さあレバーをお湯にする。
すぐ温かい。
ひねって今度は冷水。
グラスに注いでそのまま飲める。
これが日本の水道。
ごく当たり前のように思えますよね。
でも今世界ではこれが注目されているんです。
深刻な水の汚染に悩むベトナム。
その問題の解決を期待され先月日本の自治体がある都市の水道事業を担う事になった。
汚れた川の水を浄化する高度な技術。
それを格安で提供したのだ。
日本の暮らしを支えてきたノウハウが安全と安心を届ける。
一方こちらは中国最大の都市上海。
去年日本でおなじみの施設がオープンした。
それは…スーパー銭湯。
日本式の厳しい衛生管理システムが可能にしたきれいなお湯。
和食レストランも兼ね備え家族で一日中楽しめる娯楽施設と評判だ。
日本人が積み上げてきた安全安心清潔快適を生み出す独特のシステム。
それが世界に広がろうとしている。
戦後驚異的なスピードで経済成長を実現し世界を驚かせた日本。
その原動力となったのは自動車や家電製品といったメイドインジャパンの製品でした。
しかし海外のメーカーとの競争が激しさを増す中新たな強みが求められています。
その鍵を握るのが品質へのこだわり。
細部に対するきめ細かな気配り。
逆境を乗り越える創意工夫。
日本人が磨いてきたこれらが今改めてジャパンブランドという世界で稼ぐ新しい力になろうとしています。
シリーズ第2回は渋滞やゴミ処理など新興国が抱えるさまざまな問題を解決すると期待されている分野。
日本式生活インフラの輸出です。
10年後にはおよそ150兆円に膨らむ巨大市場。
日本はその主導権を握れるのか。
さあ品川駅に来ています。
新たなるジャパンブランドの可能性が駅にある。
…という事で参りましょう。
レッツゴー。
そうそうこのIC乗車券そのものにもジャパンブランドの可能性があるんです。
あっきましたね。
これ!これも外国にはなかなかない。
いや自動販売機はいっぱいありますよ。
でもこんなタッチスクリーンで。
さあ何が欲しいかな。
水にしましょう。
うわ!周りのフォーカスが甘くなる。
こういうふうにきっちりフィーチャーする目立たせる。
さあ…。
はい小銭必要ない。
外国の人は驚くと思います。
更に世界を驚かせるのがこちら。
駅の中で買い物ができるいわゆるエキナカです。
海外の人うれしいでしょうね。
おすし屋さんがあります。
それもグルグル回ってません。
はいお待ち遠さまです。
和食からスイーツそして衣料品に至るまで品川駅には90以上の店が軒を並べています。
便利です。
快適です。
こういうシステムとかサービスを海外に売り込もうという試みそれを探ります。
さあまず皆さんご覧頂きたいのが駅のホームの表示板です。
海外の駅に行きますとDELAYED運行の遅延よく載ってるんですけれどもなかなか日本ではお目にかかりません。
海外から評価されているのは何と言ってもこの正確性なんですね。
このシステム今アジアで注目されています。
ベトナムの首都ハノイ。
激しい交通渋滞が引き起こす大気汚染が深刻な問題となっている。
その解決策として期待されているのが電車を使った都市鉄道。
来年の開業を目指し建設が進んでいる。
去年2月東京メトロがその運行管理の支援を請け負う事になった。
期待されているのは世界で最も複雑な東京の地下鉄を正確に運行させるシステムだ。
ダイヤを秒単位で精密に組み上げる通称スジ屋と呼ばれる職人。
彼らが現地に送り込まれスタッフを基礎から鍛えている。
ハノイ市が東京メトロに注目したきっかけは2年前。
幹部が視察に訪れた事だった。
運転手育成のためさまざまな状況を想定するハイテクシミュレーター。
最短1分50秒間隔の緻密な運行管理に幹部たちは驚いた。
中でもハノイ市が強い関心を示したのは同じ路線を違う会社の電車が走る相互乗り入れだ。
東京メトロの路線ではJRや私鉄などほかの鉄道会社8社が相互に乗り入れている。
全ての路線が時間どおりに運行する日本だからこそ可能な世界に類を見ないサービスだ。
乗り入れている8社の車両には東京メトロのシステムが搭載されている。
乗務員は別の会社の車両でも乗りこなせる。
また乗客がほかの路線に乗り継いでも運賃の配分を自動的に計算するシステムを構築している。
今回ハノイで開業する3つの路線は車両や設備が異なる。
そこで東京メトロが持つこうした豊富な経験が期待されたのだ。
