なので大吉賞状をプレゼント。
「麻里子さまのおりこうさま!」で勉強したあとは「NHKスペシャル」。
一緒に見ようね。
「おりこうさま」の収録は…だよ。
…だよ。
(武雄)やっぱ仙台にぎやかだな。
・
(栞里)誰か〜!ちょっと誰か!捕まえて!誰か〜!あ〜っ!
(蘭子)あっ!いいか蘭子。
ここで待ってろ。
なっ。
お父さん…。
待てっこの〜!野郎っこ!
(自転車のベル)待て〜!待てよお前。
おっ!
(巡査1)あっいたぞいたぞ!あそこだあそこ!
(巡査2)よし行こう!
(巡査1)おら!おい立ておら!何だ?捕まえたぞおら。
もたもたすんな!おとなしくしろ!行くぞおら!しっかり立てよ!あっお父さん!私のバッグ…!ありがとうございます。
こいづあんだの?何だか急に投げつけらったんだ。
すいません。
俺ひったくりでねえよねあ?違います。
すいません失礼しました。
失礼しました。
失礼しました。
失礼しました。
ああの犯人の特徴は?茶色い帽子に…。
(2人)茶色い帽子。
青っぽい服…。
青っぽい服を着ていた。
あのや向こうの方に行ったんだ。
向こうですか?さっさと泥棒捕まえろよお前!すいません失礼しました!行けほら〜!あの…本当にありがとうございます。
いやいいんです。
ごめんな〜蘭子。
お兄ちゃんが待ってるから早く帰ろうよ。
うん。
クソ〜!風船か…。
お父さん。
んだな。
早く帰っぺ。
(裕樹)
これが俺の父さん山村武雄。
あだ名はかつお
じっとしているのが苦手でいつも忙しく動き回っているから付いた名前だという。
妹にとって自慢で俺にとっては少し恥ずかしい。
そんな父親だ
(島田)よいしょ〜!島田!島田!島田!おい島田!島田!島田!タケさん!島田こっち!よいしょ〜!ナイスキャッチ!裕樹は?先に帰った。
ごはんの用意するって。
ああ〜。
おっ!俺が贈った大漁旗でねえがや。
はっは〜。
まぼいな〜。
タケさん。
おう。
ありがとうございます。
よいしょ。
おお〜。
俺午後から仕事だからや。
これから仕事っすか?日曜っすよ?「貧乏暇なし」だ。
それにしてもよくやった。
よく船ば手に入れた。
ああ。
でもこれから借金返していかなきゃねえ。
タケさん漁手伝ってけさい。
はっはっは。
俺はもう陸の人間だ。
もったいないなあ。
浜一番の漁師が手伝ってくれたら俺も心強いんだけどなあ。
父さんは海に出たがらない。
震災で運よく残った船もほかの漁師に貸して陸で働いている
もう僕たちを残して死ねないから。
家族3人だから
あの日から2年半が過ぎて仮設住宅の暮らしにもだいぶ慣れた。
俺は妹の蘭子と家事を分担してうまくやっている
蘭子?は〜い。
まあしかし裕樹ホント焼き魚うまくなったな。
おいしい!ホント?これ焼き魚でねえんだ。
ムニ…ムニエルっつうのか。
ムニエル。
ふ〜ん。
うめえな。
父さんはいつも忙しくしている。
漁師をやめて建築現場で月曜から土曜まで時には日曜日も働いている。
仮設住宅の面倒な係も自分から引き受けている。
近々俺たちの地区でお祭りをやる事になってその準備もしているようだ
私は今のお父さんがいいな。
んだべ〜?蘭子は優しい子だなあ。
家族3人助け合いながらこんな生活が続くのも悪くないとこのごろ俺は感じるようになっていた。
でもあの日の朝の出来事から何かが変わり始めた
あっおはよう。
タオル借りるね。
父さん!ねえ!父さん!あ〜もう…もう飲めねえてば。
お母さん?父さん!ねえってば。
