「NHK俳句」毎月第1週は宇多喜代子さんです。
どうぞよろしくお願い致します。
今日の兼題は「立春」。
立春というとはじけるような感じがして待たれますよね。
立春は二十四節気の一番最初にある今日からが春だよという日ですけど今の現行のカレンダーだと2月4日でまだ寒いんですよ。
でも立春と聞くだけで今の句のように…。
今の立春の句は私の先生の桂信子の句です。
若い頃の句ですけれども。
冒頭の句ですね。
海は見えないんだけど海からも春の風が吹いてくるのが感じられるという。
私好きなんですこの句が。
何かちょっと余裕が少し出てきたような…。
まだ寒いけれども春を待つという感じの時期ですね。
今日もよろしくお願い致します。
それではゲストをご紹介致します。
今日は作家の楊逸さんにお越し頂きました。
よろしくお願い致します。
楊逸さんは中国・ハルビンのご出身で留学生として来日されて20年後に作家デビュー。
そして2008年には中国出身の作家として初めて芥川賞を受賞されました。
よくご存じでいらっしゃいますね?話題になりましたよ。
お久しぶりです。
俳句の回に1回来てもらって…。
俳句なさるの。
ですから俳句の話をしながら…。
今日はようこそ。
早速俳句をご紹介頂けますか?これはどういう所で詠まれた…?皇居辺りを散歩しましたら鴨が浮かべていて…。
すごい春が来たなっていうふうに感じて詠みました。
これ鴨そのものは水鳥で冬の季語なんですけれどもそれがのんびりしてるというとこで春が近いなというのが感じられるんですね。
いい句だと思いましたね。
また後ほどいろいろよろしくお願い致します。
それでは宇多さんが選ばれました入選句ご紹介してまいります。
まず1番です。
大抵春っていうのは戸外に出て先ほどの桂信子の句のように戸外で感じる事が多いんですけれどもこの方は居間にいてしかも1人で春が来るんだなっていうのを感じてらっしゃる。
しかも北海道にお住まいですから余計その感じはするんですがこういう句はいかがですか?私も北の方の人なので春いつも家の中で楽しむっていうのはありますよね。
すごい分かるような…。
あと居間に春が立つその日差しっていうのは何か友達みたいな感じでいいですよね。
そういう感じがしますね。
では2番です。
先ほどは居間の小さい空間で感じてらしたけどこれはホントに大きな景色の中の立春。
それがとてもよく出てると思いました。
では今度は3番です。
この文語っていうのは日常使いませんがしかも文法も難しい。
私はいまだ文語文法で時々迷っております。
ですからこの方の気持ちがよく分かりますけれども。
晩学で頑張ってらっしゃる。
それで「春立ちぬ」というのが今から希望がたくさんあっていいなという感じがしますね。
晩学でも勉強して下さい。
そうですね。
では4番です。
中七の「はがねびかり」というのは多分辞書にはない言葉ですけれども…。
でも何か分かるんですね。
鋼鉄の金属のピリッとしたかたい感じの光が水平線横にスッと感じられたというとこですね。
この「はがねびかり」というのはあるかもしれないけれども造語だとしてとてもよく冬の終わりから春の初めのこのころの水平線を捉えていると思いました。
今度は5番です。
これはのんびりしていらっしゃるんですね。
春になって少し気分もゆっくりしてきて羽織った上着のボタンを1つ外して遊ばせている。
気分が非常にゆっくりしてる感じがとても出てると思いますね。
では今度は6番です。
先ほどの方は「はがねびかり」という水平線横の線を捉えてらしたけどこれは「海一枚」という平面を非常にうまく捉えています。
立春の海っていうのは独特の光があるんですがねどうお思いになる?海が鏡みたいな感じで温かくてまばゆいっていうイメージはよく出てますね。
光を集めてキラキラしてる感じね。
確かに海辺にご縁があったら春こう見ると輝きが違うんですよ。
季節によって違いますけどね。
ピカピカピカピカと光る。
その感じを「光あつめて海一枚」。
全体が輝いているという感じですね。
光の春という…。
そうですね。
では今度は7番です。
これは皆様とはちょっと趣が違いまして戸外とか部屋の中とかいうそういう春の感じ方ではなく文字の上に。
暦を見ておりますと立春とか立夏とかいうのは特別大きく書いてございます太い字でね。
