きょうの健康 パーキンソン病 進行を防ぐ「治療は早く始めよう」 2014.02.04

(テーマ音楽)皆さんの健康に役立つ確かな情報をお伝えしましょう。
「きょうの健康」です。
今週お伝えしているのは…パーキンソン病では手足の震えであるとか歩きにくい座るのがちょっと支障があるというそういった動作に支障が出る症状があるんですよね。
でもパーキンソン病には効果的な薬があるんです。
早く治療を始める事で日常生活に支障のない状態を長く続ける事ができます。
そこで今日のテーマはこちら…薬のほか手術による治療などもお伝えしていきます。
今日も専門家に分かりやすく伺ってまいりましょう。
ご紹介致します。
お迎え致しましたのは…パーキンソン病の診断治療がご専門です。
今日もよろしくお願い致します。
よろしくお願い致します。
治療を早く始めようという事ですが当たり前のようにも聞こえますがパーキンソン病の治療において早く始める事の意義背景はどういう事なんでしょうか?昔はパーキンソン病の薬は障害されたドパミン細胞を治す訳ではなくて単に足りないドパミンを補充するだけであると。
なので早く治療するメリットはそうないのではないか。
むしろ治療が長期にわたる事で副作用が出やすくなるとかそのような心配も考えられたんですね。
ですが最近ではむしろ治療を遅らせるメリットはなくてなるべく早く治療して早く症状をよくする事が重要であるという考え方に変わってきました。
その根拠を示す臨床試験の一つがこれなんですが…。
横軸は経過。
何週というのが書いてあって縦軸の方は症状がよくなった悪くなったというのが書いてあります。
パーキンソン病になってまだ初期の患者さんを対象に薬を使わないグループと薬を使ったグループに分けて見ているんですが薬をのんでいる間は当然お薬をのめばよくなりますからこういうふうに差が出る訳ですね。
ですが…これは研究なので一旦40週までたったところで薬を全員中止しているんです。
そうすると単に足りないものを補充しただけであるならばやめたらみんな同じになってしまうんだろうと。
早く治療を開始する意味がないんだったら同じになっているだろうと思っていた訳ですがなんとやめて1週間2週間たってもこんなに大きな差がついてしまったんですね。
これはかなり大きな差でこの方たちが今からお薬の治療を始めてもこの人に追いつくのかなというのが心配になるぐらいに大きな差がついてしまったんです。
この差は埋められないほどの意味のある差だと考えられる訳ですね。
こういうデータが出てくるとホントに早い治療の大事さが分かるんですがそうしますとこのパーキンソン病においてはあまり深刻な症状が出ていなくてもすぐに薬を始めた方がいいんでしょうか?もちろん生活に何らかの支障があるんでしたら当然薬を始めます。
軽い症状であっても我慢するメリットはないのでむしろきちんと治療を始めましょう。
ただ非常に軽い症状だとたまたま見つかったというような形でしたらまずは運動して下さいという事からスタートする場合もあります。
運動や薬によって体が動かしやすくなる事自体が症状の改善につながるというようにも考えられています。
ですので適切な治療を早めに開始して頂いて長い間障害を抑えた生活を送って頂きたいと考えています。
それではパーキンソン病の薬はどういう働きのねらいなのか基礎的なところを久田さんからです。
ではこちらの図で見ていきましょう。
パーキンソン病は脳の奥この黒質という部分で作られ線条体へと送られるドパミンという神経伝達物質が減ってしまう病気です。
なぜ減るのかといいますとドパミンを作っている神経細胞が減ってしまうからです。
ドパミンが減ると体を動かす運動の指令が調節できなくなるため体を動かしにくくなります。
このドパミンの不足を補うのがパーキンソン病の薬なんです。
ドパミンの不足を補うのだと。
どんな薬なんでしょうか?実はパーキンソンの薬ってたくさんあるんですがまずメインになる薬がこのL−ドパとドパミンアゴニストという2種類の薬があります。
この2種類はどう違うんですか?L−ドパは脳の中に入ってドパミンそのものに変わる薬です。
