ハートネットTV シリーズ がんサバイバーの時代 第3回▽人生を生き切るために 2014.02.05

(山田)こんばんは。
「ハートネットTV」です。
月曜からお送りしている「シリーズがんサバイバーの時代」。
エッセイストの岸本葉子さんとお伝えしていきます。
今日もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
そのがんサバイバーというのはがんになっても人生を自分らしく生きる事を大切にしようという考え方です。
第1回で紹介したようにがんにはいろんな時期があります。
まず急性期は診断後手術や抗がん剤治療など医療が大きく関わる時期です。
それが終わったあとも延長期長期的生存期と人生は続いていきます。
その道筋を豊かなものにというのががんサバイバーの考え方です。
そして今回は最終ステージ終末期です。
最期まで自分らしく生き切ろうとする人たちに目を向けていきます。
サバイバーという言葉をがんから生還した人って考えるとこの終末期というのは「今日だけ違う話じゃない?」って思われるかもしれません。
でも私がんで亡くなっていったたくさんの仲間がいるんです。
その人たちの最後の日々を思い出すとこの終末期とサバイバーって決して別の話じゃないよって感じています。
それではその終末期残された時間を自宅で過ごそうと決めた人たちと家族の日々をご覧下さい。
今年1月肺がんと診断された天野吾郎さん72歳です。
天野さんには毎朝欠かさず続けている事があります。
(天野)よっこらせと。
(天野)44.8。
その日の体重血圧体温など健康に関するデータを測り記録するのです。
今朝の。
44.6。
天野さんは24時間酸素吸入を必要とする生活をしています。
がんは胸の骨に転移し圧迫骨折を起こしており痛みと呼吸の苦しさが増してきています。
脈拍61。
鎮痛剤で痛みを抑えていますが一度体調のバランスを崩せば命に関わる綱渡りの状態が続いています。
(天野)体重44.6。
排泄2回。
それからおしっこが4回。
がんが見つかった時天野さんは治療を行うかどうか重い選択を迫られました。
治療によって体調のバランスが崩れ死に至る危険があると説明されたのです。
医師から告知を受けたその日天野さんは「運命の日」と書き記しました。
「じゃあ先生。
僕は肺がんはこのままでいいです」と。
「今のままの状態で積極的な治療はいいですから」とそう言ったら先生が2月の8日なんだけど今の状態このままでいくというと余命は半年はなんとかもつが1年はきついですよと。
僕なりに一つの節目としてはいよいよもっと本気の覚悟せえよというふうに受け止めてるから土壇場になってうろたえるなよと。
こんにちは。
(天野)あっ先生いらっしゃい。
どうもこんにちは。
どうですか?6月から病院の紹介で在宅ケア専門のクリニックに訪問診療を頼む事にしました。
可能な限り自然体で自宅で暮らそうと決めたのです。
胸の音だけ聴いておきましょうかね。
井尾和雄さんは抗がん剤などがんに対する治療はしません。
がんによって起きる痛みや苦しみを和らげる緩和ケアを専門に行っています。
は〜い。
大丈夫ですね。
井尾さんは痛い時すぐに使えるよういくつかの薬を家に置いてもらっています。
(井尾)吐き気がある時呼吸が苦しい時これはもう痛みがすごく強い時ですね。
これは熱がある時これはお通じが出ない時そういう時のためのとりあえず緊急用の座薬。
これはもう皆さんにお出しして冷蔵庫に入れておいてもらって何かあった時はご家族に使ってもらう。
お薬うまく使ってやられていくしかないですからね。
数字的な事とか病状的な事を考えれば厳しいのは厳しい。
まあまあのんびりやって下さい。
のんびりやります。
(井尾)それが一番です。
この日天野さんは新しい眼鏡を受け取りに出かけました。
余命宣告から半年後白内障の手術を受け度が合わなくなったためレンズを交換したのです。
手術に際し「視力が安定するまで3か月かかり時には失明するリスクもある」と説明されました。
それでも手術する事を選んだのです。
大丈夫大丈夫。
自民党の中もガタガタじゃん。
消費税をいつ上げるか。
息のあるうちはちゃんと普通の生活でね普通に到達したい訳だから。
見えなきゃ見えるようにしておきたいなと。