同じベトナムでもう一つ日本式生活インフラが広がろうとしている。
暮らしが豊かになるにつれ問題となっているのが…その解決策として導入されたのが日本でおなじみの学校給食のシステムだ。
2年前からホーチミンなどの主な都市で始まった。
かつての給食はごはんに空揚げを載せたものなど2品。
炭水化物中心の栄養バランスの悪いものだった。
新しい給食ではカロリーや栄養が計算されたメニューが日替わりで提供され子どもたちの成長を支援している。
この給食システムをサポートしているのは日本の大手食品メーカー。
ベトナムの現地社員の発案で始まった。
日本の学校給食を参考にして作ったレシピを…更に給食専門スタッフの配置を後押しして衛生管理のノウハウも提案している。
今後食材の調達ソフトも導入し日本式の給食システムの普及を推進。
将来的に自社製品の売り上げにつながる事を期待している。
日本の当たり前が実はこんなに力を持っているという。
そしてかの地の皆さんの生活がどんどん向上していく。
すごいですねこれは。
うれしくなってきますよね。
これがジャパンブランドですよ。
(上田)ゲストのお二人です。
中小企業の海外進出にお詳しい立教大学経済学部教授の山口義行さん。
どうぞよろしくお願いします。
そして片岡利文解説委員です。
よろしくお願いします。
今もありましたあまりに当たり前すぎてそこに価値があるなんて思いもしなかったものが…。
日本の当たり前が世界にとってありがたいという社会インフラ。
これを今回の番組では日本式生活インフラと名付けました。
3つの分野だけをちょっと今どのぐらいの世界市場の規模が見込まれるか。
2020年代にはリサイクルが実は33兆円。
水ビジネスが87兆円。
鉄道のビジネス22兆円とこれ足すと142兆円。
この3つだけですよ。
日本が1年の間に製造業で生み出してる付加価値これが大体100兆円ぐらいなのでそれと比べても全部この市場を取れるって事は絶対ないと思うんですが今後その可能性を期待できる分野じゃないかなっていう事ですよね。
山口さんどうご覧になります?先ほどのお風呂もそうですけどホントにすごい温泉地へ行って高級な旅館に泊まらなくても都会でいて温泉気分を味わえるようにしてくれてますよね。
ただしそれを実現するためには大変な仕組みがバックになきゃいけない。
この仕組みがやっぱり今恐らく世界から見れば一番欲しいものじゃないかと思うんですね。
例えば日本のこういうものが欲しいっていうのがある時代まであって日本製品っていうものが世界を席巻するっていう時代があったけど今度はもう一歩進んで日本人が作り出してきた仕組みを外国の人がそれを自分たちの社会の中で生かそうという意味でのニーズが非常に高まってきてるという事だと思うんですね。
そういうふうで言うといろいろ打って出られるところってあります?こんなものもあるんですよ。
例えばコンビニ。
中国で便利な店。
いわゆる便利店という形で上海や北京を中心に広がってるんですね。
それからですねこれ。
宅配便。
マレーシア。
一部の地域なんですがなんと翌日配送クールサービス時間指定それも実現してるっていうんですね。
次これなんですが…。
続々出てきますね。
続々出てくるでしょう。
健診車?健診車です。
どこに送り届けたかというと中国は中国でも奥地のチベットなんですよ。
病院のない地域を回って人々の健康を守ってる。
これ日本の健康診断のノウハウと設備をこの車の中にギュッと凝縮して送り届けると。
更に学習塾も広がっているんですよ。
ブラジルでは経済成長に伴い教育熱が高まっているんです。
それと意外なところでイギリス。
実は増え続ける移民の人たちに分かりやすい学習教材だと大好評なんです。
中国の人に聞いたんですけど「日本に来て最初に我々がびっくりするのはどこだと思います?」って言うから「どこでしょうか」って言ったら「靴屋さん」だと。
「何で?」って言ったら「靴屋さんに行くと売り子さんがひざまずいて靴を合わせてくれる」と。
「あんな事をしてくれるお店は中国にはない」。
「え?そうなんだ。
そんなすごい事なんだ」って。
「日本はこれから海外行くのはサービスですよ」って言われて。
もう一回日本の中でどういうものが海外に求められるのか。
どういうふうに形を変えれば海外でも認めてもらえるのかという事を考えなきゃいけないと思うんですね。
