らくごのお時間 2014.02.23

(福島)皆さんおはようございます。
番組の案内役を担当いたしますMBSアナウンサーの福島暢啓です。
この「らくごのお時間」では毎月1回寄席にお邪魔をしまして落語を一席お届けしております。
今回お邪魔しているのは去年7月にオープンした道頓堀角座です。
お昼にはお笑いタレントの昼寄席毎週月曜の夜には落語会が行われています。
さて…。
今回は桂米紫さんの落語をご覧いただきます。
(桂米紫)「どうも思わん」。
芸歴20年…。
米紫さんは「とんぼ」の名をもらいました。
3年後には名前をひと文字漢字に変え「都んぼ」に改名。
そして2011年には四代目桂米紫を襲名。
実は師匠…現在の桂塩鯛さんとのダブル襲名でした。
ちなみに米紫さんはざこばさんの孫弟子。
人間国宝・桂米朝さんのひ孫弟子にあたります。
さあ今回の演目は…。
旦那の愛を確かめるために妻がとった行動とは?それではどうぞ!
(出囃子)
(出囃子)
(拍手)
(出囃子)桂米紫の方でおつきあいをいただくわけでございますがまあ落語の中にはいろんな登場人物というのが出てまいりますけどもですねよく出てくるのがこの〜男と女というね。
「男と女」がテーマになったお噺っちゅうのは結構あるんでございますよね。
ええ〜。
今日もえらいもんでねお客様ももうほとんどが男と女ばっかりでございますけどもですね。
中には間の方もいらっしゃるかも分かりませんけどもですね。
あの〜男…これもね男性のお客様なんかね若い頃のことを思い出していただいたらピンとくるかも分かりませんが男ってね若い頃…まあだいたい10代の半ばからね20代後半ぐらいにかけてねあれねめちゃくちゃ女性にね興味があるんでございますよ。
異常なぐらいに興味があるんでございますね。
そやからもう男同士が集まるとね大抵もう女の人の話ばっかりですわ。
例えばまあ男の2人旅。
どっか旅館泊まりましてね夜面白いテレビもやってない。
もうしゃべるこというたら女の人の話…。
「おいおいおいおい!」。
「えっなんや?」。
「お前なふふっ…どんな女の人が好み?」。
「どんな女の人が好み?って…おう言おうか?俺ちょっとな鼻の下の長い女の人好き」。
「鼻の下の長い女の人?」。
「そうや鼻の下の長い女の人。
ええ〜ちょっと色気あるやろ?」。
「お前もか。
いや実は俺も鼻の下の長い女の人好き」。
「お前も?」。
「そうや!鼻の下の長い女粋なもんやな〜」言うてますと障子がシュ〜っと開いて仲居さんが「お茶でございます」。
(笑い)あほみたいな話がございますけどもね。
そんなこんなでまあ男がね女性と出会うというね。
これもねご経験おありの方覚えてらっしゃるかも分かりませんけども新婚の頃っちゅうのはねなんかこううれし恥ずかしいドキドキいたしましてええもんでございますが。
新婚の夫婦がね夜中一緒に寝ておりましてまあ新婚ですから奥さんの方も気ぃ遣うてますわ。
ええ。
昼間は気ぃ遣うてるんでございますが布団の中に入ってねウトウトっとしはじめた時分に緊張の糸がプツッと切れたんでございますね。
まあ人間ですからこういうことはあります。
しかたないんですがこの奥さんが布団の中で思わず…大きなやつを1発ボン!とね…。
(観客たち)ははははっ。
してしもうたと。
さあこれが新婚ですから旦那さんに聞こえたかどうかめちゃくちゃ気になりますわ。
奥さんかわいいですよわざわざ夜中ね旦那さんをそのために起こすんです。
「ちょっとあんた。
う〜んちょっとあんた」。
「ふぁ〜あ…。
なんやこんな夜中に。
ええっ?どないしたんや?」。
「いやあの…あんた今の気ぃ付いた?」。
「今の?いや今のってなんや?」。
「今のってほらあの…鳴ったの」。
「鳴った!?何が?」。
「何がってあの…音」。
「音?なんの?」。
「なんのってあの…雷」。
「か…雷?おい何かいな?雷ってなもんが鳴ったんか?」。
「気ぃ付かなんだ?」。
「気ぃ付かなんだなぁ。
いやそら屁の前か?後かい?」。
(観客たち)ははははっ。
いろいろと面白い話があるもんでございますけどもね。
まあ新婚の間はねそんなこと言うてまだ笑うてられるんでございますこれね。
