僕たちが通うアメリカマサチューセッツ工科大学。
通称MIT。
世界最高峰の理系の大学として知られこれまでデジタル暗号や遺伝子工学など新しいテクノロジーを次々に世に送り出してきました。
科学を学ぶ最先端の環境に身を置き僕たちは日夜世界を変えるイノベーションに挑んでいます。
このMITで46年にわたって物理学の基礎を教えるのが…この講義を受け世界の見方が変わったと学生たちは言います。
この世界を支配する物理の美しさを知るのです。
難しい法則や公式もルーウィン教授の手にかかれば奇想天外抱腹絶倒のエンターテインメントに生まれ変わります。
ルーウィン教授は今回番組のために全8回の特別講義を新たに用意しました。
MITの学生だけでなく地元の市民にも開放し初心者にも分かりやすく物理学の魅力を伝えます。
この講義で物理を学べば世界がこれまでと全く違って見えてくるはずだ。
それは人生をより豊かなものにしてくれるだろう。
これまでは疑問にも思わなかった事を君たちは物理学の問題として考えるようになる。
なぜ静電気は物を引き寄せるのでしょうか。
今日は電気と磁気の不思議な関係と発電の仕組みを解き明かします。
(拍手)今日のテーマは電気と磁気の関係についてだ。
そもそも電気とは何か?磁気とは何だろう?これにきちんと答えるのは実はとても難しい。
MITの新入生にはこのテーマを35時間かけて教えているがそれでも足りないくらいだ。
電気が何かは誰もが知っている。
電気なしではテレビもラジオもコンピューターも携帯も電車も飛行機も動かない。
水道だってモーターを使わなければ水が出ない。
ガスも駄目だ。
うちのガスコンロは電気で点火をするからだ。
要するに私たちは電気なしでは生きられないのだ。
では磁石はどうだろう?冷蔵庫の扉には大抵磁石がついているね。
コンパスにも使われている。
では考えてみよう。
私たちは磁気を使わずに生活できるだろうか?この答えもノーだ。
実は電気と磁気は切っても切れない関係だ。
電気と磁気はお互いなしには存在できない。
これは科学の歴史の中で最も重要な発見の一つだ。
この事について今日は講義と実験をしよう。
およそ2,500年前ギリシャ人は琥珀を布でこすると枯れ葉を引き寄せる事を発見した。
「琥珀」はギリシャ語で「エレクトロン」と言う。
これが電気「エレクトリシティ」の語源だ。
そして時がたち16世紀にガラスや硫黄も似たような性質を持つ事が発見された。
18世紀に入ると静電気にはニつの種類がある事が分かった。
片方は現代では「プラスの電荷」と呼ぶものだ。
もう一つは「マイナスの電荷」だ。
ガラスを絹でこするとプラスの電荷を帯びた。
ゴムを毛皮でこするとマイナスの電荷を帯びた。
琥珀をウールでこすってもマイナスの電荷だ。
この時プラス同士マイナス同士は反発しプラスとマイナスは引き合った。
電子や陽子といった概念がまだなかったにもかかわらず18世紀にベンジャミン・フランクリンは全ての物質は決まった量の電気を持っている事を示した。
彼はそれを「電気の火」と呼んだ。
物にその「火」を加えると「プラス」の性質を持つようになり物から火を取り出すと「マイナス」の性質になると考えた。
電気の火を多く含む物質はプラス。
足りないものはマイナスだ。
しかしフランクリンは更に考えを進めた。
この電気の火をある物から他の物に移すと火を加えられた方はプラスになる。
一方で最初の物は火を失ってマイナスに変化するという事だ。
これはすばらしい発想だった。
これこそ「電気量保存の法則」の基礎にある考えだ。
プラスやマイナスの電荷を単体で作り出す事はできない。
ある量のプラスの電荷を作り出したら自動的に同じ量のマイナスの電荷ができる。
これを物理学では「電気量保存の法則」と呼ぶ。
ベンジャミン・フランクリンは電気の火を多く持つほど物体の間の力はより強くなると言った。
二つの物体に電気の火を加える時より多く加えるほど強く反発する。
あるいは一方がプラスでもう片方がマイナスの場合プラスにより多くの火を加えマイナスからより多くの火を取り除けばより強く引き合う。
