山田太一ドラマスペシャル 時は立ちどまらない テレビ朝日開局55周年記念 2014.02.22

(西郷良介)お母さん?どごだ?お母さん!
(西郷麻子)こごだ。
なんだや。
なんで返事せねの?してらよ。
もう11時だ。
その格好で行く気か?
(麻子)お父さん。
なんだ?向こう行ってすぐ愛想よくばっかりしねえでよ。
愛想よくして何が悪い?今や娘が嫁に行ぐがもしれねえ日だ。
でも今日のテーマはそうでないでしょう。
今日のテーマ?ドア閉めて。
ドア?閉めて。
なんだやそれ?自分が閉まってどうするの?ちゃ…ちゃんと言わねえがらだ。
ハァ…。
向こうだってねうちとの話をこのまま進めていいかどうか心配してらど思うの。
してるもんか。
大学卒業して市役所に勤めてる娘が漁師の嫁になると言ってんだ。
土下座して喜んでら。
少なくともこっちはこのまま結婚していいのかどうか心配でしょう。
そりゃあ心配だけど…。
本人が決めたって言い出したらどうにもならねえべや。
そりゃあ潰すわけにはいかないけどこっちには私らとおばあちゃん向こうにはおじいちゃんおばあちゃんに両親に弟もいて…。
弟はともかく両方の大人たちがなんの考えも口にしねえで本人の自由にするしかないっていうのもかわいそうでしょう。
かわいそうって…。
まだ子供でしょう。
24と26だ。
なんもわがらねえで大人のつもりなんだよ。
(西郷千晶)どう?これなら。
(西郷奈美)だいぶおとなしぐなった。
(千晶)しっかり者に見えた方がいいんじゃないかなぁ…。
(浜口修一)お母ちゃん!お母ちゃんどご?どごだ?
(浜口正代)台所だ。
大忙しだ。
どごさいると思ってらんだ。
(修一)シャツシャツシャツ。
(正代)シャツが何や?
(修一)これにする。
すればいいべや。
(修一)アイロンがかかってねえ。
(正代)んだからクリーニング出せって言ってらべや。
今からじゃ間に合わねえ。
(正代)んだば他のにしろ。
(浜口吉也)どうだ?この色。
ん?うわぁ〜きれい!お父ちゃんきれい見て見て!
(浜口克己)俺が5時に起きで獲ってきたんだ。
それでも見てよ。
ほらいい色よ。
ああ〜旬の鱒だ。
真鱒。
今日は俺が主役だべ。
気に入ったシャツ一枚着られねえのかよ。
ばあちゃんさ頼んでみろ。
やってくれるよ。
くれないよ。
この縁談は反対だって手伝わねえって。
とっくに1人でいい格好して座ってらよ。
(浜口光彦)じゃあもう一回行ぐよ。
(浜口いく)うん。
(光彦)今度は笑おうか。
自分の葬式に笑えるか。
いいおばあちゃんだったって言われるよ。
真顔がええ。
(光彦)厳粛なのはもう4枚も撮ったんだから。
(いく)今時4枚がなんだ。
ハァ…。
はいじゃあいぐよ。
はい。
(シャッター音)
(いく)みんなは何をしてら?支度だよ向こうが来るから。
全員がいい格好して揃うなんてめったにないがら。
家族一同の写真撮ろうって言ってらのに。
忙しいんだよみんな。
おめえは何してる?俺はだからおばあちゃんを一人にしとけないから相手をしてろってお母ちゃんが。
(いく)このうちはお母ちゃんが何でもやるがら男どもはたるむんだ。
お母ちゃんこのシャツどうしよう?ジャージでいい。
ジャージで出ればいい。
何怒ってらの?朝からずっと。
うるせえ!うるせえ…。
ん?ほら聞いてない。
聞いてなかったでしょう。
この坂は厄介なんだ。
何?止まっちゃうの?
(千晶)止まらなくていい。
そうでないよ。
何?まだちょっと行ぐの早えがなと思って。
16分前。
5分もあれば着くけど…。
早過ぎるって事はないでしょう。
(奈美)ちょうどいいべや。
そんだな。
ちょうどいいよな…。
(麻子)どうしたの?
(光彦)よし…。
じゃあみんないっちばんいい顔して。
いくよ!
(シャッター音)
(吉也)ありゃありゃりゃ…。
あの酒おい正代!って私が言うとね…。
(正代)フフフ…飲んじまったよおじいちゃん。
しかしこっちに隠した四合瓶まだ半分はあったはず。
頂きました。
これだよ…。
パターッとうちから酒が1滴もなぐなった。
酒やめなきゃ死ぬって言われたんだからおじいちゃんは。
しかし今日はこちらさビールぐれえは…。
車でーす。
いいのか?なんも出さんで。
いいでーす。
私一人で言ってんでねえよ。
後ろにドーンとおばあちゃんが控えでらし。
これはおっかない。
おっかねえって。
おばあちゃん怖すぎ。
いえいえ一家にはねそういう人がいなきゃいけないきっと多分…。
私はな…。
(正代)どうした?おばあちゃん。
(修一)何?おばあちゃん。
何か?
(いく)いえ私はなこの娘さんと長男の修一が結ばれる事を心から喜んどる。
そうは見えねえな。
おばあちゃん何か言いたい事があるんでしょう。
おばあちゃんの言う事は大抵正しいから言ってみてどんどん。
はい言ってくださいなんでも。
銀行に勤めるお父さん。
信用金庫だ。
(正代)同じだ。
立派な支店長さんだよ。
いやぁ立派なんて事は全くありませんが。
立派でいいんだ立派で。
大学を出て市役所に勤めでら娘さんが…。
(正代)一人娘さんだよ。
漁師の嫁さなってもいいと言ってくれだ…と。
はい。
けんど…。
一点条件があるんだべ。
はいそのように本人が言ってます。
はい。
(いく)ちゃーんと言ってみで。
(吉也)そんな話は徐々に徐々に…。
(いく)ごまかせばいいのが?
(吉也)言ってねえべさそんな事。
(いく)たった一つの条件なら冗談言う前に取り上げるべきだべ。
組合か?ここは。
私は結婚前の腰掛けで市役所に勤めてるんじゃないです。
(正代)政経学部だもんね。
(千晶)はい。
まだまだ市役所も女の役割は少なくて。
(修一)力をためて行ぐ行ぐは市会議員から県会国会まで行げたら行ぎたいって言ってらんだ。
話聞いてれば男よりよっぽど色々考えてらんだ。
はっきり言って俺はビックリしてら。
ちょっと尊敬してるところもある。
そんな…。
そんなじゃねえ。
だがら俺はこの条件は当然だと思ってる。
きれいだし当たりが柔らかいからそれだけの娘だと思ってる者も多いけどこれはただ者でねえ。
大物になるがもしれねえと思ってる。
(吉也)それが惚れだって事さ。
(いく)だったらうちさ来る事はねえ。
おばあちゃん。
漁師の嫁は亭主を海へ送り出しうちを守って船が帰ってくるころには赤ん坊をおぶって浜迎えに出て今日はよがった。
今日は獲れながったねえと2人で一喜一憂するのが漁師ってもんだ。
(正代)おばあちゃんそれは違うよ。
何が違う?おばあちゃんはそうしてきた。
私もそうしてきた。
だけどこの人の条件聞いてあっそういう事言う女が出てきたか。
面白え。
やってもらおうでねえかって。
このうちからみんなで支えて県会でも国会でも行くような嫁つくり上げようでねえがと思ったよ。
本当に?
