今年正月の東京。
高層ビルのてっぺんに下界を見下ろす1人の女性。
その腕には…。
鷹。
この鷹を地上の獲物めがけ高さ200mから急降下させようというのです。
女性の名は大塚さんの職業は鷹匠。
日本古来の狩猟技術鷹狩りに使う鷹を扱います。
会社員を辞め伝統の世界に飛び込み日本で初めての女性鷹匠として認定された大塚さん。
その道のりとは…。
今彼女は新たな一歩を踏み出そうとしています。
人の行く道は一本道とはかぎらない。
突然に岐路が現れ進路を選ぶことで旅路は続く。
この人はどんな道を歩むのだろう?東京都青梅市。
御岳山に車を走らせることから大塚さんの鷹匠としての1日が始まります。
ここから先は車では行けません。
目指す場所はこの奥です。
(スタッフ)大変ですね。
ようやく到着。
ここは鷹匠たちが集う庵。
早速鷹の餌作り。
絞めたばかりのキジの肉です。
新鮮なほうが鷹も喜びますからね。
こちらが鷹の住まい。
現在大塚さんが飼育しているのは体重は鷹の体調のいちばんのバロメーター。
鷹は鷹匠の精神状態を敏感に感じ取り食欲をなくしたり暴れて羽を傷めたりすることもある繊細な生き物。
そのため鷹に接する際には努めて平常心を保つようにしなければなりません。
今天気がいいから。
水浴びをさせて羽の手入れ。
あんまり触らないように言われるもんなんですよね。
だからなるべく道具を使って整えるようにしてるんだと思いますね。
地道な世話の積み重ね。
群雲とも信頼関係が深まってきました。
こんにちは。
ピーピー鳴いてたで。
庵に鷹匠を目指す若者たちが集まってきました。
後輩が増えていくことが何より嬉しいそうです。
あとで…ていうか別ですよね?別々。
わかりました。
大塚さんは諏訪流の技術を学んだ鷹匠。
その源流は狩猟の神を祀る信州諏訪大社に鷹を使って獲物を捕らえ供える儀式を司っていた一族だと伝えられています。
1,600年以上の歴史を持つという日本の鷹狩り。
鷹匠たちは江戸時代は将軍家の明治以降は皇室のお抱えとして伝統を受け継いでいきました。
しかし戦後そうした庇護はなくなり鷹狩りの文化は急速に衰退します。
大塚さんたち現代の鷹匠は実演会などによって得られる収入で何とか受け継いできたものを守っているのです。
諏訪流の弟子は現在男性4名女性6名。
指導にあたるのは弟子のうち鷹匠は2名。
その1人大塚さんの実力は田籠さんに次ぐといわれています。
諏訪流に女性の弟子が多いのも大塚さんの存在が影響しているようです。
しかしここまでの道のりはたやすいものではありませんでした。
最初は鷹に触れることすら許されず鷹を拳の上にのせる据えは鷹狩りの基本技。
据えに始まり据えに終わるともいわれるこの技の習得法は…。
角度はこの60度くらい…。
あんまり開きすぎてもいけない。
寄せすぎてもいけないからっていう…。
力入れすぎちゃうと…グッてしちゃうとまたのせにくいものなんですよ。
抜いてるくらいのほうがのせやすいので。
のせてるっていうことをあんまり意識しているようではまだ緊張してるってことなんですよね。
鷹に緊張感は伝わってると思います。
鷹を放つ羽合。
このとき大塚さんの腕はまっすぐに伸びています。
これは飛び立つ鷹の初速をあげるために最大限のサポートができている状態を示します。
鷹匠と鷹の気持がひとつになっていなくては最高のタイミングはつかめません。
この世界に飛び込んで17年。
鷹とはまったく縁のない環境で育った彼女が大きな選択をした理由は何だったのでしょうか。
元来スポーツ好きだった大塚さんはスポーツに関わる仕事に就くことを目指し早稲田大学のスポーツ科学科に進学。
人と動物が一緒に行うスポーツとして卒業論文のテーマに選んだ鷹狩り。
その魅力が心をとらえました。
鷹の美しさに感動したのと私も飛ばしてみたいといったような気持だったんです。
鷹への思いが捨てきれず2か月で退社。
諏訪流の門を叩きました。
厳しい世界だからやめたほうがいいというふうなことを言った…。
何の相談もなくいきなりそんな選択をしたことで親からは勘当同然となってしまいました。
