東日本大震災から3年。
福島の町に子どもたちの笑い声が戻ってきました。
今みんなが夢中になっているのは身の丈60cm大きな力士の紙相撲。
原発事故のあと外遊びを控えていた子どもたち。
少しでも体を動かせる遊びをと考案されました。
その名も…力士は業務用のクラフト紙土俵は段ボールで出来ています。
開発したのは行司役のこの人松田和人さんです。
松田さんはほかにも津波の被害を受けた保育園に段ボール製の学習机を贈るなど被災地支援のボランティアを行ってきました。
そんな松田さんの本業は段ボール箱の製造会社マツダ紙工業社長。
モノ作りの街東大阪に会社を構えています。
どんな箱でも注文に応じて作れる技術力と柔軟性が会社の売りです。
ビジネスチャンスを広げようとタッグを組むのは…新市場を開拓すべく奮闘する企業の挑戦に迫ります。
関西を元気にする方々を紹介していく「新・ルソンの壷」。
今回の壷ナビゲーターは中島さなえさんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
中島さん今日はいつものスタジオがすごくにぎやかですね。
童心に返って遊べるような部屋になってますけども実はこれ全部段ボールで出来てるんですよ。
段ボールで出来ているという事は…。
あっ軽い!簡単に持ち上げられるでしょ。
ひょいと。
すごい!これも見て下さい。
ここの段ボールのなみなみで風合いを出したライトスタンドですね。
へえ〜!こんなにおしゃれな…ちょっと和む。
あとは家庭で気軽に使えるタンスですとかそこのワインを立てかけるスタンドですね。
いろんな…家の中にいろいろ置けそうなものばかり。
段ボールってお引っ越しの時とか新しい家具や家電が来た時にだけお見受けするイメージだったんですけども。
そうなんです。
段ボールって実はアイデア次第で思いも寄らない使い方ができるものだと私も今回知ったんですけれどもこん包用だけと考えられていた段ボールの固定概念を壊すような会社なんですね今回ご紹介するのが。
さまざまな段ボール製品はいかに生み出されたのか。
その秘密を探りに中島さんは東大阪へ向かいました。
中島さなえと申します。
マツダ紙工業の松田です。
社長の松田和人さんは父から会社を受け継いだ2代目です。
まずは工場を案内してもらいます。
松田さんの会社では地元の家電や人形メーカーなどの依頼で大小さまざまな段ボール箱や化粧箱を作っています。
段ボール箱と化粧箱を作るのは全く別の機械。
両方を手がける会社は業界では非常に珍しいそうです。
これがうちかなり苦労した商品なんですけど…。
これ何ですか?こちらは試験管を作る会社から依頼された箱。
組み立てが簡単でかつ試験管同士がぶつかって割れないように作る事が条件でした。
そこで松田さんは一から設計を開始。
試行錯誤の末穴の開いた紙を引き起こし爪を差し込むだけで完成する単純な構造を考案しました。
分かります?こうして…。
それでここへ差し込んじゃう。
これでほぼ出来てますね。
出来てます。
その状態です。
顧客の求めに応じてどんな箱でも作る。
そんな信条の下これまで作った製品はなんと…この技術力を生かして2年前から自社商品の開発と販売も始めました。
かわいらしい。
カラフルですね。
そうですね。
こちらは売れ筋商品の段ボール製家具。
整理ダンスそして勉強机と椅子のセットです。
一見すると特に変わった点はないように見えますが…。
耐久性と強度を高めるための技術が凝縮されています。
出口。
ちょっと持ってきてくれる?うわ〜何かすごいたくさん。
中島さん勉強机セットの組み立てに挑戦しながらその秘密を教えてもらう事に。
実はこれ強化段ボールと呼ばれる特殊な加工を施したもの。
重要なのが波形の部分。
素材の密度は通常の1.5倍。
圧縮し薬品で固めてあります。
強度は倍以上もあるそうです。
ポイントは折り方と組み合わせ方です。
ここの溝にここをはめ込んで下さい。
はい。
段ボールは折り曲げたり垂直に組み合わせたりするとプラスチックや木材に引けを取らない強度を発揮するそうです。
松田さんはその効果的な組み立て法を開発。
現在特許を出願中です。
入りました。
(出口)入ってます入ってます。
これで完成です。
(拍手)
(松田)これで椅子の出来上がりですね。
椅子に座ってみて下さい。
私が?大丈夫ですかね?大丈夫なんでしょうか?これで潰れたら結構…。
あっ!あっ!しっかりしてる。
しっかりしてますよね。
全然いける。
お客さんの要求に応えて作っていく技術が組んで椅子を丈夫にしたりとかアイデアもあるんですけど強度を高める要素にすごく役に立っていますね。
松田さんの会社の創業は昭和33年。
