終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子・森村誠一の『悪の器』 2014.03.22

(牛尾正直)
東京2200平方キロに約1300万の人がひしめき政治経済文化全ての中心地であり発信地であるこの街は決して眠らない不夜城です
人は夢とチャンスをかけてこの街を目指します
この街で夢を叶える者逆に失意の思いでこの街に背を向ける者
街は静かにその人々を見つめています
そしてまたこの街はあらゆる犯罪を奥底に秘めた悪の器のような街でもあるのです
詐欺強盗傷害そして殺人…
ううっ…。

(パトカーのサイレン)わからない?
(大上刑事)身元を証明するものは一切持ってないんです。
何かないかと今も探してるんですが。
身元不明か…。
(海野鑑識係)死因はご覧のとおり絞殺。
やわらかい布状のもので背後から強い力で締め上げられています。
死亡推定時刻は一昨日。
11月11日金曜日の夜。
午後11時頃から翌日午前1時頃までの間。
(大上)イヤリングは右耳だけで左耳にはありません。
靴は?
(大上)今のところ見当たりません。
ストッキングも汚れてないし争ったような形跡もない。
…となるとどこか別の場所で殺害してここへ遺棄した。
そういう事だろうな…。
(カメラのシャッター音)廃工場か?ここは。
4〜5年前からこんな状態だったようです。
ここ1年ほどはもう放りっぱなしだったみたいで。
となると…犯人はここに廃工場があるという事を知ってた人物という事になるな。
土地勘のある人物。
(西谷刑事)牛尾さん!やっぱり何もありません。
身元を証明するようなものは一切。
(山路刑事)厄介だな身元がわからんとなると。
(山路)スーツの方なんですがこれがちょっと問題でして。
7年前に一点物実は百点物というちょっとした騒ぎがあったんですがその時のスーツなんだそうです。
カツヤ・シマダというデザイナーが銀座の店で一点物という事で45万の値段で売ったスーツなんだそうですがこのデザイナーの秘書をしていた息子が父親には内緒で安い布地で全く同じデザインのものをかなりの数作って売りさばいたっていうんです。
結局その事がばれて騒ぎになりデザイナーは責任をとって店を閉め引退。
息子の方は海外に行ったまま行方不明になってしまっていてどのぐらいの数が作られ誰が購入したのかが全く。
(坂本課長)つまりこのスーツからガイシャの身元にたどりつく事は不可能。
そういう事か?
(山路)はあ。
だったらイヤリングの方はどうだ?このイヤリングは15年ほど前に3000円ほどの値段で全国のアクセサリー店デパートスーパーそれに量販店等々で販売された大量生産品でこちらからも持ち主を特定する事は不可能だと思われます。
いずれにしてもまずは身元だ。
全員でなんとか身元判明に繋がる手掛かりをもう一度探ってみてくれ。
(一同)はい!
1か月経っても被害者の身元は判明せず捜査は完全に行き詰まっていました
今日はみんなの忌憚のない意見を聞きたい。
意見があったらどんどん発言してほしい。
どんな事でも構わない。
何か…。
ガイシャの顔写真を公開したらどうでしょうか?
(一同)ええ…?
(山路)いくらなんでもそんな事は出来ないよモーさん。
死に顔を公開するなんて事は…。
いや…死に顔じゃなく生前の顔を公開するんです。

私たちは思いつく場所全てにそのビラを貼りました

多くの情報が寄せられたもののそれも結局身元判明には繋がらず3か月が過ぎ半年が過ぎそして1年が過ぎようとしていました
(川村冴子)うん…?迷宮の中にいるんだこの人も…。

(クラクション)
(大上)小村秀彦35歳。
株式会社ゼノビウス代表取締役社長。
テレビゲームの企画製作販売の会社です。
会社を立ち上げたのは今年の1月らしいんですがその時に販売した『黒衣のゼノビウス』というゲームが評判になって売れに売れてそのあとに出した第2弾第3弾も大当たりで年商は10億いくんじゃないかって。
(海野)死因はですね何か硬い鈍器のようなもので一撃されたための脳挫傷かと思われます。
付近に争った形跡はありませんからどこか別の場所で襲われ逃げてきてここで力尽きた。
そんな感じですね。
死亡推定時刻は昨日11月20日午後10時頃から12時頃までの間。
物盗りの犯行じゃなさそうだな。
(大上)財布の中に32万の現金。
それにカード類もそのままでしたしコートのポケットに携帯も入ってましたから物盗りの線は薄いですね。
モーさん。
ガイシャは佐賀県の唐津の出身で港区内のマンションで一人暮らし独身だそうだ。
身内には連絡取れたんだが唐津からじゃこっちに着くのは午後になるだろうし…。
だったら先に自宅の方行った方がいいな。
じゃあまだ1年経ってないわけですね小村さんこちらに住まれてから。
(堺一郎)ええそうです。
小村さんがここへ引っ越されてきたのは去年の12月の…確か8日でしたから。
はあ…こんな事になるなんて婚約者の方もどんなにつらいか。
小村さん婚約してらしたんですか?
(堺)ええ近いうちに発表という事になると思うってそうおっしゃってました。
発表ですか…。
逆玉なんだっておっしゃっていました。
今度は逆玉の地位にふさわしいマンションに引っ越すつもりだし車も新しい車に買い替えるって。
車を買い替える?ええ。
ああ…ひと月ほど前でしたかどこかで車をぶつけたらしいんです小村さん。
その車今こちらにありますか?大上。
はい。
(大上)調べますか?そうだな。
先ほどの婚約者の方ですがお会いになった事ありますか?いえ私は。
近々結婚する予定だって小村さんから聞いただけですから。
そうですか。
(小村達彦)なんかの間違いじゃなかでしょうか?結婚の予定があったんだったらわたくしどもに真っ先に話してくれるはずです。
ですが弟はそがん事は全く…。
そうですか…。
けどどうしてこがん事に…。
ようやく東京ドリームに一歩近づいたっていうのに。
東京ドリーム?アメリカンドリームの…あるんだったら東京ドリームだってあるはずばいって。
東京行って自分の事業ば起こして成功して金持ちになる。
それが弟の小さか頃からの夢だったとです。
それが今年の正月突然帰ってきて今度事業ば起こすけんって。
正直またかと思いました。
と申しますと?金の無心です。
弟が連絡してくる時はいつも金の無心でしたから。
でも…今回は金ん事は一切言わずあれよあれよという間に会社ば大きゅうしてこれで弟はもう大丈夫。
そう思うとった矢先に…。
弟さんが最後に金の無心にやってきたのはいつだったか覚えてらっしゃいますか?去年の11月の始めにガイシャは実家の兄に10万の金の無心をしています。
ですがそれから約ひと月後の12月8日に家賃18万のマンションを引っ越し外車を買いさらには今年の1月には会社を起こしてトータルで1000万近い金を使っています。
この金の流れがどうにも…。
逆玉の金持ちに出してもらったんじゃないのか?その婚約者なんだがそれもちょっと引っかかります。
どういう事だ?婚約者がいるという事を聞いたのはマンションの管理人だけで会社の社員たちも身内も一切そんな話は聞いた事がないと証言しています。
自宅に婚約者の写真とかツーショットの写真とかはなかったのか?そういった類のものは一切…。
そういやちょっと引っかかるな。
小村の事件はもう夕刊にも載っているしテレビのニュースでも報じている。
婚約者がいるんだったら本部に駆け込んできてもよさそうなもんだけどな。
小村の1年前の職業と住所わかりました。
職業は車のセールスです。
ジャパンモービル新宿営業所勤務。
主に新宿中野杉並を中心に回ってたそうです。
それから…住所なんですがこれが中野区弥生町のマンションなんです。
(坂本)区は違うが死体発見現場に近いな。
道路一本隔てた向こう側だ。
明日一応回ってみます。
もしかしたらガイシャはそこへ行ってた可能性が考えられますので。
まずは隣の部屋から回りますか?そうだな。
410号室南里美雪新宿区内のスナック勤務。
ここには5年前から住んでます。
(チャイム)
(宗方聖子)は〜い。
突然申し訳ありません。
新宿西署の牛尾と申します。
大上です。
今頃来るわけ?はい?なんにも盗られてないし面倒だから警察には届けるのやめるって言ってたのに。
やっぱり通報したんだ?彼女。
失礼ですが南里美雪さんでは?えっ?ああ…私は友達。
美雪ちゃんだったら近くの病院に行ってる。
病院?転んで怪我したんだって。
泥棒に入られるわ怪我はするわもしかしたら疫病神でも…。
(足音)あっ帰ってきた。
美雪ちゃん!警察の人。
(南里美雪)何か?南里美雪さんですね?そうですけど。
新宿西署の牛尾と申します。
大上です。
実は1年前の12月までお隣の411号室にお住まいだった小村秀彦さんの事でお話を伺えればと思いまして。
どういう事でしょうか?小村さんが亡くなられた事はご存じですか?知ってます。
ニュースで見ましたから。
南里さんは小村さんとお付き合いおありでしたか?いえ…顔を合わせれば会釈をする程度で話した事はありません。
そうですか。
小村さんの部屋は角部屋ですからお隣といったら南里さんのお宅だけ。
お隣同士ですしもしかしたらお付き合いがあったかと思いまして。
ここは一人暮らしの人がほとんどで住人同士の付き合いはほとんどありませんから。
でしたらおとといの夜この辺りで小村さんをお見かけなったというような事はありませんでしたでしょうか?いえ…私はお見かけしませんでしたけど。
そうですか。
お時間とらせて申し訳ありませんでした。
美雪ちゃん今の刑事さんに言った方がよかかな?おとといの事。
この時間じゃ聞き込みは無理ですね。
ほとんどが一人暮らしで勤めに出てるし。
近くだし寄って行こう。
そうですね。
現場100回だ。
行けば何か…。
あれっ?牛尾さん!違いますよ。
現場はあっちです。
もう1つの現場だ。
1年前の現場。
(大上)けど早いですよね。
もう1年経ったなんて…。
牛尾さん…!冴子さん。
びっくりした。
でもちょうどよかった。
あの…この人の事なんですけど。
冴子さんこの女性に心当たりあるんですか?いえ私今「東京迷宮」っていうシリーズものを連載しているんです。
東京で起きたさまざまな事件とその事件に関わった人たちのその後の人生を追ったルポなんですけど次の回でこの女性の事を取り上げたいと思って。
この人こそ東京っていう迷宮の中に閉じ込められて今でもまだそこから出られずにもがき苦しんでいる。
なんだかそんな気がするんです私。
東京には1300万の人が住んでいます。
日本にはその10倍の1億以上の人が住んでる。
なのに誰一人としてこの人の事知らないなんてそんなの絶対おかしいですよ。
悲しすぎますよ。
待っててね。
必ずあなたを見つけてあげるから。
ね。
浩平さんにはまずホームページを開いてほしいの。
「私を探して」っていうタイトルで。
(緒方浩平)ちょっと待てよ冴子。
記事の最後に何か情報をお持ちの方は新宿西署かこのホームページへって入れとくから浩平さんは寄せられた情報の整理と分析。
それからね…。
「それからね」じゃねーよ。
悪いけど俺は今回パス!協力出来ない。
実はね今ものすごいでっかい事件抱えてんだよ俺。
あっそう。
パスするならパスでいいわよ。
私は構わない。
でも牛尾さんはどう思うかしらね…。
はっ?何わけのわかんない事言っちゃってんだよ。
2人の友情にヒビが入るなんて事にならなければいいけど…。
えっ?ありがたいよ冴子さんの申し入れは。
1年前の事件なんてもう…みんな忘れてしまってる。
でも記事が出る事で新しい情報が入ってくる可能性もあるしそれが身元判明や犯人に繋がるヒントになるかもしれない。
(牛尾澄枝)でも本当冴子さんの言うとおりだわ。
東京には1300万。
日本には1億もの人がいるっていうのに誰もこの人の事知らないなんておかしいわよ。
悲しすぎるわ。
身元わかるといいわね。
そうだな…。

