NHKスペシャル「無人の町の“じじい部隊”」 2014.03.07

東京電力福島第一原子力発電所がある大熊町。
放射性物質で汚染され町はフェンスで封鎖されています。
帰還困難区域として立ち入りが厳しく制限されています。
原発事故のあと住民1万1,000人は全員避難を強いられたままです。
無人の町のはずなのに去年春から毎朝あの曲が聞こえていました。

(「『あまちゃん』オープニングテーマ」)現地に開設された町の連絡事務所。
始業前の6人の駐在員はシワや白髪が目立つベテランぞろいです。
防護服に着替え出動する平均年齢60歳のメンバー。
役場を退職したばかりの元最高幹部たちです。
この1年無人の町で活動を続けています。
(警告音)放射線量が高い現場にベテランばかり志願してきたのはなぜなのか。
人が消えた町で我が物顔の動物たち。
更に原発の汚染水や中間貯蔵施設など心配が募る大熊町。
それでもメンバーは諦めず将来の住民帰還に向けて希望をつなごうとしています。
無人の町で苦闘するじじい部隊。
7か月の記録です。
原発事故で役場ごと100km離れた会津に避難した大熊町。
避難区域の中でも原発に最も近い町です。
去年4月原発から9km離れたダムに町は現地事務所を開きました。
汚染を除去したダムのほとりにじじい部隊は避難先から通い日中駐在しています。
(セミの鳴き声)消防車の研修が始まっていました。
無人の町の火事に備えます。
じじい部隊のメンバーは6人。
消防士や測量士など経験豊富な人材ぞろいです。
中心は町役場を去年定年退職したばかりのこの3人。
その間はいろいろな課をまわって…。
白髪頭の鈴木さんがじじい部隊の発案者です。
震災直後の避難から会津若松市で仮の役場を開くまで鈴木さんは皆の中心に立って奮闘しました。
退職後は無人の町の中で復興を目指そうと同じ考えの仲間を集めました。
(拍手)パトロールに出る鈴木さん。
事務所から一日2回帰還困難区域に入り巡回します。
避難区域の中でも特に放射線量が高い帰還困難区域はこのゲートの先。
じじい部隊を鈴木さんが作ったのはこのままでは町に誰も戻らなくなるという焦りから。
家と同じで町も人がいないと荒れるばかりです。
同じ商店街のかつての姿です。
祭りが盛んで活気に満ちていた大熊町。
鈴木さんは町のにぎわいがとても好きでした。
水路や道路を懸命に手入れするじじい部隊。
いつか町に帰れる時が来ると信じています。
避難している住民は月1度短時間なら一時帰宅できます。
一時帰宅で住民が希望を失わないよう町を生かし続ける事がじじい部隊の務めです。
原発間近の夫沢地区。
鈴木さんの家は原発の敷地から僅か300mの場所にあります。
先祖から20代続く地区でも指折りの農家でした。
100年前に先祖が植えた木を切って家族総出で建てた家。
今は避難先で借り上げ住宅の暮らしですがこの家の手入れも続けています。
先祖の木を切った裏山に鈴木さんも子孫のためヒノキを植えました。
代々受け継ぐこの土地を見捨てる事には耐えられません。
現地事務所を住民が訪ねてきました。
一時帰宅する住民にとって途中立ち寄れる場所はここぐらいです。
あっすみません。
はいどうも。
今日はオールキャストだ。
月1度しか町に入れない自分たちの分も頑張ってほしいと差し入れを持ってきてくれました。
ふるさとに帰る日を待ち望む住民。