更にフランクリンは物体同士の距離が縮まるとその力が強くなる事も発見した。
さていくつかの物質は電気をよく通す。
そういうものを「導体」と呼ぶ。
例えば金属がそうだ。
しかし電気を通さないものもある。
そういうものは「絶縁体」と呼ぶ。
絶縁体の例としてはガラスや磁器ゴムがある。
ここにガラスの棒がある。
これからガラスの棒を絹でこすって「電気の火」を加えてみよう。
現代の言い方だと…ここにはヘリウムで膨らませた風船がある。
この風船の表面はアルミだ。
だから表面は電気をよく通す。
ではこうやってこすってガラス棒をプラスに帯電させよう。
そしてこのプラスの電荷を風船に移してみたい。
ではやってみよう。
こうやって風船にくっつけて電荷を移す事ができる。
もうちょっとやってみよう。
反対側にも加えよう。
あとちょっとだ。
さあこれでこの風船は現代で言うところのプラスに帯電した状態になっているはずだ。
この棒もプラスだ。
だから私がこの棒を近づけると反発し合うはずだ。
ほらご覧のとおり。
ではこっちのゴム製の樹脂の棒を毛皮でこすると今度は棒はマイナスに帯電する。
だから風船がまだプラスに帯電しているうちに素早くゴム棒を近づけると二つは引き合うはずだ。
しかし風船にたまった静電気は逃げやすいのでこれは素早くやらなきゃいけない。
この教室がとても寒いのは一晩中クーラーをつけていたからだ。
湿度が高いと電気が逃げやすくなってしまって駄目だからだ。
さあマイナスの棒を近づけよう。
どうだ。
引き合っている。
プラスとプラスが反発しプラスとマイナスは引き合う事がよく分かったと思う。
ではガラスの棒に戻ろう。
フランクリンの考えはこうだった。
ガラスの棒をプラスにすればそれは同時にこの布をマイナスにしている事になる。
電気量保存の法則の考えだ。
ではこれがまだプラスに帯電しているか見てみよう。
大丈夫だ。
ではこの布がマイナスに帯電しているか見てみよう。
ほらなってる。
つまりこれがプラスになったらこっちは自動的にマイナスになるという事だ。
私が髪をくしでとかすと髪もくしも帯電する。
素材にもよるがこれは硬いゴム製だからとても帯電しやすい。
さてこのくしがマイナスになり髪がプラスになるのかあるいは髪がマイナスになりくしがプラスになるのか。
簡単に実験してみよう。
あの風船はプラスに帯電している。
少なくともしばらくはそうだ。
だからくしに風船が引き寄せられればくしはマイナスという事になる。
逆に風船が反発すればくしはプラスだ。
ほら引き寄せられた。
だからくしはマイナスだ。
そして私の髪はプラス志向というわけだ。
磁石にはN極とS極がある。
磁石はもう一つある。
これにも同じようにN極とS極がある。
N極とS極は引き合う。
S極とS極は反発し合う。
N極とN極も反発し合う。
だからこれは静電気と同じだと思うかもしれない。
でもそれは間違っている。
プラスチックの棒を例に説明しよう。
プラスチック棒のこちら側をマイナスに。
そしてこちら側をプラスに帯電させる。
プラスチックはとても優れた絶縁体だからうまくいきやすい。
ここにもう一つある。
こっち側がマイナスでこちらはプラスだ。
そしてマイナスはプラスと引き合いマイナスとマイナスは反発し合う。
しかしここで大きな違いを説明しよう。
私がこれを半分に切ったらこっちのプラスチックは全体がマイナスになる。
一方こっち半分はプラスになる。
ところが磁石の場合は私がこれを半分に切って…こっちがN極だとしてもこっちはS極にはならない。
片側がNでもう片側がS。
こっちがNでこっちがS。
これは腹立たしい。
私はN極とS極別々の磁石であってほしいんだ。
さっきのプラスチックのようになぜならないのか。
例えもう一度切ったとしても同じ事が起きる。
どんなに磁石を小さく切ってもいつも片側にN極もう片側にS極ができる。
だから電気とは随分事情が異なる。
これを磁石の「双極子」と呼ぶ。
「双」とは「二つ」という意味だ。
静電気は…それぞれ単独で存在できる。
しかし磁場のN極は単独では存在できない。
S極も同様だ。
