父の花、咲く春〜岐阜発地域ドラマ〜 2014.02.23

(次郎)キャバクラいかがですか。
今夜はサンタパーティーやってます。
キャバクラいかがですか。
名古屋一の美女ぞろい。
今夜はサンタパーティーやってます。
1セット6,000円です。
キャバクラいかがですか。
亜美?
(亜美)えっジロちゃん?何やってんだよ?知り合い?ちょっと…。
行こう。
今日来るんだろ?おい新入り。
早く客引っ張ってこいよお前。
キャバクラいかがですか。
1セット6,000円です。
回想あ辻次郎と申します。
求人誌で御社の広告を拝見し…。
申し訳ございませんがその募集は締め切らせて頂きました。
「ハハキトク」って…自分で言うか。
(インターホン)
(インターホン)母ちゃん?おらんの?あの…すいません。
うわっ!
(美知子)久しぶり。
何だよ。
「ハハキトク」。
本気にした?アハハハ…。
この人捜してきて。
梅次さんっていってね。
岐阜の野本っていう置屋に今もおると思うの。
置屋?芸者さん置いとるとこ。
捜してどうするん?どうせ暇でしょ。
あんたにも分け前あげるから。
金でも貸しとる訳?会えば分かるわ。
これ前払いね。
次郎ちゃんよろしくね。
じゃあ仕事に戻るわ。

(梅花)何か御用ですか?あすみません。
あのこの人捜してるんですけど。
ああ…梅次にいさん。
おにいさん?どういったご用件で?それは直接本人に。
すいません。
今からお座敷ですので失礼します。

(三味線)
(晴代)・「神の昔は二柱」・「花の岩戸を開くや」・「梅の見事え」・「花の盛り」・「面白や」
(拍手)
(山藤)ああこれでもう一年も終わるんやな。
そうですね。
失礼します。
梅乃また一段とうまなったな。
(梅乃)ありがとうございます。
(晴代)褒めると手ぇ抜きますんでほどほどに。
ほんならこれくらいにしとこうか。
ちょっとお酒取ってまいります。
山藤さん。
先日の帯のお話なんですけどね。
あああれな…。
あ。
つけてきたんですか?はい。
すいません。
梅花どなたさん?梅次にいさんを捜してるらしいんです。
梅次?おおお…入れ。
おう入れ。
うん。
すいません。
おお懐かしいなあ。
幇間梅次か…。
ホウカン?男芸者の事やわ。
男芸者…。
あ…。
この人ですよね?お〜ほやほや。
ハハハ。
梅次も若いけど晴代さんも新品やな。
これおかあさんですか?ほうやけど。
梅乃。
あの失礼ですが梅次とはどういうご関係で?あ…えっと…。
母に捜してくれって頼まれて。
お母さんのお名前は?辻美知子ですけど。
あ〜やっぱり。
あんた次郎ちゃん?え?あはい…。
まあ。
あん時の坊か?梅次と料理屋の美知子ちゃんの?何や梅次は家出でもしたんか?どういう事ですか?それはこっちのせりふやわ。
何で親父捜しとるんや?親父?
(山藤)梅次はあんたの親父やろ?ちょっと待って下さい。
あの連絡先教えて下さい。
何か分かったら知らせたいんで。
私も知りたいんです。
梅次にいさんが今どこにいるか。
野本を出てってそれっきりで…。
ホントもういいんで。
え?どうやった?これ返すわ。
何?おらんかった。
取っといて。
その人俺の親父?うんまあそんなもん。
あんたの名前次郎の次は梅次の次よ。
何で先に言わんの?言ったらあんた行かへんでしょ?当たり前やろ。
何なんや今更。
だからお母さんが死ぬ前に…。
もう冗談はいいって。
お母さんがおらんようになったらあんた一人やよ。
いつまでそれ言っとるん?俺一人でもう大丈夫やって。
やといいんやけどね…。
俺に会わせたい訳や。
ううん。
お母さんがちょっと用があっただけ。
何の用だよ?サッカー部の良太君結婚したんやね?赤ちゃんだっこしとってびっくりしたわ。
あんたはどうなの?誰かおらへんの?おるよ彼女くらい。
お〜。
じゃあ早く連れといで。
一度ぐらい息子の彼女とお酒でも飲みたいやん。
あんたの事さかなにして。
どっか悪いん?何?薬。
ああ。
この年になったらどっかしらガタがくるわ。
ああいらっしゃい。
どうぞ。
失礼します。
せっかく来たんやでお父さんのおった世界見ていって。
今は鳴り物のお稽古中や。
ここは置屋っていって芸子の家なんやわ。
芸子はここで暮らしてお座敷に呼ばれるとここから出かけていくの。
ほうやもんで同じ置屋の者は家族みたいなもんや。
あの子らは私の事をおかあさんて呼ぶんやわ。
ここが梅次の使っとった部屋。
今は物置になっとるけど。
ほれここ。
すり足でこすれた跡。
暇さえあれば舞の稽古しとった。
梅次さんもここに住んでたんですか?住み込みは女だけでね梅次は通っとった。
ほうやで。
あんたのお母さんとはてっきり続いとるもんやと。
ごめんね何も知らなんで。
あっあった。
梅次の着とった着物。
うちは呉服屋でな羽振りのいい時はしょっちゅう梅次を座敷へ呼んでよう遊んどったわ。
何見とれてんの?え?
(晴代)梅花。
からかったらあかんよ。
よっしゃ。
ありがとうございます。
(山藤)昔岐阜には芸子舞子合わせて300もおったんや。
それが今では20までのうなってな。
細々とやっとります。
ハハハハハ…。
幇間はゼロや。
最後の幇間が梅次やったからなあ。
(山藤)間をたすけると書いて幇間。
太鼓持ちともいうけどもなあ。
こっちの方が俺は好きやわ。
人と人の間をたすける男芸者。
面白いもの見せたるわ。
上着…。
おおあんたのでええか。
ちょっと…。
ええか。
「キスして…ああキスして」。
抱き合っとる男と女に見えへんか?キスを迫られてうれし恥ずかし…。
「キスして…。
ああ〜キスして〜」。
山藤さんお上手やないですか。
アッハハハ…面白うなかったか?いや〜梅次やったらもっと面白いんやけどな。
幇間ってこういう事するんですか。
ああもちろんほかにもあるけどな。
(晴代)そろそろ時間ですので続きはお舞台で。
おおそうやな。
(拍手)
(三味線)
(晴代)・「唐傘の骨はバラバラ」・「紙や破れても」さっきのキッスみたいな芸をチャリ舞っていってな。
お座敷を和ませ客と客客と芸子をつなぐ幇間の大事な芸の一つや。
芸子の引き立て役って事ですか?ああ引き立て役や。
客を引き立て芸子舞子を引き立てる。
幇間はスポットライトは浴びへんのや。
梅次みたいな幇間はもう出てこんかもしれんな〜。
え?どうしてですか?まああいつは客が何を見たいんかよう分かっとる。
あん時もそうや。
バブルがはじけてうちの呉服屋が傾いてな。
最期に梅次の舞を見てから首くくろ思うて梅次を座敷に呼んだんやわ。

