(テーマ曲)地球上空400kmを周回する国際宇宙ステーション。
人類が宇宙空間に造り出した史上最大の建造物です。
今年3月いよいよ若田光一宇宙飛行士が日本人として初めての船長に就任。
それを記念して先週に引き続き古川聡宇宙飛行士をゲストに国際宇宙ステーションを大特集。
そうなんです!国際宇宙ステーションって実は宇宙に浮かぶ巨大な実験室。
そこではすごい実験が数々行われているんです。
宇宙で解明!難病の治療薬開発に新たな突破口を発見!宇宙時代を切り開く…「ZERO」でしか見られない国際宇宙ステーションのお宝映像も続々。
宇宙に浮かぶ巨大実験室の知られざる全貌に迫ります!
(南沢)わあ!飛んできた。
お〜お〜。
この国際宇宙ステーションが宇宙に浮かぶ巨大な実験室だったなんて先週初めて知りましたよ。
(竹内)ですよね。
今若田光一さんが日本人初の船長さんに就任という事でまあ何かと注目度が高いんですが国際宇宙ステーションでホントは何が行われているのか知っている人は意外と少ないですよね。
ですよね。
(中村)そこで先週から2週にわたってお伝えしているのが…今日はですねそこで行われている宇宙実験の最前線に迫っていきます。
早速スペシャルゲストをお招きしましょう。
JAXA宇宙飛行士の古川聡さんです。
国際宇宙ステーションって地上ではなかなか作り出せない無重力状態を使っていろんな実験をするための場所なんですよね。
(古川)まさにそのとおりですね。
またその無重力という環境が体にどんな影響を及ぼすかという事も詳しくはまだ分かっていないんですね。
そういった実験を行うために我々は国際宇宙ステーションで働いています。
さあそれでは今日のお話の舞台をご紹介しましょう。
こちらです。
国際宇宙ステーションにある「きぼう」日本実験棟です。
その内部がこんな感じ。
壁にも装置みたいなのがずらっと並んでますね。
壁に実験装置があって天井と床にはいろんなシステムを保つためのものとか倉庫の箱とかがあるんですね。
全部使えるんです。
さまざまな宇宙実験の中でも日本が世界をリードしているのがこちらの3本柱。
どれも気になりますね。
さあそれでは早速こちらからまいりましょう。
地球上では決して見られない実に不思議な現象をご覧頂きましょう。
突然ですがおみそ汁を飲む時こんなもやもやっとしたもの見た事ありませんか?そう。
皆さんご存じの熱対流です。
みそ汁の表面が空気で冷やされると重くなり重力に引っ張られて下に沈みます。
これをきっかけにぐるぐると対流が起きるんです。
つまり…という事は…ところが宇宙で実験してみると…。
筒状の液体の一方の端を冷やしもう一方を温めます。
するとどうなるでしょう?あっ液体の中に入れた白い粒子が動いています!よく見ると温かい方から冷たい方へ更にその逆向きにも流れが出来ています。
重力もないのに地上と同じように対流が起きたんです。
一体どうして?教えてくれるのはこの謎の流体現象を研究する…表面張力ってコップに水を目いっぱい注いだ時水面が盛り上がるあれですよね?この時液体を内側に引っ張っている力が…実はこの表面張力温度によって強さが変わります。
鉄板に載せた水滴を温めていくと…。
温度が上がるにつれ盛り上がりが小さくなってきた!先ほどの実験でも温かい側は張力が弱く冷たい側は張力が強い。
そのため冷たい側へ液体が引っ張られ対流が起きたという訳。
それを捉えたのがあの映像だったんです。
向きを変えて筒状の液体を温かい方から見ると…。
縁の部分で液体が手前の温かい方から奥の冷たい方へと引っ張られているのが分かります。
このマランゴニ対流地上では重力で起きる熱対流に紛れて直接見る事はできません。
この映像は無重力の宇宙空間だからこそ捉えられた貴重なものなんです。
更に条件を変えると見た事がないような不思議な現象も現れました。
マランゴニ対流が起きている…なっ何だこりゃ〜!波打つような不思議な流れに変わりました。
地上では見る事のできない液体のまか不思議な現象。
無重力の宇宙でついにその姿を現したのです。
面白い!あんな動きした液体見た事ないですよ。
不思議なのはこれそもそも…彼は…ところが地上では熱対流の影響が大きすぎてマランゴニ対流を観察する事ができなくて長年謎だったんですね。
それを解明すべく…そして2016年まで実験が続けられるんですね。
大研究ですね。
古川さんはこのマランゴニ対流の実験をされたんですよね。
宇宙空間でこの奇妙な動きを見たんですか?実は実験をしている最中には見てないんです。
というのは実験する最中は扉を閉めてしまいますもので見られないんですね。
そのためクルーが寝ている夜間行うんです。
夕食食べる時に仲間に「今夜はマランゴニ対流の重要な実験があるからなるべく早く寝てね」と。
「どうしても寝ない時は静かにしててね」というような事をお願いしてました。
すごい。
そんなささいな動きも影響しちゃうんですね。
そうなんです。
この対流の事が詳しく分かると科学的成果以外の事に何か役立つ事があるんですか?はい。
