ここに働き続け疲れ切った男がいる。
彼は戦う武器はないと思っていた。
しかしただ知らないだけだった。
長い歴史の中で先人たちが勝ち取ってきたものが己の力になることを!
(小峠)よし!掃除はオッケーと。
うわっ!ヤバっ!もうこんな時間じゃん!2時間前から来て準備してるのにもうギリギリだよこれ。
やべえやべえ。
ここは夕方5時から朝5時まで営業している定食居酒屋。
僕にとって…戦場だ
(お客)すいませ〜ん!はい。
だし巻きまだなんですけど。
ああだし巻きで。
すいません。
少々お待ちください。
バイトから3年前に正社員になった。
やりがいはあるけれど…正直きつい。
社員とバイト2交代制で店を切り盛りしている。
そろそろ遅番のバイト君と交代だ
・はい。
「定食居酒屋アゲアゲ」です。
・すいません。
小熊ですけど。
あっ君か。
何やってんだ?早く来てくれよ!・
(小熊)今日休ませてください。
「休ませてください」って今月これで何度目よ!?・いや僕社員さんじゃないんで。
いや社員とかバイトとか関係ないだろ!大体君は…。
(電話を切られた音)はぁ〜!はぁ。
今日も朝の5時までコース決定!
片づけやって帰るのは7時。
16時間労働だよ…
なんて職場だ!小峠さんみたいな働き方をしている人結構いるんじゃないでしょうか。
(佐藤)もしもし。
相談員の佐藤と申します。
・はい。
若者の労働相談を受けるこのNPOには1年でおよそ1000件の相談が寄せられます。
若い世代の多くは労働時間や賃金の支払われ方などに疑問や不満を抱えています。
店長。
ちょっとフロア手伝ってもらえませんか?人手が足んなくてもうさばききれませんよ!
(店長)ダメダメ。
こっちも本部に提出する報告書の締め切り前で忙しいんだ。
いや〜!もう夕方5時から働きどおしなんですよ。
休憩とってるだろう?おにぎり1個食べるのに3分休んだだけですよ。
食べられただけマシでしょう。
俺も小峠君ぐらいのときはがむしゃらにやったよ。
「若い時の苦労は買ってでもしろ!」ってね。
今の仕事はきついけどさ正社員なんだから頑張ってもらわないと。
なっ!いや〜。
はい。
うちのお店のモットーは?「ビール1杯で幸せいっぱい!」。
「から揚げ1個でテンションアゲアゲ!」。
まっそういうことで。
・
(呼び出しのチャイム)ほらお客さん。
はい。
お待たせしました。
ご注文は?
(淺野)ウーロン茶とあとお話聞かせてもらいましたけれどもあなたの働き方ちょっと問題ありますね。
えっ!?どういうことですか?働く時間にはルールがあるんです。
このお客さん労働問題に詳しい淺野高宏弁護士です。
悩める労働者小峠さんに役立つワークルールを伝授してくれます!働く時間のルールってどういうことですか?それは8時間。
8時間。
休憩時間も取ることが決められてるんですよ。
ほう!一般的な労働時間のイメージはこんな感じです。
1日の拘束時間を9時間だとみまして実働が8時間。
そうすると休憩時間は少なくとも45分なんですが一般的には1時間と設定しているところが多いです。
週休2日で週5日働くということを想定して1週間で最長40時間の実働の上限が決められているんです。
僕の場合1日8時間どころじゃなく働いてるときもあるんですけど。
そう。
小峠さんのように上限を超える働き方いわゆる「残業」をするには特別なルールが必要です。
残業するためには雇っている側と働く側の代表が…会社の側とですね協定ですか?働く側の代表が残業についてどうするかということを協議して決めた内容を書面の形にして合意をするということが必要になるんですよね。
その協定の範囲内でしか会社は残業させることができないということになります。
へぇ〜!つまり残業は特別な働き方だっていう事が言えるんですよ。
はぁ〜。
これは労働基準法の36条という条文で決まっているので通称「36協定」っていうふうに呼ばれています。
36協定。