(冴子の声)「東京は人の海である」「人はその海の底の小さな小さな砂粒かもしれない」「けれどその砂粒1つ1つにはそれぞれの喜びがあり悲しみがありそして幸せな人生を生きていく権利があるはずである」「平成23年11月13日」「新宿区内の廃工場で1人の女性の絞殺死体が発見された」「身元を示すものは何1つ所持しておらず警察の懸命の捜査にもかかわらず1年経った今でも犯人はもちろんその女性の身元すらわかっていない…」「仮にこの女性をAさんと呼ぼう」「1000万の人が住むこの街で1億の人が住むこの国で誰一人としてAさんを知る人はいない」「まさにAさんは忘れられてしまった女性なのである」
(携帯電話)牛尾です。
ああどうも緒方です。
例の川村の記事の件でねちょっと気になる目撃情報が入ってきたんですよ。
本当ですか?お会いになるべきだと思いますよ。
この情報提供者だけには。
この女性に間違いありませんでしたか?
(田上映子)ええ間違いありません。
私このスーツには特別な思い出があるんです。
ですからこのお客様がお店に入ってきた瞬間「あっあのスーツだ!」って。
いつの事か覚えてらっしゃいますか?ああ…去年の11月の2週目だったと思います。
そのあと旅行に出てしばらくお店を閉めてましたから。
2週目は7日から13日まで。
殺害されたのが11日ですからここに現れたのは7日から11日までの間…という事になりますね。
初めてのお客さんでした?それとも…。
初めてのお客様です。
お連れの方も。
連れ?1人じゃなく連れがいたんですか?嘘信じられない。
本当。
(映子)2人で楽しそうに話してらっしゃいましたね。
九州弁でしたねお二人とも。
九州弁?2人とも九州弁で喋ってたんですか?
(映子)そうですけど…。
銀座に出てた頃の私の同僚が九州出身で九州弁は時々。
ですから「九州弁だわ」ってすぐに。
どんな感じの男でしたか?連れの男は。
うーん…30半ばから40くらい…?細身で…苦味走ったイケメンだったわね。
30半ばから40ぐらいの細身でイケメンで九州弁。
もしかしたら…この人じゃありませんか?その男性。
(映子)うん…似てるけど…でも1年も前の事だから…。
でも似てるわね。
ええ。
そうそう…この人だわこの人!間違いありません。
本部に連絡します。
あのこの2人の事なんですけどどういう関係に見えました?例えばこう…恋人同士みたいだったとか上司と部下とか…パトロンと愛人とか。
まだ深い関係じゃなかったんじゃないかしら。
あのバッグの事から考えると。
バッグ?この女性結構大きなボストンバッグを持ってたんですけど洗面所に立つ度にそのバッグを抱えていくの。
親しい仲なら化粧ポーチとかハンカチとかだけを持っていくでしょ?だからなんとなくまだ浅い関係なのかなって。
もう一度確認させてください。
去年の11月の2週目にこの店に現れたのはあの女性と一緒に来た連れの男はこの男性。
間違いありませんか?ええ。
小村が1年前まで住んでたマンションは女性の死体が発見された廃工場からそれほど遠くじゃありません。
それに小村は当時車のセールスをしており担当地区は新宿杉並それに中野です。
あそこが廃工場だという事を知ってた可能性は十分に考えられます。
モーさんは身元不明の女性を殺したのは小村…そう思ってるわけだ。
そこまでは…。
ですが…小村が事件直前に身元不明の女性と一緒にカフェバーに現れたのは事実です。
その事から考えると小村が1年前の事件となんらかの関わり合いがあった。
そう考えていいんじゃないでしょうか。
つまり2つの事件の根元は1つ。
そう思います。
1年前の事件があったからこそ今回の事件は…。
けどたった1人の…しかも1年も前の目撃証言だけで一緒にいた男を小村と断定していいんですか?目撃証言なんてもんは…。
今回は間違いないと思います。
目撃者の記憶は実に鮮明です。
ですから…。
いずれにしてもこの女性の身元だな…。
2人が親しげに九州弁を喋っていたとなるとまずは…唐津だな。
翌日私は小村秀彦の郷里である佐賀県の唐津に向かいました
(浅川刑事)失礼ですが新宿西の…。
牛尾です。
唐津署の浅川といいます。
どうぞ。
車待たせてありますけん。
牛尾さん唐津へは?初めてです。
どうぞ。
(浅川)よかところですよ〜唐津は。
別名舞鶴城と呼ばれる唐津城。
14台の曳山がずらり並んだ唐津くんちの曳山展示場。
幅が1キロ長さ5キロの虹の松原。
そいと40メートルの玄武岩の石柱立神岩。
荒波の浸食で出来た七ツ釜。
それと美しい棚田の景色もなかなか…。
そういえば唐津城の近くでしたね小村秀彦の実家は。
弟さんとお付き合いのあった女性だと思います。
この女性は九州弁で弟さんと楽しそうに話してたそうなんです。
身内…
友人たち…