(正代)うん。
驚いたな…。
いや言い出した方が驚いちゃいけない…。
ありがとうございます。
(正代)ううん。
おばあちゃんの気持ちもわかる。
おじいちゃんの気持ちもわかるよ。
若え者は夢みてえな事考えるもんだ。
んだけど所帯持ったらそうはいがねえ事がわかってくる。
だから片方の耳でフンフン…って聞いておいて一緒にしちゃえばいいんだって。
そうだろ?おじいちゃん。
身も蓋もねえ事を…。
私はとってもいいと思ったよ。
面白え嫁が来るぞってわくわくした。
もう絶対応援して本物にしてやるぞって心がら思ったの。
嬉しい。
とっても嬉しいです。
(光彦)じゃああとは食べながらって事に。
克己。
何?なんで黙ってら?女房が勝手に盛り上がっとるのになんで一言も言わん?いい…。
いいわけあるか!長男の修一の縁談だ。
本来ならおめえが仕切る立場だろが。
(正代)この人そういう事苦手だすけえ。
それだけでない。
何か言い分があるはずだ。
えっ言い分って何?
(いく)あるなら言ってしまえ。
(正代)ああだったら言った方がいい。
(麻子)はい。
なんでも言ってください。
ねえ。
ん?なんでも言ってもらった方がいいでしょ?うん…。
何?何か?多分…いやきっと…浜口さんも言いそびれてたんじゃないかな。
(麻子)何を?浜崎中学の同級生なんです。
(正代)えっそうなの!?私は親父が電力にいて2年の時にここに来たから同級だったのは1年半ぐらいですけど…。
娘からお宅の話聞いてもこの辺りは浜口さん多いから…。
(正代)多い本当に。
あの浜口さんか…とわかるまでに時間がかかって今さら言い出すのもなんか隠してだったみたいで…。
うっかりしてだったって言えばいい事でしょう。
お父ちゃんそうなの?そういう事はあるよ。
まあそりゃあ40年近く経ってらあな。
うん。
お父ちゃんもゆっくり思い出した?フフフ…そういう事だ。
バカらし。
何を人見知りしてらと思ったら…。
(いく)バカらし。
(吉也)子供だまだまだ。
あいすいません。
(光彦)じゃあそろそろ食べ始めねば…ね。
(正代)食う事ばっか言うな。
(光彦)誰かが言わねばせっかくの刺し身がパサパサだ。
(吉也)あっ本当だ。
(正代)じゃあ皆さんお箸取ってください。
朝5時に海に出てうちの亭主が取ってきた鱒です。
そりゃもう川上ってくる鮭とは比べもんになんねえ。
3月の海の鱒です。
(正代)おばあちゃんごめんね。
この結婚はうんといいものになるよ。
みんなでいいもんにしようね。
さあどうぞどうぞどうぞ。
じゃあいただきます。
いただきまーす。
(吉也)いく。
どうぞどうぞ上がってけで。
いただきます。
いただきます。
いただきます。
どうぞ。
(麻子)
2011年平成23年3月6日の日曜日でした
静かな穏やかな海でした
そして5日あとの3月11日の金曜日午後2時46分あの地震
そして続くあの大津波がやって来ました
(地鳴り)
(ラジオ)「停電の状況です」「東北の広い地域ほぼ全域で停電が発生しております」「停電の影響で幹線道路の信号が止まっている状況です」「車も大変混雑しております」「車の運転には十分気をつけてください」「復旧の見通しが立っていません」「また地震の影響で…」ハァ…ハァ…ハァ…。
入れ。
(光彦)はい…。
すいません…。
さみいな。
はい…。
あっすいません。
どごの人?浜ですずっと下の。
やられたが?はい全部持ってかれて…。
なんも…なんもないです。
人間は?兄ちゃんが…。
(男性)やられたが?はい。
他の家族もわがらねえで…。
ああ俺だぢも随分捜した…。
捜したよ…。
光彦さんだよね…?こんばんは。
暗いのによぐ来れたねえ。
さあ入って。
(麻子)すいません…。
(麻子)ごめんね…。
入って。
はい。
座って。
この部屋以外は逃げてきた人は誰でも入ってもらったの。
おばあちゃんさっきまで色々してくれてた。
(奈美)坊やね。
起ごした?眠れねえのよ。
行くとこねぐなって…。
もっと早ぐ来てくれると思ってた。
おうち流されたようだね。
全部。
全部?港は何もかもやられたって聞くばっかりで停電でテレビは点がないしさっきまでラジオは聞いでだったけど…。
ここらの事は少しばっかりで…。
お兄さんがやられたってさっきちょっと聞いたけど…。
はい…はい…。
あの…その…会ったっていうか…。
会ったって?怪我だけ?いえいえ…。
もう死んでて…。
缶詰工場の倉庫に運んでくれた仲間がいて…。
千晶は知ってるがなあ?こんな事があるなんて…。
お嫁に行くばっかりだったのに…。
千晶さんは?市役所。
泊まり込みだって言づてがあった。
お義父さん?信用金庫は上の町だったから大丈夫であとはもう救援だって言って…。
お宅には真っ先に行くって言ってね。
まだ帰ってこね。
何時?1時17分。
携帯は通じんっていうし…。
聞くの怖いけどあなたどうして1人でこんな時間ここに来たの?
(奈美)おうちの人はどこに?どごにも…どごにもいねえで…。
どごにもって…。
わがらねえべさ今日の今日じゃあ…。
明日もそりゃあ捜すけど…。
まだどこで何があったかもわがらね。
きっとどこかにいるはずさきっと…。
(地鳴り)余震だ。
(麻子)まただ。
あ…あ…。
(物が割れる音)
(女性)もうやだー!
(笛)どごさ行くの?市役所。
市役所はもう満杯だっけよ。
曲がり松崎から来た。
(消防団員)車通れだ?
(運転手)ああ歩って来だ。
車は恩田からだ。
おお…良ちゃん。
大丈夫だった?ありがとう。
千晶ちゃんこの奥だ。
ああありがとう。
(赤ん坊の泣き声)どごか話せないか?遅ぐなってしまった。
もうじき3時…。
来られねくてな。
いいのに…。
横にもなれねえのが?床毛布ないと寒いんだよ。
毛布ないのか?職員のも配ってしまった。
これ…。
1個だが握り飯も持ってきた。
これだけでいい。
腹減ってらべ。
私だけ食べてるの格好悪い。
ああ…。
朝でもよかったんだけどな…。
うん。
やっぱり知らせたくてな。
うん。
聞いてらが?何が?修一君がな…。
うん。
すぐに発見されて北斗罐詰の倉庫に運ばれてそこで安置されとるという事だ。
うん。
他の人の安否はわがらね。
うん。
修一君は消防団員だったから身一つで素早く逃げ出すというわけにはいがねかったのかもしれない。
わがった。
いいが。
修一君は命を落としてしまったという事だぞ。
わがってらよ。
あっおにぎりももらっとく。
トイレで食べる。
(缶を蹴る音)
(係員)「牛乳パックがまだ半分しか届いていませんが時間が来ましたので届いている分だけお渡しします」「人数分は十分に届く予定ですので家族単位で家族の人数分お間違えのないようにお受け取りください」「不足分の牛乳パックも間もなく届きます」「安心してお並びください」「人数分は十分に届く予定です」
(加島)おい光彦。
こんちは。
やろうと思ってたんだ単三だ。
えっ電池?ほれ。
いいんですか?いいってお互い様よ。
(光彦)どうもです。
あの人急にやたらいい人になって…。
津波のあと?家と母親とばあちゃんがやられて…。
同じじゃない。
うちは兄貴もだけど。
本当にいつ誰に何が起こるかわからないねえ。
(光彦)車入れねえから手間かかった。
毎回ありがとう。
いえ今日はうち中で来たけど。
(麻子)おじいちゃんに会えなくてもいいんです。
わがまま言って…。
ご遺体はお二人とも一緒に?女房とばあちゃんと仲悪いの手をつないで泥の中から…。
泥の中まで言う事ねえだろ。
ううん…。
空からね天女のようにきれいきれいに舞い降りてきたとでも言えばいいってか!ああっ!そんな…。
すいません。
ごめんな。
ごめんごめん。
(奈美)お疲れね。
(麻子)本当…。
いえ…。
せめてっていうかお線香とか…。
そういうの始めると色々と来るから。
うちだけの事だけにしてへたり込んでるし。
竜太!竜太!何?ばあちゃん。
7人じゃねえ8人だ。
パンと牛乳は嫌いだってずーっと言ってだったべ。
他になぎゃ食うよ。
食うなら言うな。
嫌いだって言うな!竜太!竜太!竜太!じいちゃん…。
おお〜。
こんにちは。
こんにちは。
あんたには会わねばなんねと思ってだったが…。
いえ…。
気の毒でな…。
そちらこそ3人も…。
(吉也)おい行くぞ。
どこさ?