ところが磁場の単極子モノポールを発見しようとしている物理学者もいる。
才能あふれる物理学者たちが何人も挑戦している。
もし成功したらノーベル賞ものだ。
ひょっとしたらそれは君たちの誰かかもしれないね。
電気と磁気どちらもプラスマイナスNとSがあるけどその本質は異なる事が分かりました。
そもそも電気とは何か?電気の正体を解き明かしていきます。
今日私たちはフランクリンの時代には分からなかった多くの事を知っている。
原子は原子核を持っている事を知っている。
その原子核は陽子と中性子からなり陽子はプラスの電荷を持っている。
中性子には電荷がない。
更に原子は電子を持ち電子はマイナスの電荷を持つ。
例えば水素の原子を例に説明しよう。
水素原子には陽子が一つあり電子が一つある。
それぞれのプラスとマイナスの電荷の量は等しい。
だからお互いに打ち消し合って原子全体としては電気的に中性だ。
ではヘリウムはどうだろうか。
ヘリウムは二つの陽子を持つ。
そして二つの中性子も持つがこれには電荷がない。
そして電子も二つだ。
ヘリウム原子の場合でも二つのマイナスの電荷と二つのプラスの電荷が打ち消し合って全体は電気的に中性になる。
電子の質量は陽子や中性子の質量のおよそ2000分の1だ。
そして金属のような導体の中では質量の小さな電子は自由に動く事ができる。
しかし陽子はそんな事はできない。
このように電子が銅線のような金属の中を流れるのが電流だ。
では先ほどの風船に戻ろう。
この風船を電気的に中性にするのは簡単な事だ。
この風船は導体なので例えば私がこの風船にキスをすると電気は私を通じて地面に流れていってしまう。
電子が自由に動けるからだ。
だから私は簡単にこの風船を中性に戻す事ができる。
さあこれで電気は残っていないはずだ。
ここでプラスに帯電したガラス棒を近づけてみよう。
風船の表面の電子はプラスの棒に引き付けられ風船のこちら側に移動する。
すると反対側がおのずとプラスになる。
そしてここのマイナスとプラスの間の距離はここのプラスから棒よりも近いのでここの引き合う力はここが反発し合う力よりも強い。
…という事はプラスに帯電したこのガラス棒を近づけていくとたとえ風船全体が電気的に中性でも棒に近寄ってくるはずだ。
この現象は物理学ではとても重要だ。
これを「静電誘導」と呼ぶ。
ほらこちらに寄ってきた。
予想どおりだ。
マイナスの棒でも同じ事ができるのでお見せしよう。
この棒をマイナスにするとこちら側がマイナスになりこちら側はプラスになる。
だからこの棒がマイナスであっても風船はやはり棒に近寄ってくるはずだ。
これが静電誘導だ。
ではうまくいくか試してみよう。
結果は明らかだ。
引き合っている。
静電誘導だ。
さてここからが少しやっかいだ。
ここにあるゴム風船は導体ではない。
ここに1時間以上そのままにしてある。
誰も触っていないし何かでこすったりもしていない。
だからこの風船は電気的に中性だと考えてよいだろう。
そしてゴム製だから絶縁体だ。
というわけでこれは電気を通さない風船だ。
電子は自由に移動する事はできない。
プラスに帯電したガラス棒を近づけてもさっきの場合のように電子がこちら側に移動する事はない。
だからきっと君たちはこの風船はガラス棒に引き寄せられないと思うだろう。
しかしここでちょっと違う事が起こる。
誘導の一種で「誘電分極」と呼ぶ現象だ。
この風船の表面にある原子が少し楕円形に変形する。
そして電子は以前よりもこちら寄りになるのだ。
こっちが原子核だ。
電子は原子を離れる事はできない。
風船が金属ではないからだ。
電子は原子からも陽子からも離れられない。
しかしこちら側に寄るようになる。
そして多くの電子がそうなるとこちら側がマイナス寄りになりこちら側がプラス寄りになる。
すると風船は棒に引き寄せられる事になる。
では実験してみよう。
棒を風船に近づけていくとひょっとすると風船は急に大きく動くかもしれない。
そして棒に触れてしまうかもしれない。
しかし重要なのは引き寄せ合っている事を確認する事だ。
衝突は避けられないかもしれない。
