クローズアップ現代「インフルエンザ 二つの“異変”」 2014.02.06

白くなって死んでいく細胞。
インフルエンザウイルスによる感染です。
流行のピークを迎えつつあるインフルエンザ。
ある異変が起きています。
2009年、世界中で大流行したウイルス、H1N1の感染が拡大しているのです。
5年前の大流行ではほとんどの人は軽い症状で済みましたが1万4000人もの子どもたちが入院するなど深刻な事態も起きました。
今シーズンもまたこうした被害が広がらないか医療現場は警戒を強めています。
一方インフルエンザ対策の要予防接種を巡っても異変が。
ワクチンの接種を受けた高齢者の間でも昨シーズン集団感染が相次いで発生。
国の研究機関がワクチンの効果が低下していたと抜本的な対策を求めたのです。
インフルエンザを巡って起きている2つの異変。
最前線からの報告です。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
インフルエンザの流行がピークに近づいています。
大きな流行が起きているおそれを示す警報レベルの地域が全国の33。
ご覧の赤い部分ですけれどもこの33の都府県に出されています。
現在、流行しているインフルエンザウイルスはこちらの3つです。
H1N1、A香港そしてB型です。
このうち高齢者が重症化しやすいといわれているA香港型を巡って気になる指摘が出ています。
インフルエンザウイルスはとても変化が早いとされていますがA香港型の対策の要となっているワクチンが効きにくくなっているのではないかという指摘です。
因果関係ははっきりとしていませんが実際、予防接種をしたのに集団感染した高齢者施設も出ています。
ワクチンはなぜ効きにくくなるのか。
どんな対策が求められているのでしょうか。
一方、H1N1という型ですが2009年から2010年新型インフルエンザとして大流行したものです。
患者の容態が急速に悪化しウイルス性肺炎など重症化するケースが見られました。
ここ数年鳴りを潜めていましたが今シーズン再び流行し始めているのです。
新型のインフルエンザは最初に大流行を起こしたあと毎年、冬に現れる季節性インフルエンザとなって流行を繰り返していくことが知られています。
H1N1にとって、今シーズンは季節性インフルエンザとしての初めての本格的な流行の年で今後、長い間このインフルエンザウイルスと向き合っていかなくてはならないと見られています。
子どもや妊娠している女性が重症化していないか。
今、医療の現場ではH1N1の感染が急拡大する中で警戒を強めています。
都内にある小児科のクリニックです。
今週に入って、インフルエンザに感染した子どもが急激に増えています。
はい、よくできました。
上手ね。
多くの子どもたちが重症化した2009年の大流行。
医師は、同じような重症化のケースが出てこないか心配しています。
2009年、世界中で大流行したウイルス、H1N1。
当時、多くの人が感染し医療機関に殺到しました。
重症化が見られたのは主に幼い子どもや、糖尿病など持病のある人たちでした。
子どもだけでも1万4000人が入院する事態となりました。
あの大流行から、5年。
今シーズン、再び感染を拡大させるH1N1。
専門家は、このウイルスが季節性インフルエンザとして定着し毎年のように大きな流行を引き起こすのではないか危機感を募らせています。
懸念される重症化の広がり。
国のインフルエンザ対策の研究班の代表、森島恒雄教授です。
先月中旬以降、子どもが重症化したという報告が全国から届き始めています。
森島さんに重症化のケースを報告した静岡県の病院です。
先月、7歳の男の子が呼吸困難に陥り、救急搬送されてきました。
対応が遅れていれば命に関わる危険な状態でした。
男の子の肺のX線写真です。
片方の肺が白く濁り治療が難しいウイルス性肺炎になっていました。
高熱を出してから僅か9時間で急激に症状が悪化していました。
なぜ、H1N1は肺炎などの重症化を引き起こすのでしょうか。
通常インフルエンザのウイルスは主に、のどや鼻の奥で増殖します。
一方、H1N1は2009年に大流行した際さらに奥の気管支や肺で増殖したことが分かっています。
現場の医師は、今シーズンもこうした傾向が続いていると感じています。
重症化のケースが徐々に増え始めている今森島さんは特に気をつけなければいけない子どもたちがいるといいます。
H1N1の感染が広がる中で新たな懸念も指摘されています。
タミフルとラピアクタという2種類の抗インフルエンザ薬が効きにくい、耐性ウイルスが見つかったのです。
このタイプのウイルスに感染した患者が多数確認されている札幌市の衛生研究所です。
市内の医療機関から、毎週持ち込まれる患者のウイルスを詳しく分析しています。
これまで検査したH1N1の17の検体のうち9割が薬の効きにくいウイルスでした。
札幌で見つかったのと同じタイプのウイルスはほかにも全国4か所で確認されています。
これまでのところタミフルなどが効きにくかったことが原因で重症化したという患者は報告されていません。
ただ、今後このウイルスが幼い子どもや妊婦などにも広がった場合重症化を防げなくなるようなケースが起きないか監視していく必要があるといいます。
今夜のゲストは、ウイルス学がご専門で、インフルエンザの現状についてもお詳しい東北大学大学院教授の押谷仁さんです。
短時間でウイルス性肺炎を引き起こすこのH1N1が、季節性に移行しつつあると。
そしてすでにタミフルに耐性を持ったウイルスも出てきた。
ハイリスクの方々にとっては、本当に心配な事態ですね。
ただ、このウイルスもそうなんですけれども、普通の季節性のインフルエンザでもそうなんですけれども、インフルエンザの場合は、大多数の人にとっては、感染しても、重症化しないで、薬を飲まなくても自然に治っていく病気です。
ただし、ごく一部の人に重症化すると。
それが問題で、インフルエンザの場合には、季節性インフルエンザでも、毎年、数百万人から1000万人ぐらいの人が感染すると。
この分母が非常に大きいということが、ごく一部の人が重症化するとしても、かなりの数の人が毎年、重症化してしまうと。
これがインフルエンザの大きな問題点だということになります。
自分がハイリスクがどうかということも、なかなか自分では分からないと思うんですけれども、その中でじゃあ、インフルエンザになったときに、自分のインフルエンザの、そのウイルスというのは、タミフルに耐性があるものかどうかというのは、医師の所に行けば分かるんですか?
