今日はどうもありがとうございました。
明日ですが大災害で起こる心の不調とケアについてお伝えします。
明日も是非ご覧になって下さい。
(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(拍手)
(柳亭小燕枝)いっぱいのお運びさまでありがたく御礼を申し上げます。
これといっておもてなしもできませんがどうぞお終いまでごゆっくりとお遊びを願っておきまして。
よく噺のほうでは江戸っ子なんというものを扱ってございますが今東京で生っ粋の江戸っ子というのがほとんどいないそうですね絶滅寸前だそうです。
それというのも江戸っ子というのは規約が大変に厳しく出来ておりまして最低でも二親が三代続かないと本当の江戸っ子でないそうですね。
「芝で生まれて神田で育ち玉川の上水で産湯を使った」というようなもう折り紙付きの江戸っ子はほとんどいないそうです。
我々噺家のほうにも江戸っ子という者がほとんどいなくなりました。
かく申す私も江戸っ子じゃございませんでね親父は代々東京なんでございますがおふくろが埼玉でございますからいわゆるハーフでございますね。
(笑い)誠に残念な事ですが噺家にもいなくなりました。
この江戸っ子というのが「どうも同じ東京の空の下で生活を共にしていて江戸っ子がいないというのはさみしくてしょうがないからなんとかしなくちゃいけない」というのでせんだって東京都議会におきまして江戸っ子の規約が改正になりました。
「もう三代続かなくてもいいだろう。
東京へ越してきて3か月経ったら…」。
(笑い)「みんな江戸っ子にしよう」という。
さぁこうなりますと江戸っ子だらけですからいくらか楽しさが出てくるんじゃないかと思うんですが。
この江戸っ子なんというのは強情っ張り意地っ張りなんという連中が多かったそうですね。
もう若い者が10人ぐらい集まるとそのうち7〜8人は強情っ張り意地っ張りという。
強情もある程度はよろしいでしょう。
ところが上に悪がつきまして悪強情てぇ事になりますとこらぁもうどうにも始末の悪いもんでございますが。
「こんにちは。
いらっしゃいますか?」。
「はいはい。
誰だい?お〜お〜何だい八五郎さんじゃないか。
さぁさぁこっちへお入んなさいよ。
うん。
何だい?今日は」。
「ええ。
今日上がったのは他でもねえんですけれどもねチョイトお願いしたい事がありまして上がったような訳なんですよ」。
「ほう。
どんな事だい?」。
「ええ。
どんな事ってね大した事じゃねえんですよ。
ええもう訳もねえ事なんでねひとつ何も聞かずに『分かった』と言ってね首を縦に振ってもらいてえんですよ。
お願いしますよひとつ」。
「フ〜ンどんな事だい?」。
「いえ。
どんな事ってね大した事じゃねえんですよ。
もう造作のねえ事ですから『うん』と言ってもらいてえと思いましてね」。
「ウ〜ンだからさぁ私にできる事なら『うん』とでも言うがねできない事を請け合ってもこれはしかたのない事で」。
「いいえ。
できますよ。
訳もねえ事なんですから。
お願いしますよ」。
「いえ。
だからさぁ話だけでもしてごらんよ。
ね?その話を聞いて私にできる事なら納得できる事なら首を縦に振ろうじゃないか。
どんな事だ?」。
「いえ。
どんな事ってね訳もねえ事なんですよ。
お前さんならもうすぐできる事なんですからねひとつ『うん』と言って下さいな。
お願いしますよ。
ね?うう『うん』ですよね?『うん』でしょ?『うん』ですね?」。
「いえ。
だからさぁ話だけ…」。
「話なんぞしなくていいんですよ。
造作もねえ事なんですから」。
「だからどんな事だ?」。
「どんな事ってね訳もねえ事なんでね。
ええ。
でもう金貸してもらいてえんですよ」。
(笑い)「あきれたねこの人は。
ウ〜ン。
そらぁお前さんの事だからねご用立てをしても構わないがね。
一体いくら欲しいんだい?」。
「ええ50円ばかりね貸してもらいたいんですよ」。
「あ〜そりゃ駄目だな」。
「ええ?」。
「いや〜そりゃねそんな大金は家にはありませんよ」。
