地球ドラマチック「海の生物が危ない!〜二酸化炭素の脅威〜」 2014.03.24

私たちの星地球の70%以上を占める海。
生物にとって極めて重要な存在です。
その海に今異変が起きています。
大気中の二酸化炭素はこの数千万年と比較すると100倍の早さで海に吸収されています。
大量の二酸化炭素が海に吸収されるとある事が起こります。
多くの海洋生物にとって命取りとなる海の酸性化です。
海洋生物には今後どのような運命が待ち構えているのでしょうか。
移動するか適応するか死んでしまうか。
特に大きな被害を受けるのがサンゴです。
海の生態系で大きな役割を担っているサンゴ礁が無くなれば影響は計り知れません。
科学者たちは危機を回避する方法を探っています。
科学者にとっては最高の場所。
世界中でここだけです。
海の急激な変化の謎を解き多くの生物を救う事はできるのでしょうか。
今人類は取り返しのつかない過ちを犯しているんです。
アメリカ西海岸北部では100年以上前からカキ漁が盛んに行われてきました。
現在では2億5,000万ドル規模の大きな産業となり沿岸の町を経済的に支えています。
養殖業者は育てたカキを毎日収獲します。
養殖業者のマーク・ワイガードは入り江からくみ上げる海水で「幼生」と呼ばれるカキの赤ちゃんを育てています。
しかし数年前に異変が起きました。
決定的な変化があったのは2007年です。
カキの幼生が全く育たなくなってしまったんです。
幼生は何も食べないし見かけもひどい状態でした。
全滅を覚悟しました。
カキの幼生に見られる明らかな異常。
ワイガード夫妻は原因を追究しました。
これは生後1日の健康な幼生で貝殻が形成されつつあります。
一方異常が見られる幼生は貝殻が変形し穴があいています。
問題はくみ上げられた海水にある事が分かりました。
多くの人が海水の酸性度など気にする必要はないと考えていました。
しかしそれこそが問題の核心だったんです。
入り江からくみ上げられワイガードの養殖場で使われていた海水は通常と比べて6倍も酸性度が高い事が分かりました。
カキの幼生には耐えられない酸性度です。
(マーク)水質が全てだという事が分かりました。
水質に問題があればカキの幼生は餌を食べずに死んでしまいます。
このままでは養殖を続ける事などできません。
ワイガードは解決策を見いだしました。
くみ上げた海水に酸性度を下げる効果がある重曹を入れたのです。
しかしこれは小さなタンクだからできる事で海全体に同じ手段をとる事はできません。
(マーク)一日に30万を超える海水をくみ上げて重曹を加えています。
世界中の海で海水の酸性度が高まっています。
過去200年間にわたって二酸化炭素の排出量が増え続けているためです。
(ホフマン)海が大気中の二酸化炭素を吸収している事は前から分かっていました。
私たち人類の活動によって生み出された二酸化炭素を海が取り込んでくれるんです。
なんてありがたい事だろうと誰もが思っていました。
しかし科学者は海が大量の二酸化炭素を吸収する事で海水に劇的な変化が起きている事に気付きました。
毎日3,000万tもの二酸化炭素が海に溶け込んでいます。
その結果海水の酸性度が高まっているんです。
海の酸性度が高まるとどうなるのでしょうか。
貝殻やサンゴの骨格など海の生物の一部は炭酸カルシウムで出来ています。
ところが二酸化炭素が海に溶け込むと炭酸カルシウムを作るのに必要な成分を奪ってしまうんです。
科学者たちは海の酸性化が海洋生物にどのような影響を与えているのかを調べ始めました。
特に環境の変化に敏感なサンゴ礁が注目されています。
サンゴ礁の面積は海全体の面積の1%足らずですが全海洋生物の少なくとも3/3がサンゴ礁を住みかとしています。
サンゴ礁は石灰すなわち炭酸カルシウムで出来ていて成長するのに時間がかかります。
ここまで巨大なサンゴ礁になるには数千年の歳月が必要です。
海の酸性化はサンゴ礁にどのような影響を及ぼすのでしょうか。
サンゴの骨格となる石灰は二酸化炭素が高い濃度で溶け込んだ水にとても弱い性質があります。
相いれないものと言っていいでしょう。