ドパミンアゴニストはドパミンそのものではないんですがドパミンに似た働きをするものです。
L−ドパの方は効き目が早くて結構効果としては強いんです。
アゴニストの方はL−ドパに比べますと比較的弱いですがゆっくり一日中安定した効果が得られるのが特徴です。
それぞれ使っていく上で注意すべき点はありますか?L−ドパは非常にいい薬でよく効くんですが効いている時間の長さが比較的短いんですね。
ドパミン神経が病気が進行して減っていきますと頭の中でドパミンを保持できなくなってしまうのでL−ドパの効いている時間が短くなってしまうんです。
それがウェアリングオフという症状なんですが…。
あるいは効き過ぎてしまって勝手に体が動く症状不随意運動というのがあります。
そういうものが出やすいのがL−ドパの特徴です。
一方でドパミンアゴニストはウェアリングオフや不随意運動はL−ドパに比べると比較的少ないんです。
ところがL−ドパに比べて幻覚や眠気ですとかあるいは便秘や吐き気などいろいろ症状がありますがそういう消化器症状などが出やすいのが特徴です。
そうしますとこういった薬はどのように使い分けるんですか?L−ドパの方が効果が強いので中等症以上の症状がある場合にはまずL−ドパで治療を開始します。
あと比較的早く症状をよくしたい場合にもL−ドパを使います。
また高齢の方ですと幻覚や眠気が割と出やすいんです。
ですのでL−ドパで治療します。
一方で若い人50歳ぐらいまでですかね。
若く発症した人はウェアリングオフとか不随意運動が出現しやすいんです。
ですのでドパミンアゴニストでまず治療を開始すると。
ただアゴニストはL−ドパに比べると弱いのでこれだけで治療する事は難しいので数年以内にはL−ドパを併用すると。
2つの薬のいいところをうまく合わせる形でよりよい治療をします。
この2種類の薬以外に使われるものはありますか?実はその他にもたくさんありまして基本的にはウェアリングオフや不随意運動を改善する目的でいくつかの薬が開発されています。
新しい薬は出てきているんでしょうか?大変いろんな薬の開発が進んで選択肢が増えてきています。
これまでの薬は基本的に飲み薬だった訳です。
それに注射薬や貼り薬も出てきています。
注射薬はご自分で注射するんですが注射すると10分ぐらいでかなりよくなるんです。
ただ1時間か1時間半ぐらいで効果が切れてしまうのでそれだけで治療するのは無理なんですがただウェアリングオフという…効果が切れてしまうような場合症状が急に悪くなった時に注射するとパッとよくなります。
一方で貼り薬は一日1回貼れば一日中ほぼ同じ効果が得られるという利点があります。
一方で飲み薬じゃないのでのむ事が難しいような場合にとても使いやすいです。
そのほかに今まで一日3回のんでいたお薬が一日1回で同じ効果を得られるという…剤形の工夫ですね。
そのような薬も出てきています。
そのほかのお薬もありますね。
こちらはですね…今までのパーキンソンの薬はとにかくドパミンを何らかの形で補充するというものなんですがこちらはちょっと違う形でパーキンソンをよくしようというものでアデノシン受容体拮抗薬というは…。
アデノシンというのはドパミンと反対の作用をするようなものでアデノシン受容体拮抗薬によってアデノシンを抑える事でドパミン系の働きを正常化するという発想で作られています。
一方でゾニサミドというのは実はこの薬はドパミンに対する作用もあるんですがアデノシンと似たようなドパミン系とは別な所に働く作用もあります。
ドパミンとは別な所に働くというのはドパミン系による副作用例えば幻覚とか不随意運動とかそういうのは比較的出にくいのでこういういろんな薬を使う事によってなるべく副作用を少なくよい効果を得ようという事で多くの薬を併用しています。
ちなみにこの2つの薬は日本で開発されて世界に先駆けて日本から発信しているお薬です。
いろんなお薬が登場している事は今ご説明頂きましたがパーキンソン病をそもそも根本的に治すと。