父さん!栞里さんだよ。
覚えててくれたんだ!えっと蘭子ちゃんだよね?うん!何でうちに?おお。
ゆうべ集会所でや。
回想向日ヶ浜で新しぐやる事になった祭りの説明すっから。
(ボランティア)こんばんは。
すいませ〜ん遅くなりました。
ああどうもおばんです。
こんばんは〜。
あっ!風船おとうさん。
福岡からボランティアで来たんだって。
炊事洗濯掃除。
その他困った事があったら何でも言ってね。
ふだんは集会所を回って折り紙教えたり体操教えたりしてる。
あっ残り物容器に入れといたから。
あっそいづは夕飯だな。
よしっ!出かける支度すっかな。
オムレツおいしい!寒くても頑張って咲いてるね。
うん!パンジーは寒さに強いんだよ。
へえ〜詳しいね蘭子ちゃんは。
お花好きなの?お母さんが大好きなの。
だからこの前お父さんとお花の種見に行ったんだ。
春になったら植えるの。
そっか。
楽しみだね〜。
蘭子。
そろそろバスの時間だぞ。
学校まで送ってってあげようか?えっ?いいです。
友達もいるんで。
あっそっか。
じゃあまたね。
バイバイ。
バイバイ。
栞里さん優しいね。
蘭子行くぞ。
(担任)神崎がおうちの都合で埼玉に引っ越す事になりました。
(神崎)この町を離れるのはとても寂しいです。
本当はこの学校でみんなと卒業したかったけど…。
あの日から何人もの友達が町を離れていった
でも俺たちはそんな事にもいつしか慣れてしまっている
山村!えっ?あっはい。
お前早く進路希望表出せ。
お前だけだぞ。
あっすいません。
罰として祭りの実行委員な。
神崎の代わり。
えっ?お前のおやじも張り切ってんだ。
頼んだぞ!
(翔太)親子で参加できて楽しそうだな。
余計やだろ。
翔太がやれよ。
神崎と仲良かったんだからさ。
いや俺はほらそういう係になって夜遅くなったりするのはまずいだろ。
まあ…な。
翔太は家族がみんな亡くなった。
叔父さんの家でいとこと一緒に暮らしている
なあ。
うん?進路希望どうした?俺は全寮制の高校。
将来介護の仕事に就きたいからそういう系列の。
いつまでも叔父さんに甘えてられないから。
出ていくのか?まあな〜。
裕樹はおやじさんの後継ぐのか?ああ…うん…。
まあそれが一番喜ぶかもな。
転校していく神崎。
介護の仕事をすると言う翔太
でも俺は自分の事をまだ決められないでいる
回想
(幸江)そうそう。
上手上手。
裕樹はお父さんと同じ。
手先が器用だっちゃねえ。
お母さんに似たんだよ。
えっ?優しいな〜裕樹は。
将来はコックさんかな〜?問題はステージでの出し物だよな。
う〜ん。
中学生の吹奏楽がやってくれるって。
そうだよな?あっはい。
な〜んかこうビシッと引き締めるもんがな〜。
タケさんの司会は?ああ。
何かやらねえど具合悪くなっと。
かつおだから。
(笑い声)
(島田)今日タケさんは?仕事です。
あいつが司会をするにしてもだ何かねえがなあ。
この町ならではの何かが欲しいよなあ。
あっそうだ!前島の吾郎さんの民謡は?
(島田)いいねえ〜!すばらく聴いてねえもんな。
吾郎さんは浜の漁師の長老だ。
頑固者で父さんも頭が上がらない。
俺も何かの祝い事で吾郎さんの歌を聴いた事がある
でも吾郎さん浜に出てこねぐなったな〜。
もう年だからって。
頑固なのは相変わらずだからね。
誰か説得できねがな〜。
ねっ?俺?俺無理無理無理無理!俺会えば怒られるだけだ。
若い者若い者!若い者!
