僕たちが通うアメリカマサチューセッツ工科大学。
通称MIT。
世界最高峰の理系の大学として知られこれまでデジタル暗号や遺伝子工学など新しいテクノロジーを次々に世に送り出してきました。
科学を学ぶ最先端の環境に身を置き僕たちは日夜世界を変えるイノベーションに挑んでいます。
このMITで46年にわたって物理学の基礎を教えるのが…この講義を受け世界の見方が変わったと学生たちは言います。
この世界を支配する物理の美しさを知るのです。
難しい法則や公式もルーウィン教授の手にかかれば奇想天外抱腹絶倒のエンターテインメントに生まれ変わります。
ルーウィン教授は今回番組のために全8回の特別講義を新たに用意しました。
MITの学生だけでなく地元の市民にも開放し初心者にも分かりやすく物理学の魅力を伝えます。
この講義で物理を学べば世界がこれまでと全く違って見えてくるはずだ。
それは人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
これまでは疑問にも思わなかった事を君たちは物理学の問題として考えるようになる。
今回の講義のテーマは…空に現れるこの美しい色の正体は何なのか?その秘密を解き明かし教室に色鮮やかな虹を再現します。
(拍手)サンキュー。
君たちの中で「虹を見た事がある」という人はどれだけいるだろうか?本当にそうだろうか?実は誰一人として見た事がないのではないかと私は思う。
そりゃあちょっと眺めたくらいの事はあるだろう。
しかし本当の意味で虹を見るためには知識を身につけなくては無理だ。
今日の講義で君たちの人生は変わる。
私が君たちに「本当の虹の見方」を教えるからだ。
この授業を前に受けた事がある人は別だが…。
今日はこの6つの質問の答えを探っていく。
君たちはどれくらい虹を理解しているだろうか?最初の質問は「虹の角度はどれくらいか?」というものだ。
虹は円だ。
こんな感じだ。
だからどこかには例えば地平線の下には円の中心があるはずだ。
すると虹が見える角度にはどんな決まりがあるのだろうか?あるいはいつも同じとは限らないのだろうか?2問目は色の順番についてだ。
虹を見た時赤は内側に見えるだろうか?それとも外側だろうか?時間によって違うのか?曜日ごとに変わったら驚きだ。
空の明るさが虹の内側と外側では違うという事に気付いた事はあるだろうか?ではどちらが明るくてどちらが暗いのだろうか?同時に現れる「2本目の虹」に気付いた事はあるだろうか?それは一体どこを見れば見つかるのか?そして2本目の虹では色の配列はどうなっているのだろうか?それは1本目と同じだろうか?あるいは逆転しているのか?ではこの質問全てに答えられる人はいるかな?君は前にも受けているね。
でも一人だけか?これは侮辱だ!たった一人しかいないなんて!では5つ答えられる人は?何で1個だけ分からないの?4つは?3つ?2つは?では1つだけという人は?聞くのはここまでにしよう。
あとは全員ゼロという事だ。
虹の正体を解き明かすにはまず物理学で私たちが「屈折」と呼ぶ現象を理解しなくてはならない。
光がある媒質から異なる媒質に進む場合例えば空気から水に入る時を考えよう。
空気を通って太陽の光がこう入ってくるとしよう。
細い光線を一つ取り出して考えてみよう。
すると2つの事が起こる。
まず光の一部は「反射」される。
はね返るのだ。
そしてこの角度αはこの隣の角度αと同じだ。
これが「反射」だ。
さて残りの光は角度を変えて水の中に入っていく。
ここの角度はβだ。
この現象が「屈折」だ。
ものにはそれぞれに屈折率が決まっている。
例えばこっちを「媒質1」これを「媒質2」と呼ぶとそれぞれの屈折率は「n」と「n」と表す。
屈折率はその媒質中の光の速さを表している。
空気や真空では屈折率は1に近い値だ。
空気や真空での光の速さはおよそ「秒速30万キロメートル」だ。