学校…
身元不明の女性を知る人はいませんでした
(浅川)こいからどがんなさいます?唐津シーサイドホテルで人と会う約束をしておりますので。
あっ…牛尾さん!あ〜もうなんだかがっかりだわ。
ここへ来さえすればすぐにでも女性の身元がわかって2つの殺人事件は一気に解決!そう思ってたのに…。
私も少なくとも彼女の身元だけは判明すると思ってたんですが…。
それにしても一体どういう関係なのかしら?身元不明の女性と小村社長。
唐津に2人の接点がないという事は接点が生じたのは東京って事に…。
(仰木誠)あの…。
(仰木)あっ…。
お話し中申し訳なかです。
失礼ですが『週刊トピックス』の川村さんですか?ええ…。
あっ仰木さん!はい。
申し訳ありませんお呼びたてして…。
いえいえ…。
じゃあ私はこれで。
お土産なしの出張はつらいだろうな…。
はい?ん?あっいえ!あっどうぞ!あのお捜し中の女性について詳しいお話聞かせて頂けますか?はい。
結局この町に身元不明の女性と小村秀彦の接点を見つけ出す事は出来ませんでした
小村は高校を出た18の時から現在までほとんど唐津へは帰ってないそうなんです。
ですから2人に接点が生じたのは東京である可能性の方が…。
唐津だろうが東京だろうが2人の間に接点なんかあったのかね?だが小村があの女性と2人でカフェバーに現れたのは事実だし…。
モーさんがあんまり突っ走るもんだから気になって昨日目撃者のママさんに会いに行った。
そしたらあのママさん…。
うーんもしかするとこっちの人だったかも…。
あごの辺りが…。
うん…こっちの人だった。
間違いないわ。
生安課の島村刑事の顔写真だ!30代半ばの細身の九州弁を喋るイケメン男なんてごまんといる。
それをすぐに小村と結びつけて…。
はっきりした根拠もないのに2つの事件は1つだと断定して押しつけて突っ走って…。
モーさんは1年前の事件と今回の事件を無理やり結びつけようとしている。
俺にはそうとしか思えない。
だから小村殺しの捜査が混乱して進まないんじゃないのか?あんなに引っかかってた小村の婚約者の事は一体どうなったんだよ。
もうどうでもいいのかよ?100パーセントの根拠がない限り2つの事件は別件。
俺はそう思うよ。
山さんの言うとおりなんだよな…。
目撃証言の不確かさは今までだって散々…。
なのに1人で勝手に思い込んで突っ走って…。
あれじゃまるで1年生デカだ。
恥ずかしいよ。
でも時にはそういう事も必要なんじゃないの?え?1年生になるっていう事。
1年生になって失敗して大恥かいて反省して…。
それからまた新たな気持ちで一歩一歩積み上げてく。
なーんてね。
偉そうな事言っちゃった?あっねえもう1本つけましょうか?いやもういい。
今晩はやめとく。
え?澄枝の言うとおりなんだよな。
ベテランだからっておごっちゃいけないって事なんだよ。
あぐらかいちゃいけないって事だ。
時には1年生になってそこから一歩また一歩…。
本当にそのとおりだ。
明日から一から出直しだ。
そうね。
一歩また一歩。
私は再び小村秀彦殺しの捜査に戻り幻の婚約者を追い始めていました
こんにちは。
新宿西署の者なんですが。
存在しない?これだけ捜しても影すら見えない。
本当は婚約者なんていないんじゃないかって。
けどいないとなると金の流れがわからなくなる。
そうなんですよね…。
小村が去年の12月から1月にかけて使った1000万近くの金。
小村のためにそんな金を出してやった友人知人はいない。
となると婚約者がいてその婚約者が金を…。
やっぱりいるんですかね?婚約者。
金の流れ…。
バッグ…。
この女性結構大きなボストンバッグを持ってたんですけど洗面所に立つ度にそのバッグを抱えていくの。
まさか…。
トイレの中までバッグをね…。
彼女のバッグの中には金が…。
それもかなりの額の現金が入ってたんじゃないかって…。
え?その金が心配でトイレの中までバッグを持ち込んだ。
まあなくはない話ですよね。
ここまで身元が判明しないのはもしかしたらその金に原因があったんじゃないかって気がするんです。
どういう事ですか?それ。
表には出せないあるいは出したくない金。
例えば公金横領とかな。
公金横領!?公共機関や金融機関は1000万や2000万ぐらいの金だったら信用問題を考えて警察には届けず内々で処理してしまうケースが多々あると聞いています。
もしかしたら彼女はそういう金を…。
ちょっと…。
ちょっと待ってください牛尾さん!じゃあ牛尾さんは彼女は公金を横領した泥棒…。
犯罪者だってそうおっしゃるんですか?調べる方法はありますか?任せてください。
彼女が殺されたのが去年の11月11日でしょ。
そんな大金を長い事持ち歩いてたとは考えにくいから横領したとすれば少なくても10月以前って事はあり得ないから…11月に入ってからって考えていいですよね。
そうですね。
ちょっと待ってよ…。
となると彼女の勤務先は彼女の事を11月いっぱいでクビにしたって事になりますよね。
名目的には退職届が出されたっていう理由で。
そう思います。
牛尾さん…。
九州に限定しちゃって構わないですよね?よいしょ。
例の彼女の写真こんなふうに加工しちゃったんですけどこれ出しても構いませんかね?構いません。
責任は私が取ります。
ですが髪は黒い方がいいかもしれません。
え?殺される直前に髪を染めてるようでしたから。
なるほど。
変装のつもりだったって事ですね。
ちょっと待ってよ浩平さん…。
よしと…。
じゃあこれでアップしちゃいますよ。
どうしようかな…うん。
どうしても彼女にもう一度会いたい。
誰か捜して。
ひと目惚れバージョンでいきますね。
申し訳ありません。
捜査の途中で抜け出してきたものですから。
ああこれ早きゃ明日にはわかっちゃうと思いますから色々やってみます。
お願いします。
どうもです。
ちょっとねえ…牛尾さんねえ牛尾さんねえもう…!うーん!もうなんなのよ!2人して一体。
私納得出来ない。
もう絶対納得出来ない!彼女は被害者なのよ!殺されて捨てられて…1年も。
彼女が悲劇の被害者じゃなきゃ「東京迷宮」のヒロインにはふさわしくねえって事か?決まってるじゃない!そういう視線であの記事書いたのよ私は。
それなのにその彼女はかわいそうな被害者じゃなくてお金を横領した犯罪者だったなんて。
犯罪者には犯罪者の悪女には悪女の悲しみってやつがあるんじゃないのか?むしろそっちの方が「東京迷宮」のヒロインにふさわしいよ。
俺はそう思うけどね。
1人の女性が浮かび上がったのは翌日の夕方でした
勤務先が一緒だったっていう女性が送ってくれたんです。
でもなんかこのビラと感じが違うんですよね。
間違いありませんこの女性です。