(一同)あ〜。
(島田)お前行けんだろ。
俺ですか?え〜っ?若いのが行けば説得できるってそんな保証あんのかよ。
何で俺が。
すいませ〜ん。
(吾郎)誰だ?おめえ。
いやその…えっだから山村です。
山村って何だ。
山村武雄の息子です。
タケの息子です。
裕樹です。
かつおのか!はい。
ホントか!はい。
(美智子)はいどうぞ。
じいちゃん。
せっかく会いに来てくれたのに失礼よ。
ごゆっくりね。
あっはい。
さっきの話だが無理だな。
えっ?あの…町の人たちが是非お祭りには前島さんの歌をって。
みんな俺に気ぃ遣ってんだべ。
ここの漁師ん中で俺が一番古いっつうだけの事だ。
それならやっぱりお祭りで。
祭りなんて無理だ!んな事やってる場合でねえべ。
何も進まねえこの町で祭りなんてやってる場合か!俺は祭りには反対だ。
だから歌歌わねえ!あっタケさん。
またモルタル20袋来たから。
ネタ場ね。
はいよ。
お願いします。
タケさん。
これからどう?一杯。
今日ちょっと先約があってな。
あら。
タケさんもしかしてこれすか?だったらこんな服着てこねえっちゃおめえ。
タケさんこっちだったか?んだな!お疲れさまです!事務員?
(島田)そう。
タケさんさえその気だったら俺から漁協に話して事務の仕事とかさ…。
いやいい話だと思うよ?慣れねえ仕事続けるよりさ。
事務の仕事も慣れねえけどな。
だって漁師に戻る気ねえんだすっぺ?ああ!戻る気はねえ!幸江がいなくなった今俺が子どもたちば一人前にしなきゃなんねえ。
俺にもしもの事あったらあいつらの面倒見るやついねえべや。
それならなおさらだ。
裕樹だって来年は中3。
受験だっちゃ。
蘭子ちゃんだって大きくなるっちゃ。
悪い話でねえと思うよ?いやしかしねや…俺机の前にじっとしてられっかや。
かつおだから!何すんだおめえかつおかつおってホントに。
ごめん…。
とにかく少し考えさせてけろ。
なっ。
おばちゃん枝豆けさいん。
俺の分。
(ウミネコの鳴き声)
(ラジオ)「おらほのラジオ体操」。
(ラジオ)
(ラジオ)「腕ば前から上さ上げて大きく背伸びっこすっぺし」。
(一郎)前から上さ345678。
1234はい軽やかにね軽やかに。
12345678…。
アハハハハ!いや〜気持ちいいね。
んだ。
今度あんたんとこの方言でやってみっか。
よかですよ。
博多弁教えちゃあですよ。
ばってんその前に腹引っ込めんといかんねえ。
体操で背ぇ伸びだんだね。
んだからおへそがこんにちは。
んな訳ねえべ!アハハハハ!どれやまたね。
どうもね〜。
面白いですね。
一郎さん。
おうちでもあんな感じなんですかね。
一郎さんは独りだ。
えっ?震災で家族みんな亡くして独りで仮設に住んでる。
みんな同じようなもんだけどな。
そうなんですか…。
回想
(幸江)久しぶりだあ。
(幸江)裕樹が生まれる前はよぐここ2人で歩ったよね。
フフッ懐かしいな〜。
んだな〜。
タケさん。
何や?うわっばかっこのお前…誰か見てっぺやあ!えっ何で逃げんのお?見でだっていっちゃ別に。
いやそいづはそうだけっどもね。
はいいい球だな〜。
はい!ねえもう返してよ。
いいがら。
昔よくお父さんとやったんだよ。
ほれっ。
まぼいな〜。
幸江何やってもうめえんだ。
タケさ〜ん。
何してるの〜?辛いの大丈夫?明太子。
うんおいしいよね。
私キムチとかも平気だよ。
そうよかった。
お料理好き?蘭子ちゃん。
うん。
でもお兄ちゃんが包丁まだ駄目だって。
裕樹君もお料理好きなの?何かいろいろテレビ見たり本とか借りてきてる。
