寒〜い季節。
甘酒を一口すすればその優しい甘さに心まで温かくなる。
甘酒は日本古来のスイーツ。
この甘酒がかの太宰治の作品に登場します。
自らずばぬけていると評した小説…物語は東京・上野の甘酒屋から始まります。
主人公の私はかなわぬ恋の相手に似た一人の女の子が働く甘酒屋に通っていました。
しかしこの甘酒屋で出会ったある男によって主人公私の人生が思わぬ方向に転んでいくのです。
今夜は甘酒が登場する太宰の不思議な作品と共に日本で長〜く愛されてきた甘酒の魅力に迫ります。
光る石をたどれば行き着く不思議な家にあのお菓子の家のヘンゼルとグレーテルの末裔が暮らしています。
彼らが振る舞うおいしいお菓子の物語をご賞味あれ。
お〜いヘンゼル君?お〜い!お〜いおいおいおい…。
あっすみません。
始まってます。
「グレーテルのかまど」へようこそ。
ちょっと〜。
ごめんごめん。
何よ〜。
太宰治じゃないの?そうそうそうそう。
どうしたの?ちょっとねかまどこれ見て。
お〜う。
そう。
だからねこうやって読んで捜してたんだけど「走れメロス」にもないし「人間失格」にもないしさ〜。
そんなところにはないです。
もしかしてかまど知ってんの?当たり前ですよ〜。
え〜。
はい。
じゃあひもといてみましょうか。
はい。
いっちゃいましょう!という事で今宵ひもとくのは…太宰治の甘酒。
39歳という若さで命を絶った作家…「走れメロス」「人間失格」など数々の名作を残し今も熱烈な支持を受けています。
その中の一つ友人への手紙にこう書き残した作品があります。
昭和10年デビュー間もなく発表された「ダス・ゲマイネ」です。
主人公は上野の大学でフランス文学を学ぶ25歳の私こと…悩みを抱えながらもお目当ての女の子が働く上野公園の甘酒屋に通っていました。
ある日そこで怪しい一人の男に出会います。
馬場と名乗るその男はまた甘酒をすすりながら…。
甘酒屋から始まるこの物語について専門家はこう語ります。
その後一緒に同人誌を作ろうという馬場を信じ私は誘いに乗ります。
更に馬場は絵描きの佐竹新進作家の太宰治という人物を私に紹介。
芸術家気取りの4人の若者が集まります。
ところがバイオリニストを自称する馬場に対して太宰は…。
…と皮肉るのです。
自意識ばかりが高く中身の伴わない若者たち。
彼らは皆太宰自身の分身だといいます。
同じ年太宰は「行」を発表。
それは数多く小説を書いた男が売れずに終わってしまうという物語でした。
この作品が第1回芥川賞の候補となり注目を集めます。
「ダス・ゲマイネ」はそんな自分自身を風刺した作品だというのです。
酒ではなく甘酒を登場させた「ダス・ゲマイネ」。
理想とかけ離れた中身の伴わない空っぽの若者を描いたお話は驚きの結末を迎えます。
う〜ん。
何か不思議というか難しいというかねえ。
甘酒すすってみてよ。
甘酒?あの作品のように。
(すする音のまね)こんな感じ?全くちょっと…。
はい次いってみましょう。
次いこう。
はい。
甘酒ってね主に造り方が2つあるの知ってますか?あっそうなんだ。
そうなんです。
一方はこうじを使ったものでありもう一方は酒かすを使ったものですよ。
…でかまど今日はどっちなの?グレーテル飲み過ぎですから。
あっじゃあアルコールの入ってない方だ。
こうじでいきましょうか?キメテどうぞ!こうじを使った体も温まる優しい甘酒を目指します。
ではでは甘酒を造りましょう。
はいはいはい。
もち米とこうじはね1対1ですよ。
すごい覚えやすいね。
沸騰したお湯にまずお米を入れて5分ゆでます。
OKですよ。
OK?あ〜幸せな匂いだねこれって。
そうだね。
混ぜてちょっと。
これで電子レンジにかけますよ。
10分。
おかゆみたいになってるよかまど。
なってますでしょ〜?はいじゃあここでオキテどうぞ。
はい。
どういう事?あのねこのおかゆの中に米こうじを入れるんですけど。
入れてみて下さい。
入れていい?OK。
待たれよ。
何?おかゆが65℃ぐらいで米こうじを入れないと甘くなりません。
えっ何で?教えてよ。
65℃ぐらいにしないと米こうじが働いてくれないんですよ。
ここに誰かいんの?これ。
こうじさんが。
こうじさんいるんですよ。
よ〜く見てみ。
働き者のこうじさんいるから。
えっいる?優しい甘みの甘酒。