しまった!くっついた。
確認できただろうか?風船の動きが急だったのでよける事ができなかったがこれが誘電分極だ。
先ほどと同じ現象だ。
これが古代ギリシャ人が琥珀をこすった時枯れ葉が引き寄せられた理由だ。
こすったガラス棒で中性の絶縁体を引き付ける事ができるのだから同じ原理が枯れ葉でも通用するはずだ。
こすった琥珀を枯れ葉に近づけた時誘電分極が起きてお互いが引き寄せ合った。
別の実験でお見せしよう。
使うのは枯れ葉じゃない。
琥珀も使わない。
使うのは私の「くし」だ。
実験を見やすいように教室を少し暗くしよう。
ここに紙吹雪を用意した。
これだ。
見えるかな?ギリシャ人が使った琥珀の代わりがこれだ。
この紙吹雪が枯れ葉の代わりだ。
さて髪をとかそう。
くしがマイナスに帯電するのはさっき見たとおりだ。
さあよく見てくれ。
見えただろうか?ではここで一つ問題だ。
学生なんだから質問に答えてもらおう。
よく見ていた人は気付いたかもしれないが紙吹雪はくしにくっついた瞬間にすぐに反発して離れた。
その原理は明白だ。
マイナスに帯電しているくしにくっついた瞬間に紙吹雪もマイナスに帯電するからだ。
誘電分極によって紙吹雪はくしに引き寄せられそしてくっついてマイナスに帯電するとお互いに反発するようになる。
ところがこの時くしについたままの紙もあるのだ。
これはなぜか説明してもらいたい。
宿題だ。
ではもう一度やろう。
反発して離れるのではなくくしに残っている紙吹雪に注目してほしい。
中にはついたり離れたりするものもあるようだ。
しかし今は大部分がくしに残っている。
これはどう説明できるだろうか?答えはこうです。
紙吹雪が反発するのはくしが持っていたマイナスの電荷が紙吹雪に移動する事で紙吹雪もマイナスになったからでした。
でもやがてくしにたまっていた電荷が減って電荷の移動が十分に起きなくなります。
そうすると紙吹雪は誘電分極によりくしにくっついたまま残るというわけです。
ここに中性のゴム風船がある。
これも絶縁体だ。
これをこすって静電気をためてみよう。
ナイロンやポリエステルだと特にうまくいくんだ。
以前コットンのシャツでも試した事があるがこっちの方が絶対いい。
かれこれ46年もこんな事をやってきたんだから間違いない。
では風船をこすってみよう。
ゴム風船がマイナスを帯びて私がプラスなのかあるいはその逆かはあまり重要ではない。
風船が電気を帯びる事が大事だ。
さあくっついた。
なぜくしに紙吹雪がくっついたままなのか分かればこれも説明できるはずだ。
ここにもう一つある。
きれいな風船だ。
これもくっつく。
ちっちゃい風船もあるぞ。
かわいいだろう?これを帯電させるのは簡単だ。
ほら。
(笑い)あっちと同じ事だ。
ではもう一つ実験だ。
でも私はこれで刑務所送りにされてしまうかもしれない。
まずは誰か実験台が必要だ。
君はどうだ?とても適任に見える。
さあこっちに来て。
名前は?ネルソンです。
何?ネルソン。
そうか。
ネルソンこれから君をぶったたく。
(笑い)科学のために犠牲が必要なんだ。
分かりました。
覚悟はできたか?まあ。
ではこっちに来てくれ。
君には特別な椅子を用意した。
この椅子は電気を通さない。
そしてこれを着てくれ。
魔法のジャケットだ。
似合ってるぞ。
では椅子に座って。
気をつけて。
落ちないように。
で座って。
ではネルソン。
これから毛皮でぶったたく。
(笑い)その前に私はこの分厚いプラスチックの板に乗らなくてはいけない。
君を毛皮でたたくと君が帯電されるのと同時に私も帯電する。
君がプラスになれば私はマイナスになる。
君はその椅子に座っているから静電気は逃げない。
私もプラスチックの上にいるから電気は逃げない。
そしてみんなには君をたたけばたたくほど静電気がたまっていく様子を見てもらいたい。
さあこれは金属製の飾りだ。
クリスマスツリーに飾るものだ。
これはとても薄いアルミでできている。
さあこれを手に持ってくれ。
そして私も一つ持とう。
君の体が電荷を帯びると君の手も帯電する。
するとこの飾りにも電気が伝わる。