副島成美それが彼女の名前でした
唐津市呼子加部島…そこが副島成美の郷里であり勤め先は呼子の町にありました
1年前までこちらにお勤めになってた副島成美さんですね?副島さんは去年の11月にこちらのお金を横領して姿を消した。
違いますか?副島さんと思われる女性の死体が発見されたのは去年の11月11日です。
殺害された動機はおそらくこちらから横領した金が原因だったと思われます。
本当の事を話して頂けませんか?どうでした?牛尾さん。
なんとか認めました。
横領が発覚したのは去年の11月7日の月曜日で金額は1400万。
1400万!?家族は母一人子一人で母親はこの時間だったら朝市に出てるそうです。
真ん中辺りでお店を出してると聞いたんですが。
私聞いてみます。
すみません。
加部島から来てらっしゃる副島節子さんのお店は…?節ちゃん…?ああ節ちゃんね。
節ちゃーんお客さん。
牛尾でございます。
(副島節子)刑事さんと記者さん…。
そんなら捕まったとねあの子。
いえ…。
去年の11月11日何者かに殺害された女性の死体が都内の廃工場で発見されました。
その女性が娘さんの成美さんである可能性が考えられますので…。
髪の形や色が違ってますし化粧も違うので感じは少し違うかもしれませんが娘さんじゃありませんか?出来る事なら直接ご遺体を確認して頂きたかったのですが身元がわからなかったため規定によって我々捜査員が立ち会い11月18日に荼毘にふさせて頂きました。
娘さんに…。
なんば確認しろっていうと?こん人が成美って確認しろっていうと?確認なんてしたら死んでしまうやんね。
あの子にも会えん事になってしまうやんね。
確認せんやったら何年でも何十年でも連絡がなくても行方わからんくてもどっかでひっそり生きとるって思えるやなかね。
金ば盗んだとんでもなか娘ばってんそんでも捕まらんでどっかでひっそり生きてるって。
いつかまた会える日のくるとて…。
なのに…なのに…!認めるもんねこんなもん…。
認めるもんね…。
(泣き声)あの日勤めから帰ってきてあん子言うたとです。
勤め辞めたけん明日から東京に行くっち…。
(節子の声)ふた言目には東京東京て…。
東京なんてとこはそがんよかとこやなかとよ。
あんたは東京ってとこば知らんけん。
(副島成美)また始まった。
負け犬の遠吠え。
成美!お母さんだって負け犬やなかね。
東京に憧れて就職したものの男に振られて1年足らずで逃げ帰ってきた負け犬。
お母さんは負け犬かもしらん。
だけどね…。
自分のためだけじゃなか。
母さんのためにも東京へ行くとやけんね私は。
母さんの敵を取るために東京へ行くと。
東京へ行って絶対幸せになってやる。
お金持ちになってすごかマンションに住んでイケメンと結婚してブランド品に囲まれて…。
何度言うたらわかっと?そがん夢みたいな事は絶対…!ねえ中野ってどがんして行くと?中野?成美さんは中野へ行くとおっしゃってたんですか?中野に知り合いのおるけんそん人のところに行くって。
名前お聞きになりましたか?その人の。
聞いたばってんお母さんには関係なかって。
刑事さん…あの子いつ殺されたんですか?去年の11月11日です。
そんなら5日…。
たった5日間しか東京におられんかったとねこん子…。
誰が殺したか私にはわかっとる。
東京!東京が殺したとよ!こん子を…。

(泣き声)成美!
DNA鑑定の結果身元不明の女性の死体は副島成美と断定され副島成美は母親の胸に抱かれて1年ぶりに故郷へ帰っていきました
スーツもイヤリングも副島成美のものじゃない?うん…イヤリングの方は副島成美本人が買って持っていた可能性はあるそうなんだがスーツの方は東京へ行くまで母親は一度も見た事がないそうなんだ。
じゃあ東京に出てきてからどこかで買った…。
そういう事ですか?けどあのスーツは今はどこにも…。
古着屋なら売ってるかもしれないけど。
副島成美の性格からすると古着屋で購入したとは思えない。
彼女は1400万の現金を所持してたわけだからどんな高級なブランド品でも買えたはずだし…。
だとすると誰かにもらったかあるいは盗んだって事も考えられますよね。
1400万もの金を盗んでるんですから。
それから副島成美は母親に東京の中野へ行くつもりだと言っていたそうなんだ。
中野?
(大上)だったら決まりですよ。
牛尾さんの言ってたとおりなんですよ。
副島成美は金を持って中野の小村のところに行った。
けど結局その金が原因で…。
いや副島成美は母親に中野というところへはどういうふうにして行けばいいのかと聞いただけであって小村のところへ行くとは言ってない。
(大上)いやでも…。
前に山さんが言ったように確証もないのに中野という言葉だけで小村秀彦と決めつけるのは危険です。
今はやはり2つの事件は別件と考えて捜査すべきだと思います。
2つの事件が1つの事件だとしたら2つの捜査はいずれ必ずどこかでぶつかるはずです。
2つの事件は1つと結論づけるのはその時でいいんじゃないでしょうか。
へえ〜ごちそうだな今夜は。
1年間あんなに気にかけてた人の身元がわかったんですもの。
このぐらいごちそうしてもいいんじゃないかなと思って。
けどつらい思いをさせたよあの母親には。
私なんだかわかるような気がする。
あのお母さんの気持ち。
え?東京が殺した…。
でも東京を逮捕するわけにはいかないし。
これからがあなたにとっては正念場だわね。
はい。
そうだな…。
明日からまた一歩また一歩だ。
そうね。
田上さんのおかげで副島成美さんは1年ぶりにお母さんのところへ帰る事が出来ました。
遅くなりましたが今日はその報告とお礼にと思いまして。
お礼だなんてそんな…。
やっぱり九州の人でしたか?ええ佐賀県の呼子の出身です。
呼子?ご存じですか?いえ行った事はないんですけどワンちゃんの郷里でしたから話は時々。
ワンちゃん?この前お話ししなかったかしら?銀座時代の私の同僚。
彼女はお店のナンバー1だったからワンちゃん。
私はナンバー2だからツーちゃん。
どんなに頑張ってもワンちゃんには勝てなかったわ。
だから私ワンちゃんに対してすごいライバル意識を燃やしてて口もきかなかったの。
そんなナンバー1とナンバー2がある晩よりにもよって同じあのスーツを着て出勤しちゃったもんだからもう大変!ナンバー1の方が呼子の出身であのスーツを持ってらっしゃったんですか?ええそうですけど。
その方のお名前教えて頂けませんか?だからワンちゃん…。
いえ美雪ちゃんですけど…南里美雪。
