クローズアップ現代「15歳 王者に挑む〜スノーボード 平野歩夢〜」 2014.02.04

空飛ぶ中学生。
冬のオリンピックで日本人最年少となるメダルが期待される選手です。
中学3年生の平野歩夢選手。
空中での技を競うスノーボードハーフパイプ。
去年、世界のトップ選手が集まる大会に初出場すると史上最年少で2位に入り一躍トップ選手の仲間入りを果たしました。
最大の武器は、この高さ。
鉄道の高架を優に越えます。
ソチで平野選手の前に立ちはだかるのはオリンピック2連覇中のショーン・ホワイト選手。
誰にもまねできない大技を次々と開発し絶対的な王者として君臨してきました。
王者に追いつき、追い越したい。
平野選手は新たな技の習得に取り組み続けてきました。
ソチの大舞台で輝けるのか。
その戦いの日々を追いました。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
スノーボードハーフパイプの平野歩夢選手は初めてのオリンピックという大舞台で憧れの選手との勝負に挑みます。
身長160センチ、50キロ。
まだ、あどけなさが残る15歳の大きな目標はこれまでオリンピック2連覇中のショーン・ホワイト選手27歳を超え金メダルを獲得することです。
こちらはアメリカ大手スポーツ専門誌の予想です。
ホワイト選手が金メダル平野選手は銀メダルと予想となっています。
平野選手がどんな技を繰り広げてホワイト選手に挑むかが注目されます。
こちらが競技の舞台です。
ハーフパイプというその名のとおり、パイプを半分に切ったような形をしています。
長さは180メートルそして直径は20メートル。
中は傾斜していまして斜度は18度壁の高さは7メートルあります。
この中を選手たちは5回から7回のエア・空中技を繰り広げます。
一つ一つの技には決まった得点はありません。
審判はエアの高さ、難易度完成度などを見て総合的な印象で得点を決めていきます。
この競技の大きな特徴は選手たちの個性が高く評価されることです。
平野選手の強みは世界1、2を争う高さだといわれています。
へりから6メートルそしてパイプの底からは13メートルも飛び上がります。
15歳にして世界の有力なメダル候補とされている平野選手の強さはどのようにして生まれたのか。
平野選手の素顔とともにご覧ください。
開いてる、開いてる。
平野選手はプロとして世界各地の大会を転戦する日々を送っています。
とはいえまだ、あどけなさが残る中学生。
空港でリュックを忘れてしまいました。
海外で注目される平野選手。
行く先々でメディアに囲まれます。
平野選手が世界を驚かせたのはトップ選手が集うアメリカ最高峰の大会去年1月のXゲームでした。
14歳で初出場。
観客の度肝を抜いたのは1回目のエアでした。
パイプのへりから6メートル近く飛び上がる圧倒的な高さ。
その後も次々と高いエアを決めていきました。
大会史上最年少で2位。
一躍、スターに駆け上がったのです。
平野選手を上回り優勝したのはショーン・ホワイト選手でした。
難易度の高い技を繰り出し圧倒的な強さを見せつけました。
エアの平均の高さもホワイト選手が1番。
そこに唯一迫ったのが、平野選手。
差は僅か40センチでした。
平野選手の滑りにホワイト選手は驚きを隠せませんでした。
ホワイト選手も認めた平野選手の高さ。
それを可能にする最大のポイントが踏み切る瞬間の技術にあります。
踏み切るのは壁のへり、ぎりぎりの所。
へりを蹴り上げる反動で高さを生みます。
しかし僅かにタイミングがずれると大きなミスにつながります。
踏み切りのタイミングが遅れたため外側に飛び出してしまいます。
さらに優れているのが着地です。
正確にパイプの高い所に着地できるため、再び加速して次も高いエアにつなぐことができます。
空飛ぶ中学生はどのように育ったのか。
思い出のものを飾っているような感じの場所ですね。
サーフショップを経営している父親の英功さんです。
平野選手がスノーボードを始めたのは4歳のときでした。
8歳のときジュニアの大会で優勝。
このころからオリンピックへの夢を抱くようになりました。
当時、憧れていたのがトリノオリンピックで優勝したホワイト選手でした。
ホワイト選手に近づきたいと磨きをかけてきた高いエア。
その秘密は幼いころから続けている、ある練習にあります。
スノーボードのかたわら毎日練習してきたスケートボードです。
スケートボードは後輪の後ろの僅かな部分を壁のへりに当てて飛びます。
その幅、僅か15センチ。
車輪がなく、板全体が使えるスノーボードに比べより精密な踏み切りが求められます。
スケートボードで培った踏み切りの感覚がスノーボードでも生きています。
平野選手の高さはオリンピックでどれほどの武器になるのか。
ソチオリンピックで審判を務める横山恭爾さんに聞きました。
きょうは、スノーボード専門雑誌の編集者で、みずからも競技者として日本選手権に出場した経験を持っていらっしゃいます、野上大介さんにお越しいただきました。
今の平野さんの強さっていうと、高さですけれども、こう見ますと、ギリギリの所で踏み切って、そしてギリギリの所に着地できるというところが、大きなポイントなんですね。
そうですね。
彼は本当にぎりぎりで踏み切るっていう動きは、待ち過ぎると、ハーフパイプの外に飛び出してしまって、ぼくら、まくられると表現するんですけれども、制御不能になって、平らな所にたたきつけられたりするので、すごくリスクがあるんですよ。
なので、通常の選手心理としては、どうしても早めに踏み切ってしまう、でも彼はそのぎりぎりの踏み切りを習得してるので、高さも生まれる、かつぎりぎりの所に着地して、次につなげられる。
ですので、通常は減速してくんですよ、中に技も入れたりするので。
ですが、彼の場合は、着地の精度も高いので、徐々に徐々にヒットが増えていくたびに、高さがむしろ増してきていると。
最後のほうになるほうが、高くなっていくんですか?
