もしも所属する組織の不正を知ったら身を持って立ち上がりその不正を正す勇気を持てるだろうか
巨大な組織に一人立ち向かった男がいる
…という思いはありました。
男は信念に誓って何があっても諦めなかった
正義を貫いた自衛官の闘い
今から10年前
…が自殺した
ホームには先輩隊員を名指しした遺書
人形の頭と胸に何かで突き刺した穴が開けられていた
Tさんは子供の頃から明るく元気なスポーツマンだった
趣味はギター
ロックバンド「GLAY」の大ファンだった
得意の英語を生かして国際貢献がしたいと…
4か月もの厳しい教育訓練
一日も休むことはなかった
希望に満ちていた
そして横須賀基地の…
戦闘指揮を行う部隊の一員となった
入隊当時の手帳には喜びの言葉が並ぶ
しかし『たちかぜ』に乗って間もなく…
その言葉を最後に手帳は真っ白
自殺前夜親友だった自衛官の男性はTさんから飲みに誘われた
いつもと様子が違ったという
親友は自殺をやめるよう説得を続けた
Tさんは「明日はやめる」と帰って行った
しかし翌朝死を選んだ
う〜ん…。
自殺した駅のホームには遺書が残されていた
遺書は感謝の言葉であふれていた
しかしその文字が突然乱れ始める
先輩隊員を名指し
人形が描かれ頭と胸には穴が開けられていた
大切な息子の自殺
(Tさんの母)それは全く…予測もしてなかったっていうか。
(Tさんの母)大切な家族を置いて行くような子じゃないって思ってた…。
ホント信じらんなかったですよ。
『たちかぜ』艦内で何があったのか
先輩隊員に何をされたのか?
両親は息子の自殺に関する調査資料を情報公開請求した
しかし出て来たのは…
黒塗りの文書およそ90枚
隊員達が話した内容が防衛機密という理由で黒く塗りつぶされていた
両親は真実を知りたいと…
隊員の証言を集めるうちに明らかになって来たのはエアガンでの暴行や恐喝
遺書に名指しされた先輩隊員Sから息子は標的にされていたという
弁護団はエアガンの威力を検証するためほぼ同型のもので実射実験を行った
・電動ガンは『R.A.SMP5』・
(機銃音)
自殺前夜を共にしたNさん
他の人が…。
狭い艦内では逃げ場もなかった
希望に満ちていた息子はどんな絶望を味わっただろうか
両親は調査を重ねて来た
息子が暮らしていた横須賀の町
借りていた部屋にも何度か足を運んだ
その中で同僚の隊員から1つの手掛かりをつかんだ
自殺後に自衛隊は『たちかぜ』全乗組員にアンケート調査を行っていた
すぐに父親が『たちかぜ』の艦長に電話してその内容を知りたいと求めた
すると…
艦長さんから「アンケートは破棄してないから」ということでそういうお返事を頂いてその時主人がすごく怒ってたっていうその記憶がすごく鮮明に残ってて「何で破棄するんだ」っていうことをすごく強く言ってました。
開示されたのは記入前の紙フォーマットだけだった
右肩には「用済み後破棄」の文字があった
自衛隊からは「記入済みのアンケートは調査報告書の完成と同時に廃棄した」と説明された
アンケート結果を基に作成されたその調査報告書
そこには「Sの私的制裁等及び恐喝がTさんの自殺と関連しているとの供述は得られなかった」…とまとめられていた
「Tさんの自殺はSの暴行が原因だ」…と主張する遺族側と「そうではない」と主張する自衛隊側
法廷では真っ向から争う形になった
裁判を支援する集会で父は人々に訴えた
息子の自殺から5年
父は持病を悪化させて亡くなった
裁判のストレスも加わり日に日に衰弱して行ったという
判決の日
21歳で命を絶った息子
判決を待たずに亡くなった夫
母は2人の無念を晴らしたい
下された判決は…
・弁護士が出て来ました弁護士が出て来ました・・「不当判決」と書かれています「不当判決」と書かれています・
その一方…
自衛隊の自殺に対しての責任は認めなかった