生活インフラっていうのはやっぱりものとサービスが一体化したものなんですね。
サービスを送り届けるためにものがあるっていう考え方だと思うんですよ。
だから日本式生活インフラって事を考える時に従来の製造業とかサービス業という枠を取り払って考えていかないといけないっていう事ですよね。
日本式生活インフラにかなり期待が見えてきたんですがこうした日本式生活インフラを地域経済を引っ張る産業に育てようっていう場所があるんですよ。
それがこちら。
北九州市。
ちょっと自慢げ。
え?実は生まれ育ったふるさとなんです。
誇りですね。
(上田)重厚長大鉄の町北九州。
なんとアジアでアジアでさまざまなプロジェクトを手がけてるんです。
北九州。
ベトナム第3の都市ハイフォン。
先月この町に日本式生活インフラが導入された。
安心して飲める水道水。
北九州市の浄水システムの設備が稼働を始めたのだ。
北九州市は5年掛かりで水道のシステムを売り込んできた。
ベトナムでは下水道がほとんど整備されていない。
生活廃水や工場廃水が川に垂れ流されている状態だ。
多くの住民がこの川の水を利用した水道水を使わなくてはならない。
水を直接口にする事はなく料理に使う水は全て念入りに沸騰させている。
北九州市の切り札となったのが長年水道事業で培った高い技術力だった。
塩素の代わりに使うのは活性炭。
そこにバクテリアを加えるのがこのシステムの特徴だ。
バクテリアが活性炭に住み着き浄化し続ける。
しかもこの装置オゾン式と呼ばれる一般的なものと比べ建設費は半分。
ランニングコストは僅か20分の1。
その結果水道料金はそのままで安全性を高める事に成功し3万3,000人に安心して飲める水を届けられるようになった。
それにしてもなぜ地方自治体である北九州市が海外で事業を進めるのか。
八幡製鉄所の城下町として日本の近代化を支えてきたこの町。
その歴史は激しい公害との闘いでもあった。
高度経済成長が始まった昭和30年代。
工場から排出される煙が町を覆った。
子どもたちの顔はすすで汚れぜんそくなどの健康被害が増加。
更に川や海も汚染された。
こうした状況を改善しようと官民が一体となって取り組んだ。
その結果大気汚染の防止や水の浄化など生活インフラに関わる独自の技術が地元企業から生まれた。
しかしその一方で人口や事業所の数は減り続け税収は最盛期に比べておよそ100億円減少。
苦境打開をかけたのが公害克服の歴史から生まれた日本式生活インフラの海外展開だった。
海外展開の拠点が環境局のアジア低炭素化センター。
3年前設立された。
メンバーは22人。
商社マンなど海外経験の豊富な人が民間から積極的に起用され地元企業が持つ生活インフラの技術を売り込んでいる。
今最も力を入れているのがインドネシア第2の都市スラバヤ市だ。
ここで北九州市はゴミのリサイクルシステムの確立をサポートしている。
家庭から出たゴミは分別されずに一旦市の保管場所に集められそのまま処分場に運ばれている。
そこで保管場所にゴミの分別施設を建設。
素材ごとにリサイクルする。
その結果処分場に行くゴミを大幅に減らす事ができる。
将来は消臭などゴミ処理に関わる技術を持った地元企業に進出してもらい日本のシステムを根づかせようという壮大な構想だ。
去年2月スラバヤで初めての分別施設が操業を始めた。
経営するのは最近海外進出を図っているリサイクル会社。
ゴミを効率的に分別するシステムやITを駆使した廃棄物の管理を売りにしている。
北九州市の担当者はこの会社がスラバヤに進出できるようさまざまな策を講じた。
来日したスラバヤ市長を本社工場に招き最先端の分別技術や運営の仕組みを直接アピール。
更に市の当局に掛け合って工場の土地を無償で借り受けられるようにサポートした。
昔の問題解決したそのすべが北九州のすべが今やって事ですよね。
すごくつらかった負の遺産を解決しようとした努力の日々が。
という事でここからは北九州市の取り組みを取材しました来田あづさ記者と共に伝えてまいります。
よろしくお願いします。
自治体が一自治体がここまでできる北九州市すごくないですか。
北九州市が企業のアジア展開を後押ししているプロジェクトの数アジア9か国で54件にも上っているんです。
インドのレアメタルタイの省エネ照明ベトナムの節水型のシャワー。
インドネシアの消火剤?