聞いたことあります?いやないですね。
逆に言うと協定を結んでいないと残業はしなくてもいいんですか?そう。
ええ!?断っていいんです。
あっそうなんすか!?これ知らない人多いのでは?結構いますね。
へぇ〜!店長!知ってますか?お店と僕が協定を結ばないと残業はできないって。
36協定だろ。
知ってるに決まってるでしょ。
俺幹部候補だよ。
でも僕協定なんて結んだ覚えないですよ!俺がお前と同期の西村と結んだんだよ。
ここで働いている人の過半数を代表する人っていうんで投票して西村を選んだでしょ。
あ〜!名前書いたかも…。
これ見なよ。
労働基準監督署に届け出た書類。
つまりお上の許しを得ているってことだ。
頭が高い!控えおろう!はは〜!残業できる時間は1か月45時間。
これで残業ができるってことなのか〜!正しいかどうか分かんないですけど…合ってますか?あっ!というわけで100人のうち6割以上の人が「知らない」という結果になりました。
これって自分たちの労働条件を守る大切な法律なんですが…。
この結果にこんな声も…。
自分の職場の労働条件がどうなっているのか上司に聞いてみることが大事でしょう。
ありがとうございました〜。
ごちそうさまでした。
(小峠の鼻歌)
いや〜これだけ働いてるのに。
そういえば僕の給料って毎月同じだよな…。
残業代ってどうなってるんだっけ?
店長ちょっと聞きたいことがあるんですが。
これ先月の僕の給与明細なんですけど僕の残業代ってどうなってるんですか?いやちゃんと書いてあるだろう。
いやよくよく見ると残業代込みで27万円って書いてるんです。
僕の給料って基本給が27万円じゃないんですか?じゃないですよ。
残業代を含めての給料がいやでも27万円です。
忙しい月とそうでもない月とあるじゃないですか。
残業時間が少ない月は小峠君得してるってこと。
じゃあすごく残業をしたときは?まあ得してる月があるんだから行ってこいでチャラだよ。
いやでもどれぐらい得してどれぐらい損したかって。
(机をたたく音)そんなにグチグチ言うんならこっちにも考えがある。
辞めてもらってもいいんだからな!な〜んて脅かす会社もあるらしいからね。
残業代のことでもめて。
まあ俺も所詮雇われ店長。
このご時世残業代もらえるだけでありがたいと思わなきゃ。
一緒に頑張ろうじゃないか!いや〜まあ〜!・
(厨房)アジフライ定食あがりました。
ほら。
はい。
アジフライ定食お待たせしました。
は〜い。
すいません。
あのう僕の給料は残業代が込みなんですけどもこれちょっと腑に落ちないんですが…。
小峠さんの場合残業代込みってお話でしたけども法的には残業代が何時間分の時間外手当に相当しているのかっていうこと。
それからその金額がいくらなのかっていうことが明確にされてる必要があるんですよ。
ふ〜ん。
でどのくらいの時間分でいくら分を含むのかという事を会社側が答えられないというのはそれ自体問題なんです。
へぇ〜!店長は教えてくれませんでしたよ。
そうすると内訳は分からないということになるわけですよね。
内訳が分からないのに毎月同じ金額しか払われないと。
こういう事になりますと残業代を含むっていうんじゃなくって27万円の小峠さんのお給料全額が基本給という考え方になるんです。
それを基に考えるとほう!小峠さんの場合残業代が全く払われてないってことになるんですよね。
へぇ〜!小峠さんが本来もらえるはずの残業代はいくらになるのでしょうか?実は計算できるんです。
残業は先ほどお話ししたように特別な働き方ですから。
実は……ってこと知ってました?知らないです。
あっそうなんですか!?残業のときはその基本給よりもちょっと割高のがもらえるんですか?そうそう。
えっ!?知らんかった。
残業代は原則として基本の賃金の25%増しで支払われることになります。
へぇ〜!でその金額を知るためには給料を時給に換算することが必要になってきます。