南里美雪?突然申し訳ありません。
お聞きしたい事がありまして。
なんでしょうか?南里さんはこの女性ご存じですか?副島成美という女性なんですが。
いえ存じません。
副島さんは1年前にこのスーツを着た状態で殺害され死体はこの近くの廃工場に遺棄されたんですが南里さんはこのスーツと同じスーツを持ってらっしゃるそうですね?前は持ってましたけど今はもうありません。
あの偽物騒ぎの直後に捨ててしまいましたから。
今はもう手元にはない。
そういう事ですか?ええそうです。
ありません。
南里さんは佐賀の呼子のご出身なんですね。
そうですけど…。
唐津市呼子…。
1年前までお隣に住んでらした小村さんは唐津市内の出身なんですがその事はご存じですか?いいえ知りません。
あの…前にもお話ししたと思いますけどお隣の方とは話した事ありませんから。
南里さんは5年小村さんは2年こちらに住んでました。
少なくとも2年間はお隣同士だったわけですが同郷であるという事は全く知らなかった。
そういう事ですか?ええ知りませんでした。
南里さんは去年の11月の事は覚えてらっしゃいますか?去年の11月?去年の11月11日の夜どこで何をしてたのか。
そんな前の事覚えてるわけないじゃないですか。
でしたら先月の11月20日の事は覚えてらっしゃいますか?小村秀彦さんが殺害された日の夜の事です。
あの日の午後10時頃から12時頃までの間どちらにいらっしゃいましたか?あああの日でしたらお店を休んで聖子ちゃんと一緒にここで朝まで飲んでましたけど。
聖子さんとおっしゃるのはこの前こちらにいらしたあの女性ですか?ええそうです。
宗方聖子。
南里美雪の高校時代の同級生で住所は呼子です。
(山路)重なったな。
南里美雪は副島成美が着用していたスーツを所持しており小村秀彦が1年前まで住んでた中野のマンションの隣の部屋に居住していた。
おまけに3人ともが同郷。
唐津の出身だ。
となると副島成美殺しと小村秀彦殺し2つの事件はその女南里美雪の存在で1つに重なった。
そう考えていいんじゃないのかな?私もそう思う。
2つの事件の鍵を握るのはその女だ。
(坂本)南里美雪…。
鍵を握る人物はもう1人います。
宗方聖子。
ごめんくださーい。
宗方さんいらっしゃいませんか?すみません。
ごめんください…。
あっ!わっ…わっ…。
(悲鳴)冴子さん。
牛尾さん!どうしてここに?
(早川雄二)死因はご覧のとおりで胸をひと突きにされたための出血死。
凶器はまだ見つかっとらんですが傷口から見て大型の裁ちばさみと見て間違いなかと思います。
死亡推定時刻は死後2日ほど経過してるようですので殺害されたのはおそらくおととい12月8日土曜日の昼頃だと思われます。
土曜日の昼…。
ああ牛尾さん第一発見者の記者ですが牛尾さんの知り合いでもあるし供述におかしな点なかったですけんホテルの方に帰しました。
成美さんのお母さんの追加取材をしてそれからもう一度仰木さんに会おうと思って。
仰木さん?ほら牛尾さんもこの前このホテルでお会いになったでしょ?あの人。
あああの時の…。
彼東京に行ったまま行方不明になってしまった恋人を捜してるんです。
初めてのお給料で彼女にプレゼントしたのが副島成美さんがしていたイヤリングと同じものだったんです。
そのイヤリングの写真を載せた私の記事見てびっくりして連絡くれたんですけど。
コーヒー?コーヒー2つ。
彼の話聞いてるうちに「東京迷宮」の素材がもう1つ出来たって気がしてもう少し詳しい話聞きたいなと思ってそれで彼に連絡したんです。
でも仰木さん漁に出てて2〜3日は帰れないっていうんでじゃあ仰木さんたちの事をよく知る人を紹介してくれないかって頼んだら高校の同級生で宗方聖子って人がいるからって。
仰木さんと宗方さんは高校の同級生なんですか?そう言ってましたけど。
冴子さん…仰木さんが捜している女性その女性南里っていいませんか?南里美雪。
ええそうですけど…。
牛尾さんご存じなんですか?美雪さんの事。
弟は収入も安定しとらんでしょっちゅう物盗ったらしかです。
牛尾さん先ほど宗方聖子の弟の事情聴取を終えたんですがちかっと妙な言葉が出てきましてね。
妙な言葉?ええ。
宗方聖子の母親は認知症が進んでえらいひどか状態になっとって姉と弟どっちが面倒見るかでしょっちゅうトラブってたそうなんです。
ところが半月ほど前…。
(宗方武)老人ホーム?もう決めたけんね入れるの。
入居金500万月々の費用12万。
ちょっと待たんね。
姉貴そがん金一体どこにあるっていうとよ。
俺はそがん金…。
あんたに期待なんかしとらんし。
お金は全部私が出す。
そん代わりこの店売って東京へ引っ越すけんね。
東京?青山のマンションに住んで赤坂銀座六本木…。
これからが私の本当の人生の始まりってわけ。
私さ宝くじ当たっちゃったんよね。
永遠に当たり続ける宝くじ。
永遠に当たり続ける宝くじ…。
牛尾さん持ってきました。
ご苦労さん。
(警笛)おーい!記者さーん!川村さーん!彼女元気やったばい。
美雪生きとった!川村さん!生きとったんですよ!美雪さんに会ったの?いつ?どこで?直接会ったんやなかとです。
民子が3日前の土曜の昼にバスセンターの前でばったり彼女に会ったって連絡くれて。
牛尾さん。
仰木さん新宿西署の牛尾と申します。
ああ!こん前の…。
民子さんという方はどういう…?高校の時の同級生です。
海岸通りで丸八って食堂をやってる…。
はあ〜でもよかった…。
本当によかった!行方がわからなくなってもう5年も経っとるしどこかで死んどるかもしれんって思っとったから民子から連絡もらった時はもう嬉しくて嬉しくて…。
聖子があがん事になったというとに本当は喜んだりしちゃいかんとやけどでも…。
仰木さん。
仰木さんに見て頂きたいものがあるんですが…。
はい。
これは仰木さんが以前南里美雪さんにプレゼントしたイヤリングと同じものですか?そうです…そうです!同じものです!はあ…懐かしか〜!これプレゼントした時もう少し高いのでもよかよって言ったんです俺。
でも彼女はこいがよかって。
こいはあんたが働いとる玄界の海と同じ色やけん絶対こいにするって。
そん時俺絶対彼女と結婚しようって…。
あっ…ハハッ。
すいません妙な事を。
誠!なんばしよっとか魚が腐るぞーっ!今行く!また連絡します。
じゃあ。
牛尾さん…違いますよね?民子さんっていう人が美雪さんに会ったっていう時間は宗方聖子さんが殺された時間と重なるわ…。
でも違いますよね?絶対…違いますよね…。

