サイエンスZERO「津波の真の姿をとらえろ〜世界最大!海底地震津波観測網〜」 2014.03.08

(テーマ曲)猛烈な勢いで陸へと迫る巨大津波。
東日本大震災では襲来する津波の高さと時間を正確に予測する事ができず大きな被害がもたらされました。
あれから3年。
今津波を新たな方法で監視し予測する画期的なシステムがこのマンホールから海に向かって延びています。
ケーブルでつながれた観測機器を海底に設置し津波の高さを直接観測しようというのです。
世界最大の観測網を使う事でこれまでよりも正確な津波警報がいち早く出せるようになります!来年をめどに本格運用が開始される海底観測網に迫ります!
(南沢)私も3年前にテレビで津波警報出てるの見たんですけど最初の予想よりもかなり大きな津波が来てすごく衝撃を受けたのを覚えてます。
(竹内)あまりにも大きくて何かもう恐怖という感覚しかないんですよね。
実は今その津波をですねいち早く観測して予測するための画期的な観測システムが整備されつつあるんですよ。
それがいち早く分かればその分早く避難できるし多くの人の命が助かるかもしれませんね。
そうなんですね。
(中村)さあそれではまずは津波のメカニズムをおさらいしましょう。
津波は海底で地震が発生してその事によって海水が押されて持ち上がる事によって起こります。
沖合で発生した津波非常に速いスピードで陸へと押し寄せます。
これ深い所ではなんと時速500kmを超えるものもあるんです。
沿岸に近づくと速度は落ちるんですけれども今度は急激に高さを増してきます。
このために甚大な被害がもたらされるという訳なんですよね。
東日本大震災の時はこの津波の高さを正確に予測できなかったんですよね。
そうなんですね。
さあそれでは東日本大震災では津波がどのように観測されて警報がどのようにして出されたのか見てみましょう。
東日本大震災の発生直後。
まず津波の高さの予測に使われたのは全国に設置された地震計のデータです。
最初に算出された震源とマグニチュードの速報値を基に大津波警報が発令されました。
緊急地震速報です。
大津波警報の出ている沿岸をお伝えします。
地震から3分後に予想された津波の高さは岩手と福島で3mでした。
次に使われたのは沿岸に設置されたGPS波浪計です。
その一つ岩手県釜石沖で観測された津波の高さは既に最大で6.7m。
当初の予想の2倍を超える高さになっていたのです。
地震発生から実に26分がたっていました。
大津波警報が追加されました。
この観測結果を基に気象庁は即座に岩手の津波警報を6mに引き上げます。
津波が釜石の町に到達したのはGPS波浪計が波を捉えてから9分後の事でした。
港などで波の高さを測る検潮所もその多くが破壊されました。
地震計26分後に波を捉えた波浪計破壊された検潮所この3つでは津波を早く正確に予測するためのデータを入手する事ができなかったのです。
しかしこの時波浪計よりも早く津波の正確な高さを観測していた装置がありました。
津波が来て水位が上がると水の重さが増え装置にかかる水圧が増えます。
その圧力の変化から津波の高さを計測するのです。
水圧計が設置されていたのは釜石の沖合70kmの海底です。
津波が発生した場所から近いため地震発生から15分後には5mを超える津波が観測されます。
沖合20kmに設置されていたGPS波浪計が津波を観測したのは地震発生から26分後。
釜石の水圧計は従来の観測体制より11分も早く津波を捉えていたのです。
もしあの水圧計のデータが生かされていたらもっと早く警報が出せていたんでしょうね。
そうですよね。
…と思うんですけれども残念ながら研究者の方もこのような…気象庁にもデータ送られていたんですけれども…だけどそもそも最初に出た津波警報では津波の高さが3mと予想されてましたよね。
どうしてあの津波の高さを正確に予測する事ができなかったんでしょうか?実はそれまでの津波警報はとにかく早く警報を出すという事に主眼が置かれてたんですよ。