(光彦)えっこれどうすんの?みんな持ってる…。
あの体育館の辺りは下手すると海が見える。
はい。
海はええがその手前は見だぐねえ。
はい。
うちの辺りは頭ん中だけ元のまんまで置いでるんだわ。
はい。
…で何?あんた…どうしてる?はい…。
いや本来なら修一君を亡くしたショックで動けないところですが。
市役所なもんで…。
大忙しで。
寝に帰るのがやっとで…。
津波から16日も経ってるのにまだ孤立してる地区もあるし行方がわがらねえ人もいくらでもいるし…。
休めと言われても休まないでいたようで…。
する事があるほうが助かるんです。
ああ。
そうやって早くあいつの事は忘れてくれや。
忘れません。
じいちゃん…。
何が悪い?簡単にはいかないでしょうけど…。
忘れません。
(吉也)まあそりゃ急がなくてもええが…。
おたくたちに頼みがある。
はい。
なんでしょう?なんでも。
避難所に入った日旦那とは一度会った。
はい。
あとは俺奥さんともお母さんとも千晶さんにも会わねがった。
わかります。
お疲れだし。
こいつか孫が…。
(光彦)うん?くださるものはありがたくもらった。
日用品ばかりです。
すまねえがこの付き合いは今日までにしてもらいてえ。
何言うの?それはまた…。
お互いあの日1回会っただけだ。
それはそうですけど…。
ただの知り合いじゃありません。
はい。
親戚になる寸前だったんです。
しかしならながった。
当人が死んでしまった。
そうなりゃあんたらに残るのは義理だけだ。
一度会った俺たちに情が湧くわけがねえ。
もう…義理でいろいろしてくれるのはやめにしてもらいてえんだ。
それは違います。
浜口さんそれは違う。
(吉也)はいそうですか。
はいそうですかと言うしかない。
こっちには何もない。
ありがとうありがとうと言うしかない。
体育館よありがとう。
三度の飯よありがとう。
パンツもタオルもありがとう。
ダンボールもありがとう。
何しろこっちはなんにもない。
ありがとうと言うしかない。
網もロープも船もサッパも旗も法被も背広も仏壇も畳も玄関も車も風呂場も…。
女房に嫁に孫までいねえ。
それ俺のせいか?息子のせいか?せいではありません。
津波のせいだ。
文句も言えねえ。
こっちも同じです。
そちらは3人も一時に亡くされた。
家も跡形もない。
俺んとこどうです?俺んところは母も女房も娘も私も怪我ひとつしねえ。
家も高台で会社までは波も来ねえで娘は無事でなんもひどい目に遭ってません。
修一さんが亡ぐなったのよ。
そうだけど…。
こいつはありがたい事に生きてます。
何を言い出すの?不公平だべ。
だから何か役に立ちたいんだ。
気持ちの始末がつかねえんだ。
やってらよあの夜だって。
いや…。
あの家に何人泊めたかわからねえしそのままいる人もいるって…。
ううん終わったの。
皆さん避難所にもう…。
おばあさんも大変だったし市役所ももっと大変かもしれねえ。
でもでもそれは誰だってやらずにはいられねえ事です。
そのぐらいでは奥さんも嫁さんもご長男も亡くされた浜口さんに比べてなんだか自分の無事が後ろめたいんです。
今日で終わりにしたいなんて言わないでください。
お役に立ちたいんです。
それは私も。
私もです。
私もですよ。
親父は…人の世話になるのが嫌なんだ。
いやそれはわかるけど…。
礼とか言わなくていいんです。
やれと言ってくれればいいんです。
威張っててくれればいいんです。
(吉也)せっかくだがらな。
はい。
(麻子)はい!
(吉也)今夜ひと晩泊めてもらおうか。
そんな事言う事はねえ。
いやいいですよ!大歓迎です!
(麻子)はい喜んで!よそに泊まるの嫌だべじいちゃん。
体育館もよそでねえの。
そんだ!ハハハハ!
(光彦)どこもよそばっかだな。
(良介と麻子の笑い声)じいちゃん浜見えた?見えたべ?見ても見えん!ケーッ!すいません夕方になってしまって。
西郷さん。
はい。
勝手言うようだが…。
ああ…どうぞ勝手言ってください。
何?今さら。
なんでも言ってください。
俺は…あんたらに囲まれて夕飯を食いだくねえ。
はいわかりました。
足ば伸ばしてえ。
勝手にしてえ。
ハハッわかりました。
どうぞ。
うん。
(千晶・奈美・麻子)いらっしゃいませ。
(吉也)ううぅー!あぁぁーっ!
(吉也)ううぅー!ああーっ!ああーーっ!なんだろう?どうしよう…。
いいんだ。
ほっといてくれって言ってらんだ。
ナメロウが当たったかね?あぁーっ!!おめえも唸らんか!俺はそういうのは…。
何が俺はだ!母ちゃん死んだんだぞ。
あの母ちゃんがもう二度といねえんだぞ!ばあちゃんも死んだ!んだんだばあちゃんも死んだ。
修一も死んだ。
ボロボロって死んだ。
わかってらよ!大声でわめいた事があるか?あ?泣いて騒いだ事があるか?ねえよ!いっつも人がいて涙も見せられねえ…。
思いっきり泣け。
いや泣かなくてもいい。
大声でわめけ!あーーっ!正代!
(吉也)あーっ!
(光彦)わあぁーっ!正代ーーっ!
(光彦)母ちゃーん!ああ…悲しんでる…。
母ちゃーん!わあぁーっ!ああーっ!ちくしょう…!克己!うわあぁーっ!
(光彦)母ちゃん!!ああーーっ!!何するんですか!?
(吉也)何するんだと?なんですかこれ!あっちょっと!克己言ってやれ!津波に比べりゃこれぐれえなんだ!そりゃそうだけど!無事がつれえと言った。
津波に遭わんがつれえと言った。
こっちの身にもなれって言った!それは違う!何かをさせてほしいと言ったんです。
じゃなきゃ気持ちがすまないって…。
気持ちがなんだ。
そっちの気持ちがなんだ!そんだ!ああちょっと!浜のもんはな…浜のもんは気が荒えんだ!あーっ!母ちゃん!ちょっと待って!ちょっと!なあちょっと!ここまでだ!待って…!わあーっ!あーっ!わあーっ!待って!いいか!これぐらいで驚くな!いい顔をするな!今車出します!今…!バカかおめえは!だ…大丈夫!?バカかおめえは!ちょっと待って!二度と俺だぢに近づくんでねえ!ねえ待って!
(吉也)修一!ばあちゃん!正代ーっ!