それが屈折率1だ。
しかし水の屈折率はおよそ1.33だ。
あとで説明するが虹にとってはこちらの数字の方が大事だ。
水の中では空気中に比べ光の速さはおよそ3割遅いという事だ。
オランダの科学者ヴィレブロルト・スネルが17世紀にこの入射角αと屈折角βと屈折率nの関係を発見した。
それは次のようなものだ。
例を挙げてこのスネルの法則を説明しよう。
屈折率1の空気と屈折率が1.33の水を考えよう。
光が入ってくる角度αは60度としよう。
そこにスネルの公式を当てはめる。
nが1nが1.33だ。
αは60度だ。
だからsinβを計算で求める事ができる。
sinβが分かればβも求められる。
この法則から屈折の角度を求める事ができる。
とてもシンプルな法則だ。
ではこれから実験でこの事を見せるとしよう。
この例題のとおりに既に準備してある。
これだ。
右側から光がさし込んでいるのが見えるはずだ。
光がさし込む角度αはおよそ60度に設定してある。
これが「入射角」だ。
光が水面で反射するものと屈折して水の中を進むものに分かれている。
水に進む時の角度βは先ほどの計算どおりおよそ40度になっている。
ではここからが本題だ。
これは1滴の雨粒だ。
そして光が横からさしている。
雨粒のこちら半分に太陽の光が降り注いでいる。
たくさんの太陽の光のうちある一筋の光線を見てみよう。
それは全体のほんの小さな一部でしかない。
その光の入射角はおよそ60度であるとしよう。
入射角というのは入ってくる光と雨粒の表面に垂直な線との間の角度だ。
この角度iだ。
この時A点では2つの事が起こる。
光の一部が反射し残りの光は屈折する。
スネルの法則を使ってこの屈折の角度rを求める事ができる。
このiは入射角だ。
光は雨粒の中を伝わり反対側のB点に達する。
Bでも2つの事が起こる。
一部が屈折して雨粒の外に出て残りは反射して中に戻る。
反射する角度は入ってくる角度と同じだ。
入射角と反射角は等しいからだ。
すると角度rはどれも同じ角度だ。
更に光はC点に進む。
C点でも一部が反射して中に戻るがほとんどは雨粒の外へ出ていく。
その時の角度がこれだ。
つまりA点で屈折してB点で反射してC点で再び屈折して光が出てくる。
ここの角度はiだ。
ではここにできる線に注目してほしい。
光はこちらから雨粒に入りこの角度で出ていく。
ここの角度が重要だ。
こう入ってこうやって出ていく。
この角度がφだ。
太陽光が雨粒に達すると表面で一部が屈折して角度を変えて中に入っていきます。
そして雨粒の反対側で反射し更に屈折して雨粒の外に出ます。
つまり光が一度屈折し反射をして再び屈折をして出て行く角度がφです。
代数を学んだ人ならこのφが「4r−2i」である事を計算できるはずだ。
理解するのに少し時間がかかるが図を見ればrの角度が1234つありiの角度が2つあるのが分かるはずだ。
すると「4r−2i」という結果になる。
ここで非常に注目すべき事がある。
この角度iの値を変えていった場合だ。
ここではiはゼロだ。
もっと高い位置だとiはどんどんどんどん値が増えていく。
するとφの値も増加していくが限界となる最大値がある。
それが「ファイの最大値」だ。
この表は光が空気中から水に入る場合つまり屈折率が1.336の場合だ。
太陽光が雨粒に入る場合の入射角と光が雨粒を出ていく角度の関係を表したものだ。
入射角を10度刻みにとってスネルの公式でrの値を求めた。
さほど難しい計算ではない。
φは4r−2iに等しいという式を使いそれぞれのφの値を求めた。
しかしここで1つ注目すべき事がある。
φが最大値に達するとそれ以降はiの値が大きくなってもφは小さくなっていく。
この事が虹の正体ととても深くかかわっている。
太陽光ではさまざまな光の色ごとに屈折率が異なる。