ほう。
まずは基本の時給の計算から。
1日8時間労働だと1週間で40時間。
1年間だと2080時間の労働時間となります。
これを12で割って出た時間が1か月分の労働時間です。
基本給を1か月の労働時間およそ170で割ると基本の時給が計算できます。
(淺野)小峠さん基本給は?27万円でしたね。
これを月170時間ということで割ってみてください。
はい。
1588円ですね。
この1588円というのが小峠さんの基本の時給ということになります。
ほう!で残業代は基本給の25%プラスですよね。
さすが小峠さん。
飲み込み早いですね。
ありがとうございます。
じゃあこの1588円に25%増しをしてほしいんですが。
はい。
1985円ですね。
この1985円というのが小峠さんが残業した場合に1時間あたり払われる賃金ということになります。
ほう!なるほど!小峠さん先月何時間残業しました?先月僕ね40時間やったんですよ。
結構ですね。
やりましたよ。
小峠さんの先月の残業代は?そうすると…これが先月本来だったら小峠さんに払われなければならなかった残業代ってことになります。
おお〜!ごっついですねこれ。
40時間残業した月はこの8万円近い残業代をもらっていない事になるんですね。
そういう事になるんですよ。
大っきいでしょう?大っきいですね!これはちょっと知っとかなければいけないですね。
ですよね。
「残業代込み」以外にも「残業手当」などと呼ばれる残業代を一律に支払う方法もあります。
どちらにせよここで提示される残業代が何時間分に相当するのかあらかじめ明示されていなければなりません。
しかも実際の残業代が固定の残業代を超えた場合には会社はその差額を支払わなくてはならないのです。
淺野さん差額分を払うなんてこれ面倒じゃないですか。
なのになんで「固定残業代」を取り入れるんですか?小峠さん鋭い質問ですね。
ありがとうございます。
最近では求人の際なんかに給料が高額に見えるっていうことで人集めの手段として使う場合もあるんですよね。
ほう。
労働者の側がこうしたルールを知らない場合は会社の方がそのまま労働者にルールを知らせずに残業代を払わないなんていうずるい会社もあったりするんです。
へぇ〜!残業代がこの月が6万円。
その前の月がこれ4万円と。
売り上げの計算?感心感心!何言ってんすか!店長このままだと法的に残業代は払われてないって事になりますよ。
えっ!?それが本当だとするとまずいな。
まずいですよ!で計算したら残業代が1年間にこれ60万円超えてますよこれ。
だけど小峠君一体いつそんなに働いた?ガンガン働いてますよ!開店の2時間前から水まき掃除メニュー書きに料理の仕込み。
掃除や仕込みは仕事じゃなくて準備でしょ。
いやいや。
仕事だって教わりましたけど。
でも2時間はかかりすぎだろう。
俺なら20分ぐらいでできちゃうけどな。
パパパ〜って。
いやそれだけじゃないですよ!閉店してからも皿洗いにゴミ捨て全部の後片付けに1時間以上。
バイトをうまく使えばいいじゃん。
君の腕次第だよ。
ここここ。
でも社員の僕にしかできない伝票整理に食材発注に売り上げの計算もやってんですよ。
小峠君「僕たくさん働いてます。
でもお金もらってません」っていう主張給料に不満があるから言ってるの?そもそも払い終わった給料の事を今さら言ってもしょうがないでしょう。
仮に残業してたとしても昔の残業代なんて払えない払えない。
世の中の常識としてありえないから。
はぁ〜!フン。
先生昔の残業代もらえないって本当ですか?デザート付けますんで教えてください。
じゃあ小峠さん座ってください。
小峠さん店長が言っていた「昔の残業代もらえない」というのは実は間違いです。
えっ!?そうなんですか?昔の残業代ももらえるんですか?え〜!残業代だけではなくて…そして企業には支払い義務があるんですよね。