母はすぐに控訴を決めた
遺族側の弁護士の元に1通の手紙が届いた
(岡田弁護士)これが現物だよね。
今親展ということで送られて来て。
彼がもう冒頭自分を名乗ってるわけです。
「私はかつてたちかぜ裁判で国側代理人を務めた3等海佐です」…っていうのでもうこれ見てびっくりした。
法廷で自衛隊側の代理人つまり弁護士役を務めた3等海佐からの手紙だった
3等海佐とは自衛隊では幹部クラスに当たる
「防衛省・海上自衛隊はいくつかの文書を原告側に隠しています」
「国民への忠誠心と嘘はつきたくないという気持ちの狭間で藤に苦しんでいます」
「どうすればいいのか相談したい」
最後に連絡先が記されていた
最初はホント何か俺の情報…こっち側の情報を何か取りに来る手段なのかなと。
まず最初よ。
「自衛隊が文書を隠している」という告白
手紙を出した3佐に話を聞くことができた
…という思いはありました。
「自衛隊は文書を隠している」
弁護士に手紙を出した幹部自衛官は静かに語りだした
3等海佐は2006年に裁判が始まった当初自衛隊側の弁護士役を務めていた人物だった
裁判が終わった直後海幕の…。
それはどういうことか?
(スタッフ)資料を集めてる過程で…。
アンケートとはSの暴行の調査のために隊員達が書いた直筆のものだった
ある事務官が持参した分厚いファイルの中に綴じられていたという
3佐はこの時自衛隊の嘘に気付いた
やがて3佐は定期異動により裁判の担当から外れた
しかしアンケートが存在することがずっと心に引っ掛かっていた
アンケートの存在に気付いて2年ついに3佐はある行動に出る
これは…。
もしかしたら…。
3佐がとった最初の手段は公益通報
防衛省の通報窓口にアンケートの存在を訴えた
公益通報とはいわゆる内部告発の一種
通報したことで不利益な扱いを受けないようにするために公益通報者保護法が定められている
3佐はこの制度を勉強し熟知した上で通報に踏み切った
しかし防衛省からの回答は…
その2年半後
あの判決の日を迎える
その日ちょうど一審判決の日…。
だから…。
判決が出る30分前3佐は居ても立ってもいられず2つ目の行動に出る
自衛隊の裁判全般を取りまとめる首席法務官を訪ねた
2人は向かい合って座った
3佐はその時の録音を残している
組織に逆らえば不利益を被るかもしれない
自らを守るための手段だった
「今さらどうしようもない」という首席法務官
このやりとりについて自衛隊側は取材に対し…
…と回答している
3佐が説得を行った10分後
アンケートは破棄されたことになったまま一審判決が下された
判決を知った3佐はその日のうちに3つ目の行動に出た
「もう一度自分が請求すれば自衛隊は今度こそ出すのではないか?」
しかし回答は「用済み後廃棄」
何も変わらなかった
4つ目の行動は判決の1週間後岡田弁護士を驚かせたあの手紙だった
「自衛隊は文書を隠しています」
組織内で手を尽くした3佐は初めて外部への接触を試みたのだ
その知らせを受けたTさんの母は…
自殺の真相を握る直筆アンケート
遺族側は控訴審の法廷でもう一度アンケートの存在を問いただした
しかし自衛隊側は相変わらず…
「用済み後廃棄」
「存在していない」と言い続けた
一方国会でもアンケートについて質問が飛んだ
廃棄の具体的な日時はいつなのか?廃棄は誰の指示あるいは責任でなされたのか?誰がいつというお話でありましたが現段階でそれは承知をしておりません。
ただしこの当該アンケートにつきましては右上の部分に「用済み後破棄」と記載がされているところでありまして一般事項調査結果が完成された時点で…。
「用済み後廃棄」を繰り返す自衛隊
もう裁判所に働き掛けるしかない
3佐はそう覚悟を決めながらも所属する組織に最後の望みを懸けた
前回の法務官は異動で変わっていた
その時の録音
正義は届くのか?