その中で赤と青の屈折率とファイの最大値の関係を表にしたものがこれだ。
「青よりも紫の方が屈折率が大きいじゃないか」と指摘する物知りもいるかもしれないが実際には太陽光に含まれる紫の光は僅かだ。
だから虹ができても紫はほとんど見る事ができない。
だから私は青までで考える事にした。
その方が現実的だ。
ここで重要なのは赤い光の入射角が60度に近い時ファイの最大値は42.3度になる事だ。
それは雨粒から赤い光が出ていく角度が42.3度以下である事を意味する。
42.3度を超える事はない。
青い光の場合ではファイの最大値は40.7度だ。
つまり青い光は赤よりも小さい角度40.7度以下の角度で雨粒から出ていくが40.7度を超える事はないという事だ。
これはとても重要なので頭に入れておいてほしい。
では虹の正体に迫るとしよう。
ここに1滴の雨粒がある。
水の滴だ。
そして太陽光がこちらからこの雨粒に当たる。
雨粒に当たった太陽の光がどうなるのかそれをこれから教えよう。
それはいくつもの色の光に分散されるのだ。
まずは赤の光の場合を説明しよう。
そのあとで青い光がどのようになるのかも説明する。
赤い光は雨粒から円錐の形で出てくる。
赤い光でできた円錐だ。
その角度は42度よりも大きくなる事はない。
なぜならファイの最大値がおよそ42度だからだ。
ちょっとこれを見てくれ。
何年も前に特別に作ってもらったものだ。
42度だ。
これを使って書くと…。
こういう事だ。
そしてこういう事だ。
この線の内側であればどんな角度からも赤が出ていく。
これは赤い光の円錐だ。
こうやって書けばもう少し円錐の形が分かるだろうか。
ではなぜ円錐なのか?これまでは一筋の光線だけで説明してきたが次は模型を使ってより分かりやすく話してみよう。
これは雨粒だ。
これが雨粒の中心を通る太陽の光だ。
つまりこの線の事だ。
そしてこれも太陽からの光だ。
この線の事だ。
光はまず屈折して反対側に達し反射して中を通ってC点から出ていく。
太陽光の入射角が60度なら赤い光は42度で出ていく。
だからこの間の角度は42度だ。
しかし太陽光はこの雨粒のこちら側の表面全体に当たっている。
だから入射角60度で雨粒に入る光線はこれ1つだけではない。
たくさんの太陽光が入射角60度で入ってくるのだ。
この雨粒に書かれた黒い円を見てほしい。
この円周を通って入ってくる光線は全て入射角60度だ。
全て先ほどの図と同じ経路を通る。
例えばこういう事だ。
この雨粒に光がこうやってさし込むとしよう。
黒い円の上だ。
だから入射角は60度だ。
光は屈折して反対側で反射して前方から出てくる。
入射角が60度なら42度の角度で出ていく。
これが赤い光の決まりだ。
これで2つの点から光が入る場合を見せた。
しかし光線は無数にあるので全てを合わせれば円錐になるというわけだ。
青い光についても同じような事が言える。
確認してみよう。
赤い光の場合はここの角度は42度という事だった。
厳密には42.3度だが四捨五入して42だ。
次は青い光でできた円錐を見てみよう。
先ほどの赤よりも一回り小さい。
なぜならここの角度は40.7度だからだ。
色違いの光の円錐だ。
太陽光はいくつもの色の光の集まりだ。
青と赤以外の色はこの2つの間に入る。
それぞれの色のφ最大値が40.7度から42.3度の間だからだ。
だから私は両端の色を取り上げて説明したわけだ。
ではここでは光はどうなっているだろう?ここに光はあるだろうか?雨粒で屈折や反射をしてここにも届くのだろうか?ここの角度は42度より大きいかね?そう!だから光は届かない。
この円錐の外には光は出ていかない。
では円錐の内側の光の色は何色だろうか?先ほども説明したとおり赤い光は角度が42度以下であればこの円錐の内側のどこにでもある。
だからこの中には赤い光が含まれている。
更に青い光もこの円錐の中であればどこにでもある。
