〜昔巳之吉という若いきこりがいました。
親方の茂作じいさんと毎日川を渡って山へ入り日が傾くまで山仕事をします。
(巳之吉)親父さん雪が降ってきた。
(茂作)ああ急がねば。
ところが瞬く間に吹雪になり…。
やっと川へ着いたときには渡し舟はもう引き上げてしまったあとでした。
2人は渡し場の小屋に逃げ込みました。
火をおこせない小屋で夜を明かすしかありませんでした。
閉めたはずの戸が開いて白い着物を着た女が立っていました。
誰じゃ?すると女は茂作じいさんの上に覆いかぶさり口から白い息を吹きかけました。
巳之吉は恐ろしくて声も出ません。
お前は若くてきれいだね。
お前は助けてやろう。
でも今見たことを人に話したらお前の命はないよ。
ハァ…ハァ…ハァ…。
親父さん!親父さん!親父さん!あぁ…。
翌朝船頭が小屋に入ると倒れている2人を見つけました。
そして巳之吉1人が助かったのでした。
しばらくして巳之吉は1人で山仕事を始めました。
あの吹雪の夜のことを思い出すことはありませんでした。
そしてまた冬がめぐってきました。
帰りの渡し舟に旅姿の若い娘が乗り合わせていました。
舟を降りると娘が先に声をかけてきました。
娘は身寄りがなく江戸へ働きに向かう途中だと言うのです。
これから宿探しは大変だ。
家で休むといい。
わし1人だで気兼ねはいらん。
冷えたじゃろう。
茶でもどうじゃ?ありがとうございます。
あっ…。
あ…いやずいぶんと手が冷たいね。
すまねえ。
ここでゆっくりあったまっていくとええ。
遠慮はいらねえ。
おはようございます。
お…おはようさん。
お雪と名乗る娘はこの日から家にいて巳之吉の帰りを待つようになりました。
巳之吉はお雪と所帯を持ちやがて子供も産まれいつしか長い歳月が流れていました。
あっちゃんが帰ってきた。
ちゃ〜ん!不思議なことにお雪はこの家に来たときのまま少しも歳をとりませんでした。
その年の冬のことです。
巳之吉はあの吹雪の夜の出来事をはっきり思い出していました。
昔のことだがわしに山仕事をいろいろ教えてくれた茂作じいさんという人がいてなあれは渡し守の小屋に泊まった夜だった。
ものすごい吹雪でな。
目を覚ますと白い着物の女がじいさんに息を吹きかけあっという間に凍え死んでしまった。
とうとう話してしまいましたね。
何がだ?お雪。
あっ!あぁっ!人に話したらお前の命はないと言ったのに…。
お…お雪。
巳之吉お前が話さないでいたなら私はいつまでもこうしていられたのに。
だが今となってはこの子のためにお前の命は取らぬ。
大事に育ててください。
もし子供を不幸にしたらその時は…許さない。
お雪!お雪!お雪!それ以来雪女が姿を現すことはありませんでした。
そして巳之吉は雪女との最後の約束を守り子供を大切に育てたということです。
昔ある長者様に1人の娘がいました。
どこ?どこにいるの?あっ。
これこれそんなに走っては転んでしまう。
歳をとって出来た娘なのでそれはかわいがり危ないからと門の外へ出ることも許しません。
その代わり遊び相手に1頭の馬を与えました。
雪が解けた日向の匂い…うん春の匂いだ。
お前は今日からハルと名付けよう。
ウフフ。
その日から娘とハルはいつも一緒でした。
ハルもしゃべれるようになったらいいのにな〜。
ウフフ。
ウフフ。
年頃になって娘は美しく成長しました。
そしてハルも堂々とした立派な馬に育ったのですが…。
いつの頃からか元気がなくなり大好きだった草も食べようとしません。
馬の医者に診てもらったが「どこも悪いところはない」と言っている。
ハルどうか食べておくれ。
お茶のお稽古の日だろ先生がお待ちかねだぞ。
はい今まいります。
おっ!
(馬のいななき)これどうしたハル!んっ!んっ!《娘がうっかり蹴られでもしたら…》心配になった長者様はこっそり馬買いを呼びました。
そしてハルは売られることになりました。
大変だ!馬が…馬が岬の崖から…。
村へ向かう途中突然ハルが暴れだし真っ逆さまに海に落ちたというのです。
《そんな…ハル遠くへ行くのがイヤで…》娘はハルを救えなかったことを悔やんで機織り小屋に閉じこもってしまいました。
お前に黙ってハルを売ったのは悪かった。
でもこれは事故なんだ。
お前のせいではない。
頼むから開けておくれ。
お嬢様開けてください。
しかし昼を過ぎても娘は出てきません。
長者様はいたたまれず小屋の戸を壊すことにしました。
さぁやっておくれ。
(2人)へい!それ〜!うわ〜!あ〜!あぁ〜っ!あ〜ハルが!おぉ…。
それっきり娘は戻りませんでした。
長者様の悲しみは日増しに深くなりました。
どこかで元気に暮らしているのなら誰か教えてくれ。
長者様の心が通じたのかある夜夢枕に娘が現れました。
お父様今まで大事に育ててもらったのに親不孝をして申し訳ありませんでした。
でも私は幸せに暮らしていますからどうか心配しないでください。
これは夢なんだ。
嫌だ…嫌だ…。
目が覚めればお前は消えてしまう。
どうか夢でなく私に姿を見せておくれ!それでは庭の桑の木にきっと姿を見せましょう。
う…うぅ…。
ハァハァ…。
桑の葉を見ると…。
サクサク葉を食べる音が娘の声に聞こえました。
ハルも私も互いに好いていたのです。
でも言葉では伝えられずハルは苦しかった。
今は話さなくても心が通い合います。
そうか…そうか…。
2匹の虫は日ごとに成長しある日きれいな糸をかけ始めました。
そして白く輝く2つのまゆになりました。
この輝くまゆは娘が幸せだと伝えてきたんだ。