するとこの飾りがそれぞれ反発し合いこのように広がっていくはずだ。
これが静電気がたまっていく目印だ。
ではどれぐらいの電圧になるのか教えてあげよう。
少なめに見積もってみてだねざっと3万ボルトというところだろう。
では準備はいいかな?はい。
楽しみか?まあ。
緊張しているか?してません。
すべきだ。
ではいくぞ。
(笑い)ほら飾りを見て。
分かるだろう?広がっている。
私のも同じようになるはずなんだが。
おっと足がテーブルについていた。
これはよくない。
それにしても君のはすばらしい!私のもようやく開いてきた。
さて私の予測では既に3万ボルトは超えているはずだ。
では次はこうだ。
こっちを見て。
鼻に触ってみよう。
(笑い)どうだ?ビリッときただろう?はい。
3万ボルトだぞ。
はい。
これからが本番だ。
(笑い)次は助手のビルにネオン管を持ってきてもらう。
ネオン管の中に電気が流れると光るがそのためには数千ボルトも必要だ。
では君にはこの端を手で持ってもらう。
はい。
離しちゃ駄目だ。
とても高価で1個しかないんだ。
分かりました。
いや本当だ。
落としちゃ駄目だ。
ではこれからもう一度君をたたく。
さっき君の鼻を触った時二人の間に電流が流れ電気ショックを二人とも感じたね。
今度は鼻の代わりにネオン管の先端に触る。
すると私たちの間を流れる電気はネオン管を通って目に見えるようになる。
数千ボルトだ。
その瞬間ネオン管は光る。
分かりました。
さあもう一度だ。
(笑い)君のは絶好調だな。
君が魔法のジャケットを着ているからだ。
しかし私のも悪くない。
でも君のは本当にすごい。
本当にすごいな!これは3万ボルトをはるかに超えている。
ビル教室を暗くしてくれないか?では触ってみよう。
(歓声)これが電流だ!
(拍手)うまくいったな。
電気について理解が深まったところで次は磁気の話です。
電気とは切っても切れない不思議な関係。
そして発電の仕組みを解き明かします。
続いては磁気について話そう。
およそ2,500年前からギリシャ人はある種の石が鉄を引き付ける事を知っていた。
彼らはその石をマグネシア地方で見つけた。
それは酸化鉄の一種で今では「マグネタイト」と呼ばれるものだ。
11世紀には中国でこのマグネタイトを用いた方位磁針が発明された。
そして16世紀になるとギルバートが地球自体が磁石である事を発見した。
彼は地上の広い範囲をマグネタイトの針方位磁針を使って調査した。
マグネタイトの針は水やピンの上に置くと自由に回転し方位を指し示した。
この時針が常に北のどこかを指している事にギルバートは気付いた。
現在の北極点とドンピシャの位置ではないもののかなり近いところだ。
それは今では「地球の磁北極」と呼ぶ場所だ。
ところで知ってるだろうか?私たちが「北極」と呼ぶ場所は実はN極ではない。
なぜなら磁石のN極に引き付けられるのはS極だからだ。
北にあるから北極と呼ぶが磁石で言うとS極なんだ。
しかしそんな事は重要ではない。
とにかくN極は北を指す。
これが重要な発見だ。
1819年にはデンマーク人の物理学者エルステッドが極めて重大な発見をした。
歴史的に非常に大きな出来事だ。
彼は磁石の針が電流に反応する事を示したのだ。
別の言い方をすれば彼は電気と磁気を結び付けたのだ。
これが研究の爆発的な進歩を19世紀にもたらした。
アンペールやファラデーボルタヘンリーといった科学者が次々と成果を上げた。
そして彼らの電気と磁気の研究をスコットランドの理論物理学者マクスウェルがついに「統一場理論」の基礎としてまとめ上げた。
彼は古典電磁気学を確立し電気と磁気の理論を統一したのだ。
もともとは電気と磁気は二つの異なるものと見なされていた。
しかしマクスウェルの統一理論の中ではこの二つが実は密接に関係していて一方はもう片方なしには存在できない事が証明された。
彼は有名な「マクスウェル方程式」と呼ばれる4つの方程式にその研究をまとめた。
しかしとても難しい方程式なのでそれを見たら君たちは教室から逃げ出してしまうだろう。
それに日本の視聴者もきっとテレビを消してしまうに違いない。