1993年に起きた北海道南西沖地震では地震発生から僅か3分で津波が押し寄せたんですね。
なので地震直後にですねこの警報を出すそれをしないと人命を救う事ができないという考えになったんです。
そこで陸上に設置された地震計のデータを使って短時間のうちに津波の高さと到達時間を予測する警報システムが作られたんです。
ところが…なるほど。
やっぱり沖合で直接観測するって事が重要なんですね。
さあそれでは改めて水圧計の場所を見てみましょう。
この2つの場所がですね東日本大震災の津波が発生した場所です。
特に赤い場所で強い津波が発生したといわれています。
水圧計はここから130km離れた場所に設置されていました。
そのために地震発生から15分後には津波の姿を正確に捉える事ができたと。
一方でGPS波浪計これは津波が発生した場所から170kmほど離れた場所にあると。
ですので津波を観測する事ができたのは26分後。
つまりこの40kmの差が10分以上の差を生んでしまったという訳なんです。
いや10分ってやっぱり避難する人にとってはかなり大きいですよね。
ですよね〜。
そこで今ですねこの釜石の水圧計を参考にして全く新しい津波観測システムが作られようとしています。
去年7月千葉県の沖合で新しい津波観測システムの工事が始まりました。
ケーブル型水圧計に新たな機能を加えた…地震の揺れと津波の高さを同時に測り即座にデータを光ケーブルで陸上に送る事ができます。
注目すべきはその規模です。
日本海溝近くに150台の観測機を投入。
総延長は5700kmに及びます。
完成すれば世界一の津波観測網を来年をめどに本格運用が開始される計画です。
この海底地震津波計はどれだけ正確に津波を観測できるのでしょうか?装置に入っている水圧計を水槽に入れテストを行いました。
水圧計の中には水晶で出来たセンサーが入っています。
水晶のセンサーは電気を加えると毎秒3万回ほど振動するという特性があります。
海底に沈めたセンサーの上に津波が通ると圧力が加わり水晶の振動数は増えます。
その増えた振動数を計測する事で波の高さが分かるのです。
津波を想定して水位を5cm上げてみました。
水位が上がる前の振動数は1秒間に3万3,172回。
5cm水位が上がると…振動数が0.028増えました。
この僅かな差を読み取る事で1cm単位で津波の高さを観測する事ができるのです。
この精密な観測装置が設置されるのは最大で水深7,000mを超える深海。
10cm四方にかかる水圧は70tを超えます。
その過酷な環境で25年以上稼働し続けるために腐食に強いベリリウム銅合金で厳重に密閉されます。
汚れやほこりは劣化の原因となるため入念にチェックし取り除いていきます。
深い海の底から津波を監視し続けるのです。
へえ〜津波の観測に水晶を使うんですね!ですよね。
しかもかなり精度が高そうですね。
水晶といってもですねこれ実はクオーツ時計ってあるじゃないですか。
はい!あの水晶と同じようなものなんですよ。
ただ使い方を変えると圧力…水圧を測る事ができるんですね!そうなんですね!さあではここからは専門家の方にお話を伺っていきましょう。
防災科学技術研究所の金沢敏彦さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
5,700kmもケーブルを張り巡らせるという事でしたがかなりすごい規模ですよね。
この観測網を日本海溝に沿って作る事の意味は何なんですか?
(金沢)現在も地震を起こした領域には余震が発生していますしその周りでもですね誘発された地震が起きている訳ですね。
これからまだ大きい地震が起きる可能性がない訳ではないのでこの観測網をなるべく早く整備して緊急地震速報や津波の情報を出していくというのに使おうという事でこの観測網の整備が急がれている訳です。
さあそれでは海底地震津波計を見てみましょう。
こちら。
おっ。
実物大です。
へえ〜!これが海底に…。
(金沢)はい。
結構大きいですね!
