サイエンスZERO「冷凍革命!水を凍らせない?謎の物質」 2014.02.23

(テーマ曲)美しき白に彩られた季節冬。
クリスタルのように輝く氷って本当にきれいですよね。
水は温度が氷点下になると氷に変わる。
それって常識ですよね。
…と思いきや!え〜!?何が謎なの?…と思ったあなた。
ここで不思議な実験をお見せしましょう。
ガラス板に載せた2つの水滴。
凍ると光の加減で金色に光って見えるのでご注目。
温度を下げていくと左側の水滴は凍りついて金色に。
でも右側はほとんど変わっていません。
同じく冷やしているのにほとんど液体のままなんです。
実はこの凍らない水の中に僅かに溶かし込んでいたのがこちら。
ごく微量を水に混ぜるだけでその水をたちまち凍りにくくする魔法の物質。
今この不思議な物質が冷凍の常識を覆そうとしています。
例えば冷凍のお魚。
解凍するとこんなふうに水分やうまみが流れ出しちゃいますよね。
そんなお悩みもこの魔法の物質があれば一気に解決!冷凍食品が見違えるほどおいしくなっちゃうっていうんです。
水を凍りにくくする不思議な物質って一体何なの?
(南沢)うわ〜!今日は氷の世界ですね!うん。
凍えてますね。
ちょっと寒いですよね。
雪がしんしんと降り積もって。
それにしても水に何かちょっと溶かすだけで凍りにくくなるって…。
あれは一体どんな物質なんでしょうかね?この謎の物質今大注目なんですよ。
へえ〜。
その前にどうやって水が氷に変わっていくか知ってます?えっ硬くなっていくだけじゃないんですか?そう単純ではないんですね。
実は目に見えない…え〜何だろう?さあそれではふだんは目にする事ができない水が氷に変わる神秘の世界へ皆さんをお連れしましょう。
所長を務める古川義純さんは36年にわたって水が凍る現象を探究し続ける大ベテランです。
中でも神秘に満ちているのが水が氷へと変わっていく過程だといいます。
ふだん見る事のできない水が凍り始める瞬間を実験で見せてくれる事に。
シャーレの中に水を入れ冷凍庫の中でゆっくりと冷やしていきます。
すると水は0℃を下回ってもまだ凍りません。
過冷却という状態です。
ここでおよそマイナス200℃の液体窒素の冷気で水面を刺激すると…。
突然小さな粒がたくさん現れました!水中を漂っていた目に見えない氷の種が一気に成長したのです。
氷の種とはこんな六角形をしたミクロの氷の結晶です。
これが横方向に成長しながら縦方向にも積み重なって目に見える大きさに成長していくんです。
でもこの小さな結晶がどうやって大きな氷になっていくんでしょう?それを見ようにもただ水を凍らせたのでは無数の小さな結晶が重なってよく見えません。
そこで古川さんこんな薄い水の膜を作りました。
この水の膜が凍っていく様子を観察しようっていうんです。
すると…。
成長した氷の結晶同士がくっついて膜全体が凍っていきます。
よく見ると最初は六角形のような氷の結晶が角の部分が伸びて星形に。
ついには結晶同士がくっついて一面の氷になっていくのが分かります。
水ってこんなふうにして氷に変わっていくものだったんですね。
いやすっごいきれいな映像でしたね。
何かこう雪みたいで…。
どうもねこの水が氷に変わっていく途中の経過ですねこれって意外と分かってないみたいですね。
そうなんですね。
まずこれ透明ですね。
なので普通の顕微鏡だとこの氷の結晶見えにくいんですよ。
だから専用の顕微鏡を開発する必要があると。
そこで古川さんたちは…すごい。
氷って奥が深いんですね。
深いんですよ〜大変なんですよ。
だけど水を凍りにくくする物質って何なんでしょうかね?実はここに溶液があるのですがここにその謎の物質が溶けているんですよ。
ええ〜ここに?ではこの謎の物質の不思議な効果こんな実験でご覧頂きましょう。
ガラスの板に載せた2つの水滴。