(来田)インドネシアというのは大規模な森林火災が多くて大量の二酸化炭素が発生する事が問題になっています。
そこで北九州市内の石けんメーカーなどが開発した新しい消火剤が活用できないかという実証実験が行われてるんですね。
今までは北九州ちょっと元気ないねっていうとどこから企業を引っ張ってくるかとか誘致をして雇用をどうやって生み出すかとかそういう発想が中心だったんですよ。
でも今回の場合は今あるものをよく調べてみてこれはここにいけそうだこっちにいけそうだって海外に逆にネットワークを広げていこうというやり方ですよね。
北九州市にできたのならば日本のあらゆる地域のいろんな課題を抱えて克服しようとしている地域あるじゃないですか。
ほかもできますよね。
実は上下水道事業とかゴミの処理ですねリサイクルも含めて。
こういうのは実は日本の場合地方自治体がやってるんですね。
生活インフラのノウハウというのは地方自治体にこそ凝縮されてるんですよ。
それを生かさない手はない。
本気になって海外とのネットワークをつなごうというふうに動けば地域経済から日本をよくしていけるという可能性が実はいっぱいあるっていう事を北九州市の例は教えてくれてるなという感じですよね。
でもそれを一体何なのかという目利きの方がいないと。
よく市とかだと担当がすぐ変わっちゃうじゃないですか。
私なんかも町おこしで手伝ってくれとかって言って委員とかになっても担当の人が1年半ぐらいですぐ変わっちゃうんですよね。
しかも変わると出世していきますからみんなうれしそうに変わっていく。
何で残されてる訳みたいな。
結構そういう事じゃなくてやっぱりちゃんと人を育ててきたというのがあるんでしょうね。
実際お話を聞いていると環境畑の人というのは割とずっと環境畑という方が多いんですね。
北九州は環境だという事で今新しい産業として売りに出ていますのでそうしたところが背景にあるのではないかなと思います。
インドネシア語がしゃべれる人を今採るって相当勇気がいりますよ。
実は日本型の生活インフラをつくり上げるエッセンスは日本の中小企業の中に多分全部そろってるんですよ。
それを誰がまとめ上げるかという事ですよね。
北九州市地方自治体というのもできますよと。
日本式生活インフラをつくり上げるエッセンスはいわば我々の懐の中に全部あるんだっていう事をまず認識して今度はそれをどういうふうに組み合わせて使っていくのかっていう考え方が必要なんですね。
海外で稼ぐ新しい力となる可能性を秘めた日本式生活インフラ。
しかしこれを新興国に広める時に立ちはだかる強力なライバルが中国や韓国の企業です。
そこであえて紹介したいデータがあります。
発電所やパイプラインといった旧来型のインフラの輸出額です。
低価格を武器に伸び続ける中国韓国に対して日本は苦戦を強いられています。
日本式生活インフラを新興国に広めるために何が必要なのか?旧来型インフラのあるプロジェクトからそのヒントを学びます。
3年前タイの首都バンコクにまで押し寄せた大洪水。
その原因となった川などの治水事業が国際競争入札にかけられ日本の企業連合が受注を目指した。
事業総額およそ1兆円のビッグプロジェクトだ。
洪水の復旧に貢献しタイ政府から信頼を寄せられていた日本。
しかし受注につなげる事はできなかった。
圧倒的有利と見られていたにもかかわらず交渉は難航し日本チームは入札から撤退した。
それはなぜか。
まず問題になったのはチームが入札に臨む姿勢だった。
国土交通省の旗振りのもとチームに参加したのは大手ゼネコンをはじめとする18社。
現地をよく知るタイのゼネコン2社に協力を求めたところ相次いでその姿勢を問いただされた。
近年新興国でインフラの受注を伸ばす韓国や中国の企業。
多くの場合リスクの見極めよりも落札する事を最優先にしている。
それに対して日本チームの姿勢は本気で臨む覚悟がないとタイ側に受け止められた。
更に相手の求める予算にどう収めるかという問題も浮かび上がった。
今回工事の詳細がはっきりしなかったため予想外の出費が大幅にかさむおそれがあった。