カタリーナ・ファブリシス博士は長年観察してきたサンゴ礁が危機に瀕している事を実感しています。
(ファブリシス)サンゴ礁は地球上で最もすばらしい生態系の一つです。
私たちにはサンゴ礁を次の世代に引き継ぐ大きな責任があります。
ファブリシスを中心とした国際的な調査チームが作られました。
調査地はパプアニューギニア。
海の酸性化がサンゴ礁の生態系にどのような影響を及ぼしているのかを調べます。
世界中から専門家が集まりました。
今回の調査期間は14日です。
一行は海洋科学の分野で大きな注目を集めている場所に向かいます。
あの辺りに広がっています。
海面から気泡が見えるはずです。
ミルンベイの海に広がるサンゴ礁をファブリシスが発見したのは10年以上前の事です。
海底から湧き上がる気泡は火山活動によるものです。
調査の結果気泡は混じりけのない二酸化炭素である事が分かりました。
そのためこの海域は酸性度が高くなっています。
(ファブリシス)サンゴ礁のすぐ近くの海底から二酸化炭素が噴き出しているんです。
研究に必要な条件がそろっている場所です。
大発見だって大喜びしました。
ファブリシスのチームは4年前にこのサンゴ礁の調査を始めました。
レティシア・プレザンスは世界各地のサンゴ礁を調査してきました。
今回の目的は高い酸性度がサンゴ礁の小動物の多様性にどのような影響を与えているのかを調べる事です。
二酸化炭素が噴き出している場所を早くこの目で見たいと思っています。
どんな様子か想像もつきません。
わくわくします。
この海域のサンゴ礁は100年近くにわたって二酸化炭素を浴び続けてきました。
海水の酸性度は今から80年後の海と同じくらいだと考えられています。
二酸化炭素が噴き出す海域には僅かな種類のサンゴしか生息していません。
サンゴの多様性は4割近く減少し他の海で見られる色鮮やかなサンゴは姿を消しています。
(プレザンス)二酸化炭素が噴き出している場所に近づくと風景が一変します。
サンゴは色を失い魚は姿を消します。
ある地点を過ぎると生物の影すらなく砂だけが広がっています。
二酸化炭素の排出量が増えれば世界中のサンゴ礁がここと同じような状況になるとファブリシスは考えています。
(ファブリシス)気泡が最も激しく噴き出している場所の風景は2100年ごろの海と同じでしょう。
海が二酸化炭素を大量に吸収し続ければサンゴ礁は姿を消し海草や海綿だけが残ります。
二酸化炭素が噴き出している海域のサンゴは状態が良くありません。
しかし50m離れると影響が少なくなります。
そして100m離れると世界有数の豊かなサンゴ礁が姿を現します。
パプアニューギニアのサンゴ礁はさまざまな生物がいる事で知られています。
500種以上のサンゴが生息し数十万種の小さな動物が暮らしています。
この豊かな生態系も海の酸性化が進めば失われるかもしれません。
海で最も重要なのはバランスです。
サンゴ礁はサンゴなど石灰質の骨格を持つ生物で出来ています。
サンゴが成長すればそこには多くの生物が集まってきます。
繁殖したり獲物を取ったりして豊かな生態系が生み出されます。
この環境を守るためには海の酸性度が低くないといけません。
酸性度が高いとサンゴの骨格が溶けてしまうからです。
調査チームは200m離れた2つの海域をそれぞれ調査し比較する事にしました。
一方は二酸化炭素が噴き出していない通常の酸性度を保った海域。
もう一方は二酸化炭素が噴き出す酸性度の高い海域です。
海の状態を計測する最新の調査機器が使われます。
調査の主な目的は酸性度の高い海でサンゴがどのような影響を受けているのかを明らかにする事です。
どの種が姿を消しどの種が生き残っているのか。
サンゴの成長は早くなるのか遅くなるのか。
2つの海域でデータを収集し答えを探します。
採取したサンゴを2つに分け酸性度が高い海域と低い海域に置きます。
ファブリシスが生きたサンゴの調査をする一方プレザンスはサンゴが死んだあとに何が起きるのかを調査しています。
大きめの死んだサンゴをそれぞれの海域で採取する予定です。
生きたサンゴは小さな魚など多くの生物の住みかとなっています。
サンゴは死んだあとも骨格はそのまま残るため引き続き多くの生物が集まってきます。
