SWITCHインタビュー 達人達(たち)▽久石譲×吉岡徳仁〜考える音 感じる形 2014.03.08

(「となりのトトロ」)大人から子どもまでジブリアニメの音楽は誰もが知っている。

(「崖の上のポニョ」)宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」に至るまで30年にわたりその世界を音楽で支えてきた男。
宮崎駿は語っている。
「自分たちの作品にふさわしい才能を探していくといつも久石さんにたどりつく」。
(拍手)これまで久石が手がけた映画は70本以上。
作った曲は数千曲に及ぶ。
そんな久石がこの日夜の東京都現代美術館を訪れた。
ある世界的デザイナーの展覧会が開かれていた。
吉岡徳仁47歳。
プロダクトデザインからアート建築まで多彩な活躍で知られる。
名だたる企業からのオファーが引きも切らない。
揺らめくスカーフや踊る衣服。
発想力あふれる仕事は人々を驚かせる。
国内外のデザイン賞も数多く受賞。
新作を発表するごとに熱い注目が集まる。
水をイメージした透明な時計。
六本木ヒルズ近くの歩道に置かれたガラスの椅子。
「雨に消える椅子」と名付けられている。
彼の作品の前に立った時に思わず何も考えないでわ〜って声が出ちゃうんですよね。
それはもうホント子どもみたいに。
水紋のきらめきだったりとか…形を追求してきた吉岡がなぜ作曲家久石譲に興味を持つのだろうか。
(吉岡)僕自身がすごくこう…久石さんのクリエーションを見るとやはり人間の感情とかそういうものにすごくリンクしているんじゃないかなと思って。
(久石)作品のアイデンティティーを追求する訳だからね。
そうすると…だからその辺って見てみたいなという気がするよね。
音楽とデザイン。
身を置く世界は全く違う。
2人の出会いはどんな化学反応を引き起こすか。
どうもこんにちは。
吉岡と申します。
初めまして。
よろしくお願いします。
そうですね。
あっホント?僕全く信じてない。
そうですか。
感覚を当てにしながら観客相手にコンサートなんてできないよ。
一つのものを見て美しいと思う人もいれば怖いと思う人もいればいろんな表現ができるじゃないですか。
僕はそれがすごく好きで。
吉岡の展覧会場に足を踏み入れると何やら白い雲のようなものに埋め尽くされている。
180万本のストローを使って…。
180万!?そうですね。
流れみたいなものをやっているんですけども…。
ふ〜ん。
きれいだな。
面白い。
これがあの〜「ウォーターブロック」というガラスのベンチなんですけど。
これ16cmぐらいのむくのガラスなんですよね。
これが…削るんですか?いや最終的には磨くんですけど大きな造形としては自然にできてくるもので偶然を取り入れながらやっているんですよね。
ガラスが固まる際につくり出される偶然の造形。
波紋のような揺らめきがベンチの上に広がっている。
パリオルセー美術館の印象派の部屋。
ここにも吉岡のベンチが展示されている。
「光と水の輝きを捉えようとした印象派。
その作品と調和しながらも現代的な息吹をもたらすもの」と絶賛された。
オルセー美術館のリニューアルが行われてその時にプロジェクトに参加したんですけどこのベンチのために床を補強したりとかいろいろして頂いたんですね。
あっ重いんだ?そうですね。
このフローリングの下に鉄板を敷いて施工工事してあるんですけどそれが今10点ほど作品が展示されているんですけどね。

(「白鳥の湖」)次の展示室からは大音量の音楽が聞こえてきた。
「白鳥の湖」の曲を聴かせながら結晶を成長させてるんですけど。
ここが結晶の絵画になります。
これ?これは結晶?そうですね。
鉱物です。
音楽をかけながら成長させた?そうですね。
そこのところがまだちょっとよく分かんないんだけど。
もうホントに水槽に音楽を聴かせながらっていう事です。
音楽を鳴らしながら成長させるんですけど…。