そのリスクを織り込んで見積もりを算出したところタイ側が条件とする予算の2倍を超えてしまったのだ。
日本チームの提案はタイ政府にとって受け入れられるものではなかった。
撤退を余儀なくされたタイの治水プロジェクト。
今国土交通省は苦い経験を教訓にしようと企業に呼びかけ新たな組織づくりに乗り出している。
新興国の要求に応えながらインフラ技術を売り込めるチーム作りが目標だ。
撤退しちゃった訳ですよ。
諦めちゃった訳ですよね。
そうですね。
最終的に落札したのは例えば中国の企業や韓国の企業なんですね。
今おっしゃったように日本のチームは最終入札前に撤退しました。
確かにこれリスク大きかったんですよ。
だけどビジネスというのは相手の予算に合わせて提案するのが常識なんですね。
それを越えて提案をするという事はルール違反なんですよ。
だからビジネスっていう感覚海外で新興国でビジネスをやるっていう事に関してまだ日本の企業は感覚が練れてないんじゃないかなという気もするんですね。
だから日本式生活インフラすごいよねと。
これ売れるんじゃないかという事だけじゃ済まないって事なんですね。
要は相手側にとって我々が送り出す日本式生活インフラっていうのがどう役に立つのかどのぐらいの値段で買ってもらえるのか。
それともう一つ相手側の国にどう合わせた形に変えていくのか。
一緒になってやっていくっていうこの一緒にっていうのが結構重要だと思うんですね。
その覚悟があるかどうかっていう。
予算を設定する時の場合に相手の都合に合わせるよりもこちらで何社も何社も建設関係とかあるじゃないですか。
それぞれそれなりに顔も立てなきゃいけないのもあってそれを合算していくとどうしても高くなりますよね。
連合の在り方企業連合の作り方というかそういうところを日本はもう少し考えてやってかないとこういう形で集まってしまうとこういう事態を繰り返す可能性ってあるんじゃないかっていう気がしますね。
ただですよ私皆さんをちょっと擁護もしておきたいんですがやっぱり日本のゼネコンというのは海外の事業でかなり痛い目に遭ってるんです。
そういう事もあってリスクというものに対してかなり敏感にならざるをえないような状況があったっていう事は確かなんですね。
リスクは負えない。
でもこれも交渉のテーブルにのせてなぜできなかったのか。
もっと緻密な交渉をして地道に対話しながらもっとかみ込んで交渉していくって事はできなかったのかという気もしますけどね。
新興国での交渉で日本企業が苦戦している背景に経営者の姿勢の変化があると指摘する専門家もいます。
企業の組織論に詳しい多摩大学大学院教授の田坂広志さんです。
新興国とどう向きあって受注にこぎ着けるのか。
課題を克服し見事日本式生活インフラを売り込む事に成功したケースがあります。
去年日本の企業4社があるプロジェクトを受注した。
バンコクの都市交通システムの新路線に初めて日本製の車両とメンテナンスのサービスを売り込む事に成功したのだ。
日本チームのリーダー小川良典さんはこのプロジェクトに意欲を燃やしていた。
出張で訪れたバンコクで日本人としての悔しさを感じたからだった。
都市交通システムで現在運行しているのは3つの路線。
その線路や駅のほとんどは日本のODAによって造られた。
にもかかわらず鉄道の顔ともいえる車両はドイツのシーメンス社がほぼ独占している。
バンコクの鉄道システムはヨーロッパの規格が基準となっているからだ。
その牙城をいかにして切り崩し新路線に日本の車両を走らせるのか。
プロジェクトが始まった当初。
日本チームは世界に誇る技術力を前面に打ち出そうと考えていた。
最大の売りが…大量輸送を可能にする車体設計自動制御の空調設備など最新技術の粋が詰まっている。
しかしヨーロッパ規格の壁は予想以上に厚かった。
徹底的にタイ側の要求に応えよう。
小川さんは方針変更を決断した。
車両メーカーに対しヨーロッパ規格に対応するよう変更を依頼。
技術陣を粘り強く説得していった。