プレザンスは酸性度が高い海域と低い海域で死んだサンゴを採取しました。
それぞれにどのような生物が住み着いているのかを比較するためです。
これは酸性度が高い海域のサンゴ。
表面が海草で覆われています。
ただし海草の種類は限られています。
酸性度が低い海域のサンゴはもっと多くの種類の海草に覆われています。
海の酸性度が高くなった場合予想される現象の一つは生物の多様性が急激に失われ限られた種類の海草類が増加する事です。
死んだサンゴの内部にも多くの生物が生息しています。
カニや軟体動物を探しています。
今逃げようとしているのは小さなクモヒトデ。
またナマコがいました。
どの生物も食物連鎖の一部に組み込まれていますから一種でも欠ければ連鎖が崩れてしまいます。
小さな生物もみんな重要な役割を担っているんです。
(ファブリシス)二酸化炭素濃度が高いのに栄えている生物と姿を消した生物がいます。
なぜなのか謎を探っているところです。
地球が大規模な環境の変化を経験するのは今回が初めてではありません。
環境の激変で種の大部分が絶滅する「大量絶滅」という現象はこれまでに5回起きました。
そのうち少なくとも4回は火山活動によるものと見られる二酸化炭素の増加が関係しているようです。
二酸化炭素の急増で気候が変動し何百万年もの間サンゴ礁が地球上から姿を消していた時代もありました。
最もよく知られている大量絶滅は6,500万年前のものでこの時は恐竜が死に絶えました。
およそ2億5,000万年前の大量絶滅は更に規模が大きく海洋生物の96%が絶滅しました。
この時二酸化炭素が急増した原因は分かっていませんが地球の温暖化を招いた事は確かです。
同時に酸素が激減し海の酸性化も起きました。
サンゴ礁が再生し新たな海洋生物が現れるまでには数百万年の歳月が必要でした。
(グルベルグ)今6回目の大量絶滅が始まっているという説が有力です。
私も同じ意見です。
変化の速度があまりに速すぎます。
ここ数千万年で最も多くの二酸化炭素が毎日海に吸収されています。
変化の速度は動植物が対応できる速さをはるかに超えています。
このままではさまざまな種が絶滅の危機に直面するでしょう。
危機に瀕しているのはサンゴ礁だけではありません。
海水の温度が低い方が多くの二酸化炭素を吸収するため北極と南極の海はより酸性化が進んでいます。
特に被害が深刻なのはサンゴと同様殻や骨格が炭酸カルシウムで出来ている重要な生物です。
スウェーデンの入り江で大規模な実験が行われました。
巨大な試験管に海水を入れて海に沈め密閉したあとで二酸化炭素を注入。
酸性度の高い未来の海と同じ環境をつくり出します。
地球環境があまりにも急激に変化しているため生物が適応できるか疑問です。
特に海の酸性化については生物がどれだけ迅速に適応できるか分かりません。
5か月間の実験の結果酸性化した海水中でよく育つのはピコプランクトンという小さな生物である事が分かりました。
ピコプランクトンが増えすぎるとより大きなプランクトンが摂取する栄養分を奪ってしまいます。
大きなプランクトンが減ればそれを食べている魚も減り従来の生態系は破壊される事になります。
オーストラリアの南極観測船に乗った科学者たちがプランクトンの調査をしています。
南極海の水1滴に何百万もの小さな生物がいます。
特に植物プランクトンは多くの酸素を作り出して私たちの生命を支えてくれています。
円石藻などの植物プランクトンは生態系にとって重要な生物ですが海の酸性化によって特に大きな影響を受けています。
円石藻は水中の二酸化炭素を吸収し酸素を生み出す重要な役割を果たしています。
しかし表面が炭酸カルシウムで出来た殻に覆われているため海の酸性度が高まると死んでしまいます。
その結果海に吸収される二酸化炭素が減少し大気中に多くの二酸化炭素が残る事になります。
海の酸性化の影響を受けているプランクトンは他にもいます。
「翼足類」と呼ばれる小さな巻き貝です。
クジラや魚の食べ物として生態系を支えている重要な生物です。
(ロバーツ)翼足類はカタツムリに似ていますが足の代わりに翼をつけて海で暮らすという進化を遂げました。
