・「寂しかないかお金はあるか」
どんな孤独もさだまさしがあれば耐えられる
高度6000m
酸素マスクなしでは気絶してしまう高みからこの冬もまたマッキンリーにレンズを向けた
写真家・松本紀生の被写体はアラスカ
さだまさしを聴きながらたった1人でアラスカをさすらう
そんな酔狂をもう20年続けていた
時には動画も撮影する
(クジラの鳴き声)
危機一髪の局面が何度もあった
けれどひとたびこの大地のとりこになった者は二度と魅力から逃れられない
人はそれをアラスカン・フィーバーと呼ぶ
学生時代あの写真家・星野道夫に憧れた
偉大な背中を追いかけて周囲があきれるような生き方を貫いてきた
厳冬期のアラスカ
夜を徹してじっと待ち続ける瞬間がある
マッキンリーとオーロラが織り成す絶景
生き物の気配から遠く隔絶された氷河の上で今年も50日間独りぼっちだ
松本の一日は筋トレから始まる
毎朝みっちり2時間のメニューをこなしたあとは…
(松本)行きましょうかよいしょ
25kgのおもりを詰めたリュックを背負い1時間のウオーキング
アスリート顔負けの鍛錬は全てアラスカのためだった
夏と冬一年の半分をアラスカで過ごす
42歳になるまで定職に就いたことはない
冬の狙いはオーロラのみ
だが幻想的な光景は運に恵まれなければ出会えない
しかも松本にはこだわりがある
山がくっきり見えてるのは何でかっていうと月の光が強かったからなんです
北米大陸の最高峰とオーロラ
理想のワンカットを撮影できる場所は限られていた
アンカレッジから北へ180km
小さな村からプロペラ機をチャーターした
天候が荒れて2週間飛べなかったこともある
そこはこの時期人間が近づくような場所ではないのだ
標高1600m
松本が着陸したのは北にマッキンリーを一望できるウィスラー氷河だった
雪の深さは2mほど
カメラを据えるポイントは氷河の突端近くになる
油断は禁物だ
(スタッフ)ここでよく撮るんですか?そうですねオーロラ待つ時はここでじ〜っと待ってあの辺にオーロラが出るのを長時間待ったりしますね
夜
風はテントを揺らしていく
無論風呂などない
50日間着替えもしない
周囲の雪を溶かして水を作り食事は一日2食だけ
わずかの米に安くて栄養価の高い乾燥豆を混ぜた雑炊を毎日食べる
時折カレー粉や乾燥わかめで気分転換
腹がいっぱいになればそれでいい
(スタッフ)途中で凍っちゃうんですか?凍ってます動かないですカチカチですカチカチですはい
単調な日々の中では歯磨きも楽しみになる
排泄物は全て持ち帰るのが松本の流儀
(スタッフ)どこでトイレするんですか?はい
もしもブリザードに襲われるとテントはたちまち吹き飛ばされてしまう
だから松本はかまくらを作る
夜の作業には訳がある
オーロラの撮影は日中はできない
昼夜逆転の生活に早く体を慣らすためだった
この晩だけでかまくら作りは14時間にも及んだ
4日目の朝
縦横5m高さ3mほどの雪の山が出来上がった
内部を掘り進み部屋を作ればこれが松本の家になる
写真の技術も独学なら雪山で生きていく技も独学で身につけた
壁の厚みは2m
長く暮らす場所だから細部まで丁寧に
作業は黙々と夜中続く
去年もおととしもその前もずっと1人でやってきたことだ
1畳程度の寝室に小さなキッチンスペースがついた1K
4日目の真夜中恒例の完成祝い
(スタッフ)そうなんですかあ〜
いよいよこれから夜通し空を見上げる毎日だ
オーロラはよく晴れた夜にだけ現れる
けれど松本はめったなことでシャッターを切らない
日が落ちる頃に起き出して夜9時から翌朝の5時6時までひたすら星空を見つめ続ける
納得のいく光にならない限りカメラを取り出すことさえなかった
・「ああ紫陽花ですか」
空が曇ればさだまさし
持参した本を読みながらいつ出るとも知れないオーロラを待つ
両親共に英語教師
星野道夫の本に出会ったのは立命館大学に学び始めた頃だった
星野の生き方に憧れた松本は中退してアラスカ大学に編入
そこは星野が卒業した大学だ
以来アラスカの自然に魅せられてきた
一年の残り半分を過ごす日本では小学生を対象にした講演活動などで生活費を稼いでいる
(歓声)
(児童)ずけぇあれ
(児童)魚!これも苔
(児童たちの歓声)すごいやろものすごく深いふかふかの苔で森全体がこんなふうに覆われてるんよねだからね普通に歩いてるだけで体が沈み込んでいくの体が半分宙に浮いたような感じでふわふわふわふわしたような感じで歩けるそんな森なんよね