(金沢)長さが約2m。
太さが34cm。
この中に地震計が4組水圧計が2つ入っています。
これどうして地震計も水圧計も複数入ってるんですか?地震の波っていうのは長いゆっくりした波があったり短い波があったりいろいろありますので速度を測ったり加速度を測ったりいろんなタイプも入っています。
この地震計の精度もものすごいものを誇っているんですよ。
こちらをご覧下さい。
この地震計の近くで一円玉を落としてみます。
あっすご〜い!波形がちゃんと動きましたね。
かなり僅かな揺れでも観測できるっていう事ですか?海底でも今と同じように非常に微小な揺れでもちゃんと観測できます。
へえ〜。
例えばカニがごそごそ歩いているのもとれたと言ってる人もいます。
アハハッ。
すごい。
へえ〜。
水圧計も複数あるんですよね?水圧計壊れるという事も考えないといけませんので2つ入れてどちらか壊れても津波の計測がちゃんとできるようにという事で2つ入れてある訳です。
へえ〜。
だけどこれもしケーブルが切れちゃったりとかしたらどうなるんですか?実はですねケーブルが切れても大丈夫なように設計されているんです。
こちら。
海底地震計をつないでいる海底光ケーブルは両端が陸上につながっています。
ですので海底ケーブルの途中が切れても情報はそのつながっている方の陸上に送られて貴重なデータが失われないように設計されています。
結構その安定性を重視して設計されたっていう事ですか?非常に重視して設計したと。
実際…これが運用監視すると津波観測が何か大きく変わりそうですね!そうですね。
私も地震の研究者ですけれども昔から海底でですね…そこで30年前から使われているのがこちらの機器ですね。
金沢さんたちが使われていたOBSと呼ばれる観測機器。
これを海底に設置して観測していたという事なんですよね。
これはケーブルとかなさそうですけど観測データとかはどうやって入手するんですか?これは容器の中に記録装置を持っていまして約1年間ほどデータをためておく事ができます。
観測終わったらば観測船からの呼び出しによって海底に座っていた地震計が自分でおもりを切り離して海面まで浮上する訳ですね。
…でそれを観測船が拾う事で初めてデータを手にする事ができるというふうなものです。
リアルタイムでデータが上がってこないので解析してその結果を情報発信に使ったりという事ができないっていうのが最大の欠点になっています。
それで釜石にそのケーブルつきの水圧計が設置されたんですよね。
大体20年ぐらい前から…早く完成するといいですよね。
まあこうした観測網の整備によって一番期待されるのが津波の高さをより早くそして正確に予測するという事ですよね。
もしあの日この観測網があったらどのように活用されていたのかご覧下さい。
迫り来る津波をいち早く正確に予測し警報を出すためにはどうすればいいのか。
気象庁は次世代の津波警報システムの研究を進めています。
津波解析の専門家対馬弘晃さんは東日本大震災の際に海底地震津波観測網があったと仮定して検証を進めています。
これは釜石の海岸近くに押し寄せた津波の高さを時系列で表したものです。
5mを超える津波が2時間で3回押し寄せています。
観測網で10分間に得られるデータを使って波の高さを予測してみます。
すると…。
ほぼ一致しました。
地震発生から10分間のデータだけで津波の高さと時間を高い精度で予測できたのです。
新しい津波予測その名も…一体どのような仕組みなのでしょうか?津波が発生すると海底地震津波計が次々に津波の高さを観測し光ケーブルで陸へと送ります。
これらのデータを基に解析すると地震発生直後の津波の大きさと形を割り出す事ができます。
発生した津波の全体像が分かれば沿岸に押し寄せる津波の大きさや時間を先回りしてシミュレーションする事ができるのです。
実は対馬さんは震災の前から海底の観測機器を使った警報システムの研究を進めていました。
いや〜。
だけどこの技術はすごいですね!すごいですねこれね!瞬時に計算してましたよ!たった10分間のデータだけでこんなにこう精度が高い。
しかも1か所であれば1秒?これ何かすごいこう世界的な先進システムになりそうですね!ね〜!もともとの目的を達成する事ができるという事になります。
この観測網では地震波も捉えられるようですがそこには何かメリットがやっぱりありますか?例えば沖合200kmで地震が発生した場合にはこれまでよりも約30秒。
沖合100kmで地震が起きた場合には約15秒早く地震の発生を知る事ができる訳です。