多くの生物の食料になるため「海のポテトチップス」というあだ名が付いています。
最近採取された翼足類の殻は10年前に採取されたものよりももろく大きさが35%小さくなっています。
(ロバーツ)これは2002年に採取した健康な殻です。
不健康なものと比べてみましょう。
殻の一部が欠けています。
紙のように薄くなっていて手に取っただけで砕けてしまう事がよくあります。
海の酸性度が高まればカキの幼生と同様翼足類も致命的な被害を受ける事になります。
(ロバーツ)あまり知られていませんが翼足類のおかげで南極海の生態系が成立しているんです。
翼足類を含む何千種ものプランクトンが世界中の海にいて魚の食料となっています。
もしプランクトンがいなくなれば魚も絶滅の危機に瀕します。
そして魚を食べている私たち人類の生存も危うくなります。
日々の糧をサンゴ礁に依存している人々は世界中におよそ5億人。
しかし海の酸性化がサンゴ礁に及ぼす影響を理解している人は決して多くありません。
魚類生態学者のダニエル・ディクスン博士がファブリシス博士の調査チームに加わりました。
魚類の専門家として重要な調査を行います。
海の酸性化が魚の感覚神経や聴覚そして行動全般にどう影響するのかを実験室で調べてきました。
この場所に興味を持ったのは二酸化炭素濃度の高い水中で長い間魚が暮らしているからです。
あそこで噴き出している泡が二酸化炭素。
こっちが普通の海域だ。
フィル・マンデーはダニエル・ディクスンと共同で研究をしています。
二酸化炭素が高い濃度で溶け込んだ水槽に魚を入れて実験したところ問題が浮かび上がりました。
魚が生き残る上で欠かせない能力に異常が見られたのです。
魚の行動に劇的な変化が起きました。
水中の化学的なシグナルに対する反応水槽内を進む行動音に対する反応などが変化したんです。
二酸化炭素濃度の高い環境で何年も生きている魚にも同じ影響が出ているのかこの海で調査すれば確認できるでしょう。
二酸化炭素が噴き出している海域にいる魚と通常の海域にいる魚の行動を比較する調査が始まりました。
まずは匂いを嗅ぐ能力嗅覚です。
(マンデー)特に稚魚は嗅覚が優れています。
顔の先端にある鼻の穴から海水を取り入れ内側に並んだ感覚細胞で匂いを嗅ぎ取るんです。
海水は排出されます。
魚は嗅覚を使って獲物を捕らえ帰り道を見つけ更には危険を察知します。
嗅覚は生き残る上で欠かせない能力です。
二酸化炭素が魚の嗅覚に及ぼす影響を調べる実験が行われました。
上の水路には捕食動物の匂いが付いた海水下の水路には通常の海水を入れます。
(ディクスン)今装置に入れたのは通常の海域から採取した魚です。
捕食動物の匂いを避けて通常の海水が流れる水路にとどまっています。
次は二酸化炭素が噴き出す酸性度の高い海域に住む魚です。
この魚は捕食動物の匂いが付いた水路に入りました。
二酸化炭素が認識能力に影響を及ぼしているようです。
匂いそのものは嗅ぎ取っているのにそれが危険なものだと理解していないんです。
脳に異常が起きているんでしょう。
ディクスンは多くの魚を使って実験を繰り返しました。
その結果高い酸性度が魚の脳に影響を与え生き残るために必要な能力を奪っている可能性が高まってきました。
一方調査チームのリーダーカタリーナ・ファブリシスは酸性度の高い海域に若いサンゴが少ない原因を調査していました。
14か月前サンゴが年に一度産卵する時期を狙ってファブリシスはサンゴの幼生が住み着くためのタイルを100枚以上海底に取り付けました。
サンゴの産卵は美しい自然のイベントとして知られています。
サンゴは月の周期に合わせて無数の卵子と精液を一斉に放出します。
大抵は一夜限りの事です。
受精がうまくいくとサンゴの幼生が誕生します。
サンゴの幼生は数日以内に適当な場所に住み着かなくてはなりません。
ファブリシスが用意したタイルは幼生の住みかとなるのでしょうか。
その答えを確認する時が来ました。
まず酸性度の低い通常の海域からです。
(ファブリシス)とてもいい状態です。
ピンク色の部分はサンゴモという大切な海草です。
サンゴモはサンゴが成長するための丈夫な土台となります。
