬られちゃうんだから。
聞いて驚くな〜肥後熊本の城主55万5,000石細川越中守様」。
「おお〜越中か〜」。
「褌みたいに言いやがって」。
(笑い)「だけどもいい腕してるよね〜。
夜中見た時は蕾だったんだよ。
今花開いていい香りがしてるよ。
あれ水吸ったら花が開くようになってんのかい?ヘエ〜ッ大したもんだね。
『いくらだ?』って値段聞いてきたんだけどもどうしようか?越中公金持ちらしいんでここんところはふっかけて3両ぐらいにしちゃおうか?」。
「ばかな事を申すでない。
宿代は11両2分じゃ。
3両ごときで売ってなるものか。
そうじゃな〜他の大名であればもう少し高く売るというところであるがな相手が越中であれば2百両ぐらいにまけとこう」。
(笑い)
(笑い)「お前が言ってこい。
お前が」。
(笑い)「そんなの言ったら大変だぞ。
首がスポ〜ンと飛んじゃうぞ〜」。
「心配する事はない。
秋には新芽が出てくる」。
「マツタケじゃねえや。
お前行ってこいよ」。
(笑い)「ご亭主。
どんな乱暴な侍であろうがないきなり刀を抜いたりはせんであろう。
まぁせいぜいポカッと殴る程度」。
「それが嫌だってんだよ。
あんな丸太ん棒でもってポカッとやられた時にゃたまったもんじゃないよ。
行ってこいよ」。
「ご亭主。
金儲けに苦労は付きもんじゃぞ」。
(笑い)「言ってきなさい」。
「気が重てえな〜。
お待たせを致しました〜」。
「うん。
でどうじゃった?」。
「2階のが言うんです。
『他の大名であればもう少し高く売るというところでございますが…』」。
「うん。
他の大名であればもう少し高く売るというところを?」。
「『相手が越中であれば』…」。
「何〜っ?」。
「いや〜」。
(笑い)「『越中守様であれば』…。
言えねえな〜」。
(笑い)「首が飛ぶよこれ。
『ん百両』」。
(笑い)「何じゃ?」。
「ですからその〜『ん百両〜』」。
「舌が脚気になっておるのか?はっきりと申せ」。
「ですからその〜これだけです」。
「何?『他の大名であればもう少し高く売るというところを相手が越中守様であればこれだけだ』と指を2本出したか。
うん。
そうであろう。
20文か?」。
(笑い)「そうくるんじゃないかと思っておりました。
そうじゃございませんで2百両」。
「何?2百両?たかだか竹で作った水仙の花が2百両とは高すぎる。
足元を見よってこのばか者」。
「痛〜っ」。
(笑い)「ハア〜ッこんな大きなこぶが。
見ろこのこぶを」。
「おお〜立派なこぶじゃ。
『喜ぶ』と言って縁起がいいんじゃ」。
「何を言ってんだ」。
(笑い)「殴るだけ殴って何も買わずに帰っていったじゃねえかよ。
どうするんだよ?」。
「ご亭主心配する事はいらんぞ。
いま一度下に下がって待っておいてごらん。
ポカッとやった奴はな血相を変えて帰ってくる。
『物を見る目が無かったんだ。
このとおり2百両持ってきた。
竹の水仙売ってくれんであろうか?』と必ずや頭を下げに帰ってくる」。
「お前は予言者か?」。
(笑い)「分かった。
こうなりゃ俺もやけくそ下でもってズ〜ッと待ってるから」。
一方大槻玄蕃のほうはカリカリカリカリしながら本陣宿に帰っていきます。
「ウ〜ン2百両だ?高すぎる高すぎる。
殿。
行って参りました」。
「うん。
大槻玄蕃か。
でどうであった?」。
「それがその〜大変に高値でございまして」。
「うん。
そうであろう。
で如何ほどじゃと申されておった?」。
「『他の大名であればもう少し高く売るというところでございますが…』」。
「うん。
他の大名であればもう少し高く売るというところを?」。
「『相手が越中守様であれば…』」。
「うん。
相手が越中であれば…」。
「言えねえな〜」。
(笑い)「刀で斬られちゃうよこれ。
これだけだと申されておりました」。
「何?他の大名であればもう少し高く売るというところを相手が余であればこれだけだと指を2本出されたか。
うん。
そうであろう。
2万両か?」。
(笑い)
(笑い)「どうなってんだよ?うちのお殿様。
そうじゃございませんで2百両」。
「何?2百両?千両万両と値を積んだところで気が向かねば作ってくれぬ名人の作をたかだか2百両?で高いといって買ってこなかったのか」。
(笑い)「ばか者。
すぐに行って参れ。
万が一売り切れておった場合には大槻玄蕃役職上の咎めじゃ『その場で切腹』を言い渡す」。
「そんなばかな〜」。