教えてもらっちゃおうかな私。
ウフフッ。
私お母さんに教えてもらえなかったからお兄ちゃんに教わるの。
そっか…。
ただいま。
お帰りなさい。
お邪魔してます。
どうも。
お帰りお兄ちゃん。
栞里さんとお料理してるの。
おおお帰り。
ただいま。
タケさんこれちょっと味見。
おお。
どう?お〜ちょうどいいあんばいでねえか?ハハハッよかった。
あっこのまま食べちゃって。
んだな。
(蘭子)あちっ!駄目!何してるの!?1人で火を使ったら危ない!蘭子だってお湯ぐらい沸かせっど…。
危ないの!蘭子ちゃん火を使う時は気を付けないと駄目。
蛇口に手が届くようになったら火を使おっか。
もし何かあった時にすぐに消せるから。
ねっ。
ごめんなさい。
うん。
はいはいはい…お待たせお待たせ。
栞里さん何だか怖かった。
ああ。
せっかく作ったんだからな一緒に食べてけばよかったのにな。
何でまたあの人に夕食頼んだんだよ。
いや〜たまたま会ってよ。
裕樹もその方が楽だべ。
栞里さんもねお兄ちゃんにお料理教えてほしいって。
どれ熱いうち食うべ。
裕樹座れ。
(2人)頂きま〜す。
頂きます…。
蘭子のはハート型なんだよな〜。
(蘭子)かわいい。
ちゃんと野菜も食うんだぞ。
おじいちゃんならお墓参りに行ってる。
あっそうですか。
じゃあ行ってみます。
あっちょっと。
はい。
おじいちゃんなら歌わねえと思う。
どうしてですか?うちはみんな無事だったの。
(美智子)震災の時浜の人たちはみんな何かを失った。
でもうちは漁師なのに家も船も家族もみんな運よく無事だったの。
(美智子)おじいちゃんはそれを負い目に思ってる。
(美智子)みんなが笑える日が来るまではしゃいじゃいけないって思ってる。
(美智子)昔よく歌ったあの歌を歌う事でみんながあのころと今を比べて寂しくなるって思ってるの。
だからそっとしといてあげて。
今でも仲間の墓参りを欠かさない吾郎さん
自分は大きな被害がなかったからという気遣い。
でもそれでいいのか?
裕樹!吾郎さんどうやった?出てけるってか?前島さんは出ないそうです。
(一同)え〜!?昔は大漁祭りとかで自慢の喉披露してくれたよね。
ちゃんと話したのか?祭りの事。
今は祭りをしている場合じゃないってこの祭り自体に反対してました。
そっか〜…。
残念だな〜。
吾郎さんが歌ってくれりゃあみんな喜ぶと思うんだっけどなあ…。
あっんでタケさんに歌ってもらう?あっ親子で歌わせたらいんでねあ?そしたら絶対盛り上がるべや。
盛り上がる盛り上がる!吾郎さん歌わないんじゃしかたねえな?え〜…。
「え〜」じゃねえよ。
決まり決まり!決まり。
(親方)お〜タケさん。
あいよ。
人をどんどん入れたよ。
忙しくなっどお。
人いっぱい来てこの地域も景気よくなるっぺよ。
ハハハッ!ああそうっすか。
ああ。
親方。
あ?何だ?ちょっと話が…。
それはねえべタケさん。
この忙しいのに…。
もう一日だけ日曜のほかに週にもう一日だけでいいんで休みもらえねえっすか?何かやってんのか?漁師に戻る準備とか…?そいづはねえっすそいづは。
冬の間だけでいいんです。
日が延びたら仕事終わったあとでもできるんで。
やっぱり何かやってんだ。
しょうがねえな…。
じゃああさってからまた港台地区の公営住宅手伝いに行ってもらうから。
えっ港台地区っすか?ああ悪いけど5日間頼む。
遠いから泊まりになっちまうけど。
はあ…。
あそこは近いうち消防検査あんだ。
人手足りねえんだど。
はあ…分かりました。