更にタイ側から洪水にも強い車両という条件を突きつけられると水につかりにくい小型のモーターを新たに開発してもらった。
タイ側のさまざまな要求に応えた日本チーム。
ここで日本ならではのきめ細かなサービスを提案した。
それがJR東日本が手がける緻密な車両のメンテナンスだった。
その基本姿勢は…僅かな傷でも見つかればすぐに部品を交換する。
ほかの国の車両メーカーのメンテナンスとは次元が違うとタイ側にアピールした。
そして満を持して提案したのがこれぞ日本式生活インフラといえる切り札だった。
バンコクの地下鉄駅構内の使われていない広いスペース。
ここにエキナカをモデルにした商業施設を造ろうと持ちかけたのだ。
JR東日本の収益の大きな柱であるエキナカ事業。
落札した暁にはそのノウハウを伝授するとプレゼンした。
こうして去年11月日本チームはライバルシーメンス社を破って新路線の受注にこぎ着けた。
(取材者)本気で取り組んでいくと。
要するにもはやもう快適性を追求する中間層が多いという国にエキナカがグー!…というふうになった訳ですね。
称賛に値するとまでね。
今回のタイの鉄道のケースというのはまさに日本企業が自分たちが持ってるものって何なのかっていう事を再発見していくまさにプロセスだったと思うんですよ。
日本チームは最初は山手線を持っていったけどそれはヨーロッパ規格に合わないでしょっていう事でヨーロッパ規格に合わせた車両を見事に造った。
日本にはJR東日本の緻密なメンテナンスのノウハウがあるじゃないかと。
ここで並びますね。
でも俺たちにはもっと面白いものがあるんじゃないかと。
駅を娯楽空間に変えてしまうエキナカ。
これは今回の契約に反映された訳じゃなくてあくまでもメンテナンスと車両の契約なんですがこういう形で一つのパッケージにしてまさにジャパンブランドという形で打ち出す事で今回初めて日本の車両が走り日本のメンテナンスっていうのが実現した訳ですよ。
相手から課題を受け取るという事ですね。
相手のニーズをきちっと受け止めて課題解決型のビジネスをする。
日本の強さってやっぱり課題解決能力でこういうものを作ってくれませんかって言うとめちゃくちゃ頑張りますよね日本のものづくりの人たちは。
今こういう事困ってるんだとかそれからお宅の技術を使ったらこんなものできませんかとか言われたらもう頑張っちゃう訳ですよ。
結構損得抜きでも頑張っちゃう。
これは日本ってすごいと思いますよ。
石油ショックの時も一番最初に省エネ型の産業構造を作り出した訳ですしそれから自動車についても公害が非常に出てきた時に日本の自動車メーカーがそれを突破していったから日本の自動車メーカーってトップにいけた訳で。
課題提供された時それに挑んで解決していく力っていうのはまさにジャパンブランドだと思うんですね。
僕丸紅の取りまとめ役をされてた方に「最後落札した時に何て言われましたか?」って聞いたんですよ。
そしたらタイの方はこうおっしゃったって言うんですね。
「これからタイの人たちと一緒になってこのタイの鉄道事業を育てていって下さい」って言われたっていうんですよ。
つまりものを売って終わりじゃないんですよ。
これからですよと。
一緒になってこの国の持続可能な発展をつくっていって下さい。
つまりこういう具合に我々日本人が世界に対して果たす役割っていうのが変わってきてるんだって事を強く意識する事で我々のありようをもっとおっきなものに変えていくっていうんですかね。
という事もありうるんじゃないかなと思うんですけどね。
こちらご覧頂いていいですか。
これ世界の所得ピラミッドです。
今日本式生活インフラを受け入れ始めているのが豊かさを手にした新興国などに住む中間層でしたよね。
それならば課題解決を得意とする私たちはこちら世界の72%40億人の貧困層に向けて日本式生活インフラを広げられるのではないかと思うんですね。
という事で既に動き始めた日本企業の取り組みをご覧下さい。
中国農村部のかれ果てた川。
平均年収およそ20万円という貧困の問題と並び深刻なのが水不足だ。
