やっぱりお前が連れて逃げたって事か…。
かわいい妹だからな。
妹って?あれはお前…。
まあかわいいならしかたねえけどな…。
松林家が血眼になる訳だ。
いいぞ!よっ日本一!松林家。
えっ?どこかで聞いた名だと思った。
私たちのお父っつぁんとおっ母さんを殺した武家の名よね?あれは…私の本当のお父っつぁんとおっ母さんではなかった。
私の本当の親は誰なの?まさか松林家と関わりがあるの?教えて兄さん!そんな事知ってどうするんだ?兄さんは私を育てるために苦労したでしょ。
その思いをしっかりと私は受け止めておきたいの!妹として親の事も知っておきたいのよ。
(鳴き声)どうした?喉渇いたか。
昔若くして踊りの名人とうたわれた役者がいた。
役者?その役者が大名の側室と恋仲になり駆け落ちしたんだ。
互いに身分を捨ててまで相手の事を思い世間を捨てたんだ。
役者と大名の側室が…。
その大名というのは?松林壱岐守だ。
松林壱岐守が寵愛していた側室だった。
その人はどうなったの?駆け落ちしてから1年後にはやり病にかかって亡くなったそうだ。
そして亡くなる前に…女の子を産んだ。
役者はその娘を連れて旅を続けたが生来は名人ともいわれた役者だ。
独り身になればまた舞台が恋しくてしょうがなくなった。
そこで一旦江戸の一座にこっそり戻り木戸番をしていた夫婦に娘を預けそれから自身は上方へ行き名を変えて役者に戻ったんだ。
それで私は木戸番夫婦の娘になったのね。
優しいお父っつぁんとおっ母さんに育てられて優しい兄さんを持つようにもなった。
だけどどうしてその夫婦が殺されなければならなかったの?役者はいくら名を変えても舞台に出るとたちまち評判になった。
駆け落ちしてから6年がたった頃役者は江戸に戻ったんだ。
そして舞台の初日を迎えようとする前の晩だった。
小屋には一座とその家族がそろい役者は遅くまで猛稽古をしていた。
うわっ!娘を捜せ!木戸番といるはずだ!娘はどこだ?キャ〜ッ!嫌!嫌!キャ〜ッ!私は兄さんに助けられた…。
なぜそんな事になったの?松林家は逃げた役者を捜し続けていたんだろう。
側室を取られた恨みを忘れていなかったんだ。
それだけ?それだけでまるで押し込みに襲われたようにほかの人も殺されたっていうの?何が言いたいんだ?私がもし本当はその役者の子ではないとしたら…その大名の落胤だとしたら…。
バカな事言うな!だけど松林家は私を消すためにその役者と一座を殺したとは考えられない?そんな事はない。
兄さんだってそう思ったから私に話せなかったんじゃないの?お前が覚えていなければ話す事でもないと思っていただけだ。
もしそうなら…私は兄さんにとって親の敵の娘になるのね。
小袖!私はただ…松林家が許せないだけよ。
本気で許せないのよ。
もう一本!どうしたんだ?
(太助)おう甘酒屋。
やけ酒飲んでんだよ。
また鼠を逃がしたんだってさ。
いいから早く持ってこいっていうんだ!この野郎!親分もういい加減におしよ!いくら酒飲んだって鼠様がお代持ってきてくれる訳じゃないんだよ!無駄口たたいてんじゃねえぞこの野郎!親分何をそんなに怒ってるんで?
(太助)そうだよ親分。
鼠に怒ってないでさ仁吉さんを殺した下手人を捕まえてくれよ!そのとおりだ!頼むぜ親分!黙ってろ!何だそれで怒ってるのか。
えっ?下手人を捕まえたくても捕まえられない相手だから。
それじゃ下手人はもう誰か分かってるのかい?侍だよ。
(与平)下手人は侍か…。
侍じゃ岡っ引きが手を出す訳にはいかねえやな。
情けねえな〜。
(お染)およしよ!そんな事親分に言ったってしかたがないだろ!親分。
見てんじゃねえよこの野郎。
親分。
もしも抜け荷の証しを親分が握ったとしたらどうします?抜け荷?大名家がお取り潰しになるような証しを。
そんなものがあったら少しは気が晴れるんじゃないですか。
てめえそれどうやって手に入れたんだ!?まさか!あっしが持ってる訳ないでしょう。
甘酒屋今度無駄口たたきやがったらてめえを牢にぶち込むぞ!
(しゃっくり)こいつにつけとけ!
(しゃっくり)あ〜危ねえなこの野郎!や〜っ!