(浅川)奥さんが南里美雪さんに会ったとは3日前の12月8日土曜のちょうど昼頃。
これ間違いなかですか?
(木崎民子)はい。
(民子)美雪ちゃん!?もしかしたら美雪ちゃんじゃなかね!
(民子の声)美雪ちゃんに会うのは5年ぶりやったしちょうど昼時だったけんうちの店でお昼ば一緒にって誘ったとです。
でも今日中に帰らんばならんけんって…。
それでそこで10分ほど立ち話ばしたとです。
どんな話をなさったんですか?どんなって…。
高校の時の友達の話ですけど。
仰木さんの話も出ましたか?ええ話しましたけど。
どういう話だったのか具体的に話して頂けませんか。
1年前の殺人事件が2つ目の殺人を呼び2つ目の殺人が3つ目の殺人を招いた…
そう思いました
そしてその3つの殺人の中心にはっきりと一人の女の姿が見えていました
南里美雪…。
じゃああん日はおばあさんのお墓参りのために呼子に行った。
(浅川)そういう事ですね?そうです。
宗方聖子さんはちょうどそん日南里さんが呼子にいらしたそん日に何者かに殺害されたわけですがその時間は…昼の12時頃から午後の2時頃までの間南里さんはどちらにいらっしゃったとですか?祖母のお墓にいました。
(浅川)そん事を証明してくれる方どなたかおんさっとですか?さあどうかしら?誰にも会わなかったから。
また疑われるわねそっちの刑事さんに。
南里さん。
先日お話しした副島成美さんのお母さんがおっしゃったんです。
娘を殺したのは東京だって。
東京という街が殺したんだって。
東京が殺した?でも違います。
成美さんを殺したのは…人です。
この街に住んでる人間です。
それも特別な人じゃありません。
どこにでもいるごく普通の人です。
泣きもし笑いもし怒りもするごく普通の人。
愛しもし憎みもしそして後悔もして涙を流すごく普通の人。
副島成美さんや小村秀彦さんを殺した人はそういう人だと思っています…私は。
泥棒に入られるわ怪我はするわで…。
泥棒…。
(携帯電話)牛尾ですが。
ちょっと気になる情報を耳にしたんですけど。
この情報は牛尾さんの耳に入れといた方がいいなと思って。
副島成美が着用してたスーツそれにイヤリングは南里美雪のものであり副島成美が所持してた1400万の現金は小村秀彦が使ったとみて間違いないと思います。
これらの事から副島成美殺しは南里美雪と小村秀彦2人の犯行と考えていいんじゃないでしょうか。
副島成美殺しが2人の犯行だとしたら事業家として成功した小村にとって南里美雪の存在は大いなる脅威になったはずです。
南里美雪は殺人という自分の犯罪を知ってる唯一の人物なんですから。
ましてや小村は大事な結婚を控えた身です。
婚約者の手前なんとしてでも…。
小村の婚約者わかったのか?この結婚だと思います。
『週刊エピソード』の来週号のゲラ刷り原稿です。
(西谷)結婚って会社と会社の…。
(山路)ウェブユニバース社といえば今や世界でも5本の指に入る大企業だ。
この事が世間に発表されていたとしたらマスコミは小村のもとへ殺到したはずです。
新聞週刊誌ラジオテレビそれにネット…。
あらゆる場所に小村の名前が出顔がさらされます。
人は成功した事業家として小村を見るはずです。
ですがたった一人だけ…。
殺人犯として自分を見る女がいる。
南里美雪は副島成美殺しに関して何か重大かつ決定的な証拠を握ってたんじゃないでしょうか。
小村はどうしてもそれを手に入れたかった。
だから泥棒に入った。
泥棒に?おそらくそれに失敗したんだと思います。
だから2度目は南里美雪の命を…。
(大上の声)あの怪我!あの車ですね。
小村は自分の車で南里美雪をひき殺そうとしたんだ。
けど2度目も失敗したってわけだ。
だとすると小村は返り討ちにあったって事ですか。
もう一度南里美雪を殺そうとして逆に殺されてしまった…。
宗方聖子はその事に気づいてたんだ。
その事をネタに南里美雪を脅した!おそらくそうじゃないかと。
ですがこれは全て私の推測であって証拠は何もありません。
モーさん南里美雪が握っている副島成美殺しの重大かつ決定的な証拠っていうのはなんなのか見当つくか?わかりません。
おそらく副島成美の所持品…例えば免許証とか財布とかそういうものに小村の指紋がついてたとしたらそれは決定的な物証になるんじゃないでしょうか。
どういう事だよ?捜査本部が間違ってるって。
だって仰木さんから聞いた美雪さんと牛尾さんから聞いた南里美雪とではもう天と地ほども違うんですもん。
まるで別人!そんな事お前…。
彼女は1歳の時に両親が相次いで蒸発しちゃったもんだから父方のおばあちゃんに育てられたんですって。
そのおばあちゃんっていう人がきつい人で経済的にも精神的にもかなりつらい思いをしたみたいなんだけど美雪さんはそんな事は微塵も感じさせない明るい人だったって言うの。
学校時代の友達も美容師になってからの友達もそれに銀座時代の知り合いもみんな言ってた。
彼女の怒った顔や泣いた顔は見た事がないって。
いつも人の事を気遣ってニコニコ笑ってる優しい人だったって…。
仕送りし続けていたおばあちゃんが亡くなってこれからはようやく自分の人生が生きられる。
好きな人と結婚して子供も産んで…ってそう言ってたっていうのよ美雪さん。
なのにある日突然姿を消してしまい5年後に現れたのが今の南里美雪。
3人もの人を殺した冷酷な殺人犯。
ん〜もうどう考えてもおかしいわよ!別人としか思えないじゃない。
それこそが東京迷宮なんじゃねえか?
(緒方)東京っていう街はさそれほどまでに人を変えてしまう街だって事だよ。
彼女もまた東京という迷宮の中でもがき苦しみ…そして変わらざるを得なかった一人…。
そんな気がするな。
どうしても納得がいかないんです。
どう考えても人を殺せるような人じゃないんですよ美雪さんっていう人は。
冴子さんの気持ちは…。
牛尾さんたちは副島成美さんを殺したのは小村社長と南里美雪の共犯。
そう考えてるわけですよね。
捜査上の事は…。
動機は成美さんが所持していた1400万の金欲しさ。
そうですよね?だったら違うわ。
小村社長はともかく美雪さんは絶対に事件には関与していません。
美雪さんっていう人は小さい時からなんに関してもすごく潔癖だったんですって。
おばあちゃんに厳しく育てられた事もあってとにかくお金に関してはもう異常なほど潔癖だったそうなんです。
中学生の時友達4〜5人で博多へ遊びにいったそうなんですけどその時どこかのお店でおつりを30円多くもらっちゃったらしいんです。
そしたらあとからその事を知ってどうしようもう返さなきゃ返さなきゃってもう真っ青な顔でそう言ってたらしいんですよ。
30円ぐらいいいじゃないって友達が言ったらもうすごい顔して世の中には使っていいお金と使ってはいけないお金がある。
このお金は絶対に使ってはいけないお金なんだって結局そのお店を探し回って30円を返したっていうんです。
そんな人がお金欲しさに人殺しなんかするはずないじゃないですか。
使えないお金奪ったってしょうがないじゃないですか。
そうでしょ?それでも牛尾さんが美雪さんが人を殺したとおっしゃるならこういう考えもあります。
え?南里美雪は南里美雪じゃない。
南里美雪は南里美雪じゃない?牛尾さんたちが追っている殺人犯の南里美雪は本物の美雪さんじゃないという事です。
何言ってるんですか冴子さん。
そんな事あり得ませんよ。
現に高校時代の友人の木崎民子さんが…。
もうどうしても納得出来ないんですよ!あ〜もうこうなったら直接本人に会って自分の目で確かめるしか…。
冴子さん。
捜査は今詰めの段階に入ってます。
南里美雪に会う事はやめて頂きたい。
どうしてですか?冴子さんの事だ。
会ったら最後何もかも全部話してとことん突っ走るに決まってます。
それは捜査妨害になります。
捜査妨害?冴子さんがそういう行動をお取りになったらそれは即捜査妨害と見なします。
結構です。
そう見なしてください。
いずれ牛尾さんにもおわかりになると思いますから。
じゃあ。