「いや。
そんな事はないでしょう?これだけのね手広く商売をしてるんですから50や100の金が無えって事はねえでしょう?」。
「いえ。
そういうもんじゃないんだよ。
ね〜。
『あるように見えて無いのがお金』だよ『無いように見えてあるのが借金』の譬だ。
うん。
そりゃいきなり飛び込んできてねそんなまとまった大金は私の所には無いよ」。
「そんな事はないよ。
あるよ」。
「あるよって事はないだろ?」。
「フフフじゃあ財布見せてごらんなさいよ」。
(笑い)「ばかな事を言っちゃいけないよ。
ええ?そりゃ無理だよ」。
「いえ〜お願いしますよ。
ねぇ?なんとかそこをひとつね」。
「お前さんもね無理な事言っちゃいけないよ。
いきなり飛び込んできて。
そりゃ私にだってね『3円とか5円なんとかしてくれ』てぇならそりゃどうにでもできるがねいきなり飛び込んできてお前そうやってまとまったお金は無いよ私の所には」。
「弱っちゃったな〜そりゃな〜。
いえ〜私はね今日はもうどんな事があってもお宅で借りるってもう決めてきたんですから」。
(笑い)「いや。
そんな事をお前勝手に決められたって困るだろ?無いものは無いんだから」。
「いえ〜弱っちゃったなそりゃな〜。
いやその金が無いってぇとね今日中に私のね男がもう立たねえんですよ。
ええ男を下げちゃうような事になるんでねなんとかひとつお願いしますよ」。
「いや。
駄目だよ。
無理な事を言ってね昔から『無い袖振れない』てぇ事を言うだろ?うん。
そりゃ駄目だよ」。
「そうですか〜?じゃあね〜こうなったらしかたありませんよ。
できるまでね私はここで待たせてもらいますから」。
(笑い)「ばかな事を言うんじゃないよ。
おい。
だってお前何だろ?今聞いてれば今日中にそのお金が無いとお前の男が下がるとか何とかいうんだろ?お金ができるまでそこで待ってて後日にできたってしかたのない事だろ?ええ?いいのかい?それで」。
「ええ。
こうなりゃもうしょうがありませんよ。
私だってねこの町内じゃ強情っ張りだ意地っ張りだって言われてんですからね。
借りるって決めてきたんですから」。
(笑い)「とにかくね貸してくれるまではここに座って動きませんから」。
「何だな私が借金取りに遭ってるようだよ」。
(笑い)「第一お前その金一体何に使うんだい?」。
「いえ何に使うったってね別にこれ飲み食いをしようてんじゃねえんですよ。
ええ。
まぁ話をしなきゃ分かりませんがねまぁ私が世話になってるご隠居がいるんですよ。
で『どうだい?商売はうまくいってるかい?』ってこう言われましたからね『うまくいってねえんだ』ってこう言ったんですよ。
そうしたら『じゃあ私が貸してあげよう』てんでね親切でお金を貸してくれた訳ですよ。
ええ無利息無証文でね。
で私はそれを借りた時に思ったんですよ。
『他人が困ってる時にこうやって貸してくれたお金だから恩のあるお金だ恩金だ』と思ってね『こういう大切なお金はいつまで長いこと借りてちゃいけねえ。
ひと月経ったら返そう』。
まぁ自分の胆に決めた訳ですよ。
それ今日が晦日でしょ?持ってかねえてぇとね何だか自分の心持ちに嘘をついたような事になりますからね。
それが嫌なもんですからねこうやって無理を承知でお願いに上がってるんですよ」。
「ほうほうそうかい。
うん。
そのご隠居さんに借りた時に『恩のあるお金だからいつまで借りてちゃいけない。
ひと月経ったら返そう』。
自分の胆に決めたのか。
『それを返さないと嘘をついたような事になる』。
あ〜なるほどな。
いや〜大したもんだ。
いやさすが江戸っ子だよ。
うん気に入ったね。
そういうあれならなんとかしようじゃないか」。
「そうですか?じゃあひとつよろしくお願いしますよ」。
「いやだけどね今は無いよ私の所には。
さっきも言ったように。
だからこれからね知り合いをこう何軒か回ってくるからそれでこしらえてくるからしばらくここで待っといで」。
「そうですか?どうも無理にお願いをしてすみません。
じゃあひとつよろしくお頼申します」。