(吉也)修一!
(光彦)ばあちゃん!正代ーっ!
(吉也)修一!母ちゃーん!
(蝉の鳴き声)あっ…。
こんにちは。
あっ…はい。
1人?あっいえあの…父親はいます。
じいちゃんは歯医者だけど。
あっちょ…ちょっと待って。
(光彦)父ちゃん!父ちゃん起きろ!おい西郷さんちの千晶さんだ。
おお…どうも。
(光彦)あっ…どうぞどうぞ。
天井が低くてつい一日中冷房をつけてるんです。
つけないでください。
いやあつけねばいらんねえ。
(光彦)ああいられんいられん。
あ座布団もいらねえかもしれねえけど。
あっいりません。
あれ以来だね。
はい。
二度と近づくなって言われて…。
そうだね。
怖がったしすいません。
こちらこそそれっきりで…。
仮説がこちらなのはすぐ知ったんですけど…。
来れねえよなあ。
父も母も祖母もどうしたもんかと言いながらあのままになってしまって…。
ああ当然だ。
勤務も自衛隊のほうだったんで。
おお自衛隊との連絡?使い走りです。
ああ…。
はいどうぞ。
水かよ。
なんもねえもん。
水がいいです。
私あれ…どういう事かってずっと考えていました。
あれって?皆さんがドシーンガチャーンドドーンって…。
ああ…いずれ弁償しなきゃなって…。
いえそんな事誰も考えていません。
(光彦)発散したかったんや。
よく眠れねがったし。
それだけで大の大人がそっだな事しねえ。
(光彦)普通でなかったから…。
じっちゃんははっきり言ってだった。
あんたらはいい人たちでずーっと俺たちの心配してくれそうで…。
俺たちはそう簡単に立ち直れそうもねえがらつい甘えてずーっとお礼ば言ってしまうかもしれねえ。
そんなのは嫌だって…。
あの時で打ち切りだって言ってもあんたのお父さんたちは本気にしねがった…。
親切にする気にならん事をしてしまえと…。
偏屈だ。
親父の偏屈だが気持ちがわかった。
そんで俺も無茶した。
ふーんそうか…。
私は急に気がつきました。
(光彦)何を?おじいさんの気持ちをです。
(戸の開く音)おお…。
ふーん…ここがうちか。
俺のうちか…。
浜口さん。
おう…。
おじいさんは私のために我が家との縁を早く切ろうとしてくれたんですよね。
ん?修一さんは死んだのだからもう来るなって言ってくれたんですよね。
父や母がそうはいがねえとか言うもんだから大暴れして我が家との縁を切ってくれたんですよね。
そうなの?この人のためにが?修一はもういねえのだ。
どご捜してもいねえのだ。
はい。
嫁に来ようと思ってくれた。
はい。
ところが急に相手がいねえ。
いねえ。
いねえ。
はい…。
なら早ぐ忘れるのが一番。
(光彦)あっどこさ行くの?狭くて客呼べるか。
私は初め皆さんがうちで暴れてくれたおかげでこのまま修一さんから遠くなるのかなという気がしていました。
何より津波で市役所は大忙しで。
災害の大きさにも圧倒されて。
テレビも初めは駄目で携帯も駄目で。
どこでどのくらいの人がどうなのかもわからなくて。
そこで私が何をしていたかというと本当あとからあとからの使い走りが精いっぱいで市役所の改革どころじゃなくて…。
自分が眠らなかったらどうなるかがわかったりなんて人の気持ちがわからなかったのかとか。
こんなところにこんなひどい人もいてこんなに偉い人もいるんだとか。
何年もの経験をさせてもらいました。
そうかあ…。
そうかあ…。
でもどっかで私はこの地震に向き合っていない。
津波にちゃんと向き合っていないという気持ちがありました。
そりゃあ手に余る大事だすけえ…。
いえ…修一さんの事を忘れよう忘れようとばかりしていたからでした。
私個人としては一番大きな出来事なのに向き合おうとしていませんでした。
だがらそれは…。
もう息子は戻らねえのだすけえ。
死んだから終わり…。
死んだから終わりとばかり思おうとしていました。
死んだから終わりだ。
いえ忘れたくないんです。
思い出したいんです。
それが一番したい事だって気がついたんです。
忘れろと言ってくださった浜口さんにはすいませんけど…。
いや…。
皆さんに会いたくなったんです。
修一さんの思い出は私なんかよりずーっとたくさん持ってる皆さんに会いたくなったんです。
そりゃまあ思い出だけはな…。
聞かせてください。
聞きたいんです。
あの兄貴がこんなきれいな人にそんな事言われるなんて。
兄貴じゃねえみてえだな。
まだ子供でな。
シャツシャツお母ちゃアイロンかがってねえってな。
(光彦)ばあちゃんにも自分でかげれ!って言われて。
(吉也)そのばあちゃんもいねえ。
いねえなあ。
だらしねえ男ばっかし残って…。
ううん。
あの日あんたらが来る直前まであれはアイロンをかげでだった。
(光彦)見えるとこだけでいいよな?上着着るからいいよな?母ちゃんって。
駄目だ!って言ったっけ。
(光彦)フフフフ!駄目だってなあ…。
今日はおめえが主役だろうが!その主役がシャツのシワを上着でごまかすような事してなんとする。
(いく)んだ。
お母ちゃんの言うとおりだ。
とごどん自分でやり遂げねばどうすんだ。
よし…。
うちの女2人は反発し合いながら妙に気が合ってなあ!じいちゃんは同じ話を何度も…。
いいの。
思い出ってそういうもんでしょ。
何飲んだ?じいちゃん。
なんもなんも。
飲んだべそれ。
えっ?洗剤だ。
柔軟剤だ。
こんなもん誰が飲むか。
なんで柔軟剤うちさあるの?どこにでもあるわ!貸してみ。
見せでみい。
客が来てる時に恥かかすな!貸してみ。
だからよく洗ってもう一回洗ってそれから干して使ってんだから大丈夫だ。
焼酎か?ウイスキーか?
(吉也)だからなんだ?飲んだら命取りだって言われてるべさ。
ハッ!命がなんだ。
命なんざ船があってこそだ。
家があってこそだ。
みんながみんないてこそだ!俺はいるぞ。
孫もいるぞ。
女がいねえ。
なんだそれ…。
ここんとこなんべんも千晶ちゃん来てけでるべさ。
弁当買ってきてくれるんだべ。
だからだ!だからなんだ!嬉しいんだ!飲みたいんだ!そんなもんさ入れで。
年寄りがやげ起こしたらこの世は終わりだぞ!仮設は隠すとこがねえ!光彦だって困ってらあ!いや俺は別に。
あっ!支店長!
(男性)なして黙ってんだ!?黙ってたらわかんないだろうが!
(福永)支店長なして黙ってんだ?本当はおわかりでないですか?おわかり?なんだ?何がおわかりだ?この支店は…この信用金庫は何より誰より皆さんのお役に立つしか生きてる道はないんです。
だったらそうせえ!きれい事言わねえで!皆さんの…皆さんの中柴宮堀地区は市の再建方針がまとまらなくて県も及び腰で国も遠くから眺めてるばかりです。
そんな事は百も承知だ!当事者が踏み出すという事だ。
うちらで町を作って事実を積み上げるっちゅう事だ!お気持ちは…お気持ちはよくわかりますが信用金庫がすぐさまお力にはなれません!
(青木)やっぱり弱腰だ。
なれるわけないじゃないですか!ほれ!これでなんもしねえんだ。
どこが土地っ子だ!臆病もんだ!津波に遭わねえもんにはわからんよ。
(男性)んだ。
わからねえんだ。
(男性)口だけだ。
(女性)話にならねえ!