娘はもう帰ってこないと長者様にはわかりました。
〜長者様は娘とハルの幸せを祈って桑の木の下に小さな社を建ていつまでも大事に祀りました。
娘とハルは絹糸を作る蚕の神様おしらさまになったのでした。
はるか昔源平合戦の世西国の地に平家を追い詰め源氏の勝利が目前に迫った頃のことです。
深い傷を受けた源氏の武者が波打ち際に倒れていました。
《源氏の世をこの目で見るまでは死ねぬ。
力をつけねば死ねぬ》あっ。
娘は寝たきりの母のために浜へ食べ物を探しにきたのです。
さあおっかあ食べとくれ。
早く元気になっておくれ。
ああおいしい。
娘が取ってきたほら貝の身を食べると体に力が戻ってくるようでした。
そしてまもなく病も治りました。
やがて15年の月日が経ちました。
不思議なことに母親はその後歳をとらなくなったのです。
母子はまるで姉妹のようでした。
《あのときほら貝を食べたからだろうか?》いつしか娘は母の歳を追い越し年老いて亡くなりました。
そしてたくさんの血を流して勝ち取った源氏の世もやがては滅んだのです。
生きて源氏の世を見たいと願った侍の無念の思いが貝に不思議な力を与えたのか…。
女はそれからも歳をとりませんでした。
《どうか娘のところに行かせてください》しかし死ぬこともできなかったのです。
うう…。
それから長い長い年月の間女は諸国をさすらいました。
ある年都で1人の焼物師と出会いました。
女は再び結婚し子供も5人授かりました。
《今の幸せがずっと続いてほしい。
でも歳のことはいつまでも隠し通せやしない》女は自分が歳をとらないという秘密を夫に打ち明けたのでした。
そんな不思議なこともあるんだなぁ。
お前様がどう思うかと心配で今まで言えなかったのです。
な〜に心配ない。
お前のことはわしが守る。
これまでの暮らしが変わるものか。
なっ。
それから30年あまり過ぎました。
ゴホゴホ…心配いらん。
わしが守る…。
ええお前様守ってくれましたね。
けれども歳をとらない女の噂は霧が忍び込むように諸国に広まっていったのです。
かかさんお客人が…。
それは噂を聞いてやってきた貧しい夫婦者でした。
亭主が心の臓を悪うして…。
お前様死なない体じゃそうな。
どうかお前様の命のわずかでもいい。
亭主に分けてくだされ。
私には何の力もありません。
ウソだ!歳をとらない女はお前様だろ。
亭主を助けておくれ!やめてください。
これは娘じゃ。
私の娘じゃ。
かかさんは亡くなりました。
うぅ…。
《私のために娘にウソまでつかせて…》それからしばらくして…。
おっかあなんで出ていくんじゃ。
みんな大きくなった。
私がいてはお前たちに迷惑がかかります。
どうか体に気をつけておくれ。
かかさん…。
年老いた夫が亡くなるのを見届けると女は家を出たのでした。
そして…たくさんの時が流れました。
ある年の秋…。
霧に迷った旅のお坊さんが戸を叩きました。
もう日も暮れます。
どうぞお入りください。
女は年老いた息子と暮らしていました。
息子は長いこと寝たきりでした。
さあお飲み。
楽になるよ。
すまないおっかあ…親孝行もできず。
おっかあ…。
この北国で産んだいちばん下の息子です。
まさか…それじゃあなたの歳は。
そう…600歳を超えているでしょうか。
みんな私を置いていってしまう。
独り残される身に命をながらえる意味などあるのでしょうか。
しかし600歳とは…。
とても信じられん。
夜明けに年老いた息子は亡くなりました。
お坊さんにすっかりお世話になって…。
いや…これも何かのご縁です。
ではそろそろまいりましょうか…。
独り残された女は山を下りることにしました。
お坊さんは古びたほら貝を譲り受けました。
寺に奉納しとりついた霊を鎮めるためです。
(笑い声)長生きはめでたいことです。
それでも永遠には生きられない。
限りある命だからこそ悲しさもそして喜びもあるのです。
歳をとらず生き続ける女の旅…。
それは果てしのないさすらいの旅でした…。
2014/02/23(日) 09:00〜09:30
テレビ大阪1
ふるさと再生 日本の昔ばなし[字][デ]
「雪女」
「おしらさま」
「六百歳の女」
の3本です。お楽しみに!!
詳細情報
番組内容
私たちの現在ある生活・文化は、昔から代々人々が築き上げてきたものの進化の上にあります。日本・ふるさと再生へ私たちが一歩を踏みだそうというこの時にこそ、日本を築いた原点に一度立ち返ってみることは、日本再生への新たなヒントになるのではないでしょうか。
この番組は、日本各地に伝わる民話、祭事の由来や、神話・伝説など、庶民の文化を底辺で支えてきたお話を楽しく伝えます。
語り手
柄本明
松金よね子
テーマ曲
『一人のキミが生まれたとさ』
作詞・作曲:大倉智之(INSPi)
編曲:吉田圭介(INSPi)、貞国公洋
歌:中川翔子
コーラス:INSPi(Sony Music Records)
監督・演出
【企画】沼田かずみ
【監修】中田実紀雄
【監督】鈴木卓夫
制作
【アニメーション制作】トマソン
ホームページ
http://ani.tv/mukashibanashi
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32118(0x7D76)
TransportStreamID:32118(0x7D76)
ServiceID:41008(0xA030)
EventID:17216(0×4340)