その字を見ただけで春が来るんだなという事を感じてらっしゃるという非常に珍しい。
暦の中にそういう世界を発見したという。
日めくりのあれでしょうか?どういう暦だろう。
まあ古風な暦でしょうね。
立春が書いてあるのは。
さあ今度は8番です。
先生この「ヒト科ネコ科」ってどういう事ですか?我々はヒト科なんですね。
チンパンジーなんかもそうだそうですけれどもネコ科という中にはトラとかがいるらしいけどそういうものつまりヒトとネコ…。
それが全部が春が来たんだウイ〜ッと伸びをするという。
全てのものが…。
別にヒトとネコだけじゃないんですよね。
何もかもが伸びをする感じがしてそれが春を迎える気持ちだよというんじゃないかなと思うんですけどね。
この「と」はどういう…?こういう措辞の使い方ってしますね。
縦に書くと「ヒト科ネコ科と」。
それも一緒にという事じゃないかと思う。
ヒト科もネコ科も伸びをするという事ですね。
面白いですね。
面白い。
では今度は9番です。
とにかく光とか日差しとか山とか空とかそういうものがある中で特に空がわくわくしてるんですね。
どうですか?わくわく。
生き生きしてるところ。
何か私もわくわくしてきました。
「空がわくわく」。
擬人化ですけれども空がやがて春の空になるよ待ってるよって感じでしょうか。
以上が入選句でした。
では特選三句をご紹介する前に「俳人のことば」をご覧下さい。
(青)みちのくは私の故郷です。
東京におりまして郷里の人からを送ってもらった時の作です。
「青いばかりに白い」と言って褒めたたえたのであります。
山口青は…21歳の時に上京した青は東京にいても故郷を思い盛岡にもよく帰郷し数多くの作品を残しています。
俳句の師である高浜虚子は「青の句の大概が豊かな情緒が漂っているがその最も濃厚に出ているのが故郷みちのくを歌った句である」と述べています。
みちのくの俳人青を強く印象づけた句です。
「いぶせき」とは気分が晴れないうっとうしさ。
しかし青は「氷柱に朝日でもさせば金殿玉楼」とその美しさもたたえました。
青にとってふるさとは寂しさと美しさの入り交じる所でした。
それでは本日の特選句です。
まず第三席はどちらでしょう?相川健さんの句です。
二席の句です。
二席は望月勝男さんの句ですね。
一席はどちらでしょう?一席は齊藤慶子さんの句です。
これ実に大きな景色なんですね。
齊藤さんも北海道にお住まいですけれども高い山がまだ頂の辺に雪があったりしてまだ地上にまで下りてきて親しげな表情をしていない。
そういう山々が「まだ天界に」という言葉でまだ天のものであるよと。
とても大きな景色を捉えたところがいいと思いました。
以上が今週の特選でした。
ご紹介しました入選句とそのほかの佳作の作品はこちらNHKの俳句テキストに掲載されます。
俳句作りのためになる情報もご覧になって下さい。
続いて「入選の秘訣」です。
ここを変えれば入選していたというあと一歩をクリアーするポイントを教えて頂きます。
この句を葉書で拝見しました時に実にこういう例が多いのでこの句を取り上げましたけれど「立春や」と大きく立春を出してきてこれを主な季語と致しますと堀の鴨だとかいろんな鳥はまだまだ寒いからじっとしてようよとそこを捉えられたと思うんですが「渡り鳥」という言葉でそれを表したところがこの句ちょっとまずかったなと思うんですね。
渡り鳥というと言わずと知れた秋の大きな季語ですからちょっとここを変えてほしかったという気がします。
こういう句は多いんですね。
知らずに使ってみたらたまたま季語だったという事は確かに初学の方は多いと思いますね。
一応「歳時記」をご覧になるとか辞書をひいてみるとかしたらいいんですけれどもこの場合でしたら私はたまたまこの句を見ました時に川におりました鳥にそれを感じましたから川の鳥に致しましたけれども堀の鳥でもいいし山の鳥でもいいしちょっとここを工夫されたらいいんじゃないかと思いました。
読んで頂きますと…。
そう致しました。
ありがとうございました。
どうぞ参考になさって下さい。
皆さんからの投稿のご案内です。
ご自身の作品で未発表のものに限ります。
番組のホームページからも投稿できます。
それでは宇多さんの年間のテーマ「日常を掬うことば」です。