そのためサンゴの幼生はサンゴモに向かうよう遺伝子に情報が組み込まれています。
しかしサンゴモも炭酸カルシウムで出来ているため海の酸性度が高くなるとサンゴよりも早く溶けてしまいます。
次は二酸化炭素が噴き出す酸性度が高い海域です。
何時間もかけて回収したタイルに何が付着しているのかを特定します。
通常の海域のタイルには健康な若いサンゴが育っていました。
こちらのタイルにはかなりの数のサンゴが見られます。
端に付いているのは1歳くらいの若いサンゴピンク色の部分はサンゴモです。
こちらはもっと幼いサンゴです。
この小さなタイルに全部で19のサンゴが住み着いていました。
サンゴ礁を維持していくには十分な数です。
酸性度が高い海域のタイルはどうでしょうか。
若いサンゴはほとんど見つかりませんでした。
サンゴモがいないのでピンク色にもなっていません。
サンゴが住み着く場所を他の海草が占領しているんです。
これほどの違いが出るとは予想していませんでした。
高濃度の二酸化炭素はサンゴなどの海洋生物に悪い影響を与えますが一方で良い影響を与える面もあります。
二酸化炭素の気泡は海草の成長を促すため海底を緑豊かな場所に変えます。
海草は陸上の植物と同じように二酸化炭素を吸収してエネルギーに変えるのでよく成長しています。
生い茂った海草は幼い魚たちの格好の住みかとなっています。
成長するとサンゴに移り住む魚もいます。
小さな魚にとってサンゴは敵から身を守る隠れがなのです。
ダニエル・ディクスンは新しい実験を行いました。
魚が隠れがであるサンゴからどれくらい離れるかを調べる実験です。
こちらは酸性度が低い通常の海域で採取された魚です。
魚はサンゴの近くにとどまりほとんど離れようとしません。
ずっとこの調子でしょう。
次は二酸化炭素が噴き出している海域の魚です。
この魚はサンゴからかなり離れ水槽の中をあちこち動き回っています。
隠れがから離れると捕食動物に襲われる危険性が高くなります。
どの魚で実験しても同じでした。
高い酸性度が脳に影響を与え捕食動物を恐れなくなっている可能性があります。
一方高い酸性度に適応している魚も確認されました。
二酸化炭素の泡が噴き出す中で順調に生育しています。
(ラマー)ミツボシクロスズメダイが酸性度が高い場所にあるサンゴに入っていくのを何度も見ました。
ただし住み着いているわけではなく一時的な隠れ場所として利用しているようです。
二酸化炭素の泡の中で生きている魚は高い酸性度に強くなっているようです。
特殊な環境に適応した遺伝子を持つ個体がいればその遺伝子を持つものが生き残り多数派になっていきます。
「遺伝的適応」と呼ばれる現象です。
科学者たちは海の急激な酸性化に対し遺伝的適応が起きる可能性に注目しています。
酸性化した海に対する遺伝的適応の実例は他の場所でも見られます。
アメリカの西海岸では季節ごとに海の浅い部分と深い部分の水が入れ代わり深海から酸性度の高い水が運ばれてきます。
グレチェン・ホフマン教授はこの海岸を研究場所にしています。
カリフォルニアの沿岸では春になると海面に風が吹きつけます。
風によって酸性度が高く冷たい深海の水が海岸まで押し上げられるんです。
深海の水が浮かび上がってくると沿岸の生態系に影響を及ぼします。
酸性度の変化に適応していると見られる生物がいます。
アカウニは藻や海草を適度に食べる事で生態系を健全に保つ役割を果たしています。
酸性度の高い海水に弱いカキと違いアカウニの数は増えています。
アカウニが増えている理由は遺伝子にあるとホフマンは考えています。
(ホフマン)太平洋岸北部のアカウニは酸性度の変化にとても強い事が分かりました。
酸性度の変化に弱い南部のウニに比べるとより多くの遺伝子が殻を作る働きをしています。
北の海に住むウニは特定の遺伝子のスイッチを入れる事で炭酸カルシウムの殻を作る効率を上げていました。
そのため海水の酸性度が高くなっても健康な殻を作り生き延びる事ができたのです。
酸性に強い北のウニと酸性に弱い南のウニを掛け合わせたらどうなるのかを確かめる実験が行われました。
北のオスと南のメス南のオスと北のメスという2つの組み合わせで人工授精をします。
幼生が成長したところで2つを比較します。