「白鳥の湖」と題された作品。
チャイコフスキーの「白鳥の湖」をスピーカーで聴かせながら水槽の中で鉱物の結晶を成長させる。
イントロダクション序奏を聴かせた結晶絵画。
「白鳥の湖」といえばこの曲。
第1幕第10曲を聴かせたものだ。
吉岡は2007年から鉱物の自然結晶による作品を発表している。
アーティストが自らの手で描くのではなく自然の力を借りて生み出す。
描く絵画ではなく育てる絵画だ。
そういう事を考えればすごく面白いのかなと思ってるんですけど。
そのある種…そういうイメージあるんですけどね。
要するにドの音ってドの音だけじゃ全く意味なさない訳よ。
だけどドレミとかドミソとかこう…時間の経過がいるものというのは全て論理的な構造を持つ。
絵の人っていうのは別に…表現自体に。
だからどちらかっていうと感覚的にもストンと入っていけるところがあるよね。
だけどこういう作品っていうのは基本的にもうちょっと感覚的でも成立するんだが例えばフェルメールの絵なんかは確実にあの中にこう左側から当たってくる光と時間を感じさせるでしょ。
何かそれをちょっと今感じながら見ているんですけどね。
久石がフェルメールの作品を手がかりに作曲した音楽。
時を閉じ込めたような絵画に久石の音楽が共鳴する。
こういうのって…どっかに発注される訳ですか?クライアントがあって「こういうのを作ってくれ」というのがある訳?ないですね。
これはないんだ。
これは自分の。
自分のため?自分から出る…。
あっそうなんだ。
2つあって…デザインの仕事になるとクライアントから頼まれていろいろ…その中でまたアイデアを出すというのはあるんですけどこういうものはやっぱり自分から未来に向けてこう何か新しいものをつくりたいっていうのがやっぱりあって…それでいろいろ実験しながら自分が感動したものをまた更に作品にしていくという感じですかね。
デザインの仕事ってどうしてもクライアントがあって発注があってから…。
そうです。
それは多分僕らの映画音楽だとかも一緒で見えない闘いがあるじゃないですか。
その中でこうあるクオリティーをずっと保っていくっていうのはすごく大変な事だからね。
だからそういう事でね…。
でもこれは自分のための作品なんだ。
そうですね。
違う?やっぱり。
発注された時のものと自分で作りたいものって。
ある意味違うっていうのもあるんですけどクライアントから発注されるものもやっぱりもう自分の表現の一部になってるといえばなってますね。
逆に僕らもそうなんだけどね…吉岡の作品作りの現場をのぞいてみた。
巨大な大理石のテーブルを作るため模型を使って実験中。
てこの原理で…空中に浮いているようなものを考えてるんですよね。
長さ4mの大理石を軸足に載せ片側だけで自立させる。
驚きのアイデアをひっ提げて4月から始まるミラノサローネ国際家具見本市に乗り込む。
照明器具TFU。
豆腐のような四角いアクリルの塊に光源を埋め込んだ。
アクリルの中を透過する光。
照明器具ではなく光そのものをデザインした。
Oと名付けられた腕時計。
オーはフランス語で水を意味する。
透明なバングルと鏡のように磨き上げられた盤面が周りの風景に溶け込む。
水から切り取られ時のみを腕にまとうような時計だ。
手にした時の触感にこだわった携帯電話。
黒は特殊ウレタンを含みしっとりと手になじむ。
オレンジはファンデーションに使われるシリコン粒子を加えてさらっとさせた。
「クリスタルフォレスト」クリスタルの森。
1,500本に上るステンレスミラーで構成されている。
昼は太陽夜は街のイルミネーションが反射して輝きを放つ。
次に待ち受けていたのはなんとも破天荒な椅子だった。
これが紙の椅子「ハニーポップ」です。
これがもとなんですけど…。
これ持ってて頂けますか?すごいな〜。
面白いな〜。
これ蜂の巣の構造なんですけどこんな薄い紙が人を支えられるという…。
これもまた自然構造というか。
