ハートネットTV シリーズ被災地の福祉はいま(1)「岩手県・陸前高田市」 2014.03.10

東日本大震災の被災地に暮らす視覚に障害のある男性。
長年使い慣れたバス停が津波で流されてから出歩く事ができなくなり困り果てていました。
中心街は今もさら地のまま。
街を離れる人が後を絶ちません。
そんな中陸前高田市は街の将来を懸け独自の復興策に踏み出す事にしました。
それは新たな街づくりに障害者たちにも参加してもらう事。
被災地ではほかに例を見ない取り組みです。
目指すのは誰もが暮らしやすい街づくり。
はいただいま〜。
すみませんどうも。
取り組みがスタートして1年。
障害者たちの意見を基にその成果が少しずつ現れ始めています。
東日本大震災から間もなく3年。
今日から3日間は被災地の福祉の今を見つめます。
今被災したそれぞれの街で復興に向けた模索が続く中岩手県陸前高田市では障害のある人の生の声を新しい街づくりに生かそうとしています。
市は去年障害のある人たちで構成するワーキンググループを立ち上げました。
生活環境や支援体制などについて障害者の皆さんの思いに耳を傾けています。
誰もが将来に希望を持てる街にするために動き始めた陸前高田市を取材しました。
あらゆるものが失われた街をどうやって再建していくか模索を続けてきました。
津波の犠牲者は1,735人。
市役所でも113人が亡くなりました。
生かされた自分たちは何を目指せばいいのか。
そのヒントは身近なところにありました。
実は震災前から市は誰もが暮らしやすい街づくりを目指していました。
「ゼロからのスタートならばこの原点をとことん突き詰めていこう」。
市の職員はそう決意しました。
震災後多くの障害者や高齢者が生活に苦労しています。
誰もが暮らしやすい街づくりは市民の望みでもありました。
まず行ったのは市内に住む1,300人の障害者全員へのアンケート調査。
どんな事に困っているのかを徹底的に聞きました。
その結果健康面での不安や移動の不便さなど課題が見えてきました。
解決策は障害者たちと一緒に考えていく事にしました。
こうしてワーキンググループが立ち上がったのです。
メンバーの障害者は19人。
どんな支えがあれば暮らしやすくなるのかを自らの体験からありのままに伝えます。
この日は誰もが気軽に立ち寄れる場所作りから始めてみてはどうかというアイデアが出されました。
こうして出されたアイデアは市の職員たちが具体的な施策へ練り上げていきます。
ワーキンググループに切実な困り事を訴えている人がいます。
(取材者)こんにちは。
(佐々木)は〜い。
こんにちは。
佐々木さんですか?はい。
視覚に障害のある…震災前佐々木さんが住んでいる市営住宅のそばにバス停がありました。
そのため買い物や通院友達と会う時にも何不自由なく出歩けていたと言います。
しかし使い慣れたバス停は津波で流されてしまいました。
震災後バスの路線は大きく変わりました。
以前は海沿いから市街地へ走っていましたが津波の被害で山側にルートが変わり佐々木さんの家から遠く離れてしまったのです。
視力を失った佐々木さんにとって外に出て人と会話する事が何よりの楽しみでした。
佐々木さんのほかにも多くの障害者や高齢者が同様の悩みを抱えています。
ワーキンググループのメンバーたちによる検討が始まりました。
この日は震災後市内で障害者の移動支援を行ってきた小山貴さんも会議に加わりました。
メンバーたちは小山さんたちの移動支援をなんとか続けてほしいと考えていました。
これまで移動支援では障害のある子どもたちの通学や自力での移動が難しい人たちの通院を担ってきました。
電話一本で駆けつけてくれしかも無料。
依頼の件数は年間2,000件に上っていました。
はいただいま〜。
すみませんどうも。
しかし課題も抱えています。
車両の数は僅か3台。
スタッフの数も限られており全ての依頼に応える事はできません。
小山さんたちの移動支援はあくまで一時的な緊急支援として始まったもの。
いつまでも続ける事は困難です。
ワーキンググループからの切実な要望を受け市は具体的な対策を考え始めました。
移動支援を市が引き継げないか検討する事にしたのです。
関係者が集まり検討を始めました。
まあ障害のある方ご高齢の方…。
問題となったのは自治体が移動支援をできる範囲は法律で市内に限られている事。
しかし利用実績を見ると隣の大船渡市にある県立病院への通院のニーズが大きな割合を占めていたのです。
このほか採算面や利用者の範囲をどう定めるかも話し合われました。
課題は山積していますが誰も諦めようとは言いだしません。
市の予算を移動支援にどれだけ振り分けられるか。
まずは試験的な支援から始め来年度以降本格化を目指したいと考えています。