これ左側は普通の水で右側には謎の物質をごく僅かに溶かしています。
これを同時に冷却を始めます。
凍ると光の加減で水滴の縁が金色に光って見えます。
もう普通の水の方はかなり金色に光っていますね。
そうですよね。
そう凍りついているんです。
でも右側…その謎の物質を溶かした水滴というのは僅かに縁光って見えますけれども全体としてまだ液体の状態を保っているんです。
ホントだ〜。
全く同じように冷やしているんですよね?そうです。
…にもかかわらずこの謎の物質これが入っている方が凍りにくいと。
え〜どうしてだろう?それはよく知られています。
ところが…別?では一体どういうからくりで謎の物質が水を凍りにくくさせるのかいよいよ核心に迫ります。
再び北海道大学。
古川さん水を凍りにくくさせるあの「謎の物質」って一体何なんですか?その不思議なタンパク質が最初に発見されたのは南極の海に住むノトセニアという魚の血液からでした。
塩分を含む海水は0℃以下になっても凍りません。
魚は体温調節ができないのでそんな低温になると血液が凍ってしまう危険が。
それを防ぐためにノトセニアは不凍タンパク質を持っていると考えられるのです。
意外にもこの特殊なタンパク質が最近ごく身近な動植物からも次々と見つかっています。
例えば冬の寒い時期に収穫する…その葉と根にも不凍タンパク質があります。
そして冷たい海に住む…血液や筋肉内臓などほぼ全身に不凍タンパク質を持っています。
でもこのタンパク質があるとなぜ水が凍りにくくなるんでしょう?そもそも水って本来はこんなふうにさまざまな方向に氷の結晶を成長させながら凍っていきます。
ところがこの映像をご覧下さい。
なぜかある一方向にだけ氷の結晶が成長していきます。
一体どうして?実は氷の結晶の縁に白く光って見えるのが…結晶の縁にびっしりくっついていたんです。
でもよく見るとこの面だけ不凍タンパク質がついていません。
すると…その方向にだけ氷の結晶が伸びていきあんな形に成長したという訳。
不凍タンパク質がくっついた部分は氷の結晶が成長しない事を捉えた決定的な映像です。
でもなぜ不凍タンパク質がくっつくと氷の結晶が育たなくなるのか。
カレイの不凍タンパク質を解析するとこんならせん状の構造をしている事が突き止められました。
実は氷の結晶ってミクロレベルでは水素原子と酸素原子が作る六角形がつながって表面がこんなふうに凸凹しています。
なんとあのらせん状の不凍タンパク質この凸凹にぴったりはまる形になっているんです。
そのため新しく水分子が入り込めなくなり氷の成長が妨げられるという訳。
よく出来たタンパク質ですよね〜。
いや〜うまく出来てますね。
だけどあの不凍タンパク質特別な生物だけしか持ってないのかなと思ったら意外と身近な野菜とか魚にもあったんですね。
たくさんあるみたいですね。
でも氷の表面の凸凹にぴったりはまっちゃうってなんとも都合がいいと思うんですけど。
それをどうして生命が持ってるんですかね?確かに。
さあそれではその気になる不凍タンパク質の正体について専門家の方に伺っていきましょう。
関西大学で不凍タンパク質の研究をされている河原秀久さんです。
あんなに巧妙な不凍タンパク質生物は何のために持ってるんですか?生きていくために?
(河原)そうです。
こちらをご覧下さい。
これはカレイの不凍タンパク質。
らせん状ですよね。
ところが同じ魚でもカジカの仲間はもっと複雑な形をしているんです。
更に深海魚ゲンゲという魚…。
不凍タンパク質こんな形してるんですよ。
全然違いますね!…というか不凍タンパク質って1種類じゃなかったんですね。
(河原)そうなんですよ。
でも…カレイの場合はらせん状になっていて氷の表面にぴたっとはまりましたよね?じゃあほかの不凍タンパク質はどうなんですか?