ところがね夫婦にやってくるのが倦怠期というやつやそうでまた子供さんが大きなってくるといろいろとややこしい。
特に子供さんが女の子やった場合年頃になってくると親としてもいろいろ気ぃ遣うことがあるようでございますね。
年頃の娘さんが部屋でえらい泣いてはる。
お母さん心配しましてね…。
「うぅっうぅ〜…」。
「ちょっとあんたどないしたん?えっ?何泣いてんねん?」。
「お母ちゃんか。
実はなお父ちゃんがあの人と結婚したらあかんこんなこと言うの」。
「えっ?あの人って何か?あんたがず〜っとおつきあいしてるあのヨシオさんのことか?まあ〜なんでやねん?」。
「なんでもなそのヨシオさんというのはお父ちゃんが若いときにある女の人に産ました子らしい。
つまりお前とは腹違いの兄妹になるさかいあの人とは結婚できへんこんなこと言うの」。
「ええ〜っ!?ちょっと待ちなはれ待ちなはれ。
ほなあのヨシオさんってあれお父ちゃんの隠し子やったんか!?まあ知らんかった!悔しい!かまへん。
あんた気にせんとなヨシオさんと一緒になんなはれ」。
「いや一緒になんなはれって兄妹同士で結婚できへん」。
「かまへんの!実はあんたお父ちゃんの子やないの」。
(笑い)この落語分からない方は家に帰って家系図を描いていただくと非常に分かりやすいんじゃないかと思うんでございますけどもね。
しかしまあまあこの〜女性というのはまたねいくつ…何十になってもかわいらしいもんだそうでございますけども。
女の人がねやきもちをやくというね。
これもかわいいんでございます。
ただこれも皆さんやき方が大事なんですよ。
ええ。
こんがりとねやくよりはやっぱりじわじわっとあぶりやきぐらいがええんやそうでございましてあんまりやき過ぎてね黒焦げになってしまうと今度は一緒に住んでる男の方がいろいろと窮屈な思いをするんやそうでございますが。
「ちょっとおにいさん。
おにいさん」。
「えっ?おっ!誰やと思うたらお咲さんやないかいな。
まあまあこっち入りぃな。
えっどないしたんや?深刻な顔して」。
「おにいさんちょっと今日は話聞いておくんなはれ。
わてな今日という今日はもう辛抱できまへん。
あの人と別れます!けどなおにいさんには仲人もしてもうたんやし話だけでも聞いといてもらおうとこないしてやってきました。
もう辛抱できまへん!あの人と別れます!」。
「またかいなほんまにもう…。
ええっ?あのなすまんけど夫婦ゲンカの度に3日にいっぺんうち来んのやめてくれへんかお前。
ええっ?でもう一つ言うとくけどなわし仲人なんかしてないでお前。
そら仲人のまね事みたいなことはさしてもうたけど。
どないしてんな?今日は」。
「こんなん言うてなんですけどねうちの人わたいの稼いだお金で食べてんのと違いますか?わてが人さんの髪結わしてもろうてその賃金でうちやっていってまんねん。
いや…そらかましまへんねん。
そんなんかましまへんねんけどうぅ…わてのことボロカスに言いまんねやがな。
今日かてわて仕事終わってはよ帰ろう思うて宗右衛門町歩いてたらわての先輩にばったり会うてなお咲さんええとこで会うた。
わてちょっと指ケガしてしもて得意先回れんようになってしもたんやわ。
あんたすまんけど代わりに2軒ほど回ってもらわれへん?言われてそんなん嫌や言われしまへんやろ先輩のこっちゃし。
へえへえよろしおます言うて2軒回ってうち帰って来たらうちの人えらい怒ってまんねやがな!こんな遅うまでどこのたくり歩いてけつかんねん!終わったらじき帰って来んか〜い!。
お疲れさんのひと言もおまへんのやで!わてもう腹立って腹立って!もうな今日こそは別れよう思うてやってきましてん!おにいさんこれどう思います!?」。
(笑い)「どうも思わん。
ほんまにもう…。
えっ?あのなこれだけちょっとひとつ言わしてもらおう。
いやお前がな初めあれと一緒になる言うたときにわしどない言うたか覚えてるか?ええっ?やめとけ言うたんや。
なっ?あの竹初めうちの2階で居候しとったんや。
仕事もなんにもしてへん。
ふらふらふらふらしとった。
そこへおまはんがたまたまうちの嫁はんの髪結いに来てて。
2階から下りてきたあいつちらっと見てまあにいさんええ男でっしゃないかいな。
