地球ドラマチック「動物はどこまで賢いのか?」 2014.02.24

ニール・ドグラース・タイソンです。
これから皆さんを興味深い科学の世界にご案内しましょう。
テーマは「動物はどこまで賢いのか?」です。
イヌのチェイサーは数多くの単語を知っています。
このおもちゃの名前を全部?今イヌたちは類人猿でもできない難しい課題を次々とやってのけ研究者の注目を集めています。
(ブライアン・ヘア)本当に優れた動物です。
ザリガニを見つけて。
イヌを研究すれば人間への理解も深まります。
すごいな!よくできた!賢い動物は海にもいます。
おなじみのイルカです。
記号を読み取りおしゃべりも楽しんでいます。
(テリー・ボルトン)これがクリック音よ。
(スタン・クチャイ)ホイッスル音は単語なのか文章なのか。
イルカの言葉はまだ解明できていませんがこれなら…もっと簡単に話ができるかも。
(アイリーン・ペパーバーグ)これは何?人間の5歳児並みでした。
類いまれな能力を持つオウムのアレックス。
何個?30年間私の人生の中心でした。
なあに?おいしいのをあげるわ。
(アーリン・レヴィン)「本当にオウム?」って感じでした。
コミュニケーションできました。
何が違う?ダーウィンを見つけて。
チェイサーはダーウィンを知りません。
見どころが…。
それでは番組をお楽しみ下さい。
擬人化された動物のキャラクターはもはやおなじみです。
いい子だね〜。
映画や漫画には人間のように振る舞い言葉をしゃべる動物がたくさん出てきます。
皆さんもよくご存じでしょう?ペットが人間のような思考や感情を持っていたらと思うとワクワクします。
でも研究者たちは動物の知性に対して懐疑的でした。
私たち人間は読み書きができ宇宙船を造りパズルを解く事もできますが動物にそこまでの能力は無いからです。
しかし最近のさまざまなテストによって動物の知性について驚くような結果が得られています。
特に優秀な成績を収めているのがおなじみのあの動物です。
この子はすばらしい特別な存在です。
強い絆で結ばれています。
本当に賢いイヌです。
人間そっくりですよ。
誰よりも私の事を分かってくれています。
昔からイヌを飼っている人はイヌの賢さについてよく知っていましたが研究者たちも最近ようやくそれに気付き始めました。
新たな研究結果からイヌは思った以上に賢くまた人間と同じように柔軟な思考をする事も分かってきました。
82歳のジョン・ピリーは心理学の教授だった時にイヌの研究を始めました。
今はチェイサーと名付けたとても賢いイヌを飼っています。
チェイサーは6歳になるメスで優れた牧羊犬として知られるボーダーコリーという種類です。
スコットランドの山々がふるさとです。
ヒツジの番をするイヌです。
ジョンはチェイサーにある群れの番をするように教え込んでいます。
ただしそれはヒツジの群れではありません。
1,000個ものおもちゃの群れです。
名前を全部覚えてる?多分ね。
これがセーラー?ジョンはおもちゃ一個一個に名前を付けその名前をチェイサーに教え込みました。
ゾウは12頭います。
番をするのは人形だけではありません。
おっとこりゃわしのパンツだ。
パンツって…。
いやこれもおもちゃなんじゃよ。
ジョンによればチェイサーはこの山のようなおもちゃ全ての名前を覚えています。
本当だとしたら驚異的な事です。
1,000個全てについて調べる時間はないのでそのうちのいくつかをランダムに選びテストする事にしました。
選ぶところが見えないようジョンとチェイサーは家に入ります。
この中からいくつかを選びチェイサーがそれを識別できるかどうか調べます。
ジョンとチェイサーが部屋に入る前におもちゃをソファーの後ろに並べます。
インキーにラヴァー。
いよいよテスト開始です。
準備完了。
よしチェイサー一緒に遊ぼう。
チェイサーインキーを見つけて。
正解。
次はシール。
2問目も正解です。
よ〜し次はシュガーだ。
ランダムに選ばれた9個のおもちゃでテストをしたところ全て正解でした。
チェイサーも飼い主のジョンもおもちゃが選ばれるところは見ていません。