父の重夫さんが設立しました。
高度成長の波に乗り全盛期の年商は7億円。
順調な経営を続けてきました。
ところがバブル崩壊後から取引先が海外へ移転したり事業を縮小したりしたため売り上げは激減。
ついには1,000万円の赤字を抱えるまでに業績は悪化してしまいます。
この時会社の立て直しを託されたのが当時証券会社に勤めていた松田さんでした。
家業を守るために会社を退職。
ですがその胸中は複雑でした。
厳しい状況でしたが松田さんは持ち前の営業力とコストカットの断行で立て直しに成功。
しかしスケールの小ささゆえになかなか仕事にやりがいを見いだせなかったと言います。
その意識を変えたのが東日本大震災でした。
寝る場所もままならない避難所の様子をテレビで知った松田さんは阪神・淡路大震災での経験を思い出します。
ちょっと支援しようという事でちょうど西宮の中学校へそれを届けたんですよね。
その事を思い出したんですわ。
松田さんも段ボール会社ならではの支援をしようと決意します。
しかし東日本大震災の被災者は膨大でした。
そこで同じ量の段ボールでも効率的に間仕切りができるよう箱型ではなく1枚板の自立式を急きょ開発。
社員にボランティアを募って夜通し作り続け2,500セットを福島の避難所に届けました。
松田さんの宝物があるというので見せてもらいました。
震災から4か月後感謝状と共に送り返されてきた間仕切りです。
あそこにイラストがあるのは?これ鉛筆で描かれたんですよ。
これ鉛筆で描いてるんです。
これ全部鉛筆なんだ。
すごいですねこの被災者の方に贈った段ボールのついたてがカンバスになってそこがまた戻ってきて…。
今度逆に僕らの励みになって…。
人の役に立つというモノ作りの原点を気付かせてくれた宝物です。
松田さんは今でも折を見ては絵の送り主鎌田さんを訪ね避難生活を続ける中で何が必要か要望を聞き続けています。
あっ!これ。
そう。
うわっ!すごい。
この整理ダンスもそんな声を受けて開発しました。
避難所でもプライバシーが保てると特に女性たちに好評でした。
それがいいそうだね。
ほかにも松田さんは女性用更衣室と授乳室を兼ねたブースを開発。
あの学習机と椅子のセットももともとは被災者支援のために知恵を絞り作り上げたものでした。
段ボール家具は軽く移動が簡単。
畳んでしまう事もできるためスペースの限られた避難所などで大いに役立ちました。
最近松田さんのもとには数々の支援品を知った自治体から「備蓄品として購入したい」という依頼が舞い込むようになりました。
この日商品説明のために訪れたのは福島県の郡山市役所。
新たな大地震も心配される中松田さんの商品は全国から注目されています。
箱にしか使えないと思っていた段ボール。
しかし今松田さんはそれは無限の可能性を秘めた素材だと考えています。
頑張った分は後で返ってくると思ってるんでそこのところを思えるようになった事が非常に変わりましたね。
最初は松田さん自身は段ボールそのものに対してやりがいを感じていらっしゃらなかったとおっしゃってたんですけど…。
松田さんにお会いしてお話しして気付いたんですけどすごく穏やかそうに見えて熱があるというか熱い方なんですよね。
そういう方だからこそ何か見いだしたいというか充実感であるとか役立つ仕事の意義というのを…。
仕事の意義というのは段ボールの使いみちですとかもっと役立てないかというのをずっと悩んで考えてらっしゃったみたいなんです。
全て熱意の結晶なんですね。
そうですね。
でも実際椅子を作られたじゃないですか?そうなんです。
私結構工作とかすごい苦手ですぐぶっ潰しちゃう方なんですけどもそんな私でも無事に完成させる事ができて。
大体手順どおりにちゃんとやれば10分ぐらいで出来上がるそうなんですね。
そんなにすぐ出来るものなんですか?あと折り畳めるというのがいいんじゃないですか。
やっぱりしまい場所がないじゃないですか。
繰り返し畳んだりまた組み立てたり…。
そうですね。
コンパクトに使えるし。
もう要らないかなという時でもリサイクルに出せるじゃないですか。
ああそうですよね。
でもこうして段ボールを被災地の方を支援する中で逆にそこでその魅力に気付くという機会になったという事なんですよね。
そうですね。
やっぱり段ボールって物を包むだけのものですぐに捨ててしまうものですとかそういった固定概念を変えていった事で新しいものが生み出されたというのは思いましたね。
そうですよね。
更に松田さんが素材としての段ボールの可能性を更に広げたいという事で新たな商品開発に取り組んでいるんです。
この日松田さんの会社にある訪問者がやって来ました。
いらっしゃいいらっしゃい。
小さな子どもたちとそしてその母親。