40度以下であれば存在する。
すると赤から青までの太陽光の全ての色が内側に混在している事になる。
ではそれが全部合わさると何色に見えるだろうか?そう。
白だ。
…という事はこの円錐の中は白だ。
これらについて講義の最後に実験で見せるが実験のやり方をあらかじめ教えよう。
まず水滴を用意し光をこの水滴に当てるとその光ははね返り壁にこのような姿を映す。
赤。
青。
おまけに緑も書いてあげよう。
いずれにせよ全ての色がこの赤と青の間にある。
ここは光が来なくて暗い。
円錐の外側だからだ。
青の内側は白だ。
そうやって全ての色でできた虹が見えるはずだ。
もし君たちの中に頭の切れる物理学者がいたら「ルーウィン先生あなたはちゃんと説明していない」と言うだろう。
なぜならここで青い光が出てくるとすると他の全ての色もここから出られるわけだ。
ここの角度は42度よりも小さいから赤い光も出てくるし緑の光も出てくる。
青を含めた全ての色が出てくる。
という事は色が混ざって白になるはずではないかと。
ではどうしてそうならないか光の強さとφの関係を表す図を描いて説明しよう。
縦軸が光の強さだ。
まずは赤から始めよう。
φの値が低い時光の強さはとても弱い。
φが最大値に達すると光の強さも最大になる。
42度の時だ。
これは42度以上にはならない。
緑の光の場合も同じだ。
φが最大値に達すると光の強さも急激に大きくなる。
φは42度以上になる事はできない。
青い光もこのようになる。
ファイの最大値に達しピークになるとこれ以上行く事はできない。
だからここでは全ての色の光が同じ強さで混在するのが分かるだろう。
だから白い光が見える。
それがここでここの事だ。
しかしこの見事な現象赤や青や緑の光の強さが極端に急上昇する現象のおかげで青のφが最大値の時は青が圧倒的に他の色に勝るわけだ。
だから他の色には気付く事ができない。
それで虹の中の青はとてもはっきりと明るく見えるというわけだ。
ではいよいよ虹を見つける方法を教えよう。
まずここに私が立っているとしよう。
そして太陽からの光はこのように届く。
無限に遠くにある太陽からの光は同じように届くと考えるので光線は平行だ。
光はこのようにやって来る。
その時この方向を見上げるとしよう。
私の頭上には雨粒がある。
この雨粒でもよいしこれでもよいしどの雨粒を選んでもかまわない。
これらは全て同じ働きをしている。
どの雨粒も太陽の方向に光の円錐をはね返している。
では雨粒を1つだけ選んで絵を描いて説明しよう。
これが赤色の円錐だ。
こうやって描けばより分かりやすいだろうか。
この方向を見た時光は見えるだろうか?見えるわけがない。
なぜなら君は42度の角度の外にいるからだ。
だから円錐の外側に光が届かないように君の目にも光は届かない。
そこで別の方向を見る事にしよう。
こちらの方角だ。
この線上のどの雨粒でもかまわない。
ここでもここでも同じなのでこれにしよう。
どれも赤では42度の角度の円錐を作る。
この時何色が見えるだろうか?さあどうした。
これが答えられなければ私の教え方がまずかったという事になってしまう。
白!そうだ!今君の目は円錐の中心をまっすぐに見ている。
ここを見ている。
この図で言えば円錐の中心部分だ。
だから白だ。
では他の場合も考えてみよう。
この方角を見たとしよう。
この場合もどの雨粒を選んでもかまわない。
ここでもここでもここでも結果は同じだ。
この雨粒を選んだ時ここからはもう皆おなじみの42度の光の円錐が放たれる。
この時私が見る角度も42度だったとしたらどうだろうか。
私が42度の角度で眺めたら何が見えるだろうか?そう!そして赤だけが見える。
もう分かっただろうか。
ここを見たら光がなくて暗い。
ここからは白い光が目に入ってくる。
そしてこの方向を見たら赤だ。