ジョンはこのようなテストを既に何度も行っていますがチェイサーは常に満点を取ってきました。
おもちゃ1,000個の山なんてちょっと不気味じゃないですか?わしゃ楽しいよ。
(ジョン)並外れた記憶力です。
チェイサーをはじめとするボーダーコリーは数百の単語とその意味を覚えられる事が分かっています。
しかも新しい単語をあっという間に覚えてしまいます。
この能力は他の動物と比較してどうなのでしょうか。
ヒト以外ではチンパンジーやボノボなどの類人猿が最も優れた言語能力を持ち手話を覚える事もできますがそれにはかなりの時間が必要です。
他にも類人猿よりイヌの方が良い成績を収めるテストがあります。
人間の子供は1歳から1歳半くらいになると大人が指さす方向を見たりそちらに行ったりできるようになります。
ちょうど言葉を覚える頃と重なっています。
霊長類の研究者であるブライアン・ヘアはチンパンジーやボノボなどの動物を使ってこのテストを行いましたが結果はさんざんなものでした。
本当に苦戦しました。
僕が手助けをして何とか食べ物の場所を教えようとしているのにこちらの指示を全く理解できないんです。
チンパンジーやボノボは非常に高度な問題を解決する能力があるのでこの結果は意外なものでした。
ブライアンはこのテストについてはむしろイヌの方が優れているのではないかと考え同じテストをイヌに対して行ってみました。
(ブライアン)思ったとおりイヌはこのテストが非常に得意でした。
「そこにおやつがあるぞ」と教えると指示を理解してすぐそちらに走ります。
イヌには特別な能力がある事が分かりました。
このようなイヌと類人猿の違いはどこから生まれてくるのでしょうか。
イヌは僕をパートナーとして捉え僕を必要としています。
それに対してチンパンジーやボノボは僕を必要としていません。
「この人間何か食べ物くれるかな?駄目か。
じゃあ仲間の所へ行くよ」という感じです。
僕を喜ばせようなんて気は全くありません。
イヌは喜んで人間に協力してくれるため理想的な研究対象となります。
チンパンジーやボノボはイヌよりも大きな脳を持つ動物です。
しかしブライアンはいくつかの点でイヌの方が人間に近い社会的知性を持っているのではないかと考えています。
そこでブライアンたちはイヌの認知能力の研究室を立ち上げました。
イヌの知性を研究する事で我々人間への理解も深まります。
真剣ですね。
集中してます。
(ジョン)すごい動物です。
ではイヌの知性はどのようにして形成されたのでしょう。
イヌはオオカミから進化しました。
その過程で脳に決定的な変化が起き人間に対して細心の注意を払えるようになったのではないかとブライアンは考えています。
イヌは長い年月を経て飼いならされる間に人間の社会的な合図を読み取れるようになり人間と共に生き残ってきたんです。
ニールは動物学者のクライヴ・ウィンと共にインディアナ州にあるオオカミのテーマパークを訪れました。
ここには生まれた時から人間に育てられた世界で最もおとなしいオオカミたちがいます。
それでもオオカミの近くにいる時は十分に注意しなくてはなりません。
(クライヴ)オオカミの社会は今もかなり荒っぽいものですし強力な顎も持っています。
もしオオカミが食べ物をめぐって人間と対立していると判断したら人間に深刻な危害を加える可能性があります。
イヌと比べるとオオカミは人間に対して感情的にとても激しい反応を示します。
それが品種改良を経て人間に興味を持ち我慢強く接するようになったんです。
イヌはオオカミよりもずっと気性が穏やかです。
そのような我慢強い性質を獲得した事で人間に注意を払い指示に柔軟に従えるようになったのだとブライアンは考えています。
ジョン・ピリーの愛犬チェイサーはその良い例でしょう。
チェイサーは新たなテストを受ける事になりました。
これを持ってきました。
チャールズ・ダーウィンの人形です。
ダーウィンの人形を他のおもちゃ7個と一緒に並べます。
チェイサーはダーウィンを見た事がないし名前も知りません。
推測によって初めて見るダーウィンを選び出せるかどうかというテストです。