そうですよね。
ここからここまでがやっぱり想像ができないようなそういうものを作りたいなというのがあって。
多分いろんなデザイナーが小さいものから大きく変化するような椅子というのは考えるとは思うんですけどなかなかその最初と最後がこれまで変化するようなものはなかなか難しいんじゃないかなって。
ないですね。
この紙も作ったんですけど…何の紙だと思われますか?これね僕何かで見ちゃった。
あっ見ました?何だっけ…?チョコレート。
チョコレートの包みだよね。
チョコレートの包み紙のパリパリしたのがすごく好きだったんですけど。
へえ〜!すごいな。
衝撃的ですねさすがに。
こちらの椅子は「パーネチェア」。
パンの椅子と名付けられている。
どうぞ座って下さい。
うん?座って下さいハハハッ。
いいですか?はい。
何か…フワフワ。
フワフワ!うん。
座り心地いいですよ。
もとは円柱を半分に切った形の繊維。
それを丸めて布でくるみ紙の筒に入れる。
104度の窯で30分ほど焼き上げる。
骨組みも芯も入っていない。
僅か1mmの繊維が絡み合って構造体となり座る人の体重を分散してしなやかに受け止める。
これも自然の構造を考えて作ったんですけど…。
基本的に構造ってできるだけ固めて強くするという考え方を逆の発想で柔らかくして強くするという事を考えたんですね。
すごい発想力ですね!でも十分面白いなこれ。
何度焼いてもうまくいかなかった時あってそれでパンの椅子…パンみたいだねっていうふうに。
あ〜何度焼いても…。
そうです。
それでパンの椅子という名前にしたんですよ。
椅子の概念変えちゃいますね。
吉岡が考える未来の椅子とはどんなイメージなのだろうか。
これは「蜘蛛の糸」っていう椅子で新しい椅子なんですけどこれは糸なんですね。
う〜ん?釣りに使う糸なんですけど…最初は本物の蜘蛛の糸でこれを作ろうと思ったんですけど。
張り巡らされた7本の糸は椅子のような形になっている。
その糸を結晶化させると…。
これは水槽の中で育てたものなんですけど…。
へえ〜。
これは先ほどの糸ですね。
きれいだな。
実用にはならないですけど。
これは糸を切った状態です。
最初木があって次は鉄パイプの椅子があってその次がプラスチックが生まれたりとかやっぱり時代によってまた新しい発想というものがあるので僕は新しい…いいですね。
何か…何か不思議だな。
何か生きてるっていうかそういう何かを感じますよね。
歌手の一青窈も吉岡ファンの一人。
パンの椅子の包み込むような座り心地に感激したと言う。
すごく少年みたいな感じがするんです。
この素材を…ある素材をいろんな角度から眺めて素材のよさを十分に引き出すにはどうしようって考えるその行為そのものが何か石を拾ってきて「わ〜この石すごい!」って言ってる少年みたいな感じのそういう何かこう…思わず何にも考えないでわ〜って声が出ちゃうんですよね。
それはもうホント子どもみたいに。
「わ〜きれい!」「わ〜おいしそう!」「わ〜触りたい!」「わ〜座りたい!」っていう…。
その何かここの感情をぐっと簡単につかんで…。
すごく優しくたたずんでくれているのが私は好きですね。
おっ!「虹の教会」レインボーチャーチです。
20代の前半の時に僕パリコレクションの帰りにニースに行ってマティスの教会を見たんですね。
それでステンドグラスがマティスの絵そのもので作られてるんですけどそれが太陽の光を浴びて空間が全部ブルーと黄色の世界になってそれが自分の中ですごく感動して自分も生きている間にそういうものを作りたいなというものがあってそれで考えたものです。
向こうに何かいるの?いない?いないですね。
何にもいない?ええ。
何にもいなくてこの赤い線がこうあるじゃないですか。
そうですね。
屈折です。
屈折…あの黄色とか?そうですね。
要するに虹と一緒の…それが出てくる訳だ。
これはもうこの…これもよくご覧になると分かると思うんですけどちょっと斜めにして…。