更に少しだけ角度を下げて空を見れば青い光が見えるはずだ。
では太陽が左側から照らしているとしよう。
私はここに立っている。
ちなみにこれは私の影だ。
分かるかな?これが地面に映った私の影だ。
太陽が背後にあって私の影の先端と結ぶ線から42度の角度を見上げると赤が見える。
赤い光は円錐だ。
だからこの方向に42度でなくてもこちらに42度であってもこちらに42度でもこっちに42度でも赤を見る事ができる。
これでなぜ虹が半円の形をしているか理解できただろうか。
この線から42度の角度であるかぎりは赤い光が見える。
更に空のもう少し低い所では他の色が同じように弧を描いて見える。
あなたが太陽を背にして立った時光に対して特定の角度にある雨粒によって虹は作られます。
太陽からあなたの影の先端を結ぶ仮想線をまず引きます。
その仮想線に対して40度の方向にある雨粒からは青い光がやって来ます。
そして42度の方向にある雨粒からは赤い光がやって来ます。
この時仮想線を中心軸にして円錐を描くように42度の角度にある全ての雨粒から赤い光がやって来ます。
だから虹はいつも太陽とは反対の方角に弧を描いて見えるのです。
これで虹の正体が分かってくれただろうか。
これが地平線だ。
ここに虹が見えるとしよう。
すると中心はこの辺りだ。
地平線の下だ。
虹の中心からの角度は42度になる。
青い光はおよそ40度でここに現れる。
これで虹では赤は常に外側にあり青は常に内側にある事が分かっただろうか。
実はこの時雨粒の中で2度目の光の反射も起きている。
1度ではなく2度だ。
つまり光が屈折して入り反射しそしてもう一回反射してから屈折して出る場合だ。
その場合でも途中までの過程はさっきと全く同じだ。
すると光が出てくる角度φについては最大値ではなく最小値が決まるという結論に達する。
光が出ていく角度が特定の値よりも小さくなる事はないという事だ。
これを計算で求めると実は2本目の虹が空に現れる角度が分かるのだ。
それは最初の虹の10度上の位置に現れ色の順番は逆さまだ。
つまり赤が内側で青が外側の虹だ。
この虹は2度の反射を経ている分光が弱い。
そしてここの角度はおよそ52度だ。
これを「副虹」と呼び実はいつでも存在している。
しかしほとんどの人はこれまで気付いた事がないだろう。
主虹よりもずっと淡いからだ。
主虹では光はここに届かない。
副虹ではファイの最大値はなくファイの最小値が決まっている。
だから光はここに届かない。
この虹にとってここは暗い。
こちらの虹にとってここは暗い。
となるとここは恐ろしく暗くなる。
この部分を「アレクサンダーの暗帯」と呼ぶ。
そして2本目の虹はファイの最小値によって作られるから角度φよりも大きな角度で光は出て行く事ができる。
となるとここには太陽の白い光が見える。
ではこれまで説明してきた事をスライドで見てみよう。
まずは復習だ。
虹の正体はつまりこういう事だ。
太陽の光が背後からさし込む。
ここにいるのが私だ。
地面には私の影が映っている。
影の先端と私を結ぶ「仮想線」から42度見上げるとその位置にある水滴は私に赤い光を見せる。
40度の所を見れば青い光が見える。
更に下を見れば白だ。
面白いのは私の足元の雨粒でも42度であれば赤く見えるという事だ。
続いてはかの有名な物理学者ニュートンが描いた絵だ。
彼は歴史上で最も早く虹の正体を理解した1人だ。
私が黒板に描いた図ととても近い。
反射が2回起こると2本目の虹が現れる事まで当時から理解していた。
では次。
これは実際に試してみるととても楽しい。
太陽が高い時に庭で水まきをすればできる。
自分の頭の影から42度の角度に赤が見えるはずだ。
ここも赤でここも赤。
42度の円周がどこも赤だ。
つまり君をぐるっと取り囲む虹を作る事ができる。
では次。
これはすごい!「虹の製造機」が今なら12ドルでお釣りがくる!