チェイサーおいで!また遊ぼう。
まず知っているおもちゃを見つけさせます。
シュガーだ。
よ〜し正解だ!その箱に入れて。
次はザリガニ。
よ〜しよくできた!また入れて。
ここからが本番です。
次はダーウィン。
他のおもちゃはすぐに見つけられましたが今回は初めて聞くダーウィンというのがどれなのか考えているようです。
時間がかかっています。
一度呼び戻す事にしました。
チェイサー。
ダーウィンを見つけて。
ダーウィンだ。
ダーウィンだ!よくやった!見事に正解を出しました。
そうだよそれがダーウィンだよ。
チェイサーは聞いた事がない名前と見た事がないおもちゃを結び付ける事でダーウィンを選び出したのです。
このような事ができるイヌはチェイサーだけではありません。
更に新しい名前と新しいおもちゃの結び付きを覚えておける事も分かっています。
つまりこういった経験を通じて知識を増やしていけるという事です。
(ブライアン)イヌが新しい単語を覚える過程は興味深いものです。
こういう学習方法は人間に特有のものだとかつては思われていました。
でもそれは間違いでイヌも人間と同じように新しい言葉の意味を推測しそれを長い間覚えておけるようです。
イヌが見せる柔軟な思考は人間の子供が見せるものとよく似ているように思えます。
イヌは科学的な研究対象としては長い間見過ごされてきました。
しかしこのおなじみの動物が学習の仕組みや知性の進化を探る大きな手がかりを与えてくれるのではないかと期待が高まっています。
動物がすごい事をやってもそれが単なる芸なのか本物の知性なのか簡単には判断できません。
単に命令に従っているのかそれともより深く理解しているのか。
研究者の重要な課題はそれを見分けるテストを考え出す事です。
次のコーナーではリポーターがカリブ海を目指します。
芸達者な海の動物イルカがどこまで自分でものを考えているのかを探ります。
リポーターのダグ・ハミルトンが向かったのはアンソニーズ・キーというカリブ海の美しいリゾートです。
ここにはイルカの学校とも言うべき施設があって24頭のバンドウイルカが暮らしています。
イルカのトレーナーテリー・ボルトンがイルカと仲良くする方法をダグに教えています。
指を立てて。
指を。
(テリー)魚を持ったら口の中へそっと落とすの。
上出来よ。
歯がたくさんありますね。
(テリー)でしょ?イルカたちは身につけた芸を披露するのがうれしくてたまらないように見えます。
準備はいい?じゃあいくわよ。
始め!
(テリー)イルカはすばらしい動物です。
とても賢くて好奇心でいっぱい。
私たちの役割はイルカの学習意欲を高める事です。
イルカが訓練を幸せな気分で始め幸せな気分で終えるよう心掛けています。
大事なのは褒めて育てる事。
まるでイヌと遊ぶ時みたいにイルカを励ましているように見えますが。
自分の子供のように励ましています。
イルカもそれに反応しているのが分かります。
目が輝いて鳴き声が明るくなるんです。
私たちが喜ぶとそれに反応もしてくれます。
イルカの世界を知るには実際にその中に飛び込んでみるのが一番です。
(テリー)イルカは海での生活に見事に適応しています。
海の中で遊び創造的な作業をし問題を解決できるレベルまで進化しているんです。
イルカの賢さを解明する上で問題となるのはイルカの住む世界が人間の住む世界とは全く違うという事です。
しかもイルカの脳には私たちには無い能力があります。
それを証明するためのテストが行われました。
ダグが海底にリングを埋めます。
これを人間が見つける事はまず不可能でしょう。
任務完了。
あれは見つけられないよ。
テリーは最年長のオスパイヤを選びました。
テリーがパイヤにリングを見つけるよう命じます。
パイヤがクリック音と呼ばれる音を出しています。
(テリー)一生懸命探してるわ。
このクリック音は単なる鳴き声ではありません。
イルカは物にぶつかってはね返ってきた音を聞き取る事で周りの状況を把握できるのです。
その能力によってパイヤは見事砂に埋まったリングを見つけ出しました。
負けたよ。