そうですよね。
それを計算しながら。
計算しながら…。
だから透明な素材が好きだったりいろいろまああるんですけど。
なかなか光っていうのはやっぱり自然の光だったりそういうものが一番…それを超えるものがねやっぱりないんですよね。
照明器具のデザインをしててもどうしてもやっぱり太陽とか月の光とか炎ですとかそういうものの方がやっぱり全然きれいですからね。
そこに近づきたいっていうのが常にあるんですけど。
この展覧会っていうのは3.11のあの震災の前に企画されてた?そうですね。
一番最初にお話頂いたのは2009年だったんですけど何をどういうふうな展覧会をやるかっていう事を考えてる中でその震災が起きて自分の中ではどうしてももうホントに…こういうものって価値があるんだろうかって事をいろいろ考えた時期があって。
音楽美術そういう物を作る…そうですね。
考えちゃうよね。
それから2年たってるでしょもう。
ええ。
…で今頃になっちゃった訳?そうですね。
やっぱり1年間はもうそういう新しい事を作るっていう事が少しおっくうになってる時がありましたね。
ただまあいろいろ考える中でこの展覧会を日本でやる事で何かその…こういう今のいろいろ見せて頂いた中でどういう世界を目指しているんだろう?…分かんないよね。
俺も聞かれたら絶対答えられないんだけどとりあえず当面は最大の自分の課題って何なんですか?そうですね…やっぱり人間を知るっていう事ですかね。
要するに人間を表現したい?人間を知るって事は自然の一部を知るって事にもなるのですごく神秘的な要素ではあると思うんですけどね。
何で人を好きになったりいろんな事がどうやって変化していくのかとかそういう事がすごく不思議だと思うんですよね。
吉岡がデザイナーを志したのは小学2年生の時。
「ドアノブや自動車などの形を考えるデザイナーという職業がある」と父に聞いた事がきっかけだった。
二十歳で三宅一生の事務所に入りコレクションのためのアクセサリーや店舗のデザインに才能を発揮する。
大きな話題を呼んだ1998年パリでの三宅一生展。
空間デザインを任された吉岡は作品にセンサーをつけ人が近づくと弾む仕掛けを作った。
会場に詰めかけた人々の笑顔を見て吉岡は思った。
人を楽しくさせ感動させるデザインを作りたい。
デザインは単に形を作るものではなく人の気持ちを作るもの。
それが吉岡の信念だ。
そうですね。
あっホント?僕全く信じてない。
そうですか。
僕は全く信じないね。
信じないっていうんじゃない…人間は絶えず変わっている訳でしょ?その変わっていく人間の感覚なんて当てにならないでしょ。
例えば朝起きてコーヒーを入れたら寝起きなんだけどピアノを弾く訳よ。
大体1か月ぐらい同じ曲を弾く訳。
それでねそれをクイックっていう…テンポを出すやつをかけながらやる訳よ。
そうするとね何か今日はすごく遅く感じたりする訳さ。
すごく疲れてた時はテンポを上げたくなるから遅く感じるんだ。
その感覚を当てにしながら観客相手にコンサートなんてできないよ。
そうするとそのためにはどうするかっていうのは…鍛え方としては…だから吉岡さんの中でのその感覚的なものっていうのは分かるんだけど時間かけてやってるという時に感覚だけを当てにしてるようには思えない訳。
この展覧会をやってる時は何度も何度も同じような事をやるんですけどまず自分がその展覧会の入り口に入ったシーンをず〜っと何度も何度もリピートさせるんですね。
その中で人が最初にどういう空間にあたった方がいいのかっていうものをいろいろ想像しながらどんどん作っていくんですよね。
それが最初…その入り口だけではなくて皆さんこう外を歩いてこられるじゃないですか。
そうした時に何を最初に見たいのかとか何かそういうものっていうのは多分いろいろ何度も想像しながら考えるんですけど…あ〜そうなんだ。
レインボーチャーチのスケッチもそうなんですけどいつもスケッチは最後に描くんですよ。