その問題解決に日本の中小企業が取り組んでいる。
売り込むのは格安の日本式生活インフラだ。
特殊な金属のパイプを打ち込んで枯れた井戸をよみがえらせる。
新たに井戸を掘るのに比べコストは4分の1以下。
貧しい農村でも導入できる。
社長の三村等さんは自ら中国の政府系機関に掛け合い次々と商談を成立させてきた。
現在10の地域でプロジェクトを進めている。
更にアフリカや中東で期待されている海の水を淡水化するプロジェクト。
ここでは日立造船と組み砂でろ過する技術を使った価格の安いプラント開発に挑んでいる。
一方アフリカでは日本の懐かしい生活インフラが姿を変えて導入されようとしている。
舞台はケニアの首都ナイロビ。
100万人が暮らす巨大なスラムだ。
上下水道などインフラのない劣悪な生活環境の改善が急務となっている。
そこに名乗りを上げたのが日本最大手の住宅設備メーカー。
ケニアの事情に詳しい建築家と協力してインフラがなくても暮らせる家を開発している。
名付けて…中古の太陽光パネルを使った蓄電システムや雨水をタンクにためて浄化する装置などを備えている。
中でも一番の売りは貧困層に向けて開発した…排せつ物や家庭から出る生ゴミを微生物の力で肥料に変えて活用する事ができる。
開発のヒントになったのはかつて日本のどこにでもあったくみ取り式トイレ。
現地で作る事で誰もが買える格安の値段を目指している。
すごいトイレでしたね。
すごいトイレでした。
山口さんどうご覧になりました?日本の持っているいろんな技術をしっかり仕分けして何も最先端の技術だけを欲しがってる訳じゃない訳でもうとっくにお蔵入りになった技術が実はここの国ではとっても新しくて重要かもしれないっていう技術がいくつかあるはずでどっちみちほっとく技術お蔵入りさせる技術だったらこっちに使いましょうという意味でもう一度見直すという事が一つ重要だと思う。
もう一個今の話ですごく面白いと思ったのは日本が必ずしも最先端いってる訳じゃないって事ですよね。
だから昔よくあったのは携帯電話が日本であんまり普及しないんだけど中国ではすぐ普及したと。
なぜかっていうと向こうは電話線がないからだと。
つまり何もないっていう事は実は我々の先いっちゃう可能性が十分あるという事ですね。
だから常に遅れてきている存在ではなくて実はそこに最先端が生まれるかもしれないと思ってみるといろんな意味でのビジネスマンたちの事業欲が刺激されていくんじゃないかと思いますね。
現地に行っていらっしゃった方が途上国だけじゃなくて先進国もいずれこれだけ水を使う水洗トイレって使えなくなるんじゃないかとおっしゃっているんですよ。
その時のために先に我々はこの事をこのケニアっていう大地でやらせてもらっているんだと。
いずれは先進国にそのノウハウをフィードバックして我々日本やアメリカヨーロッパこういう所でもこういうトイレが普及していけるような形に持っていくっていう。
実はこういう例を見るとやりようによってはものすごく可能性があってしかも最終的には自分たちの生活すら変えうるような技術の発見になる可能性もあるって事ですね。
その波及効果が日本に戻ってくるという意味。
日本式生活インフラっていう切り口で見るだけでいろいろ組み替えさえしたら夢が広がっていきません?そうですね。
このジャパンブランドとして日本型生活インフラの輸出ってテーマで見たんですけど新たなそれを日本の稼ぐ力にするためには何が必要か最後に山口さんは?これから必要になるのはちゃんとしたブランディング戦略だと思うんですよ。
つまりブランディングというのは自分たちのどこがすごいかをまず発見をしてしかも外からの目線で発見をしてそれをどう見える化していくか見せていく化が戦略ですよね。
その見せていく化というところが弱いと思うんですよ僕は。
例えばインドで日本の国のイメージってどうですかという調査をしたんですよね。
そしたら1つ目が先進技術を有する国というのがイメージの1番だったんです。
2番何だと思います?3番に経済力のある国ですよね?