だからここでその方程式を紹介するのはやめておこう。
しかしMITの授業では私はこの4つの方程式を解説するために36回もの講義を行う。
そしてこの方程式を理解しこの式を通して現象を見る事ができるようになると全く新しい世界の美しさが目の前に開けるはずだ。
では一つ実験を見せたい。
これは歴史的にとても重要な実験だ。
少し教室を暗くしよう。
ここに方位磁針がある。
そしてこれは銅線だ。
方位磁針が今指している方向は重要ではない。
普通は北を指すのだがなんと言ってもここはMITだからあちこちで磁力を使う研究をしていてこれが何に反応しているか分からない。
だから方位磁針は勝手な方向を指している。
これからこの銅線に電流を流す。
車のバッテリーを使ってだ。
最初はこちらの向きに流す。
そのあと電流を逆向きにする。
ではいくぞ。
これはエルステッドのやった実験だ。
電流が銅線を通ると方位磁針が反応する。
さっきとは違う向きを指した。
これは驚異的な発見だった。
19世紀の物理の概念を一変させた。
つまり電気と磁気を結び付けたのだ。
電流を止めるとコンパスの向きは元に戻る。
逆向きに電気を流すとまた回転するが今度は逆向きに動く。
つまり銅線をどちら向きに電流が流れているのかも方位磁針で分かるという事だ。
電流は電荷が動く事でできる。
その流れが電流だ。
この実験で分かったように電流が磁場を作り出す事ができるなら次の疑問は…その質問に答えを見つけたのがファラデーだ。
これも極めて重要な歴史的発見だ。
ファラデーはまさに磁石を動かす事で電流が生まれる事を確かめた。
その実験をこれから見せよう。
やり方はこうだ。
まずとても強力な磁石を用意する。
この磁石だ。
ここに銅線も用意した。
何千回も銅線を巻いたコイルだ。
何千回もだ。
銅線には表面に薄く絶縁処理が施してある。
だから銅線同士は絶縁されているんだ。
これが一方の先端だ。
そしてもう片方がこれ。
そしてここに電球をつなげる。
この磁石を手に取りコイルの方向にとても速く動かすと私はファラデーと同じ実験を再現した事になる。
磁石を動かす事で磁場を変化させるのだ。
するとコイルに電流が生じ電球が光る。
磁場を変化させると電流が発生する事を証明する実験だ。
しかしこの磁石は非常に重い。
だから今回は磁石を動かす代わりにコイルを磁石に向かって動かす。
その方が楽だ。
教室を少し暗くして光がよく見えるようにしよう。
では磁石の間でコイルを動かしてみせよう。
最初はとてもゆっくりやる。
少しだけ光る。
また少し。
もっと。
もっと。
ファラデーは動きが速ければ速いほど明るく光る事も発見した。
私だってものすごく光らせる事もできる。
ほら速く動かせばこのとおりだ。
おっと。
あまりにも速く動かしたから電球が切れてしまった。
(笑い)大丈夫だ。
心配いらない。
予備はいくらでもある。
ほら大丈夫だ。
また光っている。
もう一度速く動かしてみよう。
明るい光が見えただろう。
また駄目になったかな。
まだ大丈夫だ。
でも君たちはまた電球が切れるのを期待してるだろう。
では…。
ほら切れた。
(笑い)この発見を世間に発表したあとファラデーは「これが何の役に立つのか?」と聞かれた。
彼の答えはこうだ。
「いつの日かこれに税金さえかける時がくる」と。
ファラデーの発見は私たちの経済を動かすようになった。
ファラデーの発見がなければ私たちはいまだにろうそく暮らしで18世紀から生活に進歩はないだろう。
テレビもなければ携帯もゲームもGPSもラジオも電車も車も飛行機もない。
つまらなくて死んでしまう。
ファラデーの発見のおかげで私たちの社会は機能している。
では世界中で使われる膨大な電力を私たちはどうやって作っているのだろうか?実はそれもさっきの実験と同じく磁石とコイルのようなものを発電所の中で動かして電気を作っている。
しかしもちろんタダではできない。
石炭や石油原子力水力風力などを使っている。
しかしどの場合でもコイルと磁石で発電していると思ってよい。
これは私の懐中電灯だ。