季節がたつのが1年4つございますよね。
その中でも夏がまだ暑いのに立秋が来たりそういう事あるでしょ?はい。
ところが春だけは妙に1年の一番最初ですからそれを感じるんですね。
季節が昨日までは冬だったけど今日から…。
「暦の上では春です」。
「春です」と。
必ずそういうコメントが聞こえてきますでしょ。
そのようにほかの季節にはさほどでもないのにこの季節を言いますね。
といいますのも昨日が節分だったと。
季節を分けるから節分なんですけれどもそれで豆まきをしたり致しますよね。
こういう句がございます。
立春の前の日が追儺。
鬼やらいといいましょうかね豆まきの日だと。
それには誰かが鬼にふんしてぶつけられる側にいる人がいる訳ですよ。
大抵お父さんがしたりそういう事があるんだけども幼稚園だと園長先生がなったりしますけれどもその用事が済んだのが立春の日になると昨日の事なのにもう捨てられてるというのでそこに目を留めた句なんですね。
非常に立春と冬の終わりの日が一句の中にとても面白くよく出てると思われますねこの句。
楊さん日本で節分で豆をまくと。
そういう事はおやりになった事はありますか?私はないですけれど眺めていてすごい楽しそうな感じはしますね。
だけど豆を投げるというのはもったいないなっていつも思います。
確かに。
食べますけどね。
拾って年の数だけ食べるという風習はあるんだけれども食べるものですから大事にしてほしいという思い確かにありますね。
面白い。
やっぱり日本に来られていろんな風習の違いもあると思うんですけど…。
俳句も日本独特のものだけども俳句をなさるようになって何か特別感じた事ってありますか?俳句ってすごい日常の趣のある一場面一場面を詠んでいるのでこれはほかの国にない文化っていうかほかの国だと大義をたたえたりあるいはすごいすばらしい事とかそういう特別な事がなければ詩にしないというのはあるんですけれど日本だとあらゆる場面を俳句にする事ができますよね。
そういう意味では面白くてわびさびの世界っていうのはそういうとこ…。
日常を楽しめる。
日常を楽しめるっていう今の捉え方はいいと思うんです。
例えば大詩人が人生いかに生きるべきかとかというそういうのを言うんじゃなくてここにちょっと花のくずがあるよとかちょっと小さい草から芽が出たよとかそういうホントに特別な事でない事を特別でない人たちが作る。
面白くおかしく作るっていうのがいいですよね。
俳句をよく理解してらっしゃると思うんです今の捉え方はね。
だから俳句でとても大きい事を言うのは難しい。
難しいですよね。
それでも言えるんですよ。
あと短い…。
あの短さで言えるんです。
余韻がずっと残るっていう…。
ほこり一つでも季語になるとおっしゃってましたね。
春のほこりあんなものが何で季語になるのって思うと思うけどなるんですよ。
面白いと思う。
宇多さんはそれこそ楊さんの本を…。
楊さんの本で面白いのはね食べ物の本がある。
食べ物の事を非常に詳しく書いた本。
「おいしい中国」最近それを読みました。
ず〜っと読んでると食べ物に対するあれを読むと教えられる事が多いんですよ。
やっぱり南の方から来た文化に私たちはなじんでますけど寒い時にはそれを工夫して食べるものがあるの。
例えばね…何て言ったっけ?あの名前。
干菜というものがあって保存食品として我々東北の方だと1年間冬が長くてそれをいかにしのいでいくかっていうのがそれは技術ですよね。
知恵ですよね。
実を言うとそれをご用意したんですけれどもこれですね。
こういうものですね。
字はどういう字を書くかと言いますと…。
干した野菜ですよね。
ガンツァイっていうんですか。
私は先ほどちょっとつまんで…塩漬けなんですね。
これは何だっけ?高菜とか?高菜とこれはタケノコかな。
そういうものが塩漬けにしてあるの。
私つまんでさっき食べてみたんですけど匂いはいいしね辛くてしょうがないっていう辛さじゃないんですよ。
ですからこれを水に戻して…。
戻してお肉と一緒に蒸して食べると調味料など一切要らないですよね。
おいしいですよ。
風味があっていいですよね。
ああそうね。
日本でも冬寒い所で発達したのは漬物。
やっぱり冬の間食べる保存食品としての漬物とか干したものだとか。
これは同じですね。