実はこの女性たち東大阪の主婦サークルギャルママ商品開発部のメンバー。
消費者の視点から企業にさまざまなアドバイスをしています。
松田さんの会社では2年前から4人のギャルママと時給1,000円で契約。
コラボレーション商品を生み出してきました。
現在取り組んでいるのは子ども用の小物入れの開発です。
中小企業では開発の費用も時間も限られるためギャルママたちの情報と発想は貴重です。
実際アイデアを取り入れる事で売り上げは大きく伸びました。
例えば被災者支援用に考案した段ボールの勉強机にギャルママたちのアドバイスで「カワイイ」をプラス。
すると発売から1年で200個以上を受注。
売り上げが以前の倍になりました。
ギャルママのアイデアでモデルチェンジした商品はほかにも。
整理ダンスはカラフルに変身。
子どもたちが自分で服を片づけられるよう引き出しごとにしまうものが分かるシールもつけました。
試作品はギャルママたちが使用して更に改良。
使い勝手は折り紙付きです。
軽い力で開け閉めができるので子どもたちの評判も上々。
更にこちらの商品トイレトレーニング用の便座置きはギャルママたちの要望から誕生しました。
実はこれママたちが一番欲しかったものだそうです。
次々と飛び出すアイデアは思いも寄らない形で段ボールの可能性を広げていきます。
これまでなかった商品の数々。
今さまざまな業界からも大きく注目されています。
2月東京で行われた見本市。
20万人ものバイヤーが訪れるこのイベントでも整理ダンスや学習机便座置きは大人気でした。
こちらの男性は台湾の貿易商。
松田さんのブースを訪れたバイヤーは200人以上。
具体的な商談も進行中で新たな商品開発の依頼もありました。
松田さんの挑戦は確実にビジネスに結び付きつつあります。
もう私はVTRを見て段ボールという概念がホントに変わってしまったんですけど中島さんいかがですか?私もこの取材に行って段ボールでこんな事もできるんだと知ってから周りのものを見た時に「これもできるんじゃない?できるんじゃない?作ってほしいな」というふうに変わりましたからね。
もう家まで建てられるんじゃないかぐらいの。
松田さんにとってはただの段ボールだったものが今や夢の素材になってるとおっしゃってましたね。
段ボールが?はい。
では中島さん今回この会社を取材して一番感じられた事それ何ですか?そうですね。
やっぱりキーワードは「変化」。
変化する事だと思います。
一枚の平面だったものがそれを組み合わせる事によって立体になっていろんな形になっていくというのも驚きましたし若い方とか消費者の方そういった方を巻き込んで意見をどんどん取り入れて新しいものがどんどん出来ていくというのがホントに驚いたところだったので「変化」というのが今回のキーワードかなと思いました。
変化の輪がホントに広がっていったんですね。
段ボールの可能性をとことん追求し続ける。
そんな松田さんにゴールはありません。
(松田)どうもお世話になります。
失礼します。
この日の打ち合わせ相手は近畿大学芸術学科の学生たち。
松田さんは若者向けの商品開発を若者たち自身の力を借りて進めようとしているのです。
こちらの学生は筆箱の組み立てキットを提案。
更にはこんな提案も。
なんと水を吸いやすい段ボールの弱点を逆に生かした一輪挿しです。
これまで段ボール製品が存在しえなかった分野への進出。
しかしそこに松田さんは大きなやりがいと新たなビジネスチャンスを見いだしています。
2014/03/09(日) 07:45〜08:10
NHK総合1・神戸
新・ルソンの壷「アイデア勝負で段ボール革命!」[字]
“段ボール”と言えば梱包・輸送用の箱、というこれまでの常識を覆そうとする町工場の挑戦に密着。整理ダンスに学習机、照明など、数々のヒット商品を生み出す秘密とは!?
詳細情報
番組内容
東大阪にあるマツダ紙工業は、バブル崩壊後、赤字に苦しんでいた。そのテコ入れを託されたのが現社長・松田和人さんだ。松田さんは、苦労しつつも経営を再建するが、やりがいのなさを感じていた。いずれ捨てられてしまう運命の段ボールを悲嘆するが故だった。そんな松田さんの転機になったのが、東日本大震災だ。段ボールを使って被災者を支援するうちに、その魅力に気付かされたという。段ボールの可能性を追求する最前線を追う。
出演者
【出演】マツダ紙工業社長…松田和人,中島さなえ,田代杏子
ジャンル :
ニュース/報道 – 経済・市況
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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