イルカは大きな脳を持っています。
体全体に対する割合では人間に次ぐ大きさで脳の潜在能力が高い事を示しています。
テリーは私たちが知性の証しだと考える「読む」という行為をイルカに教えようとしています。
果たしてイルカは記号を読み取ってそれに従う事ができるのでしょうか?どうやらこのイルカたちは記号を読み取る事ができるようです。
イルカには間違いなく高い知性があると思います。
まだ我々の知らない能力もたくさん秘められている事でしょう。
南ミシシッピ大学のスタン・クチャイは海洋哺乳類の専門家でイルカの知性を証明するための研究をしています。
(テリー)指を立てて。
手を振る。
(ダグ)イルカのすばらしい行動は教えられた事を機械的にやっているだけなのか本当の知性を示すものなのかどうやって見分ければいいんでしょう?トレーナーの指示に従って特定の行動をする事はいわば機械的学習でイルカは簡単にやってのけます。
よくできたわね!しかし機械的学習ではなく状況に応じて問題を柔軟に解決するためにはより高い知性が必要です。
数年前スタンはイルカが人間の指示に機械的に従うのではなく自分でものを考え計画を立てられるかどうかを試しました。
それこそ知性の証しです。
イルカたちはオモリを持ち上げて実験装置の中に入れるよう訓練を受けました。
そして十分な数のオモリを入れれば実験装置から餌となる魚が出てくる事を覚えました。
すぐにイルカたちは1回の移動で複数のオモリを集めれば少ない労力で早く魚を手に入れられる事に気付き実行に移しました。
ではイルカは仲間と協力して計画を立てる事はできるのでしょうか。
野生のイルカたちが突然集まって一斉に深く潜っていった事がありました。
皆をまとめる者がいたはずです。
イルカたちは仲間同士でコミュニケーションをとっているのでしょうか。
なあに?
(ダグ)いろんな音を出しますね。
この子は特によくしゃべるの。
クリック音とホイッスル音の違いは?
(テリー)これがホイッスル。
これがクリック。
研究者たちはこのクリック音とホイッスル音がイルカの言語の基本要素だと考えていますがその違いはまだ分かっていません。
(テリー)話したい事がいっぱいあるのね。
研究者のスタン・クチャイとトレーナーのテリー・ボルトンが協力してイルカの知性を試す新たな実験を行う事になりました。
ロニーとビルは前へリチーとパイヤは後ろへ。
まずイルカたちに機械的な行動ではなく「自分たちの芸を創る」という概念を学ばせます。
スタンとテリーは2頭の優秀なイルカロニーとビルが一緒に何かを創り出せるか試そうとしています。
そのためにはものを考え計画を立て互いにコミュニケーションをとる必要があります。
高い知性が要求されるのです。
心の準備をさせているところですね?
(テリー)じゃあ始めるわよ。
指を立てて。
一緒に創れ!水中ではスタンがイルカたちの様子を記録しています。
イルカ同士が仲間を識別する「シグニチャー・ホイッスル」という音が聞こえてきました。
(テリー)さあ行って!今の見た?初めての芸よ。
こりゃすごい。
あんな芸教えてないわ。
この2頭は機械的な学習以上の事ができるようです。
あのイルカたちは「何か違う事をする」という概念や自分たちがやってきた事を理解しているんです。
実にすばらしい事です。
他に同じ事ができる動物は?私の知るかぎりでは人間とイルカだけです。
このような実験を通じてイルカたちの言葉が分かる日が来るかもしれません。
(スタン)イルカはさまざまな音を出しますがそれが感情を表しているだけなのか文章のような構造を持っているのかはまだ分かっていません。
(ダグ)今その鍵を探しているところですね?
(スタン)そのとおりです。
いつか見つけられたらと思っています。
動物界で生き残る大きな秘けつは敵を出し抜く事です。
敵に襲われた時周りの景色に溶け込んで姿を消すのは最高の戦略の一つでしょう。
そのような変装技術は驚くほど複雑な脳を持つ証しかもしれません。
リポーターのジェイク・ウォードが次のコーナーでそんな動物たちをご紹介します。
(ジェイク)どうして分かったんです?