(男性)支店長!どうした?3月のまんまなんだな…。
うん…。
運び出した荷物置いたりたき火したり…。
あの時のまんまなんだな。
今頃言ってる…。
草生えとったからろくに見もしなかったが…。
不思議だべ。
不思議って?種をまいだり球根埋めだりそういう気持ちが湧いてこねえのよ。
地震で潰れたわけでもねえし津波さ遭ったわけでもねえし…。
あなたもひと夏このまんまの花壇に気がつかねえなんてどうかしてらよ。
男はそんなもんだ。
お母さんが…。
うん…。
喪に服しとるんだねって。
そうか。
そんな結構なもんでないの。
ただ気力が湧かんの。
いつ全てが終わるかいつ何もかも崩れてしまうか…。
そんな気分甘やかして秋まで引きずるんでねえよ。
じゃああなた種まいて。
球根植えて。
俺は俺の仕事で種まいでる。
球根植えでる。
決まり文句言わねえで。
現実的になろうでねえが!どっちが現実よ!こっちも現実よ!!くっ…!
(千晶の声)これは誰にも言いたくない思い出。
2人だけの思い出にしようと思っていた大切な思い出。
話していいの?無理しなくていいよ。
話してえから切り出したんだろうが。
はい。
(千晶の声)港には不思議なくらい誰もいなくて神様か何かが2人のために人払いをしてくれたような気がしました。
(千晶の声)この土地で生まれたのに船から故郷を見たのはいぐら数えでも4回でした。
家族と幼稚園の時1回。
あとは学校から小学校2年と6年の時中学3年の秋。
全部観光船でみんなとしゃべったりふざけたりして見でもなんも見でいなかった。
(千晶)すっごーい!サッパ船って言うんですよね。
そうサッパ。
断崖のワカメやウニを獲ったりアワビを獲ったり。
細いところも危ないところも。
ああギリギリの岩場をな。
知らねえ奴はすぐ座礁だ。
(千晶の声)こんなのありなの?私の故郷こんなにすごいの?こんなにきれいでこんなにどこまでも続くスケールがあって。
こんなところがあるんだ。
(千晶の声)海からしか上がれない浜でした。
兄貴それが狙いだったか!決まってんべや。
えっ…じゃああの…。
えっちょ…。
じゃああの…。
何あのや。
あの恋の浜であの…。
光彦。
兄貴と千晶さんは…。
聞いてなんとする。
いいんです。
自分だけの思い出にしようと思っていたけど…。
(光彦)は…はい!
(千晶の声)でも死んだ人のいい思い出はご家族にお話しすべきような気がして。
そうです。
兄貴もちゃんといい思い出があってよかった。

(光彦)俺…俺…。
あっいやこれは…これは言うべき事じゃないかもしれねえけど…。
なら言うな。
(吉也)光彦!ありがとうって…。
千晶さんにありがとうって言ったっていかべさ。
なんべんも言ってもらってる。
でも…!その…その兄貴はもう生き返れねえのだからもう忘れて…忘れて…。
そうだ。
(吉也)忘れなきゃいかん。
俺との結婚を考えてくれねえですか!おい!来年の春には高校出るんだしそれまで待って…!イタッ!それまで待って!バカタレ!ずーっとずーっと思ってた!兄貴がおるうちからずーっと思ってだんだ!ちょっと来いって!千晶さん…千晶さん!どの口喋ってるだか!これか!千晶さん!
(光彦)結婚したいんだよ!黙れ!それじゃあもう立派な大工さんでねえの。
なんの。
言われるまんまさ。
言われて出来るのがすごいわ。
ああ俺なら…。
絶対指を潰してる。
ハハハ…。
船もねえ網もねえ道具もねえ。
景気がいいのは建設だもんね。
稼がねば仮設出られねえしな。
寒いから鍋頼んだ。
その前にちょっとこれで飲んでてくれって。
さあどうぞ。
ああここどうぞ。
ああ。
こういう店で鍋なんかいいの?いやいいんだ。
うちの理事長が個人で前からやってだ店だ。
職員は割引だ。
そういう特典があるんだ。
たまたまだ。
職場は零細だ。
ハハッ…。
どこが零細よ。
こごもついこないだまでは被災した人を何人も受げ入れていだんですって。
そういう言い訳も減ったなぁ。
フフッ…。
はい。
ああ…今日はありがとう。
ハァ…。
おじいさん抜きであなたに…。
というか中学校の同級生だから君と呼んだ方がいいかもしれないが…。
おめえでいいよ。
ハハッ…。
君だけに会ってもらったのはうちの千晶とお宅の光彦君の事だ。
うん。
よく会ってるらしい。
ああ…。
知ってだった?チラチラっとな。
もちろん会う事は別に悪い事じゃないが…。
何人からか聞いて娘にそれとなくあたりました。
そんなの勝手でしょと言われました。
強い言い方にびっくりしました。
親になんか言われたくないってまるでたたかうような口振りでこれはただ事じゃないなと思いました。
うん。
うちのは24歳光彦君は18歳。
そんなのおかしいだろう?おかしいかな?6歳も離れていて光彦君はまだ高校も出ていないんですよ?仕事を持った事もないんですよ?うーんでもまあ…。
でもまあそういう事もあるだろうが…。
でも…でも娘に本気を感じたんです。
これは本気だって。
いけないかなぁ?いけないよ。
娘はまだどうかしてるんだ。
津波から半年。
いやむしろあの頃より修一君が亡くなった事がこたえてきてるのかもしれない。
あいた穴が埋められなくて苦しんで弟さんにすがってるのかもしれない。
本人が本気なら…。
だからそれは本当の本気じゃなくて今普通じゃないから本気だと思っている偽の本気だって思うの。
それは俺も思った。
ああそう。
こういう時本人の自由だなんて言って放っておくより立ち入った方がいいですよ。
つけは親にも回ってくるんですから。
うん…。
きっと…。
いや多分2人は…いや2人とも津波のあとで途方に暮れてる子供なんだ。
今の大変な市役所でいろんな思いしてる。
教えられでる。
ああ…。
でも男と女の事は人に言われたくない。
教わりたくない。
それって変でしょう?変かなぁ?変ですよ。
なんにもわかってないんですもん。
うーん…。
恋愛がいかにはかないものか結婚がどんなものか。
生活力も大切だという事も。
それはそうだ。
少しは長く生きてる親が今赤ちゃんが出来たら一生が決まるぞって心配するの当然でしょう。
赤ん坊か…。
誤解のないように言うけど…。
何?いや2人を引き離してこれでお宅とは縁を切りたいとか言ってるんでない。
そんな事わざわざ言うような事?いやそう取られるかもしれねえがら。
今持ち出すような事じゃないでしょ。
そったな誤解はしねえ。
光彦に嫁はまだ早え。
見当はついてる。
なんの?あいつは仮設にいると時々たまらねえって友達5人だかと金出し合って息抜きのアパート借りだんだと。
(2人)それだ。
(麻子)残業残業って言って…。
いきなり現場だな。
いっちょ前が…。
逃げてどこさ行ぐ?追いかけたりはしねえよ。
力ずくなんて事もしねえ。
噂を聞いて寄ってみたんだ。
急ぎすぎだ。
少し気が早いんでねえのが?ああ。
まだまだ人生長いんだ。
わがらねえべ。
人生明日をも知れねえべさ。
そんな事思ってねえべ。
思ってねえよな?もう…。
すまん。
これが俺だちの限界だ。
ほっとけねえんだわ。
いくよ。
はい!バス案外正確だったね!