あれと一緒にさしておくんなはれっちゅうさかいにわしは言うたんや。
やめとけ。
あんなん極道。
ろくなやつやないさかいやめといた方がええと言うてんのにお前がいいえああいう人にはなわてみたいな者が付いてなあきまへんねんどうぞ一緒にさしておくんなはれっちゅうさかいにそこまで言うんやったらいうて一緒にさしたんや。
なっ?わし初めやめとけ言うたんや。
けどなまあお前の話聞いてるとまあそら確かに別れた方がええわ。
いや違うねん。
実はなこないだちょっと用事があって昼間おまはんのうち寄ったんや。
で外からちらっと家ん中のぞいたらなあの竹昼日中やで?銚子5〜6本倒して上等の造り前へ置いてええ機嫌でくぅ〜っと一杯飲んどんねん。
昼間っちゅうたらおまはんの働いてるその時間に銚子5〜6本倒して上等の造りでもう…。
もうあんなん見たらなわしかて耐えられん。
別れぇ別れぇ。
スパッと別れた方がええなぁ!」。
「ちょっと待っとくんなはれおにいさん。
それうちの人お酒飲むさかいっちゅうてわておにいさんとこお金借りに来たことおますか?うちの人昼間からお造り食べたらあきまへんの?それでおにいさんになんぞ迷惑かけたことおまっか?」。
「そやさかいわしお前とこ間入んの嫌や言うてんねんで。
そやろ?お前が別れたいいうて来てんの違うのんかいな!」。
「うぅ…別れたいことおまへんがな。
別れたいことおまへんねんけどなわてあの人のほんまの心が知りたいんですわ。
いやわたいの方が年上でっしゃろ?それでのうても女の方が先老ける言いますやないかい。
いや今はまだ大丈夫でもなこれからどんどんどんどん年いってわてが動けんようになりますわ。
ほなうちの人あんな男でんがな。
じきに若いコレこしらえて…。
わてかぁ〜っとなってむかついて向こうずねかぶりついたろう思うても歯ぁ抜けてるわあんた」。
(観客たち)ははははっ。
「どないもしようがおまへんがな。
わてなそれだけが心配でんねん。
ほんまにわてのこと好いてくれてんのかほんまに死ぬまで最後まで添い遂げてくれんのか。
わてなそれさえ分かったらどんなことでも我慢できます。
わてなそれさえ分かったらあの人のためやったらそんな苦労がしてみたい」。
(観客たち)ははははっ。
「のろけになっとるやないかお前は。
ちっ。
あほらしなってきたなほんまにもう。
いやそやけどなまあ確かにお前の言うとおりかも分からん。
いや人間というのはな外から見ただけではなかなか腹の中までは分からんもんや。
いやいや今日はなまあちょっといっぺんわしの話も聞いて帰ったらどないや?いや人から聞いた話やけどもな言うて聞かしてあげる。
これはなもろこしの話や」。
「ああ〜物干しの話?」。
(観客たち)ははははっ。
「いやあのな落ち着いて聞けや。
物干しやない。
もろこしや!」。
「ああ〜夜店で焼いてる?」。
「トウモロコシやそれはお前。
違うがな。
唐土今の中国や。
なっ?ここに昔なコウシという人がいてはったけどおまはん知ってるか?」。
「ええ。
牛のちっちゃいの」。
(観客たち)ははははっ。
「子牛やそれはお前。
違うがな孔子!立派な学者さんや。
お弟子さんもぎょうさんいてはった。
この孔子さんのいちばん好きなもんっちゅうのがこれが馬!それも白馬やな!これを何よりもご寵愛してはった。
ふだんからお弟子さんにおいええか?あの馬はなわしの大事な馬やさかいいつも磨いてきれいにしておくように。
ケガなんかさしたらあかんでわしの命より大事な馬やさかい。
常にそうお弟子さんにも言い聞かしてはった。
である日な孔子さんちょっと用事があって役所に仕事に出かけた。
拍子の悪いちょうどそのときに厩からバア〜っと火が起こった。
ええっ?火事やないかいな。
先生の大事な馬焼き殺してはえらいことやというんでお弟子さんが皆集まってなんとかこの馬を厩から引きずり出そうとすんねんけれども名馬ほど火を恐れるっちゅうやっちゃ。
グ〜っと突っ張ってしもうてどないも動かん。
そうこうするうちにどんどんどんどん火は広がってくる。
もうこないなったら今度自分らの命が危ないさかいに先生の大事な馬やけどもほっといてお弟子さん皆逃げてしもた。
