NHK短歌 題「あれ」 2014.03.09

ご機嫌いかがですか?「NHK短歌」司会の濱中博久です。
第二週の選者斉藤斎藤さんです。
今日もよろしくお願い致します。
またまた選者の一首面白いですね。
寝相が悪かったんでしょうね。
天井が変なふうに見えたので姿勢を正してもう一度寝たと。
自分が動く事によって世界の見え方が変わると。
自分と世界が連動して動くという事を後ほどの講座でお話します。
はい分かりました。
それでは「NHK短歌」にお招きした今日のゲストをご紹介致します。
ミュージシャン俳優のマキタスポーツさんです。
ようこそお越し下さいました。
よろしくお願い致します。
マキタスポーツさんは2013年映画「苦役列車」での演技によってブルーリボン新人賞を受賞されましたが音楽活動はもちろんコラムニストとして雑誌連載をされるなどご活躍中でございます。
そして最近出版されたご本がこれなんですね。
「すべてのJ−POPはパクリである」と書いてあるんですけれどもこれはどのようなねらいのご本なんでしょうか?ポップスっていうのは必ず型があるんですね。
この本はパクリであるという事を何も悪く言ってるわけではなくパクリにあるその先にあるものも大事なものなんですよという事を僕は書いてるつもりなんですけどね。
全てパクリから始まる。
子供も親の行動をパクってそこから学んで自分なりの行動をやっていったりするわけじゃないですか。
私どもがよく知ってるヒット曲の構造分析もなさってますがそうする事によって何が…?生きやすくするというか現代社会って閉塞感とか何とか言われておりますけれどそういうものを生きやすくできるヒントがあるんじゃないかなと。
自分を表現したりする時に役立てるんじゃないかなと。
斉藤さん読まれたんですよね。
生きやすく感じましたか?感じましたね。
どのように?マキタさんって種を全部明かしてしまう手品師のようなところがあって自分はこういうふうに曲を作ってるんですよって全部説明されてるんですけどマキタさんの曲やネタを聞くとやっぱりマキタさんならではの部分オリジナリティーをすごく感じる不思議な方なんですよね。
ありがとうございます。
今日もどんなお話をして頂けるか大変楽しみなんですが短歌の番組にお迎えするにあたって短いキーワードを考えて頂いたんですがどんな言葉になりましたか?こちらです。
という事ですが何かこれ面白いお話また伺えそうですね。
後ほどそれについてお話よろしくお願い致します。
それでは今週の入選歌のご紹介でございます。
題が「あれ」または自由だったんですが斉藤斎藤さんがどんな歌を選びましたか入選九首です。
一首目。
これ2つの意味を感じますね。
「僕たちはあれこれ言わず」って感じで社会科見学のような無理に天才なんだから見なさいって言われて見ているようなシニカルな視線も感じるんですけどと同時に絵というのは何も能書きたれずに黙ってじっと見てそれを受け止めるんだというようなこの方は絵が好きな人なんじゃないかなっていう部分と両方の角度を感じるところがすてきな歌でしたね。
では二首目です。
繰り返し繰り返し思い出してるような感じがしますね。
恐らくご主人が亡くなられてると思うんですけれども最後の口げんかというのをちょっと言い過ぎちゃったなと繰り返し繰り返し後悔しながらでもそれが最後の思い出なのでそれをかみしめてまた布団で寝ているという事で胸に迫るような歌でしたね。
では三首目です。
何気ない事が幸せだったんだなという事ありますけれどもその当時を思い返す時に「でもあれだよね…」がとてもうまいですよね。
ちょっとした不満を感じて「でもあれだよね…」というような事あるなと思う。
この下の句でぐっと立ち上がってくるものを感じますね。
では四首目です。
これもよく分かりますね。
出がけに鍵かけたかなとかいろいろ細かい事が気になって何度も確かめてしまうって事ありますけれどもそんなお父さんを見ている息子さんの視線がとても寄り添うような「入れたでしょ」という言い方と。
ひょっとすると将来自分はこうなっていくのかもしれないなというような視線。
お父さんと息子さんの関係性が立ち上がってくるいい歌だと思いますね。
それでは五首目にまいります。
マキタさんこの歌どう読まれました?叫びがありますね。
二首目と三首目はサッドソング哀歌みたいな感じですけど五首目はこれロックですね。