「いや〜八っつぁんハハハ待たせたな。
うん。
なんとかできたよ。
ええ?じゃあここにねこれ何だ50円入ってるから。
ええ?これ持ってって返しといで」。
「え〜どうもありがとうございます。
ええ。
これ持ってってね向こうへ返しゃ私の心持ちがいいもんですから。
ええ。
ありがとうございます。
じゃあ遠慮なくこれお借りしときますから」。
「うん。
お前さんもね向こうへ行って話をしてごらんよ。
さっきの。
ああ。
向こうの人だって喜ぶてぇやつだ。
帰りにまた寄りなさいよ。
お茶をいれて待ってるから」。
「ええ。
どうもありがとうございました。
ごめんなさい。
ハハハハありがてえなどうもな〜。
ええ?あの人もこの町内じゃ強情っ張りだ意地っ張りだって言われてるけれどもねやっぱり俺にはかなわねえな〜。
人間というものはね一押し二押し三に押し押して押して押しまくらなくちゃいけねえからな。
うん。
押したおかげでこうやって借りられたってぇやつだよ。
いい按配だ。
ごめんください。
こんにちは」。
「はい。
あ〜あ〜いらっしゃいまし。
お父っつぁん。
あの〜八五郎さんがお見えになりました」。
「お〜そうか。
じゃあこっちへ通しなさい。
はいはい。
あ〜あ〜八っつぁんさぁさぁさぁさぁ。
遠慮しないで。
まぁまぁこっちへおいで。
ええ?その座布団を当ててな。
うん。
どうしたい?」。
「ヘヘヘどうも。
ご無沙汰ばかりしておりまして」。
「いや。
無沙汰は互いだよ。
ええ?商売のほうはうまくいってるかい?」。
「ええ。
エヘヘどうもね『うまくいってるかい?』と言われるとどうにもしょうがねえんですけれどもね」。
「あの〜これ」。
「何だい?」。
「ええ?」。
「何だよ?」。
「エヘヘ何だよって忘れちゃったんですか?」。
「いや。
忘れてないよ。
私がお前に用立てたお金だろ?」。
「ええそうなんです。
え〜どうもありがとうございました」。
「ふんふん返しに来たのか?うん。
私は何だなお前に言ったはずだな。
『楽な金があったらいつでもいいから持っておいで』と。
見たところ楽そうじゃないな」。
「フフフハハ図星ですよ。
楽じゃねえんですよ。
ええ。
今月ぐらいまずくいっちゃった月はねえんですよ。
ええ。
もう割った話しますとねこの金だってこれ私の金じゃねえんですよ。
ええ。
今脇でもってね『貸せない』ってぇのを無理やり借りてきたんですよ。
ヘヘヘ。
でもまぁ持って上がりましたんでひとつこれ納めて頂きたいと思いまして」。
「冗談言っちゃいけないよ。
脇で借りてきた?それも貸せないてぇやつを無理やり借りてきたのか?そんな事をして私がいつ『返せ』とお前に言った?ええ?そんな金私は受け取れない。
楽な金があったら持っといで。
うん。
これもう一遍な向こうへ持ってって返しといで」。
「エヘヘヘ。
いえ。
それはそうですけどもねまぁそう言わずにこれひとつあの〜納めてね」。
「いや。
駄目だよ。
ええ?楽なお金ができたら持っといで。
向こうへ持って返しときな」。
「エヘヘ弱っちゃったなそらぁな〜。
いえ。
でもそこをね」。
「駄目だてんだよ」。
「いえ。
そこを…」。
「そこも上もないよ」。
(笑い)「いいから持ってって返しといで。
行かないのか?行かなきゃ行きやすいようにしてやるから待ってろ。
おい伜。
そこにな木剣があったろ?それ持ってこい」。
(笑い)「この野郎一遍張り倒して…」。
「行きますよ。
冗談じゃねえな全くな〜。
何だい強情な隠居だね〜。
いいじゃねえかな〜せっかく持ってきたんだからな〜。
ウ〜ン向こうで受け取らねえてんじゃ俺が持ってたってしょうがねえやこれ。
返しに行くか。
どうも」。
「あ〜あ〜もう帰ってきたのかい?さぁさぁこっちおいでよ」。
「へえ。
え〜先ほどは」。
「うん。
どうしたい?」。
「ええ」。
「あれ?何だい?行かなかったのか?」。
「いえいえ。
行ったんですよ」。
「どうしたんだ?」。
「ええ向こうへ行ったらね私の顔を見てね『楽そうじゃねえな』ってんですよ。