その味はこうじによって生み出されます。
こうじはどんな力を持っているのでしょう?40年にわたり発酵の研究をする小泉先生に教えて頂きました。
こんにちは。
こうじ菌の中でもブドウ糖を作る強い力を持つのが…日本特有のかびです。
オリゼの生み出す天然の甘みは1,000年以上前から日本人にとって欠かせないものでした。
また甘酒には甘いだけじゃないパワーが秘められていました。
夏疫病がはやり命を落とす人が多かった…この季節になると町に現れたのが甘酒売り。
人々は甘酒を飲んで栄養をとったというのです。
栄養にも恵まれた甘酒。
それは古くから日本人の命を守ってきたソウルスイーツなのです。
甘酒ってそんなに栄養が豊富だったなんて知らなかったな。
そうよ。
全てはこうじ菌が働いてくれてるからなのよ。
えっ?さっきからさ「こうじ」っていう言葉を聞くとドキッとしちゃうんだけど。
まっいっかそれは。
うんいいんじゃない。
こうじ菌が働いて発酵しやすいのが65℃って事ね。
そうなのよ。
なった?うん。
いいじゃないですか。
じゃ急いで瀬戸康史入れて混ぜて。
え?いやいや。
混ぜて。
米こうじじゃないの?米こうじ入れて混ぜて。
底の方からぐいぐい混ぜて下さい。
温度キープね65℃。
OK。
今58℃とか。
やっぱちょっと下がるんだね入れると。
今64.2。
いいんじゃないでしょうかね。
OK?温度下げちゃいけないから。
急いで。
はい手早くこぼさないように。
よしこうじ頑張れ!こうじ君頑張って。
よしこうじ頑張れ!かまどこのあとどうすんの?6時間待つ。
え!?ろ…6時間。
太宰治の故郷…古くから暮らしの中でこうじを使ってきました。
ここは明治14年から続く町のこうじ屋さん。
昔から米どころであるこの地域では米とこうじを物々交換していました。
もちろんこうじを使った甘酒もなじみ深いものです。
五所川原市金木町に残る太宰の生家でもよく甘酒が造られていたといいます。
津軽屈指の大地主の家に六男として生まれた太宰。
多くの使用人がいて彼らが食事作りを任されていました。
ある記録によれば…。
病弱な母や権威ある父に親しめなかったという太宰。
彼の面倒は使用人が見ていました。
家が裕福な事に引け目を感じて育った太宰。
上京後自殺未遂や薬物中毒を起こし故郷との間に溝が出来ていきます。
故郷そして自らの家系を批判しながらも津軽という土地には特別な思いを抱いていました。
故郷に愛憎入り乱れた複雑な思いを抱いていた太宰。
使用人たちが造る甘酒はいとしい津軽の一部分だったのかもしれません。
甘酒出来るの待ってる間にさもう一品何か作んない?やる気ですね。
もちろん。
じゃあね太宰さんの故郷の津軽の名物を使って一品いきますか?津軽といえば?津軽といえば後ろ見て見て見て見てみ。
おっ?ほらほらほらほら〜。
りんご。
りんごチップスといきましょうか。
OK。
はい。
お〜い6時間たちましたよ。
おっ待ってました。
保温水筒開けてみましょうか。
さてさてさて〜?さて〜。
(2人)お〜。
何か…粒々してるね。
ねえ〜。
ちょっと味見してみて?おお〜。
ん?これ砂糖とか何も入れてないもんね?そうですよ。
甘い!でしょ?すごく甘い。
ちゃんとうまく発酵しておりますね。
はいじゃあここで1つオキテ。
はい!今度は熱くすんの?そうなんですよ。
あのまま置いとくとどんどん発酵が進んでってこうじさん頑張っちゃうから。
頑張り過ぎちゃうんだね。
頑張り過ぎちゃって。
そういうとこあります。
もう酸っぱくなっちゃう訳。
熱くするとこうじ菌の働きが弱くなりますから。
かまどふつふつしだしてきたよ。
じゃあそれでいいですよ。
一気に氷で冷やしてほしい。
ほうほう。
冷蔵庫で保存すればOKですよ。
ちょっと一息TeaBreak。
甘酒の今風の楽しみ方をどど〜んとご紹介!女性が流行のおしゃれを求めて集う街自由が丘になんと甘酒専門店があるのよ〜。
こちらは甘酒に梅果汁と蜂蜜を合わせた…酸っぱさと甘さの絶妙なハーモニー。
抹茶風味やみかん果汁と混ぜたものなどいろんな味が楽しめちゃうの。
甘酒は飲むだけじゃないの。
アイスクリームにもなっちゃいました〜。
甘酒がほ〜んのり。
癖になる!和菓子にも甘酒をどうぞ。
こちらはおまんじゅう。