我が家ではちょくちょく停電が起きるからこれが必要だ。
これは手動で発電できる。
握るとコイルが磁場の中を動く。
それで発電できる。
ファラデーの法則の実用品だ。
しかしこれは手が疲れる。
発電というものには労力がかかるのだ。
ではパワー仕事率という考えを紹介しよう。
物理学において仕事率とは何か?仕事率の単位は…「エネルギー毎秒」。
つまり「ジュール毎秒」だ。
「ジュール」はエネルギーの単位だ。
この「ジュール毎秒」を言いかえると「ワット」になる。
1ジュール毎秒が1ワットだ。
この方が簡単だ。
電球を買う時に「何ワットの電球を下さい」と言えば分かりやすいのと同じだ。
例えば100ワットが必要な電化製品を持っているとする。
動かすためには1秒間当たり100ジュール必要だという事だ。
その電化製品を10時間動かしたとしよう。
すると使ったエネルギー量は…このように表す。
「1キロワット時」だ。
私がこれだけの電気を使用すると電力会社は私におよそ25セント請求する。
明細を見れば分かるが1キロワット時当たりの料金は大体25セントだ。
では腕力のある人に手伝ってもらって発電する実験をしたい。
誰かやってみたい人は?人力での発電実験だ。
どうだ?君は体力ありそうじゃないか。
これを回してくれ。
すぐに始めていい。
少し教室を暗くしよう。
時計回りですか?どちらの方向でも大丈夫だから回してくれ。
するとこの電球がつくはずだ。
必要なのは15ワットだ。
君は頼もしいな!さあ15ワットだ!まさかもう疲れたのか?15ワットなんて楽勝だろう?ちょっと待って。
君には簡単すぎる。
これを見てくれ。
ここに6個の電球がある。
全て15ワットだ。
だから15掛ける6で大体100ワットというところだ。
さあもう一度頑張れ。
(笑い)そう気合いを入れて。
その調子だ。
どんどんやってくれ。
続けて。
ず〜っとやってて。
(笑い)
(拍手)君の名前は?マイケルです。
マイケル。
君が断れないような取り引きをしよう。
この作業を10時間続ければ君が作り出すエネルギーは合計1キロワット時になる。
100ワットを10時間で1キロワット時だ。
通常は25セントを電力会社に支払うところ君にはまるまる1ドルあげよう!
(笑い)大もうけだ!1ドルなんてすごい得したな。
えっ?本気じゃないですよね?
(笑い)私はいつだって真剣だ。
(笑い)それにしても電力会社はなぜ25セントでできるのだろう?どうやったらそんなに安くなるんだろうか?それは石炭や石油のおかげだ。
しかしいつまでも続くものではない。
じゃあ原子力なら無限に使えるのか?しかし問題だらけだ。
スリーマイルでの事故を覚えているね?チェルノブイリは?そして日本は?福島は?私たちは深刻なエネルギー問題を抱えているという事だ。
(笑い)これは決して体力では解決できない問題だ。
だから君たちの頭脳で解決してほしい。
(拍手)2014/02/21(金) 23:00〜23:55
NHKEテレ1大阪
白熱教室海外版アンコール MIT白熱教室(3)「電気はどうやって作るのか?」[二][字]
MITの名物教授ルーウィン教授の抱腹絶倒の物理学講義。第3回は「電気」。静電気を引き起こし髪を逆立てたルーウィン教授が電気の仕組みをわかりやすく解説する。
詳細情報
番組内容
世界最高峰の理系大学MITの名物教授ルーウィン教授の抱腹絶倒の物理学講義。第3回は「電気」。私たちの生活に欠かすことのできない「電気」。でも、そもそも電気とは何だろう? 電気の正体を明かし、電気と磁気の切っても切れない不思議な関係を紹介する。なぜ磁力を使って発電することができるのか? 静電気を引き起こし体のあちこちに風船をくっつけ、髪を逆立てたルーウィン教授が、電気の仕組みを分かりやすく解説する。
出演者
【出演】マサチューセッツ工科大学教授…ウォルター・ルーウィン
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
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