地上でも高性能の半導体などが固めて結晶化する時にさっきご覧頂いた揺れるような流れあれが生じてしまうとこの結晶が乱れて機能が落ちてしまうんですね。
さあ続いては第2の柱。
え〜?宇宙で治療薬ってちょっと意外な組み合わせですね。
この難病は筋ジストロフィーという病気なんですね。
あっ聞いた事あります。
治療法とかはないんですかね?残念ながら今のところ治療薬はないんですね。
ただ宇宙実験を足掛かりにこの治療薬開発に向けて研究が進んでいるんですよ。
医者の宇宙飛行士として私もこの研究に期待しています。
楽しそうにテレビゲームで遊ぶ兄弟。
車椅子生活の2人は共にデュシェンヌ型の筋ジストロフィーという病気を抱えています。
根本的な治療法がいまだない難病です。
兄の大地くんが4歳の頃両親が体の小さな異変に気付きました。
病院で検査を受けた結果診断はデュシェンヌ型の筋ジストロフィーでした。
その後大地くんが成長するにつれて筋肉の萎縮もまた進んでいきました。
自分で歩く事ができなくなり8歳の頃から車椅子で生活するようになりました。
伸びないんで伸びないなりですけど多分同じかちょっと低いくらいの身長だと思いますんで。
大地くんの筋肉は今も萎縮を続けています。
しかし残念ながらこの病気に対する治療薬はまだありません。
ところがその治療薬の開発につながる重要な成果が今宇宙実験から得られているんです。
その研究に携わるのは筑波大学の裏出良博さんです。
難病の薬と宇宙一体どうつながっているんでしょうか?研究のきっかけとなったのは裏出さんが筋ジストロフィーの患者の尿から見つけたある物質でした。
健康な人の尿に比べ患者の尿には数十倍も多く含まれていました。
裏出さんはこのプロスタグランジンDが筋肉を萎縮させる主な原因物質である事を突き止めたのです。
実はこの物質体内のあるたんぱく質によって生み出されています。
このたんぱく質にいわばカギのような物質がはまるとプロスタグランジンDが作られます。
ならば同じ形をした偽のカギを作って先にはめてしまえば本物のカギがはまらなくなりプロスタグランジンDは作られないはず。
この偽のカギこそが筋ジストロフィーの薬になると裏出さんは考えたのです。
そのためには…そこには大きな壁がありました。
これは地上で作った問題のたんぱく質の結晶です。
どれも形がばらばらで不完全なものばかりでした。
なぜでしょうか?実は地上だと結晶が出来る過程でたんぱく質の構造が重力に引っ張られゆがんでしまうのです。
これでは正確なカギの形が分かりません。
そこで考えたのが無重力の宇宙空間で結晶を作る方法です。
2011年その宇宙実験を行ったのが古川聡宇宙飛行士でした。
液体に溶かした問題のたんぱく質を実験装置にセット。
無重力の中で結晶を作り出します。
出来上がった結晶は地球に帰還するロシアの宇宙飛行士に手渡されました。
国際宇宙ステーションから持ち帰った実際の結晶がこの中に入っています。
顕微鏡で見てみると…。
どの結晶もきれいな形に成長していました!先ほどの地上で作った結晶と比べるとその違いは歴然です。
このきれいな結晶を解析した結果ついに筋ジストロフィーの薬となりうるカギの形が突き止められたのです。
裏出さんはこのカギの形をした物質を作り出しました。
それがこの薬。
早速実験で効果を確かめました。
その映像です。
左の犬には薬を与え右の犬には薬を与えていません。
1か月後の様子を見ると…。
まだ症状があまり進んでいないため2匹に大きな違いは見られません。
ところが11か月後…。
薬を与え続けた犬は元気に走れるのに対し薬を与えられていない犬は症状が進み途中で止まってしまいました。
この薬確かに筋肉の萎縮を抑える効果を示したのです。
今裏出さんが開発した薬を基に人での治療に使えるような新薬の開発が急ピッチで進められています。
小さい頃から絵を描く事と宇宙が大好きな柿本大地くん。
ノートには自分で考えた宇宙基地などの絵がたくさん描かれています。
来年は高校受験。
大地くんは毎日1人で中学校に通い勉強に励んでいます。
今回VTRにも出ていた柿本大地くんから古川さんへの手紙を預かっているのでちょっと読ませて頂きますね。
はい。
お願いします。
「古川さんへ。
こんにちは。
質問は宇宙から帰ってきたとき重力になれたりするためにどれぐらいリハビリをしたんですか?薬のことについては完成してすぐに使えるようになったらいいなと思っています。
柿本大地より」。
お手紙ありがとうございます。
私もホントに毎日汗だくになりながらリハビリしてたんですけど……けどなかなか大変ですね。
大地くん宇宙が好きでその宇宙でその薬の実験が行われているっていうのはうれしいかもしれないですよね。
地上でもこれまでいろんな薬が作られていますよね。
そういった薬との何か違いというのはあるんですか?うまく成果が出るといいですよね。
そうですね。
研究の段階でいろいろ踏んでいくステップというのはあるんですけども早く実用化してほしいとお祈りしています。