帰還の壁はやはり高い放射線量です。
今は帰還困難区域となっている町の中心部。
住民の大半が住んでいました。
鈴木さんはフェンスの中へ放射線量を測りに向かいました。
大熊町は町内167か所で測定を続け最新の状況を把握しようとしてきました。
放射線量は半減期で徐々に減る上雨や風に流され変化していくからです。
じじい部隊は以前線量が高かった地区30か所の測定を買って出ていました。
国の基準の30倍もの数字。
それでも2年前と比べれば半分近く下がっています。
観測地点の中で最も放射線が強い場所に向かいます。
先ほどと違う測定機。
(警告音)すぐに警告音が鳴り始めました。
(警告音)身につけた線量計のアラームが何度止めても鳴り続けます。
長くとどまると危険な場所がまだあちこちに残っていました。
測定を終えた最新の線量をじじい部隊は町の模型に落とし込んでいきます。
赤が濃いほど線量が高く緑から青になるほど低い場所。
線量が下がったエリアはどこなのか。
全体を見てみると町の南西部で予想より線量が下がっていると分かりました。
じじい部隊は復興プランの原案を温めてきました。
中心になったのは復興事業課長だった横山さんです。
ダムと原発の間に広がるほとんどの市街地が帰還困難と見なされる大熊町。
計画は町を2つに分け復興を考えています。
赤い部分は特に放射線量が高い帰還困難区域。
住民の96%が住む町の中心です。
しかし放射性廃棄物の中間貯蔵施設が建設される計画もあり帰還の見通しは立っていません。
そこで比較的線量が低い黄色の区域を足掛かりにします。
ほとんどが山ですが僅かな平地大川原地区で除染を集中的に進め復興拠点とします。
住民の帰還を始めつつ除染範囲を徐々に広げ20〜30年かけ中心部も住めるようにする遠大な計画です。
除染によっていつかは住めるようにしたい町の中心部。
じじい部隊がその突破口と期待する場所があります。
無人の町でよく見るとたった1か所米と野菜を作っている農地。
表土を削り除染を終えています。
世話をするじじい部隊。
除染によって安全な作物を作れるか研究者と調べてきました。
これまでの結果で期待は高まっていました。
帰還困難区域の希望の象徴。
そう考えて鈴木さんたちは毎日水やりを続けてきました。
その大切な農場に異変がありました。
育ててきた作物が食い荒らされていました。
犯人を見つけようと農場と周りの市街地にカメラを取り付けました。
何か映っていました。
また大きい!電気柵に驚くイノシシ。
ほかの動物もいました。
驚いた事に周りの市街地でもたくさんの動物が映っていました。
JRの駅前で座り込むタヌキ。
原子力センター前のイノシシ親子。
かつては祭りでにぎわった駅前商店街。
初め笑っていた鈴木さんたちも町の変化にぼう然としました。
じじい部隊の復興プランの要大川原地区の除染が始まる事になりました。
事務所にやって来た環境省の職員たち。
原発間近の自治体では国が除染を行う責任があります。
復興事業課長だった横山さんは現場の状況を説明し迅速で徹底した除染を求めました。
横山さんたちが去年まだ役場にいた頃住民への説明など準備を始め除染するおおまかな場所も決めていました。
大川原地区の除染に投入された作業員は1,000人を超えました。
無人の町もこの地区だけは人と車であふれました。