(笑い)しかしこれはインチキだ。
なぜインチキだと断言できるのだろうか?そのとおり。
本物の虹なら赤は外側だ。
だからこれが何だかは分からないが…虹でない事は確かだ。
こういうのを「誇大広告」と私たちは呼ぶ。
(笑い)では次のスライドを。
これは6世紀ごろの美しい壁画だ。
虹の上に手が描かれている事から聖書の神のお告げの場面である事が分かる。
面白いのは虹が赤と青の2色だけでしかも色が逆さまだ。
きっと何らかの理由でそう描いてしまったのだろう。
しかしひょっとすると大昔には物理の法則が違っていたのかもしれない。
虹は2色で赤が内側で青は外側だったのかもしれない。
でも私としては画家が何らかの事情でこのように描いてしまったと信じたい。
では次。
1972年から私はMITの大教室で講義を行うようになった。
その中で虹をテーマにしたいと考えた。
そこで私は当時7歳だった娘の力を借りる事にした。
あいにくそれは1月の凍えるほど寒い日だった。
娘を庭に呼んでホースで水をまいてもらった。
そして出現した虹を私が写真に撮った。
それが今見ている写真だ。
外側の赤と内側の青がきれいに写っている。
虹の内側は白だ。
その理由も君たちにはもう分かっているはずだ。
2本目の虹が見えない理由は光が十分に強くなかったからかあるいは水滴がそこに十分なかったからだと考えられる。
水滴がなければ虹は見えない。
きっとホースの水がそこまでは届かなかったのだろう。
さて次の写真を見る度に私は心が痛む。
娘のエマだ。
泣いている。
すごく寒いからだ。
この時私は初めてエマに言った。
「科学のためには犠牲が必要なんだよ」って。
(笑い)彼女は幾度となく手伝ってくれた。
そして今ではこの写真を心から気に入っている。
なぜなら少なくとも4冊もの私の本に掲載されているからだ。
では次。
2本目の虹も写真に撮ろうと試みたのがこれだ。
弱い光を見るためにはこのように背景が暗い方がよい。
この時もエマに水をまくのを手伝ってもらった。
1本目の虹がきれいに見えている。
更に2本目の虹が隣に見える。
色の順番が逆になっているのが分かるだろうか。
赤が内側で青が外側だ。
では次。
この写真は1枚で全ての事が確認できる。
ニューメキシコ州ソコロで撮影されたものだ。
まず1本目の虹がこれだ。
赤が外側で青が内側。
アレクサンダーの暗帯もはっきり見てとれる。
本当に暗い。
2本目の虹は赤が内側で青が外側だ。
更に外側には再び太陽の光が見える。
2本目の虹の外側は太陽の光で白くなっている。
よく見ると1本目の青の部分が少しおかしい。
暗い帯が走っているように見える。
これは「過剰虹」と呼ばれるものだ。
これは非常に小さな直径1mm以下の雨粒によって生じる。
こうした非常に小さな雨粒によって光というものが実は波であるという事実を思い知らされる事になる。
光の波が干渉を起こすからだ。
光の波がお互いに重なり合う事で打ち消し合い暗くなる。
あるいは光の波が重なって強め合って明るくなる場合もある。
このように明暗の帯が見えるのは干渉の結果でこの虹の写真ではそれがとてもよく分かる。
水滴が極めて小さい場合例えば30ミクロンくらいだと干渉によって極端な現象が起こる。
全ての色の光がお互いに混じりあってしまうのだ。
赤と青が重なり青と緑が重なり全部が混じりあってしまう。
すると何色に見えるだろうか?そのとおり白だ。
そのような虹は白虹と呼ばれる。
とても珍しい。
霧虹とも呼ばれる。
私が虹について最初に物理の講義で教えたのは1972年だ。
その時の教え子にカール・ウェールズという学生がいた。
彼はその次の年夏の間に北極圏を旅して大型の流氷の上にいた。
それは7月の午前2時で太陽は地平線の上にあった。
その時に見た白い虹を彼は写真に撮って私に送ってくれた。
それがこれだ。
白い虹がはっきり見える。
よく見るとここに暗い帯も見える。
これは明らかに光の干渉の結果だ。
虹が白い事も干渉の結果であり暗い帯が見える事も干渉の結果だ。
では質問だ。
夕暮れどきの虹はどのように見えるだろうか。
あるいは日の出でも同じ事だ。
そうだ夕焼けと同じ理屈だ。
虹の内側にあるべき白い光はどうなるのだろうか?それも赤になる。
正解だ。
そもそも赤い光しか届かない場合は虹も赤だけになる。
そして通常は白い部分も赤くならざるをえない。
では論より証拠だ。
これが赤い虹だ。
本当に神秘的だ。
虹の内側の白い部分も全て赤く染まっている。
最初に挙げた6つの質問を覚えているだろうか。