(山口)2番に入っているのは実は平和を愛する国っていうイメージなんですよ。
それで僕はなるほどって逆に思ったんですけど。
こういういろんなイメージの中で日本っていうのはすごい国愛すべき国尊敬すべき国だというイメージが自然にあってその上に乗っかって日本の製品も高く売れてるし日本の観光客も来てるし。
私たちが一体どんなブランドイメージの上に乗っかって仕事をしてるのかという事をもう一回我々考えながらこのブランドイメージを大事にしてそれを生かす。
そういう事が必要なんじゃないかと思いますね。
海外に展開していくための鍵になるのは日本を知ってくれている海外の人たちだと思うんですよ。
例えば北九州市に至っては150か国から7,000人以上の研修生を受け入れてきた訳ですよ。
そういう人たちが母国に帰って北九州市はすごい取り組みをやっているんだよという事をきっと宣伝してくれたと思うんですよね。
つまりそういう人たちがジャパンブランドのサポーターになりジャパンブランドの伝道師になってくれる。
だからどんどん日本にそういう人たちを呼んで日本を知ってもらって日本のよさをたっぷりと詰め込みながら母国に帰って頂いて伝道師としてサポーターとして広げていってくれる。
これが実は重要じゃないかなと思いますよね。
そうなると2020年大きなチャンスですよね。
オリンピック。
日本には全く興味がないけれどもこのスポーツのファンなのでオリンピックには行く。
いわばオリンピックファンの皆さんが来る。
そこで得た体験というのは期待していない分相当インパクトがありますよね。
えっ日本って何?えっ実はこんな国だったの?こんなすごい事になってるんです。
そういう方々が伝道師となって口コミでソーシャルネットワークもありますいろんなツールが今ありますんでこれはものすごいチャンスだと思うんですよね。
日本式生活インフラはジャパンブランドとして世界で輝けるのか。
それが試されるプロジェクトが動き始めている。
去年総合商社がマレーシアで未来都市の開発を任された。
敷地面積は東京ドーム200個分。
新型交通や最新の防犯システム更に医療や福祉サービスの詰まった住宅まで。
日本式生活インフラのノウハウの粋を集めて世界最先端の街をつくろうというのだ。
日本人の歴史と文化そして知恵をパッケージしたジャパンブランド。
世界が抱える社会問題の解決に貢献しながら日本の新しい稼ぐ力となるのか。
その苦難の道のりを切り開く覚悟が今問われている。
2014/02/09(日) 15:05〜16:05
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル ジャパンブランド(2)“日本式”生活インフラを輸出せよ[字][再]
エキナカや水道、スーパー銭湯に健診車…日本人にとっての当たり前の生活インフラが今、世界で注目!日本の「新・稼ぐ力」になるか?アジア総力取材、司会はジョン・カビラ
詳細情報
番組内容
エキナカや水道、スーパー銭湯に健診車…日本人にとっての当たり前の“日本式”生活インフラが今、世界で注目! バンコクでは新都市交通の保守事業を、日本企業連合が落札。切り札は日本独特の「エキナカ」だった。さらに北九州市は、公害克服の技術をアジア諸国に普及させようと職員が商社マンさながらの営業活動で地元企業の販路開拓。果たして、日本の「新・稼ぐ力」となるか? 司会はジョン・カビラ、語りは大杉漣(俳優)。
出演者
【ゲスト】多摩大学院教授/ソフィアバンク代表…田坂広志,立教大学経済学部教授…山口義行,【解説】NHK解説委員…片岡利文,【キャスター】ジョン・カビラ,上田早苗ほか
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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