ここに僕はいるんだ私はいるんだみたいな強い叫びみたいなものが「わかりましたか」というフレーズに込められたものを感じますね。
「ほしいのですよ」というのが間に来て「わかりましたか」と。
いかがです?斉藤さん。
恐らくお年を召されて自分でスッと取りに行けないような状況にあるのではないかと思うんですけれども介護されてる方に「あれがほしい」と言って「ちょっとあとでね」みたいな事を言われた時のこの叫びですよね。
非常に強いものを…特に下の句の念押しのようなところが叫びを感じる歌でしたね。
92歳のロッカーですね。
はいそれでは六首目です。
さあマキタさんこれはどう読まれますか?これはですね「生徒に求められた日もあったがあれは何だったのか」なんてキツネにつままれたような感じの事をニュアンスとしておっしゃってるような感じがするんですけど僕だけでしょうか?「何だったのか」と結んだあとに見えないハートマークが見えるという。
さりげない自慢的な感じもしますしそういった意味ではチャーミングな歌かなと思いましたね。
斉藤さんあれは何だったんでしょうか?女子高生とか若い先生を好きになるって一過性の熱病のようなところがあると思うんですね。
先生の側としても大人の対応をするんですけどと同時に今おっしゃったみたいにハートマークっていうか心が動いちゃってる感じもこの口調には感じるんですよね。
大人な部分とちょっと心がハートマークな部分と自慢の部分のバランスが面白い歌ですよね。
それでは次にまいりましょう。
これもマキタさんに伺いましょう。
これは僕は「老いて」から「神さま」までを前半「造ってくれた」から「コンビニ」までが後半と分けて考えた時に「老いて」と「神さま」というのがコンビニと全くかけ離れてるんです。
お笑いのネタとしてすごく優秀なんじゃないかなと思います。
まるで綾小路きみまろさんのネタみたいな感じしますね。
「神さま」と「コンビニ」これはフリが利いていてオチがあるみたいな感じなんですよね。
ですからユーモアセンス抜群ですね。
確かに4コマ目までは何の話かなと思って見ると…。
この結句「コンビニ」はびっくりしますよね。
上の句の持っていき方とかも非常に巧みでいい歌だと思います。
では八首目にまいりましょう。
この下の句もちょっと驚きましたね。
周りにそんなに理解者は多くないんだけれども喜びがにじみ出ているようなこの下の句はよかったですね。
「あれはいいねえ」と聞こえよがしに言ってる感じが…。
おじさんが静かに興奮してますね。
「同好の士よ」と呼びかけてるわけですね。
ではいよいよ最後の歌です。
九首目です。
歌を作ったり直したりする事ってちょっと恥ずかしいというか大っぴらに人に見せられないようなところがあると思うんですよね。
それを歌作ってますよっていうんじゃなくて寝たふりをしながら恥ずかしがりながらされてるところに非常にチャーミングなものを感じました。
恥じらいか…なるほどね。
以上入選九首でした。
ではこの中から斉藤斎藤さんが選んだ特選三首の発表です。
まず三席からです。
国村きぬゑさんの歌です。
では二席です。
笠原誠さんの歌です。
さあそれでは一席です。
梶村京子さんの歌です。
先ほどマキタさんがおっしゃった意外性があって「『あれ』はコンビニ」っていうこの出し方をする時にコンビニがまるで奇跡のように輝くんですよね。
こんなコンビニの歌は見た事がなくてびっくりしました。
以上今週の特選でした。
今回ご紹介しました入選歌とその他の佳作の作品はこちら「NHK短歌」テキストにも掲載されます。
是非ご覧下さい。
それではここで年間大賞の発表です。
斉藤斎藤さんが選ばれたこれまでの一席の中から特にこの一首という歌が選ばれました。
発表です。
どなたの歌でしょうか?小川みや子さんの作品です。
はいこちらの歌です。
小川みや子さん年間大賞です。
おめでとうございました。
さあどういう評価でしょうか?小川さんの肉眼で見える世界を見せつけられたような驚きのある歌でしたね。
それでは「うた人のことば」をご覧頂きます。

(春日井)母は94歳。
非常に元気なんですけれども少々耳が遠い。
そこでこういう歌ができるわけです。
風と草とがくれた幸運なひとときというものを歌ってみました。
春日井建の両親は共に歌人。
穏やかな家には歌の美学が満ちていました。
そのころに僕が本気になって歌を始めたというところがあって子供の時から何となくなじんできた韻律が本気になってやるのに非常にふさわしい出会いがそこにあったと思います。