そうですね。
昨シーズンのXゲームですと、最後のヒットで、フロントサイドダブルコーク1080という技をやったんですけれども、むしろそのジャンプが一番高かったんじゃないかと。
なので平均すると、かなり高いエアになるということだと思います。
そうすると、流れるような滑りなんですか?
そうですね。
ハーフパイプ内の演技もすごくむだのない動きで、スムースで正確なんですよね。
なので、高さにもつながりますし、技の完成度にもつながるといえると思います。
それを習得してきたのが、幼少期からスケートボードでも練習してたっていうところなんですか?
スケートボードは当然なんですけども、足が固定されていないので、その固定されてない不安定さの中で、同じ形状の動きを体得しているので、それを雪上に置き換えて、スノーボードでその演技をするっていうのは、彼にとっては空気を吸うような感覚に近いんじゃないでしょうか、もう、幼少期から乗れるので。
そうやって練習している人、多いんですか?
いや、彼のライバルに当たる、絶対王者といわれているショーン・ホワイト。
ショーン・ホワイトも?
彼もスケートボードでも、もう世界トップレベル、トップと言ってもいい。
バーチカルでいうハーフパイプの形状ですと、トップレベルですね。
それであの高さがうまれるとろろ
そうです。
一生懸命、王者を追いかけようとしていますけれども、今の段階で、高さはかなり近づいてますけど、一番の技術の差っていうのは、どのあたりにありますか?
経験値がやっぱり大きいと思うんですけれども、ショーン・ホワイトに関しては、技の引き出しがすごく多いんですよね。
なので、その部分でトリックだけで言うと、若干の差が、技のことをトリックと言うんですけれども、ちょっと今、差がある段階ではあるのかなと思いますけど。
そのホワイト選手がどんどん自分で開発をしてきたそうですね。
そうですね、2010年のバンクーバーオリンピックでは、最後にダブルマックスツイスト1260という技を。
ダブルマックスツイスト?
彼が開発した技なんですよ。
縦に2回回って、横に3回転半回ってる技なんですけれども。
これはそうですね、今ではやる選手が多いんですけれども、当時はもう、彼オリジナルといいますか、彼がもう第一人者として成功させた技ですね。
そうすると、かなりオリジナルの技を、次々開発してきた人なんでしょうか?
そうですね。
なので、次のソチオリンピックに向けても、もちろん開発もしてるでしょうし。
技の数で追いつかなければいけないというお話でしたけれども、そのショーン・ホワイト選手に追いつき追い越そうとしてきました、平野選手、ソチオリンピックに向けて、大技に取り組んできました。
ショーン・ホワイト選手の持ち技の一つダブルコーク1080です。
空中で縦に2回転同時に横に3回転する大技です。
バンクーバーオリンピックではこの技を2回連続で決め金メダルを引き寄せました。
平野選手は、まずダブルコークを2回連続で決めることを目指しました。
平野選手は通常、右足を前にしてダブルコークを飛びます。
課題は2回目でした。
1回ダブルコークをすると次は左足が前になります。
しかし、左足を前にした状態からは飛ぶことができませんでした。
練習は、おととしニュージーランドの合宿から始まりました。
しかし、着地のイメージがつかめません。
まだ立てる感じじゃない?感覚的には。
1日6時間に及ぶ猛特訓。
なかなか糸口をつかめない平野選手にアドバイスを送った選手がいました。
國母和宏選手、25歳です。
かつて日本のエースとして2大会連続でオリンピックに出場。
日本人で最初にダブルコークを習得した選手です。
國母選手。
みずから鋭く回転してみせました。
まずは回転だけを意識して練習を続けた平野選手。
徐々に感覚をつかみ始めました。
練習開始から9か月。
きた!