(広之進)何かあったんですか?えっ?今日は強さの中にも心の乱れを感じました。
そのような小袖殿もまたよいではありませんか。
強いだけでは人らしくありません。
広之進様は侍らしくありませんね。
面目ない…。
褒めているのですよ。
その心に触れると私は安らぎます。
もし広之進様の家にご落胤がいたらどうしますか?えっ?その家の血を引く者がどこかで生きていたとしたら…しかもその子を産んだ女がその家を裏切った者だとしたらどうしますか?始末しなければいけないと思いますか?私には分かりかねますが…。
今度は何を調べてるんですか?何も調べていません。
調べてもしかたのない事です。
小袖殿は武家がお嫌いですか?えっ?前からそんな気がしておりました。
それなら私は侍を捨てても構わないと思ってるんです。
なぜ?なぜって…。
えっ?そういえば鼠小僧がまた出たそうね。
だけど今度はお金は盗られていなかったって読み売りには書いてあったけど…。
何を盗ったのかしらね。
大名家が転覆するような書状かもしれねえな。
そんなもん盗んでどうするつもりか知らねえが…。
きっと正しいと思った事をするのよ。
命を投げ出すような覚悟で弱き者を助けるのが鼠小僧だもの。
どうしてそんな生き方をするようになったのかできるものなら聞いてみたいわ。
先生は鼠小僧を買いかぶってる。
盗っ人に正しいも何もねえ。
ただ生きるのに必死にあがいてるだけだろう。
そんな罪人とは関わり合わねえ方が身のためだ。
次郎吉さん!いつでもまたここに来て下さいね。
ケガをした時には診てあげますから。
先生…俺なんかよりもし妹の小袖が傷つくような事があればその時はどうかみてやっておくんなさい。
さてお取り潰しになる前に頂くものは頂くか。
こんな夜更けに誰だ?まあ楽に致せ。
その方が見世物小屋の権一か。
はっ!相すいません。
木戸はまだ開けてないんでございます。
お糸ちゃん久しぶりだな。
俺だよ。
覚えてないか。
昔芝居小屋にいた木戸番の伜次郎吉だよ。
次郎吉さん!?思い出してくれたか!いや〜きれいになったなお糸ちゃん!そんな…。
次郎吉さんこそ昔お父っつぁんがよく言ってたんですよ。
次郎吉さんを役者にしたらさぞかし映えるだろうって。
勘弁してくれ。
お父っつぁんにもこの間会って話をしたんだ。
そうだって聞きました。
私も会いたかったって文句を言ってたんです。
2人の芸も見物させてもらったよ。
2人とも本当に見事なものだ。
弓八と申します。
ありがとうございます。
それで今権一さんはいないのかい?お父っつぁんは昨夜遅かったものですから…。
あっ来ました。
次郎吉!権一さん昨夜はよく眠れたかい?何でお前がそんな事知ってるんだ?まあそれは聞かないでくれ。
まさか…松林家をいつも見張ってんのかい?そんな事はねえ。
たまたま耳にしただけだ。
俺もまさか松林家と関わり合いになるとは思いも寄らなかった。
向こうもまさか俺があの芝居小屋にいた者だとは思ってもねえだろ。
そんな因果も知らずに殿様が宴で芸をご覧になりたいと仰せになったか。
謝礼はたんまり弾むと言われて承知してしまったが…。
俺を恨むか?なぜだ?なぜって…敵に尾っぽ振るようなもんだろ。
面白えじゃねえか。
たんまり金をもらえれば。
敵だからといってその命を狙えばこっちも同じ下司に成り下がるだけだ。
俺は外道かもしれねえが下司にはならねえ。
すまねえな。
外道は外道らしく頂くものを頂けばいいんだ。
弓八さん…。
胸騒ぎ?はい。
殿様の前で芸を披露する事は一向に構わないのですがその大名家の使いという方が見世物小屋に来た時に妙な動きが気になったものですから…。
妙な動きとは?手前どもが使います弓矢や手裏剣の切れ味を妙に真剣に調べていたような気がしたのです。
ただの興味とは思えませんでした。
まさかとは思いますがいつもの芸のほかに何かたくらみがあるような気がしてならないのです。
あんたの腕ならどんなものでも射ぬけるだろうしな。
その昔駆け回る犬を射ぬけと言ったお殿様もいたと聞きます。
犬をか…。
座長にやめるように言ってもらえませんか?あんたが言えばどうだい?座長はこの一座を少しでも大きくしたいのです。
芸人もたくさん集めたい。
そのためにお金が欲しいのです。
私の言う事に聞く耳は持ちませんよ。
気が乗らねえならあんたが行かなきゃそれで済む話だろ。
そんな事をしたら座長を裏切りお糸さんを悲しませる事になります。
そういう事か。
あんたが裏切れないのはお糸ちゃんか。
夫婦になる約束をしております。
そうかい。
しかし犬はねえだろ犬は。
虎だったらどうしますか?虎はねえだろ!あの山崎とかいう侍やはり妙な動きをしているわ。
どんな動きだ?骨董屋に何か品を預けていたの。
預けてた?おかしいでしょ。
金に困って売ったとは思えない。
誰かに渡すための品か…。
まさか松林家は大物を狙っているのか?大物って?虎だよ松林家にとっての。
(囃子)
(一同)お〜!