また門下生とはなったものの当初の3年間は鷹に触らせてももらえません。
更には決まった収入もなくアルバイトで食いつなぐ日々。
しかし後悔は一切ありませんでした。
勉強して会社行ってみたいな世界を行ってたら何にも知らなかったことを本当に鷹が教えてくれてるんですよね。
この日の御岳山は雨。
しかし鷹匠の毎日に休みはありません。
大塚さんは自分の鷹群雲に今朝もエサを与え体重を量り更にはどこかへ出かけるようです。
群雲はまだ狩りを始めたばかり。
今日はその実地訓練を初めての場所でやってみることに。
毎年狩りが解禁となるのは11月15日からの3か月間のみ。
その間に少しでも経験をさせてやりたいのです。
体重の変動から鷹の体調を判断し訓練の内容を相談してからいざ出発。
移動手段はどんなに遠距離でも車と大塚さんは決めています。
車で行ったほうが鷹にはいいですね。
飛行機だとやっぱり気圧の変化で具合を悪くしたりすることがあるんですよ。
狩りができる場所を求めてやってきたのは静岡県の里山。
幸い雨は降っていません。
手袋は鹿革製。
鷹の鋭い爪が食い込みにくいそうです。
動きが速く小回りが利き根気強く獲物を追う鷹は狩りに最適な動物とみなされていますがその反面気が乗らないと目の前に獲物がいても狙おうとしないそうです。
茂みから獲物を追い立てるのは犬の役割。
鴨がいました。
早速狙いをつけますが…。
(カラスの鳴き声)カラスが気になります。
群れで鷹を襲うことがあるからです。
1回目は失敗。
はい。
はい。
毎日狩りに出ても丸一週間獲物に出会わないこともあるといいます。
初めてのことばかりなんで教えていくしかないですね。
ウサギなんか出たって何これ?っていう感じですよ。
怖いし犬との違いもよくわからないし。
でも獲るんだよっていうのを何度もこうあわせてるうちに獲っていいんだなって気がつくようにはなるんですけどそれに時間がかかるんですよ。
また鴨を発見。
獲物を狙って大塚さんは群雲と心をあわせタイミングを計ります。
そして2回目のあわせ。
群雲が住宅街に逃げ込んでしまいました。
(カラスの鳴き声)カラスが騒ぎ始めています。
(カラスの鳴き声)群雲は人家の屋根にいました。
エサを振る振り鳩で呼び戻します。
結局この日は6時間歩いて収穫なし。
こんな住宅街で狩りしてると思ったらびっくりされますよ。
なかなかいい場所っていうのは少ないですから。
年末東京秋川。
大塚さんが鷹を連れてやってきました。
今日は新春に浜離宮庭園で行う実演会に向けての訓練。
最大の見せ場となる高さ200mの高層ビルから鷹が舞い降りる実演は師匠の鷹翔雲がその大役を務めます。
ふだんは飛ばない長距離の訓練開始。
しかし…。
(笛の音)森に逃げ込んでしまいます。
(笛の音)師匠が翔雲を呼び戻してくれました。
すぐに林に入って…。
そうですねそのときに出たと思ったんですけど…。
何メートルあるかわかんないですけど200以上はあるんじゃないですかね。
私も振らないと見えないですね。
今はっきりとは。
この日は目標距離をのばしました。
あのススキの中にちょっと入ってます。
高さ200メートルから急降下する際鷹は一直線に飛ぶとはかぎりません。
それを計算に入れ最終的には500メートルを目指します。
これは鷹にとっても大塚さんにとっても難易度が高い初めての挑戦。
師匠は大塚さんならやりとげると思っています。
芯があってねあきらめないですよね。
粘り強いっていうかね。
そして本番2日前。
(笛の音)
(笛の音)翔雲はみごとに500メートルを飛びきりました。
別に鷹がそれをしたくてやってるわけじゃないですしただ一方で鷹狩りそのものはまだまだ理解されていないのでこっそりやってたのでは本当に消えてしまうんですよね。
理解を深めるための活動はしなくちゃいけないんですよ。
いよいよ実演会当日。
地上で師匠が鳩を振ります。
その鳩を目がけて高層ビルの上から大塚さんが…。
鷹を放ちました。
ところが…。
野生のトビに行く手を阻まれました。
しかし大塚さんは結果をこう評価しています。
鷹は目標地点から十数メートル外れたもののしっかりと敷地内に着地していました。
