ハートネットTV 未来へのアクション(2)「自分の“壁”を打ち破る」 2014.02.04

コートの上の格闘技と呼ばれる…鋭いパス。
激しいぶつかり合い。
選手たちは重い障害がある事など全く感じさせない。
車いすバスケとの出会いで絶望の淵からはい上がる事ができた若者がいる。
突然の事故で下半身不随となった中島憲吾さん29歳。
ハートネットTV「未来へのアクション」。
2日目は…そして難病と闘いながらJリーグを作った男木之本興三さん。
熱いメッセージをお伝えします。
(一同)「未来へのアクション」!千葉市にある車いすバスケットボールのチーム…大ヒットした漫画のモデルになった事で一躍有名になった。
その漫画は…累計の売り上げは1,400万部。
読者の熱い支持を受けて15年間連載が続いている。
主人公は病気で足を失い絶望の淵に立つ。
しかし車いすバスケと出会い希望を取り戻し未来へ向かって進んでいく物語だ。
なぜこの漫画が障害のない人たちにも共感を呼ぶのか。
千葉大学の学生たちの声を聞いた。
…という点でスッと入ってきたかな。
現在千葉ホークスのメンバーは15人。
新人の…大きく人生が変わったのは2年前。
当時自動車の整備士をしていた中島さんはチームリーダーを任され充実した日々を送っていた。
それは仲間と行ったスノーボードでの事故だった。
転んで脊髄を損傷。
すぐに歩けるようになると気楽に考えていたが2か月後医師から回復の見込みがないと告げられた。
大切にしていた中島さん専用の工具。
もう二度と使う事はできない。
夢が絶たれたと思った。
更に深い絶望に襲われた。
恋人の絵衣美さんの事だった。
別れるしかないと覚悟した。
そんな時リハビリで車いすバスケットを勧められた。
しかし中島さんは思った。
「所詮障害者のスポーツだ」。
中島さんが千葉出身だと知ったトレーナーは諭すように言った。
しかたなく練習場に行ってみた。
衝撃を受けた。
その迫力に一瞬でとりこになった。
驚いたのはキャプテン下村浩之さんのプレー。
中学生の時交通事故に遭い胸から下の筋肉が全く動かない。
腕の力だけで巧みに車いすを操りシュートを打つ。
障害は中島さんより重い。
しかしその動きは輝いていた。
このチームでプレーをしたい。
その場で入団を申し込んだ。
しかし全く練習についていけなかった。
焦る中島さんに声をかけた人物がいる。
コーチの杉山浩さん。
杉山さんは言った。
やった感という事とやっぱり…車いすバスケットと新しい仲間との出会い。
中島さんは情熱と希望を取り戻した。
4か月後。
大きな決断をした。
思い切って恋人の絵衣美さんにプロポーズ。
絵衣美さんの答えはイエス。
どん底の中からはい上がった中島さん。
未来に向かって動き出した。
(山田)会場にはVTRに登場した中島憲吾さんにお越し頂きました。
(拍手)よろしくお願いします。
今日はバスケットボール用の車いすでお越し頂きましたが早速じゃあちょっとターンをせっかくなのでやって頂きたいなと思うんですがよろしいですか?はい。
いきます!速〜い!
(藤本)こんな小回りが…。
結構速いですよね。
スピーディー!すご〜い!バスケットボール激しいですね。
激しいですね。
結構当たったりですとか…。
車いす同士でぶつかり合えばどっちかが吹っ飛ばされて転んだりとかそういうのも当たり前なので…。
それOKなんですか?別にファウルでなければ…。
ぶつかり方次第ですね。
それで転んでも自分で起き上がれなければ話にならないんで…。
はあ〜!激しいですよね。
今日は同じ千葉ホークスに所属している先輩方にも来て頂いていますがさっきのターンどうでした?
(久保)あれ?
(藤本)キャプテンですよね?中島さん先輩方厳しいですか?めちゃくちゃ厳しいです。
皆さんから見て新人ですよね。
中島さんどういうふうにご覧になってますか?非常に頑張ってます。
彼は…。
結構障害が重い方だと思うんですね。
ルールの中でも。
その中ではやっぱりかなり頑張ってるというふうには思います。
VTR見てミキティどんな事感じました?やっぱり障害があった上でのプロポーズを受ける奥さんの心情というのもすごくすばらしいなとも思うしあとこうやって目標を見つけてキラキラしている彼だからこそ応援したいっていう奧さんの気持ちもすごく同感しますね。
やっぱり旦那さんには小さくてもいいから何か1つ目標を持って常にキラキラしていてほしいというのはありますよね。
もしかしたら自分もある程度スポーツ得意だったらできるかもみたいに外から思って見ているのと実際にやってみる時にギャップってすごかったんじゃないですか?見るのとやるのとじゃ全然違いますね。
(津田)一番最初にできなくて戸惑った事ご苦労されたのって何ですか?リングの真下からシュートを打っても届かなかった事ですね。
ボールが…?