(ロジャー・ハンロン)45分ほど追い続けていたんですよ。
タコはこんなふうに景色に溶け込むのに都合のいい場所に移動しているんですか?いや餌を取るのに都合のいい場所に移動し周囲がどんな景色でも溶け込んでしまうんです。
しかもそれに必要な時間は0.7秒ほどです。
この映像にはその0.7秒間が捉えられています。
(ロジャー)もう一度スローモーションで見てみましょう。
ここではまだ体全体が白く滑らかです。
でもすぐ目の周りに輪が出来てきます。
ほら分かるでしょ?タコは両目の間にある脳を使って体の形や色質感模様を変える事ができます。
脳の神経細胞一個一個が時には1mもの長さにわたって直接皮膚まで延びているので情報の伝達が即座に行われます。
この脳を使ってタコは色も模様も明るさも全て0.7秒で変えてしまうんですか?そうです。
しかしタコの脳は大きいとはいってもこの部屋ほどあるわけじゃない。
なぜこんな事ができるのか大きな謎です。
視覚的な情報を一瞬で処理し擬態を行うにはスーパーコンピューター並みに大きな脳が要るはずです。
タコにはどうしてそんな事が可能なのでしょうか。
生物学の法則によれば複雑な課題を果たすために生物はできるだけ単純で無駄の無い方法を取ります。
そこにヒントが隠されているのではないかとにらんだロジャーはタコと同じ頭足類であるコウイカの研究を始めました。
彼は擬態の要素のうち一つに的を絞り研究を始めました。
「模様」です。
コウイカは3種類の模様のどれかを選択しています。
明暗の差がほとんど無い「均一」。
明るい部分と暗い部分がある「まだら」。
最も明暗の差が激しい「分裂」です。
その擬態の様子を調べるため自然界には存在しない幾何学的な背景を用意しそこにコウイカを置いてみます。
(ジェイク)やあいらっしゃい。
背景を変える度にコウイカは数秒で体の模様を変えます。
「均一」。
「まだら」。
「分裂」。
(ジェイク)こりゃすごい。
(ロジャー)見事なものでしょ。
あっという間だ。
(ロジャー)市松模様です。
イカの表面の白い正方形と背景の模様の大きさがほとんど同じだ。
大きなイカに「分裂」の擬態をさせるなら大きな市松模様が必要ですね。
コウイカの脳は周囲の明暗の量を測定し皮膚の模様をそれと同じように変化させます。
皮膚の変化は脳の働きを知る手がかりとなります。
皮膚の変化には神経系の情報処理や意志決定が必要だからです。
それこそ我々が「認知」や「思考」と呼ぶものである種の知性と言えるものです。
イカやタコなどの頭足類はどうしてこれほど見事な擬態を行えるのか?そのために脳をどのように使っているのか?頭足類の能力は知性と呼ぶべきものなのか?その謎はまだ詳しくは解明されていません。
近年オーストラリアの研究者が頭足類にも計画を立てる能力があるという発表を行い注目を集めました。
野生のタコがヤシの実などを使って道具を作り隠れ場所や変装に使う計画を立てたというのです。
頭足類は私たちが思っているよりずっと賢い動物なのかもしれません。
科学の世界には強い個性とカリスマ性を持ち世界に大きな影響を及ぼし亡くなった時には人々に衝撃を与える者がいます。
次のコーナーでは動物の知性の解明に大きな貢献をもたらしその死が人々に衝撃と悲しみを与えた科学界の大スターをご紹介します。
2007年9月6日アレックスが亡くなりました。
みんなマイケル・ジャクソンが亡くなった時と同じくらい悲しんでいました。
私はアレックスの時の方がずっとつらかったです。
アレックスはアインシュタインにも匹敵する存在だと思います。
有名な経済誌がアレックスの死亡記事を載せました。
亡くなった人を一人取り上げるページがあるんですが対象になるのは世界を変えたような超大物だけです。
そこにアレックスが載ったんです。
お悔やみの手紙が段ボール何箱分も届きました。
Eメールもです。
実はアレックスとは1羽のオウムです。
これは何?そうお利口さんね。
何個?ただし世界一有名なオウムです。
そうよいい子ね。
飼い主のアイリーン・ペパーバーグ博士。
いい子でね。
そしてオウムのアレックス。
アイリーンとアレックスの絆からオウムの高い知性が明らかになりました。
私もよ。
「鳥にそんな事できるわけない」と言われると「鳥はとても賢いのよ」って言い返したものです。
形は?そう4個の角ね。
アレックスの能力を説明して研究助成金を申請したら「夢でもみてるのか」と言われました。