ふわふわの皮の中に甘酒さんが入ってますよ。
最後は甘酒をこよなく愛する小泉先生の取って置き〜!小豆と甘酒そこにみりんで甘さをプラス!こりゃ〜いいですよ体にも。
それを食べて元気はつらつと。
こうじパワー全開の甘酒!あなたも是非そのバリエーションをお試しあれ〜!へえ〜。
甘酒っていろんな楽しみ方ができるんだね。
ねえ〜。
何か甘酒見直しちゃうでしょ。
何かやってみたい?やろうよ!甘酒ゼリーっていうのはどうでしょう?いいね!いいでしょうか?じゃあかまど様あのね寒天溶かしておきましたんですよ。
ちょっとかまど様。
甘酒を加えて下さいな。
はいはい。
これ全部いっちゃっていいの?はい。
なじみやすいようにこれミキサーにかけといたんです。
これでゼリーもばっちしだね!う〜ん。
…にしても姉ちゃん遅くない?ホントねえ。
先にさ甘酒も飲む準備しちゃおうか。
じゃあそうしましょうか。
うん。
好みだけどあんまり加え過ぎると薄くなっちゃってね。
周りふつふつってしてきた?すっごいしてきた。
あっじゃあやめよやめよ。
OK。
よ〜し。
完成です。
やった。
(チャイム)おっ姉ちゃん帰ってきた。
姉ちゃんお帰りちょっと遅いよ〜。
寒かったでしょ?甘酒飲もう!もち米とこうじだけで造った天然の甘さの甘酒。
津軽出身の太宰にあやかりりんごチップスを添えて。
甘酒ゼリーには黒糖シロップでこくをプラスして。
寒い季節優しく深〜い味わいの甘酒で身も心も癒やしてみて。
甘酒屋が登場する「ダス・ゲマイネ」。
ドイツ語で…卑しく下品である事を意味しています。
それと似たような言葉が太宰の故郷津軽にもありました。
「そんな事まいねまいね」って言うんです。
「だすねまいね」。
「だから駄目なんだよ」という津軽弁的に解釈もできるというのがね「ダス・ゲマイネ」なんですよね。
「ダス・ゲマイネ」の最後何を信じればいいか分からなくなった私は町に飛び出します。
そしてぶつぶつとつぶやくのです。
電車にはねられて私は死んでしまうのです。
理想と現実のはざまで空回りする若者を描いた「ダス・ゲマイネ」。
彼らを風刺するために太宰は甘酒を登場させたのでしょうか。
自分自身を追い込み太宰がつづった物語。
それは生きるとは何かを今も私たちに問いかけています。
今日の「グレーテルのかまど」いかがでしたか?今回甘酒をきっかけに太宰の作品に触れ彼の事をもっと知りたい。
そう思いました。
ではまたこのキッチンでお目にかかりましょう。
ではちょっと失礼して。
あ〜寒い。
寒っかまど。
だから寒いからもう〜。
寒っ。
温かい甘酒でも頂いて下さい。
そうだね頂きま〜す。
お〜。
体がホントに温まるねしんから。
合うんじゃないんですかそのりんごチップスとも。
このね甘酒の甘さとねチップスの酸味がいいですね。
ゼリーはどうなのかしら?しょうがの香りが…すごい来る。
かまどにも頂戴。
いや駄目駄目。
何で駄目?明日ぜんざいとかアイスに使うんだから。
それも頂戴。
駄目!2014/02/21(金) 21:30〜21:55
NHKEテレ1大阪
グレーテルのかまど「太宰治の甘酒」[字][デ]
太宰治の初期の作品の中に甘酒屋が登場する小説がある。「ダス・ゲマイネ」という題名の、太宰自ら「ずばぬけている」と評したその物語の中身とは?また甘酒の魅力は?
詳細情報
番組内容
「人間失格」「走れメロス」など、数々の名作を世に残し、39歳という若さで命を絶った作家・太宰治。青森の大地主の家に生まれ、故郷への愛憎相半ばする思いの中、東京で「自分とは何者か」を問い続けた。理想と現実のギャップを埋められず、空回りする若者像を描いた「ダス・ゲマイネ」は、まさに太宰自身そのものだ。ではなぜ甘酒だったのか。こうじから作る本格的甘酒のレシピを紹介しながら、太宰が追い求めたものを探る。
出演者
【出演】農学博士・東京農業大学名誉教授…小泉武夫,東京大学教授…安藤宏,瀬戸康史,【語り】キムラ緑子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
バラエティ – 料理バラエティ
情報/ワイドショー – グルメ・料理
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