(一同)お〜!お〜!ハハハハハハ!おっ!お…親分!
(呼び子の音)定!へい!やっぱりそう来なくっちゃ!親分!あっ弓八さん!弓八さん起きて!弓八さん!お糸さん…。
ここはどこだ?お屋敷よ。
寝込んでしまったのよ。
おかしいわねそんなに飲んでないはずなのに…。
座長は?分からない…。
ともかくここを出ましょう。
うん。
まだ帰す訳にはいかんのう。
お前たちの腕をまだ使わねばならぬ。
(弓八)私たちに何を?座長は?父はどこですか?この屋敷のどこかにおる。
お前たちがしくじれば父の首ははねられるものと思え。
(山崎)主よいか?何格別な事はない。
先日渡した品をそなたが呼び出したひいきの客にいつものように渡せばよいだけの事だ。
妙なそぶりを見せれば女房と娘の命はないぞ。
分かりました。
私たちに何をしろと?何格別な事はない。
人を射ぬけばよいだけの事だ。
私は人を射た事はございません!大丈夫だ。
お前の腕ならできる。
そういう事では…。
やらねばこの女からこの場で斬るぞ。
分かりました。
弓八さん…。
これから話す事をよく覚えろ。
よいか。
間もなくここに幕府の老中水島出羽守の駕籠がやって来る。
老中?骨董の茶碗に目のない御仁でな。
ここの主が掘り出し物が手に入ったと伝えれば矢も楯もたまらず登城の途中に立ち寄る事になっておるのだ。
駕籠が店の表に止まる。
主が品を持ってその前に行く。
(山崎)駕籠の扉が開く。
(山崎)出羽守が茶碗を受け取って確かめる。
(山崎)主がひれ伏す。
その時だ!お前がこちらから出羽守を射ぬく!
(弓八)しかしそれではお供するご家来衆がすぐに手前どもを斬りに来られましょう!その時こそ女の出番だ。
向こうがひるんだ隙に表の木戸が落ちる手はずになっておる。
その間にお前らは裏口から逃げればよい。
使い慣れた道具が一番よかろう。
出羽守様ご到着である!お〜さすがじゃ。
はは〜恐れ入ります。
何事じゃ?くせ者でございます!お逃げ下さい!何!?殿!出立!何事だ!?うわ〜っ!逃げて!何やつ!?出会え!皆殺しに致せ!次郎吉さん!権一さんは無事に逃がした!安心しろ!すまねえお糸ちゃん。
早く逃げろ!はい!や〜っ!小袖殺すな!クッ!う〜っ!