若い時にちょっとヨットで遊んだ事がありましてねあれは風との戦いですね。
そんな戦いのあとの安らかさといいましょうか例えば恋のあととか仕事のあとといったような安らかな雰囲気をこういうのに託して歌ってみたかった歌です。
では続いて「入選への道」のコーナーです。
お寄せ頂いたご投稿歌の中から斉藤さんが選んだ非常に良い歌を一首これに手を加えますとさて歌がどのように変貌しますかご覧頂きましょう。
斉藤さん。
今回この歌ですね。
ご夫婦で会話をされていてご主人が「あれ」とおっしゃってその「あれ」が何か分からないまま話が明後日の方向に行ってしまう。
これよくある事ですよ。
そのままになってしまうと。
この歌はこの歌で出来上がってると思うんですが話が明後日の方向に行ったきりになってしまっているのでもうちょっとご主人の指す「あれ」を気にしてあげようという角度でちょっと改作してみました。
これは「あれ」を意識しながらあれって何だろうって探りながらその周りを会話がうろついているという感じなんですよね。
お互いに思いやりがありながら明後日の方向に行ってしまうという微妙なところを意識して頂くとより入選に近づくかもしれないという事でご参考にして頂ければと思います。
会話弾んでますからね楽しい気分はありますよね。
皆さんもどうぞ参考になさって下さい。
それでは投稿のご案内を致します。
選者のお話です。
斉藤さんの「初心者になるための短歌入門」。
今日は特に「私につられて世界も動く」というお話です。
前回に引き続いて今回も私が歩きながらという歌を取り上げたいと思います。
今回この歌なんですけれども…。
非常に滑らかに景色が歌われてるんですが細かく見ていくとこの歌には3つの種類の異なる移動が含まれてるんですね。
「まず森いでて」という部分で私が歩いて森を出てるんですね。
自分の身体が移動してます。
「その空にして」というところで恐らく立ち止まって視線を動かしている。
空を見上げています。
そこの視線の先に鳥がすっと横切っていくという事でここで対象の移動ですね。
このように通常鳥が飛んでいるのを見て心が動いたという歌を詠む時に額縁のように写真のように鳥が動いた飛んでいった景色だけを切り取ってしまいがちなんですが…。
空を飛んでる鳥を写真でバシャッと撮ったようにね。
一連の流れとして歩いていてふと空を見上げた時に鳥がス〜ッと飛んでいったという自分が歩いていたそこに鳥が飛んでいたから心が動いたので自分の身体の移動から一連なりのものとして切り取って頂くとよりいい歌になるかなと思いますね。
三種類の移動がこの歌にありますよという事ですね。
どうもお話ありがとうございました。
選者のお話でした。
それではゲストにお迎えしているマキタスポーツさんにもいろいろお話を伺ってまいりますよ。
マキタさんまずは例のキーワードをもういっぺん見せて下さい。
こちらです。
短歌のイメージを言葉にして頂きましたが「短歌はポップスである」とこれはどういう心でしょうか?ポップスっていうのは僕が研究すると分かってくる法則がありましてそれは構造的なものなんですね。
それで分かってきた事というのはセオリーやパターンというのがある。
つまり型があるという事ですね。
短歌も型があるわけじゃないですかその点はすごくよく似ているなと思います。
そして短歌もそうであるようにポップスは人を歌ってるというか人間を歌ってるというところがあるんですね。
その点においてはすごくよく似ているなと僕は思いました。
斉藤さん。
定型を踏まえながら既存のものを生かしながら自分なりの表現を加えていくという事で言えば例えば今日の歌ですと…。
入選の歌の中のこれは3番目でしたね。
この歌ですと「幸せを吸ってはいてた」という空気のように幸せ当たり前のものをという定型の表現の組み合わせだと思うんですけれども下の句の「でもあれだよね…」というこの7文字だけでその人ならではの要素でぐっと立ち上がってくるところがあると思うんですよね。
このマキタさんの本でマキタさんが作られた「十年目のプロポーズ」という曲の作り方が説明されてるんですがこの曲って実は今までのヒット曲の要素を組み合わせて作った歌だそうなんですよ。
マキタさんのおっしゃるパクリですよね。