(坂本)副島成美が着用していたスーツとイヤリングそれに副島成美が所持していたはずの1400万の現金。
スーツとイヤリングは南里美雪が所持していたものとみて間違いないだろうし1400万の現金は小村が奪ったとみて間違いないだろう。
これらからみて副島成美殺しは小村秀彦ならびに南里美雪2人の犯行と考えられる。
(坂本)だがこれらはいずれも状況証拠であって2人が共謀して副島成美を殺したという決定的な証拠にはなり得ない。
副島成美殺しこの第1の事件を突破しないと第2の殺し小村殺しも第3の宗方聖子殺しも解明する事は不可能だ。
南里美雪が所持していたと思われる副島成美殺しの重大かつ決定的な証拠。
おそらく…。
副島成美の所持品…。
一番大きな所持品は1400万の現金だったわけだけどなあ…。
美雪さんっていう人は小さい時からなんに関してもすごく潔癖だったんですって。
そんな人がお金欲しさに人殺しなんかするはずないじゃないですか。
使えないお金奪ったってしょうがないじゃないですか。
そうでしょ?あるかもしれない。
重大かつ決定的な証拠は残されてるかもしれません。
1パーセント…。
いえ0.1パーセントにも満たない確率かもしれませんが決定的な証拠は処分されずどこかに残されてる可能性が考えられます。
モーさんそれ一体…。
(牛尾の声)捜査は今詰めの段階に入ってます。
南里美雪に会う事はやめて頂きたい。
冴子さんがそういう行動をお取りになったらそれは即捜査妨害と見なします。
捜査妨害が怖くてスクープが取れるか。
はあ〜情けない。
私とした事が結局部屋にもね…。
いいお天気ですね。
それに…きれいな空。
本当…。
そういえば久しぶり…空なんて見るの。
田舎にいた時はしょっちゅう空や海を見てた。
すごくきれいなところなの。
海も…空も。
夜にはイカ釣り船のいさり火で海がキラキラ光ってて…。
優しい人がいて…。
時々思った。
なんでずっとあそこにいなかったんだろうって。
どうして東京なんかに出てきたんだろうって…。
東京へ来た時は嬉しかった。
見るもの聞くもの…食べるものまで全てがきれいでしゃれてて…。
でも楽しいのは1年だけだった。
やだ…バカみたい。
行かなきゃ。
ねえ。
帰ったら?海も空もきれいな町へ。
きっと待ってくれてるわよ…優しい人。
牛尾さん!あっ!まさか逮捕状出たんじゃ…。
牛尾さん間違ってますよ!美雪さんは人殺しが出来るような人じゃない。
3人も人を殺せるような…。
急ぎますから。
ねえ!間違ってますよ!家宅捜索の令状です。
1年前に殺害された副島成美さんの事件に関して南里さんの自宅こちらの410号室に重大な証拠品が隠されてる疑いが生じましたのでご協力頂けますね。
諦めようモーさん。
もう何も出ねえよ。
南里さんはレンタル倉庫などの類は借りてらっしゃいませんか?いいえ借りてませんそういうものは。
勤め先にロッカールームなどはありませんか?ありますけど2人で使ってますし鍵もかけてません。
そうですか…。
もういいな?モーさん。
ご協力感謝します。
申し訳ありませんでした。
鍵…?鍵を開けて頂けませんか?鍵はかけてないわ。
どうぞご自由に。
お読みにならないんですか?この本。
消印は11月24日。
もうひと月近く前に配達されてます。
なぜこのままにしておかれるんですか?開けて頂けますか?帯封には呼子信用金庫とあります。
1年前まで副島成美さんが勤めていた信用金庫です。
なぜこのお金がここにあるのか説明して頂けますね?このいずれからもはっきりした3つの指紋が検出されました。
1つは1年前に殺された副島成美さんの指紋。
1つは先日殺された小村秀彦さんの指紋。
もう1つは今のところ誰の指紋かは…。
時々…。
ううんしょっちゅう後悔したわ。
あの時なんであんなに親切にしちゃったんだろうって。
何もかも全部あの時から始まったんだから。
(成美)すみません!あの本町ってどがん…。
ああ…どう行けばいいんでしょうか?アハハハッ!えっ?あっごめんなさい。
あなた九州でしょう。
(成美)えっ?言い方でわかる。
私も九州なんよ。
佐賀県の呼子。
嘘!?私も呼子です!呼子の加部島!やだ…本当に!?信じられん!よりによってこがんところで加部島の人に声をかけらるんなんて。
からかわれたのよ彼女。
中洲のクラブでひと月ほど前に出会った男だって言ってたけどそんな男の言葉を信じて出てくるなんてバカを通り越してなんだかかわいそうになって…。
(美雪)だったらうちへ来る?って…。
うんオッケー。
うわっ!えっ髪の形とメークの仕方だけでこがん変わるなんて…。
なんか別人みたい!気に入った?うん!がっばい気に入った。
ねえこれやったら私も美雪さんみたいに銀座デビュー出来る?
(小村秀彦)ああ珍しかね。
九州弁の客なんて。
どっから来たと?小村とは彼が引っ越してきた時からの関係。
実家のお兄さんからの宅配便を預かった時があって…。
あなた唐津?私呼子って…。
それからはお互いの部屋を行ったり来たり。
楽しかったの九州弁で喋れるのが。
でもまさかあの2人があんな事するなんて思ってもみなかった。
(美雪の声)歯が痛くなって店を早引きして家に帰ってきたら…。
(成美)こしょばいとって。
やめりいよ…。
(成美)もう明かりば消したらいかんて…。
(小村)よかろうもん。
楽しもうぞ。
な?
(成美)本当にいかんって…。
鍵ぐらいかけときよそがん事するんやったら。
やだ…誤解せんでくださいよ。
ちょっとふざけてただけじゃなかですか。
ふざけてただけ?人の服ば勝手に着て人のイヤリングば勝手につけて人の男にちょっかい出しとってふざけてただけじゃなかて。
そういう事ふざけるんじゃなかよ!なんすっとよ!あ…ああ…。
ちょっと!なんばすっとよ…やめて!
(成美)ああっ…!なるほど…こういう事やったとね。
やめて!なんかおかしかと思うたら…。
(小村)トイレの中までこがん大荷物持ち込んでほらっ!
(成美)全部私のお金!ほら…大丈夫落ち着けよ!ほら。
な。
俺が全部…俺が全部もらってやるから。
うっ…うう…ああっ!あっあっ…!
(美雪の声)止めなきゃと思った。
やめさせなきゃって。
でも…体が動かなかった。
声も出なかった。
(美雪の声)ただ見てるだけで…。
それからの事はほとんど覚えてない。
気がついたら朝になってて自分の部屋で寝てて…。
本当よ嘘じゃない。
副島さんの死体を廃工場へ運んだのも小村であってあなたは何もしていない。
そういう事ですね?副島さんの他の所持品はどうしたんですか?
(美雪)わからない。
多分小村がどこかへ捨てたんだと思う。
あのあと小村とは一度も顔を合わせてないから…。
そのうち黙ってどこかへ引っ越しちゃって…。
ほっとした。
嬉しかった。
顔を合わさずに済んだらあんな事は夢だったんだって思えるような気がして…。
(美雪の声)でも…。
使ってしまえばいい。
何度も何度もそう思った。
でもどうしても…。
このお金はあなたにとっては使ってはいけないお金だった。
だからどうしても使えなかった。
そういう事ですね?2年間の付き合いで小村はあなたのそういう性格をよく知っていた。
だから置いたままにしてるかもしれないと思ったわけだ。
殺人の決定的な証拠。
逆玉にのった小村はなんとしてでもこの金を取り返したかった。
(美雪の声)あの時は気がつかなかった。
でも…。