根治を目指せる薬の開発はどうなんでしょう?期待されるんですがまだ今のところ実際に細胞の変性を抑えるとかパーキンソン病の進行を確かに抑えましたという証拠のある薬はまだないんです。
ただいろいろな研究が進んでいますので早晩出来るのではないかと期待しています。
パーキンソン病の治療においてはお薬以外に大事な事って何かありますか?お薬はもちろん大事で薬をきちんとのんで頂く事はとても大事なんですがそれとともに運動がとても大事です。
というのはじっとしていると筋肉も萎縮してしまうのでそれによって動きにくい事もよくある訳ですね。
ところがパーキンソン病が進行したんじゃないかと思われてしまう事があるので是非運動も一生懸命やって頂きたいと思います。
この運動リハビリですが明日お伝えしていきます。
お薬の治療以外の手段は何かございますか?手術というのがあります。
どういう手術でしょう?ここに出ますように脳深部刺激療法といいまして脳の深い所…ドパミン系に関係する所なんですがそこに細い電極を入れます。
一方胸の所には刺激発生装置を入れてこれで刺激する訳です。
それによってパーキンソン病の症状をよくしようというタイプのものです。
刺激をする場所もいろんな所がありますしあと刺激の強さを調整する事で一番いい効果を得られるようにしています。
刺激と薬と両方の調整もとても大事な事です。
お薬も併せて使う事が多いんですね。
これは手術したからといって根本的によくなるという事ではない訳ですね?症状はよくなるんですが治しちゃうというタイプの治療ではないです。
あとこの刺激発生器に電池が入っているので5年ぐらいで電池を取り替える必要はあります。
簡単な手術ではありますけれど。
こうした手術が必要になる人はどれぐらいの割合ですか?全体の5%ぐらいでしょうかね。
どんな場合なんでしょうか?実はL−ドパなどがとてもよく効く人なんです。
よく効くんですけれど効き過ぎてしまって不随意運動がすごく強いとかウェアリングオフでいい時と悪い時の差が非常に激しいというような人がよくなります。
ここにありますように根治を目指す訳ではないし実際適用になる人はそんなに多い訳ではないんですね。
こういった方法もあるという事ですね。
さあ今日もポイントがありました。
ではまとめです。
パーキンソン病と診断されましたら早めに受診して頂いて適切な治療を早く始めて頂きたいと思います。
そうする事によって生活に支障のない時期を長く過ごす事ができます。
いろいろな薬が使えるようになってきましたので医師とよく相談して効果や注意点を知り年齢や病状に応じていろいろ選んで頂きたいと思います。
お話ありがとうございました。
明日はパーキンソン病のリハビリについてお伝えしていきます。
運動も大切だという事ですね。
明日も是非ご覧下さい。
明日のお話もどうぞよろしくお願いします。
2014/02/04(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 パーキンソン病 進行を防ぐ「治療は早く始めよう」[解][字]

パーキンソン病では脳で不足したドパミンを薬で補う。早期の段階から薬を使い始めると症状を長期間抑えることが出来る。薬はドパミンアゴニストとL−ドパを効果的に使う。

詳細情報
番組内容
パーキンソン病の治療は、脳のドパミン不足を薬で補うことが主。早期から始めると症状を長期間にわたって抑えられる。薬はL−ドパが中心。効果は強いが、何年も使うと「不随意運動」「薬の効果が早く切れる」という問題が生じやすい。その改善のため、別の薬、ドパミンアゴニストを使う。この薬には、新たに、早く効く注射薬と長く効く貼付薬も登場。症状や年齢などに応じて複数の薬を組み合わせて使うので、処方通りに服用する。
出演者
【講師】国立精神・神経医療研究センター パーキンソン病・運動障害疾患センター センター長…村田美穂,【キャスター】濱中博久,久田直子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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