(中島)はい。
残ってる機能を全部使って打つんですけど自分の場合は特に上半身を使わないと球が飛ばないので…。
そうですよね。
普通のバスケットだったらみんな脚とかも全部全身の力で飛ばす事できるけど腕でやんなきゃいけない訳ですからね。
実際やっぱり20代という若い…まだまだこれからこうしたいああしたいっていういろんな思いがある中で…。
だからなおさらショックというのは大きかったと思うんですよね。
そうですね。
ホントにもう車いすになってどこにも行けないだろうって思ってたし大好きだったサッカーもできないっていう思いばっかり感じていたので…。
仕事にもまず戻れない。
この辺り木之本さんもほぼ同じ年代で発症されましたから共感する事はあったんじゃないですか?そうですね。
やっぱりすぐ病気になって考えるのは…。
僕はもう考える事さえできなかったんですけど。
何が何だか分かんなくなって…。
もうそれが落ち着いた時は絶望しかなかったですね。
ホントにスポーツの力っていうのはやっぱり感動が…。
例えば美術にしても音楽にしてもそれから小説にしても与えてくれるんですけどスポーツもやっぱり感動だと思うんですよね。
いやもうすごい感動…。
やってる方も見てる方もしますよね。
(久保)力をもらいますよね。
新婚ほやほやの中島さん。
妻絵衣美さんと2人の暮らしが始まった。
(2人)頂きます。
自立した生活を取り戻す事が中島さんの目標だ。
新居は車いすで移動できるようスペースに余裕があるファミリー向けのマンション。
ここがリビングですね。
10畳ぐらいですかね。
しかし予算の中で借りられたのは築15年の一般住宅。
段差が多い。
前輪を上げて…こう上るんですね。
特に工夫が必要なのは入浴だ。
まず入り口の縁に腰掛ける。
よいしょ。
それでこう…。
次にあぐらをかいて座る。
体を安定させるためだ。
中に入ってシャワー浴びながらこう頭洗ったり体洗ったり。
硬い所に体をぶつけてケガをしないよう自分でクッションを取り付けた。
少しずつ車いすの生活に慣れてきた中島さん。
フルタイムで働く妻の負担を減らそうと料理も始めた。
あんまり得意じゃないんですけど今修業中です。
事故の前にはほとんどしなかった家事に積極的に取り組むようになった。
結婚して未来への希望が生まれた中島さん。
今新しい挑戦を始めようとしている。
仕事に復帰するための準備。
子どもを授かり家族を養っていきたいという強い気持ちが生まれたからだ。
しかし大好きだった自動車整備の仕事はもうできない。
現実を受け入れ会社から提示された販売の仕事をする事に決めた。
ネクタイ締める事なんて葬式か友達の結婚式かなんてそれぐらいしか今までなかったので…。
仕事着はこれまでのつなぎからスーツに変わる。
どう?この日新調したスーツを着てみた。
まだぎこちない。
新たに中島さんが担当するのは携帯電話の販売部門。
全くの専門外だった。
猛勉強を始めた。
更にこの日中島さんはこれまでためらっていた事に挑戦した。
車いすバスケの練習以外は1人でほとんど出かけなかった中島さん。
仕事に復帰したらさまざまな場所に行かなくてはならない。
手始めに家の近所に出かけてみる事にした。
車の運転はもともと得意中の得意。
障害者のための助成金を受けて手でアクセルとブレーキの操作ができるように改造した。
やって来たのは地元で人気のラーメン屋。
かつて週に1度は通っていたが店や周りの客に迷惑をかけるのではないかと気が引け来られなかった。
心配だったのは入り口の段差。
1人では越える事ができない。
次でお待ちのお客様どうぞ。
中島さんの順番が来た。
ここ持ち手があるので上げてもらっていいですか?すぐに周りの客が手を貸してくれた。
段差を乗り越え店に入る事ができた。
1年ぶりに食べる大好きなラーメンの味。
(取材者)どうですか?おいしいです。
中島さんはまた一歩自分の力で前へ進んだ。
…になっちゃって行けなかったんですけれど。
どうでした?何か2人ともそうですけど…普通にいても家族がいるからこれができないとかっていう事もあったりするじゃないですか。
でも…じゃなくて家族が力になって家族がいるから働きたいとか子どもが欲しいとかというのもそうですけど家族ってやっぱりすごいなって改めて家族の在り方というのを考えさせられましたね。