(ホフマン)注目しているのは骨の大きさです。
ウニの幼生はいわばテントのようなもので骨はテントの支柱に当たります。
そして炭酸カルシウムで出来ている骨は海水が酸性化すると作られにくくなります。
実験の結果北のウニが持つ優れた特徴は南のウニとの子供にも受け継がれる事が分かりました。
(ホフマン)北のオスと南のメスを掛け合わせた場合幼生は酸性度が高い海水中でも成長する事が分かりました。
重要なのは北のオスが父親だという点です。
酸性度の高い海水に適応したウニの生息場所も確認できました。
酸性度の高い海に適応できる生物は見つかりました。
しかし一つの種だけで生態系を守る事はできません。
レティシア・プレザンスはパプアニューギニアからワシントンに戻り採取したサンプルの分析に取り組んでいます。
分析の結果種の多様性が最も高いのは酸性度が低い通常の海域である事が分かりました。
次に通常の海域と酸性度の高い海域の中間点で採取したサンプルを分析しました。
酸性度が高まるにつれサンゴに異常が見られるようになります。
酸性度が高くなるとサンゴの数は減っていきます。
少し高いくらいの海域では生物の多様性がある程度保たれていますが酸性度が一定のレベルを超えるとほとんど何もいなくなってしまいます。
酸性度がかなり高くなるとサンゴも他の生物も1種か2種しか見られなくなります。
(プレザンス)このようなエビは酸性度が低い通常の海域ならもっとたくさん100種類はいるものです。
プレザンスの分析によれば酸性度が高い海域では通常の海域に比べ小動物の多様性が30%減少していました。
小動物が重要なのはサンゴ礁の食物連鎖を支えているからです。
魚の食料となる小動物がいなくなれば魚も住めなくなりサンゴ礁の生態系は崩壊します。
パプアニューギニアでの調査は終わりに近づいていました。
現地の人々はサンゴ礁の未来を心配しています。
酸性度が高くなるとサンゴはどうなるんですか?
(ファブリシス)サンゴ礁は50年後100年後にもあるけれど種類などが今とは全く変わってしまうでしょうね。
魚も減るかもしれません。
魚は大切な食料ですから困った事になると思います。
既にサンゴ礁は毎年1〜2%の割合で姿を消しています。
解決策はあるのでしょうか。
温室効果ガスの排出を阻止する以外手だてはありません。
温暖化や海の酸性化からサンゴ礁を守るには世界中の二酸化炭素の排出を抑えるのが唯一の手段です。
(グルベルグ)あまりに大ごとで手に負えないと言う人がいますがそれは違います。
未来のために二酸化炭素を出さない再生可能エネルギーに投資すればいいんです。
(グルベルグ)問題は目先の利益にとらわれて地球の環境を守るという長期的な利益を忘れている事です。
(マーク)カキの養殖場を移転する話も持ち上がっていますがそれで済む話ではありません。
今は問題の無い場所に移ってもいずれ問題は追いかけてきます。
逃げ場などありませんよ。
2014/03/24(月) 00:00〜00:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「海の生物が危ない!〜二酸化炭素の脅威〜」[二][字][再]

サンゴが溶け、魚の脳にも異常が…。海により多くの二酸化炭素が溶け込む「酸性化」の影響だ。このまま進むとどうなるのか、海の将来を徹底予測!海からの警告を伝える。

詳細情報
番組内容
二酸化炭素の大量排出で「海の酸性化」が進んでいる。海はどうなってしまうのか…。今、世界の研究者が注目するのが、火山活動の影響でほかより酸性化が進んだ南太平洋の海域だ。その環境は80年後の世界の海を先取りしているという。サンゴが死に、魚の脳にも異常が現れる。一方、酸性の強い海に適応した生物も見つかっている。その遺伝子を生かして生物を守る方法はないのか…。最新研究に密着!(2013年オーストラリア)
出演者
【語り】渡辺徹

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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