(山藤)これが見納めやと思って見入っとったらあいつええとこでやめてまった。
「その続きはまた今度にしましょ」って言ってな。
梅次のやつ俺が首くくろうと思っていたのを見抜いとった。
梅次に救われたのは俺だけやないはずや。
(拍手)じゃあ何で俺らは救われないんですかね?ん?俺だって母親に早く楽させてやりたかったですよ。
でも大学諦めて勤めた工場は潰れて仕事変える度に条件が悪くなってキャバクラの仕事だっていつまで続くか分からないし。
「他人救う前に自分の家族なんとかしろよ」って言いたいです。
言ったらええやないか。
梅次を見つけてぶつけたらええ。
美濃へ行ってみ。
梅次のふるさとや。
美濃は初めて?梅次にいさんに会ったら私の芸見せて褒めてもらうんだ。
悪かったねお役に立てなんで。
いえありがとうございました。
ありがとうございました。
にわかが始まるよ。
はよはよ。
今にわかって言った?
(拍子木の音)「ちょっとちょっとそこの看護師さん」。
「わっちの事かな?」この役者さんたちみんな素人なんだって。
地区対抗でしゃれの面白さを競うらしいよ。
梅次にいさんも燃えたって。
(医者役)「ほんならわっち早速見たるで。
後ろ向きにせや」。
「背中から」。
(笑い声)「こ〜らおまはんあかんわな。
すぐにしゅじゅちゅやの」。
「手術だけに修業するならぜってぇにギリシャと決まっとるわな」。
(観客)そらまたどうしてやな。
「さあギリシャの事ならな」。
(観客)どうじゃな。
「エーゲ海
(ええ外科医)があるわな」。
(観客)エッキョウ。
(拍手)この顔がもっと見たくて梅次にいさんは幇間になったのかもね。
梅次にいさんの事聞いてみよっか。
すいません。
はい。
あのすいませんちょっと聞きたいんですけど。
この人捜してるんですけど知りませんか?この人?沢田さん。
(沢田)何や。
この人って梅次さん?おお梅次や。
わっけぇな〜。
梅次?ああ。
これどしたん?岐阜の置屋の者です。
ああ〜。
梅次。
(沢田)今日はまたさっぶいな〜。
やっぱり美濃は寒いですね。
(沢田)ああ。
こっちやわ。
梅次お客さんや。
「にわか仲間で立派な墓建てたる」って言ったんやけど梅次のやつ「この梅を俺やと思ってくれ」って。
「こんなさみしい場所でええんかって」って聞いたらな「それがええんや」て。
「花が咲かへんような所に咲くのが梅次流やって」って言って。
もう3年になるな〜。
あいつは子どもの頃二親を亡くして親戚をたらい回しにされてないっつも隅っこで隠れるようににわかの台本を書いとった。
ホントに人を楽しませるのが好きな男やった。
美濃に行ってきた。
…でおった?おらんかった。
梅の木になっとった。
そう。
「そう」って…それだけ?何なんや!?そっちが「会いたい」って言うから捜したのに。
「会いたい」って言ったっけ?「何か用がある」って。
ホントはね次郎に会わせたかったんやわ。
梅次さんに会ったら何か変わるかなって。
何かって何?今更何期待しとるんや?男芸者か何だか知らんけどこいつが俺ら捨てたせいで俺ら苦労しとるんやろ。
違う違う。
逆逆。
何が?梅次さんはうちらの事捨てたんやなくて拾ってくれたの。
は?あんたみごもって一人で困っとる時相談に乗ってくれたのが梅次さんなの。
「美知子ちゃんはどうしたい?」って聞いてくれて…。
ちょっと待って。
梅次って人は親父じゃないって事?そう。
ちょっとどういう事?最後まで聞いて。
で梅次さんがね「よかったな」って言ってくれて「男は逃げたけど赤ちゃんは逃げとらん。
美知子ちゃんは独りぼっちやない。
2人や。
よかったな〜」って。