緊急地震速報がより早く分かればいろんな準備もできるしありがたいですね。
ちなみにほかの海域には作らないんですか?西日本南海トラフ沿いの地震あそこの海域にも別のタイプですけれどもリアルタイムのケーブル式の観測網が今更に整備している段階にあります。
まずはこの日本海溝沿いのケーブルシステムを早く動かしてデータとれるようにしたいと思っています。
そうですよね。
とはいってもやっぱりこう海の近くとかにいて…そうですね。
さて地震津波観測網が整備されると警報以外でも研究が加速する分野があるんです。
それが地震や津波がなぜ起こるのかそのメカニズムの研究です。
海底地震津波観測網の完成を待ち望んでいる研究者がいます。
東京大学の篠原雅尚さんはこれまで長年にわたってOBSと呼ばれる海底地震計を用いて地下の構造を研究してきました。
陸の地震計と海底の地震計には観測結果にどんな違いがあるのでしょうか?2008年5月に陸の地震計が観測した茨城県沖の群発地震を見てみます。
解析の結果震源は海底から100kmまでの深さに散らばっていると推定されました。
しかし海底に設置した地震計のデータからは違う結果が導き出されました。
震源は30kmほどの深さに一直線に並んでいたのです。
海底で観測した事でこの地震はプレート境界が原因で引き起こされていた事が証明されたのです。
東日本大震災のあと全国の研究者は連携して海底に地震計を設置。
さまざまなデータを収集し解析を続けています。
震災直後から6月までのデータを解析した篠原さんはある現象に気が付きました。
東日本大震災の震源の海域で余震があまり起こっていない事が分かったのです。
更にその地下を分析してみると東日本大震災を引き起こしたプレートの境界で特に余震が消えていました。
震災から3年。
篠原さんはこの海域に再びひずみがたまり地震の兆候が起き始めるのではないかと考えています。
海底地震津波観測網が整備されればこうした地震の発生場所や大きさがリアルタイムで把握できメカニズムがより詳細に分かるのです。
この観測網は地震研究を根本から変えそうですね!この観測網のデータは先ほどの海底地震計を使った研究グループだけが解析するんじゃなくてもうデータは流通させる事になってますので…もう起きたそばから…地震学の教科書が書き換えられてしまうみたいな…。
可能性ありますね。
日本っていう国はやはり科学技術立国だと思うんですね。
でも東日本大震災の時に津波の高さこれ予測できませんでした。
それが僕にとって非常に大きな衝撃だったんですね。
でも今回の観測網によって何かが変わりそうな何かそんな光明が見えてきた気がするんですけども。
いややっぱり私たちにとって津波や地震の情報がより早く正確に分かるっていうのがすごいありがたい事だなって思ったんですけどやっぱりその情報を受け取ったあとに私たちがどう対応していくかというのをちゃんと自分たちでも考えていかなきゃいけないなって思いました。
金沢さんどうもありがとうございました。
ありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2014/03/08(土) 12:30〜13:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「津波の真の姿をとらえろ〜世界最大!海底地震津波観測網〜」[字][再]

世界最大の海底観測網によって、いまだ謎の多い津波の実像を発生源の間近で捉えるという壮大な計画が始まっている。津波警報の精度も格段に向上させる最先端技術に迫る。

詳細情報
番組内容
総延長5000kmという世界最大の海底観測網によって、謎に満ちた津波の実像を“発生源の間近で”捉えようという壮大な計画が始まっている。高精度の地震計や水圧センサーを光ケーブルで数珠つなぎにし、房総〜北海道沖の日本海溝周辺の海底面を網羅するように沈める。実現すれば、これまで過小評価しがちだった津波規模を迅速・正確に把握し、津波警報を格段に向上させられると期待される。大注目の日本の最新技術に迫る。
出演者
【ゲスト】防災科学技術研究所…金沢敏彦,【出演】南沢奈央,竹内薫,【キャスター】中村慶子,【語り】土田大

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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