それからまぁこっちもね『楽じゃねえ』ってそう言ったんですよ。
そうしてね『この金も脇で貸せないてぇのを無理やり借りてきた』ってそう言いましたらね怒っちゃいましてね。
真っ赤になって『そんな事をしてまで返せと私がいつ言った。
もう一遍向こうへ持ってって返してこい』ってこう言うんですよ」。
「いや。
だからさぁあの話をしたんだろ?『自分の心持ちに嘘をついたようになる』」。
「いえいえ。
それもね話す間も何も無えんですよ。
『伜。
木剣持ってこい』って。
やりかねませんからねあの隠居は。
木剣で張り倒されたら痛いですから。
ええ。
横っ飛びになってすっ飛んできましたけれどもね向こうで受け取らねえってもんですからねじゃあ私が持っててもしょうがありませんからこちらにまぁお返しに上がったんですよ。
どうもありがとうございました」。
「何ばかな事言ってんだよ。
冗談言っちゃいけないよ。
私だってこれ受け取れないよ」。
(笑い)「いえ。
そこをひとつなんとか」。
「いや。
駄目だよ。
もう一遍向こうへ持ってって返しといで」。
「いや。
だって向こうじゃ受け取らねえって」。
「私も受け取らないよそういうお金は」。
「じゃあ困るじゃありませんか。
向こうで受け取らねえこっちで受け取らねえ私が間に入って困るじゃありませんか」。
(笑い)「そりゃお前さんが蒔いた種だよ。
ええ?私はねお前さんの心持ちがあまりにも立派だから気に入ったからね?お金が無いんだよ?それへ方々頭を下げて七所回りして頭を下げてこのお金をこしらえてきたんだ。
お前さんの心持ちはそれで済むかも分からないがね私の下げた頭これどうしてくれるんだい?ええ?私の下げた頭はどうするんだよ?」。
「いやそれそれを言われるとね。
いえ。
それはですから私が謝りますよ。
ええ。
どうもありがとうございました。
でも向こうで受け取らないてぇもんですからこちらでね受け取って頂かないと」。
「冗談言っちゃいけないよ。
ええ?向こうへ持ってって返しといでよ。
第一その隠居だってそうだろ?せっかく持ってきたものを受け取らない。
そんなとんちきがあるかい。
その隠居ここへ呼んでこい」。
(笑い)「私が小言を言ってやるから。
ええ?いいからもう一遍向こうへ行って返しといでよ」。
「いや。
返したってね向こうで受け取らねえ」。
「だから私も受け取らない。
駄目だよ」。
「ウ〜ンね〜なんとか…」。
「ええ?いいから向こうへ持って返しときなよ。
行かないのか?行かなきゃ行きやすいようにしてやるから待ってろ。
おいおっ母。
そこにな薪割りがあったろ?」。
(笑い)「それ持ってきな。
これ一遍張り倒してやる」。
「いやいやそれ乱暴な事しちゃいけませんよ。
ええ?なんとかなりませんかね?」。
「何ですね2人ともさっきから子供の喧嘩みたいに。
第一八っつぁんあなたが良くないでしょ?『脇から無理やり借りてきた』なんてぇから向こうで受け取らないんですよ。
そういう時にはね『無尽に当たった』とか何とか言ってごらんなさいよ。
で『そのうちから溜まった店賃やなんぞもきれいに払って…』」。
「冗談言っちゃいけませんよおかみさん。
私は店賃なんぞね一つだって滞らせた事はねえんですから」。
「でもまぁそう言ってごらんなさいよ。
で酒屋だとか米屋だとか八百屋だとかそういった所の付けもきれいに払ってあとに…」。
「冗談じゃありませんよ。
そんな所に借りを作るような男じゃねえんですから私は」。
「いえ。
でもそう言ってごらんなさいよ。
ね〜『あとに余った楽なお金でございますから納めて下さいまし』。
そう言えば向こうだって受け取らない事はないでしょう?ねえ?お前さん」。
「あ〜そうだよ。
嬶の言うとおりだ。
そうやって持ってきゃいいやな」。
「ね〜私はね嘘がつけねえんですよ。
嘘を言おうかなと思うと舌がつっちゃって何も言えなくなっちゃうんですよ。
ええ。
おかみさん。
ひとつ受け取ってもらえませんかね?」。
「いいえ。
私だって受け取りませんそういうお金は。
どうしてもてぇなら薪割りを持ってきますよ」。