(深呼吸)今日も元気だ。
空気がうまい。
よしっ。
お父さん今日はゆっくりなんだね。
うんあんまり働くからゆっくり来なさいって。
へえ〜偉いんだ。
まあ偉くはないけっど頑張ってる方かな。
あっそうだ。
明日から5日ばっかり出張なんだよ。
平気だよな?お泊まり?栞里にでも頼んでおくか。
ホント!?まあでも裕樹もいっからな。
大丈夫だな。
行ってきます。
行ってきま〜す。
行ってらっしゃい。
気を付けてな。
ちゃんと勉強するんだぞ。
は〜い。
(担任)山村!はい。
お前の妹が小学校で問題起こしたらしいぞ。
えっ!?おやじさん連絡取れねえらしいから帰り小学校寄ってやれ。
はいすいません!全く何してんだよ蘭子は…。
あれ…タケさんまたあんなとこいる…。
(急ブレーキの音)慎也君お父さんの事ばかにしたんだもん。
だからって投げ飛ばしちゃ駄目だろ?何てばかにされたんだ?仕事しないで海の近くをフラフラ歩いて遊んでるって。
何回も見たって。
絶対うそだよ。
お仕事一生懸命にやってやり過ぎだからゆっくりしろって言われるぐらい頑張ってるのにお父さん遊んでなんかないもん!お帰りなさい。
栞里さん!ウフフフ…。
蘭子ちゃんどうしたの?大した事ないです。
大丈夫です。
あの…それより何で…?ああお父さんに頼まれて。
もう大丈夫です。
俺がやるんで。
じゃあ夕飯の買い物にでも行こうかな。
一緒に行きたい!今日は俺がいるから飯は大丈夫です。
お父さんにお金もらっちゃってるんだ。
今晩の夕食代。
それ父さんに返しといて下さい。
あ…じゃあ…。
何かごめんねお邪魔して。
蘭子ちゃんまたね。
バイバイ。
お兄ちゃん栞里さんの事嫌い?蘭子は好きか?うん。
そうか…。
ああ…。
おっびっくりさせんな。
何だまだ起きてたのか。
どこ行ってたんだよ。
あ?ちょっと仕事長引いてな。
いつからなんだ?はあ?仕事だって言ってあの女と会ってたのは?何言ってんだよ。
何コソコソ隠れてやってんだよ。
裕樹あのな…。
もう昔の事は忘れたいのかよ!何言ってんだよ。
違うべ裕樹!母さんを忘れたいなら勝手にそうしろよ!裕樹!勝手にあの女と一緒になればいいさ!母さん面して母親ぶってるあの女と!あの人の事を悪く言うな!裕樹!あ…蘭子。
あの日母さんは沖に船を出す父さんを見送ったあと父さんに言われたとおりに幼稚園に蘭子を車で迎えに行った
そしてその途中で津波にのまれた
母さんがいなくなってしまったのは蘭子を迎えに行かせた自分のせいだとずっと父さんは悔やんでいたはずだ
それなのに…
いえいえ翔太も喜んでるみたいなんで。
むしろ大歓迎ですよ。
はい。
ああ明日から出張ですか。
ああ大変だなや。
学校もあるからね。
明日朝戻るよ。
はい。
んで。
伝えときますから。
はい。
…ったくあの野郎。
(ため息)優しい叔父さんだな。
ああ。
なのに出てくのか?うん。
いつまでも甘えてられねえだろ。
そうか。
翔太は俺が父さんとけんかした理由をあえて聞かなかった。
その優しさが少し窮屈だった
仲直りしなきゃな。
親子なんだから。
あの写真最近撮ったのか?ああ。
叔父さんが俺のために。
翔太のため?俺んち何も残ってなかったろ。
「これからいっぱいいろんな事を残していこうな」って。
何か用事か?祭りで歌って下さい。
しつこいやつだなホントに。
「やんだ」つったべ。
昔みたいに歌ってくれたっていいじゃないですか。
俺の歌聴いて悲しくなんなら歌わねえ方がいい。
何もしないでじっとしてんのがせめてものわびだ。