それは自分の中でやっぱり輪郭がはっきり見えた時ですよね。
それまではあんまりスケッチは描かないですけど。
それは…いいですね。
いいですねっていうのはね分かる気がする。
映画の脚本を書く人間ってツータイプいて…つかみとしてこれはどうだってこの男がこういたと。
例えば…そういうようなところから動き出して最終的にストーリーなんてのは後でくっつけりゃいいんだよみたいなタイプの脚本家がいる訳よ。
その脚本家の脚本っていうのは基本的に面白い。
何で面白いかというとね…だと思う。
どうしても偶然…全てがホントに偶然からスタートしてるようなものが多いんですけどそういうものっていうのはやっぱりホントに頭の中で考えられないようなものというのが出来てそこからこうスタートする事が多いですよね。
多分最終的なところはすごく似てるんだと思うんだけどね僕はね逆に感覚…例えば夕日きれいですねみたいなあるじゃないですか。
冗談じゃないよと。
そんなものはこっちが書いたものがよければ勝手に…それがちゃんと構成されてればそこから朝焼けを感じる人も夕焼けを感じる人もある訳だよね。
そうするとこっちが…逆に言うとシンプルになっていってるんだよね。
それはやっていけば…ただ残りの5%ができない。
だからその…その夕日の話でも…そこがいろんな人がいていろんな経験をしながら多分…一つのものを見て美しいと思う人もいれば怖いと思う人もいればいろんな表現ができるじゃないですか。
僕はそれがすごく好きでやっぱり人の記憶の中で見た瞬間に…その部分で人の感覚っていうものが作品の一部になるっていうのはあるんですけどね。
クリスタルのプリズムが生み出す七色の光が見る人を包み込む。
感覚気持ち。
吉岡は目に見えないものをデザインした。
去年放送され社会現象を巻き起こしたダイオウイカの「NHKスペシャル」。
音楽を手がけたのは久石譲だ。
北野武をはじめ国内外の監督たちとタッグを組んできた。
EXILEのATSUSHIが歌う「懺悔」。
去年東京国立博物館で開催された特別展「京都」の公式テーマソングとして作曲したものだ。
久石さんのクリエーションの中でCMですとか映画音楽とかいろんな場面を曲で作られていると思うんですがその時に…その方法というかそういうものをお聞きしたいと思っています。
映画にドラマCMまで。
感動を生み出すために久石はどのように音楽と向き合っているのか。
今度は吉岡が久石マジックの秘密に迫る。
改めて今回いろんな久石さんの作曲された曲を聴いたんですけどホントにもう驚くような…。
「あっこれもだ!これもだ!」というものホントにたくさんありますよね。
いろんな表現によっていろんなホントにすごいたくさんの曲をやられていると思うんですけどそれを作る中で最初プレッシャーがすごいあるんじゃないかなと思うんですよね。
何かこう…プレッシャーは確かにあるんですが例えば広い100m四方のグラウンドあるからここで好きなように遊んでよと言われたら僕はねあんまり遊べないんですよ。
何やろうかなと思っちゃうんですね。
だけどボールで遊んでって言われると「あっボールなんだ」で手がかりになってやっていくじゃないですか。
やらなきゃいけない事が見えてきますよねそこで。
そういうのってありません?そうですね。
僕らも空間を作る時はいろんなマイナスの条件もいろいろある訳で天井が低いとか床がこうだとかそういう中でやっていくんですけど…それはね一緒なんですよ。
僕はデザインのお話を頂く時に大体最初の…その時にやっぱりすぐこう…そういうものってどうですか?あります。
ありますっていうか…「崖の上のポニョ」をやった時は最初にこう宮崎さんの顔を見て打ち合わせ始まった時にもう浮かんじゃって困っちゃってどうでもいい紙の後ろにパッとこう五線引いてメロディー書いといたんですよ。
最後までそのまんまでしたね。
久石がその場で書き留めたこのメロディー。