今更1つずつ正解を教える必要はあるまい。
君たちはもう難なくこれらの質問に答える事ができるだろう。
では最後に君たちに実際に虹を見せる時が来た。
とはいえ本物の虹を再現するためにはこの教室全体に雨を降らせなくてはいけない。
それはいろんな問題を引き起こし私も大学にひどく叱られるだろう。
そこで今日はたった1滴の水だけを使おうと思う。
それがこれだ。
この巨大な水滴に光を当てる。
すると水滴はこのような光の円錐をはね返す。
外側は赤。
青は内側。
白い光はここで外には光はない。
そしてその円錐をスクリーンに映し出す。
そうやって君たちの目の前に人工的な虹を作りだす事ができる。
繰り返すがこれは本当の意味での虹ではない。
本物と呼ぶにはたくさんの雨粒がそれぞれの光の円錐を放った状態を見なくてはいけないからだ。
だから今日は壁に映し出された「虹のようなもの」を見てもらいたい。
ではビルこの装置を教室の真ん中に運んでくれないか?静かに落ち着いてやろう。
とても繊細な実験装置だからね。
よしいいだろう。
ではここに水があるのが見えるだろうか?光をここから発射しそちらの方向に向けて照らす。
でもサングラスは必要ない。
ここについたてを置くから大丈夫だ。
光はこの水滴に当たり角度を変えて出て行く。
そこでできた光の円錐をスクリーンに映し出そう。
さてあまり期待しすぎないでほしい。
結局のところ使うのはたった1滴の水だ。
「エビで鯛を釣ろう」というのは虫のいい話だ。
(笑い)最初にまず教室を暗くする。
水滴からはね返る光は弱いので君たちの目を暗さに慣らしておく必要があるからだ。
全てがうまくいけば虹のようなものが見えるはずだ。
ではビル電気を消してくれ。
ほら。
うまくいった!赤は外側青は内側。
ここは白だ。
外側には光はない。
教えたとおりだ。
そしてその理由ももう理解してくれただろう。
光が弱すぎるから2本目の虹は確認できない。
しかしそれ以外の虹の特徴はここに見る事ができる。
では明かりを戻そう。
君たちが次に虹を見る時これまでとは全く違った見方をする事になる。
虹の一番外側が赤である事を確かめ2本目の虹もきっと探すはずだ。
それは1本目のおよそ10度上にある。
もし見えたら色の順番が逆になっている事も確かめたくなるはずだ。
更に虹の内側の空の明るさにも君たちは気付くはずだ。
そしてアレクサンダーの暗帯を見つけようとするに違いない。
この好奇心はいわば病のようなものだ。
もう元には戻れない。
全部私のせいだ。
(笑い)一度知ってしまったらもう後戻りはできない。
この好奇心は一生付きまとう。
しかし君たちは虹の正体を知る事で喜びを感じたはずだ。
虹の正体を知らない人たちに比べ君たちは虹を見る度に多くの事を発見しより豊かな経験ができるようになった。
知識は財産となる。
知識で失うものは何もない。
知識は隠された美を解く鍵だ。
君たちはもうこれまでの君たちではないはずだ。
また次回会おう。
(拍手)2014/03/07(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
白熱教室海外版アンコール MIT白熱教室 第5回「完璧な虹を見る方法」[二][字]
虹はどうやってできるのか?あの美しい色の正体は何なのか?虹の秘密を、解き明かします。最後には、たった1滴の水滴から神秘的な虹を教室に浮かび上がらせます。
詳細情報
番組内容
ルーウィン教授の「君たちは本当の虹を見たことがあるのか」という刺激的な問いかけで講義は始まる。虹は、どうやってできるのか? あの美しい色の正体は何か? 色の順番に決まりはあるのか? どんな方向に見えるのか? どこからでも同じに見えるのか? これまで何気なく見上げていた虹の秘密を、光の反射と屈折という物理現象で解き明かす。最後は、たった1滴の水滴から神秘的な虹を教室に浮かび上がらせる。
出演者
【出演】マサチューセッツ工科大学教授…ウォルター・ルーウィン
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
趣味/教育 – 大学生・受験
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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英語
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