それはテレビを見たり新聞を見たりっていうのが不都合だっていう事よりも見えてるっていう事自体が残された時間僕にとっての精神生活上これは大事だなと。
目がだんだん衰えていくと。
体力もだんだん衰えていくと。
それで結局それを迎えるっていうのはこれはちょっとね俺としては自分の本意じゃないと。
命の終わりが見えてきた時自分らしく生き切るために何が必要か。
井尾和雄さんが一番大切に考えているのは本人と家族の覚悟です。
(井尾)すいません。
ごめんね。
残された時間を明確に伝えどこで何をしたいか決めてもらうのです。
この日相談に訪れたのは末期の大腸がんの男性の妻と娘です。
男性は2年前病院で手術したあと抗がん剤治療を受けていましたが副作用が強いため継続を希望しませんでした。
そして自宅で最期まで過ごしたいと望んだのです。
でもちょっと黄疸が出始めちゃって水がたまりだしちゃって10日目ちょっと10日ぐらいたっちゃったって事だからここからが大変。
だから意識がなくなるのは時間の問題。
もうボ〜ッとしててウトウトしてる時間の方が長いと思うけど動くのももうほとんど無理だし。
そのつもりで見た方がいいと思う。
こんにちは。
お邪魔します。
相談の結果診療する事が決まるとその日のうちに自宅を訪ねます。
一日で容体が大きく変化してしまう事も多いからです。
よろしくお願いします。
どうぞ。
狭い所ですので…。
(井尾)どうですか?体調は。
そうですね今日はそれでも比較的いい方かな。
いい方。
だるいでしょう?だるいです。
井尾さんは本人に病状をはっきりと伝え意志を確認します。
とにかくもう最期まで在宅がいいなというのが一番あったもんですから。
(井尾)その辺はだからもうおうちでできるだけ頑張っていけばいいと思います。
やれる事は僕全部やるから。
はいお願いします。
やる事やりたい事あったらやって下さい。
せっかくうちにいるんですから。
そうですね。
(井尾)それが一番だと思います。
割と無趣味なもんですから。
(井尾)あっホント?何をしようかな。
本を読んだりするのもだんだんかったるくおっくうになってきちゃったもんですからね。
おかあさんさ一緒に座って。
隣に。
最初の訪問では必ず家族全員の写真を撮ります。
24時間体制で男性を支えるほかの医師や看護師がすぐ対応できるようにするためです。
(井尾)うちの先生たちにお顔を見せておかないと。
僕しか知らないから。
いつどうなるとか何とかっていうのはそうほとんど考えないですね。
いつごろまでなのかとかそういう事というのはほとんど考えないです。
生きられるとこまでこうやってのんびり家族の中で生きられればいいなと思ってます。
もう今のステージはここだから残った時間はこれぐらいだからだから今やれる事がどうですよどうしますかっていう事をちゃんと気持ちを持ってもらって覚悟してもらうためにはそこには事実をちゃんと突き詰めるしかそこに事実を示すしかないじゃない。
そのために僕はある程度はっきり大体全ての事は言いますよ。
残った時間の間に何ができる何ができる何がやりたいっていう事をさ順番にやっていけるじゃない。
それが次のエネルギーにつながる事だってある訳だから。
こんにちは。
こんにちは。
急に元気なくなりました。
ホント?気力がなくなったって事?食べられないって事?食べられなくなりました。
(井尾)食べられなくなった?青木健さん64歳です。
末期の胃がんのため5月から訪問診療を利用しています。
鎮痛剤で痛みは抑えられていましたがここ数日食べる量が減っている事を家族は心配していました。
(井尾)無理しないでいいですから。
ちょっとずつで。
(笑い声)
(井尾)最近なの?もともとは?このごろはね「食べたかったらどうぞ」みたいなね。
青木さんはスポーツが大好きで健康には自信がありました。
去年8月初めて受けた人間ドックで胃がんが見つかるまで自覚症状はありませんでした。
がんは既に肝臓と骨に転移していました。
抗がん剤治療のため2度入院しましたが青木さんは苦しさが増えるばかりで効果がないとして打ち切りたいと申し出ます。
その後も治療法を求めていくつもの医療機関を訪ねましたが有効なものは見つかりませんでした。
そして妻のふみ子さんとの時間を大切にしようと自宅で過ごす事を選んだのです。
少しでも一緒にいられる時間を長くと願うふみ子さん。
毎朝青木さんのためにニンジンとリンゴでジュースを作ります。