「ゴホン」。
(笑い)「もう一遍向こうへ行ってねよく話をしてごらんよ。
ね?いいから行ってきな」。
「そうですか?分かりました。
じゃあもう一遍ね行ってみますから。
どうもすみません。
何だ一日仕事になっちゃったね〜」。
(笑い)「すぐに済むかと思ったがね〜冗談じゃねえな全くな〜。
ゴホン。
こんにちは。
ごめんなさい」。
「誰だい?ええ?あ〜あ〜フハハハ八っつぁんじゃないか。
さぁさぁさぁさぁこっちお入りお入り。
ええ?どうもさっきはすまなかったな。
うん。
いや今さんざ伜にな小言を言われたとこだよ。
『何でそうお父っつぁん大人気ない真似をして』てんでなさんざん油を搾られたところだよ。
すまなかったね。
気にしないでおくれよ」。
「あれ?また出したな?」。
(笑い)「受け取らないってそう言ったろ?分からない男だな」。
「いえいえ。
とにかくね私の話を聞いて下さいな。
お願いしますよ。
ええ。
実はこれ借りた金でも何でもねえんですよ」。
「そうか?」。
「ええ。
あの〜先方のおかみさんの言う事にはですね…」。
(笑い)「何だ?」。
「いえいえ。
実はこれ何ですよ無尽に入ってましてねその無尽に当たったんですね」。
「ほう。
いくらの無尽だ?」。
「ええ。
いくらの無尽…。
エヘヘ。
まぁまぁ当たりましてね。
でこの中から滞った店賃なんぞもきれいに払いましてね」。
「お前何か?『雨露をしのぐ』てんだぞ?その店賃を溜めるような事をするから商売をしたってうまくいかねえんだ」。
「冗談じゃねえよ」。
(笑い)「店賃溜めるそんな…。
まぁあの〜あの〜払いましてね。
それから酒屋だとか米屋だとか八百屋だとか方々の付けもきれいに払いましてね」。
「お前は何か?そんな所まで借りがあるのか?」。
「そんな…。
借りなんぞあるけえコンチクショウ」。
(笑い)「何だな?」。
「いえいえ。
まぁまぁそらぁみんな出鱈目なんだ嘘なんだよ。
いや実はねこれ借りてきた金なんだ。
借りてきた金ですけれどもねこれをお前さんに貸してもらった時に私はそう思ったんですよ。
ね?『他人が困ってる時に貸してくれたお金だから恩のあるお金だ。
恩金だ。
こういう大事なお金はいつまでも借りてちゃいけねえ。
ひと月経ったら返そう』。
自分の胆に決めた訳ですよ。
それを今日は晦日でしょ?返さねえとなるとね自分の心持ちに嘘をついたような事になりますからそれが私はもう耐えられねえもんですからねまぁこうやって持って上がったんですよ。
ひとつそんな訳ですからね受け取ってもらいてえんですよ」。
「ふん。
何かい?私が貸した時に『恩金だからひと月経ったら返そう。
それを返さないと自分の心持ちに嘘をついたようになる』。
あ〜そうかい。
いや〜偉い偉い。
うん。
さすが江戸っ子だ。
気に入ったよ。
うん。
そういう何なら受け取ろうじゃないか」。
「へえ。
どうも。
長い事ありがとうございました。
助かりました。
じゃあこれひとつ」。
「うん。
受け取ろう。
だがなひと月と決めたんだな?お前にこれを用立てたのは一日の昼だ。
今日は晦日だ」。
(笑い)「明日の昼これを持っといで」。
(笑い)「そうしたら受け取るから」。
「でもね〜なにもそんな堅い事を言わなくても」。
「いや。
堅くないよ。
お前がひと月と決めたんだから明日の昼持っといで。
そうしたら受け取るから」。
「ね〜そらぁね返すこっちだって半日でも一日でも早く返すから溜飲が下がるんですから」。
「何だ?溜飲が下がる?何べらぼうな事を言ってるんだい。
めったに溜飲なんぞ下げさせないよ。
ええ?」。
(笑い)「お前がひと月と決めたんだから明日の昼持ってきな。
そうしたら受け取るから」。
「あ〜そうですか。
分かりましたよ。
私だってこの町内じゃ強情っ張りだ意地っ張りだって言われた男ですからねこれ今日持って家へ帰ってね明日昼過ぎに出直して来るなんてな事はできませんから。
分かりました。
へいじゃあここへねお金を置いて明日の昼までここに座って待たせてもらいますから」。