ええっ?馬焼け死んでしもたがな。
ちょうどそこへ孔子さんが帰って来ておい!厩から火が出たっちゅうことを聞いたけど皆ケガはないか?。
はい弟子一同皆ケガはございませんでした。
しかし先生のご寵愛されてましたあの白馬を焼き殺してしまいました。
ええっ!?あの馬死んでしもたか。
いやけどな馬はまた買うたらええだけのこっちゃ。
それより弟子一同皆ケガはないか?ええっ?無事やってんな?ああ〜それが何よりやよかったよかったっちゅうて。
どないや馬のおとがめこれっぽっちもなしや。
ふだんあれだけ馬のことばっかり言うてはったのにここっちゅうときには弟子の身をこう案じてくださる。
ああ〜やっぱりええ先生や立派な先生やというのでそれからなお一層皆孔子さんに仕えたとこういう話があんねん」。
「ええ話でんな」。
「そや。
ええ話やろ?ところがなこれとまったく逆の話がある。
うん。
これはな京都のさるご大家の話や」。
「はあはあ。
京都の猿の大将の話?」。
「どんな耳しとんねん?お前は。
違うがな京都のさるご大家の旦那の話やっちゅうねん。
この旦那の好きなもんっちゅうのがこれが焼き物や」。
「いや…えっ?わてと一緒」。
「お前好きか?」。
「ええ好き」。
「焼き物を?聞いたことないで。
そない好きか?」。
「ええもう大好き。
もうこんな大きいやつ3つぐらいペロッと食べてしまいまんの。
ふふっ」。
「それ焼き芋やそれはな。
違うがなわしの言うてんのは焼き物。
皿とか茶碗を集めて喜ぶねん。
道楽の中でもこれがいちばん高うつくねん。
である日なこの旦那めったに手に入らん5枚1組の皿っちゅうのを手に入れた。
もうこないなったら今度人に見せとうてしゃあない。
早速こうお客さん招いてなええ〜実は珍しいもんが手回りましたどうぞ2階へお上がりください。
おい!あの皿2階へ並べるように。
奥方が5枚の皿2階の座敷へこう並べるわ。
もうこないなったらお客さんも褒めたら喜ぶの分かってる。
おおっ!こら結構なもんでございますな。
めったに手に入りません。
ええものを見せていただきましたとお客さん皆帰ってしまう。
旦那ご機嫌や。
おい!この皿ないつもの所へ直しておくように。
割ったらいかんぞ。
わしの大事な大事な皿やさかい気ぃつけていつもの所へ直しておくように。
承知をいたしましたと奥方が5枚の皿を持って2階から下りる。
ところが拍子の悪い階段が拭き込んである。
そこへさして足袋がサラや。
ツルッと滑って上から下へダダダダダァ〜〜っと落ちた!この音聞いて旦那びっくりしたがな。
おい!皿は大丈夫か?皿はどないなった?皿はどうもないか?皿は?皿は?皿皿皿…皿皿皿皿…。
なんと一気に皿という言葉を358回言うたっちゅうねん。
皿は私の体で受け止めて大事ございませんでした。
そうか。
言うてるやろ大事なもんやっちゅうて。
気ぃつけていつもの所へ直しておけ!。
かしこまりましたと奥方が皿を直す。
じきに実はちょっと親元へ帰らしていただきとうございます。
おうそうか。
ほな2〜3日ゆっくりしてきたらええがな。
奥方が親元へ帰る。
入れ代わりに使いの者が来たっちゅうな。
実は離縁をしていただきとうございます。
離縁?どういうこっちゃ?。
なんでもこちらのおうちでは人間の命よりも皿の方が大事なそうでございますな。
娘が皿を持って2階から落ちたときに娘の体のことをひとつも聞いてくれなんだ。
皿のことばっかりお尋ねになられた。
そんなおうちに大事な娘を置いておくわけにまいりませんというご両親のお話でございますと。
ええっ?いやそらなここの旦那もそら皿より人間の命の方が大事なことぐらい分かってる…分かってるけども好きなもんやさかい思わず皿皿皿!と出てしもた。
うん。
けどこないなったらもう後へは寄られへん。
そうでございますか。
そらしかたございませんな言うて別れてしもた。
さあこのうわさが京都中に広がったがな。
ええっ?おい聞いたか?向こうの旦那な人間の命よりも皿の方が大事なそうな。
ああっ!ひどいやっちゃ冷たいやっちゃなそういううわさがバァ〜っと広がって誰も後添え来ぇへん。
一人で寂しゅう死んでいったと。
こういう話があんねん」。
(笑い)「悪いやつでんな!」。