梅次さんに励まされて産んでも大丈夫やって思った。
あんたが産まれてからもようしてくれてね〜。
何なんやそれ。
でも結局俺らの事捨てたんやろ?逃げた親父と梅次ってやつ2度捨てられたって事か。
違うんやて。
私が梅次さんから離れたの。
だから梅次さんの事悪く言わんといて。
梅次さんならなんとかしてくれるって思ったんやけど…。
まさか先越されとったとは。
母ちゃん。
ホントに死ぬのかよ?そりゃ人間いつかは死ぬわ。
死ななんだら化けもんやわ。
笑い事やないやろ。
どれくらい悪いんや?知っとった?笑うと寿命が延びるんやって。
あんたはもう少し笑わんと。
笑って何になるんや?どうにもならんかったやないか!?次郎。
やる気ないなら辞めていいよ。
いえ頑張ります。
続けさせて下さい。
機械相手の方がよかった?はい?工場潰れたのは気の毒だけどさぜいたく言ってらんないよね?この不景気でさ。
仕事にありつけるだけありがたいってみんな頑張って働いてくれてる訳。
お前みたいなやつはどこ行ったってうまくいかねえよ。
じゃあどうしたらいいんですか?それぐらい自分で考えろよ。
そういうとこが甘えてんだよな〜。
いっそ死んで出直したら?死ななきゃ直んねえよその性格。
だったら殺してくれよ。
だったら殺して下さいよ!殺して下さいよ!何やってんだ辻!やめろよ!おい落ち着け!うっ!
(足音)
(足音)
(足音)どこの色男かと思った。
よいしょ。
残念だったね。
お父さんに会えなくて。
親父じゃなかった。
え?ばかだろ?親父でもないやつ捜し回って。
全部無駄。
まあ一番無駄なのは俺って人間だけど。
母親が死にそうだってのに何もできない。
ちょっと来て。
いてっ。
何だよ?いいから来て。
見て。
たばこ?今でも痛い。
お父さんの事嫌いになれないから。
きれいな舞子さんに憧れて家から逃げ出したけどどこまで逃げたってこの腕の傷はついてくるんだよね。
だったらこの傷も私なんだって開き直るしかない。
この傷と一緒に生きていかなきゃいけないって教えてくれたのが梅次にいさん。
いった〜。
生きとる証拠。
これ持っとって。
父親でもないのに梅次から一文字もらうなんて。
美知子ちゃんよっぽど梅次にほれとったんやね〜。
責任持てぇへんのに気を持たせるだけ持たせて…梅次も困ったもんや。
でもどうして別れちゃったんですかね。
どうしてやろね?幇間は結婚できないから?え?幇間や芸子は結婚したら辞めなならんの。
でもそれは表向き。
うまい事続ける方法はあったやろうに。
じゃあ何で?男と女の事は他人には分からんわ。
梅次の事恨んどる?分かりません。
ずっと捨てられたと思ってました。
だから何やっても駄目なんだって。
でも人のせいにするのも疲れました。
梅次って人が親父だったって事にしちゃ駄目ですか?一時でも俺の事を父親みたいにかわいがってくれてた人がいて俺もその人の事を父親だと思ってて。
そういう事にしちゃ駄目ですか?うそでも。
この鼓290歳。
お道具からしたら私らの一生はほんの一部。
私らは短い命の花をつないで芸事を受け継いでいくだけ。
でもこうやってつながった私ら置屋のもんはみんな家族なんやわ。
この鼓も長生きしとるといろんな事があってね。
小さな男の子が小さな手で打ってくれた事もあった。
男の子はここの売れっ子やった幇間にだっこされてポ〜ンて音が鳴ると頭をクシャクシャってなでられてね。
打ってみる?回想
(梅次)次郎。
(梅次)よしそれじゃあ鼓さんを起こそう。
ええか?鼓さん起きて〜!ポン!鼓さん起きて〜!ポン!おええ音ええ音。
ポンポンポンポンポン…。
アッハハハハ…。
上手やな〜次郎。
アッハハ。
上手上手。