ある本に「ニンジンにはがんを抑える効果がある」と書かれているのを目にしたからです。
しかし青木さんはこの一杯を飲み干す事が難しくなっていました。
(ふみ子)リンゴが大きかったから飲みやすいでしょう。
今日リンゴがちょっと大きめのリンゴだった。
専門的な事は分かんなくても看護師さんがずっと一緒にいるよりはね30年間一緒にいたこんな私でも多少は…。
初めはホントにできるのかなと私も思いましたけど。
今となっては…。
青木さんはもともと大の読書家でした。
ところが最近筋力が衰え本を手に持って読む事が難しくなっていました。
そこで娘に頼みタブレットを買ってきてもらいました。
ベッドに寝たまま電子書籍を買い求めたり音楽を聴く事もできるようになりました。
大丈夫ですか?いやちょっとねここんところ…。
余命宣告を受けてから目の手術をした…訪問診療を始めると同時に訪問看護も頼んでいました。
最近痛みのため夜眠れず食欲が落ちています。
これ上げると痛いんです。
上げると痛いの。
この辺で?この辺がもう痛い訳。
この辺で痛くなる?ここがね。
これはこれで痛いんです。
痛いんだ。
井尾さんから痛い時に飲むよう医療用のモルヒネを処方されていましたが副作用があるのではと痛みを我慢していたのです。
この2〜3日あんまり調子よくないんですよ。
気分的にも調子よくないと。
オプソはのんでないんですね。
(天野)のんでないです。
オプソのんでみたらいかがですか?のんだらのんだで副作用があるじゃないですか。
でも今まで一回も使った事ないですよね。
もちろん一回も使った事ない。
できそうだったら試してみて下さい。
天野さんは次第に強まる痛みを我慢だけではやり過ごせないと薬をのむ事を決断しました。
あっ…ぐえ。
在宅ケア専門医井尾さんが今診ているのはおよそ100人。
自分に残された時間を知った時それをどう使うのかそれぞれの決断を見守っています。
お待ちしてました。
今呼んできますので。
ちょっと目ぇ見せて下さい。
末期のすい臓がんのため6か月前から診療を受けるようになった男性です。
ちょっとだけ。
えっ?男性は最期の時をどこで過ごすか自分の希望を切り出しました。
(井尾)やる事は全部やりました?会う人には会いましたか?こういう感じになっちゃいますね。
そうですね。
男性は最期を見越して自分で仏壇を選び葬儀場を決めるなどすっかり準備を整えていました。
この3日後希望どおりホスピスに移りそこで亡くなりました。
(セミの鳴き声)青木さんには毎年夏楽しみにしている事があります。
祭りです。
とりわけみこしには思い出がありました。
青木さんが町内会長をしている時にこのみこしを新調したのです。
祭りの日。
青木さんの家に2人の娘や孫が集まっていました。
1212。
(泣き声)何だよ恥ずかしがってんだよ。
孫の冬磨君が初めて子どもみこしに参加するというのです。
じいじ行ってくるよって。
じいじ行ってくるよ。
(ふみ子)頑張ってねだって。
ワッショイワッショイしてくるよって。
ねっ!行ってこよう。
青木さんは町内の人たちに自分のがんの事を知らせ今年は参加できないと伝えました。
家族が出払った部屋にみこしの掛け声が響きます。
(掛け声)コースを変更し青木さんを励まそうと町の人たちが立ち寄ってくれたのです。
(掛け声)・青木さん頑張れ頑張れ!・頑張ってよ!青木さん!祭りの5日後青木さんは家族全員に見守られ「ありがとう」と繰り返しながら息を引き取りました。
青木さんうれしかったでしょうね。
「青木さん頑張れ」っていう声も聞こえたでしょうし。
本人が最期まで少しでも納得して生き切ろうという気持ちっていうのはとかく「もっとこうすればよかったんじゃないかな」って後悔しがちな家族の皆さんも「ああよかったかな」って思えるでしょうし周りの地域の皆さんもあえてみこしのルートを変えたりして人の心を動かすっていう事につながるんですね。
私やっぱり正直悔しいです。
悔しい?青木さんも「去年は俺みこし担いでたのにな」とか「来年の祭りは俺聞けないんだな」とか無念でもあったと思います。
でもそうした悔しさとか無念とかがありながらあるいは受け止めた上で自分はどこでどう過ごしたいのかを本気で考えてあの形を選んだんだと思うんです。
何かその思いが家族もそして周りの人も動かしたんだなって思いましたね。
皆さんはどうご覧になったでしょうか。