「お前が興奮せんでもええねんそれな。
悪いやつやな」。
「悪いやつです!ほんでなんでんなそういう悪いやつというのは大概そうして焼き物集めまんねんな」。
「いやいやそういうわけやないけどもな。
うん。
いやそういうことやない。
つまり…」。
「いいえそうです。
そうです!その証拠にねこのごろうちの人なんや…茶碗集めてまんねん茶碗を。
こないだもねどこぞで古い茶碗買うてきてそれ水屋へ入れてねおいええかここの水屋お前開けたらいかんぞ。
この茶碗お前絶対触ったらいかんぞ!いうて。
わてどんな茶碗やろう思ってチラッとのぞいたらあんたこれが汚い茶碗でんねん。
こんなん何がええねやろ思ってたらそれ見つかっておい!それいろうたらいかん言うてるやろ。
しばきあげるど!いう…。
偉そうに偉そうに言うてまんねん。
せやからそういう悪いやつは焼き物集めまんねん」。
「いやいやそういうことやないけどもな。
ええっ?ちょ…ちょっと待ち。
何かいなあの竹その茶碗そない大事にしとんの?」。
「命より大事な茶碗やとこない言うてまんの」。
「ああ〜そう」。
パン!「ちょうどええわ。
ええっ?お前なこれからうち帰ってその竹の前でな茶碗をバンっと割ってもうたらええねん。
ただ言うとくで。
お前も一緒にこけないかんで。
その茶碗洗うふりかなんかしてなそのままドタッとこけたらええねん。
そこであの竹がちょっとでもお前の体のことを尋ねるようならこらまだ見込みがある。
ところがなお前の体のことひとつも尋ねんと茶碗のことばっかり聞くようならこらもう見込みない。
スパッと別れたらええねん。
どや?これからうち帰って茶碗割ってこい」。
(観客たち)ははははっ。
「あっ…。
おにいさんおにいさん」。
「なんや?」。
「一つだけお願いがありまんねん」。
「おう。
なんや?お願いって」。
「あの…これからうち帰ってねうちの人にひと言言うてもらえまへんやろか?」。
「うん。
何を言うねん?」。
「今からお咲さん帰って来て茶碗割るけどもそのときちゃんと体のこと聞いてやるように」。
「なんのためにしてんねや分からへんがなそれ。
ええっ?いやお前あいつの本性が知りたいんやろ?それぐらいせんかいな。
なあ?それでひょっと別れないかんようなことがあってもなまたわしがええのん世話したるさかい。
なあ?うち帰って茶碗割ってこい」。
「はい…。
うぅ…ほなあの〜どないなるや分かりまへんけどなんぞありましたときにはどうぞお願いいたします。
さいなら」。
「怖いな。
うちの人体のこと聞いてくれたらええけど茶碗のことばっかりやったら別れないかんしこれ…。
うち帰って来た」。
「怖い顔して座ってるがな」。
「ただいま」。
「どこ行っとったんじゃこらお前は!ええっ!?また兄貴とこ行っとったんやろお前!あのなケンカの度に向こう行くのやめぇお前!聞く方もつらいんじゃお前こら!聞いてんのかお前は!」。
「あんたやっぱり猿の大将や」。
(観客たち)ははははっ。
「なんの話をしてんねんお前。
誰が猿の大将やお前。
ええっ?入ってこい。
かまへんから入ってこいって。
ちょっと飯よそってくれ。
なっ?腹減ってんねん。
飯よそってくれ」。
「飯よそってくれってあんたまだご飯食べてへんかったんか?」。
「長いこと二人差し向かいで飯食うてへんがな。
今日ぐらいちょうどええなと思うとったんや。
びゃ〜っと飛び出していきやがってお前。
もうはよ飯よそってくれって」。
「あんたご飯待っててくれてたん?」。
「たまにはお前二人差し向かいで飯食いたいなと思うこともあるわいな」。
「あんた京都の猿やと思ったらちょっとトウモロコシのちっちゃい牛」。
「お前なんの話をしとんねん」。
(観客たち)ははははっ。
「訳分からんなお前。
もうええから。
もうとりあえず早いこと飯よそってくれって」。
「ちょっと待って。
わてやることがあんの」。
「ちょ…ちょい!ちょっと!おい何してんねん?えっ?おい…あかんっておい。
そこの水屋開けたらあかんって。
違うがなそこにはな俺の大事な茶碗が…。
あかんっておい!いろうたらいかんって!おいちょっと待てその茶碗どうするつもりや!?」。
「これ洗う」。