これは私とてもいいと思うの。
こちらのお母様がとてもよくこれを作っておられるんですよ。
それなのに娘はあんまりよく知らない。
今風のおいしいものを食べてる。
食べるだけ。
でもお母さんはちゃんとそれをこの日付…。
冬至か。
カレンダー頼らずにいつも季節を自分で数えて陰暦の暦でいろんな行事をやってますね。
何日目ぐらいにはこれを漬け込むとか。
だから立秋してからこれを干すんですね。
立秋過ぎないと駄目なんですね。
立秋の前だと腐っちゃうというのがあって…。
これは冬の間ず〜っと食べて。
それこそ立春というのは我々のふるさとだと一番つらい季節になりますね。
立春って?そうですね。
食べ物がなくって。
分かります。
日本でも秋取れたものが食べ尽くして無くなる。
次の春のものができるまでにちょっと間があって食べるものがない時期があった時代春窮という言葉があったんですよ。
この言葉ですね春窮。
こういう言葉があったの。
何にも食べるものが春ちょっとない時期が。
それが今おっしゃった多分立春の頃の…。
まさにこういう感じですよね。
今一番つらい時期です。
これは季語のようになっていた?古い季語にはございますけど今の季語にはないんですよ。
ですけどこれはホントにお察しするんですね昔の人の事。
そうするとこれは死語だから死んだ言葉だからもう「歳時記」にいらないわというけどね私はそれに反対してるの。
寂しいですね。
やっぱりこういう言葉を使って生きてきた時代の人がいるんですから言葉を大事にしたいなと。
季節感もあるしね。
大事にしたいんですよね。
そういう意味では暮らしというかそういうものが全部込められているんですね季語って。
全部人の歴史なんですよ季語ってね。
自然の歴史であり人の歴史なの。
ですからあなたも母親からお母さんから少なくとも保存食は習った方がいいって。
それは字で習うんじゃなくてお母様が口で言ってらっしゃるでしょうが。
それを口伝で教えてもらっておく事なの。
それは母親から娘またあなたの娘さんこういうふうにして女の人が食い物の保存はつないでいくの。
そうすると災害があったり戦災に遭ったりする時にどうして生き延びるかって知恵がパッとそこからつながるんです。
是非是非母親に習ってきて下さい。
そういう暮らしを受け継ぐっていう事は言葉も受け継ぐ事になりますしやっぱり一緒になってるんですね暮らしと言葉っていうのはね。
冬至の日から9日数えてやってらしたでしょ?物の本には確かにそう書いてあるの。
だけどそれを実際お母様がやってらしたって事それがすごいじゃないの。
いまだにやってますね。
それは教えてもらっておく事ですね。
この9日目には何をする。
私たちもちょっと見習いたいと思いますよね。
体で覚えてらっしゃるという…。
勉強しなきゃ。
特に今からその勉強しますじゃないのよ。
それをする時にそばにいたり…。
日々…。
多分あなたのお母さんはそのもう一つ前のお母さんから教えてもらったと思うの。
ありがとうございました。
今日は作家の楊逸さんにお越し頂きました。
ありがとうございました。
珍しいものもご紹介頂きました。
では宇多さんまた次回もどうぞよろしくお願い致します。
2014/02/05(水) 15:00〜15:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「立春」[字]
選者は宇多喜代子さん。ゲストは作家の楊逸さん。中国出身の楊逸さん。何でもない日常を大切に詠む俳句を通じて、わびさびという美意識を理解するようになったという。
詳細情報
番組内容
選者は、宇多喜代子さん。ゲストは、作家・楊逸さん。中国出身の楊逸さんは、何でもない日常を大切に詠む俳句を通じて、わびさびという美意識を理解するようになったという。題「立春」。【司会】桜井洋子アナウンサー
出演者
【出演】楊逸,宇多喜代子,【司会】桜井洋子
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ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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