わび?たまたま運よく生き延びた俺たちのな。
俺は忘れたくないんです!例えば!例えば…吾郎さんの歌を聴く事で頑張って生きようと思う人がいたらどうしますか?ほんなやつはいねえ。
あのころに戻るために頑張りたいってそう思う人がいたら歌ってくれますか?それを証明したら歌って下さい。
すみません。
あのちょっとお願いがあるんですけど…。
え〜?私らでいいんですか?すみません。
ちょっとだけお時間頂けませんかね?やっぱりどうしても駄目ですかね?こんな感じでいいんですけど…。
すみません。
申し訳ないんですがやはり私は…。
(師長)あなたの事を待ってる患者さんがたくさんいるのよ。
栞里さん戻ってきて。
本当にすみません。
私にはもうそんな気持ちはないので。
申し訳ないんですが師長ももう電話してこないでもらえませんか?すみません。
じゃあ失礼します。
あっ!わ〜!お祭りのお手伝いしてるんだって?偉いね。
別に。
今回のお祭り提案したのはうちの団体なの。
だからきちんとお手伝いしないと。
何たくらんでるんですか?えっ?何でここ来たの?昔を忘れさせれば心の傷が治せるとでも思ったんですか?心の傷が…。
そんなばんそうこうで貼るみたいに治せる訳ないじゃない。
忘れられる訳ないじゃない。
母さんの待ち受け画面を思い出した
俺と蘭子が写っていた写真
栞里さん!栞里さん!これ…。
明日香っていうの。
ちょうど蘭子ちゃんと同じ8歳だった。
離婚後ナースの仕事をしながら娘を育てるのは大変でいつも明日香は家で独りぼっち。
あの日患者さんの容体が急変して帰りがいつもより遅くなった。
はい。
明日香は私の誕生日を祝おうとしてたの。
私がいつも帰る時間にスープを温めておこうと火を付けて。
竹原明日香の母です。
こちらへどうぞ。
明日香…。
明日香…明日香…。
人を助ける仕事をしてるのに自分の娘の命を奪ってしまった。
知らない人だから話せる事ってあるのね。
娘の事タケさんに話してよかった気がする。
そうかそんな事が…。
して何でここに?何か…何かせめて人の役に立つ事を…。
罪滅ぼしか。
そうか…。
タケさんなら分かってもらえる。
そう思うと一緒にいて楽だった。
でもタケさんの頭の中には奥さんの事しかないから安心して。
それはホントだから。
もう看護師には戻らないんですか?明日香ちゃんは看護師のお母さんが自慢だったんじゃないんですか?その写真お母さんのまねでしょ?自慢のお母さんの。
お熱測りま〜す。
すみません。
また適当な事言っちゃいました。
ううん。
そんな事忘れてた。
そうね。
ありがとう。
ここの人たちはすごいよね。
自分たちが大変なのにちゃんと周りを見てる。
考えてる。
つらくても明るく振る舞って気を遣わせないようにしてる。
ここの人は普通にやってる。
強くて優しい。
何かに夢中になればその間は忘れられる。
でもいつまでもそのままではいられない。
みんなそんな事は分かってるんだ
父さんお帰り。
ああ。
蘭子は?友達の家で宿題。
そうか。
栞里さんの事聞いた。
疑ってごめんなさい。
何で教えてくれなかったの?何かな俺と一緒みてえだから。
無理して前ばっかり見ようとしてっけど独りになっとなんぼしても思い出してな。
あの時学校や幼稚園信じて幸江に子どもたちの事頼まねえで「すぐ逃げろ!すぐに逃げろ!」って言っておけばな。
あいつは俺の言う事聞いたばっかりに俺が漁師でねがったら…ってな。
父さん。
この間ひっぱたいて悪かったな。
ちょっと仕事行ってくる。
(幸江)裕樹!これ。