ほう!でも「働いた時間を残業と認めない」と言われたらどうすればいいんですか?先ほど店長さんが「準備や後片付けは仕事じゃない。
時間がかかるのはやり方が悪いからだ」と言って「その時間を残業とは認めない」と言っていましたけれどもそれは法的にはアウトなんですよ!間違ってるんです。
ほう。
実は最高裁判所はですね労働者が会社の指揮命令の下に置かれている時間を労働時間と判断しているんです。
若者の労働相談にも「実際に働いた時間を認めてくれない」といった声が多く寄せられています。
中でも目立つのが労働時間を正しく管理するためにあるはずの「タイムカードの悪用」です。
会社が認めてくれない残業代などの「未払い分」を取り戻す方法はあるのでしょうか?ここで大切なのは「ちゃんとこれだけ働きました」という証明ができるかどうかなんですよね。
なるほど。
それは日報のコピーなんかがあれば比較的証明はできますし。
タイムカードなんかが無い場合でも出勤とかそれから退社時間について毎日メモをするということも実は有効なんです。
もらってない分を取り戻すには裁判をしなくちゃダメですか?そしたら会社を辞めなくちゃいけなくなんないですか?実は会社を辞めても辞めなくても仕事を続けたままでも残業代の未払い請求っていうのはできるんですよ。
へぇ〜!ただ1人でやるっていうわけにはいかないので主な相談窓口というのをご紹介します。
おお!1つ目は労働基準監督署。
労働基準法に違反している点について企業側に指導をします。
2つ目は弁護士が関わっている無料の法律相談。
労働基準監督署に行くべきか裁判を含め弁護士の力を借りるべきかアドバイスをしてくれます。
そして会社の労働組合や1人でも入れるユニオンに加入し会社と話し合う方法もあります。
違法な長時間労働や残業代の未払いの問題というのは一個人の問題ではなくて社会全体の問題として考えたほうがいいと思うんですよね。
まあ働きすぎてしまって体を壊す前に「おかしいな?」と思ったら誰かに相談するっていうのが解決への第一歩だと思います。
そして労働法という法律が働く人たちの最低限の環境ですとか権利を守るっていうこともそうなんですけど会社自体が正しく運営されていくためのルールだっていうことをぜひ知ってほしいと思います。
はい。
法律やルールを知ることって仕事をしていくうえで大事なことなんだなぁ!
この職場をよくしていくためにはどうしたらいいんだろう?
小峠君にいろいろ言われて俺も考えたんだけどさ職場で改善できる点を社長に報告してみようかと思うんだ。
このあと仕事が終わってから少し話せるかい?おっと残業代は付かないけどね。
エヘヘヘッ。
店長!なんて日だ!…と定めています。
2014/03/08(土) 16:00〜16:24
NHKEテレ1大阪
明日から役立つワークルール〜初めての労働法〜「残業代、もらってる?」[字][再]
若い世代に多い仕事の悩み「長時間労働が当たり前なのに残業代は固定給ってヘン!」。そんな疑問に弁護士が労働法の基本をひも解きながらアドバイス、労働条件の基本を学ぶ
詳細情報
番組内容
若い世代が職場で直面する「長時間労働と残業代未払い」の問題について、解決・改善のためのヒントを学ぶ。架空の定食居酒屋の社員(小峠英二)は連日の長時間残業と、働いても増えない残業代込みの固定給に疑問を持っている。店長(宮川一朗太)に聞くが、納得のいく答えは得られない。この状況は一体どうなのか? 労働問題に詳しい弁護士が労働時間のルールや残業代の計算方法、労働者の権利などについて分かりやすく解説する。
出演者
【解説】弁護士…淺野高宏,【出演】小峠英二,宮川一朗太,【語り】高橋さとみ
ジャンル :
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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