(奈美)はい。
今日はまだ作業の車が少なくて。
(吉也)これ大みそかに入りました。
何がです?いやベッドさねベッド。
はあ…。
(吉也)男3人の時はベッド入れるとひと部屋潰れてしまうがら無理だと言われたんだけども。
見てください!まあ!へぇ〜。
(吉也)ヘヘヘッ。
まあこんな事で喜ぶのは悲しいが。
いいえ。
まあ喜ばにゃあ負げだもんね。
(奈美)はい。
ああよぐ来てくれました。
行き来しねえようにしようと。
はい。
でもお孫さんが青森に行かれたと聞いて。
魚の加工をやっとる友人がね俺んとごへ寄越せと言ってくれで。
お顔が広いがら。
ああいやいや。
赤字抱えた小さなおらのとこなど相手にもされんのだけど。
(吉也の声)津波だったからね手を差し伸べてくれて…。
学校は?ああ去年がもうそれどころじゃなぐなったから改めて1年青森で単位取って卒業したらって言われでる。
そうですか。
お孫さんの方は…?あはい…。
(奈美の声)案外泣いたり逆らったりしねえで市役所で忙しゅうしてるようです。
2人とも親に言われでやってる事に気がついたって事かねぇ。
黙ってるがら…。
津波から1年も経ってねえのに。
人もあろうに弟さんと…。
津波のせいかもしれんね。
(奈美)津波の?根こそぎさらわれて誰彼構わず死んでしまって何かにすがりつきたぐなって…。
(咳払い)目先の色事を求めてしまったのかもしれんね。
はい…。
若いがらねぇ。
はい。
お待たせしました。
ゆっくりでいいですよ。
(吉也)ちょっと早ぐ来すぎだがね。
(奈美)いえ時間です。
(吉也)2時間に1本だがらね。
(奈美)はい。
(吉也)もう行ってしまったってわげではないだろうね。
(奈美)どうかもう…。
寒いですから。
誰もいねえ。
はい。
バスはどごをうろうろしとるんだが?
(奈美)浜口さん。
はい?息子が仕事柄かえって聞きにぐいと言ってるんですが…。
何をです?漁を再開するにあたって出来る事があるんじゃないかと。
ああああ…。
いや決してそれで商売するっていう気持ちでなくて…。
金庫がのう…。
はい?流されたまんまなんだわ。
ええ?うちはかかあと嫁女2人が金の管理してだった。
あらぁ…。
主にかかあの方が銀行の金利があまりに安いんで預けるのバカバカしいって言って…現金を金庫に入れでだった。
あらぁ…。
いくらあるがわがらね。
ただまあ長年の事だがらそれはきっとまとまった金額だと思ってる。
はい。
それはきっと。
まあ密かにそれが出てきたら…と決めとるんだわ。
了解です。
誰にも言いません。
息子にだけはそっと。
金庫の事はのう…。
はい。
この際どうでもいいんだ。
どうでもって…。
さっきから思ってだった。
何をです?バスは来ねえし誰もいねえし…。
一回ハグしちゃ駄目かな?ハグ?外国人みてえにこう…ハグだ。
あ…バスかな…?まあき…恐縮なお願いだけどまた一人だと思うと寂しいんだわ。
(吉也)底抜けに寂しいんだ。
いいですけどでもバスがもう…。
ああ…!ああ…。
ああ浜口さん!年明けで…ハハッ初めてだ。
私も。
おめでとうと言い合う状況じゃないんだけど…。
いや本当に。
集会所の換気の件だけど…。
んだんだ。
(男性)西と南はいいんだ。
北だなうん。
(アナウンス)「金山経由市役所前行き発車致します」浜口さんのご尽力でなんとか…。
フフフッフフッ…。
お母さん。
うん?そんな話面白い?何言ってるの?ハグなんて言われて気持ち悪くないの?ハグくらいいいでしょ。
キスとか言われたんでねえから。
(麻子)そうよ。
何言い出だすの。
2人を引き離してやっとあのうちとは縁が切れたんだ。
どうして勝手に会いに行ったの?お正月だしあの孫は青森へ行っちゃったんだし。
仮設で男2人だから。
おばあちゃんが行ってくださるのありがたいと思ったわ。
俺だぢが行き来すれば千晶もきっぱりとはいがなぐなる。
だからおばあちゃんが行くのちょうどいいんでない。
俺は反対だね。
向こうは3人も亡くなっておうちも流されて…。
そんな事はわがってる!縁を切って知らん顔がいいの?あの高校生をすぐ青森にやってくれたんだし。
そうよ。
千晶の方が年上なんだからこっちのせいもあるって言われたってしょうがないところもあるのに。
きっぱりと縁を切って忘れだ方がいいんだ。
わかるわよ。
その気持ちもわかるけど…。
普通の時でないがら。
そんだよ。
思ってもいない事で長男も奥さんもお嫁さんも…。
何遍も言うな!だったらハグされてもいいのか?そうよ。
そうだよ。
私だってハグぐらいさせるわよ。
俺は嫌だ。
そんな事聞いでない。
津波でなんでもなかったのは俺のせいじゃない。
もちろんよ。
津波に遭ったと聞けば誰にでも優しぐしなきゃなんないのか?当だり前でしょう?今でもつらい思いしてるんだよ?そうそう人の身になれるか。
なんて事言うの?あなた今なんて言った?
(麻子)そうそう人の身になれるか?疲れだよ。
疲れでもなんでもあなたそんな事外へ出ていったら一生終わりよ?信用金庫の支店長がそんな事を言ったら終わりよ。
誰にでもと言ったんだ!誰にでもいい顔は出来ないって。
当だり前でしょう。
大体誰だって人の身になんかなれないわよ。
そんな事はみんな百も承知でしょう?その上でなんとか出来る事をしようとしてるんでしょう?いいよもう。
よぐない。
おがしいわよ。
「そうそう人の身になれるか」なんてあなたそんな事言えるほど人の身になってるの?信用金庫は人の身になってるの!?せいぜいバカにすればいいが…。
バカになんかしてない。
切れだような事言うから驚いてるの。
信用金庫はいつだって本気でなんとか地域の役に立つ事を第一に考えでるよ。
それならいいの。
おじいさんね?