またダッシュボードに隠してたな?父さんだよ入れたの。
あっそう。
で今晩お父さんに確認すっからな?行ってきます。
裕樹!スマイルスマイル。
(島田)裕樹か。
港で幸江さんの。
おめえの母ちゃんの車が揚がったんだぞ。
タケさんには連絡した。
おめえも早く行け!優しいな〜裕樹は。
将来はコックさんかな〜?回想
(幸江)裕樹!スマイルスマイル。
父さん…。
母さんは?山村さんですね?はい。
車のダッシュボードの中からこれが。
(幸江)「たけおさんひろきらんこ生きててね。
助けにいけなくてごめんね。
みんなの家族でしあわせでした」。
裕樹君。
裕樹君…。
タケさんは?蘭子迎えに行きました。
タケさんねずっと奥さんの事捜してたの。
え?津波があった所を一人でずっと捜してた。
あなたたちには内緒にしててほしいって。
ずっと前を見ててほしいからって。
思い出したら前に進めない。
そう思ったのね。
思い出させて苦しませて傷つけるのが怖かった。
タケが来ても一緒だ。
悪いけど俺には歌歌えねえ。
俺たちも仲間亡くしてます。
そいづは一緒でねえっすか?だから何で俺が生きてるんだって思うんだ。
俺みてえな年寄りが生きててまだまだ先のある若え連中が命落としてそれ思うと…仲間に申し訳ねえ。
吾郎さんの心遣いありがてえっす。
だけっどもそいづが吾郎さんば苦しめてんでねえのかなって。
そったら心配いらねえ。
心配するっちゃ。
みんなそいな連中だもの。
吾郎さんと気持ちみんな同じだっちゃ。
これは今仮設に住む人たちの家族写真です。
この阿部さんの家はお父さんと2歳の娘さんが亡くなったそうです。
生きてた頃は吾郎さんの歌を聴くとどんな祝い事だろうって見に行ったそうです。
高橋さんの家はおばあちゃんが亡くなったそうです。
おばあちゃんは吾郎さんの歌のまねをよくしてたそうです。
でも下手だったって。
こっちは佐々木さん。
家族みんな亡くなって独り暮らしです。
「吾郎さんの歌が響く浜が懐かしい」って言ってました。
それからこっちは…。
裕樹。
もういいって…。
吾郎さん。
もういいって…。
あの日はつらいし思い出すと悲しい。
でもみんなあの日までの事は忘れたくないって。
そしてそれを誰かと語り合いたいって。
本当はそう思ってる。
みんなの思い出をよみがえらせてくれませんか?吾郎さんお願いします。
この町の人間は皆にぎやかなのが好きだったっちゃ。
しみったれた祭りではあの世からあいつらに笑われるっちゃ。
うんと派手な祭りにしてみんなば呼び寄せてやっぺしや吾郎さん。
お願いします。
「大漁唄い込み」を歌って下さい。
みんなに歌ってやって下さい。
お願いします。
お願いします。
しかしなあの吾郎さんにうんと言わせっとはな。
ハッハッハ…。
俺の出る幕ねかったべや。
歌ってくれなきゃ俺が歌わされる。
必死だよ。
たくましくなった。
うん。
母ちゃんも喜んでっぺ。
まさか海で見つかっとはな…。
ねえ父さん。
何だ?父さんはやっぱかつおだよ。
ああ?漁師に戻ってよ。
母さんは漁師の父さんにほれたんでしょ?命懸けて海へ出る父さんが好きだったんだよ。
何かあったら蘭子の面倒は俺が見るから安心して海に出て。
裕樹…。
そのかわり俺は漁師にならないかも。
何かやりてえ事でもあんのか?いや…。
町出てくのか?それは今のところない。
何だか分かんねえな。
俺も分かんねえ。
そうか。
窮屈に思ったら一度外へ出てけばいい。
な〜にすぐに恋しくなっから。
そいな町だ。
(島田)明太子と笹かまのコラボ焼きそばおいしいよ〜!