「誰もが口ずさめる主題歌」というイメージに応えるものだった。
これは何ですか?我々どうしても音符を作って譜面を作ってそれで演奏してレコーディングしたりとかってするしかないんで…。
久石が他人にはめったに見せないという自分用の楽譜。
宮崎駿監督の最新作「風立ちぬ」のレコーディングに使ったものだ。
一本の映画でこんなにたくさん?うん。
何曲ぐらいですか?この時どんぐらいだったかな?これで40〜50曲じゃないかな。
40〜50曲ですか!?45だよね…あ〜50か。
すごい量ですね。
大正から昭和へ。
日本が戦争へ突き進んでいった時代。
「風立ちぬ」は零戦を設計した天才技師堀越二郎が主人公だ。
飛行機造りへの夢と挫折。
後に妻となる女性との出会いと別れ。
久石は音楽の制作に1年2か月を費やした。
最初にメインテーマを考えるんですか?それともたくさんのシーンの中から1つのメインテーマを成長させるような感じなんでしょうか?どうしてかって言うと人間で言うと顔の部分にあたるから。
これが明確じゃないと…。
ただ一番最初にそれを考えるっていうのはすごく難しい…。
つらい。
難しい。
何かね前に聞いた話なんですけれども刺しゅうの人ってこう…刺しゅうをやる人はここにバラならバラの花がありますね。
最初の一刺しというんですかねこれって花の中心なんだそうです。
まずド中心をきちんとやってそれで花にすると。
苦しいんだけどメインテーマをあげておかないと全体の構成なんて…。
そこが軸となる?そうそう。
「風立ちぬ」の冒頭主人公の堀越少年が夢の中で空を飛ぶシーン。
久石は当初このメインテーマをフルオーケストラで作曲した。
しかし収録直前宮崎が夢の中の話だからもっとシンプルな小編成がよいと言いだした。
久石はロシアの民族楽器バラライカを主軸とした音楽に書き換える。
このメインテーマが映画全体の世界観を決定づける事になった。
話をして台本を読みながらどういう世界観でこれを作っていくかという事を考える時間がやっぱりすごく必要なんですよ僕は。
主人公とかが体験してきた過去の記憶っていうものを音楽にしたりっていう事は考えられたりします?例えば幼い時にどういう体験どういう経験をしながら生きてきたかとか。
通常の映画音楽というか映画音楽の在り方だとどうしても登場人物の気持ちを説明するあるいは登場人物の心情を表現するそれかその状況を説明するとかってなるんだけど…そんなもの映像を見りゃいいだろという話で興味ないんですよ。
それは何を表現される?そういう事を考えるんですよ。
だからあえて泣いてても突き放しておくどうでもいいって。
もっとそこにはつけないとか。
現実感ないんですよ。
例えば恋を語っているところにね現実で音楽流れる訳ないじゃない。
その流れる訳ねえよっていう…最もフィクションな訳よ。
だけど映画自体はフィクションな訳ですよ。
要するに多分こんな事があるだろうあるいは全部作り物のウソなんだけど人生を多分こうだろうみたいな事を投影していく訳だね。
そうすると…そのバランスが重要ですよね。
映画「小さいおうち」。
今年のベルリン国際映画祭で主人公の女中を演じた黒木華が最優秀女優賞を受賞した。
タキが仕える奥様に小さな恋愛事件が起こる。
ストコフスキーだ指揮者は。
あの映画ご覧になった?ディアナ・ダービン「オーケストラの少女」。
楽しかったわね〜。
忍び寄る第2次世界大戦の足音。
物語はタキが当時を60年後に回想する形で進行する。
駄目です!死んじゃいけません!映画は主人公タキの葬儀の日の情景から静かに始まる。
最初の音楽が登場するのは冒頭から1分後だ。
そうか。
独りで死んでたか。
タキばあちゃんは。
こんな事になったら困ると思って何度か言ったんだけどね一緒に暮らそうって。
おばあちゃん「どうしても嫌だ独りがいい」って言うの。
健史が第一発見者か。
電話がつながらないから健史に行ってもらったのよ。