(笑い)「動きませんから」。
「お〜そうか。
お前がそこに座って明日の昼まで動かないてぇのか。
お〜面白いな。
よし分かった座ってろ座ってろ。
私もここに座ってるから。
うん」。
(笑い)「いいか?その畳の線からなこっちへ金を出すんじゃないぞ。
ええ?」。
(笑い)「座ってろ。
フフン。
だけどな敵の末じゃないからなただにらめっこしてても面白くない。
一杯やりながら待つか?な〜。
おい伜。
八っつぁんと一杯やるから酒の支度をしておくれ。
うん。
それからな何…?あっすき焼きにでもするか。
ええ?牛肉のいい所。
何だい?『八っつぁんは牛肉が嫌いです』?お前何か?牛肉嫌いか?」。
「ええ。
あんな物は食った事がねえ大嫌えですから」。
「あ〜そうか。
いや嫌いでも何でもいいんだよ。
今日は牛肉でお前に一杯飲ませると…」。
(笑い)「もう決めたんだから」。
(笑い)「どんな事があってもお前に食わせるから」。
(笑い)「あ〜そうですか。
分かりましたよ。
別に牛肉を食ったからって死ぬような事はねえでしょうから死んだ気になって食いますから」。
「ハハハそうか。
よしよし。
おいおい。
話は決まった。
じゃあな酒はあるか?うん。
じゃあお使いに行ってきておくれ。
こっちでな火をおこして待ってるから。
ああ頼んだよ。
おい。
しょうがないね伜の奴は一体どこ行っちまったかね?遠い所行く訳じゃなし。
もう2時間近くも経つよ。
火も何度も立ち消えだよ。
あなたチョイト待ってておくれ。
今これからね様子を見に行ってくるから。
家へ帰っちゃちゃ駄目だよ。
動いちゃ駄目だよ。
待ってておくれ。
いいかい?何だなあきれ返ったな。
どこへ行っちまったかねまぁ。
ええ?しょうがない。
あらあらあらっ何だ?あそこに立ってるのは伜だよ。
おいおいおい伜。
そこにいるのは伜じゃないのかい?」。
「あ〜お父っつぁん」。
「お父っつぁんじゃないよお前一体お使いに何時間かかってるんだよ?ええ?何をしてるんだ?」。
「ええ何をしてるってねここまで来たらねパッタリとこの人と出くわしちゃったんですよ。
この人が脇へ避けたら向こうへ行こうと思うんですがね」。
(笑い)「脇へ避けねえんですよ」。
(笑い)「しょうがねえからここで立ってるんですがね」。
「あ〜そうかい。
おいおいお前さん。
何だって伜の前へ立って動かないんだよ?狭い道じゃないんだよ。
ええ?脇へ避けたらいいだろう」。
「この人何かい?お前さん所の伜さんかい?こんな強情な人はいねえな〜。
パッタリと私の目の前立っちゃったんだよ。
この人が避けたら向こうへ行こうと思うんだがね。
私はね他人と待ち合わせをしてたんだよ。
もう2時間近く経ってんだから」。
(笑い)今更行ったって間に合わねえやな。
しょうがねえからまぁこの人が退くまでと思ってねここに立ってるんだよ」。
「アハハそうかい。
いや〜伜大したもんだ。
結構結構。
うん。
お前さんもまた何だな相当なもんだな。
うん。
よし伜動くんじゃないぞ」。
(笑い)「お父っつぁんここで見ててやるから」。
(笑い)「どっちが勝つか。
うん。
だけどなそんな事もしてられないんだよな〜。
家で八っつぁんが待ってるんだよ。
弱ったなこらぁな〜。
うん。
おいおい伜。
お前いいから使いに行っといでいいから行ってきな」。
「冗談言っちゃいけませんよお父っつぁん。
私が動いたら負けになりますからね」。
「いや〜お前の代わりに俺が立っててやろう」。
(拍手)
(打ち出し太鼓)2014/03/08(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「意地くらべ」[解][字][再]
落語「意地くらべ」▽柳亭小燕枝▽第653回東京落語会
詳細情報
番組内容
落語「意地くらべ」▽柳亭小燕枝▽第653回東京落語会
出演者
【出演】柳亭小燕枝
ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:19692(0x4CEC)