この移動支援には障害のある人だけでなく高齢者にも大きなニーズがありました。
対象を高齢者にも広げて市は今年9月の実現を目指すという事です。
被災地では今生活の再建の進み具合に被災者の間で格差が生まれています。
その中で社会的に立場の弱い人たちを支える施策はこれからの復興に欠かせないと思います。
ここまでは行政側の取り組みを見てきました。
一方で被災した事がきっかけで社会にもっと関わりたいと思いを抱き始めた障害者もいます。
陸前高田市にある福祉作業所きらり。
ここに通っているワーキンググループのメンバーの一人…一人で物を考える事が大好きという井筒さん。
趣味は川柳です。
震災後の県の対応を詠んだ物もありました。
知事が困ってるから縮こまってる
(知事困ってる)んじゃないかと…。
はい。
以上です。
お集まり頂いてありがとうございます。
月に1度のワーキンググループの定例会。
この日は市に出す要望について話し合われました。
ワーキンググループに参加し始めてから井筒さんはある提案を温めてきました。
障害のある自分たちも社会のために何かやるべきではないか。
これまでにない新しい提案です。
震災をきっかけに井筒さんはそれまでの人生から大きく変わりました。
障害のため特徴的な動きをしてしまう井筒さん。
幼い頃からいじめを受け人の中に入っていく事が苦手でした。
東日本大震災で発生した大津波。
どんな時も支えてくれた両親と祖母はその波にのみ込まれました。
津波が迫り来る中井筒さんは高台に向かって必死に走りました。
ここは違う…ここら辺だったかな?ここら辺ですね。
そうそう。
はい。
(取材者)津波ですか?仮設住宅で1人暮らしとなった井筒さん。
この先どうすればいいのか分からず被災地をさまよい歩く毎日。
生きる気力を失っていきました。
そんな井筒さんに声をかけてきた人がいました。
はいお邪魔します。
福祉作業所きらりの所長伊藤勇一さんです。
何か困ってる事ないのか?取り立ててはございません。
伊藤さんは被災地をさまよう井筒さんの様子を気にかけていました。
定期的に井筒さんのもとを訪ね料理や洗濯など日常の手伝いをするようになりました。
井筒さんは自分なりに暮らしのペースをつかんでいきました。
社会との接点を持つ事が井筒さんにとって大切だと考えた伊藤さん。
きらりに積極的に通うように勧めました。
ずっと避けてきたたくさんの人目にさらされる場所。
最初はなかなかなじめませんでした。
そんな中伊藤さんから作業所で行っている食品の梱包作業を手伝ってほしいと頼まれました。
井筒さんが任されたのはラベル作り。
一人での作業が得意な井筒さんにぴったりの仕事でした。
やりがいを感じ初めて心の中に自信が生まれました。
通い始めて2年。
井筒さんは自ら人の輪の中に入れるようになりました。
え〜まだもんでもらってねえのに「うまいです」とかって言われねえ。
(井筒)うまいですか?あっいいね。
ちょうど気持ちいいや。
市が街づくりのワーキンググループを立ち上げる事になった時井筒さんはきらりの人たちから推薦されメンバーになりました。
「自分たちもできる事で社会にお返しをしていこう」。
井筒さんの提案を受けメンバーたちは考え始めました。
介護?介護できる?やれるのかなと思うんだけど…そんな事があるのかなと思っております。
すいませんねこれぐらいなもんですけど。
メンバーたちは話し合った内容を新しい街づくりのアイデアとしてまとめ市に伝えていく事にしました。
新しい陸前高田は誰もが暮らしやすい街にしたい。
その願いは一歩一歩実現へと近づき始めています。
2014/03/10(月) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ被災地の福祉はいま(1)「岩手県・陸前高田市」[解][字][再]

岩手県陸前高田市は「ノーマライゼーションという言葉のいらない街」を目標に、19人の障害者たちをメンバーに招き復興プランを構築中。独自のまち作りの取り組みを追う。

詳細情報
番組内容
津波で市街地が壊滅した岩手県陸前高田市。ゼロからの復興の中、市が掲げた目標は「ノーマライゼーションという言葉のいらない街」。震災後に交通手段を失った障害者たちへの移動支援や、災害時に無事に避難できる手段などの検討が始まっている。最大の特徴は、街作りのためのワーキンググループに19人の障害者たちが参加していること。1年間の活動で、少しずつ成果も見え始めた。誰もが暮らしやすい町作りの取り組みを追う。
出演者
【キャスター】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

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