ただそのパクリの中でマキタさんがご結婚されて10年目で奥様への思いという個人的なマキタさん自身の経験というものをそこに一つ要素を加える事でグワッとマキタさん唯一の表現が立ち上がってくるという解説がされていてこれはまさに短歌と近いんじゃないかなと思いましたね。
三首目の「でもあれだよね…」これなんかは「幸せを吸ってはいたあの頃」まではちょっと油断させてるんですけど急に「でもあれだよね…」っていう生々しい表現が出てくる事でぐっと引き込まれて人間臭さが出てくる。
非常にポップス的な感じでまるでつんく♂さんが詠んでもおかしくないような感じがするんですね。
おっしゃって頂いたようにポップスというのはおおかた金型にはめるようにしてパターンの積み重ねでもあります。
ただそれをやったらそれっぽいものができますけどそれ以上のものにはならないですよね。
ですからその人個人の経験とかオリジナルみたいなものをそこに入れれば人の心には刺さりやすくなりますしまず歌う人としての気持ちというのが全然違いますね。
そういった意味で深度が変わってきてしまうんで。
構造的に分析されていく事によってパターンとか型が見えてきてそこにオリジナリティーをどう注入していくかという事ですね。
やっぱりセオリーとかパターンというそういうルールというものがクリエーティブなものを創造するというか型があった方がいいんです。
野放図な表現だと意外や意外その自由さというものはなくてセオリーやパターンを踏襲した方が永遠性とかオリジナリティーが表現しやすいと。
そうでなければならないと僕も思います。
斉藤さん確かに歌は調べの型を踏まえての表現ですよね。
そうですね。
逆にその型があるからこそ歌を作る方も自分の経験がろ過されていく事もありますし受け取る側もその型を超えてくるものが何かというその人ならではのとがったものというものをより受け取りやすくなるという事もありますので型があるからこそ逆にその人の唯一のオリジナルな部分が見えてくるところがありますよね。
そういうところに短歌との共通性をお感じになったと。
濱中さんのアナウンス技術もやっぱり型があるからこそすばらしいんじゃないかなと思いましたけど。
そういうふうに振ります?でも型を壊していかないとオリジナリティーが出ませんよね。
型があるからこそ崩しがいがあると思うんです。
型崩れのままだったら壊すものはなくなってしまうので…型があってこそクリエーティブというのは生まれるんじゃないかなと。
私に今振って頂きましたけれどもマキタさんはこのご本の中でさまざまな我々がよく知ってる非常に著名な曲の分析をなさっているけれども分析されればされるほどそこにオリジナリティーをお感じになったわけですか?感じますね。
その人でなければならないものというのが必ずそこに込められていますね。
そうじゃないとやっぱ名曲にはならないですね。
名曲たる所以ですね。
斉藤さん名歌たる所以というのもそういう事でしょうか?その人ならではの部分がいろいろなものを一つにまとめる。
型を一つにまとめるというところがありますのでね。
自己表現の時代だと思うんですね。
ネットとかが発達して表現に対する欲目がある。
そういうものだと思うんですよね。
恥ずかしがったりとかする面もあるかと思うんですけどやり方とセオリーとかちゃんと踏まえたらさっきろ過っておっしゃいましたけどちゃんと表現できるんですね。
今日はマキタスポーツさんに興味深いお話を伺いました。
どうもありがとうございました。
斉藤斎藤さんでは来月もどうぞよろしくお願い致します。
「NHK短歌」そろそろ時間でございます。
ごきげんよう。
2014/03/09(日) 06:00〜06:25
NHKEテレ1大阪
NHK短歌 題「あれ」[字]

ゲストはミュージシャン、俳優のマキタスポーツさん。彼はヒット曲の構造分析を通じてヒットの秘密を解き明かしてきた。短歌にもその手法が通じるのか?選者 斉藤斎藤。

詳細情報
番組内容
ゲストは、ミュージシャン・俳優のマキタスポーツさん。ヒット曲の構造分析を通じて、ヒットの秘密を解き明かしてきた。短歌にもその手法が通じるのか? 選者は斉藤斎藤さん。題「あれ」。【司会】濱中博久アナウンサー
出演者
【出演】マキタスポーツ,斉藤斎藤,【司会】濱中博久

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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