(麻子)えっ?浜口のおじいさんが気に入らないのね?そうじゃない。
そうじゃないの?ハグさせないわ。
そうじゃないんだ!はいおでんお待ち。
ああどうも。
すいません。
移動図書館?うん。
本のせて回ってる?うん。
言うばっかりでなんにもしねえ人だと思ってだった。
フフッそういうタイプだけどなんにもしねえではいられねえ気持ちでやらせてもらってるの。
本どうしてるの?だからあくまで市の図書館の一環で車も本も市のもんよ。
私は運転して回るだけ。
深く聞かねえで。
(麻子)やり始めたら面白いんだ。
性に合ってるんだ。
ボランティアはそれが何よりだ。
今日はそういう話でねえの。
言ったでしょ?うちの夫とあなたには何かあるのがという事…。
うん。
私のボランティアなんて恥ずかしくて人には言えねえよ。
少し見直したわ。
バカにしてだった?美しいがら許してだった。
そんな事言う人なんだ!なんでも言うよ俺は。
ハハッ。
なら逃げないで言ってください。
中学生の頃なんかありました?大人になってから付き合ってながったですもんね。
娘が修一さんと結婚したいと言ってきて好き合ってる話を潰すような親でないと私も夫も言ってそれから両家の父親が中学の同級生だったと気がついた。
そうですよね?ハァー…。
奥さんよ。
はい。
中学の頃仮に何があったとしても中学なんて13〜14の子供でねえの。
はい。
その頃の話持ち出して息子の結婚に水差すような親でねえよ俺は。
多分夫もそうね。
子供の頃を持ち出すのはいくらなんでも大人げないと…。
まあそういう事だ。
(ため息)ずーっと感じてたの。
2人の結婚を喜んでるような断りたいような。
それって普通の父親の気持ちかなぁと思ってたけど…。
うんそうかもしれん。
ううん。
津波でそれどころじゃなくなってそれからも親切にしようと努めたり急にひんやりしたり…。
そういうもんだべ。
本当?思い当たる事ない?気になるの?なる!「えっこの人そんな事言う人?」って正直ショックだった。
何言ったの?それは言えないけど…。
言いたくない。
(ため息)
(ため息)旦那は…。
うん。
波切町の高校のワル3人雇って俺を袋叩きにした。
…どうして?どうしてかはわがんねえ。
あとになって金で雇われたってその時のワルの一人に聞いだ。
中学生が高校生のワルを雇える?そこがあいつの偉いところだ。
ちゃんと今も支店長だ。
理由があるはず。
ただそんな事をするはずがない。
わからんよ。
(麻子)ワルに頼めばただお金払って終わりで済むわげがない。
あとだってきっと大変だったはず。
なんも知らねえ。
人に殴らせるなんて汚いじゃない。
うちの亭主汚いじゃない!子供だったから。
子供のやる事じゃない。
千晶さんが娘だって聞いて驚いたよ。
うちのも驚いたでしょう?いい娘さんだったがら昔の事は忘れようって思った。
忘れてないんでしょ?いいんだ。
釈然としない。
忘れだよ。
ううん。
そんな事聞き流せない!キャプテンこれ。
あいよ!焼酎梅割りもう一丁!いいねぇ!うちのがそんな事する奴だなんて思ってもいなかった。
昔々だよ。
ううん。
2人とも引きずってるんじゃない。
えっもう今?すぐ行きます。
はいそれはすぐ。
はい。
じいちゃん。
もうみんな集会所にいるって。
早えべさ。
来てるって言ってた。
誰が?何遍も言ってるべや!夫婦とばあさんだ。
なんの話だ?だから俺が殴られた話だ。
そんなおめえ昔の事を…。
だから相手のかかあが強引なんだ。
変わってるんだ。
どうだ?鼻毛出てるか?出てねえ出てねえ。
チッちゃんと見れちゃんと!鼻毛は大丈夫。
ああよがった。
ハハハ…!話の途中で余計な事を…。
ううん気になるわよねぇ。
いやいや。
あ…どうぞどうぞ。
いえあの…ですからこの人にそういう事が本当にあったのかどうか聞きました。
あったと言いました。
それだけの事ではないとも。
恥ずかしい事だとも思い出したくない事だとも。
1回だけ思い出そう。
そちらもいらっしゃるところで公平にと。
ああ。
仮設でご苦労なさってる方に昔のどうでもいい事を持ち出すのは本当こっちの勝手で…。
ああこっちは暇だよお母さん。
はい。
こいつも1軒終わって雨だしちょうどよがった。
2人で一日いるよりな。
ああ。
ありがとう。
夫が人に頼んでそちらを袋叩きにしたっていうの…。
急にこの人が別の人に思えて…。
人間はなんでもするよ奥さん。
でも言い訳があると…。
言い訳じゃない。
その前に何があったかだ。
何があった?何があった?それはないだろう。
俺は波切の奴らの事はなんも知らん。
波切の奴の事じゃない。
俺だぢに何があったかだ。
仲よがったべや。
仲よがった?俺だぢが仲よがった?おめえは2年の時に転校してきて…。
秋からだ。
松浦と和馬と清とつるんでよぐ遊んだべや。
何をしたが忘れた振りしねえでくれ。
30年近くも前の事だし…。
清のとこのヤギ…ヤギ!ウサギもいっぱい飼ってだった。
ヤギの乳をじかにヤギの乳首くわえて飲めと。
みんなやってだった。
みんな?ああみんなやってだった。
俺が手本を見せたんだべさ。
俺は震えが止まらねえぐらい嫌だった。
嘘だ!はしゃいでだった。
振りしてたんだ。
わがらねえべさそんなの。
双子島までよく泳いで。
うまぐなったべや。
やっと遅れて着くとさあ帰るぞとみんなで戻ってく。
一緒に遊んだべや。
並んでフルチンになって小便どこまで飛ぶかって。
誰でもやる事だ。
嫌だった!俺は嫌だった。
言わねばわがんね。
言ったらどうなる?ガマ取って来いって言われた。
ガマガエル捕まえて来いと。
おう。
田んぼ入って3〜4日かがってやっと1匹捕まえだ。
3〜4日もかがらねえべ。
かがった!5〜6日かもしれねえ。
ガマ一匹捕まえられんようじゃとか言われで。
みんな捕まえだ。
嘘だ!みんなが出来ねえがら俺に言ったんだ。
いじめだ。
明らかにいじめだった。
多少な…まあ言われてみればそういう事だばしれねえけど…。
捕まえだらそのガマ食えと言われるかもしれねえととったガマ捨てた事もあった。
そんなに大変な事とは思わねがった。
ガマは焼いて食えばうめえんだ。
フランスだって食ってるべ。
その時はそんな事は知らねえ!そのガマどうしたか覚えてるべ?覚えでねえ。
爆竹縛り付けて火つけろって言われたんだ。
盛り上がったべや。
俺は嫌だった。
もうこんな関係耐えられねえと思った。
今だったら笑い話かもしれねぇ。
でもそのころは心底嫌だった。
学校さ行くのが恐ろしかった。
誰にも言えねがった。
オドオドしている自分を知られるのが恥ずかしかった。
死にたがった。
う〜ん…。
そこまでは…。
本当だ。
何回か本気で死のうと思った。
そしてあの日行き場のない気持ちで昔の開拓村の方へ登ってった。
今もあるわ。
そこであのワル3人が…豚小屋に火つけるの見たんだ。
なんでだ?いたずらだ。
多分いたずらだ。
すぐに3人は俺に気づいた。
逃げた。
追いかけてきた。
捕まって森の中へ連れ込まれた。
人に言ったら殺すと言われた。
でも俺は半分死ぬ気だったがら…妙に平気だった。
誰にも言わねえ。
その代わり一つ頼みがあると。
そうかよ。
その足であんた呼び出して神社さ向かった。
ああ。
もう俺とは付き合わねえでくれと言うつもりだった。
でも言えねがった。
奴らも黙ってあんたを殴った。
俺は見ていた。
俺は訳わがんねがった。
そんな事はない。
あんたも俺がいじめに苦しんでるのを薄々感じていたはずだ。
だからそれきり俺とは目を合わせなかった。
俺もそれきりだった。
奴らに金など払わんよ。
そんな金あるわげねえ。
(ため息)そりゃあ…その娘と息子が一緒になるっていったら複雑だ。
子供のころの事だし…。
言い出すのも大人げなくて…。
よがった!これで誤解解消だ奥さん。
はい。
毎日が大変なのにこんな昔の事で…。
いやあ昔も今もどちらにも人生あるよ。
忘れたふりしてるよりずっといいよ。
ただ…。
(吉也)うん?どっちがいいとも悪いとも…。
言えねえなあ…。
(奈美)そちらはいじめとは思ってなくて。
旦那は死ぬほどのいじめだと。
すっきりしねえな。
いいですけど…。
どうだ2人。
お互い1発ずつ殴り合ったら?はあ?何言うの。
口で言い合ってすっきりしない時はけんか両成敗だ。
1発ずつ殴って終わり。
やりましょう。
ああ?よして。
いや…1発だ。
かなわんよ。
(吉也)勝負でない。
(吉也)勝ち負けでない。
あれをいじめだと思っていなかったはずはない。
死ぬほどつらい事だけでもねえはずだ。
懐かしい事もあったはずだ。
(吉也)本気出すな。
儀式だ。
1発だけだ。
(吉也)逃げるな。
1発だけだ。
ガードするな。
(咳払い)いや…ちょっちょっと待ってな。
眼鏡外すから…。

(吉也)よしっ終わりだ!あ…イッテ。
今のおめえの強ぐねえか?なんでそうやって小突くんだそうやっていつも。
(麻子)ちょっとやめて。
やめやめ。
平手でしてやった…。
(麻子)やめて!
