小さな旅「凍(し)みて、あたたか〜長野県小海町〜」 2014.02.08

(テーマ音楽)
やわらかさと荒々しさを合わせ持つ峰々
白銀の八ヶ岳連峰です
その麓を走るJR小海線。
山梨小淵沢と長野小諸を結び八ヶ岳高原線とも呼ばれています
訪れたのは1月の上旬
ほんと一面冬景色ですね。
雪が光ってきれいだ。
八ヶ岳の東の麓標高900mに家々が建ち並ぶ長野県小海町。
5,000人が農業や観光業などで暮らしています
冬の風は八ヶ岳で雪を落とし冷たく乾いた空気となって町を包みます
最低気温は氷点下20℃近くまで下がります
町の南標高1,100mに氷に閉ざされた湖がありました。
周囲2kmほどの松原湖です
うわ〜にぎわってますね。
湖中にテントがいっぱい。
ここが湖。
あっ。
雪の下にほらすぐ氷がもう出てる。
氷の厚さが12cmを超えれば地元の漁協がワカサギ釣りを解禁します
この冬は1月1日に始まりました
直径15cmほどの穴から8mの湖底にいるワカサギを狙います
小さくしなやかなさおで指先に伝わるかすかなアタリを待ちます
まだ1匹しか釣れてない。
1匹しか釣れてない?でも1匹釣れたんだ。
見せて。
あっかわいい〜。
誰が釣ったの?君が釣ったんだ。
すごい。
おっ!もしや…。
あっ!釣れた!釣れた!釣れた釣れた。
よかった!釣れました。
釣れましたよ。
八ヶ岳の清らかな水は餌が少なく1年で5cmほどにしか成長しません。
小ぶりですが深い味わいです
鷹野圭太さん。
漁協の組合員として松原湖の管理を担っています
(鷹野)どうですか?釣れますか?釣れないです。
(鷹野)店の者ですけどちょっと釣り方…。
お〜。
教えて下さい。
手でこうやって持ってると手が揺れてアタリが分からないので足とかに固定しながら小さくこうやってチョンチョンチョンチョンって誘って…。
ピタッと。
よしっ。
え〜っ!うそうそ!え〜っ!うわっすごい!何で?ものすごい豪快な釣りの極致っていうよりも繊細な釣りの極致みたいな感じ?そうですね。
ほんと繊細だと思います。
一筋縄じゃ釣れないですね。
逆にそれだからこそ皆さんハマって釣りに来るんだと思いますよ。
湖のほとりにたたずむ民宿。
鷹野さんはこの宿の3代目です
宿を始めた昭和30年頃は夏のボート遊び冬のスケートなどで訪れる人が増え始めていました。
泊まりがけで松原湖を楽しんでほしいという祖父の考えでした
地元の高校を卒業し県内の温泉旅館で修業を積んだ鷹野さん。
24歳で家業を継ぎました
当時人工のスケート場に押され客足が減っていました。
鷹野さんが冬場のレジャーとして力を注いだのがワカサギ釣りでした
氷の湖としてにぎわうようになった松原湖。
冬が待ち遠しい季節になりました
秋になって冷え込んできて「何だか寒くなってきたぞ」っていう時はどんな気持ちがするんですか?やっぱり待ってましたっていう気持ちです。
この氷張る時期が一番ドキドキするんですけどいつになりゃ張るのかなっていつも毎朝起きてみて「あ〜今日も張ってない」とか思いますよ。
マイナス10℃以下になってくると「あ〜とうとう来た」って感じで。
夜明け前。
氷点下15℃
太公望たちが暖をとりながらその時を待ちます
朝6時半。
ワカサギ釣りの始まりです
(鷹野)おはようございます。
頑張って下さい。
寒〜い。
(笑い声)
朝日に輝く八ヶ岳
凜とした空気の中で時を忘れ過ごします