(泣き声)千両箱を拾った目明かしというのはその方か?へい!それがしは南町奉行所定廻り同心の早崎市兵衛と申しまする。
この者は我が配下の岡っ引きにて徳五郎にございます。
はは〜っ!話を聞いて待てずに見に来た。
ハハハハハ!さあ早速それを見せてくれ。
(2人)はい!定吉!へい!この千両箱は恐らく鼠小僧が捨ててったもんだと存じやす!何?鼠小僧が?へい!浜崎藩松林家の上屋敷より盗んだもんだと存じやす!中を見せよ。
はっ!これか。
(水島)これは…。
間違いない。
これぞ松林壱岐守の書状。
早崎!徳五郎!よくぞこれを見つけてくれた!はは〜っ!ありがとうございます!国元に抜け荷の指示をしておる動かぬ証しじゃ!しまいじゃ…。
これで松林家はしまいじゃ…。
江戸ともしばしおさらばだな。
お父っつぁん。
うん?あの2人に挨拶をしなくていいの?どこに住んでるのかも分かんねえんだ。
何そっとしとくのが挨拶だよ。
また会いたかったな次郎吉さんに…。
あの次郎吉さんという方は一体どういう方なんでしょうか?役者だよ。
千両役者だ!ハハハハハハハハ!兄さん。
なくなっちゃったのね…見世物小屋。
ああ。
とうとう私は一度も見られずに残念だったけど何だか私たちの昔もなくなっちゃったみたい。
そのとおりだ。
それでいいんだ。
捨てるものは捨てて残るものは残る。
それで十分だ。
そうね。
お前はいつまで残るつもりだ?えっ?このまま女として残ってもいいのか?失礼ね。
剣を捨てて生きるのも悪くはないぞ。
兄さんは捨てられる?何を?今までの生き方よ。
それを捨てる時は命を捨てる時だろうな。
だったら私も剣を捨てない。
どうして?言ったでしょ。
その時は私が兄さんを討つって。
それが私の覚悟よ。
世間と戦っても命に代えても兄さんを守る。
ほかの人には絶対に殺させない。
それが兄さんに対する…私の恩返しだから。
鼠小僧に初めに恵んでもらったのは私だから。
そうでしょ?お前に返してもらう恩なんてありゃしないよ。
だったら兄さんは残ってね。
いつまでも私のそばに残ってね。
お願いよ。
分かった分かった。
そういうしめっぽいのは好きじゃねえ。
何かうまいもんでも食いに行くか。
うん。
あっ小判1枚くらい残ってる?うん?あっ。
あ〜残ってねえや。
バカ!まぬけ!穀潰し!そこまで言う事ねえだろ!何でかな〜。
何で俺たちの所には鼠が来ねえのかな。
昨夜は派手にまいたっていうじゃねえかよ!それなのに納得いかねえな!そりゃ日頃の行いが悪いからだよ。
ねえ先生。
鼠小僧はきっと待ってると来ないのよ。
そうかそうか。
待ってるから駄目なのか。
好きな人と同じだね。
待ってる人には来ない。
全くです。
はあ…。
待たずに頑張る人にそっとやって来るのよ。
ごめんよ。
あっ来た!来た!えっ?どうした?あら広之進様。
待ってたのよみんな。
俺をか?私でしょ?鼠小僧よ!えっ?あいにく待ってる人には来ないって話してたのよ!何だ。
それはそうよ!おう!酒くれ!酒〜!あっ一番待ってる人が来た!何?あっ親分!てめえ何のんびりそばなんて食ってやがんだ!この野郎!そりゃ俺だってのんきにそばぐらい食いますよ!そんな事よりね耳寄りな話があるんですよ。
何でもね鼠のやつをふん捕まえるには待ってちゃ駄目だそうですよ!そんな事百も承知でえ!俺はな今度こそはと鼠が動くのを待ってるんでえ!こりゃ一生待っても駄目だわね。
そりゃ親分残念だったね。
残念でしたね。
残念でしたね。
残念でしたね。
残念でしたね。
(2人)残念ですね。
残念でしたね。
おい何が残念なんでえ?残念でしたね。
俺は待ってるんだ!
(呼び子の音)
(呼び子の音)待っても無駄だぜ。
・「傷を負った瞳そこに安らぎはないのか」・「涙のそばで生きるのか」・「ひとりで抱えながら」・「終わらない悲しみひととき忘れてみないか」・「その闇を切り裂いてやる」・「俺の胸で眠れ」・「千年恋慕咲き乱れよう」・「散りゆくとて悔いなどない」・「尽き果てるまでともに生きよう」・「あらがうほど運命は無情」・「ゆえに固く結ぶ絆」・「腕に抱いて交わす契りは」・「とこしえの愛」2014/03/20(木) 20:00〜20:43
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 鼠(ねずみ)、江戸を疾(はし)る(9)[終]「宿命の兄妹(後編)」[解][字]
シリーズ最終回!ついに小袖(忽那汐里)と次郎吉(滝沢秀明)の兄妹の秘密が明かされる!そして次郎吉にたちはだかる最大の陰謀…闇をはしる鼠小僧は妹を救えるか!
詳細情報
番組内容
シリーズ最終回! ついに小袖(忽那汐里)と次郎吉(滝沢秀明)の兄妹の秘密が明かされる! 果たして、小袖は次郎吉の本当の妹なのか? 2人の過去に隠された血塗られた記憶…。次郎吉にとって因縁の、そして最大の陰謀がたちはだかる! 闇をはしる鼠小僧(ねずみこぞう)は、最愛の妹を救えるのか? そして鼠はついに捕縛されるのか! そのとき徳五郎は?千草は? 21世紀に復活した華麗なる鼠小僧、堂々の完結!
出演者
【出演】滝沢秀明,忽那汐里,京本大我,片瀬那奈,マギー,