(笑い)大槻玄蕃真っ青になって裸足で駆けだした。
主はいつ来るかいつ来るか下のほうで待っております。
やって来たのが米屋の借金取り酒屋の借金取り借金取りだらけ。
中には汚い格好をしたお坊さんが「おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらばりたやうん。
お余りを」。
ろくなのが来やしない。
そうこうしてるうちに大槻玄蕃が裸足でもってやって来た。
「来た〜っ来た来た来た来た来たきた〜っ。
南はどっちだ〜?」。
(笑い)「そんな事を言ってる場合じゃない。
2階のお客さんは占いもやるんだ八卦も見るんだな。
よ〜しさっきの敵〜っ」。
主は悪い奴です。
竹の水仙スッと家の中に隠して売り切れという札を出した。
「アア〜ッ」。
(笑い)「ハア〜ッハア〜ッ。
ご亭主。
さっきはすまなんだ物を見る目が無かったのじゃ。
このとおり2百両持ってきた。
竹の水仙売ってくれんであろうか?」。
「フフフフフ」。
(笑い)「やられたらやり返す。
倍返し」。
(笑い)「何を申すかこの腐れ侍頭が高い」。
「そんなに悪く言わなくても」。
「さっきポカッてやりやがったな。
見ろこのこぶを。
『喜ぶ』と言って縁起がいいんじゃ」。
(笑い)このこぶが出来た時には百両値が上がる。
3百両でないと売らんぞ〜」。
「3百両でも買おう」。
大槻玄蕃喜んで本陣宿に帰っていきます。
主はもっと喜んだ。
「嬶〜嬶〜カカ〜ッ」。
「カラスだよまるで。
どうしたんだい?」。
(笑い)「3百両で売れた」。
「ヘエ〜ッ?3百?3百?3百両?。
だから言ったじゃないか2階のお客さんはただ者じゃないよって」。
(笑い)「何を言ってんだ。
お前が一番悪く言ってんだ。
お客様〜。
3百両で売れました」。
「何?百両値が上がったのか。
さすがは越中じゃな物を見る目があるのう」。
「どうぞお納めになられて下さい」。
「いや。
私は2百両しか取りゃせんぞ。
ご亭主。
百両は納めておいてもらいたい」。
「はっ?」。
「要らんのか?」。
「要りま〜す。
要ります要ります」。
(笑い)「恐れ入ります。
もうこれだけ頂ければ宿代のほうは結構でございます。
何十日何百日何年でもお泊まりになって下さい。
よかったら一緒に暮らしませんか?」。
(笑い)「一部屋空けますんで。
朝からガンガンガン酒飲んでて結構です。
そのかわり年に一回だけ竹の水仙の5〜6本も作ってもらえれば」。
「私は生涯竹の水仙は作りはせんぞ」。
「冗談ですよ冗談。
でもあれほどの物をお作りになる方さぞかし名のある方だと存じます。
もしよろしければお名前のほうをお聞かせ願えませんでしょうか?」。
「いや別に名乗るほどの者でもないがなこれも何かのご縁であろう。
私は飛騨高山の甚五郎利勝じゃ」。
「左甚五郎先生?シェ〜ッ」。
(笑い)「何も知りませんでご無礼の数々ひらにお許しを」。
「いやそんなに頭を下げんでもよい。
ご亭主。
この百両はなおかみさんのほうに渡してもらいたい。
いろいろとご迷惑をかけたのでな。
着物でも作ってあげなさい。
ヒョロピリでないやつをな」。
(笑い)「宿屋稼業を営んでおりました私が見た目だけで人を判断していたのが恥ずかしい限りでございます。
今日からは心を入れ替えまして『ボロは着てて…』。
いや。
あの〜…」。
(笑い)「個性的な物はお召しでも…」。
(笑い)「『心は錦』と申します。
決して人を見かけだけで判断せぬよう…。
人を見かけだけで判断せぬよう。
お〜い嬶〜さっきのお坊さん捜してこ〜い」
(笑い)「これこれご亭主急に慌ててどうした?」。
「いいえ。
あなた様が左甚五郎先生であれば先程のお坊さんは弘法大師かもしれない」。
(笑い)
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/03/10(月) 15:00〜15:30
NHKEテレ1大阪
日本の話芸 落語「竹の水仙」[解][字]

落語「竹の水仙」▽三遊亭歌之介▽第654回東京落語会

詳細情報
番組内容
落語「竹の水仙」▽三遊亭歌之介▽第654回東京落語会
出演者
【出演】三遊亭歌之介

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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