文書隠しを公に訴えようとする直前3佐は上官の最後の説得に訪れていた
アンケートを正直に出してくれるのなら裁判所に働き掛けるのはやめよう
3佐は最後の望みを懸けた
しかし首席法務官から連絡はなかった
このやりとりについても自衛隊側は取材に対し…
…と回答している
この2日後3佐は最終手段に出た
東京高等裁判所へ実名で22ページの陳述書を提出
「アンケートは破棄したことになっている」…と言われたこと
しかしアンケートがあることに気付いたこと
当時の担当者の名前を出し克明につづった
最後のページは自衛隊に向けられていた
「ことを認め…」
意を決して提出した陳述書
しかし自衛隊は裁判所に対しなおも誤った事実認識に基づくと主張
嘘つき同然の扱いだった
万策尽きた
陳述書を出した2か月後事態は急転する
…が異例の臨時会見を開きアンケートが見つかったと謝罪したのだ
これが7年もの間眠っていた『たちかぜ』…
先輩隊員Sが隊員達に対し日常的に暴行を加えていたことが明らかになった
その上でそして実際…。
Tさんの自殺の原因を解明するための証拠がようやく手に入った
新たに提出されたのは…
厚さ17cmにも及んだ
アンケートにはTさんが受けていた暴行についても複数の目撃証言があった
また隊員の聞き取り調査結果からはこんな証言も出て来た
「Tさんは…」
Tさんと自殺前夜を共に過ごした…
自分のアンケートを確認しに弁護士事務所を訪れた
・それですかね?・
(Nさん)はい。
「エアガンでしつように打つ」の文字
…も出て来た
そこに書かれていたのは自殺前夜のTさんとのやりとりだった
存在しないとされていたアンケートがなぜ出て来たのか?
自衛隊によればその理由は…
「行政文書として管理せず個人的な執務の参考資料としたため情報公開請求では発見できなかった」
つまり…
…と結論づけたのだ
今自衛隊員の自殺が後を絶たない
理由はさまざまだが2012年度は83人が自殺
一般の国家公務員の自殺率の2倍以上
4〜5日に1人のペースだ
過去19年の自殺者は1500人に達した
そのうちの1件が1999年…
…で起きた
21歳の隊員が艦内で自殺をした
複数の上官からひどい暴言を受け続けていたことが明らかになった
母親の…
自衛隊を相手にいじめ自殺の責任を問う初めての裁判を起こした
(樋口さん)でも許せないですねやっぱり。
本当に。
2008年二審で逆転勝訴
(拍手)
判決は…
直属の上官は監督責任を怠ったとし自衛隊に自殺の責任があると認めた
今自殺した隊員の遺族が同様の裁判を起こすケースが全国で増えている
3等海佐が「自衛隊は文書を隠している」と訴えた
そのことがメディアで報じられると当時の上官から圧力を受けたという
新聞に3佐の記事が掲載された日当直の報告に行くと上官はその記事を手に話し掛けて来た
3佐は自分を守るためにこの時も録音をしていた
(ICレコーダー:3佐)あの…。
(ICレコーダー:3佐)それで…。
(ICレコーダー:3佐)はい。
この上官に取材したところ3佐の上司であったことは認めたもののやりとりの有無については「何も知りません」と繰り返した
去年6月自衛隊から3佐に届いた被疑事実通知書
懲戒処分の検討が始まるという
3佐は裁判所にアンケートの存在を裏づける内部資料のコピーを提出していた
そのコピーを持ち出したことが文書管理上不適切だという
処分はまだ出ていない
取材に対し…
…と回答している
処分があれば3佐は断固として闘う覚悟だ
今も組織にとどまり現役を貫いている
勤務を終えた3佐は遺族側との打ち合わせに臨んだ
3佐が次回の法廷で証言することが決まったのだ
自殺の責任を争点として始まった裁判は組織による隠蔽をも問うことになった
現役の幹部自衛官が所属する組織の隠蔽を自らの言葉で訴える異例の証人だ
母はかつて3佐から言われた言葉が忘れられないという
初めてお会いした時に最後に言われたんですよ。
3佐は信念を貫くために法廷に立つ
3佐が証人として法廷に立つ日
(3佐)やっぱり不安もあるし緊張もあるしとても落ち着いてるとは言えない状態ですね。
裁判所には傍聴券を求めて人々が詰め掛けていた
Tさんの母も期待が高まる
法廷は遺族側弁護士の質問から始まった
3佐は一貫して「アンケートは隠蔽された」と証言した
拳をしかと腰の両側に構えたままそれは闘う自衛官の姿だった
(3佐)率直な感想を言わせていただけば…。
その気持ちのほうが強いです。
証言を終えて3佐は晴れやかな顔をしていた
(スタッフ)明日職場行くの怖くないですか?