ついにダブルコーク1080を2回連続して成功させました。
平野選手は、これに満足せずさらなる大技に取り組み始めました。
まだ誰も成し遂げたことがない大技、トリプルコークです。
ダブルコーク1080よりさらに縦横1回転ずつ多く回ります。
オリンピックまで1か月。
平野選手にアクシデントが発生していました。
チームのスタッフから届いたメール。
ハードな特訓を続けたため練習ができないほど疲労がたまっているというのです。
オリンピックに向け全力で駆け抜けてきた平野選手。
15歳の体に大きな負担がのしかかっていました。
ソチにたつ前、あえて休養を取り体調を整えた平野選手。
オリンピックの舞台で王者、ホワイト選手に挑みます。
平野選手、ダブルコーク1080をマスターして、それを連続でできるようになった。
一歩追いついたと。
そうですね。
で、次は自分しかできないトリプルコークに挑んでいましたけれども、あれは完成したんでしょうか?
僕自身も完成した映像は見たことがないんですけれども、彼は先ほども申し上げたように、ハーフパイプの踏み切りの精度がすごく高いので、当然、高さも埋めるイコールそういう高難度の技を滞空時間内に入れ込める技術もあるので、可能性はなくはないと思うんですよ。
そのエピソードとしては、ニュージーランドで行われた大会で、3年前ぐらいだと思うんですけれども、彼はそのときはまだ表彰台に世界の大会で上がれるようなレベルではなかったんですが、決勝の前の公式練習中に、彼のチームマネージャーに当たる人に、どんな技があれば、上位に行けるかっていう話の中で、フロントサイド1080という、横に3回転する技がないと、厳しいだろうという話があったらしいんですよ。
その中で、彼はたった1時間の公式練習中に、その技をマスターしたんですよ。
1時間で?
決勝の3本あったんですけど、3本とも成功させたという話もあるので、今回の、今、トリプルコークに限らず、いろんな技を練習してると思いますけれども、もしかしたら、もうすでに習得している可能性もあるんではないでしょうか。
飲み込みが早いんですね。
やはり若さもありますし。
そうですよね、伸びしろがたぶん、大きいんだと思いますけれども、一方でしかし王者、今までいろんな技を開発してきたホワイト選手は、どんな技で挑んでくると思いますか?
もうすでに、アメリカの代表選考会、USグランプリという大会では、披露したんですけれども、技の名前は難しいんですが、キャブダブルコーク1440。
通常の反対側を向いて滑っていて、横に4回転、縦に2回転という技をすでに成功させてるんですよ。
なので、2010年よりさらに進化して、今回のソチオリンピックには出場すると思うんですが。
そうなると、なんか技ではまだ追いついていない感じもするんですけれども、このハーフパイプの見どころですけども、この技と技の直接対決というふうなものになるんですか?結果としては?
スノーボードの場合は、技の一個一個に点数がつくわけではないんですよ。
ハーフパイプ内高さ、もちろん技の精度もそうなんですけれども、むしろハーフパイプの中での動きも、むしろそこができないと、高さも出せないですし、技もできないという話にはなるんですけれども、そう考えると、すべてを全体を通してスムーズにつなげることが、美しさでもあり、かっこいいジャンプにもつながり、それが選手ここの表現という部分になると思うんです。
なので、難しい技をたくさんやったら勝つ競技ではないというのは言い切れると思います。
全体の美しさも大事だし、個性的な表現というのも大事になってくるとなると、さあ、今度、日本時間の11日から12日にかけて、その競技があるわけですけれども、これは、ホワイト選手、そして平野選手の一騎打ちになりそうですか?
そうですね。
もう一人、スイスの…というライダーが、選手がいるんですが。
そうですね、その3人がメダルを争うような形にはなると思います。
そして、やっぱり平野選手には、どんな今、アドバイスをかけてあげたいですか?
おこがましくてアドバイスは難しいんですけれども。
2014/02/04(火) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「15歳 王者に挑む〜スノーボード 平野歩夢〜」[字]

15歳でソチ五輪の金メダルを目指すスノーボード・ハーフパイプ、平野歩夢選手。世界最高峰の高さを持つジャンプ「エア」で王者ショーン・ホワイトに挑む。その姿に密着。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】スノーボード雑誌編集長…野上大介,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】スノーボード雑誌編集長…野上大介,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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