(河原)はまるのはもう全部共通になっています。
そうなんですよ。
そんなに…。
そうなんだ。
え〜!?不凍タンパク質を持っている生物は…私たち人間には不凍タンパク質はないんですか?残念ながら不凍タンパク質ないんですよね。
それは人間は体温を維持する事ができるので持ってないんです。
なるほど〜。
実はですねこの不凍タンパク質生物にとってだけ重要という訳ではないんです。
私たちの日常生活に役立つとってもありがたい物質としても今注目されています。
私たちがふだん口にする新鮮な魚。
鮮度を保つために冷凍して保存する事って多いですよね。
ところがいざ解凍してみると…。
うまみを含んだドリップと呼ばれる水分がしみ出しておいしさが損なわれちゃうのが悩みの種。
実はこれ…氷の結晶には大きく成長しやすい温度帯があります。
それが0℃からマイナス7℃の間。
この温度帯で氷の結晶が急成長する時周りの細胞組織が破壊されてしまいます。
そのため大事な水分やうまみが流れ出してしまうのです。
最近では急速冷凍の技術で氷の結晶が成長しやすい温度帯を一気に突破し細胞破壊を防ごうとしています。
しかし問題は解凍する時。
ゆっくり温度が上昇する際にこの温度帯で結晶が大きく成長しやはり細胞を破壊してしまうのです。
なんとかこの氷の結晶の成長を防げないか。
そこで河原さんが目をつけたのが不凍タンパク質です。
通常急速冷凍した生の豚肉を解凍すると…。
ほら。
これがドリップ。
肉の表面にもしみ出しているのが分かります。
そこで豚肉を不凍タンパク質の溶液に浸してから冷凍します。
すると解凍してもドリップはほとんど出ていません。
急速冷凍した肉の内部では最初氷の結晶は小さくなっています。
ところが不凍タンパク質がないと解凍するにつれて氷の結晶はどんどん大きくなっていきます。
一方不凍タンパク質があると…。
ほら!結晶が小さいままほとんど成長していません。
こうして細胞破壊を見事に防げたんです!いやあの解凍した時のドリップありますよね!もったいないですよね。
そう。
でもそれが不凍タンパク質で解決されるなんてありがたいですね。
実際に映像を見てみると不凍といっても全く凍らないという訳じゃなくて不凍タンパク質に浸した方でもちっちゃな氷の結晶がありますよね。
そうなんですよ。
そっか〜。
食品を不凍タンパク質の溶液に浸して冷凍するだけでいいんですか?いやただ浸すだけではやっぱり表面にしかつかないので真空にできるような装置の中で真空にして瞬間的に不凍タンパク質溶液を肉の中に入れるという事ができれば家庭でも使えるようになります。
なるほど。
もう既に不凍タンパク質を使っている冷凍食品とかってあるんですか?あります。
冷凍うどんなんですね。
不凍タンパク質を小麦粉に対して0.03%入れる事によって解凍したあとに生のうどんとほとんど同じような食感のうどんが出来ると。
ホントにごく微量なんですね。
ね〜。
では不凍タンパク質の力を借りると冷凍食品がどれぐらいおいしくなるのかお二人に体感して頂きましょう。
これは?だし巻き卵〜!こちらは普通のだし巻き卵を冷凍して解凍したもの。
そして奈央さんの前にあるのがだし巻き卵を作る時にカイワレダイコンから採った不凍タンパク質を0.3%だけ卵に加えたそれを冷凍して解凍したものです。
お〜!こっちやっぱりお皿の表面ちょっとテカってるんですけどこれうまみとかが出ちゃってる。
(竹内)出ちゃってますよね。
まずは普通のだし巻き卵から召し上がって下さい。
は〜い。
普通においしそうですけどね。
頂きます。
う〜ん…。
でもまずくはないですよ。
(竹内)ええっ?ちょっと食べてみて下さい。
ちょっぴり…そう。
スポンジっぽい…。
パサッとしてんですよね。
では不凍タンパク質入りのだし巻き卵召し上がって下さい。
頂きます。
う〜ん!おいしい!ね〜!
(笑い声)こっちはねすごいやっぱりジューシーですよ!そう!こんなに違うんですか!?味がやっぱりしっかり残ってますもんね!ね〜!うわ〜全然違います。
今召し上がって頂いたそのだし巻き卵のほかにもこれまでは冷凍なんて考えられなかったような食品が不凍タンパク質をホントに僅か加えるだけで解凍してもおいしく食べられるんですよね。
例えばかまぼこプリン。
いろんなものが冷凍可能になってきます。
プリンって冷凍しないですよね。
解凍したらすごいグシャグシャになってそう。
でもそんなにいろんなものをおいしいまま冷凍保存できるんだったら海外に日本のおいしいものを冷凍で輸出できそうですね。
そうですね。
ただ不凍タンパク質にも弱点があるんです。
酸に弱い事。
pH6以下緑茶や紅茶などよりも強い酸性になると水を凍りにくくする機能ほとんど失われてしまいます。
じゃあお酢を使った食品の冷凍とかには使えないんですね。
例えば酢の物みたいに極端に酸っぱいものなんかは使えないです。
そっか〜。
更に2つ目の弱点。
熱に弱い。
へえ〜。
不凍タンパク質を100℃で加熱すると20分以上加熱した辺りから急速に機能弱まります。
じゃあ長時間加熱調理するようなものは冷凍には向かないという事ですかね?