ね?昭和と平成を生きてきたおばあちゃんが見てきたある家庭の話なんですけども同時に昭和と平成を見てきた運命のテーマみたいな形で実はほかの音楽を書いたんだけど最終的に山田監督が「やっぱりこれがいい」という事で非常にシンプルなピアノだけにしたんですけどもね。
(健史)おばあちゃんには幸せな最期を迎える権利が十分にあったはずなのに…。
同じテーマが顔を出すのは更に1分半が経過してからだ。
もう一回同じテーマを出す訳ですけれどもね…よりまあ映画と一体になるような…。
そうです!そういう方法をこれは結構とりましたね。
映画音楽というのはねいい意味で…画面の中からす〜っと気が付いたら音楽が聴こえているというふうな入り方をする音楽が僕にとってはいい音楽ね。
例えば女中のタキさんが坊ちゃんを背負ってね雨の日も風の日もマッサージに通ったと。
小児まひにかかった坊ちゃんの脚を治してやるべく。
そこのところの音楽…音楽は必要なんだけれどもどんな音楽か僕ちょっと見当がつかないし久石さんに考えてくれって言ったらとても軽やかな…。
あれはワルツかな?懐かしいようなアコーディオンの響きでね。
それはちょっと思いもかけない音楽でしたね。
はい。
ありがとうございます。
(タキ)
雨の日も風の日も私は坊ちゃんをおんぶして日本橋の治療院に通った。
私の力で必ず坊ちゃんの脚を治してみせるんだと思うとちっともつらくなかった
タキという女中さんが奥様の手紙を奥様の恋人の所に届けに行くという場面非常に重要な場面なんだけどもしかし同時にここはね音楽的にもうんと膨らんでほしいと思っていたのね。
例えばどんな音楽なんだろうなと思っていろんな音楽をはめてみる訳。
既成の音楽。
クラシックからジャズからいろんなボーカル…。
こういうもんなら合うなというのがいくつか発見できる訳ですよ。
実際セットでそれ流してみたりなんかしてそこまでやってそれで久石さんにねこの音楽だと合うんですよというような事をまあ作曲者にそういう事言うのは非常に酷な事かもしれないけども。
しかし…「タキちゃんと一緒に来て下さってもいいしお昼過ぎになっても構わない。
私お待ちしてますから」ってそう申し上げて。
(タキ)はい。
行ってまいります。
しかし板倉さんはその日おいでになりませんでした。
日の暮れるまで待ち焦がれる奥様に私は声のかけようもありませんでした

そして坂の上の小さなおうちの恋愛事件は幕を閉じました

(泣き声)久石譲の名を一躍有名にしたのは1984年の「風の谷のナウシカ」。
文明社会が崩壊して1,000年後の物語に久石の音楽が奥行きを与えた。
久石の出発点は現代音楽だった。
同じようなリズムの繰り返しの中で少しずつ和音がずれていくミニマルミュージック。
久石の音楽には今でも前衛的な要素がちりばめられている。
このCMもその一つ。
実は最初20代や何かってねこういう譜面書いてたの。
何ですかこれは?譜面だよ。
これは自分で編み出された?うん。
どうやって読むんですか?うん?これ?これはね「即興演奏の集団的管理」というのをやってた訳。
単純に言うと必ず向かい合っている奏者がいて一対でどこからスタートしてもいいのよ。
こうやって中入ってもいいんだけど…。
配置なんですか?ううん。
音。
この音を出さなきゃいけないんだが白い玉は長い黒い玉は短い。
だからこれタリラ〜ってやってもいいしタララ〜ってやってもいいしタ〜ティラってやってもいい。
ただこれが必ずペアになってやっていくから全体の音は確実に管理できる訳。
あっそうですか。
全く関係ない音楽が流れる事ない訳ですよ。
「自分のが」って言ってるんじゃないんですよ。
ざっと見ると…例えば2ページ見たら「あっこの人書ける人だな」とか「駄目だこの人」っていうのはすぐ判別する。
なぜか?いい譜面はきれいなんですよ。
やっぱり人間って…同じ!クラシックの譜面なんかね「第九」なんか70分かかりますからこんな分厚い訳。