(吉也)1発だと言ったでしょうが!駄目っ!イテテテッ!なんでつねるんだ!
(吉也)やめろ!俺だって…!うう〜っ!
(吉也)少年かおめえら!アッハハハハッ…。
痛え!アハハハハハッ!
(良介と克己の笑い声)痛え…痛え。
腹も痛えしほっぺも痛え!
(良介と克己の笑い声)あはい?え?…はい。
あそれはない。
うん。
それはありません。
うんはい。
はいありがとうございます。
はい。
あっ岡林さん。
私しばらくいないよ。
はい。
働いてるね〜。
いえいえ。
え〜…。
今日はいろいろとありまして…。
うん。
いろいろって?あっどうぞお茶。
どうぞ。
1人じゃ…手に負えねえがら。
借金なんかせんぞ俺は。
あっそういう事ではなくて同級生同士です。
親父とサシで話しにぐくて頼んだんだ。
息子が何言ってる。
じいちゃん。
うん。
実は6日前…金庫が見つかった。
どごで?ハザマの国有林で県の職員が。
ハザマって山ん中でねえか。
ガスバーナーで開げられでだ。
運んで開げだっつうわげか…。
はい。
警察は金目のものはなんもねえけどお宅のもんらしいって。
そりゃ泥棒だ。
なんも残さねえべ。
へその緒があったんです。
へその緒?俺と息子2人のな。
金庫に入れでだが。
プラスチックのケースに住所と名前があったそうで。
これ修一のだけどな。
お前なんで今まで黙ってだ。
がっかりするがら…。
だがらって!お父さん。
うん?金庫はなくても保険金や補助金で船は買えます。
あっサッパ船も買えます。
(吉也)だからそれだけじゃ漁は出来ん…。
網も油も法被も大漁旗も足りんところはうちの店が応援します。
そんな事は…。
人情ではありません。
仕事です。
特別扱いではありません。
ならこいつの判断だ。
中心はこいつだから。
そこだじっちゃん。
どこだ?言いにくいのは…この先なんだ。
なんの事だ?俺もう漁に戻らねえ。
なんでだ!大体性に合わねがった。
まあ跡取りだからって意気張ってやってきたけども津波で向いてねえ事がよぐわがった。
何を臆病な…。
工務店目指してえんだ。
今さらおめえ…!楽しいんだ。
家建てるの嬉しいんだ。
苦にならねえんだ。
やりてえ事いっぺえ浮かんでくるんだ。
子供でねえど。
子供でないです。
じっくり話聞きました。
しっかりした大した大人です。
なんもな…今すぐ金借りてやるってんでねえんだ。
2年余り大工やってきてひでえ工務店もあるんだ。
立派な工務店もいくつか知ってます。
修業したうえでの話だ。
遅ぐはない。
見所あると思ってます。
お前は何か。
船買って俺1人でやれってが。
すいません。
青森から呼んだんだ。
青森からって…。
じいちゃん。
なんだおめえ。
俺海が好きだ。
漁が好きだ。
組合長にしごかれてる。
そんでも苦にならねえ。
もう去年の俺でないよじいちゃん。
座って。
これもすぐにとは言いません。
でも漁が好ぎだと聞いてそれならもう立派な跡継ぎになると思いました。
船を買う夢は消えないど思いました。
好ぎだの夢だの何言ってんだ。
お前ら3人とも話にならねえ。
仕事のつらさ知らねえ。
世間の怖さ知らねえ。
何甘えた事言ってんだ。
甘い事考えなきゃ世の中動きませんよ。
甘い事考えて懲りたら懲りたでやってくしかないでしょ。
あんたもまだ子供だ。
人生のつらさ知らない。
こっちは津波でなんもかんも持ってかれたんだぞ。
なんもかんもでねえべ。
んだ。
なんもかんもでねえべ。
どこさ行ぐ?昼飯食うんでねえのが?俺はこごを見だぐねえと言ったはずだ!こごへは入らねえって言ったはずだ!何遍も言ってるべや!じいちゃんが見でも見なぐても元には戻らねえべ。
こご玄関だよな?こんなもんだったかぁ。
来てくれてるよ。
(吉也)ああ!おそろいで。
こんにちは。
(奈美・千晶)こんにちは。
(奈美)浜口さん。
(吉也)はい。
金庫残念でしたね。
なんのなんの。
ヘヘッ。
これ…。
(千晶)お宅へ行ぎにくくて…。
おおこのプリントあったのが。
がれきから出てきて…。
そうが…。
1人で持ってました。
そりゃあ…2人ともが写ってるもんな。
どうだそのあと…。
会ってねえよ。
間置いてみようって…。
(吉也)そうが。
それがいい。
ゆっくりも大事だ。
じき3年経つのに…。
まだこんななんだなぁ…。
はい。
ああ花飾って線香あげてもらって…拝ましてもらうわ。
はい。
ずっと見だぐなかったんだ。
意気地がなくて来られながった…。
呆れてる人もいたが来られながった。
許してくれ修一…。
(吉也)女房…嫁さん。
元気でなぁ…。
ありがとう。
しかしあんた…女房の前でなんて事するんだ…。
(吉也の泣き声)
(麻子)子供。
そんなにお母さんのハグ見たくない?馬鹿言うなよ。
何?大泣きしそうになった…。
大泣き?おかしいだろ?なんでもなかった俺が大泣きしたらおかしいだろ?見てらよ!
(麻子)なんでも…なんでもなーい。

(麻子)わかるよ。
この海見てここらに立てば誰だって大泣きしたいよ。
ハグしたい。
うん。
しよう。
みんな差し置いて…そんな事出来るか。
そうだね。
ここまでだ。
うん。

(船の汽笛)2014/02/22(土) 21:00〜23:06
ABCテレビ1
山田太一ドラマスペシャル 時は立ちどまらない テレビ朝日開局55周年記念[字]

あの日から、3年−。“東日本大震災”をテーマに、山田太一が贈る、家族の崩壊と再生の物語。ユーモアと希望に満ちた感動作。

詳細情報
◇番組内容
あの日から3年−。山田太一が「東日本大震災」をテーマに描く、絶望と希望の物語。同じ被災地に生きながら、運命を分けた二つの家族。それぞれの葛藤と人間の本音を、生き生き細やかに描き出す。励ましを超え、ユーモアと希望を届ける感動作。
◇出演者
【西郷家】
西郷良介…中井貴一
西郷麻子…樋口可南子
西郷千晶…黒木メイサ
西郷奈美…吉行和子
【浜口家】
浜口克己…柳葉敏郎
浜口吉也…橋爪功
浜口正代…岸本加世子
浜口いく…倍賞美津子
浜口修一…渡辺大
浜口光彦…神木隆之介
◇作
山田太一
◇監督
堀川とんこう
◇音楽
沢田完
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎(テレビ朝日)
【ゼネラルプロデューサー】内山聖子(テレビ朝日)
【プロデューサー】飯田爽(テレビ朝日)、内堀雄三(ユニオン映画)、元信克則(ユニオン映画)
◇おしらせ
☆番組HP
 http://www.tv-asahi.co.jp/tokitachi/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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