(河原)そうなんですよ。
という事はこの不凍タンパク質も…そのとおりなんですよ。
でも…え〜?そんな都合のいい物質があったんですか?不凍タンパク質の弱点を克服する新物質が見つかったのは雪と氷の大地アラスカ。
2009年アメリカの研究チームが雪の中に住むゴミムシダマシという昆虫の体内からその物質を発見しました。
実はこの虫不凍タンパク質は持っていません。
そのかわり同じように水を凍りにくくする機能がある別の物質を持っていたのです。
その名もキシロマンナン。
キシロマンナンはタンパク質ではありません。
糖が鎖のように連なった物質です。
それでも不凍タンパク質と同じ機能を持ちしかもタンパク質ではないため酸にも熱にも強いという優れもの!という事はこの虫からキシロマンナンを採り出して使えばいいって事?それから食経験がないいわゆる…確かに…。
この虫から採ったキシロマンナンすぐに食品には使えなさそうですよね。
ならばふだん口にしているものの中にキシロマンナンを持っているものはないか?河原さんは徹底的に調べました。
そしてついに食べられるものの中で唯一キシロマンナンを持つものを発見!それは…。
実はエノキダケも寒い所を好むキノコ。
室温を5℃以下に冷やした冷蔵庫の中で栽培します。
そのエノキダケの細胞壁にキシロマンナンが含まれていたのです。
早速河原さんエノキダケをミキサーにかけてキシロマンナンを抽出しました。
実験したところ確かにエノキダケのキシロマンナンにも氷の結晶の成長を抑える機能がある事が判明。
しかも不凍タンパク質と異なり酸性の環境でも機能は全く失われません。
更に100℃の高温に30分間さらしてもこのとおり。
酸にも熱にも強い事が確認されたのです。
エノキダケすごいですね!すごいやつがきましたね。
結構ふだん普通に食べてますもんね。
だけどどうして食べられるものの中ではエノキダケにしかキシロマンナンはないんですか?詳しい事はまだ分かってないんですけどほかのキノコにもあるかなと思いまして17種類のキノコ全部調べたんですね。
でもほかのキノコにはありませんでした。
何でなんだろう?今はみんなが食べているのはエノキダケだけという事になってます。
キシロマンナンというのはふだんエノキダケの中ではどんな役割をしているんですか?実はエノキダケにキシロマンナンがある事は以前から分かってました。
このキシロマンナンもやっぱり氷の結晶の表面にぴったりはまるんですか?それも偶然という事ですか?はい。
こうやって熱にも酸にも強いキシロマンナンがある訳ですからじゃあもう不凍タンパク質はあまり役に立たないですかね?いやいや…不凍タンパク質にも実は利点はたくさんあるんですね。
ごはんであるとかうどんであるとかギョーザの皮であるとかそういうものには不凍タンパク質が非常にいいという感じになります。
不凍タンパク質やキシロマンナンというのは冷凍食品以外にも使いみちってあるんですか?その場合に臓器を保存したあとに移植したら正常に機能できるだろうという事で…河原さん今夜はありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/02/23(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「冷凍革命!水を凍らせない?謎の物質」[字]

様々な生物の体内から「水を凍らせない」謎の物質を発見!?その機能を利用すると、冷凍食品が劇的においしく大変身!冷凍の常識を覆す不思議な物質の驚くべき正体に迫る。

詳細情報
番組内容
ある物質をごく微量、水に溶かすと、氷点下で水が凍らなくなる? そんな不思議な物質が、身近な生物の体内から次々と発見され、いま大注目! その機能を利用すると、冷凍によって食品のおいしさが損なわれるのを驚くほど防げるのだ。すでに、打ち立ての生麺のような食感や風味を失わない冷凍うどんなどが開発され始めている。生物が進化の過程で獲得した、その謎の物質とは? 氷の結晶の成長を防ぐ実に巧妙なメカニズムに迫る。
出演者
【ゲスト】関西大学教授…河原秀久,【出演】南沢奈央,竹内薫,【キャスター】中村慶子,【語り】江藤泰彦

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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