にっぽん紀行「ひめゆりを訪ねて〜沖縄 父の手記をたどる旅〜」 2014.03.23

(中江)今から69年前この海岸を逃げ惑った女学生たちがいました。
太平洋戦争の末期の沖縄戦で負傷兵の看護に当たった…アメリカ軍に追い詰められ123人が命を落とした悲劇の部隊です。
以前私はこの学徒たちを描いた映画に出演した事があります。
ここに一冊の手記があります。
「ひめゆり学徒隊の青春」。
学徒隊を率いた隊長が残した記録です。
先月県外の大学生たちがこの手記を基にひめゆりのゆかりの場所を訪ねました。
そしてその旅に手記を記したひめゆり学徒隊隊長の娘も参加しました。
実際の場所に立つ事で父の思いに迫ろうとする娘。
ひめゆりの道を行く3日間の旅を追いました。
黙とう!
(英美)大事な娘さんをこういう前線に送り出してつらかったんだろうと思いますね。
先月那覇空港に広島から来た若者たちが降り立ちました。
広島経済大学で戦争と命について学ぶ岡本ゼミナールの学生です。
毎年沖縄の戦跡を回っています。
今年学生たちが訪ねるのはひめゆり学徒隊ゆかりの地です。
ひめゆり学徒とは太平洋戦争末期の沖縄戦で日本軍に動員された200人余りの女学生たち。
(砲声)アメリカ軍が沖縄に上陸する中傷ついた兵士の看護に当たりました。
しかし戦況が悪化するとひめゆり学徒は沖縄本島南部に追い詰められます。
学徒たちは戦地を逃げ惑い123人が命を落としました。
ひめゆりたちの悲劇を記した手記「ひめゆり学徒隊の青春」です。
今回学生たちはこの手記に書かれた場所を順に訪ねていきます。
学生たちの旅に広島から一人の女性が同行しました。
手記「ひめゆり学徒隊の青春」を書いた学徒隊隊長の娘です。
英美さんの父親西平英夫さんです。
師範学校の教師として沖縄に赴任した西平さんはひめゆり学徒を隊長として率いました。
それでは出発しま〜す!
(一同)はい。
学生たちはひめゆり学徒隊が戦時中に歩んだ道のりを実際にたどります。
目指すは激戦地だった沖縄本島南部。
3日間で60kmを歩きます。
心臓や足腰が悪い英美さんは車で学生たちの後を追います。
まず歩くのは69年前ひめゆりたちが学校から動員先の沖縄陸軍病院へと向かった道です。
何度も校舎を振り返る女学生を西平隊長は励ましながら歩きました。
「決戦渦巻く陸軍病院を目指して黙々と前進している少女の後ろ姿に私は平安なる将来を祈らざるをえなかった。
歩みを止めては振り返り振り返ってはため息を繰り返していた。
私は懐かしい校舎にしばしの別れを惜しんで少女たちを励ましながら坂道を急いだ」。
たどりついたのは沖縄陸軍病院のあった黄金森。
戦時中森のあちこちに洞窟が掘られ病室として使われていました。
ひめゆり学徒隊はここで負傷兵の手当てに当たりました。
英美さんは去年心臓を患いました。
これが最後と決めた沖縄への旅で確かめたい事がありました。
戦前英美さんにとって父は穏やかで優しい人でした。
しかしなぜか沖縄から戻ってきた時には別人のようになっていたといいます。
多くの学徒を失いながら生き延びた父。
最後まで教え子に寄り添ったのか疑問を抱いた事もあります。
英美さんは今回の旅で手記には書かれていない父の姿を知ろうとしているのです。
陸軍病院にあった洞窟の一つ本部壕。
この近くで学徒の一人が戦闘に巻き込まれ亡くなったと西平隊長は記しています。
学生たちが西平隊長の手記からこの場で起きた事を朗読します。
「初の犠牲者佐久川米子が戦死したのは26日であった。
佐久川はその朝敵機の機銃攻撃を受け左脚けい部の骨を粉砕された。
居合わせた…」。
「居合わせた婦長と学友によって応急手当てがなされ夕刻を待っていたのであるが17時ついに永眠した。
私が伝令を受けて馳せつけた時は学友と姉の和子が涙に暮れて死後の処置をしている時であった」。
「…涙に暮れて死後の処置をしている時であった」。
ひめゆり学徒隊が兵士の看護に当たった病院壕に入れる事になりました。
どうぞ。
真っ暗な壕の片隅で傷ついたひめゆり学徒は息を引き取りました。
「小さな少女が負傷後およそ10時間どのように死と闘ったか。
心細さに死を諦観しつつ次第に衰えていった経過が想像されてかわいそうでならなかった。
私は失うべきでない命が失われたのではなかったかと煩悶した」。
陸軍病院で西平隊長は8人の教え子を失いました。
大事な娘さんを預かってるのにそういう子たちをこういう前線に送り出して自分は傷つかずに生き残ったっていうのはその苦衷っていうかな…。
そういうのは文章には表れませんけどつらかったんだろうと思いますね。
このゴ〜という音とかにおびえながら歩いてたのかなって…。
(米軍機の飛行音)足が痛いだろうなとか思いながらね。
その当時の女子学生さんは何を履いてたんだろうかな?それが気にかかりました。