「もう洗わんでもええねん!洗わんでええねん。
汚れてんのが値打ちやさかい。
あかんって…。
それ置け…あかん!床ががたついてるさかいなあかんってその…あっ!ああ〜!!バンっと倒れてまいやがった!おいどないなったんや?どないなったんや!?」。
「茶碗…割れた」。
「そやさかい言うてるやろいらうないうてほんまにもう。
もう…ええがなもう。
ええがな茶碗はな。
また買うたらええだけのこっちゃ。
それよりお前大丈夫か?ええっ?バンって大きな音した。
ケガしてないか?体なんともないか?大丈夫か?」。
(笑い)
(笑い)「愛してます」。
「お前何を言うとんねん!?何を言うとんねん?な…なんやねんお前!なんちゅう顔すんねんお前。
ええっ?それより体なんともないかって聞いてんねん」。
「あんたそないわての体のこと心配してくれんのんか?」。
「当たり前やないかい!お前にケガされてみぃ明日から遊んで飲まれへんやないかい」。
(拍手)
(受け囃子)お疲れさまでした。
どうもありがとうございました。
こないだお名前が変わられたと。
そうですねもう3年半ほど前ですね。
じゃあもうすっかり米紫さんとして慣れたところはあるんですかね?周りの方も。
慣れましたね。
ほんでね先代の3代目米紫師匠っていうのがね落語ファンの方ご存じかも分かりませんけどねすごいインパクトの強い方でいらっしゃってねトドよりもトドに似てる感じがしました。
実物よりもトドみたいな。
もうすごい方で。
ほんでやっぱりね僕がまあ「米紫」をね…米紫師匠の名前を継ぐっていうたときにね米朝師匠の奥さんにご挨拶さしてもうて「奥さんこの度米紫襲名さしていただくことになりました」って言うたら米朝師匠の奥さんが「ふっ」ってね…ちょっと「ふっ」って鼻で笑わはって。
ははははっ。
それがすごい印象深かったですね。
じゃあ先代の印象が強いということは今いろいろと苦労されることも多いんじゃないかと思うんですが。
なんかそれはそれですごく楽しいですね。
また違ったなんかそのね米紫像を作れるというのか。
へえ〜。
それは楽しいことですね。
今後はどういうふうにしていこうっていう目標がありますか?そうですねなんかね…ですから自分も若い頃はねきっちりやって決まったところでウケさすみたいなこと頭で考えてましたけどね最近やっぱりえらいもんでまずとりあえず自分が楽しくしゃべろうと。
へえ〜。
自分がまず楽しくしゃべればその楽しさがお客様にも伝わっていくんじゃないかなというような感じでね。
へえ〜。
なんかそういう感じになってきました。
緩くといいますかあの〜ざっくりと楽しもうっていう。
楽しい落語にしたいなという感じ。
自分が楽しむという?そうです。
まずはね。
まず自分が楽しむという。
どうもありがとうございました。
お世話になりました。
今週水曜サンケイホールブリーゼで桂米團治さんらが出演する「東西激突落語会俺たち若旦那」が行われます。
詳しくは番組ホームページまで。
次回は3月23日です。
お楽しみに。
2014/02/23(日) 05:00〜05:30
MBS毎日放送
らくごのお時間[字]

<第5回>◆桂米紫の「厩火事(うまやかじ)」◆〜今回は「道頓堀・角座」から▽月1回、第4日曜の朝に本格的な落語を一席。

詳細情報
お知らせ
月に1回、寄席小屋を訪れて、脂の乗った落語家の落語を1席お届けする。

地下鉄御堂筋線・動物園前駅すぐの「動楽亭」は2008年に完成した、マンションの2階にある寄せ小屋。小屋主の桂ざこばが生まれ育った場所に思い入れを注いで作った小屋だ。マンションを改造したとはいえ、舞台は檜造り。毎月のように昼席が行なわれている。
出演者
【落語】
桂米紫
【案内人】
福島暢啓(MBSアナウンサー)

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
バラエティ – お笑い・コメディ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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