アイリーンは1950年代にニューヨークで育ちました。
初めは化学を専攻していましたがハーバード大学大学院に在籍中の1974年にあるテレビ番組を見て人生が変わりました。
「岩って言って。
岩だよ岩」。
類人猿が手話を使っていたんです。
人間ほどうまくはなかったけど人間と動物がコミュニケーションをとっている姿に大きな衝撃を受けました。
アイリーンは既に博士号を取っていた化学から生物学へと転じパデュー大学で研究を始めました。
彼女がまず向かったのはペットショップでした。
鳥を担当している店員さんに1羽選んでもらいました。
特別な鳥ではなくその時たまたま檻の中にいた1羽だったんです。
それがアレックスとの出会いでした。
アイリーンはアレックスにいろいろな物の名前を教えました。
これは何?なあに?最初はうまくいきませんでした。
アレックスが一番好きな物は紙「ペーパー」で唇が無いとパ行は発音しにくいんです。
これは何?長い間「エーアー」って言ってました。
(アーリン)アレックスはすごく頑張る日とご機嫌斜めな日がありました。
機嫌が悪い時は私たちが「例の目つき」と呼んだ独特の目つきで人を見ます。
顔を横に向けてじ〜っとこちらを見るんです。
すると「ああ今日は駄目だわね」って分かります。
バナナを欲しがってる時にブドウを与えたらそれをこっちに投げつけて「バナナをくれ」って抗議されました。
もう一度やる?分かった?アレックスの訓練には費用がかかったためアイリーンは何度も研究費の申請をしましたがなかなか許可が下りませんでした。
一風変わった研究は申請の際かなり不信感を持たれるものです。
この人は本当に大丈夫なのかと思われるようですよ。
79年に初めて申請が通りました。
次の課題はアレックスの考えている事を明らかにする研究計画でした。
角は何個?アイリーンがアレックスのために開発した訓練法は「モデル/ライバル法」というものでした。
アレックスと一緒に訓練を受ける人がいてその人がアレックスの「モデル」となり「ライバル」にもなるんです。
3個。
そう3個。
正解よ。
彼女が鳥のような演技をしながらお手本を何度か示しそのあとでアレックスに同じものを見せます。
形は何?形。
そう。
何個?正解よ。
訓練は毎日8時間から12時間にも及びました。
お利口さんね。
ご褒美としてアレックスは新鮮でおいしい野菜や果物を食べる事ができました。
アレックスが特別な能力を持てたのは最初の15年ほど1羽しか鳥がいなかったのでスタッフが子供のようにかわいがったからだと思います。
何が欲しい?ナッツがいいのね?何か新しいものが目に入るとアレックスはよく質問してきました。
「それは何?」って。
よくできたわね。
コミュニケーションがとれるようになるとアイリーンはアレックスの知能を次々とテストしていきました。
次の課題は「同じ」と「違う」という概念が理解できるかどうかで類人猿でも難しい課題です。
いろいろな物を見せてアレックスに質問していきました。
何が違うか分かる?そう。
じゃあ何が同じ?正解。
大きいのは何色?お利口ね!よくできたわ。
難しい課題ですが土台にあるものは野生動物が本来持っている能力です。
例えば野生動物は「このイチゴはこの前食べておいしかったのと同じ物だ」という認識ができないといけません。
それは野生動物が生きていくための基本的能力の一つです。
2002年アイリーンとアレックスはボストンのブランダイス大学に移ります。
アイリーンはアレックスの行動が単なるものまねではない事を証明しようとしていました。
アレックスは覚えた言葉を状況に応じて自分で組み合わせる事ができました。
誰かが持ってきたケーキを食べた時アレックスは自分が知っている「おいしい」という言葉と「パン」という言葉を組み合わせて「おいしいパン」と言ったんです。
「本当にオウム?」って感じでした。
それを聞いた瞬間私は確信する事ができました。
やはりアレックスは自分の話している内容を理解していたんです。
「成功した!この大発見を世界に発表できる時が来たんだ」と思い本当に興奮しました。
アレックスは8まで数字を数えられるようになりました。
大きい数は?そうよくできたわね。
あなたが言って。
覚えた単語は100以上。
そう水が入ってるわね。
これは何て言うの?言語的な課題に限らず数や形に関するものなどさまざまなテストを行いました。