(3佐)いやもう…何か不思議なものでですね私のことを懲戒処分にしてやろうとかいきんでる上層部がいる一方で私の同僚なんかは自然に接してくれるんでまぁ普通に仕事しているような状態なんですよ。
不思議なもんでね。
多分明日も変わらない一日が来るような気がします。
組織的な隠蔽ではないのか?
あらためて海上自衛隊の見解を尋ねた
このアンケート事案が発覚しました段階で調査をいたしました。
その結果「隠蔽ということではない」と。
あくまでも業務の不適切からこういう結果になったという結論を得ておりますので我々としては隠蔽とは考えておりません。
判決前最後の法廷が開かれた
息子が亡くなって9年の歳月が過ぎていた
母は今も変わらない悲痛な思いを訴えた
「自衛隊の実態を知れば知るほど息子が自衛隊という組織に殺されたんだという悔しさと怒りでいっぱいです。
息子の無念の思いを私は親として何としても晴らさなくてはなりません。
3佐の勇気ある告発は大きく心を動かされた出来事でした。
正義を貫かれる方が自衛隊にいるということが私達にはこの上ない大きな励みになっています」。
「いじめによる自殺という悲しい出来事が今後繰り返されないようにするためにどうか大切な息子の命を無駄にしないでください」。
「私の残された人生を前を向いて歩んで行ける力を頂ける判決が下されることを私は心から信じています」。
最後の訴えを終えて母は息子と夫の墓前に報告に訪れた
自殺の責任は自衛隊にあるのか
証拠は隠蔽されたのか
…に下される
一人の自衛官が巨大組織に立ち向かった
(3佐)失礼します。
正義の前に横たわる深い闇
光を当てなければ闇は永遠に晴れることはない
おめでとう〜!
津波で大切な家族を失いました
あの日から3年親代わりになったおば
震災遺児は今…
2014/02/24(月) 00:50〜01:45
読売テレビ1
NNNドキュメント「自衛隊の闇 不正を暴いた現役自衛官」[字]
組織の不正を知った男が立ち上がった。いじめによる隊員の自殺で自衛隊の責任が問われている裁判。現役の幹部自衛官が「自衛隊は重要文書を隠蔽している」と不正を暴いた。
詳細情報
番組内容
所属する組織の不正を知ってしまった男が立ち上がった。いじめによる隊員の自殺で、自衛隊の責任が問われている裁判。現役の幹部自衛官が「重要文書を隠蔽している」と組織の不正を暴いたのだ。苦渋の決断だった。自衛隊は「文書は破棄した」と説明してきたが一転、200点の文書が開示された。「私は組織に対してではなく、法の正義と国民に忠誠を尽くしたい」今なお組織に留まり、一人、正義のために闘い続ける自衛官を追った。
出演者
【ナレーター】
二又一成
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