(「ラジオ体操」)除染の対象は宅地や農地道路や森林合わせて400ha。
放射線量を6割から8割減らす見込みです。
汚染された表土を地区で一斉に削り取る大規模な作業。
事故から2年半原発間近の大熊町でもようやく始まった本格除染。
じじい部隊のプランは次の段階に入ります。
目標は帰還困難区域で比較的線量の低い地区から除染を始める事。
しかし国は帰還困難区域での本格除染には及び腰です。
じじい部隊は次の一手を打ちました。
ゲートの内側で例外的な除染を認めさせたのです。
それは墓地の除染。
住民が一時帰宅する時墓参りができればふるさとへの気持ちをつなぐ事ができる。
視察に来た大臣に鈴木さんたちがじか談判し実現しました。
町内の墓地は38か所。
除染が進む山側よりも帰還困難区域に大半があります。
この区域での除染効果を証明する期待もあります。
お盆本番。
墓地の線量が高かった時は二の足を踏んでいた住民も避難先から次々とやって来ました。
防護服に着替えての墓参り。
それでも帰還困難区域で久々に見る大勢の住民の姿です。
こんにちは〜。
住民の心を大熊につなぐ手応えを鈴木さんたちは感じていました。
墓参りのあと原発から僅か1kmの家に立ち寄る住民がいました。
鈴木さんと一緒に役場で働いていた仲間です。
じじい部隊は長い留守で固くなった扉の開け閉めを手伝いました。
せ〜の!せ〜の!原発事故後避難先で生まれた仲間の孫はもう2歳。
放射線が心配でここでは育てられないと言います。
(鈴の音)先祖代々続いてきた大熊町での暮らし。
しかし娘や孫が不安なく暮らすためもう大熊に戻らないと鈴木さんに伝えてきました。
室内の放射線量は国の基準の75倍でした。
住民の帰還のために活動を続けるじじい部隊。
しかし仲間の決断に反対はできませんでした。
住民を更に不安にさせるニュースが流れてきました。
高濃度の汚染水がタンクから漏れ出したというニュースです。
怖い。
鈴木さんたちが飛び出しました。
タンクのある夫沢地区に向かいます。
この地区で生まれ育った2人。
ニュースを見てじっとしていられませんでした。
高濃度の汚染水が敷地の外まで漏れ出しているのではないか。
すぐそばにある鈴木さんの畑で湧き水を調べる事にしました。
もし周辺にまで汚染水が出ていれば住民の帰還は一層困難になります。
事務所に戻りくんできた水を放射能の測定装置にかけました。
水に含まれるセシウムの量を測定します。
結果は飲み水の基準10ベクレルを下回る数値でした。
しかし念のためタンクの下の川で川魚の放射能も測定する事にしました。
ここは子どもの頃からの遊び場でした。
巨大なコイが懸かりました。
あっ!あっ!あっ!汚染水の心配が続けば住民の気持ちが更に離れていくのではないか…。
原発では汚染水タンクがとどまる事なく増え続け問題が深刻さを増していました。
周辺の地下水が建屋に流れ込み汚染水を増量させると見られていました。
じじい部隊の拠点はもともと原発に冷却水を送るため造られたダム。
メンバーの一人が仮説を立てました。
ダムの制御を担当する水の専門家…ダムから原発に送る水がどこかで管から漏れ地下に流れているのではないか。
その考えを東京電力に伝えました。
ダムから原発までは地下の導水管が9kmにわたって延びています。
3年前のあの地震で管の継ぎ目が緩んでいればそれが地下水を増やす一因かもしれない。
杉内さんの仮説です。
ダムから原発に続く9kmの導水管。
地中に埋まりその状態は確認できません。
原発間近で管から漏れがあればそれが地下水として建屋に流れ汚染水を増やす可能性がある。
東京電力の担当者が連絡を受けやって来ました。
杉内さんが示したのは原発向けの水量の数字でした。
原発であまり水を使わない時間にも毎秒10の水が流れていました。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。
住民の不安解消につなげようと杉内さんの仮説を基に共同で調査する事が決まりました。
住民にとってもう一つの不安は町の果物や魚の安全性。
その調査もじじい部隊は続けていました。
向かった熊川に珍しく人影。
ここでサケ漁をしていた漁業組合の人たちでした。
サケが戻るか気になって避難先から2時間半かけ見に来たと言います。
原発事故の町にもサケは変わらず戻っていました。
ウズウズしてきて…。
大熊の秋の名物サケのやな漁。
取れたてを食べるのがこの町の人の楽しみでした。
サケは放射能に汚染されていないか。
川に踏み入る前復興事業課長…おっ入った!さばいた切り身とイクラをそれぞれ測定器にかけました。
どちらからもセシウムは検出されませんでした。