その結果アレックスは人間の5歳児から6歳児に匹敵する能力がある事が証明できました。
アレックスとアイリーンは世界中にファンを持つスターとなりました。
アレックスは31歳という人間で言えば中年に当たる時期に真の能力を発揮し始めたのです。
アイリーンは空間感覚や目の錯覚に対する反応など更に高度なテストを始めました。
中に入れるわよ。
明日までいい子にしていてね。
おやすみの挨拶はいつも決まっていました。
私もよ。
いつもと同じく明日になればまた会える事を当然のように考えていました。
でも違ったんです。
電話越しにアイリーンの声を聞いた時すぐに何かあったなと分かりましたが「アレックスが死んだ」と聞いて私も凍りつきました。
一番親しい協力者一番親しい仲間を亡くした喪失感に苦しみました。
あの30年間アレックスは私にとって人生の中心だったんです。
アイリーンは今もアレックスの遺灰や思い出の品をそばに置いています。
そして2羽の若い鳥と共に新たな研究を続けています。
何個?あ〜いい発音ね。
そうこれは角が1つ。
分かるわね1つよ。
この形は?なあに?研究費の獲得にも相変わらず苦労しています。
(アーリン)アイリーンは絶えず各地を回っています。
研究への寄付を集めるためです。
動物にも知性はあるのだとアレックスが教えてくれました。
人間と全く違って見える動物も知的な行動をとっているんです。
「鳥の脳」という英語「バードブレイン」は頭が悪い事を意味しますがむしろ誉め言葉として考え直すべきでしょう。
では動物の知性についてまとめてみましょう。
賢いペットは単純な命令に従いものの名前を覚える事もできます。
賢いチンパンジーなら箱を積み重ねてバナナを取ったり初歩的な手話を使ったりもします。
そのような賢い動物が学会でもてはやされる事もあります。
しかし動物としては優れていてもそれはせいぜい人間の幼児と同じレベルです。
私たちのように芸術や哲学数学などを生み出すわけではありません。
とはいえ人間とチンパンジーの遺伝的な違いはほんの僅かです。
その違いがもたらす知性の差は実はごくささいなものなのに私たちが勝手に大きな違いだと思い込んでいるだけなのかもしれません。
「人間の考えはとりわけ高度で複雑なものだから他の動物と有意義なコミュニケーションがとれないのだ」。
私たちはそう思っています。
では人間と遺伝的に僅かに異なりほんの少し賢い生物が現れたと仮定しましょう。
その生物は「自分たちの考えは高度で複雑なものだから人間に理解できるはずはない」と決めつけ人間とのコミュニケーションを諦めるでしょうか?恐らくそんな事はないと思います。
私たちは人間の知性を特別なものだと思いがちですがその考えは正しいのでしょうか?宇宙的な視点で見ればそうとは言えないはずです。
2014/02/24(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「動物はどこまで賢いのか?」[二][字][再]

動物は私たちが思うよりずっと賢いのかもしれない。イヌの判断力、イルカの探索する能力、オウムのコミュニケーション力を解き明かすと共に、どこまで賢くなれるかを探る。

詳細情報
番組内容
1000以上の単語を覚えているボーダーコリーのチェイサー。名前を覚えているおもちゃの中から、初めて聞く名前のものを選び出せるか? “オウム返し”とは、意味が分からないまま相手の言葉を繰り返すことだが、実はオウムは言葉の意味を理解している!? 世界一賢いオウムと呼ばれたアレックスと生物学者のアイリーンの絆を紹介。アレックスの特別な能力に迫る。(2011年アメリカ)※アンコール放送
出演者
【語り】渡辺徹
制作
〜制作:WGBH Boston/NOVA〜

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
他言語の時もあり
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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2/0モード(ステレオ)
英語
サンプリングレート : 48kHz

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