(滝の音)
町の南西落差10mの八岳の滝です
八ヶ岳からの清流も凍てつく季節の到来です
麓では突き刺すような寒さを「凍みる」と言い互いを気遣って暮らしてきました
女性たちが作っていたのは「凍み大根」です
北原富美子さん。
地区の女性に声をかけ昔ながらの保存食を残していく活動をしています
ゆでた大根を凍らせうまみを閉じ込める凍み大根
寒さが厳しく空気が乾燥しているため他の地域よりも早く3週間ほどで出来上がります
厳しい寒さは北原さんたちに思わぬ出会いをもたらしました。
福島県飯舘村の人たちとの保存食作りです。
小海と同じ寒冷で乾燥した気候の飯舘村は餅や大根などを凍らせて保存食にしていました。
避難生活の中でふるさとの保存食を作れないでいる事を知りおととしから小海に招くようになりました。
懐かしい味に触れてほしいと冬の交流が続いています
小海を第2のふるさとと思ってもらえたらいいなという気持ちがふつふつとわいてきてそれで飯舘の方たちにもおいで頂く時には「おかえりなさい」というような形でお迎えしたいなっていう気持ちがいっぱいになりました。
交流の日を前に今年も食材の下ごしらえに追われます
ゴボウのような香りがする山菜のオヤマボクチ。
飯舘村では餅のつなぎに使われてきました
小海町でも去年から栽培を始めました
3時間煮詰め水にさらしてのアク抜きは飯舘の人たちから教わりました。
もうすぐ再会の日です
午後5時。
気温は氷点下10℃
町営のスケートリンクです
小学生から高校生まで200人が毎日夜8時まで練習に打ち込みます
ソチオリンピックに出場する菊池彩花選手や山中大地選手もここで腕を磨きました
(氷を蹴る音)
氷を蹴る音だけがリンクに響きます
星たちが瞬き始めます

標高が高く町の明かりが届かない夜空

この星空を描き続ける谷本清光さんです

木の葉が落ちる冬は木々の間から星の光がこぼれます

暗い中でもスケッチできるよう赤い画用紙と白いクレヨンを使います
満天の星だと星だけが語り合ってるみたいだけど星が木の間から出てくると木とか話をしてるような。
そして私とも話をしてるような感じになるんですよね。
それが描きたい。
谷本さんは25年前東京から移住しアトリエを構えました
おはようございます。
どうぞ。
今日は寒かったな。
寒かったですね。
これねぎですけど。
よかったら使って下さい。
地域の仲間が野菜の差し入れに訪れます
戦後の東京で焼け跡から星空ばかりを見ていた谷本さん。
大学で美術を専攻し50年間星空だけを描いてきました
星の色は10種類以上の油絵の具を重ね塗りし微妙な光の加減を表現します
谷本さんは季節や方角にとらわれず自由に星を描きます。
カラマツ林の間から見えるサソリ座
柔らかい薄紅色はベテルギウス
オリオン座の輝きに八ヶ岳が照らされます
凍てつく空から星たちが語りかけてくるようです

福島県飯舘村の人たちが小海町を訪れる日です
ふるさとを離れ仮設住宅などで暮らす8人がやって来ました
わ〜!どうも!
福島市内の借り上げ住宅で暮らす渡邊とみ子さん。
かつては凍み餅を作り子供たちと食べるのが楽しみでした
この日は小海の15人と一緒に作ります
震災直後飯舘の多くの人が避難所へと持ち込み分け合って食べたのが凍み餅でした
米粉のつなぎはこの日のために用意したオヤマボクチ
外では蒸し上がった餅をついていきます
懐かしい香りが立ちこめます
最高だ!いや〜いい香りだ!こんな香りはどこにもねえ!うん!はいっ!ほんとこの香りな。
だんだん粘り出てきたから。
いい餅だな。
餅は小分けにしてわらで結わえ水につけてから干します
このままじっくり2か月寒気にさらします
3月。
小海の人たちがこの餅を持って福島に行きます
凍み餅すごく食べたいって言う仮設の方が多かったんですね。
できなくなってしまった事がこういった事で小海で再現できるっていう事でまた皆さん楽しみも増えて。
ふだん「雪があってやだな」とか「寒いな〜今日はまた凍みて」とかね。
マイナス十何度の世界にいるんですけどこれをうれしいと思えるっていうのは皆さんにお会いできたからなのかなって思っています。
今日もまた凍みて

(テーマ音楽)
凍てつく寒さの中にあるぬくもりです

(テーマ音楽)2014/02/08(土) 05:15〜05:40
NHK総合1・神戸
小さな旅「凍(し)みて、あたたか〜長野県小海町〜」[字]

八ヶ岳の麓、標高900mの長野県小海町。松原湖の氷上ワカサギ釣り。星降る冬の夜空を描く画家。福島県飯舘村との保存食作りの交流。雪と氷の暮らしの輝きに触れる旅。

詳細情報
番組内容
八ヶ岳の麓、標高900mに広がる長野県小海町。冬は氷点下15度。日本一高所を走るJR小海線を降りると、雪と氷と共に生きる人々がいる。一面氷に閉ざされた松原湖のワカサギ釣り、そして湖を管理する宿の主人。星降る冬の夜空を描こうと、東京から夫婦で移り住んだ画家。保存食作りをきっかけに、福島県飯舘村と交流を続ける主婦たち。子供たちはアイススケートに励む。凍てつく寒さの中に息づく、暮らしの輝きに触れる旅。
出演者
【語り】山田敦子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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