一般の医療機関でやっている検査では、そこまでは分かりません。
もっと詳しい解析をしないと分かりませんので、普通の医療機関では、耐性のウイルスなのかどうかということは、分からないということになります。
そうなると、どの薬を処方すればいいのか、タミフルに代わる薬もあるわけですよね?
そうですね。
ほかの薬に対しては、まだ感受性があるというふうに考えられていますんで、そうすると、どの薬を使うかということは、地域でどんなウイルスが流行しているのか、A香港なのか、H1N1なのか、H1N1であれば、どの程度、その耐性がその地域で広がっているのかと。
あとはですね、個々の患者さんのリスクファクターとか、そういうことを総合して、どういう薬をどういうふうに使っていくのかということを判断していくということが必要になってくると思います。
しかし、このH1N1が季節性になっていくと、タミフルに耐性を持ったものが、これから広がっていくのか、あるいは重症化しやすいということが続いていくのかどうか、気になりますね。
そうですね。
このH1N1というウイルスは、2009年に流行したときにも、日本でも比較的、通常のA香港の場合には、高齢者と小さな子どもが、重症化する大半を占めるんですけれども、H1N1の場合には、日本でも、もう少し若い世代の成人、40代、50代ですとかね、特にリスクファクターを持った基礎疾患のある人とかですけれども、そういう人が重症化しているという傾向がありますので、今後、このウイルスが季節性インフルエンザとして定着していく中で、どういう人たちが重症化していくのかということは、注意深く見守っていく必要があると思いますし、タミフルの耐性に関しても、今現在は、全国的に広がっている状況ではありませんので、この耐性がどの程度広がっていくのか。
H1N1の大半を占めるような、そういう事態が起きるかどうかと、そういうことを注意深く見守っていく必要があると思います。
モニタリングというのをやはりきちっと行っていかなければいけないということですね。
さあ、続いては高齢者が重症化しやすいといわれていますA香港型です。
このウイルスに対して、ワクチンが効きにくくなっているという指摘が出ています。
ワクチンですけれども、3つのどのウイルスにかかっても、効果が出るように、それぞれの成分を入れるようにしています。
ところが、A香港型については、昨シーズン、ワクチンが効きにくかったということが、国の研究機関の調査で明らかになったのです。
インフルエンザ対策の要といわれているワクチンを巡って、何が起きているのか、ご覧ください。
高齢者70人が入所している群馬県の特別養護老人ホームです。
インフルエンザ対策のため入所者と職員が全員毎年欠かさずワクチンを接種しています。
ところが昨シーズンA香港型が流行する中でこれまで経験したことのないような大規模な集団感染が起きたのです。
最初の患者が出たのは1月11日午前。
入所者の80代の男性が高熱を訴えました。
その数時間後別の入所者2人と職員1人もインフルエンザを発症しました。
翌日には入所者と職員合わせて5人が新たに発症。
さらに、その翌日には7人。
およそ2週間で患者は46人にまで膨れ上がりました。
このうち90代の男性は肺炎を引き起こし、死亡。
全員がワクチン接種を受けた中での集団感染でした。
ワクチンは効いていたのか。
同じ群馬県にある衛生環境研究所です。
県内各地の患者から採取されたウイルスが集められてきます。
昨シーズンA香港型のウイルスにワクチンが、どの程度効いていたのか詳しく調べました。
その結果ワクチンの効き目を示す数値が期待された値を大きく下回っていたことが分かったのです。
群馬県以外でも同じような結果が相次いだことなどから国立感染症研究所は去年11月ある報告書を出しました。
昨シーズンA香港型のウイルスについて全国的にワクチンの効果が低くなっていたと認めたうえで問題は製造方法にあると明らかにしたのです。
インフルエンザのワクチンは材料となるウイルスを卵に注射し中で大量に増やして作っています。
ところが、ここ数年ウイルスを卵に入れると突然変異を起こしてしまい期待どおりのワクチンができにくくなっていたのです。
なぜ卵の中で突然変異が起きるようになったのか。
もともと動物の間で広がっていたA香港型のウイルス。
およそ50年前から人の間でも感染し流行を繰り返す中人の体内の環境に合うようウイルス自体が変化してしまいました。
その結果、種の違うニワトリの卵の中に入れると環境に適応できずほとんどは死んでしまい突然変異を起こしたものだけが生き残り増えていくようになったと見られているのです。
国立感染症研究所は今シーズンのワクチンについて突然変異しにくいウイルスをなんとか選ぶことができたため効果は昨シーズンよりも高いと見ています。
しかし根本的な解決のためには製造方法を改める必要があるといいます。
去年、A香港型のワクチンでは、効果が低かったということが分かった。
このワクチンの信頼性、大丈夫でしょうか?