多分それ作るのに何年かかったんだって事になる訳です。
そうすると…僕は作曲家の目線でしか見ないから例えばあるメロディーがこう動いた。
これをちょっと発展させた。
大体詰まる。
なので次の第2テーマが出てきたりする訳ね。
そうするとその時に…そういう目線で見ちゃうんで普通の見方とはちょっと違うかもしれない音楽の。
面白いですね。
近年クラシック音楽の指揮に精力的に取り組んでいる久石。
オリジナル曲「Orbis」はベートーベンの「交響曲第9番」に捧げる序曲として書き上げた。
実はこの曲にもミニマルミュージックの実験的な手法が用いられている。
久石の持ち味とベートーベンを研究した成果が結び付いて生まれた曲だ。
いい音楽の定義は何かっていうとこれ養老孟司さん解剖学者の養老先生がおっしゃってたの。
長い年月を経て時間がたっても生き残るのがいい音楽ってスパッと定義されたんだよね。
確かにモーツァルトやらベートーベンとか長い時間をたって生き残った音楽があります。
今それを自分が指揮するでしょ。
そうするとまあなんて自分の今書いてる曲がつまんないもん書いてんだろうと思って…やっぱり時代を超えられるようなものはすごく原点に近いんじゃないかなと思うんですけどそういうものが何かまた次の未来に続くんじゃないかなとは思いますね。
そうですね。
それはねどんなものでもやっぱりね…例えば「運命」だってタタタタ〜ンしかないんですよね。
タタタタンタタタタタンタタタタ…あれだけで出来ている訳でしょ。
やっぱり…そうですね。
だから何かそういうものを書いてみたいなという夢を…僕の夢はそんなところです。
僕はやっぱり年齢を重ねるごとに自由になりたいっていうのは常にあるんですよね。
ものを作る上での自由さという事ですか?そうですね。
どうしても一番最初の頃は仕事を頂いてそれでそれを達成するための作業だったりする訳なんですがだんだんやっぱり自分の方向性が見えてきてそれがまた少し周りの人も理解して頂くようになってそうするとやっぱりどんどんこう純粋にものを作れるようになってくるっていう…。
今日吉岡さんのいろいろ作品を見ていた時に…この辺の空間で例えば…やっぱり全てが音を放つ素材だったりしますよね。
環境の中って。
そういうものってやっぱり面白いかもしれないですね。
今度音の出る作品作って下さい。
あっいいですね。
結晶も作っている段階で触るとすごくいい音がするんですよ。
しますね!きっと。
何か一度こうパラパラパラッとやった事があってそうしたらもうホントにすごくきれいな音がするんですよね。
あ〜いいな。
是非それを使ってほしいです。
2014/03/08(土) 22:00〜23:00
NHKEテレ1大阪
SWITCHインタビュー 達人達(たち)▽久石譲×吉岡徳仁〜考える音 感じる形[字]

宮崎アニメからダイオウイカまで音楽で彩る作曲家・久石譲と、世界の名だたる美術館やトップブランドから引っ張りだこのデザイナー吉岡徳仁。音と形をめぐる刺激的対話。

詳細情報
番組内容
久石を夜の美術館ツアーに招いた吉岡。展覧会場には180万本のストローや、歌手の一青窈が“おいしそう”と表現した「パンの椅子」など、驚きの世界が待ち受ける。描くのではなく「育てる」絵画とは? 驚異の発想力の秘密を探る。久石は「風立ちぬ」「崖の上のポニョ」「小さいおうち」など話題作の舞台裏を明かす。感動を生み出す久石マジックの秘密はどこにあるのか? 「映画の中で最も嘘くさいのが音楽」と言う真意とは。
出演者
【出演】作曲家…久石譲,デザイナー…吉岡徳仁,映画監督…山田洋次,歌手…一青窈,【語り】吉田羊,六角精児

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – インタビュー・討論

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