ではもう一人ゲストをご紹介します。
国立がん研究センター中央病院緩和医療科長の的場元弘さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願い致します。
緩和医療に携わっている的場さんからご覧になって今VTRいかがでしたか?それぞれの方決断するまでにはとてもいろいろ悩まれたと思うんですね。
ご家族といろいろ話し合われたり自分はどうしたらいいんだろうという事をいっぱい考えられたと思います。
その中でそれぞれの方が自分がどこにいるべきなのかその時その時の状況に合わせてよ〜く考えてそして最終的に自分がいるべき場所は自宅だあるいはこの時期が来たらホスピスだというふうな事を決められたんだと思います。
その緩和医療とか緩和ケアというのは治療後にみとりというような形で行われるものかなと思っていたんですが…。
緩和ケアというと確かに終末期のみとりの時期だけに行われるものだというふうに考えられています。
そして実際にその時期に行われる緩和ケアもとても大事だと思いますけれども実は緩和ケアというのは診断されたがんと言われたその時から本来は全てのがんの患者さんに必要なものです。
治療の前には気持ちがとても沈んだりもともと痛みがある方もいらっしゃいます。
そして治療中の副作用そして治療のあとにも起こってくるさまざまな体調の変化に合わせて緩和ケアは常に提供されるので治療のあと前という事に関係なく全ての人に必要だと思います。
そして天野さんですがモルヒネを使って…。
随分副作用を心配して痛みを我慢してたっていう…。
最近ではお話を伺うと多くの方がモルヒネに対する知識はあって安心して使えますというふうな事をお答えになるんですけど実際に個別に患者さんにお話を伺うと「いやまだモルヒネはちょっと…」とご心配されるんですね。
やはりそれは中毒とかそういった事が心配なんだと思うんですけれども実際にはがんの痛みに対して医療用麻薬を使っても依存とかあるいは中毒といった事にはならないという事も科学的に証明されています。
そういう痛みをとり除くような緩和医療とか緩和ケアというのもその人らしさを支えるためって感じますよね。
私VTRに登場した皆さんそれまでの人生と切れてないなという印象だったんですね。
それまで例えば地域の中で活動してらした方には窓際までおみこしが来るとか。
何かそう思うと場所はそれぞれだろうけども在宅かホスピスか病院か。
でもそれぞれがどう生きたいかを考えてまたそれを支える医療があるんだなって今日は感じましたね。
そして医師とその本人との信頼関係というのはこれ的場さん本当に大事になってきますよね。
なるべく早く在宅の医師と出会ってあるいは訪問看護師と出会ってお互いの事をよく分かっているという事が大事だと思います。
そうする事で今までできない事ができるようになったりという症状を取っていくというお手伝いがしやすくなると思います。
今日はどうもありがとうございました。
2014/02/05(水) 20:00〜20:30
NHKEテレ1大阪
ハートネットTV シリーズ がんサバイバーの時代 第3回▽人生を生き切るために[字]

3回目は、東京・立川市にある毎年約200人を看取る在宅緩和ケア専門クリニックの現場から命の終わりを見つめつつ、「人生の締めくくりの時」を生きる人々の姿を伝える。

詳細情報
番組内容
3回目は、東京都立川市の在宅緩和ケア専門クリニックの現場から。毎年、約200人をみとる。その6割はがんで、本人・家族に病状についてはっきり伝えつつ、がんによる痛みや苦しさを和らげ、残された時間にしたいことを出来るように支える。命の終わりを見つめつつ、「人生の締めくくりの時」を生きる人々の姿を伝える。
出演者
【出演】エッセイスト…岸本葉子,国立がんセンター中央病院緩和医療科医…的場元弘,【キャスター】山田賢治

ジャンル :
福祉 – その他
福祉 – 高齢者
福祉 – 障害者

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音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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