夏と冬のアラスカ行きでざっと300万円の費用がかかる
講演活動は貴重な収入源だった
結婚7年になる妻と待ち合わせてこの夜久々の外食
写真展に来た淳子さんに松本が一目惚れした
一年の半分をアラスカで過ごす夫に不満はないのだろうか
ふ〜ん…えっ?うん
共にいられる時間がいとおしい
2人は今も新婚夫婦のようだった
たった1人のかまくら日記
2月6日午後4時ですここに来て初めて雪が降りました真っ白で何にも見えなくなりました雪が降る前は目の前にマッキンリーとかアラスカ山脈の山々がきれいに見えてたんですけど見事に何も見えなくなりました雪が降ってて周りが…雪が降ってるのでオーロラが見られるチャンスは全くありませ〜ん今は我慢の時ですではまた明日お休みなさいえ〜…ということで穏やかな夜なんですけど今日は誕生日です誕生日なんですが特に変わったこともなく淡々と過ごして一日が終わろうとしてます本当に明るい流れ星がす〜っと目の前を流れていきました今日一番感動した瞬間でしたではまた明日お休みなさい
ひと月ぶりに松本の元を訪ねた
あらまぁ…わっ…お久しぶりですいつ来てたんですか?わっすごいそれ
(スタッフ)おはようございますおはようございますいつ来たんですか?結構何回かオーロラ出たんですよ
(スタッフ)そうなんですかうんお二人が帰ってすぐぐらいにも出たんですよ出たけど月光がない時ばっかりなんですよだから山が全然見えなくてで月光がちゃんとある時にオーロラが出たのは1時間ぐらい今までで
(スタッフ)でもそれぐらい出たんですかうんそれぐらいは出てくれましたその1時間だけですね思うような写真が撮れたのは
松本に焦りの影は見えなかった
むしろ楽しんでいるようだった
その夜松本はかまくらからテントを持ち出し氷河の上で明かりをともした
月明かりが足りない夜はテントを使って風景のスケール感を強調する
今夜はオーロラが出そうだ
夜9時
稜線の向こうに緑のカーテンが揺れ始めた
あぁ〜いいですね
読みは的中した
やがて神々しい輝きが空にあふれた
ハハッハハハ…
松本の表情は恍惚としていた
続けざまにシャッターを切る
これほど運に恵まれた冬は初めてだ
とりわけ気に入ったワンカットは吸い込まれそうな光のシャワー
じゃあお疲れさまでした
(スタッフ)お疲れさまですよかったですね今日はホントゆっくり寝てくださいお休みなさいまた明日
予定はまだあと2週間以上あった
もっとすごいオーロラが出るかもしれない
そう考えただけで体を興奮が駆け巡った
今エースは自問自答を繰り返す
次回は重圧と責任を背負ったエースの本音
歴代のエースと呼ばれてる人たちに申し訳が立たない…2014/03/23(日) 23:35〜00:05
MBS毎日放送
情熱大陸[字]【写真家/松本紀生▽“赤いオーロラ”を追う写真家】
写真家/松本紀生▽愛妻を想いつつ“赤いオーロラ”を追え!▽人生をアラスカに捧げた写真家が奇跡の一瞬を追い続ける
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番組内容
写真家・松本紀生が狙っている写真は20年間変わっていない。アメリカ合衆国最北端の北米大陸最高峰・マッキンリーを覆いつくすように出現する“赤いオーロラ”だ。番組は、昨年11月から“赤いオーロラ”を追い続ける姿に密着した。松本は現地に衛星電話を持ち込み、毎日、妻への電話とメールを欠かさない。最愛の妻を日本に残し、極寒の地・アラスカに人生を捧げる写真家の前に果たして“赤いオーロラ”は現れるのか?
出演者
【プロフィール】
松本紀生
写真家。1972年、愛媛県生まれ。大学時代、星野道夫の著書「アラスカ 光と風」に出会い感銘を受け、大学を中退しアラスカ大学へ編入。キャンプスキルや写真の技術は独学で習得。今では1年の約半分(夏と冬)をアラスカで過ごし、夏は北極圏や無人島でクジラや熊の写真を撮り、冬は氷河の上のかまくらで、オーロラが出るのを待ち続けている。(現在42歳)
制作
【製作著作】MBS(毎日放送)
【制作協力】オルタスジャパン
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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サンプリングレート : 48kHz
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