旅の最終日。
ひめゆり学徒隊がアメリカ軍に追い詰められた沖縄本島南部へ向かいます。
そこに英美さんがずっと気にかけていた場所があります。
沖縄戦末期西平隊長とひめゆり学徒がおよそ3週間身を隠していた場所です。
ここで安座間晶子という学徒が命を落としました。
「ごう然と2発の砲弾が入り口にさく裂した。
硝煙の中から『先生!』と呼ぶ声が聞こえる。
よく見ると安座間であった。
安座間は重傷であった」。
「安座間は重傷であった。
軍医に処置してもらったが助かる見込みはなかった。
『苦しい。
殺して注射して。
ホントに私の事を思うなら薬をもらってちょうだい。
どうせ死ぬんだもの…。
ね!お願いします』。
皆はただ黙然としてその姿を見守るばかりであった」。
黙とう!安座間という名前は英美さんにとって忘れられないものでした。
あのね今の手記に出てきた安座間晶子さん…の遺髪は父が持って帰ってて私が父が帰ってきた時に初めて…。
安座間晶子さんが亡くなった場所。
戦後父が変わってしまった理由がここにあるのかもしれません。
父が帰ってきてリュックの中から出てきた遺髪の一人です。
それを私が一緒に持って帰ってくれたチョコレートと同じようにバッとつかんで開けようとしたら父が声を荒げて「それは君たちのものじゃない」と言ったのはすごく印象に残ってまして。
安座間晶子さんという名前は今でも忘れません。
皆さんその事をしっかり心に留めて一歩一歩しっかり踏み締めてこれからの行動をしていって下さい。
英美さんは壕に歩み寄りました。
しかし中に入る事はできませんでした。
中は…。
もう私は…ひっくり返ったらみんなに迷惑かけるから…分かりました。
父の苦しみを思い立ちすくむしかありませんでした。
「安座間は水をくみに来る度に『先生先生』とよく通る声で呼びながらいつも手を振っていたかわいい予科生であった。
目前で失った私はしばらく何もする気になれなかった。
相続く犠牲の大きさに思い悩んでいた」。
旅の最後に英美さんと学生たちはひめゆり平和祈念資料館を訪ねました。
亡くなっていく学徒に父はどう接したのか。
英美さんは父を最もよく知る人物と会う約束をしていました。
会いに来ました。
はいはいお待ちしていましたよ。
当時19歳だった本村さん。
半数を超える学徒が亡くなる中最後まで英美さんの父と行動を共にしました。
父が置かれた過酷な状況を追体験した英美さん。
本村さんに聞きたい事がありました。
(本村)もし先生と一緒じゃなかったら私は死んでいたと思います。
言いませんでした?言いません。
「生き残れ」。
父が学徒たちにかけた言葉でした。
最後まで教え子の命を守ろうとしていたのです。
帰り際本村さんが英美さんをある場所に誘いました。
お父さんの写真があるんですよ。
先生方はこっちです。
坊主でしょ?みんな髪を切っていますよね。
これだ。
優しい笑顔を浮かべた父。
そこにはひめゆりたちに寄り添った父がいました。
そちらに戻りましょう。
ひめゆり学徒隊最後の地です。
この海岸で岩陰に隠れていた西平隊長と学徒たちはアメリカ兵に見つかり収容されました。
「敵に降伏するより死ぬ事を選べ」と言われた時代に父は学徒たちと共に生きる事を選んだのです。
すごくやっぱり生徒を連れて歩くっていうのは大変だったんだなあと思いましたけどね。
でもそれぞれの局面で精いっぱいの努力をした人だというふうに確認できたのはうれしかったです。
父の足跡をたどった沖縄の旅。
英美さんが出会ったのは昔と変わらない優しい父でした。
2014/03/23(日) 06:15〜06:40
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「ひめゆりを訪ねて〜沖縄 父の手記をたどる旅〜」[字]

沖縄戦に看護要員として動員され、多くの犠牲をだした女学生たち「ひめゆり学徒隊」。先月、学徒隊隊長の娘が、ひめゆりの戦跡をたどる旅を行った。その旅路をみつめる

詳細情報
番組内容
太平洋戦争末期の沖縄戦に看護要員として動員され、アメリカ軍の攻撃や自決によって命を落とした女学生たち「ひめゆり学徒隊」。先月、広島の大学生が沖縄戦について学ぶため、「ひめゆり」の戦跡を歩いてたどる旅を行った。その旅に、79歳の女性が参加した。ひめゆり学徒隊を率いた隊長の娘だ。父が見た沖縄戦とは、どんなものだったのか。大学生とともに、父の足あとをたどろうとする、3日間の旅路をみつめた。
出演者
【語り】中江有里

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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