そうですね。
ホントに大きな存在ですね。
(藤本)いやすばらしい。
ホントに…。
でもね久保さんホントプロポーズって勇気がいったんじゃないかなって…。
絵衣美さん二つ返事だったんですか?「はい」って言ってくれました。
(久保)でもやっぱり不安でしたでしょう?そうですね。
まあそこに至るまで不安はたくさんありました。
でもどうしてここでもうプロポーズしようと…?ケガする前と変わらずそのあとも接してくれて支え続けてくれてたんで…。
とにかく感謝の気持ちしかなかったのがあって入院している間に彼女の誕生日を迎える事になったので何かできる事はないかなと思って自分が病院の中で行動できる範囲っていったら病院の売店に行くぐらいしかできないんですけど…。
それで売店でケーキとかお菓子買ってお皿に盛りつけて用意して待ってたらホントにすごい喜んでくれて。
それで……とその時思ったので。
そうやって前向きにプロポーズしようと思えるようになったのも千葉ホークスに参加した事も影響はしてるって事ですかね?そうですね。
(久保)自信になったんですか?体がもうとにかく細かったんですけれどトレーニングし始めて体も強くなってきて少しずつですけど自分に自信もついてきてそれでプロポーズするにも自信がついたというか…。
作ってあげた物でおいしいって言われた物あるんですか?ヒット作。
あんまり表情に出して喜んでくれないんですけど…。
(藤本)てれてるんじゃないですかね。
木之本さんどうですか?若い中島さんに何か…。
奥様と結婚するという事がやはり社会的な責任感も当然生まれたのだと思います。
やっぱり自分が1人でもしいたらそういう思いに至ったのかと考えるとなかなか難しいんじゃないですかね。
そしてVTRにもありましたけどもラーメン屋さんに久しぶりに行けたと。
やっぱりこれ自分の中でも自信になりました?そうですね。
物理的に大きな段差があれば自分の力じゃもうそれを上がる事はできないんでそれを越えるためには人の力を割り切って借りるしかないっていう考え方が生まれるようになってきたんで…。
最近新しい事始めてるので次何やりたいこれやりたいっていうのはあったりします?まあ夢ですけどできるのであればスカイダイビングとかそういうアクティブスポーツっていうんですか。
体動かす事がホントに好きなんですね。
夢ですけどね。
ラーメン屋さんの次はスカイダイビング。
ちょっと…。
(藤本)すごいでも…是非かなえてほしいですね。
(津田)そうやって働いている中でまた仕事としても新しくやりたい事とかもしくはまたスポーツに関わる仕事みたいなものとかね。
そういうものとかもまた具体的目標として今後まだお若いですから見えてきそうですよね。
中島さん木之本さんからの熱いメッセージを受け取った若者たち。
自分の壁を打ち破るために何が必要なのか。
一人一人心に残った言葉を書いてくれた。
前に進もうとする中島さんの姿に感動したという門脇美紀子さん。
親子で参加してくれた伊藤快さん真菜さん。
今日のキーワードかなと思って書きました。
五十嵐貴光さん。
木之本さんの言葉に勇気が湧いたと言う。
明日から頑張っていきたいと思います。
12月上旬千葉ホークスは連覇を懸けて関東リーグ戦を戦っていた。
中島さんは控えの選手だ。
試合中は選手にドリンクを配るのが仕事。
まだ公式戦デビューのチャンスは来ない。
後半戦ホークスのリードで試合が進んでいたその時だった。
突然中島さんが呼ばれた。
初出場だ。
緊張でなかなかゲームに入れない。
その時。
初得点を決めた。
中島さんはまた一つ自分の力で前に進んだ。
2014/02/04(火) 13:05〜13:35
NHKEテレ1大阪
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人気漫画のモデル、車いすバスケの強豪・千葉ホークス。中島憲吾さんは事故で、一生歩けないと宣告。しかし絶望の中でバスケと出会い、ついに彼女にプロポーズ。復活の秘話

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未来へのアクション