(美雪の声)あの時はっきりわかった小村だって事。
だから…。
話し合う必要がありそうね私たち。
そうだ。
1年前のあの廃工場で話し合うってのはどう?あそこで私を殺せば死体を運ぶ手間が省けるじゃない。
フフ…。
なんてね。
今晩私の部屋へ来て。
夜の10時頃。
そして夜がきて…。
思ったとおりだった。
(美雪)うっ…。
ううっ…。
うう…ああっ…。
ああっ!
(咳)うっ…。

(ドアの開閉音)
(美雪)大丈夫だったんだって思った。
死ぬなんて思ってもいなかった。
でも心配だったから私…。
(聖子)美雪ちゃん!お見送り?今そこでイケメンと会った。
美雪ちゃんの彼氏なんやろ?あん人。
ケンカでもした?顔しかめとったよ彼。
違うわよ!私はごみを出してきただけ。
来るなら来るで連絡ぐらいしてよ。
ごめんごめん。
また弟とやっちゃってさ。
(美雪の声)その時は気がつかなかったみたいだけどあのあと刑事さんたちが来て…。
美雪ちゃん今の刑事さんに言った方がよかかな?おとといの事。
言わん方がよか?美雪ちゃんが見送った人ん事。
わかった。
言わん事にする。
小村って人が殺された日の夜美雪ちゃんはひと晩中私と一緒におった。
それでよかよね?それからの事はもうわかるでしょう。
永遠に当たり続ける宝くじ…。
10万50万100万…。
ついには…。
300万!?母さんが借金しとって300万返さんとこん店売れんとよ。
とりあえず300万。
明日朝一番で持ってきて。
よかね?へえ…フフフ…。
(美雪)お金かき集めて400万持ってってなんとかこれでおしまいにしてほしいって頼んだ。
でも彼女笑って言ったの。
何言ってるの?って…。
これからが本当の始まりじゃないって…。
もうダメだと思った。
殺すしかないって…。
(浅川)凶器のはさみばってん店にあった裁ちばさみば使った。
そうだね?今どこにあんねん?そのはさみ。
捨てました。
小学校の前の道の側溝に。
間違いなかね?署に戻ります。
(美雪)刑事さん。
成美さんのお母さんに伝えてください。
成美さんを殺したのは東京なんかじゃないって。
私だって。
私を憎んでくださいって。
みんなに謝りたい。
成美さんにも小村にも聖子ちゃんにも。
家族の人たちにも…。
南里さん。
本当の事を話してくれませんか?…え?あなたは嘘をついている。
2つの嘘を…。
私は嘘なんかついてないわ!何もかも全部本当の事を…。
1つ目の嘘は副島成美さんを殺した時の事です。
嘘じゃない!私は成美さんに手をかけたりなんか…。
あなたが副島成美さんに向けた激しい怒り…。
それは…。
小村さんにちょっかいをかけられた事でもあのスーツを勝手に着られた事でもない。
あなたの怒りの原因は…。
これだったんじゃありませんか?このイヤリングはあなたにとっては単なるアクセサリーではなかった。
あなたにとってこれは生まれ育った呼子の町であり玄界灘であり仰木誠さんだった。
東京へ出て来てから12年。
あなたは海の色をしたこのイヤリングを通して呼子の町を玄界灘をそして仰木さんを見ていた。
違いますか?
(成美の声)やだ…誤解せんでくださいよ。
ちょっとふざけてただけじゃなかですか。
(美雪の声)返しなさいよ。
返しんしゃいよそのイヤリング!返すわよ。
返せばよかとでしょ。
なんが銀座に出とるよ。
銀座に出とる人がこがん安物のガラス玉のイヤリングなんてするはずなかでしょ。
安物の女には安物のイヤリングがお似合いばい。
どうせ安物の男からもらったもんやろ。
なんねこがんもん!副島成美さんを殺害したのは小村であり死体を遺棄したのも小村。
あなたのその供述に嘘はないと思います。
ねえ刑事さん…。
あなたはもう1つ大きな嘘をついてる。
いい加減に…。
それは…。
宗方聖子さんに対する殺意です。
宗方さんに脅されていた事は事実です。
でもあなたはそれが原因で宗方さんを殺したんじゃない。
木崎民子さんに会い知ったからです。
本当の事を…。
私が声かけるけん今晩みんなで集まろうさ。
喜ぶばい仰木君。
仰木君?仰木君…もう2人もお子さんいるんでしょ?ええ?やだ〜何言っとると。
結婚もしとらん人にどうして子供なんかおるとね。
えっ結婚してないって…。
仰木君結婚したんでしょう?そうよ嘘よ。
なんもかんも全部嘘。
仰木君は結婚なんてしとらんし子供だってもちろんおらんよ。
だったら何で?どうしてそんな嘘を…!東京よ。
東京?私だって東京へ行きたかった。
あんたみたいにきれいになってあんたみたいな華やかな暮らしのしたかった。
青山の高級マンションに住んで銀座で買い物して六本木のしゃれたレストランで食事ばして…。
けど私はあの母さん抱えて東京どころか博多へだって…。
5年前初めて東京のあんたの所行った時あんたは青山の素敵なマンションに住んどった。
高そうなブランド品の服ば着てきれいか爪で紅茶ば淹れてくれた。
あんたあの時聞いたよね?仰木君どがんしとう?って。
あん時はっきりわかった。
美雪ちゃんまだ仰木君の事ば好いとるって。
だけん言うたと。
あれ美雪ちゃん知らんかったん?仰木君結婚したとよって。
あん時あんたすごか顔ばした。
真っ青になってこわばって…。
でもなんでもなかふうば装って言うたとよね。
そうって。
あん時わかった。
あんたば苦しめるとはこん嘘が一番きくんだって。
どうして?どうしてそんなに私の事憎むの?私聖子ちゃんになんか悪い事した?だけん言うたやろ。
東京だって。
だってそんな事…。
うらやましかとを通り越すと憎らしくなるんよ。
憎くて憎くてたまらんかったあんたん事。
聖子ちゃん…。
東京へ行くたびにあんたに電話ばするたびに嘘の物語を作ってあげた。
幸せな幸せな仰木家の物語。
若くてきれいで優しい奥さんがおって子供が2人。
かわいらしい女の子と男の子1人ずつ生まれて…。
けど本当まぬけよねあんたって。
私の嘘なんて電話1本で見抜けたはずばい。
仰木君に電話して結婚したの?って聞きさえすればそれでよかったんだから。
でもあんたはそがん事せんかった。
ひたすら私の嘘ば信じて自分ば捨ててっただけ。
(聖子)嘘っぱちの仰木家が幸せになればなるほどあんたは不幸せになった。
そしてついには人殺しになっちゃった。
ねえ仰木君に会いに行ったら?大喜びで結婚してくれるよ彼。
あんたが人殺しって事は黙っとったげる。
でもあんたは私にとっては永遠に当たり続ける…。
そうだねえ仰木君と結婚してよ美雪ちゃん。
あんたんためだったらどがん事したってお金作ってくるよ彼。
あんたより高額な当たり券かもしれん。
仰木君の方が。
(笑い声)それがあなたの殺意だった。
宗方聖子さんがあなたについていた嘘への怒り悲しみ絶望。
それが…。
違うわね。
私は嘘なんかついてない。
これ。
これが私にとってそんなに大事なものだったとしたら私はどうしてこれを彼女の耳にぶら下げたままにしておいたの?それほど大事なものならたとえ片方だけになっても大事に取っておくんじゃない?違う?決別だったんじゃないでしょうか。
決別?殺人の手伝いをしてしまったんだからもう帰れないという思いです。
呼子の町にも玄界灘にも。
それから仰木さんの所へも…。
そうよ。
さすがね正解。
これを捨てる事で…捨てたの私は。
呼子への思いも玄界灘への思いもそれから…。
仰木君への思いも。
何もかも全部きっぱり。
そんな私がなんで嘘をつかれたなんていう理由で聖子ちゃんを殺したりなんかするわけ?呼子の町とも玄界灘とも仰木君とももう決別したんだから。
嘘つかれようがつかれまいがそんな事関係ないじゃない。
どうでもいい事じゃない。
そうでしょう?副島成美さんに向けた怒りの原因がそのイヤリングにあったと認めたらそのイヤリングは証拠品として裁判所に提出される。
そんな事は耐えられない。
そういう事ですか?違うって言ってるでしょう。
私があの人に怒りをぶつけたのはあの人が…。
宗方聖子さんに対する殺意は宗方さんのついた嘘にあったと認めたら仰木さんは証人として法廷に呼ばれる可能性がある。
そういう事ですか?違うって言ってるじゃない!何度言えばわかるのよ!私は嘘なんかついてない。
何もかも全部本当の事話したのよ!私が成美さんに怒りをぶつけたのはあの人が私の男に手を出したから。
聖子ちゃんを殺したのはゆすられて腹が立ったから。
私は嘘なんかついてない!絶対ついてない!どうやら考えすぎだったようですね。
30円を返すために必死の思いで博多の街を走り回ったあなたが嘘なんかつくはずはなかった。
考えすぎでしたわたくしの。
刑事さん…。
刑事さん。
刑事さんが初めてうちへ来た時あの時私思ったんです。
もしかしたら私はこの人に捕まるのかもしれないって。
2度目に会った時ははっきりわかった。
私はこの人に捕まるんだって。
3度目に会った時成美さんと小村を殺したのはごく普通の人だって刑事さんがおっしゃった。
愛しもし憎みもし…。
後悔もして涙も流すごく普通の人だって…。
あの時私思った。
この刑事さんに捕まえてもらいたいって。
そしたらそのとおりになった…。
刑事さんに捕まえてもらえてよかったと思ってます。
本当によかったって…。
ありがとうございました…。
もっと高かとでもよかよ。
ううんこいがいい。
これ誠さんが働いとる玄界の海と同じ色やけん私こいがいい。
どう?ああ…似合うとる。
12年前…。
彼女ここで言うたとです。
美容師としての腕ば磨きたかけん東京に行きたかって。
(仰木)俺は博多でも十分じゃなかかと思ったんだけど彼女がどうしても東京じゃなきゃいかんって…。
そいでなんかケンカ別れのごたあなってしまって…。
(ため息)なんでみんな東京に行きたかとですかねえ。
どこがよかとやろう東京の。
ようやく手紙ば書けます。
手紙…?手紙ば書きたくても今まではどこにおるかわからんかったけん。
でもこいからはどこにおるかわかっとるわけやけん。
よっしゃー!帰って手紙書きます。
俺は美雪ちゃんば好いとるって。
玄界の海と同じぐらいいや…玄界の海よりもっと大好きだって。
色々お世話になりました。
じゃあ…。
いつか彼女が帰って来たら2人で必ず川村さんと刑事さんを招待します。
そん時はうまい魚ば山ほど食わしますけん。
楽しみにしちょってください。
じゃあ…。
東京という迷宮の中に閉じ込められてもがいて苦しんでたのは成美さんじゃなくて美雪さんの方だったんですよね。
でもそれももう終わり。
いつか必ず帰って来るわ美雪さん。
海も空もすごくきれいで優しい人が待ってくれているこの町へ。
冴子さん。
今回は本当にありがとうございました。
冴子さんのあの記事のおかげで凍りついていた事件が解け出して動き出して解決して。
冴子さんのおかげです。
本当にありがとうございました。
捜査妨害なんてしてませんよね?私。
申し訳ありません。
あの時はつい…。
だったらごちそうして頂けません?牛尾さん。
え?呼子名物イカの活き造り!どうもありがとうございました!どうもー!味見していってよこれ。
あっなんかお土産買っていこう。
今回はちょっとだけ役に立ってくれた浩平さんに。
おはようございま〜す。
はいおはようございます!なんかいいのあります?ヤリイカ食べてみて〜!んっ!もっちもち!
(民子)おいしいやろ?うん!あっこれええと…。
東京が殺した
あの言葉を思い出していました
政治経済文化
全ての中心地であり発信地である東京
今日もまた人は夢とチャンスをかけてこの街を目指しているのだろうと…
2014/03/22(土) 12:00〜14:25
ABCテレビ1
終着駅の牛尾刑事VS事件記者冴子・森村誠一の『悪の器』[再][字]

九州唐津〜海色のイヤリングの殺意!!私を探して…女は東京に殺された!?

詳細情報
◇番組内容
大好評“牛尾vs冴子”シリーズ第12弾!身元不明の女性殺害事件と、ゲーム会社社長が殺された事件を繋ぐ謎…。“悪の器・東京”に迷い込んだ者たちが織り成す人間サスペンス!!
◇出演者
片岡鶴太郎、水野真紀、岡江久美子、船越英一郎、宮本真希、賀集利樹、熊谷真実、佐藤仁美、北原佐和子、秋野太作
◇原作
森村誠一
◇スタッフ
【脚本】橋本綾
【音楽】大野克夫
【監督】池広一夫

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

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