ワクチンそのものの信頼性が、すべて崩れているということではないと思います。
昨シーズンのA香港については、効果があまりなかったということは明らかになっていますけれども、H1N1に対しては、有効性は確保されていますし、今シーズンのA香港に対しても、ある程度の効果はあるだろうということは考えられていますし、ここ十数年、日本でも、高齢者を中心に、ワクチンはかなり接種するようになって、高齢者の死亡とかを防いできたという実績は確実にありますので、ワクチンをしていくということは、今後も必要だと思います。
ただ、卵に入れて、増やそうとすると、突然変異が起きて、効かないワクチンが出てきてしまうという、この製造方法に問題があるということが分かってきた。
昨シーズンの、このA香港に関しては、ワクチンは流行株と一致させないといけないんですけれども、昨シーズンに関しては、流行株とは一致してたんですけれども、その製造の過程で、卵にじゅんかしていく、卵でよく増えるように変化させていくうちに、そもそも流行株とかなり違ったウイルスになってしまったと、そういうことが問題だったんだと思います。
ウイルスというのは、本当に柔軟性があるのかなというふうに思ってしまうんですけれども、そうなっていくと、この製造方法を変えるというと、具体的にどうやって変えていくんですか?
長期的には、今の、その卵を使って、ワクチンを作るというところからですね、培養細胞という細胞を使って、ワクチンのウイルスを増やすというような方向に、日本も世界的にもそういう方向で今、考えていますので、日本でもそういう態勢を整備するという方向で考えてますので、長期的にはそういうところに移行していくということが必要になるかと思います。
これは根本的な製造方法の転換ですか?
そうですね。
今までの卵で増やしていく、卵によく増えるウイルスにしないといけないということが問題だったんで、そういう問題を解決する方法の一つとして、新しい製造方法ということを考えていくことも必要だと思います。
ウイルス学がご専門で押谷さん、いらっしゃるわけですけれども、こうやってH1N1に関しては、大流行が起きてから、まだ季節性に、これから移行するか否かの段階で、タミフルに耐性のあるものが出てきましたし、そしてこのワクチンが、効かない、効きにくくなっているものが出てくると。
このウイルスっていうのは、どういう存在ですか?
特に、インフルエンザウイルスの場合には、非常に変異を起こしやすい、ウイルスそのものが、どんどんどんどん変わっていくという特徴があって、人間の側がいろんな対策を考えると、それから逃れるような抗ウイルス薬、抗インフルエンザ薬が効かないようなウイルスが出てくるとか、ワクチンが効かないようなウイルスが出てくると。
そういうことの繰り返しを、これまでしてきたわけですね。
ただし、ここ十数年、インフルエンザの研究というのは非常に進んできてますので、いろんな形でそういう問題を克服するような、インフルエンザをコントロールできるような、そういう技術が今後は出てくるだろうということが期待できます。
そうですね、本当にもう、ウイルスと知恵比べといった感じもするんですけれども、お隣、中国では鳥インフルエンザ、このH7N9と呼ばれるものが、人から人への継続的な感染はまだ確認はされていませんけれども、かなり広がってきている。
そうですね。
昨年出現してきたウイルス、H7N9と、このウイルスがそうなんですけれども、今、また中国で再燃していると。
このウイルスが本当に次のパンデミックになるかどうか、次の新型インフルエンザになるかどうかということは分かりませんけれども、新型インフルエンザは必ず起こると、そういう観点から、新型インフルエンザ対策というのは考えていかなきゃならないのだと思いますので、2009年は日本ではそれほど大きな被害が起きなかったと。
海外と比べると?
そうですね。
ということもあって、死亡者が少なかったということもあって、新型インフルエンザに対する警戒感というのは、薄れているところがあるんですけれども、そういうことではいけなくて、やっぱり、どんなウイルスが出てきても、対応できるような態勢を整備していくということが必要だと思います。
警戒を怠ってはいけないということですね。
きょうはどうもありがとうございました。
2014/02/06(木) 19:30〜19:58
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「インフルエンザ 二つの“異変”」[字]

インフルエンザを巡り2つの異変が起きている。新型として流行したH1N1型ウイルスの急増。一部のウイルスにワクチンが効きにくくなっている状況。最新情報と対策を探る

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東北大学大学院教授…押谷仁,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東北大学大学院教授…押谷仁,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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