最後はいよいよ第3の項目。
未来の食料って何だろう?我々が毎日食べているあれですよあれ。
毎日食べているあれ?以前「サイエンスZERO」でもお伝えした驚きの火星移住計画マーズワン。
宇宙船で火星に降り立ちそこに永住するという壮大なプロジェクトです。
もしこんなふうに人が宇宙で暮らすようになったら大きな問題となるのが食料ですよね。
とはいえ火星の重力は地球のおよそ1/3。
1998年宇宙飛行士の向井千秋さんがスペースシャトル内の無重力環境でイネを栽培する実験を行いました。
普通地上では根は下へ茎は上へと伸びていきますよね。
ところが無重力だとこのとおり。
根や茎がてんでんばらばらな方向に伸びちゃいました。
実はこれイネが重力の方向性を感じられなくなったために起きた現象なんです。
更に詳しく調べると宇宙で育ったイネでは…それは?細胞壁とは植物の細胞の外側を覆っている丈夫な壁のようなものです。
この細胞壁がいわば骨のように植物を支えてくれるからこそ重力に逆らってまっすぐ育つ事ができるんです。
そんな大事な細胞壁がなぜ無重力状態では弱くなってしまったんでしょうか?それを解明するために今度は国際宇宙ステーションでもイネを育てる実験が行われました。
芽が出たイネを持ち帰り茎に含まれる成分を詳しく調べます。
その結果細胞壁の「ある成分」に変化が起きている事が分かったんです。
ジフェルラ酸は細胞壁を頑丈にするいわば補強材となる物質である事が知られています。
宇宙で育てたイネと地上で育てたイネのジフェルラ酸の量を比べてみると…。
実験を始めて4日目までは同じでしたが5日目になると宇宙で育てたイネのジフェルラ酸の量が少なくなっていたんです。
若林さんは細胞壁が何らかの形で重力が弱い事を感じ取りジフェルラ酸の量を減少させたのではないかと考えています。
人間が宇宙で暮らす未来のために…。
宇宙実験は重力が生物に与えるさまざまな影響を解き明かそうとしているのです。
宇宙で農業か。
ね〜。
確かに宇宙で住むにはそういう問題も考えていかなきゃいけないですよね。
人類が宇宙に進出していくとなると宇宙での植物栽培っていうのがとても大切になるんですね。
そういった時に月とか火星という地球よりも重力が少ない所で植物がどう育つかそういった事を知るのはとても大切だと思います。
まさにそうですね。
まさに昔見た漫画の火星人です。
うわ〜進化か…。
古川さんのお話聞いてたら何か人間は宇宙に飛び出す運命にあるみたいな事をちょっと感じたんですけど…本質的な質問ですね。
もう一つは視野が広がるっていう事ですね。
すごく私自身不思議に思ったのは…そうやって地球規模で考えられるようになると戦争とかねそういったものも減るかもしれないですよね。
そのとおりですね。
宇宙飛行士になるためには一番何が必要ですか?そういった事ができる事が大切なんじゃないですかね。
へえ〜。
確かに映像見ててもすごく仲が良さそうでしたよね。
はい。
ケンカは基本的にしません。
無重力で殴り合いのケンカをするとどうなると思いますか?どうなるんだろう?そんな事しないですけどもししてしまうと相手を殴ったのと同じ力で自分も飛ばされるので。
あ〜できない?できないです。
そんな事をしたらとんでもない事になる。
ですからしてはいけないんです。
なるほど〜。
想像つきませんもんね。
やっぱり宇宙の無重力空間って。
実際に行かれた古川さんに直接お話伺えたっていうのがすごいホントに貴重な時間だったなと思いましたね。
実感しちゃいましたもんね。
「すごいや!」って感じで。
古川さん2週間にわたりありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/03/09(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「国際宇宙ステーション大特集」(2)[字]
3月9日に若田さんが船長に就任する国際宇宙ステーションの大特集!難病の治療薬開発から未来の食糧問題解決まで、様々な恩恵をもたらす宇宙実験の最前線に密着する。
詳細情報
番組内容
3月9日に若田さんが船長に就任する国際宇宙ステーション。宇宙飛行士と地上の科学者とのコラボレーションによって、毎日さまざまな科学実験が行われている。その成果が、最新医療や産業、食糧問題にまで重要な恩恵をもたらしていることは、あまり知られていない。難病の患者さんを救う新薬の開発や、高性能な半導体製造技術などと宇宙実験との知られざる結びつきを、特別ゲスト・古川聡宇宙飛行士とともに、とことん探っていく。
出演者
【ゲスト】宇宙飛行士…古川聡,【司会】南沢奈央,竹内薫,中村慶子,【語り】江藤泰彦
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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