(晴代)梅次と美知子ちゃんが出会ってあんたが産まれた事は間違いない。
あんたにしかできへん事があるはずや。
(泣き声)その短い命の花あんたいつ咲かせるつもり?
(ノック)ハハッ。
連絡ないから死んだかと思った。
死なんて。
せっかく人が気持ちよく寝とったのに。
何を始める気?母ちゃんが俺を梅次さんに会わせようとした理由何となく分かった。
笑えん人生でもくさるよりは笑ってやろうってそういう人が俺の親父やったんやって。
俺もう一人で大丈夫やから。
母ちゃんも会いたかったんやろ?俺が梅次さんに会わせたる。

(三味線)・「人は武士」・「気概は高山彦九郎」・「京の三条の橋の上」・「はるかに宮城をネ」・「伏し拝み」・「落つる涙は加茂の水」ありがとう。
母ちゃん。
あんたにお礼言ったんやない。
梅次さんにや。
何なんやそれ。

(美知子)しかし下手くそやね。
人に見せるの100年早いわ。
・100年待てばええやん。
ええの?ホントに待つよ。
いや…ごめん。
何それ。
ハハッ。
幇間梅次でございます。
(拍手)2014/02/23(日) 15:05〜16:05
NHK総合1・神戸
父の花、咲く春〜岐阜発地域ドラマ〜[字]

父を知らずに育った次郎は、病気の母から梅次という男を探せと言われ、芸妓たちが住む置屋を訪ねて行く。岐阜の長良川沿いの町を舞台に描く、桐谷健太の初主演ドラマ!

詳細情報
番組内容
父を知らずに育った次郎(桐谷健太)は、病気の母(伊藤蘭)から、梅次(野村又三郎)という男を捜せと言われる。岐阜の置き屋を訪れると、そこには美しい芸ぎ・梅花(蓮佛美沙子)、粋な呉服屋・山藤(林隆三)、置き屋のおかみ晴代(岩本多代)ら、悲しみを背負いながらも笑顔で生きる人々がいた。梅次が父親らしいと知った次郎は、自分の人生と向き合う。岐阜に残る長良川沿いの美しい町を舞台に描く、桐谷の初主演ドラマ。
出演者
【出演】桐谷健太,伊藤蘭,林隆三,岩本多代,蓮佛美沙子,日野陽仁,柴川菜月,野村又三郎
原作・脚本
【作】今井雅子
音楽
【音楽】冬野ユミ

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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