(翔太)おいしいよ〜!いかがですか〜!いかがですか〜!カキが入って400円!400円!あ…あ…あ…。
さあいよいよです。
お待たせしました。
大漁幟旗引っ張り上げの時間がやってまいりました。
皆さんロープの所さ集まってけさい。
蘭子行くぞ。
さ〜ていくど〜。
みんなでおっ立てっぞ。
いくぞ。
せ〜の!
(一同)そ〜れそ〜れそ〜れ!元気ねえど!
(一同)そ〜れそ〜れそ〜れ!そ〜れそ〜れ!
(一同)そ〜れそ〜れそ〜れ!元気ねえど!
(一同)そ〜れそ〜れそ〜れ!そ〜れそ〜れ!お〜ありがとうございます。
(拍手)お兄ちゃんこれ栞里さんから。
「お仕事あるからまたね。
元気でね」って。
「この町の人を助けようとして来たけど私が助けられちゃいました。
ボランティアの契約延長を勧められましたが私よりふさわしい人に譲った方がいいと思い断りました。
これから私自身を本当に必要としてくれている所へ行くつもりです。
裕樹君が勧めてくれたとおり看護師に戻ります」。
「どこかで娘が見てくれていると信じて。
みんなに会えてよかった。
元気でいて下さい。
ありがとうございました。
竹原栞里」。
ありがとうはこっちだ。
さあいよいよ最後になりました。
この祭りの締めはこの歌。
潮取からお越しの前島吾郎さんによります「大漁唄い込み」です。
拍手!
(拍手)よっ吾郎さん!吾郎さ〜ん!待ってました〜!よっ吾郎さ〜ん!
(拍手)吾郎さん!
(拍手)
(拍手)・「ハソリャソリャ」・「松島のサーヨー瑞巌寺ほどの」・「ハソリャソリャ」・「寺もないトエー」・「アレワエーエエトソーリャ大漁だエー」・「前は海サーヨー後は山で」・「ハソリャソリャ」・「小松原トエー」・「アレワエーエエトソーリャ大漁だエー」
忘れたくても忘れちゃいけない」
そんな重いものを抱えて俺たちは生きていかなきゃならない
いろんな人たちの優しさがこの町を包んでる
回想
(幸江)裕樹はお父さんと同じ。
手先が器用だっちゃね。
お母さんに似たんだよ。
(幸江)優しいなあ裕樹は。
将来はコックさんかな〜?
そうして支え合う人たちがほっとできるようなそんな場所をこの町のどこかに作りたい。
そうしたい
2014/03/09(日) 01:30〜02:45
NHK総合1・神戸
特集ドラマ「かつお」[解][字][再]
情に厚い三陸の元漁師・武雄(大友康平)と家族の愛の物語。震災で妻(鈴木京香)は行方不明に。息子や娘と支え合って生きていたが謎の女性(芦名星)が現れてから異変が。
詳細情報
番組内容
人情味あふれる三陸の元漁師・武雄(大友康平)とその家族の愛の物語。武雄は仲間から“かつお”と呼ばれていた。泳いでいないと息ができないカツオのように全力疾走で前向きに生きてきたからだ。笑顔のかげで武雄は厳しい現実を抱えていた。妻(鈴木京香)は震災で行方不明に。息子と娘を残しては死ねないと、漁師をあきらめて慣れない建設現場で働いていた。だが、謎の美女・栞里(芦名星)が現れてから一家に異変が起き始める。
出演者
【出演】大友康平,鈴木京香,芦名星,梅沢富美男,遠藤章造,嶺岸佑樹,古田うた
原作・脚本
【作】さわだみきお
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
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