更に大熊の秋の味覚を次々と調べました。
梨イチジク柿桃。
いずれも国が定めた食品の安全基準100ベクレルを下回りました。
気をよくしたじじい部隊は秋の楽しみだったキノコを山から採ってきました。
最高だ。
これ焼いて食ったっていいぞ。
もし線量が低ければ住民にもうれしい知らせができます。
目に見えない放射能との終わりなき闘い。
横山さんは結果をじっと見つめ続けていました。
原発事故から3度目の冬。
大川原地区では除染が順調に進んでいました。
平均で毎時3マイクロシーベルトだった農地の線量はほどに下がっていました。
家の周りにも足場が組まれ付着した放射性物質を手作業で拭き取っていました。
住民の帰還に直結する住宅除染。
じじい部隊の計画でも重要です。
地区の住民だったメンバーの岡田さんが作業の進行ぶりに驚いていました。
住宅143戸の除染は今年度中に全て終わる予定です。
岡田さんも横山さんもいわきの借り上げ住宅で暮らしています。
避難する町民に町が大川原の除染を説明すると聞き様子を見にやって来ました。
計画どおり除染が進んでいても避難が3年に近づく今もう町に戻らないという人も増えたと言います。
国の調査によれば大熊町に戻る人検討中の人は3割弱。
戻らないという人が7割近くになっていました。
除染した大川原から帰還を進めるという町の説明。
住民から賛否の声が上がりました。
除染でつなぎ止めようとした住民の心。
しかし避難が長引くうちに人々の間に深い溝が生まれていました。
今年度中に予定の400haを終える見込みの大川原地区の除染。
それを足掛かりに復興を目指す帰還困難区域には更なる難問が待ち受けていました。
中間貯蔵施設の計画です。
原発周辺の6か所で国が調査を進めていました。
原発事故の除染で出る膨大な廃棄物を最終処分場が出来るまで30年間保管する中間貯蔵施設。
町は建設受け入れは未定としながら調査には協力してきました。
総務課長だった鈴木さんは国と住民との間に立って調査地点を交渉。
サケが上る自然豊かなあの熊川を国に候補地から外させました。
ところが…。
地元には寝耳に水だった国の新たな計画原発周辺の広大な面積を国有化するものであの熊川も含んでいました。
事前に町にも地権者にも相談はありませんでした。
鈴木さんたちが先祖から受け継いできた農地も集落も全てのみ込む広大な国有化計画。
住民が戻ってこられるようにとじじい部隊がしている事が無駄になるのではないか。
鈴木さんは不安を抑えられずにいました。
今は参拝する人もいない神社でじじい部隊が境内を除染していました。
子育て世代の住民が離れていく気持ちは分かります。
一方で帰りたいと願う住民からは町の留守を託されています。
(鈴の音)できる事を1つずつやろうと誓いました。
諦めずそれぞれが動き続けるじじい部隊。
1月末杉内さんは汚染水の増加を防ごうと東京電力と共同調査を開始しました。
特別の計測器をダムと原発の間に設置し水が漏れていないか確かめます。
汚染水を少しでも減らす事につながるのか。
調査の結果は間もなく出ます。
復興プランの原案を練った前復興事業課長横山さん。
後輩が町の復興プランを実現できるよう現場から支えようとしています。
念願の大熊町復興プランはようやく中間報告にこぎ着けました。
住民の声も受け4年後から帰還を開始すると時期を明示しました。
計画では原案どおり除染を終え線量の低い大川原地区を復興拠点としてまず整備。
帰還する住民1,000人に加え\2014/03/07(金) 22:00〜22:50
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「無人の町の“じじい部隊”」[字]

福島原発事故で帰還困難となったエリアでの初の長期取材ドキュメント。留守の町を守ろうと立ち上がった大熊町の自称“じじい部隊”に密着し、無人の町の全貌と現状を伝える

詳細情報
番組内容
福島原発事故後、帰還困難区域でテレビカメラが初めて長期にわたって継続取材したドキュメント。いま福島県大熊町では、退職したばかりの町の元最高幹部6人からなる、自称“じじい部隊”が、将来の住民帰還が不可能にならないように「無人の町」の留守を守り、町の復興・帰還計画をけん引する活動を続けている。四季を通じてこの“じじい部隊”の活動を追い、断片的にしか伝えられてこなかった帰還困難区域の全貌と現状に迫る。
出演者
【語り】平泉成

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – 報道特番

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