今年1月大塚さんはドイツに向かいました。
ドイツは鷹狩りが盛んな国。
鷹匠は専門の理論と技術を極めたプロフェッショナルとしてマイスターの称号を与えられ尊敬されています。
鷹匠の未来を探りたい。
その思いでやってきたのは首都ベルリンから電車で4時間ほどの街ハーイ!ハウアーユー?ドイツの鷹匠が迎えに来てくれていました。
翌朝早速鷹を見せてもらうことに。
鷹匠ヨルグさんが鷹を据えてみないかと言ってくれました。
この時期は鷹の繁殖期。
鷹がいつにも増して神経質になるため飼い主以外の拳にのることはめったにありません。
けれど大塚さんが日本の鷹匠として日頃から培っている平常心がドイツの鷹をも安心させたようです。
次に鷹匠フォルツさんの仕事現場に同行しました。
ドイツでは鷹匠のもとに国や市町村から害獣駆除の要請が定期的に入ってくるのだそうです。
地面に開けられた穴。
野ウサギの仕業です。
こうした巣穴によって家が傾いてしまうことも少なくありません。
まずは犬が野ウサギのいそうな穴を見つけます。
そこへイタチ科のフェレットを入れます。
すると…。
自然との共生によって生じる被害はなるべく自然な方法で解決しようというのがドイツ人の考えです。
しかしウサギのほうも必死。
茂みに引きずり込まれ鷹も命の危険にさらされます。
大塚さんはここドイツで人間が自然と共存する形を模索することの大切さを実感していました。
伝統というのはその時代に則して変化してきたからこそ生き残ってきたわけですから。
日本の問題だけではなくて広く捉えていったほうがいいんじゃないかと思います。
この日は鷹匠の技術と精神を学びたいと若者たちが訪ねてきました。
何かあったら…。
そして鷹を据えて歩く2人。
榊原さんは入門4年目。
大塚さんは彼女を鷹匠に育てるべく今指導に力を入れています。
大塚さんみたいな鷹匠を目指したいですね。
更に諏訪流では新たな取り組みが始まりました。
出てきたのは門外不出秘伝の書。
400年前に書かれた『鷹書』。
現在写本が1冊のみ残されている諏訪流秘伝の書です。
目の形が表す鷹の性格。
鷹の病気をお灸で治療するときのツボなど代々口伝えのみで守られてきた知識が記されています。
今師匠と大塚さんはこの書を解読しまずは鷹匠を目指す後進のための教本にする作業を進めています。
鷹匠であるからにはですね伝えられることがあるんだからそれを伝えていかなくちゃいけないなと思いました。
2月12日残された猟期はあと4日。
大塚さんは群雲を連れ雪のなか野に出ました。
夢を叶え鷹匠となった大塚さん。
次なる望みはこの文化を広めることで自然と共生する生き方を多くの人に感じてもらうこと。
あなたの瞳が見つめる未来を応援します。
2014/03/08(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
Crossroad <大塚紀子>[字]
鷹を放ち、小動物を捕える「鷹狩」。その鷹を扱う技術は“鷹匠”によって受け継がれてきた。今回は、鷹匠文化を継承する女性・大塚紀子のクロスロードに迫る。
詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
2014年1月2日。かつて将軍家が鷹狩を行う“御鷹場”であった東京・浜離宮を見下ろす高層ビルの屋上に、諏訪流鷹匠・大塚紀子の姿があった。眼光鋭いオオタカを、高層ビルから地上のエサ目がけて急降下させる、伝統ある鷹匠の技・放鷹(ほうよう)術を披露するのだ。1600年以上にわたり伝承されてきた日本の鷹匠文化を追求・伝承したいと研鑽の日々を送る、大塚紀子のクロスロードに迫る。
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなCrossroad(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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